説明

通信装置及び系切替方法

【課題】アドレス選定が不都合を引き起こさずに、障害発生時の継続通信を保証できる通信装置の系切替方法を提供する。
【解決手段】 第1の障害監視通信部は、第1の装置の物理MACアドレスを用いて対向装置との障害監視通信を行い、第2の障害監視通信部は、第2の装置の物理MACアドレスを用いて対向装置との障害監視通信を行い、系切替指示部は、運用系装置に対応する第1又は第2の障害監視通信部が障害発生を検出したことを条件に、第1及び第2の装置に系の切替えを指示し、主信号通信アドレス設定部は、第1及び第2の装置のうち新運用系になった装置に対して、論理MACアドレスとIPアドレスとを主信号通信に用いるように設定する。これにより、新運用系になった装置は、論理MACアドレスとIPアドレスを用いて、対向装置経由で主信号通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置及び系切替方法に関し、例えば、セッションボーダーコントローラ(SBC)における事業者間のRTP/RTCPパケットの転送処理を制御する冗長構成のメディア制御装置に対する系の切替えに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、冗長構成を採用している従来装置は、障害等による装置の停止を避けるため、通常時に稼動している運用系と、運用系が停止しても継続して処理を行うための待機系で構成されている。
【0003】
特許文献1では、冗長構成を採用している装置におけるアドレスの設定方式を開示している。特許文献1の記載技術は、運用系装置固有のMACアドレス及びIPアドレスを冗長構成の両系装置に共通の通信用アドレスとして設定し、運用系装置の障害により系が切り替わっても外部との通信を継続するものである。運用系装置及び待機系装置は、通信用アドレスのほか、障害の有無を定期的に確認したり、障害から復旧したときに正しく動作するかを診断したりするための診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスを保持している。運用系装置がその障害により待機系装置に切替えられる場合に、今までの運用系装置(旧運用系装置)の通信用のMACアドレス及びIPアドレスを待機系装置(新運用系装置)に設定することで、外部に運用系装置の切替えを意識させずに通信を行うことが可能である。また、障害から復旧した装置(旧運用系装置)は、診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスを設定してネットワークに接続して正常性を確認することができ、この際、新運用系装置が通信で用いているMACアドレス及びIPアドレスと重複することなくネットワークに接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−135993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記載技術では、障害から復旧した装置の診断・点検作業を診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスにて行うが、冗長構成の両系装置が障害となった場合、両系装置とも、同じ診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスを設定することになり、この場合には、異なる装置が同じアドレスを用いて通信するため正しい診断や点検を行うことができない。また、新運用系装置が障害発生を監視する際に適用する診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスと、旧運用系装置が障害から復旧した際の確認作業で用いる診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスとが同じであっても、異なる装置が同じアドレスを用いて通信するため正しい診断・点検や確認を行うことができない。このような不都合を回避しようとすると、両系装置が、異なる診断・点検用のMACアドレス及びIPアドレスを複数保持しておき、使い分ける必要がある。しかし、通信頻度が極めて低い診断・点検作業や復旧確認のために、枯渇問題も言及されているIPアドレスを複数保持しておくことは問題があり、また、本来、装置毎に割り当てられるMACアドレスを複数保持することは実際上できない。
【0006】
また、冗長構成を採用している装置の外部装置も冗長構成を採用している場合がある。このような外部装置も冗長構成を採用している場合に、特許文献1の記載技術を適用したときには、運用系が切り替わっても通信が可能となるまでに時間がかかってしまうという課題が生じる。冗長構成を採用している装置内では、運用系装置固有のMACアドレスとIPアドレスを共通の通信用アドレスとしているため、外部装置も、冗長構成を採用している装置に関し、上述の共通の通信用アドレスを保持する。従って、冗長構成を採用している装置の系が切り替わった場合、当該装置内では新運用系装置に共通の通信用アドレスを設定するが、外部装置は情報の書き換えが行われない限り、共通の通信用アドレスは旧運用系装置のアドレスと記憶した状態を継続する。すなわち、外部装置の情報が更新されなければ、新運用系装置は通信を行うことができない。仮に、診断・点検用のアドレスを利用した通信によって外部装置の情報を書き換えて新運用系装置は通信を行うことができるようになったとしても、その時点は、障害発生時点からかなりの時間が経過した時点である。
【0007】
そのため、障害監視や復旧確認などに用いるアドレスの選定が不都合を引き起こすことがない、障害発生時の継続通信を保証できる通信装置及び系切替方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、第1及び第2の装置のうち、運用系の装置が対向装置と主信号通信を実行すると共に、上記第1及び第2の装置がそれぞれ間欠的に上記対向装置との障害監視通信を行う、冗長構成を採用している通信装置において、(1)上記第1の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行う上記第1の装置に設けられた第1の障害監視通信部と、(2)上記第2の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行う上記第2の装置に設けられた第2の障害監視通信部と、(3)上記第1及び第2の装置のうち、運用系の装置に対して、上記第1及び第2の装置の物理MACアドレスとは異なる論理MACアドレスとIPアドレスとを、主信号通信に用いるように設定する主信号通信アドレス設定部と、(4)上記第1及び第2の障害監視通信部のうち、その時点の運用系装置に対応する障害監視通信部が障害発生を検出したことを条件に、上記第1及び第2の装置に系の切替えを指示する系切替指示部とを有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、第1及び第2の装置のうち、運用系の装置に障害が発生したときに上記第1及び第2の装置の系を切り替える系切替方法において、(1)上記第1の装置に設けられた第1の障害監視通信部は、上記第1の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行い、(2)上記第2の装置に設けられた第2の障害監視通信部は、上記第2の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行い、(3)系切替指示部は、上記第1及び第2の障害監視通信部のうち、その時点の運用系装置に対応する障害監視通信部が障害発生を検出したことを条件に、上記第1及び第2の装置に系の切替えを指示し、(4)主信号通信アドレス設定部は、上記第1及び第2の装置のうち、新運用系になった装置に対して、上記第1及び第2の装置の物理MACアドレスとは異なる論理MACアドレスとIPアドレスとを、主信号通信に用いるように設定し、(5)上記第1及び第2の装置のうち新運用系になった装置は、上記論理MACアドレスと上記IPアドレスを用いて、上記対向装置経由で主信号通信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アドレス選定が不都合を引き起こさずに、障害発生時の継続通信を保証できる通信装置及び系切替方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るセッションボーダーコントローラの内部の特徴構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における運用系のメディア制御装置が切り替えられる前後の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】図1に示す冗長構成の状態から系の切替えを実行した後の状態を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態に係るセッションボーダーコントローラの内部特徴構成を、対向装置との接続構成と共に示すブロック図である。
【図5】図4に示す冗長構成の状態から系の切替えを実行した後の状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による通信装置及び系切替方法を、セッションボーダーコントローラに適用した第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係るセッションボーダーコントローラの内部の特徴構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、第1の実施形態に係るセッションボーダーコントローラ1は、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2と、運用系装置管理部3Aと、待機系装置管理部3Sとを備えている。セッションボーダーコントローラ1は、対向装置4と接続されている。
【0015】
セッションボーダーコントローラ1は、VoIPサービスの境界線の制御を行うものであって、音声や画像などのメディアの転送制御機能だけでなく、DoS攻撃対策などのセキュリティ機能、SIP信号の振り分け機能など、多種の機能の実行構成を備えているが、図1では、そのうちの第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2と、運用系装置管理部3Aと、待機系装置管理部3Sとを示している。
【0016】
第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2は冗長系を構成しており、図1では、第1のメディア制御装置2−1が運用系で、第2のメディア制御装置2−2が待機系の状態を示している。各メディア制御装置2−1、2−2はそれぞれ、自系が運用系のときに、メディアが挿入されているパケット(例えば、RTP/RTCPパケット)の事業者間などでの転送処理(主信号通信)を制御して実行させるものである。第1の実施形態の場合、各メディア制御装置2−1、2−2はそれぞれ、運用系装置管理部3Aによる指示を受けて、障害発生の監視や、障害復旧の確認のための通信も実行するものである。
【0017】
待機系となっている第2のメディア制御装置2−2は、定期的に、運用系となっている第1のメディア制御装置2−1から所定のデータを取込むデータ同期を実行するものである。待機系となっている第2のメディア制御装置2−2は、対向装置4との間の障害が復旧した際には、その旨を運用系装置管理部3Aに通知するものである。
【0018】
2つの装置管理部も冗長系を構成しており、図1では、現時点で運用系となっている装置管理部を「運用系装置管理部」と記載し、現時点で待機系となっている装置管理部を「待機系装置管理部」と記載している。なお、2つのメディア制御装置2−1及び2−2の系切替えと、2つの装置管理部3A及び3Bの系切替えとは独立して実行されるものである。
【0019】
運用系装置管理部3Aは、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2に対し、冗長系としての切替や制御を行うものである。また、運用系装置管理部3Aは、例えば、運用系となっている第1のメディア制御装置2−1や、待機系となっている第2のメディア制御装置2−2に対して障害検出のための通信を定期的に起動したりする。さらに、運用系装置管理部3Aは、旧運用系(現待機系)の第2のメディア制御装置2−2と対向装置4との間の障害が復旧した際には、その第2のメディア制御装置2−2からその旨が通知され、その第2のメディア制御装置2−2による復旧確認の通信を起動したりする。
【0020】
待機系装置管理部3Sは、定期的に、運用系装置管理部3Aから所定のデータを取込むデータ同期を実行するものである。待機系装置管理部3Sは、自己を待機系に切り替えた際の障害が復旧した際には、その旨を運用系装置管理部3Aに通知するものである。
【0021】
対向装置4は、例えば、回線やパケットの交換機能を持ったスイッチ(SW)である。この第1の実施形態の場合、対向装置4は、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2と同一ネットワークに属する装置であり、第1又は第2のメディア制御装置2−1又は2−2と対向装置4とは、IPアドレスを含まずMACアドレスだけを送信元及び宛先に含むネットワーク内パケット(例えば、Ethernet(登録商標)パケット)を授受することもできる。
【0022】
この第1の実施形態の場合、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2のいずれが運用系であっても、対向装置4を経由して、宛先端末側と主信号の通信に係るパケットを授受する際には、IPアドレスIP0及び論理MACアドレスMAC0を用いるように定められている。例えば、運用系のメディア制御装置2−1又は2−2は、物理MACアドレスMAC1又はMAC2を用いることで対向装置4との導通を確認し、論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0を用いることによって対向装置4経由の主信号通信を行う。一方、第1のメディア制御装置2−1は、対向装置4との間で、冗長構成の切替や制御に係るパケットを授受する際には、物理MACアドレスMAC1を用いるように定められており、第2のメディア制御装置2−2は、対向装置4との間で、冗長構成の切替や制御に係るパケットを授受する際には、物理MACアドレスMAC2を用いるように定められている。
【0023】
なお、図1では省略しているが、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2はそれぞれ、対向装置4とネットワーク内パケットを授受できるように、対向装置4についての物理MACアドレスを保持している。
【0024】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態のセッションボーダーコントローラ1における冗長構成のメディア制御装置の動作を説明する。以下では、図1に示す第1のメディア制御装置2−1が運用系で第2のメディア制御装置2−2が待機系にあるときから動作を説明する。
【0025】
図2は、運用系のメディア制御装置が切り替えられる前後の動作の流れを示すフローチャートであり、主信号の通信動作は、図2では省略している。なお、運用系となっている第1のメディア制御装置2−1は、対向装置4との間で、論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0を用いて主信号通信を適宜行っている。
【0026】
運用系となっている第1のメディア制御装置2−1は、運用系装置管理部3Aの制御下で、定期的に障害発生を監視する(ステップ100)。障害監視方法は、例えば、物理MACアドレスMAC1を送信元アドレスとして含む、対向装置4に対してメッセージを要求するパケットを対向装置4に送出し、その要求パケットに応じたメッセージを含むパケットが、上述した送出時点から所定時間以内に返信されるか否かによって、正常か障害発生かを判断する方法である。
【0027】
なお、待機系となっている第2のメディア制御装置2−2も、運用系装置管理部3Aの制御下で、物理MACアドレスMAC2を利用して、定期的に障害発生を監視する。
【0028】
運用系の第1のメディア制御装置2−1は、対向装置4からメッセージ要求に対する応答パケットが返信(到達)されない場合には、対向装置4に、又は、対向装置4との通信回線などに障害が発生したと判断し、運用系装置管理部3Aに障害が発生したことを通知する(ステップ101)。
【0029】
このとき、運用系装置管理部3Aは、待機系となっている第2のメディア制御装置2−2の現在の状態を取込んで判別する(ステップ102)。待機系となっている第2のメディア制御装置2−2についても障害が発生していると、運用系装置管理部3Aは、当該セッションボーダーコントローラ1に設けられているディスプレイやランプやブザーなどによって両系障害を報知したり、図示しないセンタ装置に対して両系障害を通知したりする(ステップ103)。
【0030】
これに対して、待機系の第2のメディア制御装置2−2に障害が発生していないと、運用系装置管理部3Aは、運用系及び待機系間の系の切替えを実行する(ステップ104)。運用系装置管理部3Aは、系切替え時には以下のような処理を行う。
【0031】
運用系装置管理部3Aは、例えば、今まで待機系であった第2のメディア制御装置2−2と対向装置4との導通を物理MACアドレスMAC2を用いて確認した後、今まで運用系であった第1のメディア制御装置2−1に対し、主信号通信で利用する論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0の設定を解除すると共に、今まで待機系であった第2のメディア制御装置2−2に対し、主信号通信で利用する論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0を設定し、第2のメディア制御装置2−2に運用系として主信号通信を実行させるようにする。また、運用系装置管理部3Aは、待機系装置管理部3Sに対して系を切り替えて、第2のメディア制御装置2−2が運用系、第1のメディア制御装置2−1が待機系になった旨を通知すると共に、当該セッションボーダーコントローラ1に設けられているディスプレイやランプやブザーなどによって系切替えを報知したり、図示しないセンタ装置に対して系切替えを通知したりする。
【0032】
図3は、以上のような系の切替えを実施した後の状態を示しており、第1のメディア制御装置2−1が待機系、第2のメディア制御装置2−2が運用系に切り替わり、主信号通信は第2のメディア制御装置2−2で行っている様子を示している。
【0033】
第1のメディア制御装置2−1についての障害発生の報知などに応じて、保守点検作業者は、対向装置4内部、若しくは、対向装置4と第1のメディア制御装置2−1との接続線などの障害箇所に対して復旧作業を実施し、復旧したときには、第1のメディア制御装置2−1について障害が復旧した旨が第1のメディア制御装置2−1から運用系装置管理部3Aに通知される(ステップ105)。このとき、運用系装置管理部3Aは、その時点で待機系となっている第1のメディア制御装置2−1に対して復旧確認の通信を起動し、第1のメディア制御装置2−1は、自己の物理MACアドレスMAC1を用いて、対向装置4との間で復旧確認の通信を実行する(ステップ106)。
【0034】
図2では省略しているが、系が切り替わったことにより運用系となった第2のメディア制御装置2−2も、待機系となり復旧確認が終了した第1のメディア制御装置2−1も、運用系装置管理部3Aの制御下で、保持している自己の物理MACアドレスMAC2、MAC1を用いて、対向装置4との間で障害監視のためのパケットの授受を実行する。
【0035】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、各メディア制御装置2−1、2−2はそれぞれ、自己の物理MACアドレスMAC1、MAC2を用いて、対向装置4との間で障害監視や復旧確認のためのパケット授受を行うと共に、両メディア制御装置2−1及び2−2に共通な論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0により、運用系のメディア制御装置2−1又は2−2が主信号通信を行うようにしたので、外部の対向装置4からはメディア制御装置の系切替えを意識することなく、しかも、系切替えを行った場合に切断が生じることなく主信号通信を行うことができる。
【0036】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による通信装置及び系切替方法を、セッションボーダーコントローラに適用した第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0037】
第1の実施形態では、冗長構成を採用しているメディア制御装置の対向装置が1つであったが、この第2の実施形態では、冗長構成を採用しているメディア制御装置に対する対向装置も冗長構成を採用しているものである。
【0038】
(B−2)第2の実施形態の構成
図4は、第2の実施形態に係るセッションボーダーコントローラの内部特徴構成を、対向装置との接続構成と共に示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。図4では、第1のメディア制御装置2−1が運用系で、第2のメディア制御装置2−2が待機系の状態を示している。
【0039】
図4において、第2の実施形態に係るセッションボーダーコントローラ1Xは、第1の実施形態と同様に、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2と、運用系装置管理部3Aと、待機系装置管理部3Sとを備えている。
【0040】
ここで、冗長構成を採用している第1及び第2の対向装置4−1及び4−2が配置されており、第1のメディア制御装置2−1は第1の対向装置4−1と接続され、第2のメディア制御装置2−2は第2の対向装置4−2と接続されている。この第2の実施形態では、第1のメディア制御装置2−1が運用系であれば第1の対向装置4−1が運用系、第2のメディア制御装置2−2が待機系であれば第2の対向装置4−2が待機系になり、第2のメディア制御装置2−2が運用系であれば第2の対向装置4−2が運用系、第1のメディア制御装置2−1が待機系であれば第1の対向装置4−1が待機系になるようになされている。第1のメディア制御装置2−1は、第1の対向装置4−1とネットワーク内パケットを授受するために、第1の対向装置4−1の物理MACアドレスMAC11を保持しており、同様に、第2のメディア制御装置2−2は、第2の対向装置4−2とネットワーク内パケットを授受するために、第2の対向装置4−2の物理MACアドレスMAC12を保持している。
【0041】
なお、第1及び第2の対向装置4−1及び4−2は互いに接続されており、運用系の切替え時に主信号通信を引き継ぐに必要なデータを定期的に授受できるようになっている。
【0042】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態のセッションボーダーコントローラ1Xにおける冗長構成のメディア制御装置の動作を簡単に説明する。以下では、図4に示す第1のメディア制御装置2−1が運用系で第2のメディア制御装置2−2が待機系にあるときから動作を説明する。
【0043】
運用系の第1のメディア制御装置2−1は、論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0を用いて、第1の対向装置4−1を経由して主信号通信を行う。
【0044】
運用系の第1のメディア制御装置2−1は、定期的に、自己の物理MACアドレスMAC1を用いたネットワーク内パケットによって、第1の対向装置4−1にメッセージの要求を行い、応答の有無で、第1の対向装置4−1に障害が発生しているか否かを判断する。同様に、待機系の第2のメディア制御装置2−2も、定期的に、自己の物理MACアドレスMAC2を用いたネットワーク内パケットによって、第2の対向装置4−2にメッセージの要求を行い、応答の有無で、第2の対向装置4−2に障害が発生しているか否かを判断する。
【0045】
第1の対向装置4−1からメッセージの応答がなかった場合、運用系の第1のメディア制御装置2−1は、第1の対向装置4−1側に障害が発生したと判断し、運用系装置管理部3−1に障害が発生したことを通知する。
【0046】
運用系装置管理部3Aは、障害発生の通知を受け、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2に系の切替えを指示し、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2は運用系及び待機系を切り替える。図5は、このような系の切替えが実行された後の状態を示している。新運用系になった第2のメディア制御装置2−2は、論理MACアドレスMAC0及びIPアドレスIP0を用いて第2の対向装置4−2を経由して主信号通信を行う。
【0047】
第1の実施形態と同様に、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2の系が切り替わっても物理MACアドレスMAC1、MAC2はそれぞれの装置に保持されており、対応する対向装置4−1、4−2の障害監視(障害から復旧した後の確認を含む)を継続して行う。
【0048】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、セッションボーダーコントローラ1Xの内部構成は第1の実施形態と同様であり、対向装置が2台でも、各メディア制御装置2−1、2−2が対応する対向装置4−1、4−2の障害監視を行い、それぞれの対向装置経由で主信号通信を行うようにしたので、第1及び第2のメディア制御装置2−1及び2−2の系が切り替わっても切断されることなく主信号通信を行うことができる。
【0049】
(C)他の実施形態
上記各実施形態では、冗長構成のメディア制御装置に本発明を適用した例を説明したが、ネットワークに接続している冗長構成の通信装置に対して本発明を広く適用でき、その通信装置に対する対向装置の障害を監視することができる。
【0050】
上記各実施形態では、2重系の冗長構成を示したが、他の冗長構成であっても本発明を適用することができる。例えば、運用系が1つに待機系が2つの3重系に対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1X…セッションボーダーコントローラ、2−1、2−2…メディア制御装置、3A…運用系装置管理部、3S…待機系装置管理部、4、4−1、4−2…対向装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の装置のうち、運用系の装置が対向装置と主信号通信を実行すると共に、上記第1及び第2の装置がそれぞれ間欠的に上記対向装置との障害監視通信を行う、冗長構成を採用している通信装置において、
上記第1の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行う上記第1の装置に設けられた第1の障害監視通信部と、
上記第2の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行う上記第2の装置に設けられた第2の障害監視通信部と、
上記第1及び第2の装置のうち、運用系の装置に対して、上記第1及び第2の装置の物理MACアドレスとは異なる論理MACアドレスとIPアドレスとを、主信号通信に用いるように設定する主信号通信アドレス設定部と、
上記第1及び第2の障害監視通信部のうち、その時点の運用系装置に対応する障害監視通信部が障害発生を検出したことを条件に、上記第1及び第2の装置に系の切替えを指示する系切替指示部と
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
上記対向装置が、上記第1の装置に対応する第1の対向装置と、上記第2の装置に対応する第2の対向装置とに分かれていることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
第1及び第2の装置のうち、運用系の装置に障害が発生したときに上記第1及び第2の装置の系を切り替える系切替方法において、
上記第1の装置に設けられた第1の障害監視通信部は、上記第1の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行い、
上記第2の装置に設けられた第2の障害監視通信部は、上記第2の装置の物理MACアドレスを保持し、この物理MACアドレスを用いて上記対向装置との障害監視通信を行い、
系切替指示部は、上記第1及び第2の障害監視通信部のうち、その時点の運用系装置に対応する障害監視通信部が障害発生を検出したことを条件に、上記第1及び第2の装置に系の切替えを指示し、
主信号通信アドレス設定部は、上記第1及び第2の装置のうち、新運用系になった装置に対して、上記第1及び第2の装置の物理MACアドレスとは異なる論理MACアドレスとIPアドレスとを、主信号通信に用いるように設定し、
上記第1及び第2の装置のうち新運用系になった装置は、上記論理MACアドレスと上記IPアドレスを用いて、上記対向装置経由で主信号通信を行う
ことを特徴とする系切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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