通信装置及び搬送装置
【課題】ICタグを有する物品が通信阻害要因を有している場合であっても、通信可能領域が安定した通信装置及び搬送装置を提供する
【解決手段】リーダライタ装置15が設けられたフォークリフト10において、リーダライタ装置15は、電波を発信してICタグ53と通信を行う送受信部16と、ICタグ53を有する梱包体50の重量を検出する重量センサ17と、重量センサ17の出力に応じて送受信部16が発信する電波の出力を変化させる制御部18とを備える構成とした。
【解決手段】リーダライタ装置15が設けられたフォークリフト10において、リーダライタ装置15は、電波を発信してICタグ53と通信を行う送受信部16と、ICタグ53を有する梱包体50の重量を検出する重量センサ17と、重量センサ17の出力に応じて送受信部16が発信する電波の出力を変化させる制御部18とを備える構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発信してICタグと通信を行う通信装置及びICタグを有する物品を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)とも称され、個体の識別が可能な情報を保持し、その情報をリーダライタ装置から発信される電波等によって非接触に読み取り又は書き込むことが可能なものである。
このようなICタグは、例えば運送、工場工程管理、流通等の各分野において、商品等の管理に有用である。例えば物流用のパレットやケース等の梱包材にICタグを取り付けることによって、これらが梱包する荷物の管理を行うようにしたものが知られており、この場合、リーダライタ装置は、例えばフォークリフトやベルトコンベア等の搬送装置に設けられる(特許文献1)。
【0003】
しかし、このパレットやケースに梱包された荷物が、例えば水分を含んでいる場合や、金属材料によって形成されている場合、これらの水分や金属材料は、電波を吸収、反射することによって通信を阻害する要因となることがあり、ICタグとリーダライタ装置との通信可能領域を狭くする。このようにICタグとリーダライタ装置との通信可能領域は、荷物の有無によって不安定になる。これに対し、リーダライタ装置の出力を予め高くしておくことも考えられるが、この場合、読取対象となるICタグ以外の他のICタグとも通信が成立するおそれある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−321899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ICタグを有する物品が通信阻害要因を有している場合であっても、通信可能領域が安定した通信装置及び搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
請求項1の発明は、電波を発信してICタグと通信を行う送受信部を備えた通信装置において、前記ICタグを有する物品の前記通信を阻害する要因又はこれと相関する属性を検出する検出部と、前記検出部の出力に応じて前記送受信部が発信する電波の出力及び周波数の少なくとも一方を変化させる制御部とを備えることを特徴とする通信装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記検出部は、前記ICタグを有する物品の重量を検出する重量センサであることを特徴とする通信装置である。
請求項3の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記ICタグを有する物品は、前記ICタグが設けられる梱包体と、これに梱包される梱包対象物とを備え、前記検出部は、その測定範囲内における前記梱包対象物の有無を検出するエリアセンサであることを特徴とする通信装置である。
請求項4の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記検出部は、前記ICタグの近傍における金属材料の有無を検出する金属センサであることを特徴とする通信装置である。
請求項5の発明は、ICタグを有する物品を搬送する搬送装置において、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の通信装置を備えることを特徴とする搬送装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
本発明によれば、検出部が出力する通信阻害要因(例えば、金属材料の有無)又はこれと相関する物品の属性(例えば、物品の重量、大きさ)に応じて、送受信部が発信する電波の出力、周波数の少なくとも一方を変化させる制御部を設けたから、ICタグを有する物品の通信阻害要因又はこれに関連する属性に応じて電波を調整することによって、送受信部のICタグに対する通信可能領域を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ICタグを有する物品が通信阻害要因を有している場合であっても、通信可能領域が安定した通信装置及び搬送装置を提供するという目的を、ICタグを有する梱包体の重量を検出する重量センサと、この重量センサの出力に応じて送受信部が発信する電波の出力を変化させる制御部とをリーダライタ装置に設けることによって実現する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明を適用した通信装置を備えた搬送装置の実施例1について説明する。実施例1の搬送装置は、例えば荷物を積載したパレットを支持した状態で自走可能なフォークリフトである。
図1は、実施例1のフォークリフト10を示す側面図である。
フォークリフト10は、マスト11、フォーク12、バックレスト13、リーダライタ装置15を備えている。
【0011】
マスト11は、フォークリフト10の前部に車幅方向に離間して一対設けられ、略鉛直方向(上下方向)に延在した柱状に形成されている。
フォーク12は、後述するパレット51のフォーク孔に挿入してパレット51を支持する板状の部材であり、フォークリフト10の車体前部から前方に突き出して形成されている。これらのフォーク12は、マスト側の端部がそれぞれバックレスト13に接続されている。
バックレスト13は、一対のマスト11の間に配置された上下方向に伸縮可能な図示しない油圧シリンダに接続されている。フォーク12は、このシリンダを伸縮させることによって、マスト11に沿って上下方向に移動することができるようになっており、マスト11はフォーク12の上下方向への移動をガイドする役割を果たす。
【0012】
リーダライタ装置15は、後述するICタグ53と電波によって通信する通信装置であり、送受信部16、重量センサ17、制御部18を備えている。
送受信部16は、ICタグ53に向けて電波を発信する部分であり、バックレスト13における一対のフォーク12の間に設けられ、フォーク12をパレット51に挿入したときに、パレット51の側面部と対向するようになっている。
【0013】
重量センサ17は、シート状に形成され、フォーク12の上面部(パレット51の設置面)に設けられている。この重量センサ17は、図示しない歪み計を備えおり、フォーク12によって支持した梱包体50(荷物52)の重量を計測する検出部である。
制御部18は、前述の重量センサ17と隣接して設けられるとともにこれと電気的に接続され、重量センサ17からの出力に基づいて、パレット51上の荷物52の有無を検出し、送受信部が発信する電波の出力を変更させることができるようになっている。なお、制御部18は、パレット51の単体の重量Weを基準とし、重量センサ17がパレット51より重い荷重を検出した場合に、荷物52がパレット51上に積載されていると判断する。
【0014】
梱包体50は、パレット51、荷物52を備えている。
パレット51は、荷物52の輸送等に用いられる梱包体であり、例えば樹脂材料を用いて上方から見た平面形が正方形状であるボード状に形成され、側面側には、フォーク12が挿入されるフォーク孔が設けられている。
【0015】
このパレット51は、ICタグ53を備えている。ICタグ53は、パレット51に積載された荷物52の、例えば内容物、出荷先等に関する情報を保持しており、パレット51の側面部に図示しない両面テープによって貼り付けられている。
このICタグ53は、例えば、860MHz乃至960MHzのUHF帯の周波数帯域を用いたマイクロ波方式のものであって、その送受信用として、例えばダイポールアンテナを備えている。このICタグ53とリーダライタ装置15(送受信部16)とは、ICタグ53が有する上記荷物に関する情報を通信し、その通信可能距離は、パレット51に荷物52が載っていない場合には、例えば約1.5m程度となっている。
【0016】
荷物52は、パレット51の上面部に積載されることによってパレット梱包される梱包対象物であって、その内容は、例えば根菜類等であって、水分を含んでいる。
【0017】
次に、実施例1のフォークリフト10の機能について説明する。
フォークリフト10は、ICタグ53とリーダライタ装置15の送受信部16とを対向させてフォーク12をパレット孔に挿入した後に梱包体50を上昇させ、リーダライタ装置15によってICタグ53に保持された情報を読み取る。
【0018】
このとき、電波は、荷物52の水分によって吸収されるため、仮に重量センサ17及び制御部18を備えないリーダライタ装置が、その送受信部から電波を発信した場合には、リーダライタ装置とICタグ53との通信可能距離は、荷物52がない状況下に比べて、例えば0.5m程度短くなって、例えば1mとなる。なお、荷物52が、例えば樹脂製の容器に入った飲料等である場合も同様に電波が吸収され、リーダライタ装置15とICタグ53との通信距離が短くなる。
ここで、リーダライタ装置15は、重量センサ17が荷物52の重量を検出し、制御部18は、その検出された重量から荷物52の有無を判定し、これに応じて送受信部16から発信する電波の出力を増大させ、その通信可能領域を荷物52の無い場合と同様に、例えば1.5mに調節する。
【0019】
次に、フローチャートを用いて実施例1のフォークリフト10による通信距離調節動作を説明する。
図2は、実施例1のフォークリフト10による通信距離調節動作を示すフローチャートである。
リーダライタ装置15の制御部18は、フォークリフト10が梱包体50をフォーク12によって支持する際に、このフォーク12の駆動を検出し(ステップS1)、重量センサ17によって梱包体50の重量Wfを測定する(ステップS2)。
次いで、制御部18は、重量センサ17からの出力に応じて、測定した梱包体50の重量Wfと、基準となる重量We(パレット単体の重量)とを比較する(ステップS3)。
ここで、測定重量Wfが基準重量Weより重い場合には、送受信部16に対して電波の出力を増大させる信号を発する(ステップS4)。これに対し、重量の増加がない場合や、測定重量Wfが基準重量Weより軽い場合は、制御部18は電波の調節を行わない。
これにより、送受信部16は、荷物52が無い場合と同様な通信可能領域が得られるような、出力が増大された電波をICタグ53に向けて発信する(ステップS5)。
【0020】
以上のように、実施例1によれば、重量センサ17が測定した荷物52の重量に応じて、送受信部がICタグ53に向けて発信する電波の出力を調整する制御部18を設けたから、パレット51上の荷物52の有無によらずリーダライタ装置15の通信可能領域を安定させることができる。
【実施例2】
【0021】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例2について説明する。なお、以下説明する各実施例においては、上述した実施例1と同様の部分には、同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、実施例2の搬送装置を示す側面図である。実施例2の搬送装置も、実施例1と同様にパレットの搬送に使用するフォークリフトである。
【0022】
実施例2のフォークリフト20のリーダライタ装置25は、実施例1の重量センサ17の代わりにエリアセンサ27を備えている。このエリアセンサ27は、所定の検出範囲に向けて、例えばレーザ光を発射し、この反射光の有無を検出することによって、この検出範囲内に何らかの有体物が存在するか否かを検出する検出部である。
このエリアセンサ27は、フォーク12のバックレスト13であって、送受信部26より上方に設けられており、前方にむけてレーザ光を発射することによって、パレット51の上面部に荷物52が積載されているか否かを検出する。
実施例2においても、リーダライタ装置25の制御部28は、このエリアセンサ27からの出力に応じて、送受信部26から発信される電波の出力を変化させる。これによって、パレット51上の荷物52の有無に関わらず、リーダライタ装置25の通信可能領域が安定する。
【実施例3】
【0023】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例3について説明する。実施例3の搬送装置は、例えば工場の出荷ライン等に設けられるベルトコンベアである。
図4は、実施例3のベルトコンベアを示す側面図である。
実施例3のベルトコンベア30は、ループ状に形成された帯状のベルト31と、この内径側に配置された円筒状の回転ローラ32とを備え、この回転ローラ32に接続された図示しないモータを回転させることによってベルト31を回転させ、ベルト31上に積載された梱包体60を所定の方向(図4における矢印Fの方向)に向けて搬送するものである。ベルトコンベア30は、複数設けられ、これらのベルト31の回転方向が一致しかつあるベルトコンベア30の下流側の端部とこれに隣接するベルトコンベア30の上流側の端部とが対向するように配置される。
このベルトコンベア30によって搬送される梱包体60は、箱状に形成されたケース61と、このケースに収容される荷物62であり、ケース61の側面には、実施例1と同様なICタグ63が設けられている。
【0024】
ベルトコンベア30はリーダライタ装置35(通信装置)を備えている。リーダライタ装置35は、送受信部36、重量センサ(検出部)37、制御部38を備えている。
送受信部36は、ベルトコンベア30を跨いで設けられた図示しないゲートに設けられ、ベルトコンベア30上の梱包体60と干渉しないようになっている。
重量センサ37は、送受信部36より上流側のベルトコンベア30aに設けられている。この重量センサ37は、ベルトコンベア30において上面側となるベルトの内面と対向して設けられ、図示しないロードセルによってベルトコンベア30上を通過する梱包体60の重量を測定する。
【0025】
制御部38は、送受信部36に隣接して設けられ、ケース61の単体の重量を基準とし、重量センサ37がケース61より重い荷重を測定した場合に、荷物62がケース61内に収容されていると判断する。
この実施例3のベルトコンベア30においても、実施例1のフォークリフト10と同様に、制御部38が荷物62の有無に応じて送受信部36から発信される電波の出力を変化させることによって、ベルトコンベア30上の荷物の有無によらず、リーダライタ装置35(送受信部36)の通信可能領域を安定させる。
また、検出部を重量センサ37としたから、本実施例の梱包体60のように荷物62がケース61内に収容され、梱包体60を外側から見ただけでは荷物62の有無の判断がつかない場合であっても、荷物62の有無を検出することができる。
【実施例4】
【0026】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例4について説明する。実施例4の搬送装置も、ベルトコンベアである。
図5は、実施例4のベルトコンベアを示す側面図である。
実施例4のベルトコンベア40のリーダライタ装置45は、ベルトコンベアの上方であって、搬送中の梱包体70と干渉しない位置に配置され、実施例2のフォークリフト20と同様に送受信部46、エリアセンサ47(検出部)、制御部48を備えている。
このベルトコンベア40によって搬送される梱包体70は、ボード状に形成された樹脂製のパレット71と、このパレット71の上面部に積載された荷物72であり、ICタグ73は、パレット71の側面部に設けられている。
【0027】
実施例4のリーダライタ装置45も、実施例2と同様に、エリアセンサ47が梱包体70の荷物72の有無を検出し、荷物72の存在が検出されると、制御部48は、送受信部46から発信される電波の出力を変化させる。これによって、パレット71上の荷物72の有無によらず、リーダライタ装置45との通信可能領域が安定する。
【0028】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例において、検出部は、重量センサ、エリアセンサであったが、これに限らず、例えば金属センサであってもよく、この場合、金属センサはICタグの近傍の金属材料の有無を検出するようにしてもよい。
(2)各実施例において、制御部は、電波の出力を変化させて、リーダライタ装置の通信可能領域を安定させるようになっていたが、これに限らず、電波の周波数を変化させてもよい。この場合、例えば、パレット、ケースに、受信周波数が、例えば13.56MHz帯(電磁誘導方式)、UHF帯(マイクロ波方式)である2種類のICタグを設けるとともに、送受信部をこれらに対応した2種類の周波数の電波を発信できるようにしてもよい。また、ICタグを2種類設ける代わりに、複合アンテナを備え、上記の両周波数を含む複数の周波数に対応可能な、いわゆるマルチバンド対応のICタグを一つ設けてもよい。この場合、UHF帯の電波は水分に吸収されやすいので、荷物が、例えば水分を含むものや液体の場合には、13.56MHz帯の周波数を選択するようにしてもよい。
(3)実施例は、エリアセンサを搬送装置に一箇所設ける構成であったが、これに限らず、エリアセンサを複数設け、荷物のサイズを詳細に検出可能とし、これに対応してリーダライタ装置が発信する電波の出力の増大量を制御してもよい。
(4)実施例は、重量センサによって荷物の有無を検出したが、これに限らず、重量センサは、重量を詳細に測定可能とし、これに対応してリーダライタ装置が発信する電波の出力の増大量を制御してもよい。
(5)実施例のフォークリフト、ベルトコンベアは、いずれも検出部として重量センサのみ、エリアセンサのみを備えていたが、これに限らず、これらの検出手段の両方を備えていてもよい。
(6)実施例の搬送装置は、フォークリフト、ベルトコンベアであったが、これに限らず、例えばシッピングカートのような小型の手押し車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1のフォークリフトを示す側面図である。
【図2】実施例1のフォークリフトによる通信距離調節動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2のフォークリフトを示す側面図である。
【図4】実施例3のベルトコンベアを示す側面図である。
【図5】実施例4のベルトコンベアを示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 フォークリフト
15 リーダライタ装置
16 送受信部
17 重量センサ
18 制御部
50 梱包体
51 パレット
52 荷物
53 ICタグ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発信してICタグと通信を行う通信装置及びICタグを有する物品を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)とも称され、個体の識別が可能な情報を保持し、その情報をリーダライタ装置から発信される電波等によって非接触に読み取り又は書き込むことが可能なものである。
このようなICタグは、例えば運送、工場工程管理、流通等の各分野において、商品等の管理に有用である。例えば物流用のパレットやケース等の梱包材にICタグを取り付けることによって、これらが梱包する荷物の管理を行うようにしたものが知られており、この場合、リーダライタ装置は、例えばフォークリフトやベルトコンベア等の搬送装置に設けられる(特許文献1)。
【0003】
しかし、このパレットやケースに梱包された荷物が、例えば水分を含んでいる場合や、金属材料によって形成されている場合、これらの水分や金属材料は、電波を吸収、反射することによって通信を阻害する要因となることがあり、ICタグとリーダライタ装置との通信可能領域を狭くする。このようにICタグとリーダライタ装置との通信可能領域は、荷物の有無によって不安定になる。これに対し、リーダライタ装置の出力を予め高くしておくことも考えられるが、この場合、読取対象となるICタグ以外の他のICタグとも通信が成立するおそれある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−321899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ICタグを有する物品が通信阻害要因を有している場合であっても、通信可能領域が安定した通信装置及び搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
請求項1の発明は、電波を発信してICタグと通信を行う送受信部を備えた通信装置において、前記ICタグを有する物品の前記通信を阻害する要因又はこれと相関する属性を検出する検出部と、前記検出部の出力に応じて前記送受信部が発信する電波の出力及び周波数の少なくとも一方を変化させる制御部とを備えることを特徴とする通信装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記検出部は、前記ICタグを有する物品の重量を検出する重量センサであることを特徴とする通信装置である。
請求項3の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記ICタグを有する物品は、前記ICタグが設けられる梱包体と、これに梱包される梱包対象物とを備え、前記検出部は、その測定範囲内における前記梱包対象物の有無を検出するエリアセンサであることを特徴とする通信装置である。
請求項4の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記検出部は、前記ICタグの近傍における金属材料の有無を検出する金属センサであることを特徴とする通信装置である。
請求項5の発明は、ICタグを有する物品を搬送する搬送装置において、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の通信装置を備えることを特徴とする搬送装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
本発明によれば、検出部が出力する通信阻害要因(例えば、金属材料の有無)又はこれと相関する物品の属性(例えば、物品の重量、大きさ)に応じて、送受信部が発信する電波の出力、周波数の少なくとも一方を変化させる制御部を設けたから、ICタグを有する物品の通信阻害要因又はこれに関連する属性に応じて電波を調整することによって、送受信部のICタグに対する通信可能領域を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ICタグを有する物品が通信阻害要因を有している場合であっても、通信可能領域が安定した通信装置及び搬送装置を提供するという目的を、ICタグを有する梱包体の重量を検出する重量センサと、この重量センサの出力に応じて送受信部が発信する電波の出力を変化させる制御部とをリーダライタ装置に設けることによって実現する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明を適用した通信装置を備えた搬送装置の実施例1について説明する。実施例1の搬送装置は、例えば荷物を積載したパレットを支持した状態で自走可能なフォークリフトである。
図1は、実施例1のフォークリフト10を示す側面図である。
フォークリフト10は、マスト11、フォーク12、バックレスト13、リーダライタ装置15を備えている。
【0011】
マスト11は、フォークリフト10の前部に車幅方向に離間して一対設けられ、略鉛直方向(上下方向)に延在した柱状に形成されている。
フォーク12は、後述するパレット51のフォーク孔に挿入してパレット51を支持する板状の部材であり、フォークリフト10の車体前部から前方に突き出して形成されている。これらのフォーク12は、マスト側の端部がそれぞれバックレスト13に接続されている。
バックレスト13は、一対のマスト11の間に配置された上下方向に伸縮可能な図示しない油圧シリンダに接続されている。フォーク12は、このシリンダを伸縮させることによって、マスト11に沿って上下方向に移動することができるようになっており、マスト11はフォーク12の上下方向への移動をガイドする役割を果たす。
【0012】
リーダライタ装置15は、後述するICタグ53と電波によって通信する通信装置であり、送受信部16、重量センサ17、制御部18を備えている。
送受信部16は、ICタグ53に向けて電波を発信する部分であり、バックレスト13における一対のフォーク12の間に設けられ、フォーク12をパレット51に挿入したときに、パレット51の側面部と対向するようになっている。
【0013】
重量センサ17は、シート状に形成され、フォーク12の上面部(パレット51の設置面)に設けられている。この重量センサ17は、図示しない歪み計を備えおり、フォーク12によって支持した梱包体50(荷物52)の重量を計測する検出部である。
制御部18は、前述の重量センサ17と隣接して設けられるとともにこれと電気的に接続され、重量センサ17からの出力に基づいて、パレット51上の荷物52の有無を検出し、送受信部が発信する電波の出力を変更させることができるようになっている。なお、制御部18は、パレット51の単体の重量Weを基準とし、重量センサ17がパレット51より重い荷重を検出した場合に、荷物52がパレット51上に積載されていると判断する。
【0014】
梱包体50は、パレット51、荷物52を備えている。
パレット51は、荷物52の輸送等に用いられる梱包体であり、例えば樹脂材料を用いて上方から見た平面形が正方形状であるボード状に形成され、側面側には、フォーク12が挿入されるフォーク孔が設けられている。
【0015】
このパレット51は、ICタグ53を備えている。ICタグ53は、パレット51に積載された荷物52の、例えば内容物、出荷先等に関する情報を保持しており、パレット51の側面部に図示しない両面テープによって貼り付けられている。
このICタグ53は、例えば、860MHz乃至960MHzのUHF帯の周波数帯域を用いたマイクロ波方式のものであって、その送受信用として、例えばダイポールアンテナを備えている。このICタグ53とリーダライタ装置15(送受信部16)とは、ICタグ53が有する上記荷物に関する情報を通信し、その通信可能距離は、パレット51に荷物52が載っていない場合には、例えば約1.5m程度となっている。
【0016】
荷物52は、パレット51の上面部に積載されることによってパレット梱包される梱包対象物であって、その内容は、例えば根菜類等であって、水分を含んでいる。
【0017】
次に、実施例1のフォークリフト10の機能について説明する。
フォークリフト10は、ICタグ53とリーダライタ装置15の送受信部16とを対向させてフォーク12をパレット孔に挿入した後に梱包体50を上昇させ、リーダライタ装置15によってICタグ53に保持された情報を読み取る。
【0018】
このとき、電波は、荷物52の水分によって吸収されるため、仮に重量センサ17及び制御部18を備えないリーダライタ装置が、その送受信部から電波を発信した場合には、リーダライタ装置とICタグ53との通信可能距離は、荷物52がない状況下に比べて、例えば0.5m程度短くなって、例えば1mとなる。なお、荷物52が、例えば樹脂製の容器に入った飲料等である場合も同様に電波が吸収され、リーダライタ装置15とICタグ53との通信距離が短くなる。
ここで、リーダライタ装置15は、重量センサ17が荷物52の重量を検出し、制御部18は、その検出された重量から荷物52の有無を判定し、これに応じて送受信部16から発信する電波の出力を増大させ、その通信可能領域を荷物52の無い場合と同様に、例えば1.5mに調節する。
【0019】
次に、フローチャートを用いて実施例1のフォークリフト10による通信距離調節動作を説明する。
図2は、実施例1のフォークリフト10による通信距離調節動作を示すフローチャートである。
リーダライタ装置15の制御部18は、フォークリフト10が梱包体50をフォーク12によって支持する際に、このフォーク12の駆動を検出し(ステップS1)、重量センサ17によって梱包体50の重量Wfを測定する(ステップS2)。
次いで、制御部18は、重量センサ17からの出力に応じて、測定した梱包体50の重量Wfと、基準となる重量We(パレット単体の重量)とを比較する(ステップS3)。
ここで、測定重量Wfが基準重量Weより重い場合には、送受信部16に対して電波の出力を増大させる信号を発する(ステップS4)。これに対し、重量の増加がない場合や、測定重量Wfが基準重量Weより軽い場合は、制御部18は電波の調節を行わない。
これにより、送受信部16は、荷物52が無い場合と同様な通信可能領域が得られるような、出力が増大された電波をICタグ53に向けて発信する(ステップS5)。
【0020】
以上のように、実施例1によれば、重量センサ17が測定した荷物52の重量に応じて、送受信部がICタグ53に向けて発信する電波の出力を調整する制御部18を設けたから、パレット51上の荷物52の有無によらずリーダライタ装置15の通信可能領域を安定させることができる。
【実施例2】
【0021】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例2について説明する。なお、以下説明する各実施例においては、上述した実施例1と同様の部分には、同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、実施例2の搬送装置を示す側面図である。実施例2の搬送装置も、実施例1と同様にパレットの搬送に使用するフォークリフトである。
【0022】
実施例2のフォークリフト20のリーダライタ装置25は、実施例1の重量センサ17の代わりにエリアセンサ27を備えている。このエリアセンサ27は、所定の検出範囲に向けて、例えばレーザ光を発射し、この反射光の有無を検出することによって、この検出範囲内に何らかの有体物が存在するか否かを検出する検出部である。
このエリアセンサ27は、フォーク12のバックレスト13であって、送受信部26より上方に設けられており、前方にむけてレーザ光を発射することによって、パレット51の上面部に荷物52が積載されているか否かを検出する。
実施例2においても、リーダライタ装置25の制御部28は、このエリアセンサ27からの出力に応じて、送受信部26から発信される電波の出力を変化させる。これによって、パレット51上の荷物52の有無に関わらず、リーダライタ装置25の通信可能領域が安定する。
【実施例3】
【0023】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例3について説明する。実施例3の搬送装置は、例えば工場の出荷ライン等に設けられるベルトコンベアである。
図4は、実施例3のベルトコンベアを示す側面図である。
実施例3のベルトコンベア30は、ループ状に形成された帯状のベルト31と、この内径側に配置された円筒状の回転ローラ32とを備え、この回転ローラ32に接続された図示しないモータを回転させることによってベルト31を回転させ、ベルト31上に積載された梱包体60を所定の方向(図4における矢印Fの方向)に向けて搬送するものである。ベルトコンベア30は、複数設けられ、これらのベルト31の回転方向が一致しかつあるベルトコンベア30の下流側の端部とこれに隣接するベルトコンベア30の上流側の端部とが対向するように配置される。
このベルトコンベア30によって搬送される梱包体60は、箱状に形成されたケース61と、このケースに収容される荷物62であり、ケース61の側面には、実施例1と同様なICタグ63が設けられている。
【0024】
ベルトコンベア30はリーダライタ装置35(通信装置)を備えている。リーダライタ装置35は、送受信部36、重量センサ(検出部)37、制御部38を備えている。
送受信部36は、ベルトコンベア30を跨いで設けられた図示しないゲートに設けられ、ベルトコンベア30上の梱包体60と干渉しないようになっている。
重量センサ37は、送受信部36より上流側のベルトコンベア30aに設けられている。この重量センサ37は、ベルトコンベア30において上面側となるベルトの内面と対向して設けられ、図示しないロードセルによってベルトコンベア30上を通過する梱包体60の重量を測定する。
【0025】
制御部38は、送受信部36に隣接して設けられ、ケース61の単体の重量を基準とし、重量センサ37がケース61より重い荷重を測定した場合に、荷物62がケース61内に収容されていると判断する。
この実施例3のベルトコンベア30においても、実施例1のフォークリフト10と同様に、制御部38が荷物62の有無に応じて送受信部36から発信される電波の出力を変化させることによって、ベルトコンベア30上の荷物の有無によらず、リーダライタ装置35(送受信部36)の通信可能領域を安定させる。
また、検出部を重量センサ37としたから、本実施例の梱包体60のように荷物62がケース61内に収容され、梱包体60を外側から見ただけでは荷物62の有無の判断がつかない場合であっても、荷物62の有無を検出することができる。
【実施例4】
【0026】
次に本発明を適用した通信装置を備える搬送装置の実施例4について説明する。実施例4の搬送装置も、ベルトコンベアである。
図5は、実施例4のベルトコンベアを示す側面図である。
実施例4のベルトコンベア40のリーダライタ装置45は、ベルトコンベアの上方であって、搬送中の梱包体70と干渉しない位置に配置され、実施例2のフォークリフト20と同様に送受信部46、エリアセンサ47(検出部)、制御部48を備えている。
このベルトコンベア40によって搬送される梱包体70は、ボード状に形成された樹脂製のパレット71と、このパレット71の上面部に積載された荷物72であり、ICタグ73は、パレット71の側面部に設けられている。
【0027】
実施例4のリーダライタ装置45も、実施例2と同様に、エリアセンサ47が梱包体70の荷物72の有無を検出し、荷物72の存在が検出されると、制御部48は、送受信部46から発信される電波の出力を変化させる。これによって、パレット71上の荷物72の有無によらず、リーダライタ装置45との通信可能領域が安定する。
【0028】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例において、検出部は、重量センサ、エリアセンサであったが、これに限らず、例えば金属センサであってもよく、この場合、金属センサはICタグの近傍の金属材料の有無を検出するようにしてもよい。
(2)各実施例において、制御部は、電波の出力を変化させて、リーダライタ装置の通信可能領域を安定させるようになっていたが、これに限らず、電波の周波数を変化させてもよい。この場合、例えば、パレット、ケースに、受信周波数が、例えば13.56MHz帯(電磁誘導方式)、UHF帯(マイクロ波方式)である2種類のICタグを設けるとともに、送受信部をこれらに対応した2種類の周波数の電波を発信できるようにしてもよい。また、ICタグを2種類設ける代わりに、複合アンテナを備え、上記の両周波数を含む複数の周波数に対応可能な、いわゆるマルチバンド対応のICタグを一つ設けてもよい。この場合、UHF帯の電波は水分に吸収されやすいので、荷物が、例えば水分を含むものや液体の場合には、13.56MHz帯の周波数を選択するようにしてもよい。
(3)実施例は、エリアセンサを搬送装置に一箇所設ける構成であったが、これに限らず、エリアセンサを複数設け、荷物のサイズを詳細に検出可能とし、これに対応してリーダライタ装置が発信する電波の出力の増大量を制御してもよい。
(4)実施例は、重量センサによって荷物の有無を検出したが、これに限らず、重量センサは、重量を詳細に測定可能とし、これに対応してリーダライタ装置が発信する電波の出力の増大量を制御してもよい。
(5)実施例のフォークリフト、ベルトコンベアは、いずれも検出部として重量センサのみ、エリアセンサのみを備えていたが、これに限らず、これらの検出手段の両方を備えていてもよい。
(6)実施例の搬送装置は、フォークリフト、ベルトコンベアであったが、これに限らず、例えばシッピングカートのような小型の手押し車であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1のフォークリフトを示す側面図である。
【図2】実施例1のフォークリフトによる通信距離調節動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2のフォークリフトを示す側面図である。
【図4】実施例3のベルトコンベアを示す側面図である。
【図5】実施例4のベルトコンベアを示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 フォークリフト
15 リーダライタ装置
16 送受信部
17 重量センサ
18 制御部
50 梱包体
51 パレット
52 荷物
53 ICタグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発信してICタグと通信を行う送受信部を備えた通信装置において、
前記ICタグを有する物品の前記通信を阻害する要因又はこれと相関する属性を検出する検出部と、
前記検出部の出力に応じて前記送受信部が発信する電波の出力及び周波数の少なくとも一方を変化させる制御部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記検出部は、前記ICタグを有する物品の重量を検出する重量センサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置において、
前記ICタグを有する物品は、前記ICタグが設けられる梱包体と、これに梱包される梱包対象物とを備え、
前記検出部は、その測定範囲内における前記梱包対象物の有無を検出するエリアセンサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信装置において、
前記検出部は、前記ICタグの近傍における金属材料の有無を検出する金属センサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項5】
ICタグを有する物品を搬送する搬送装置において、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の通信装置を備えること
を特徴とする搬送装置。
【請求項1】
電波を発信してICタグと通信を行う送受信部を備えた通信装置において、
前記ICタグを有する物品の前記通信を阻害する要因又はこれと相関する属性を検出する検出部と、
前記検出部の出力に応じて前記送受信部が発信する電波の出力及び周波数の少なくとも一方を変化させる制御部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記検出部は、前記ICタグを有する物品の重量を検出する重量センサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置において、
前記ICタグを有する物品は、前記ICタグが設けられる梱包体と、これに梱包される梱包対象物とを備え、
前記検出部は、その測定範囲内における前記梱包対象物の有無を検出するエリアセンサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信装置において、
前記検出部は、前記ICタグの近傍における金属材料の有無を検出する金属センサであること
を特徴とする通信装置。
【請求項5】
ICタグを有する物品を搬送する搬送装置において、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の通信装置を備えること
を特徴とする搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−347713(P2006−347713A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176876(P2005−176876)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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