説明

通信装置およびそれを備えた無線ネットワークシステム

【課題】通信の非対称性を安定して抑制できる通信装置を提供する。
【解決手段】アクセスポイントの送受信手段112は、送信可能時間の間、端末装置宛てのパケットを格納するキュー113〜117からそれぞれパケットPKT1〜PKT5を取り出し、その取り出した5個のパケットを連続して送信する。そして、端末装置は、それぞれ、パケットPKT1〜PKT5の受信する。その後、端末装置は、任意の順序でそれぞれ1個のパケットをアクセスポイントへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端末装置と双方向の無線通信を行なう通信装置およびそれを備えた無線ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アップリンクとダウンリンクとにおける通信の非対称性を解消する方法として、アクセスポイントが無線端末から音声トラフィックのパケットを受信すると、確認応答を送信した後、該当音声トラフィックのダウンリンクトラフィックにおけるパケットがあれば、そのパケットを続けて送信する方法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J-O Kim, H. Tode, and K. Murakami, “Enhancing MAC Protocol for Voice over IEEE802.11 WLANs,” In Proc. IEEE CCNC 2006, vol. 1, pp.45-49, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1に開示された方法では、アクセスポイントがアップリンクトラフィックのパケットを受信した時点で、該当するダウンリンクトラフィックのパケットがキューに無い場合、通信の非対称性を抑制することが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、通信の非対称性を安定して抑制できる通信装置を提供することである。
【0006】
また、この発明の別の目的は、通信の非対称性を安定して抑制できる通信装置を備えた無線ネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、通信装置は、ネットワークに接続され、複数の端末装置と双方向の無線通信を行なう通信装置であって、複数のキューと、送信手段とを備える。複数のキューは、複数の端末装置に対応して設けられ、各々が対応する端末装置宛てのパケットを格納する。送信手段は、1回のチャネルアクセスにおいて、複数のキューの各々から1個のパケットを取り出すとともに、複数の端末装置の個数分のパケットを連続して送信する。
【0008】
好ましくは、通信装置は、演算手段を更に備える。演算手段は、複数のキューの個数に基づいて、1回のチャネルアクセスにおいて送信手段がパケットを送信できる送信可能時間を演算する。そして、送信手段は、送信可能時間の間、複数のキューの各々から1個のパケットを取り出し、その取り出した複数のパケットを連続して送信する。
【0009】
好ましくは、通信手段は、測定手段を更に備える。測定手段は、複数のキューの各々の先頭に位置するパケットに基づいて、複数のキューに格納された先頭のパケットのパケット長を測定する。演算手段は、測定手段によって測定されたパケット長と、該当パケットの宛先端末へのパケット送信に使用された送信レートとに基づいてその1個のパケットの送信所要時間を演算し、その演算した送信所要時間に複数のパケットの個数を乗算して送信可能時間を演算する。
【0010】
好ましくは、送信手段は、一定値からなる送信可能時間を保持しており、その保持している送信可能時間の間、複数のキューの各々から1個のパケットを取り出し、その取り出した複数のパケットを連続して送信する。
【0011】
この発明によれば、無線ネットワークシステムは、通信装置と、複数の端末装置とを備える。通信装置は、ネットワークに接続される。複数の端末装置の各々は、通信装置と双方向の無線通信を行なう。そして、通信装置は、複数のキューと、送信手段とを含む。複数のキューは、複数の端末装置に対応して設けられ、各々が対応する端末装置宛てのパケットを格納する。送信手段は、1回のチャネルアクセスにおいて、複数のキューの各々から1個のパケットを取り出すとともに、複数の端末装置の個数分のパケットを連続して送信する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、通信装置は、1回のチャネルアクセスにおいて、複数の端末装置宛ての複数のパケットを連続して送信する。その結果、通信装置から複数の端末装置へパケットを送信するダウンリンクにおける通信が複数の端末装置間で公平に確保される。また、複数の端末装置は、通信装置へパケットを送信するアップリンクにおいて、チャネルに公平にアクセスしてパケットを通信装置へ送信する。
【0013】
従って、この発明によれば、通信の非対称性を安定して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態による無線ネットワークシステムの概略図である。
【図2】図1に示す端末装置の構成図である。
【図3】図1に示すアクセスポイントの構成図である。
【図4】データフレームの概念図である。
【図5】1個のパケットの送信に要する送信所要時間の概念図である。
【図6】送信可能時間の具体例を示す図である。
【図7】アクセスポイントにおけるパケットの送信の概念図である。
【図8】図1に示す無線ネットワークシステムにおける通信動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態による無線ネットワークシステムの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による無線ネットワークシステム100は、端末装置1〜5と、アクセスポイント10と、ネットワーク40とを備える。
【0017】
端末装置1〜5は、アクセスポイント10の通信範囲内に存在する。そして、端末装置1〜5の各々は、例えば、IEEE802.11gの無線通信方式によってアクセスポイント10と双方向の無線通信を行なう。
【0018】
アクセスポイント10は、ネットワーク40に接続される。そして、アクセスポイント10は、後述する方法によって、端末装置1〜5の各々との無線リンクにおける通信の非対称性を抑制して端末装置1〜5の各々と双方向の無線通信を行なう。
【0019】
ネットワーク40は、例えば、インターネットからなる。
【0020】
図2は、図1に示す端末装置1の構成図である。図2を参照して、端末装置1は、アンテナ101と、送受信手段102と、キュー103と、通信手段104と、アプリケーションモジュール105とを含む。
【0021】
送受信手段102は、例えば、IEEE802.11gの無線通信方式によって無線通信を行う。そして、送受信手段102は、インフラストラクチャモードでアクセスポイント10にアクセスし、アクセスポイント10との間でパケットを送受信する。
【0022】
即ち、送受信手段102は、キュー103からパケットを取り出し、その取り出したパケットをアンテナ101を介して送信する。
【0023】
また、送受信手段102は、アンテナ101を介してパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段104へ出力する。
【0024】
キュー103は、通信手段104からパケットを受け、その受けたパケットを保持する。
【0025】
通信手段104は、アプリケーションモジュール105からパケットを受け、その受けたパケットをキュー103に格納する。
【0026】
また、通信手段104は、送受信手段102からパケットを受け、その受けたパケットをアプリケーションモジュール105へ出力する。
【0027】
アプリケーションモジュール105は、パケットを生成して通信手段104へ出力するとともに、通信手段104からパケットを受ける。
【0028】
なお、図1に示す端末装置2〜5の各々も、図2に示す端末装置1と同じ構成からなる。
【0029】
図3は、図1に示すアクセスポイント10の構成図である。図3を参照して、アクセスポイント10は、アンテナ111と、送受信手段112と、キュー113〜117と、測定手段118と、演算手段119と、通信手段120と、有線インターフェース121とを含む。
【0030】
送受信手段112は、IEEE802.11gの無線通信方式によって所定のチャネルを用いて無線通信を行う。そして、送受信手段112は、演算手段119から送信可能時間TXOPを受けると、送信可能時間TXOPの間、ラウンドロビン(RR:Round Robin)方式に従ってキュー113〜117の各々から1個のパケットを取り出し、その取り出した複数のパケットをアンテナ111を介して連続して送信する。
【0031】
また、送受信手段112は、アンテナ111を介してパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段120へ出力する。
【0032】
キュー113〜117は、それぞれ、ダウンリンクにおけるパケットの宛先である端末装置1〜5に対応して設けられる。そして、キュー113〜117の各々は、通信手段120からパケットを受け、その受けたパケットを保持する。
【0033】
測定手段118は、キュー113〜117の各々の先頭に位置するパケットのパケット長を測定する。
【0034】
また、測定手段118は、キュー113〜117を参照して、キュー113〜117のうち、パケットが実際に格納されているキューの個数を測定する。
【0035】
更に、測定手段118は、送受信手段112における送信レートを検出することによってキュー113〜117が対応する端末へ送受信手段112がパケットを送信する際に使用する送信レートを検出する。
【0036】
そして、測定手段118は、各キューに格納されたパケットのパケット長および送信レートとキューの個数とを演算手段119へ出力する。
【0037】
演算手段119は、パケット長、送信レートおよびキューの個数を測定手段118から受け、その受けたパケット長、送信レートおよびキューの個数に基づいて、後述する方法によって、送信可能時間TXOPを演算し、その演算した送信可能時間TXOPを送受信手段112へ出力する。
【0038】
通信手段120は、送受信手段112からパケットを受け、その受けたパケットを有線インターフェース121へ出力する。
【0039】
また、通信手段120は、有線インターフェース121からパケットを受け、その受けたパケットをその宛先に応じてキュー113〜117のいずれかに格納する。
【0040】
更に、通信手段120は、送受信手段112から受けたパケットに基づいて、アクセスポイント10にインフラストラクチャモードで接続する端末装置1〜5の端末リストを作成し、その作成した端末リストを保持する。
【0041】
有線インターフェース121は、通信手段120からパケットを受け、その受けたパケットをネットワーク40を介して送信する。
【0042】
また、有線インターフェース121は、ネットワーク40を介してパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段120へ出力する。
【0043】
図4は、データフレームの概念図である。図4を参照して、データフレームDATAは、プリアンブル(Preamble)と、MAC(Media Access Control)ヘッダ(MAC header)と、パケット(packet)と、FCS(Frame Check Sequence)とを含む。
【0044】
プリアンブル(Preamble)、MACヘッダ(MAC header)、パケット(packet)、およびFCSは、それぞれ、長さPrLength,HeaderLength,PacketLength,FCSLengthを有する。
【0045】
測定手段118は、キュー113〜117にそれぞれ格納されたパケット(=データフレームDATA)のうち、先頭パケットのpacketの長さPacketLength1〜PacketLength5を測定する。
【0046】
また、測定手段118は、送受信手段112がキュー113〜117それぞれからのパケットの送信に用いている送信レートを送受信手段112から受ける。
【0047】
なお、パケットが該当宛先端末へ初めて送信されるパケットであれば、送受信手段112は、パケット送信に使用する最小レートを使用する。
【0048】
図5は、1個のパケットの送信に要する送信所要時間の概念図である。図5を参照して、ACKフレームは、プリアンブル(Preamble)と、アドレス(Add)と、FCSとを含む。プリアンブル(Preamble)、アドレス(Add)、およびFCSは、それぞれ、長さPrLength,ACKLength,FCSLengthを有する。
【0049】
また、データフレームの送信元は、データフレームの送信後、SIFSだけ経過後にACKフレームを受信する。
【0050】
従って、この発明の実施の形態においては、データフレームの送信に要する時間、SIFSおよびACKフレームの送信に要する時間の合計を1個のパケットの送信所要時間TxDurationとする。
【0051】
即ち、アクセスポイント10の演算手段119は、パケット長PacketLengthおよび送信レートTxDataRateに基づいて、次式によって送信所要時間TxDuration(PacketLength,TxDataRate)を演算する。
【0052】
【数1】

【0053】
式(1)において、TxPhyRateは、データフレームのプリアンブル(Preamble)およびACKフレームのプリアンブル(Preamble)の伝送レートである。また、TxDataRateは、データフレームのMACヘッダ(MAC header)、パケット(packet)およびFCSの伝送レートである。更に、TxACKRateは、ACKフレームのアドレス(Add)およびFCSの伝送レートである。
【0054】
一般的に、TxPhyRateおよびTxACKRateは、固定のレートである。一方、TxDataRateは、リンク品質に応じて動的に制御される。
【0055】
従って、演算手段119は、TxPhyRateおよびTxACKRateを予め保持しており、TxDataRateを送信レートとして測定手段118から受ける。
【0056】
その結果、演算手段119は、式(1)を用いて1個のパケットの送信所要時間TxDurationを演算できる。
【0057】
そうすると、演算手段119は、1回のチャネルアクセスにおいて、送受信手段112がキュー113〜117から取り出した複数のパケットを連続して送信できる送信可能時間TXOPを次式によって演算する。
【0058】
【数2】

【0059】
図6は、送信可能時間の具体例を示す図である。なお、図6は、1回のチャネルアクセスにおいて連続して送信するパケット数が3個である場合について送信可能時間TXOPを示す。
【0060】
図6を参照して、3個のパケット(=データフレーム)が連続して送信される場合、データフレーム2は、ACKフレーム1が送信された後、SIFS2の経過後、送信される。また、データフレーム3は、ACKフレーム2が送信された後、SIFS4の経過後、送信される。
【0061】
そして、SIFS1,SIFS3,SIFS5は、1個のパケットの送信所要時間TxDurationに含まれる。
【0062】
従って、1回のチャネルアクセスにおいて連続して送信するパケット数が3個である場合、送信可能時間TXOPは、3×TxDuration+(3−1)×SIFSとなる。
【0063】
その結果、一般的には、送信可能時間TXOPは、式(2)によって表される。
【0064】
上述したように、測定手段118は、キュー113〜117の先頭に位置するパケットが変わる毎に、先頭のパケットのパケット長、同一宛先端末へのパケット送信に使用した送信レート、および実際にパケットが格納されているキューの個数を測定し、その測定したパケット長、送信レートおよびキューの個数を演算手段119へ出力する。ここで、キューの個数は、1回のチャネルアクセスにおいてキュー113〜117から取り出されるパケットの個数NumPkts[Qi]に等しい。
【0065】
従って、演算手段119は、測定手段118からパケット長、送信レートおよびキューの個数を受ける毎に、即ち、キュー113〜117の先頭に位置するパケットが変わる毎に、式(1)および式(2)を用いて送信可能時間TXOPを演算し、その演算した送信可能時間TXOPを送受信手段112へ出力する。
【0066】
図7は、アクセスポイント10におけるパケットの送信の概念図である。図7を参照して、キュー113〜117がそれぞれパケットPKT1〜PKT5を格納している場合、送受信手段112は、演算手段119から送信可能時間TXOP1を受けると、送信可能時間TXOP1の間、ラウンドロビン方式に従って、キュー113〜117からそれぞれパケットPKT1〜PKT5を順次取り出し、その取り出したパケットPKT1〜PKT5を連続して送信する(図7の(a)参照)。
【0067】
そして、端末装置1〜5は、それぞれ、パケットPKT1〜PKT5を受信する。
【0068】
また、キュー113〜115,117がそれぞれパケットPKT1〜PKT3,PKT5を格納し、キュー116がパケットを格納していない場合、送受信手段112は、演算手段119から送信可能時間TXOP2を受けると、送信可能時間TXOP2の間、ラウンドロビン方式に従って、キュー113〜115,117からそれぞれパケットPKT1〜PKT3,PKT5を順次取り出し、その取り出したパケットPKT1〜PKT3,PKT5を連続して送信する(図7の(b)参照)。
【0069】
そして、端末装置1〜3,5は、それぞれ、パケットPKT1〜PKT3,PKT5を受信する。
【0070】
図7の(a)に示す場合、演算手段119は、パケットが格納されたキューの個数(=5個)を測定手段118から受け、その受けたキューの個数(=5個)を用いて上述した方法によって送信可能時間TXOP1を演算する。
【0071】
また、図7の(b)に示す場合、演算手段119は、パケットが格納されたキューの個数(=4個)を測定手段118から受け、その受けたキューの個数(=4個)を用いて上述した方法によって送信可能時間TXOP2を演算する。
【0072】
従って、送受信手段112は、送信可能時間TXOP1の間にキュー113〜117からパケットを1個づつ取り出して5個のパケットPKT1〜PKT5を連続して送信できる。
【0073】
また、送受信手段112は、送信可能時間TXOP2の間にキュー113〜115,117からパケットを1個づつ取り出して4個のパケットPKT1〜PKT3,PKT5を連続して送信できる。
【0074】
なお、上記においては、送受信手段112は、キュー113、キュー114、キュー115、キュー116およびキュー117の順番に1個のパケットを取り出すと説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、送受信手段112は、任意の順番に従ってキュー113〜117からパケットを1個づつ取り出せばよい。
【0075】
図8は、図1に示す無線ネットワークシステム100における通信動作を説明するためのフローチャートである。
【0076】
図8を参照して、一連の動作が開始されると、アクセスポイント10は、上述した方法によって、送信可能時間TXOPを演算する(ステップS21)。
【0077】
そして、アクセスポイント10は、送信可能時間TXOPの間、キュー113〜117から端末装置1〜5宛てのパケットを1個づつ取り出し、その取り出した5個のパケットを連続して送信する(ステップS22)。
【0078】
そうすると、端末装置1〜5は、自己宛ての1個のパケットをアクセスポイント10から受信する(ステップS23)。
【0079】
そして、端末装置1〜5は、任意の順序で1個のパケットをアクセスポイントへ送信する(ステップS24)。
【0080】
その後、アクセスポイント10は、端末装置1〜5の各々から1個のパケットを受信する(ステップS25)。
【0081】
これによって、一連の動作が終了する。
【0082】
このように、アクセスポイント10は、ダウンリンクにおいて、端末装置1〜5宛ての5個のパケットを連続して送信し(ステップS22参照)、端末装置1〜5は、自己宛ての1個のパケットを受信する(ステップS23参照)。
【0083】
その後、端末装置1〜5は、任意の順序でパケットをアクセスポイント10へ送信し(ステップS24)、アクセスポイント10は、端末装置1〜5の各々から1個のパケットを受信する(ステップS25)。
【0084】
従って、1個のパケットが端末装置1〜5−アクセスポイント10間において双方向で通信される場合、端末装置1〜5は、パケットを1回送信し、アクセスポイント10も、パケットを1回送信する。
【0085】
その結果、通信の非対称性を抑制できる。
【0086】
上記においては、送信可能時間TXOPは、キュー113〜117の先頭に位置するパケットが変わるごとに更新されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、送信可能時間TXOPは、固定値に設定されていてもよい。この場合、送信可能時間TXOPは、システムが定めている最大値(8.192ms)に設定される。
【0087】
送信可能時間TXOPが固定値に設定される場合、アクセスポイント10は、測定手段118および演算手段119を備えておらず、送受信手段112が固定値からなる送信可能時間TXOPを予め保持している。
【0088】
したがって、この発明の実施の形態による通信装置は、パケットの送信先である複数の端末装置に対応して設けられ、各々が対応する端末装置宛てのパケットを格納する複数のキューと、1回のチャネルアクセスにおいて、複数のキューの各々から1個のパケットを取り出すとともに、複数の端末装置の個数分のパケットを連続して送信する送信手段とを備えるものであればよい。このような構成を通信装置が備えていれば、通信装置から複数の端末装置の各々への通信の機会が安定して確保され、通信の非対称性を安定して抑制できるからである。
【0089】
なお、この発明の実施の形態においては、アクセスポイント10は、「通信装置」を構成する。
【0090】
また、この発明の実施の形態においては、上述した方法によって、パケットを送信するアクセスポイント10の送受信手段112は、「送信手段」を構成する。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明は、通信の非対称性を安定して抑制できる通信装置に適用される。また、この発明は、通信の非対称性を安定して抑制できる通信装置を備えた無線ネットワークシステムに適用される。
【符号の説明】
【0093】
1〜5 端末装置、10 アクセスポイント、40 ネットワーク、100 無線ネットワークシステム、101,111 アンテナ、102,112 送受信手段、103,113〜117 キュー、104,120 通信手段、105 アプリケーションモジュール、118 測定手段、119 演算手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、複数の端末装置と双方向の無線通信を行なう通信装置であって、
前記複数の端末装置に対応して設けられ、各々が対応する端末装置宛てのパケットを格納する複数のキューと、
1回のチャネルアクセスにおいて、前記複数のキューの各々から1個のパケットを取り出すとともに、前記複数の端末装置の個数分のパケットを連続して送信する送信手段とを備える通信装置。
【請求項2】
前記複数のキューの個数に基づいて、前記1回のチャネルアクセスにおいて前記送信手段がパケットを送信できる送信可能時間を演算する演算手段を更に備え、
前記送信手段は、前記送信可能時間の間、前記複数のキューの各々から前記1個のパケットを取り出し、その取り出した複数のパケットを連続して送信する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記複数のキューの各々の先頭に位置するパケットに基づいて、前記複数のキューに格納されたパケットのパケット長を測定する測定手段を更に備え、
前記演算手段は、前記測定手段によって測定されたパケット長と、該当パケットの宛先端末へのパケット送信に使用された送信レートとに基づいて1個のパケットの送信所要時間を演算し、その演算した送信所要時間に前記複数のパケットの個数を乗算して前記送信可能時間を演算する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信手段は、一定値からなる送信可能時間を保持しており、その保持している送信可能時間の間、前記複数のキューの各々から前記1個のパケットを取り出し、その取り出した複数のパケットを連続して送信する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
ネットワークに接続された通信装置と、
各々が前記通信装置と双方向の無線通信を行なう複数の端末装置とを備え、
前記通信装置は、
前記複数の端末装置に対応して設けられ、各々が対応する端末装置宛てのパケットを格納する複数のキューと、
1回のチャネルアクセスにおいて、前記複数のキューの各々から1個のパケットを取り出すとともに、前記複数の端末装置の個数分のパケットを連続して送信する送信手段とを含む、無線ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−49976(P2011−49976A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198384(P2009−198384)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】