説明

通信装置および通信方法

【課題】応答時間が規定されていない通信相手に対する通信効率を向上させる。
【解決手段】変調方式を適応的に切り替え、通信相手に要求可能な通信装置において、通信相手に要求した変調方式と通信相手から受信したデータの変調方式との一致比較を行う変調方式比較部126と、通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を応答時間として推定する応答時間推測部127とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信効率の向上を図る技術として、通信品質に応じて変調方式を適応的に切り替える技術(適応変調方式)が知られている。通信に最適な変調方式は、受信したフレームの通信品質(例えば、SINR(信号対雑音・干渉電力比)、EVM(エラーベクターマグニチュード))を測定し、エラー発生率の少ない最大変調効率の変調方式を通信相手に通知することにより決定する(例えば、特許文献1参照)。一般に、変調効率が高くなるほど、必要なS/Nは高くなり、例えば、FER(フレームエラーレート)1%のレベルを考えると、BPSKを通信するために必要なS/Nは10dB程度あればよいが、1シンボル当たりの情報量が1ビットしかないためスループットが遅くなる。逆に、64QAMなどでは1シンボル当たりの情報量が6ビットであるためスループットは高くなるが、26dB程度のS/Nが必要なため良好な通信品質が要求される。
【0003】
また、SDMA(空間分割多元接続)通信の安定化や強電界での多値化安定化(QAM系の外側シンボルを劣化させない)などの為に、送信電力を制御する技術が知られている。最適な送信電力は通信中に変化させる電力等を通信相手に通知または指示することにより決定する。
【特許文献1】特開2005−244858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変調方式や送信電力を制御する場合、制御コマンドの発行後、通信相手からの応答を待って、変調方式や送信電力を切り替えている。通信相手からの応答時間が予め規定されている場合は、規定された応答時間の経過後に切り替え動作を行えばよいが、応答時間が規定されていない場合、切り替えタイミングを誤るとエラーが発生し、再送処理が必要となり通信効率が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、変調方式を適応的に切り替え、通信相手に要求可能な通信装置において、通信相手に要求した変調方式と通信相手から受信したデータの変調方式との一致比較を行う手段と、通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を検出する手段とを備える。また、本発明は、通信相手に要求した変調方式と通信相手から受信したデータの変調方式との一致比較を行い、通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を通信相手の応答時間と推定する。
【0006】
上記構成によれば、通信相手に要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を通信相手の応答時間と推定することで、応答時間が規定されていない通信相手と通信する場合でも、推定した応答時間に基づいて変調方式や送信電力を適切なタイミングで切り替えることが可能となるため、再送処理を回避することができ、通信効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の通信装置の構成を示す図である。通信装置100は、増幅部110と、物理層部120と、上位層部130とを備える。増幅部110は、アンテナを介して受信した信号をLNA(ローノイズアンプ)で増幅し、無線周波数(RF)から中間周波数(IF)に変換した後、デジタル信号に変換し、さらにIQ信号に変換して物理層部120へ送る。
【0008】
物理層部120は、IQ信号のタイミング同期、周波数同期を行い復調し、通信品質指標(EVMあるいはSINR)を演算した後、復号する復調・復号部121と、受信した変調方式を記憶する記憶部122と、復号信号のフレームエラーを演算する演算部123と、通信品質指標に基づいて要求する変調方式を判定して上位層部130へ送出する判定部124と、要求する変調方式を記憶する記憶部125と、受信した変調方式と要求した変調方式と比較する比較部126と、比較結果に基づいて応答時間を推測する推測部127とを備える。さらに、通信品質指標に基づいて決定した変調方式又は上位層部130で決定した変調方式で変調した送信データの物理層フレームを形成するフレーム形成部128と、形成したフレームのデータを符号化し、変調する変調・符号部129とを備える。
【0009】
上位層部130は、物理層部120からのデータを受信する受信部131と、通信相手から送信データを取得する送信部132と、送信データの変調方式を決定する変調方式決定部133とを備える。決定した変調方式を示す情報と送信データとは物理層部120へ供給される。
【0010】
図2は物理層部120の物理層フレーム形成部128で形成されるデータのフレーム構成を示す図である。フレームは固定変調部と適応変調部とに分けられ、上位層部130から送信された送信データ及び通信相手へ変調方式を要求するための変調方式要求は適応変調部に挿入される。固定変調部は例えばπ/2DBPSKのように通信品質の良い変調方式を使用し、同期用のトレーニングシンボルや適応変調部に挿入された変調方式を示す情報の伝達を行う。
【0011】
図3から図5は物理層部120の応答時間推測部127で実行する応答時間推測動作の流れを示す図である。図3において、ステップS101で受信した変調方式と要求した変調方式とを比較する。受信した変調方式と要求した変調方式とが一致する場合(S101:Yes)、変調方式を要求してから、変調要求が反映されたデータ受信するまでの時間を推測応答時間と仮定し(S102)、S101からS102を所定回数繰り返す。受信した変調方式と要求した変調方式とが一致しない場合(S101:No)、推測不可と仮定し、S101からS102までを所定回数繰り返す。
【0012】
図4は推測時期を示しており、まず、要求した変調方式が前フレームから変化しているかを調べ(S201)、変化している場合は(S202:Yes)、受信した変調方式と要求した変調方式とを比較し(S203)、受信した変調方式と要求した変調方式とが一致する場合に(S203:Yes)、応答時間を推測する。図5はさらに前フレームで要求した変調方式と前フレームで受信した変調方式とを比較する処理(S204)を加えている。
【0013】
図6は推測した応答時間を基準にした変調制御の流れを示している。変調要求を発行してから推測応答時間が経過している場合(S301:Yes)、連続エラーが発生しているかを確認し(S302)、連続エラーが発生している場合は(S302:Yes)、前フレームで送信して変調方式よりも低い変調方式を選択する(S303)。
【0014】
変調要求を発行してから推測応答時間が経過した段階で、連続エラーの発生を確認し、以降の変調方式を設定することで、適切なタイミングで変調方式を切り替えることができる。また、送信電力制御においても、推測応答時間を基準に適切なタイミングで送信電力を切り替えることができる。
【0015】
上記実施形態によれば、通信相手に要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を通信相手の応答時間と推定することで、応答時間が規定されていない通信相手と通信する場合でも、推定した応答時間に基づいて変調方式や送信電力を適切なタイミングで切り替えることが可能となるため、再送処理を回避することができ、通信効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の通信装置の構成を示す図
【図2】通信装置が形成するフレームの構成を示す図
【図3】応答時間推測動作の流れを示す図
【図4】応答時間推測動作の流れを示す図
【図5】応答時間推測動作の流れを示す図
【図6】変調制御の流れを示す図
【符号の説明】
【0017】
100 通信装置
110 増幅部
120 物理層部
121 復調復号部
122 記憶部
123 演算部
124 判定部
125 記憶部
126 比較部
127 推測部
128 フレーム形成部
129 変調符号部
130 上位層部
131 受信部
132 送信部
133 変調方式決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調方式を適応的に切り替え、通信相手に要求可能な通信装置において、
通信相手に要求した変調方式と通信相手から受信したデータの変調方式との一致比較を行う手段と、
通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を検出する手段とを備える通信装置。
【請求項2】
通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を基準に通信相手に対する変調方式の切り替え制御を行う手段を備える請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を基準に通信相手に対する送信電力の切り替え制御を行う手段を備える請求項1又は2記載の通信装置。
【請求項4】
通信相手に要求した変調方式と通信相手から受信したデータの変調方式との一致比較を行い、通信相手に変調方式を要求してから要求した変調方式のデータを受信するまでの時間を通信相手の応答時間と推定する通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−166867(P2008−166867A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350619(P2006−350619)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】