説明

通信装置

【課題】ネットワークを通じた通信装置によるデータ通信を、従来の通信装置よりも更に効率よく行う。
【課題を解決するための手段】複合機1において、タイムアウト管理部105は、通信相手先へ接続要求に応答した通信相手先からの応答が、当該接続要求に対応して行われるべき接続処理の実行が待ち行列に入ったことを示す応答である場合には(S4でYES)、タイムアウト時間を延長して(S5)、通信を切断せずに当該通信相手先による上記 接続処理の実行を待つ(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関し、特に、通信相手先との通信開始時に接続を確立させるための処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、SIP(Session Initiation Protocol)による通信を行う通信端末装置が知られている(下記特許文献1参照)。この通信端末装置は、例えば、画像データを通信相手先の装置に送信する場合、通信開始時に接続リクエスト(INVITE)を通信相手先に要求し、当該通信相手先から接続成功の応答信号が返信されてくると、当該通信相手先との接続を確立して画像データを送信する。一方、当該接続リクエスト要求時に、通信相手先から接続不可の応答信号が返信されてきた場合には、当該通信端末装置は、タイムアウト期間の経過後に通信を切断してリダイヤルを行うが、SIPによる通信では、この応答信号に応答ステータス情報が含まれるため、当該応答ステータス情報に応じたリダイヤル制御を行う。当該通信端末装置は、応答ステータス情報がRetry-After(所定期間経過後に再度要求を求める意味を有する)である場合、このRetry-Afterが示す期間の経過後にリダイヤルを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される通信端末装置は、通信相手先に接続可能な適切な時期にリダイヤルを行うことでデータ通信の効率化を図ることが可能であるが、この場合、上記通信相手先との通信を一旦切断することになる。当該通信端末装置では、リダイヤル時には、接続リクエスト(INVITE)の通信相手先への要求を再度繰り返すことになるため、この点については更なる改善が望まれる。また、リダイヤル制御を行う場合であっても、データ通信の効率化を更に進めることが求められる。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、ネットワークを通じた通信装置によるデータ通信を、従来の通信装置よりも更に効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、SIP(Session Initiation Protocol)により、通信相手先との間でリクエスト要求と、通信相手先からの応答及びリクエストに対する応答とを行う通信制御部と、
前記通信制御部により前記リクエスト要求として前記通信相手先に送信された接続要求に応じた接続の処理が当該通信相手先との間で行われないときに、当該通信相手先により当該接続処理が実行されることを前記通信制御部に待機させる待機時間を設定するタイムアウト管理部とを備え、
前記タイムアウト管理部は、前記通信相手先に送信された前記接続要求に応答して前記通信制御部により当該通信相手先から受信された応答が、前記接続要求に応じた接続処理が待ち行列に入ったことを示す場合、前記待機時間を予め定められた時間だけ延長し、
前記通信制御部は、前記タイムアウト管理部によって延長された当該待機時間に基づいて、前記通信相手先により前記接続要求に応じた接続処理が実行されることを待機し、当該延長された待機時間経過後は、当該待機を中止して通信を切断する通信装置である。
【0007】
この発明では、通信相手先へ接続要求に応答した当該通信相手先からの応答が、障害発生によるエラーを示す内容ではなく、待機さえすれば接続される可能性が高い例えば182 Queuedのような、当該接続要求に応じた接続処理が待ち行列に入ったことを示す応答である場合には、タイムアウト管理部が上記待機時間を延長し、通信制御部は、この延長された待機時間が経過するまで通信を切断せずに当該通信相手先による上記接続処理の実行を待つので、当該通信相手先から上記接続処理の成功を示す応答信号を受信したときには、即座に接続を確立して、データ送信等を行うことが可能である。このため、従来のように、通信を一旦切断してリダイヤル制御を行う場合よりも、信号送受信回数を減らして効率よく通信を行うことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信装置であって、操作者に対して操作案内を報知する報知部と、
前記タイムアウト管理部が前記待機時間を予め定められた時間だけ延長するとき、前記接続要求に応じた接続処理を待機している旨のメッセージを前記報知部に報知させる報知制御部とを更に備えるものである。
【0009】
この発明によれば、報知制御部が、タイムアウト管理部により待機時間が延長されるときは、上記接続処理の実行を待機している状態であるメッセージを報知部に報知させるので、操作者に、当該通信装置が通信に問題を生じて動作しないのではなく、通信相手先による接続処理を待機している状態にあることを認識させることができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の通信装置であって、前記通信制御部は、前記予め定められた時間だけ延長された前記待機時間に基づいて前記接続処理を待機しているときに、新たに別の通信の要求が発生した場合には、当該延長された待機時間の経過を待たずに、当該待機を中止して通信を切断するものである。
【0011】
この発明によれば、通信制御部は、上記延長された待機時間に基づく待機中に、新たに別の通信の要求が発生した場合には、当該延長された待機時間の経過を待たずに当該待機を中止して通信を切断するので、当該通信切断後、本来であれば当該延長された待機時間として待機しなければならない時間を有効に活用して、新たな別の通信要求を実行することが可能になる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の通信装置であって、前記通信制御部は、前記待機時間経過による通信切断後に、前記接続要求を同一の通信相手先に送信する処理を予め定められた期間毎に予め定められた回数だけ実行するリダイヤル制御を行い、
前記タイムアウト管理部は、前記待機時間を予め定められた時間だけ延長するとき、前記予め定められた期間と前記予め定められた回数の乗算により定まる時間の範囲内で、前記待機時間を延長する前記予め定められた時間を定めるものである。
【0013】
この発明によれば、タイムアウト管理部は、前記待機時間を予め定められた時間だけ延長するとき、上記リダイヤル制御を続ける最長期間となる、上記予め定められた期間と上記予め定められた回数の乗算により定まる時間の範囲内で、上記待機時間を延長するので、通信相手先において当該接続の処理が実行されるのを待機している状態が、上記リダイヤル制御が行われる期間よりも長い長時間に亘ってしまうことにより、上記接続要求に基づく通信のために当該通信装置による通信処理が占有されてしまう事態を回避できる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の通信装置であって、前記通信制御部は、前記延長された待機時間の経過を待たずに、当該待機を中止して通信を切断した場合には、前記延長された待機時間に基づいた待機の開始時から当該通信切断時までの経過時間を前記延長された待機時間から減算した時間の範囲で、前記リダイヤル制御を行うものである。
【0015】
この発明によれば、通信制御部は、上記延長された待機時間の経過を待たずに、当該待機を中止して通信を切断した場合には、延長された待機時間に基づいた待機の開始時から当該通信切断時までの経過時間を前記延長された待機時間から減算した時間の範囲内で、上記リダイヤル制御を行うので、上記接続要求の待機を中断して通信が切断されてリダイヤル制御に入った場合でも、このリダイヤル制御が上記延長された待機時間を超えて実行され続ける事態を回避し、処理待ちやリダイヤル制御の実行により当該通信装置による通信処理が長時間占有されてしまう事態を回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネットワークを通じた通信装置によるデータ通信を、従来の通信装置よりも更に効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る通信装置の一実施形態としてのファクシミリ装置を用いてネットワーク通信を行う場合のネットワーク構成図を示す図である。
【図2】複合機の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図3】発信元である複合機と通信相手先となる複合機との間でのファクシミリ通信時における通信手順を示す図である。
【図4】複合機におけるSIPによるファクシミリ通信の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図5】複合機におけるSIPによるファクシミリ通信の第2実施形態を示すフローチャートである。
【図6】複合機におけるSIPによるファクシミリ通信の第3実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る通信装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る通信装置の一実施形態としてのファクシミリ装置を用いてネットワーク通信を行う場合のネットワーク構成図を示す図である。
【0019】
本実施形態では、本発明に係る通信装置の一実施形態であるファクシミリ装置として、複合機1を適用する例を用いて説明する。複合機1は、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能、及びプリンタ機能を備える。複合機1は、SIPによる呼制御機能と、T.38勧告に準拠したIPネットワーク上のファクシミリ機能を備える。本実施形態では、SIPによる呼制御機能を用いた上記ファクシミリ機能に加えて、公衆電話回線網を通じたファクシミリ通信機能を備える複合機1を例にして説明している。
【0020】
複合機1は、例えば企業の事業所等において、LAN(Local Area Network)5により任意数のパーソナルコンピュータ(以下、PC)2,3とネットワーク接続されている。当該LAN5には、複合機1及びPC2,3は、IPアドレスにより互いを認識して当該各装置間でデータの送受信が可能である。LAN5は、ルータ4を介して外部のインターネット6に接続されている。
【0021】
本実施形態では、複合機1が、SIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能によるファクシミリ送信で送信対象データを送信する相手先(当該送信対象データを受信する相手先)も、当該SIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能を備えたファクシミリ装置又は複合機等である。本実施形態では、当該通信相手先となる装置を複合機7として説明する。この複合機7も、複合機1と同様に、当該複合機7が設置されている環境内において、LAN10等によって任意数のPC8,9とデータ送受信可能に接続されている。また、当該LAN10はルータ11を介してインターネット6に接続されており、当該インターネット6を通じて、上記送信対象データの送信元である上記複合機1とのデータ送受信が可能とされている。
【0022】
次に、複合機1の構成を説明する。図2は複合機1の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0023】
複合機1は、制御ユニット10を備える。制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM及び専用のハードウェア回路等から構成され、複合機1の全体的な動作制御を司る。
【0024】
制御ユニット10は、スキャナ部51、画像処理部31、記録部41、操作部61、ファクシミリ通信部71、HDD(ハードディスクドライブ)81、並びに、ネットワークインタフェイス部91と接続されている。
【0025】
制御ユニット10は、上述した複合機1の全体的な動作制御を司る主制御部100を備える。主制御部(特許請求の範囲でいう報知制御部の一例)100は、スキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能及びプリンタ機能の各機能についての動作制御を実行するために必要な各機構部の駆動及び処理を制御する。
【0026】
スキャナ部(特許請求の範囲における読取部の一例)51は、図示しないスキャナを構成する画像照射ランプ511及びCCD(電荷結合素子:ChargeCoupled Device)センサ512を備える。スキャナ部51は、画像照射ランプ511により原稿を照射し、その反射光をCCDセンサ512で受光することにより、原稿から画像を読み取る。
【0027】
画像処理部31は、補正部311及び画像加工部312を備える。画像処理部31は、スキャナ部51で読み取られた画像データを必要に応じて補正部311及び画像加工部312により処理する。画像処理部31により処理された画像データは、画像メモリ32に記憶され、又は、記録部41或いはファクシミリ通信部71等に出力される。補正部311は、スキャナ部51で読み取られた画像データに対してレベル補正、ガンマ補正等の所定の補正処理を行う。画像加工部312は、画像データの圧縮又は伸張処理、及び拡大又は縮小処理等の種々の加工処理を行う。画像メモリ32は、上記スキャナ部51で読み取られた画像データを記憶する。
【0028】
記録部41は、図示しない給紙カセットや給紙ローラ等から構成される記録紙搬送部411、図示しない感光体ドラム、露光装置、現像装置等から構成される画像形成部412、図示しない転写ローラ等から構成される転写部413、及び図示しない定着ローラ等から構成される定着部414を備える。記録部41は、プリント対象とされる画像データに基づく画像を記録紙上に印刷する役割を果たす。当該記録部41によるプリント対象となる画像データは、スキャナ部51で読み取られた画像データ、LAN5及びネットワーク制御部104を介してPC2,3等から送信されてきた画像データ、インターネット6、LAN5及びネットワーク制御部104を介して外部の複合機7及びPC8,9等から送信されてきた画像データ等である。具体的には、記録紙搬送部411が記録紙を画像形成部412へ搬送し、画像形成部412は上記の画像データに対応するトナー像を形成し、転写部413がトナー像を記録紙に転写して、定着部414がトナー像を記録紙に定着させる。このようにして記録部41による記録紙上への画像形成が行われる。
【0029】
操作部61は、複合機1が実行可能な各種動作及び処理について操作者からの指示を受け付けるタッチパネル部及び操作キー部を備える。タッチパネル部は、タッチパネルが設けられたLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部(特許請求の範囲でいう報知部の一例)611を備えてなる。タッチパネル部及び操作キー部は、例えば、ファクシミリ送信の送信対象データの通信相手先を指定する指示等を操作者から受け付ける。操作部61により受け付けられた指示は主制御部100に送られ、主制御部100は、当該指示に基づいて複合機1による各種動作及び処理を制御する。
【0030】
ファクシミリ通信部71は、図略の符号化/復号化部、変復調部及びNCU(Network Control Unit)を備え、公衆電話回線網を用いてのファクシミリの送信を行うものである。ファクシミリ通信部71は、例えばスキャナ部51によって読み取られた原稿の画像データを、電話回線を介してファクシミリ装置等へ送信し、ファクシミリ装置等から送信された画像データを受信する。
【0031】
HDD(ハードディスクドライブ)81は、スキャナ部51によって読み取られた画像データ及び同画像データに設定されている出力形式等の種々のデータ等を記憶する。HDD81に記憶されている画像データは、複合機1及びこれに採用される各種プログラムで用いられる。
【0032】
ネットワークインタフェイス部91は、LANボード等の通信モジュールから構成され、当該ネットワークインタフェイス部91に接続されたLAN5等を介して、外部装置(複合機7、又はPC8,9等)と種々のデータの送受信を行う。本実施形態では、ネットワークインタフェイス部91は、SIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能によるファクシミリ通信のためのプロトコルに対応している。
【0033】
また、制御ユニット10は、ネットワーク制御部104と、タイムアウト管理部105とを更に備える。
【0034】
ネットワーク制御部104は、SIPによるネットワーク通信を行うための制御を担当する。例えば、ネットワーク制御部104は、通信相手先との間で接続要求等のリクエスト要求と、通信相手先から送信されてくる応答(レスポンス)及びリクエスト要求に対する応答とを行う。ネットワーク制御部104は、上記接続要求に応じた接続を、通信相手先との間で確立した後、スキャナ部51によって読み取られた原稿画像データからなる送信対象データを、操作部61に操作者から受け付けられた通信相手先情報(ファクシミリ送信の通信相手先を示す情報)が示す通信相手先に、ネットワークインタフェイス部91から、LAN5及びインターネット6等のネットワークを通じて、SIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ通信により送信する。また、ネットワーク制御部104は、スキャナ部51等により取得された上記送信対象データを、SIPによる通信(本実施形態ではファクシミリ送信)に用いる予め定められた符号化方式により符号化及び復号化する。なお、ネットワーク制御部104及びネットワークインタフェイス部91は、上記送信対象データとして、ネットワークを通じてPC2,3等から受信した画像データ(画像を表現できるデータ形式であればデータ種を問わない)を、上記のようにして通信相手先に送信するようにしてもよい。
【0035】
また、ネットワーク制御部104は、後述するタイムアウト管理部105によって設定されたタイムアウト時間(待機時間)に基づいて、通信相手先に送信した接続要求に応じた接続処理が当該送信相手先で実行される状態になるのを待機し、当該タイムアウト時間の経過後は、当該待機を中止して通信を切断する制御を行う。
【0036】
なお、当該ネットワーク制御部104及びネットワークインタフェイス部91は、特許請求の範囲における通信制御部の一例であり、また、データ送信制御部の一例でもある。
【0037】
特許請求の範囲に示す通信相手先の装置は、上記に複合機7として示されるファクシミリ装置に限られず、パーソナルコンピュータ、更にはモバイル機器等の他の通信機器であっても構わない。なお、当該通信相手先の装置としては、上述したSIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能に対応してデータ送受信可能な機器であれば採用可能である。なお、以下では、通信相手先の装置が複合機である場合を例にして説明する。
【0038】
なお、本実施形態において通信相手先とする複合機7は、例えば、ネットワーク制御部70と、主制御部72と、データ記憶部73とを備える。ネットワーク制御部70は、複合機1のネットワーク制御部104及びネットワークインタフェイス部91と同様に、ネットワークを通じたデータ通信を制御する。主制御部72は、複合機7の全体的な動作制御を司る。データ記憶部73は、メモリ又はHDD等からなり、ネットワークを通じて外部機器から受信したデータを記憶する装置である。
【0039】
タイムアウト管理部105は、通信相手先に送信された接続要求に応じた接続が成功したことを示す接続成功信号をネットワーク制御部104及びネットワークインタフェイス部91が当該通信相手先から受信しないとき、当該通信相手先により当該接続処理が実行されることをネットワーク制御部104に待機させるタイムアウト時間(待機時間)を設定する。また、タイムアウト管理部105は、通信相手先への上記接続要求に対する応答信号としてネットワーク制御部104等により当該通信相手先から受信されたレスポンスが、当該接続要求の対象である接続処理の実行が待ち行列に入ったことを示す場合には、上記タイムアウト時間を予め定められた時間だけ延長する。例えば、当該タイムアウト管理部105は、上記受信されたレスポンスが182 Queuedであり、当該接続要求の対象である接続処理が、当該通信相手先に既に受け付けられている処理の実行後に行われる順番待ちの状態(待ち行列)に入ったことを示す場合には、上記タイムアウト時間を予め定められた時間(例えば、120秒間)だけ延長する。
【0040】
次に、複合機1による通信相手先装置との通信処理の第1実施形態を、SIPによるファクシミリ通信を例にして説明する。図3は、発信元である複合機1と通信相手先となる複合機7との間でのファクシミリ通信時における通信手順を示す図である。図4は、複合機1におけるSIPによるファクシミリ通信の第1実施形態を示すフローチャートである。以下に示すSIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能によるファクシミリ通信は、上記LAN5及びインターネット6等を通じて行われるが、説明の簡略化のため、特にこれらについては言及しない。なお、以下には、SIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能によるファクシミリ通信又は送信を、単にファクシミリ通信又は送信という。
【0041】
複合機1の操作部61が、操作者による操作に基づいて、ファクシミリ送信を行う旨の指示と、ファクシミリ送信の通信相手先を示す通信相手先情報の入力を操作者から受け付けると(S1でYES)、複合機1のネットワーク制御部104及びネットワークインタフェイス部91(以下、単にネットワーク制御部104という)は、当該通信相手先に対して接続を要求する(S2)。例えば、ネットワーク制御部104は、図3に示すように、通信相手先の複合機7に、SIPプロキシ接続を要求するINVITE(例えば、当該接続要求のリクエストの宛先を示すためのURI及びSIPのバージョンを含む)の信号を送信する。このINVITEは、まずSIPサーバに送られる。このINVITEを受信したSIPサーバは、送信元である複合機1に暫定応答100Tryingを送信する。SIPサーバは、受信したINVITEを通信相手先である複合機7に送信する。このINVITEを受信した通信相手先の複合機7は、所定の呼出処理を行い、併せて、送信元の複合機1に暫定応答180Ringingを返信する。この180RingingはSIPサーバを介して、送信元の複合機1に送られる。
【0042】
続いて、ネットワーク制御部104は、上記接続要求に対する応答として受信した信号が接続成功を示すか否かを判断し(S3)、当該受信した信号が接続成功を示す内容である場合は(S3でYES)、当該通信相手先との接続を確立する(S11)。例えば、ネットワーク制御部104は、上記接続要求(INVITE)の当該通信相手先への送信後に、当該通信相手先の複合機7から、成功200OKの応答信号(上記受信した信号)を、SIPサーバを介して受信したとき(S3でYES)、例えばACKリクエストを当該通信相手先の複合機7に送信し、接続(セッション)を確立する(S11)。
【0043】
この接続確立後、複合機1のネットワーク制御部104は、通信相手先の複合機7に、上記スキャナ部51によって読み取られた原稿の読取画像のデータを送信対象データとして上記通信相手先に対して送信する(S12)。
【0044】
なお、送信元の複合機1は、上記送信対象データの送信を完了すると、通信相手先の複合機7に対して、BYE要求(セッション切断要求)を送信し、これに応答して、通信相手先の複合機7が200OK応答を、送信元である複合機1に返信するとセッションが終了して通信が終了する。
【0045】
一方、上記S3において、ネットワーク制御部104は、上記受信した信号が接続成功を示す内容ではないと判断した場合には(S3でNO)、当該受信した信号の内容が、接続処理の実行が待ち行列に入ったことを示すか否かを判断する(S4)。
【0046】
ネットワーク制御部104により、上記受信した信号の内容が、接続処理の実行が待ち行列に入ったことを示すと判断された場合(S4でYES)、タイムアウト管理部105は、上記タイムアウト時間を予め定められた時間だけ延長する。例えば、上記通信相手先の複合機7からの応答信号として受信されたレスポンスが182 Queuedであり(S4でYES)、複合機1から要求した接続処理が、当該通信相手先である複合機7に既に受け付けられている他の処理の実行後に行われる順番待ちの状態(待ち行列)に入ったことを示す場合には、当該タイムアウト管理部105は、上記タイムアウト時間を予め定められた時間(例えば、120秒間)だけ延長する(S5)。
【0047】
また、ネットワーク制御部104により、上記受信した信号の内容が、接続処理の実行が待ち行列に入ったことを示さないと判断された場合は(S4でNO)、タイムアウト管理部105は、上記タイムアウト時間の延長(S5)は行わない。例えば、上記受信した信号が486 Busy Here、404 Not Found、603 Decline等であり、エラー等を示す内容である場合には、タイムアウト管理部105は上記タイムアウト時間を延長しない。
【0048】
タイムアウト管理部105は、上記S4でNO又はS5の処理を経て、タイムアウト時間を確定した後、内蔵するタイマ等により、当該確定したタイムアウト時間の計測を開始する(S6)。なお、当該タイムアウト時間の計測は、タイムアウト管理部105に代わって、ネットワーク制御部104が、内蔵するタイマ等により行うものとしてもよい(各実施形態について同じ)。
【0049】
上記タイムアウト時間の計測開始後、タイムアウト時間が経過するまでに、ネットワーク制御部104が、上記通信相手先の複合機7から接続成功を示す信号(200OK)を受信すると(S7でYES)、ネットワーク制御部104は、当該通信相手先との接続を確立し(S11)、通信相手先の複合機7に送信対象データを送信する(S12)。
【0050】
また、上記タイムアウト時間が経過するまでに、ネットワーク制御部104が、上記通信相手先の複合機7から接続成功を示す信号を受信しなかった場合は(S7でNO,S8でYES)、ネットワーク制御部104は、相手先の複合機7に対して、ACK又はCANCEL リクエストを送信し、これに応答して、相手先の複合機7が200OK応答を、送信元である複合機1に返信するとセッションを切断して通信が終了する。
【0051】
このように通信が切断されると、その後、ネットワーク制御部104は、リダイヤル制御を行う(S10)。例えば、ネットワーク制御部104は、上記接続要求を、上記と同一の通信相手先である複合機7に送信する処理を、予め定められた期間(例えば、1分)毎に予め定められた回数(例えば、10回)だけリトライするリダイヤル処理を実行する。
【0052】
この第1実施形態によれば、タイムアウト管理部105が、通信相手先である複合機7への接続要求に応答した当該複合機7からの応答が、障害発生によるエラーや話中等を示すものではなく、当該接続要求に応じた接続処理が待ち行列に入ったことを示し、待機さえすれば比較的早期に接続される可能性が高い例えば182 Queuedのような信号であれば待機時間を延長し、ネットワーク制御部104は、通信を切断することなく当該通信相手先である複合機7からの接続成功を示す応答信号(例えば200 OK)を待つので、当該複合機7から接続成功を示す応答信号を受信すれば、即座に接続を確立でき、データ送信を開始することが可能である。このため、従来のように、通信を一旦接続してリダイヤル制御を行って再度の接続を試みる場合よりも、通信回数を減らして効率よく通信を行うことができる。
【0053】
なお、この第1実施形態において、タイムアウト管理部105が、上記のようにタイムアウト時間を延長するとき(S5)、タイムアウト管理部105は、上記ネットワーク制御部104によるリダイヤル制御において再度の接続要求を通信相手先に送信する処理を行う間隔である上記予め定められた期間と、当該再度の接続要求を送信する上記予め定められた回数との乗算により定まる時間の範囲内で、上記タイムアウト時間の延長時間を定めるようにしてもよい。
【0054】
これによれば、通信相手先において当該接続の処理が実行されるのを待機している状態が、上記リダイヤル制御が行われる期間よりも長い長時間に亘ってしまうことにより、上記接続要求に基づく通信のために複合機1による通信処理が占有されてしまう事態を回避できる。
【0055】
次に、複合機1による通信相手先装置との通信処理の第2実施形態を、SIPによるファクシミリ通信を例にして説明する。図5は、複合機1におけるSIPによるファクシミリ通信の第2実施形態を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同様の処理は説明を省略する。
【0056】
本第2実施形態では、タイムアウト管理部105が上記タイムアウト時間を延長した場合に(S26)、主制御部100が、表示部611に、当該通信相手先の複合機7により当該接続の処理が実行されることを、複合機1が待機している状態にあることを示す旨のメッセージを表示させる(S27)。この後、ネットワーク制御部104が当該通信相手先の複合機7から接続成功を示す信号を待機する処理(S28)及びこれに続く一連の処理に移る。
【0057】
この第2実施形態によれば、タイムアウト管理部105によりタイムアウト時間が延長されるときは、主制御部100の制御の下、接続を要求した通信相手先により当該接続の処理が実行されることを複合機1が待機している状態にあることを示す旨のメッセージが表示部611に表示されるので、操作者に、当該複合機1が通信(ファクシミリ通信)に問題を生じて動作しないのではなく、通信相手先である複合機7による処理待ちの状態にあることを認識させることができる。
【0058】
次に、複合機1による通信相手先装置との通信処理の第3実施形態を、SIPによるファクシミリ通信を例にして説明する。図6は、複合機1におけるSIPによるファクシミリ通信の第3実施形態を示すフローチャートである。なお、第1又は第2実施形態と同様の処理は説明を省略する。
【0059】
本第3実施形態では、タイムアウト管理部105による上記タイムアウト時間の計測開始後(S46)、当該タイムアウト時間が経過するまでの間(S50)、ネットワーク制御部104が、接続を要求した通信相手先において当該接続の処理が実行されるのを待機している状態にあるとき、ネットワーク制御部104は、上記通信相手先の複合機7からの接続成功を示す信号の受信を待機すると共に(S48)、当該接続要求中の通信とは異なる新たな別の通信(ファクシミリ通信等)を開始する要求があるかを待機する(S49)。
【0060】
そして、ネットワーク制御部104が、当該待機状態中に、操作者による操作部61の操作等に基づいて新たな別の通信開始の要求を受け付けると(S49でYES)、この時点で待機中となっている上記接続要求についての通信を、当該タイムアウト時間の経過を待たずに、例えばCANCELリクエストを通信相手先である複合機7に送信することにより直ちに切断する(S53)。
【0061】
続いて、ネットワーク制御部104は、当該新たな別の通信についての接続要求を、当該新たな別の通信開始の要求が示す通信相手先に送信し(S54)、当該新たな別の通信の成立を試みる。上記通信を切断した接続要求についての通信に関しては、ネットワーク制御部104がリダイヤル制御を開始する(S52)。
【0062】
なお、上記タイムアウト時間の到来に至った時点で、ネットワーク制御部104が、上記通信相手先の複合機7からの接続成功を示す信号、及び当該接続要求中の通信とは異なる新たな別の通信を開始する要求のいずれも受信しなかったときは(S48でNO,S49でNO,S50でYES)、第1及び第2実施形態と同様に、当該接続要求中の通信相手先である複合機7に例えばACK又はCANCELリクエストを送信して通信を切断する(S51)。
【0063】
この第3実施形態によれば、本来であれば当該延長された待機時間として待機しなければならない時間を有効に活用して、新たな別の通信要求を実行することが可能になる。
【0064】
なお、本第3実施形態では、表示部611に、通信相手先により接続の処理が実行されることを待機している旨のメッセージを表示部611に表示させる処理(図6のS47)は、行わないようにすることも可能である。
【0065】
また、このようにネットワーク制御部104が、上記延長されたタイムアウト時間の経過を待たずに、上記待機を中止して通信を切断した場合には、ネットワーク制御部104は、上記延長されたタイムアウト時間に基づいた待機の開始時(ネットワーク制御部104による上記延長されたタイムアウト時間の計測開始時)から、S53における上記通信切断時までの経過時間を、上記延長されたタイムアウト時間から減算して得られる時間の範囲内で、リダイヤル制御(S52)を実行するようにしてもよい。
【0066】
これによれば、上記接続要求の待機を中断して通信が切断されて、リダイヤル制御に入った場合でも、このリダイヤル制御が上記延長された待機時間を超えて実行され続ける事態を回避し、処理待ちやリダイヤル制御の実行により当該通信装置による通信処理が長時間占有されてしまう事態を回避できる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態では、複合機1による通信相手先とのファクシミリ通信を、IPによる通信、例えばSIPによる呼制御機能を用いたIPネットワーク上のファクシミリ機能で行うものとしているが、SIPで相手先と接続された後の通信については、任意のプロトコルが使用できる。例えば、他のネットワーク通信、例えば、インターネットファクシミリ機能等によるものであってもよい。
【0068】
また、上記各実施形態では、本発明に係る通信装置を複合機及びファクシミリ装置として説明しているが、本発明に係る通信装置はこれに限定されない。例えば、本発明に係る通信装置がパーソナルコンピュータであり、当該パーソナルコンピュータ等から通信相手先の装置に通信を行う場合に、上述した各実施形態に示した通信処理が行われるものとしてもよい。
【0069】
なお、図1乃至図6を用いて上記各実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0070】
1 複合機
10 制御ユニット
91 ネットワークインタフェイス部
100 主制御部
104 ネットワーク制御部
105 タイムアウト管理部
611 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIP(Session Initiation Protocol)により、通信相手先との間でリクエスト要求と、通信相手先からの応答及びリクエストに対する応答とを行う通信制御部と、
前記通信制御部により前記リクエスト要求として前記通信相手先に送信された接続要求に応じた接続の処理が当該通信相手先との間で行われないときに、当該通信相手先により当該接続処理が実行されることを前記通信制御部に待機させる待機時間を設定するタイムアウト管理部とを備え、
前記タイムアウト管理部は、前記通信相手先に送信された前記接続要求に応答して前記通信制御部により当該通信相手先から受信された応答が、前記接続要求に応じた接続処理が待ち行列に入ったことを示す場合、前記待機時間を予め定められた時間だけ延長し、
前記通信制御部は、前記タイムアウト管理部によって延長された当該待機時間に基づいて、前記通信相手先により前記接続要求に応じた接続処理が実行されることを待機し、当該延長された待機時間経過後は、当該待機を中止して通信を切断する通信装置。
【請求項2】
操作者に対して操作案内を報知する報知部と、
前記タイムアウト管理部が前記待機時間を予め定められた時間だけ延長するとき、前記接続要求に応じた接続処理を待機している旨のメッセージを前記報知部に報知させる報知制御部とを更に備える請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記予め定められた時間だけ延長された前記待機時間に基づいて前記接続処理を待機しているときに、新たに別の通信の要求が発生した場合には、当該延長された待機時間の経過を待たずに、当該待機を中止して通信を切断する請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記待機時間経過による通信切断後に、前記接続要求を同一の通信相手先に送信する処理を予め定められた期間毎に予め定められた回数だけ実行するリダイヤル制御を行い、
前記タイムアウト管理部は、前記待機時間を予め定められた時間だけ延長するとき、前記予め定められた期間と前記予め定められた回数の乗算により定まる時間の範囲内で、前記待機時間を延長する前記予め定められた時間を定める請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記延長された待機時間の経過を待たずに、当該待機を中止して通信を切断した場合には、前記延長された待機時間に基づいた待機の開始時から当該通信切断時までの経過時間を前記延長された待機時間から減算した時間の範囲で、前記リダイヤル制御を行う請求項3に記載の通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−16937(P2013−16937A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146813(P2011−146813)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】