説明

通信装置

【課題】冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うこと。
【解決手段】通信装置100は、第一物理カード110による第一回線および第二物理カード120による第二回線によって他の通信装置との間で通信を行う。通信装置100は、第一物理カード110と、第二物理カード120と、を備えている。第一物理カード110は、第一回線によって送信するデータを他の通信装置100へ送信するとともに、第二回線によって送信するデータをカプセル化して第二物理カード120へ転送する。第二物理カード120は、第一物理カード110から転送されたデータをデカプセル化して他の通信装置100へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
S3G(Super 3G)に代表されるように、マルチホーミングを用いて基地局間を複数のリンクで接続する通信システムが用いられている(たとえば、下記特許文献1,2参照。)。マルチホーミングは、企業などのネットワークからインターネットなど外部へ接続する際に、複数の回線(ISP:Internet Services Provider)を使って接続する方法である。
【0003】
マルチホーミングにおいては、一般的に、トランスミッション層のプロトコルであるSCTP(Stream Control Transmission Protocol)の処理を行う物理カードが基地局装置として用いられている。この物理カードは、たとえば、2本のリンクポートを有し、2本のリンクポートを通信先のリンクポートと接続する。このときに、2本のリンクポートのうちの1本をプライマリ(Primary)回線とし、もう1本をセカンダリ(Secondary)回線とする。
【0004】
通常は、プライマリ回線を用いてデータの送受信が行われる。また、セカンダリ回線は、プライマリ回線が障害などによって通信不能な場合に迂回回線として使用される。あるいは、プライマリ回線とセカンダリ回線の両方を利用して通信の負荷分散を行うことも可能である。SCTP信号を終端するSCTP機能部は物理カード内に設けられる。また、基地局においては、冗長な物理カードを設け、一部の物理カードに障害が発生しても通信を継続する構成が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−209278号公報
【特許文献2】特開2006−279467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、信頼性を向上させるために物理カードの冗長構成を採用すると、プライマリ回線とセカンダリ回線をそれぞれ別の物理カードに収容することになる。このため、プライマリ回線とセカンダリ回線はそれぞれ独立した回線となり、マルチホーミングを行うことができないという問題がある。
【0007】
また、物理カードにおいて呼処理などのサービスを提供するアクセス制御部によってマルチホーミングの制御を行うと、アクセス制御部の負荷が大きくなり、呼処理などのサービスの提供に影響が出るという問題がある。また、SCTPによるマルチホーミングを行う場合は、各回線に割り当てるためにグローバルアドレスを2つ用いる。
【0008】
これに対して、通常、物理カードにはグローバルアドレスとローカルアドレスが1つずつ割り当てられる。SCTP機能部は、マルチホーミングを行う設定をすると、これらのグローバルアドレスとローカルアドレスを用いた通信動作を行う。このとき、ローカルアドレスは通信装置内で有効なアドレスであるため、ローカルアドレスを用いた通信は失敗し、マルチホーミングが成立しない。また、この場合は、物理カードのローカルアドレスがネットワークに流出することにもつながり、セキュリティ上好ましくない。
【0009】
開示の通信装置は、上述した問題点を解消するものであり、冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この通信装置は、第一物理カードによる第一回線および第二物理カードによる第二回線によって他の通信装置との間で通信を行う通信装置であって、前記第一回線によって送信するデータを前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第二回線によって送信するデータをカプセル化して前記第二物理カードへ転送する第一物理カードと、前記第一物理カードから転送されたデータをデカプセル化して前記他の通信装置へ送信する第二物理カードと、を備える。
【0011】
上記構成によれば、第一物理カードと第二物理カードとの間にトンネルを形成し、第一物理カードは、第一回線により送信するデータは第一物理カードから送信し、第二回線により送信するデータは第二物理カードへのトンネルへ出力することで第二物理カードから送信することができる。
【発明の効果】
【0012】
開示の通信装置によれば、冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態にかかる通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した第一物理カードにおける信号処理部の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示した第一物理カードにおける信号処理部の構成例を示すブロック図である。
【図4】各物理カードのデータ受信時の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】第二物理カードによるデータのカプセル化を示す図である。
【図6】第二物理カードの送信動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】第二物理カードによるデータのデカプセル化の一例を示す図である。
【図8】第一物理カードの記憶部に記憶される各情報の一例を示す図である。
【図9】第二物理カードの記憶部に記憶される各情報の一例を示す図である。
【図10】第一物理カードの障害時における通信装置の動作を示す図である。
【図11】図10に示した障害の復旧後における通信装置の動作を示す図である。
【図12】第二物理カードの障害時における通信装置の動作を示す図である。
【図13】各物理カードの起動時における動作の一例を示すフローチャートである。
【図14】第一物理カードによる自カード判別情報の設定を示す図である。
【図15】アクセス制御部による生存監視の動作を示す図(その1)である。
【図16】アクセス制御部による生存監視の動作を示す図(その2)である。
【図17】第一物理カードの保守時における保守切替の動作を示す図である。
【図18】設定部による生存監視の動作を示す図(その1)である。
【図19】設定部による生存監視の動作を示す図(その2)である。
【図20】実施の形態にかかる通信システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この通信装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。この通信装置は、第一物理カードと第二物理カードとの間でトンネルを形成することで、一方の物理カードが他方の物理カードも利用して通信を行うことを可能にする。これにより、冗長構成をとりつつマルチホーミングを行うことができる。
【0015】
(実施の形態)
(通信装置の構成)
図1は、実施の形態にかかる通信装置の構成を示すブロック図である。図1に示す実施の形態にかかる通信装置100は、上位システムとの間で通信を行う基地局(eNB)である。図1に示すように、実施の形態にかかる通信装置100は、第一物理カード110と、第二物理カード120と、L2スイッチ130と、を備えている。通信装置100は、第一物理カード110による第一回線および第二物理カード120による第二回線によってMME10との間でマルチホーミングを行う。
【0016】
第一物理カード110および第二物理カード120のそれぞれには、グローバルアドレスとローカルアドレスが割り当てられる。第一物理カード110に割り当てられるグローバルアドレスをAとし、第二物理カード120に割り当てられるグローバルアドレスをBとする。また、第一物理カード110に割り当てられるローカルアドレスをaとし、第二物理カード120に割り当てられるローカルアドレスをbとする。
【0017】
第一物理カード110は、アクセス制御部111と、信号処理部112と、NIC114と、を備えている。第二物理カード120は、アクセス制御部121と、信号処理部122と、NIC124と、を備えている。また、第一物理カード110と第二物理カード120は、L2スイッチ130(レイヤ2スイッチ)を介して互いに通信を行う。
【0018】
アクセス制御部111は、第一物理カード110の主制御部である。アクセス制御部121は、第二物理カード120の主制御部である。アクセス制御部111およびアクセス制御部121は、一方がアクティブ状態となり、他方がスタンバイ状態となる。ここでは、初期状態として、アクセス制御部111がアクティブ状態となっており、アクセス制御部121がスタンバイ状態となっている場合について説明する。
【0019】
アクティブ状態となっているアクセス制御部111は、通信装置100の全体の主制御部となる。この場合は、アクセス制御部111は、SCTP機能部113とともに、たとえば、呼制御機能やハンドオーバなどのサービスを提供する。これらのサービスは、たとえば、3GPP/LTEなどに準拠したサービスである。
【0020】
スタンバイ状態になっているアクセス制御部121は、アクティブ状態となっているアクセス制御部111が障害や保守操作によってOOS(Out Of Service)となるまで待機している。そして、アクセス制御部121は、アクセス制御部111がOOSとなるとアクティブ状態となり、通信装置100の全体の主制御部となる。
【0021】
第一物理カード110の信号処理部112は、NWP(NetWork Processor)であり、たとえばセキュリティ機能を有する。信号処理部112は、SCTP機能部113を備えている。SCTP機能部113は、SCTPを終端する機能部である。また、SCTP機能部113は、第一物理カード110による第一回線および第二物理カード120による第二回線によってMME10との間でマルチホーミングを行う。
【0022】
ここではアクセス制御部111がアクティブ状態となっているため、第一物理カード110による第一回線がプライマリ回線となり、第二物理カード120による第二回線がセカンダリ回線となる。たとえば、SCTP機能部113は、通信先のMME10に対して接続要求(INIT)を行う。このときに、SCTP機能部113は、通信装置100のアドレスとして、第一物理カード110に割り当てられたグローバルアドレスAと、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスBと、をMME10へ通知する。
【0023】
そして、接続要求に対する肯定応答(ACK)がMME10から返ってくると、SCTP機能部113は、マルチホーミングによるMME10との通信を開始する。SCTP機能部113は、プライマリ回線およびセカンダリ回線の各状態を監視し、いずれの回線によってデータを送信するかを決定する。たとえば、SCTP機能部113は、通常はプライマリ回線によってデータを送信する。また、SCTP機能部113は、プライマリ回線に障害が発生した場合はセカンダリ回線によってデータを送信する。
【0024】
SCTP機能部113は、プライマリ回線によって送信するデータを、NIC114を介してMME10へ送信する。具体的には、SCTP機能部113は、プライマリ回線によって送信するデータを、第一物理カード110に割り当てられたグローバルアドレスAを送信元としてMME10へ送信する。また、SCTP機能部113は、セカンダリ回線によって送信するデータをカプセル化して第二物理カード120へ転送する。具体的には、SCTP機能部113は、カプセル化したデータを、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスbを宛先として転送する。
【0025】
また、SCTP機能部113は、MME10からプライマリ回線によって送信されたデータを受信する。具体的には、SCTP機能部113は、第一物理カード110に割り当てられたグローバルアドレスAを宛先としてMME10から送信されたデータを受信する。また、SCTP機能部113は、第二物理カード120から転送されたデータを受信してデカプセル化する。具体的には、SCTP機能部113は、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスaを宛先として第二物理カード120から転送されたデータを受信してデカプセル化する。
【0026】
第二物理カード120の信号処理部122は、NWPであり、たとえばセキュリティ機能を有する。信号処理部122は、SCTP機能部123を備えている。SCTP機能部123は、SCTPを終端する機能部である。ただし、ここでは第二物理カード120のアクセス制御部121がスタンバイ状態となっているため、第二物理カード120のSCTP機能部123は動作しない。
【0027】
信号処理部122は、第一物理カード110から転送されたデータを受信してデカプセル化する。具体的には、信号処理部122は、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスbを宛先として第一物理カード110から転送されたデータを受信する。また、信号処理部122は、デカプセル化したデータを、NIC124を介してMME10へ送信する。具体的には、信号処理部122は、デカプセル化したデータを、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスBを送信元として送信する。
【0028】
また、信号処理部122は、MME10からセカンダリ回線によって送信されたデータを、NIC124を介して受信する。具体的には、信号処理部122は、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスBを宛先としてMME10から送信されたデータを受信する。また、信号処理部122は、受信したデータをカプセル化して第一物理カード110へ転送する。具体的には、信号処理部122は、受信したデータを第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスaを宛先として転送する。
【0029】
このように、L2スイッチ130は、第一物理カード110から第二物理カード120へデータを転送するとともに、第二物理カード120から第一物理カード110へデータを転送するトンネルを形成する物理スイッチである。そして、第一物理カード110および第二物理カード120は、カプセル化したデータをL2スイッチ130に形成されたトンネルにより互いに転送する。これにより、たとえばNAT(Network Address Translation)やNAPT(Network Address Port Translation)などよりも効率よくデータを転送することができる。
【0030】
MME10は、eNBなどの基地局の上位ノードにあたる移動管理ノード(MME:Mobility Management Entity)である。MME10は、各無線端末装置の位置登録エリア管理やページングなどの移動管理制御を行う。たとえば、MME10にはグローバルアドレスCおよびグローバルアドレスDが割り当てられている。
【0031】
MME10からみると、通信装置100にはグローバルアドレスAとグローバルアドレスBが存在する。MME10は、グローバルアドレスAを宛先とすることで第一回線によってデータを通信装置100へ送信し、グローバルアドレスBを宛先とすることで第二回線によってデータを通信装置100へ送信することができる。
【0032】
図2は、図1に示した第一物理カードにおける信号処理部の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、第一物理カード110における信号処理部112は、SCTP機能部113(図1参照)と、プライマリ送信部211と、セカンダリ送信部212と、経路切替部220と、ネットワーク送信部231と、ネットワーク受信部232と、カプセル処理部241と、デカプセル処理部242と、トンネル送信部251と、トンネル受信部252と、プライマリ受信部261と、セカンダリ受信部262と、記憶部270と、設定部280と、を備えている。
【0033】
SCTP機能部113は、プライマリ回線で送信するデータをプライマリ送信部211へ出力する。また、SCTP機能部113は、セカンダリ回線で送信するデータをセカンダリ送信部212へ出力する。また、SCTP機能部113は、プライマリ受信部261から出力されたデータのSCTP終端を行う。また、SCTP機能部113は、セカンダリ受信部262から出力されたデータのSCTP終端を行う。
【0034】
プライマリ送信部211は、SCTP機能部113から出力されたデータを経路切替部220へ出力する。セカンダリ送信部212は、SCTP機能部113から出力されたデータを経路切替部220へ出力する。
【0035】
経路切替部220は、記憶部270に記憶された経路切替情報272を読み出す。そして、経路切替部220は、読み出した経路切替情報272に従ってデータの経路切替を行う。具体的には、経路切替部220は、プライマリ送信部211から出力されたデータをネットワーク送信部231へ出力する。
【0036】
また、経路切替部220は、セカンダリ送信部212から出力されたデータをカプセル処理部241へ出力する。また、経路切替部220は、ネットワーク受信部232から出力されたデータをプライマリ受信部261へ出力する。また、経路切替部220は、デカプセル処理部242から出力されたデータをセカンダリ受信部262へ出力する。
【0037】
ネットワーク送信部231は、経路切替部220から出力されたデータを、NIC114を介してMME10へ送信する。ネットワーク受信部232は、MME10から送信されたデータを、NIC114を介して受信する。ネットワーク受信部232は、受信したデータを経路切替部220へ出力する。
【0038】
カプセル処理部241は、経路切替部220から出力されたデータをカプセル化し、カプセル化したデータをトンネル送信部251へ出力する。デカプセル処理部242は、トンネル受信部252から出力されたデータをデカプセル化し、デカプセル化したデータを経路切替部220へ出力する。
【0039】
トンネル送信部251は、カプセル処理部241から出力されたデータをL2スイッチ130へ送信する。トンネル送信部251からL2スイッチ130へ送信されたデータは、第二物理カード120へ転送される。トンネル受信部252は、第二物理カード120からL2スイッチ130を介して転送されたデータを受信する。トンネル受信部252は、受信したデータをデカプセル処理部242へ出力する。
【0040】
プライマリ受信部261は、経路切替部220から出力されたデータをSCTP機能部113へ出力する。セカンダリ受信部262は、経路切替部220から出力されたデータをSCTP機能部113へ出力する。
【0041】
記憶部270は、自カード判別情報271と、経路切替情報272と、を記憶している。自カード判別情報271は、第一物理カード110の状態(たとえばプライマリまたはセカンダリ)を示す情報である。経路切替情報272は、経路切替部220による経路切替を示す情報である。設定部280は、第一物理カード110のアクセス制御部111または第二物理カード120のアクセス制御部121による制御によって、記憶部270の自カード判別情報271および経路切替情報272を設定する。
【0042】
図3は、図1に示した第一物理カードにおける信号処理部の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、第二物理カード120における信号処理部122は、SCTP機能部123(図1参照)と、プライマリ送信部311と、セカンダリ送信部312と、経路切替部320と、ネットワーク送信部331と、ネットワーク受信部332と、カプセル処理部341と、デカプセル処理部342と、トンネル送信部351と、トンネル受信部352と、プライマリ受信部361と、セカンダリ受信部362と、記憶部370と、設定部380と、を備えている。
【0043】
ただし、ここでは第二物理カード120のアクセス制御部121がスタンバイ状態となっている。このため、第二物理カード120のSCTP機能部123、プライマリ送信部311、セカンダリ送信部312、プライマリ受信部361およびセカンダリ受信部362は動作しない。
【0044】
経路切替部320は、記憶部370に記憶された経路切替情報372を読み出す。そして、経路切替部320は、読み出した経路切替情報372に従ってデータの経路切替を行う。具体的には、経路切替部320は、ネットワーク受信部332から出力されたデータをカプセル処理部341へ出力する。また、経路切替部320は、デカプセル処理部342から出力されたデータをネットワーク送信部331へ出力する。
【0045】
ネットワーク送信部331は、経路切替部320から出力されたデータを、NIC124を介してMME10へ送信する。ネットワーク受信部332は、MME10から送信されたデータを、NIC124を介して受信する。ネットワーク受信部332は、受信したデータを経路切替部320へ出力する。
【0046】
カプセル処理部341は、経路切替部320から出力されたデータをカプセル化し、カプセル化したデータをトンネル送信部351へ出力する。デカプセル処理部342は、トンネル受信部352から出力されたデータをデカプセル化し、デカプセル化したデータを経路切替部320へ出力する。
【0047】
トンネル送信部351は、カプセル処理部341から出力されたデータをL2スイッチ130へ送信する。トンネル送信部351からL2スイッチ130へ送信されたデータは、第一物理カード110へ転送される。トンネル受信部352は、第一物理カード110からL2スイッチ130を介して転送されたデータを受信する。トンネル受信部352は、受信したデータをデカプセル処理部342へ出力する。
【0048】
記憶部370は、自カード判別情報371と、経路切替情報372と、を記憶している。自カード判別情報371は、第二物理カード120の状態(たとえばプライマリまたはセカンダリ)を示す情報である。経路切替情報372は、経路切替部320による経路切替を示す情報である。設定部380は、第一物理カード110のアクセス制御部111または第二物理カード120のアクセス制御部121による制御によって、記憶部370の自カード判別情報371および経路切替情報372を設定する。
【0049】
(データ受信時の動作)
図4は、各物理カードのデータ受信時の動作の一例を示すフローチャートである。図1に示した第一物理カード110および第二物理カード120のそれぞれは、MME10からのデータを受信した場合に以下のような動作を行う。まず、MME10からのデータを受信する(ステップS401)。つぎに、自カード判別情報を取得する(ステップS402)。つぎに、ステップS402によって取得された自カード判別情報に基づいて、自カードがプライマリか否かを判断する(ステップS403)。
【0050】
ステップS403において、自カードがプライマリである場合(ステップS403:Yes)は、ステップS401によって受信したデータに対するSCTP処理を行い(ステップS404)一連の動作を終了する。自カードがプライマリでない場合(ステップS403:No)は、ステップS401によって受信されたデータをカプセル化する(ステップS405)。つぎに、ステップS405によってカプセル化されたデータを他方の物理カードへ転送し(ステップS406)、一連の動作を終了する。
【0051】
第一物理カード110は、ステップS402において、記憶部270から自カード判別情報271を取得する。自カード判別情報271はプライマリを示しているため、第一物理カード110は、ステップS403においては自カードがプライマリであると判断する。このため、第一物理カード110は、ステップS406によってSCTP処理を行う。
【0052】
第二物理カード120は、ステップS402において、記憶部370から自カード判別情報371を取得する。自カード判別情報371はセカンダリを示しているため、第二物理カード120は、ステップS403においては自カードがプライマリでないと判断する。このため、第二物理カード120は、ステップS405によってデータをカプセル化し、ステップS406によってデータを第一物理カード110へ転送する。
【0053】
以上のステップにより、MME10からグローバルアドレスAを宛先として第一物理カード110へデータが送信された場合は、第一物理カード110によって受信データのSCTP処理を行うことができる。また、MME10からグローバルアドレスBを宛先として第二物理カード120へデータが送信された場合は、受信データを第二物理カード120から第一物理カード110へ転送し、第一物理カード110によって受信データのSCTP処理を行うことができる。
【0054】
図5は、第二物理カードによるデータのカプセル化を示す図である。図5に示すデータ510は、MME10によって送信され、第二物理カード120によって受信されたデータである。データ520は、第二物理カード120が受信したデータ510をカプセル化したデータを示している。データ510には、ペイロードおよびSCTPヘッダを含むSCTPデータ511と、IPヘッダ512と、L2ヘッダ513と、が含まれている。
【0055】
IPヘッダ512は、送信元のIPアドレス(Src IP Address)が、MME10に割り当てられたグローバルアドレスC(Global IP C)であることを示している。また、IPヘッダ512は、宛先のIPアドレス(Dst IP Address)が、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスB(Global IP B)であることを示している。
【0056】
L2ヘッダ513は、送信元のMACアドレス(Src MAC Address)が、MME10に割り当てられたグローバルアドレスC(Global MAC C)であることを示している。また、L2ヘッダ513は、宛先のMACアドレス(Dst MAC Address)が、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスB(Global MAC B)であることを示している。
【0057】
第二物理カード120は、データ510に対して、L2ヘッダ513を除去し、IPヘッダ522およびL2ヘッダ523を付加することによりカプセル化を行う。これにより、データ520が生成される。また、第二物理カード120は、L2ヘッダ523に対して、トンネルによって転送することを示す識別子を挿入する。
【0058】
IPヘッダ522は、送信元のIPアドレス(Src IP Address)が、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスb(Local IP b)であることを示している。また、IPヘッダ522は、宛先のIPアドレス(Dst IP Address)が、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスa(Local IP a)であることを示している。
【0059】
L2ヘッダ523は、送信元のMACアドレス(Src MAC Address)が、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスb(Local MAC b)であることを示している。また、L2ヘッダ523は、宛先のMACアドレス(Dst MAC Address)が、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスa(Local MAC a)であることを示している。
【0060】
(第二物理カードの送信動作)
図6は、第二物理カードの送信動作の一例を示すフローチャートである。第一物理カード110がセカンダリ回線によって送信するデータを第二物理カード120へ転送した場合に、第二物理カード120は以下の送信動作を行う。第二物理カード120は、まず、第一物理カード110から転送されたデータを受信する(ステップS601)。
【0061】
つぎに、ステップS601によって受信されたデータのIPヘッダを除去する(ステップS602)。つぎに、ステップS602によってIPヘッダを除去されたデータにL2ヘッダを付加する(ステップS603)。つぎに、ステップS603によってL2ヘッダを付加されたデータをMME10へ送信し(ステップS604)、一連の動作を終了する。以上のステップにより、第二物理カード120は、第一物理カード110から転送されたデータをMME10へ送信することができる。
【0062】
図7は、第二物理カードによるデータのデカプセル化の一例を示す図である。図7に示すデータ710は、図6のステップS601において第二物理カード120によって受信されたデータである。データ720は、図6のステップS602およびステップS603において第二物理カード120によってデカプセル化されたデータである。
【0063】
データ710は、IPカプセル化部分710aと、IPヘッダ713と、L2ヘッダ714と、を含んでいる。IPカプセル化部分710aは、第一物理カード110によってカプセル化された部分であり、SCTPデータ711とIPヘッダ712とを含んでいる。SCTPデータ711は、ペイロードとSCTPヘッダを含んでいる。
【0064】
IPヘッダ712は、送信元のIPアドレス(Src IP Address)が、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスB(Global IP B)であることを示している。また、IPヘッダ712は、宛先のIPアドレス(Dst IP Address)が、MME10に割り当てられたグローバルアドレスC(Global IP C)であることを示している。
【0065】
IPヘッダ713は、送信元のIPアドレス(Src IP Address)が、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスa(Local IP a)であることを示している。また、IPヘッダ713は、宛先のIPアドレス(Dst IP Address)が、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスb(Local IP b)であることを示している。
【0066】
L2ヘッダ714は、送信元のMACアドレス(Src MAC Address)が、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスa(Local MAC a)であることを示している。また、L2ヘッダ714は、宛先のMACアドレス(Dst MAC Address)が、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスb(Local MAC b)であることを示している。
【0067】
第二物理カード120は、データ710に対して、IPヘッダ713を除去し、L2ヘッダ714に代えてL2ヘッダ721を付加することによりデカプセル化を行う。これにより、データ720が生成される。
【0068】
L2ヘッダ721は、送信元のMACアドレス(Src MAC Address)が、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスB(Global MAC B)であることを示している。また、L2ヘッダ721は、宛先のMACアドレス(Dst MAC Address)が、MME10に割り当てられたグローバルアドレスC(Global MAC C)であることを示している。
【0069】
(自カード判別情報および経路切替情報の一例)
図8は、第一物理カードの記憶部に記憶される各情報の一例を示す図である。図8に示すように、第一物理カード110の記憶部270に記憶された自カード判別情報271はプライマリである。また、記憶部270に記憶された経路切替情報272においては、各入力元(IN)に対してそれぞれ出力先(OUT)が対応付けられている。
【0070】
具体的には、経路切替情報272においては、プライマリ送信部211からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてネットワーク送信部231が対応付けられている。また、経路切替情報272においては、セカンダリ送信部212からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてカプセル処理部241が対応付けられている。
【0071】
また、経路切替情報272においては、ネットワーク受信部232からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてプライマリ受信部261が対応付けられている。また、経路切替情報272においては、デカプセル処理部242からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてセカンダリ受信部262が対応付けられている。経路切替部220は、自カード判別情報271を読み出し、読み出した自カード判別情報271に従ってデータの経路切替を行うことで、図2に示したような経路切替を行うことができる。
【0072】
図9は、第二物理カードの記憶部に記憶される各情報の一例を示す図である。図9に示すように、第二物理カード120の記憶部370に記憶された自カード判別情報371はセカンダリである。また、記憶部370に記憶された経路切替情報372においては、各入力元(IN)に対してそれぞれ出力先(OUT)が対応付けられている。
【0073】
具体的には、経路切替情報372においては、ネットワーク受信部332からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてカプセル処理部341が対応付けられている。また、経路切替情報372においては、デカプセル処理部342からの入力(IN)に対する出力先(OUT)としてネットワーク送信部331が対応付けられている。経路切替部320は、自カード判別情報371を読み出し、読み出した自カード判別情報371に従ってデータの経路切替を行うことで、図3に示したような経路切替を行うことができる。
【0074】
(第一物理カードの障害時における通信装置の動作)
図10は、第一物理カードの障害時における通信装置の動作を示す図である。図10においては、第一物理カード110に障害が発生した状態を示している。図10に示すように、第一物理カード110に障害が発生すると、第二物理カード120のアクセス制御部121が第一物理カード110の障害を検知する。障害の検知方法については後述する(たとえば図15,図16参照)。
【0075】
アクセス制御部121は、第一物理カード110の障害を検知すると、アクティブ状態となり、第二物理カード120の信号処理部122を動作させる。また、この場合は、マルチホーミングを行うことができないため、信号処理部122は、マルチホーミングによらないMME10との通信を開始する。この場合は、信号処理部122は、カプセル化やデカプセル化などの処理は行わずにMME10との間で通信を行う。このように、第一物理カード110に障害が発生してもMME10との間で通信を継続することができる。
【0076】
図11は、図10に示した障害の復旧後における通信装置の動作を示す図である。図10に示した第一物理カード110の障害が復旧したときには、第二物理カード120のアクセス制御部121がアクティブ状態となっている。このため、アクセス制御部121は、通信装置100の全体の主制御部となる。一方、第一物理カード110のアクセス制御部111はスタンバイ状態になる。アクセス制御部121は、第一物理カード110の障害からの復旧を検知すると、マルチホーミングによるMME10との通信を開始する。
【0077】
第二物理カード120のSCTP機能部123は、第一物理カード110による第一回線および第二物理カード120による第二回線によってMME10との間でマルチホーミングを行う。この場合は、第二物理カード120による第二回線がプライマリ回線となり、第一物理カード110による第一回線がセカンダリ回線となる。
【0078】
SCTP機能部123は、プライマリ回線によって送信するデータを、NIC124を介してMME10へ送信する。具体的には、SCTP機能部123は、プライマリ回線によって送信するデータを、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスBを送信元としてMME10へ送信する。また、SCTP機能部123は、セカンダリ回線によって送信するデータをカプセル化して第一物理カード110へ転送する。具体的には、SCTP機能部123は、セカンダリ回線によって送信するデータを、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスaを宛先として転送する。
【0079】
また、SCTP機能部123は、MME10からプライマリ回線によって送信されたデータを、NIC124を介して受信する。具体的には、SCTP機能部123は、第二物理カード120に割り当てられたグローバルアドレスBを宛先としてMME10から送信されたデータを受信する。また、SCTP機能部123は、第一物理カード110から転送されたデータを受信してデカプセル化する。具体的には、SCTP機能部123は、第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスbを宛先として第一物理カード110から転送されたデータを受信する。
【0080】
第一物理カード110のSCTP機能部113は、第一物理カード110のアクセス制御部111がスタンバイ状態となっているため動作しない。信号処理部112は、第二物理カード120から転送されたデータを受信してデカプセル化する。具体的には、信号処理部112は、第一物理カード110に割り当てられたローカルアドレスaを宛先として第二物理カード120から転送されたデータを受信する。また、信号処理部112は、デカプセル化したデータを、NIC114を介してMME10へ送信する。具体的には、信号処理部112は、デカプセル化したデータを、第一物理カード110に割り当てられたグローバルアドレスAを送信元としてMME10へ送信する。
【0081】
また、信号処理部112は、MME10からセカンダリ回線によって送信されたデータを、NIC114を介して受信する。具体的には、信号処理部112は、第一物理カード110に割り当てられたグローバルアドレスAを宛先としてMME10から送信されたデータを受信する。そして、信号処理部112は、受信したデータをカプセル化して第二物理カード120へ転送する。具体的には、信号処理部112は、受信したデータを第二物理カード120に割り当てられたローカルアドレスbを宛先として転送する。
【0082】
(第二物理カードの障害時における通信装置の動作)
図12は、第二物理カードの障害時における通信装置の動作を示す図である。図12においては、第二物理カード120に障害が発生した状態を示している。図12に示すように、第二物理カード120に障害が発生すると、第一物理カード110のアクセス制御部111が第二物理カード120の障害を検知する。障害の検知方法については後述する(たとえば図15,図16参照)。
【0083】
アクセス制御部111によって第二物理カード120の障害が検知されると、信号処理部112のSCTP機能部113は、マルチホーミングによらないMME10との通信を開始する。この場合は、SCTP機能部113は、カプセル化やデカプセル化などの処理は行わずにMME10との間で通信を行う。このように、第二物理カード120に障害が発生してもMME10との間で通信を継続することができる。
【0084】
図12に示した第二物理カード120の障害が復旧すると、第一物理カード110のアクセス制御部111が第二物理カード120の障害の復旧を検知する。アクセス制御部111によって第二物理カード120の障害の復旧が検知されると、SCTP機能部113はマルチホーミングを再開する。この場合の通信装置100の動作については、図1によって説明した動作と同様であるため説明を省略する。
【0085】
(起動時の動作)
図13は、各物理カードの起動時における動作の一例を示すフローチャートである。図1に示した第一物理カード110および第二物理カード120は、起動時に以下のような動作を行う。まず、自カード判別情報(自カード判別情報271または自カード判別情報371)をOOSに設定する(ステップS1301)。つぎに、通信装置100において既にアクティブ状態の物理カードが存在するか否かを判断する(ステップS1302)。
【0086】
ステップS1302において、既にアクティブ状態の物理カードが存在しない場合(ステップS1302:No)は、通信装置100の各物理カードのなかで、自カードが最も若番であるか否かを判断する(ステップS1303)。自カードが最も若番である場合(ステップS1303:Yes)は、アクティブ起動処理を行う(ステップS1304)。つぎに、自カード判別情報をプライマリに設定する(ステップS1305)。
【0087】
つぎに、通信装置100における他の物理カードの自カード判別情報をセカンダリに設定する(ステップS1306)。つぎに、自カードの信号処理部(信号処理部112または信号処理部122)による通信サービスの提供(たとえばMME10との通信)を開始し(ステップS1307)、一連の動作を終了する。
【0088】
ステップS1302において既にアクティブ状態の物理カードが存在する場合(ステップS1302:Yes)、またはステップS1303において自カードが最も若番でない場合(ステップS1303:No)は、スタンバイ起動処理を行う(ステップS1308)。つぎに、通信装置100の他の物理カードの生存監視を開始し(ステップS1309)、一連の動作を終了する。
【0089】
第一物理カード110は、ステップS1301において自カード判別情報271をOOSに設定する。また、第一物理カード110は、ステップS1301において、第二物理カード120がスタンバイ状態である場合はステップS1303へ移行し、第二物理カード120が既にアクティブ状態となっている場合はステップS1308へ移行する。
【0090】
また、第一物理カード110は、ステップS1305において、第一物理カード110の記憶部270に記憶された経路切替情報272をプライマリに設定する。また、第一物理カード110は、ステップS1306において、第二物理カード120の記憶部370に記憶された経路切替情報372をセカンダリに設定する。
【0091】
第二物理カード120は、ステップS1301において自カード判別情報371をOOSに設定する。また、第二物理カード120は、ステップS1301において、第一物理カード110がスタンバイ状態である場合はステップS1303へ移行し、第一物理カード110が既にアクティブ状態となっている場合はステップS1308へ移行する。
【0092】
また、第二物理カード120は、ステップS1305において、第二物理カード120の記憶部370に記憶された経路切替情報372をプライマリに設定する。また、第二物理カード120は、ステップS1306において、第一物理カード110の記憶部270に記憶された経路切替情報272をセカンダリに設定する。
【0093】
また、第一物理カード110および第二物理カード120にはあらかじめ番号が割り当てられている。たとえば、第一物理カード110には番号1が割り当てられ、第二物理カード120には番号2が割り当てられる。この場合は、第一物理カード110は、ステップS1303において、自カードが最も若番であると判断する。また、第二物理カード120は、ステップS1303において、自カードが最も若番ではないと判断する。
【0094】
(起動時の自カード判別情報の設定)
図14は、第一物理カードによる自カード判別情報の設定を示す図である。図14においては、図1、図2および図3に示した通信装置100の構成の一部を示している。たとえば図13のステップS1305において、第一物理カード110のアクセス制御部111は、設定部280へ制御信号1411を出力することによって、記憶部270に記憶された自カード判別情報271をプライマリに設定させる。
【0095】
また、たとえば図13のステップS1306において、第一物理カード110のアクセス制御部111は、設定部380へ制御信号1412を出力することによって、記憶部370に記憶された自カード判別情報371をセカンダリに設定する。このように、自カード判別情報271および自カード判別情報371は、アクティブ状態であるアクセス制御部111によって設定部280および設定部380を制御することによって設定される。
【0096】
(アクセス制御部による生存監視の動作)
図15は、アクセス制御部による生存監視の動作を示す図(その1)である。図13に示した各ステップの後に、アクセス制御部111とアクセス制御部121は、互いにハートビート信号(ハートビート信号1511およびハートビート信号1512)を送受信することによって互いの生存監視を行う。ハートビート信号1511およびハートビート信号1512は、L2スイッチ130を介して送受信される。
【0097】
図16は、アクセス制御部による生存監視の動作を示す図(その2)である。図15に示した生存監視を開始した後に、図16に示すように、アクセス制御部111に障害が発生し、アクセス制御部111からアクセス制御部121へ送信されるハートビート信号1512が途切れたとする。アクセス制御部121は、ハートビート信号1512が受信できなくなったことからアクセス制御部111の障害を検出する。
【0098】
アクセス制御部121は、アクセス制御部111の障害を検出すると、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行する。そして、アクセス制御部121は、第一物理カード110の設定部280に制御信号1611を送信することによって自カード判別情報271をセカンダリに設定させる。また、アクセス制御部121は、アクセス制御部111の障害を検出すると、設定部380に制御信号1612を送信することによって、自カード判別情報371をプライマリに設定させる。
【0099】
制御信号1611および制御信号1612は、L2スイッチ130を介して出力される。また、アクセス制御部121は、第二物理カード120のSCTP機能部123を動作させる。これにより、第二物理カード120による第二回線がプライマリ回線となり、第一物理カード110による第一回線がセカンダリ回線となる。この場合のマルチホーミングの動作は、図11において説明した動作と同様であるため説明を省略する。
【0100】
(保守切替の動作)
図17は、第一物理カードの保守時における保守切替の動作を示す図である。第一物理カード110の保守操作を行うためには、アクセス制御部111に対して保護コマンドを入力する。アクセス制御部111は、保護コマンドが入力されると、アクティブ状態からOOSへ移行するとともに、アクセス制御部121に対して切替信号1710を出力する。切替信号1710は、L2スイッチ130を介して出力される。
【0101】
アクセス制御部121は、アクセス制御部111から切替信号1710が出力されると、スタンバイ状態からアクティブ状態へ移行する。そして、アクセス制御部121は、設定部280へ制御信号1721を出力することによって自カード判別情報271をセカンダリに設定させる。また、アクセス制御部121は、設定部380へ制御信号1722を出力することによって自カード判別情報371をプライマリに設定させる。
【0102】
制御信号1721および制御信号1722は、L2スイッチ130を介して出力される。また、アクセス制御部121は、第二物理カード120のSCTP機能部123を動作させる。これにより、第二物理カード120による第二回線がプライマリ回線となり、第一物理カード110による第一回線がセカンダリ回線となる。この場合のマルチホーミングの動作は、図11において説明した動作と同様であるため説明を省略する。
【0103】
(設定部による生存監視の動作)
図18は、設定部による生存監視の動作を示す図(その1)である。図18に示すように、設定部280は、ヘルスチェック信号をアクセス制御部111へ送信し、ヘルスチェック信号に対するアクセス制御部111からの応答を監視することでアクセス制御部111の生存監視を行う(符号1811)。また、設定部280は、ヘルスチェック信号をアクセス制御部121へ送信し、ヘルスチェック信号に対するアクセス制御部121からの応答を監視することでアクセス制御部121の生存監視を行う(符号1812)。
【0104】
設定部380は、ヘルスチェック信号をアクセス制御部121へ送信し、ヘルスチェック信号に対するアクセス制御部121からの応答を監視することでアクセス制御部121の生存監視を行う(符号1821)。また、設定部380は、ヘルスチェック信号をアクセス制御部111へ送信し、ヘルスチェック信号に対するアクセス制御部111からの応答を監視することでアクセス制御部111の生存監視を行う(符号1822)。各ヘルスチェック信号および各ヘルスチェック信号に対する応答は、L2スイッチ130を介して出力される。
【0105】
図19は、設定部による生存監視の動作を示す図(その2)である。図18に示した生存監視を開始した後に、アクセス制御部111,121のそれぞれに障害が発生した場合は、設定部280は、ヘルスチェック信号に対する応答がなくなることにより、アクセス制御部111,121の両方に障害が発生したことを検出する。
【0106】
設定部280は、アクセス制御部111,121の両方に障害が発生したことを検出すると、自カード判別情報271をOOSに設定する。自カード判別情報271がOOSに設定されている場合は、信号処理部112の経路切替部220は、プライマリ送信部211から出力されたデータ(第二回線によって送信するデータ)を破棄する。
【0107】
設定部280と同様に、設定部380は、ヘルスチェック信号に対する応答がなくなることにより、アクセス制御部111,121の両方に障害が発生したことを検出する。設定部380は、アクセス制御部111,121の両方に障害が発生したことを検出すると、自カード判別情報371をOOSに設定する。自カード判別情報371がOOSに設定されている場合は、信号処理部122の経路切替部320は、ネットワーク受信部332から出力されたデータ(第二回線によって受信したデータ)を破棄する。
【0108】
これにより、たとえば、アクセス制御部111,121の両方に障害が発生して自カード判別情報271,371の両方がセカンダリになり、第一物理カード110と第二物理カード120との間でデータがループすることを回避することができる。なお、アクセス制御部111,121のうちの一方に障害が発生した場合は、アクセス制御部111,121の互いの生存監視によって障害を検出することができる(図15,図16参照)。
【0109】
(通信システムの構成例)
図20は、実施の形態にかかる通信システムの構成例を示すブロック図である。図20に示す通信システム2000はS3Gの通信システムである。通信システム2000は、MME10と、基地局2010と、基地局2020と、を含んでいる。基地局2010は、MME10との接続部に通信装置100を備え、MME10との間でマルチホーミングを行う(符号2011)。また、基地局2010は、基地局2020との接続部に通信装置100を備え、基地局2020との間でマルチホーミングを行う(符号2012)。
【0110】
基地局2020は、MME10との接続部に通信装置100を備え、MME10との間でマルチホーミングを行う(符号2021)。また、基地局2020は、基地局2010との接続部に通信装置100を備え、基地局2010との間でマルチホーミングを行う(符号2012)。このように、基地局2010および基地局2020にそれぞれ通信装置100を適用することで、MME10、基地局2010および基地局2020が互いにマルチホーミングによって通信を行うことができる。
【0111】
また、通信装置100の通信先は、MME10に限らず、基地局2010や基地局2020などの他の通信装置でもよい。また、互いに通信を行う基地局2010および基地局2020の両方に通信装置100を設けてマルチホーミングを行うこともできる。
【0112】
このように、実施の形態にかかる通信装置100は、第一物理カード110と第二物理カード120との間にトンネルを形成する。そして、第一物理カード110は、第一回線により送信するデータは自カードから送信し、第二回線により送信するデータは第二物理カード120へのトンネルへ出力することで第二物理カードから送信することができる。このため、冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うことができる。
【0113】
また、第一物理カード110は、第一回線により送信されたデータを受信し、第二回線により送信したデータを第二物理カード120から受信することができる。このため、冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うことができる。また、第一物理カード110および第二物理カード120のうちのセカンダリとなっている物理カードは、SCTP機能部などを動作させなくてもよいため、消費電力を抑えることができる。
【0114】
また、第一物理カード110および第二物理カード120は、互いに割り当てられたローカルアドレスによって互いにデータを転送することによりトンネルを形成する。これにより、転送先と転送元が常に固定されているため、NATやNAPTなどの複雑なルーティング制御部を設けなくてもデータを転送することができる。このため、データの転送を安定して高速に行うことができる。また、装置の小型化を図ることができる。
【0115】
以上説明したように、通信装置によれば、冗長構成により信頼性を向上させつつマルチホーミングを行うことができる。なお、図1においては、通信装置100の通信先がMME10である構成について説明したが、通信装置100の通信先は、他の基地局(図20参照)や、基地局以外の他の通信装置であってもよい。上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0116】
(付記1)第一物理カードによる第一回線および第二物理カードによる第二回線によって他の通信装置との間で通信を行う通信装置であって、
前記第一回線によって送信するデータを前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第二回線によって送信するデータをカプセル化して前記第二物理カードへ転送する第一物理カードと、
前記第一物理カードから転送されたデータをデカプセル化して前記他の通信装置へ送信する第二物理カードと、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0117】
(付記2)前記第二物理カードは、前記他の通信装置から前記第二回線によって送信されたデータを受信し、受信したデータをカプセル化して前記第一物理カードへ転送し、
前記第一物理カードは、前記他の通信装置から前記第一回線によって送信されたデータを受信するとともに、前記第二物理カードから転送されたデータを受信してデカプセル化することを特徴とする付記1に記載の通信装置。
【0118】
(付記3)前記第一物理カードは、前記第一回線によって送信するデータを、前記第一物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを送信元として前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第二回線によって送信するデータを前記第二物理カードに割り当てられたローカルアドレスを宛先として転送し、
前記第二物理カードは、前記第一物理カードから転送されたデータを、前記第二物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを送信元として前記他の通信装置へ送信することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0119】
(付記4)前記第二物理カードは、前記第二物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを宛先として前記他の通信装置から送信されたデータを受信し、受信したデータを前記第一物理カードに割り当てられたローカルアドレスを宛先として転送し、
前記第一物理カードは、前記第一物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを宛先として前記他の通信装置から送信されたデータを受信することを特徴とする付記2に記載の通信装置。
【0120】
(付記5)前記第二物理カードは、前記第一物理カードの障害を検出すると、マルチホーミングによらない前記他の通信装置との通信を開始することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の通信装置。
【0121】
(付記6)前記第二物理カードは、前記第一物理カードの障害からの復旧を検出すると、前記第二回線によって送信するデータを前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第一回線によって送信するデータをカプセル化して前記第一物理カードへ転送し、
前記第一物理カードは、前記第二物理カードから転送されたデータをデカプセル化して前記他の通信装置へ送信することを特徴とする付記5に記載の通信装置。
【0122】
(付記7)前記第一物理カードは、前記第二物理カードの障害を検出すると、マルチホーミングによらない前記他の通信装置との通信を開始することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の通信装置。
【0123】
(付記8)前記第一物理カードから前記第二物理カードへデータを転送するトンネルを形成する物理スイッチを備えることを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の通信装置。
【0124】
(付記9)前記第一物理カードから前記第二物理カードへデータを転送するとともに、前記第二物理カードから前記第一物理カードへデータを転送するトンネルを形成する物理スイッチを備えることを特徴とする付記2に記載の通信装置。
【0125】
(付記10)前記第一物理カードは、前記第一物理カードおよび前記第二物理カードの両方の障害を検出すると、前記第二回線によって送信するデータを破棄することを特徴とする付記1〜9のいずれか一つに記載の通信装置。
【0126】
(付記11)前記第二物理カードは、前記第一物理カードおよび前記第二物理カードの両方の障害を検出すると、前記第二回線によって受信したデータを破棄することを特徴とする付記2に記載の通信装置。
【符号の説明】
【0127】
511,711 SCTPデータ
512,522,712,713 IPヘッダ
513,523,714,721 L2ヘッダ
710a IPカプセル化部分
1411,1412,1611,1612,1721,1722 制御信号
1511,1512 ハートビート信号
1710 切替信号
2000 通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一物理カードによる第一回線および第二物理カードによる第二回線によって他の通信装置との間で通信を行う通信装置であって、
前記第一回線によって送信するデータを前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第二回線によって送信するデータをカプセル化して前記第二物理カードへ転送する第一物理カードと、
前記第一物理カードから転送されたデータをデカプセル化して前記他の通信装置へ送信する第二物理カードと、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第二物理カードは、前記他の通信装置から前記第二回線によって送信されたデータを受信し、受信したデータをカプセル化して前記第一物理カードへ転送し、
前記第一物理カードは、前記他の通信装置から前記第一回線によって送信されたデータを受信するとともに、前記第二物理カードから転送されたデータを受信してデカプセル化することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第一物理カードは、前記第一回線によって送信するデータを、前記第一物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを送信元として前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第二回線によって送信するデータを前記第二物理カードに割り当てられたローカルアドレスを宛先として転送し、
前記第二物理カードは、前記第一物理カードから転送されたデータを、前記第二物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを送信元として前記他の通信装置へ送信することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第二物理カードは、前記第二物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを宛先として前記他の通信装置から送信されたデータを受信し、受信したデータを前記第一物理カードに割り当てられたローカルアドレスを宛先として転送し、
前記第一物理カードは、前記第一物理カードに割り当てられたグローバルアドレスを宛先として前記他の通信装置から送信されたデータを受信することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第二物理カードは、前記第一物理カードの障害を検出すると、マルチホーミングによらない前記他の通信装置との通信を開始することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項6】
前記第二物理カードは、前記第一物理カードの障害からの復旧を検出すると、前記第二回線によって送信するデータを前記他の通信装置へ送信するとともに、前記第一回線によって送信するデータをカプセル化して前記第一物理カードへ転送し、
前記第一物理カードは、前記第二物理カードから転送されたデータをデカプセル化して前記他の通信装置へ送信することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第一物理カードは、前記第二物理カードの障害を検出すると、マルチホーミングによらない前記他の通信装置との通信を開始することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項8】
前記第一物理カードから前記第二物理カードへデータを転送するトンネルを形成する物理スイッチを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項9】
前記第一物理カードから前記第二物理カードへデータを転送するとともに、前記第二物理カードから前記第一物理カードへデータを転送するトンネルを形成する物理スイッチを備えることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第一物理カードは、前記第一物理カードおよび前記第二物理カードの両方の障害を検出すると、前記第二回線によって送信するデータを破棄することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−258587(P2010−258587A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104067(P2009−104067)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】