説明

通帳情報記録再生装置及び通帳取引装置

【課題】通帳の磁気ストライプに、磁気情報がその磁気ストライプの保磁力特性に対応する大きさの記録電流で記録されているか否かを判別して、磁気情報の誤読や誤記録が発生する可能性を低減できる通帳情報記録再生装置及び通帳取引装置を提供する。
【解決手段】磁気ストライプ付き通帳9の磁気ストライプ10には、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性のものや、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性のものがあり、各磁気ストライプ10に対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で磁気情報が記録されているか否かによって、磁気情報の再生波形のレベルや周期がそれぞれ異なる。通帳情報記録再生装置1は、通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報の再生波形のレベル及び周期を解析することで、磁気情報が、磁気ストライプ10に対して、その保磁力特性に対応した記録電流で正しく記録されているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ストライプ付き通帳に記録された磁気情報の誤読を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯音楽プレーヤ等の携帯機器の普及に伴い、エンドユーザが、携帯機器と磁気ストライプ付き通帳(以下、単に通帳とも称する。)を一緒にカバンやポケット等に入れて持ち歩く機会が増えている。しかし、通帳をこのように取り扱うと、携帯用機器が内蔵するスピーカやモータ等に使用される磁石の影響で、通帳の磁気ストライプに記録されたデータが破壊または消去されることがある。このように、通帳の磁気情報が破壊されると、エンドユーザはATM等の通帳取引装置による取引を行うことができなくなるため、通帳を発行する銀行等の金融機関には、エンドユーザから多数の苦情が寄せられている。
【0003】
そこで、銀行等の金融機関は、このような問題の対策として、従来一般的に使用されている通帳の磁気ストライプを、保磁力が高く磁石等の影響を受けにくい、つまり、磁気情報が消えにくいものへの切り替えの検討を行ったり、切り替えを開始したりしている。
【0004】
ここで、従来から使用されている通帳の磁気ストライプは、保磁力が一定値よりも低いものが使用されているので、低保磁力特性の磁気ストライプと称する。また、新たに導入される通帳の磁気ストライプは、保磁力が一定値よりも高いものが使用されるので、高保磁力特性の磁気ストライプと称する。
【0005】
各金融機関が低保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳から高保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳へ切り替えを行う場合、各エンドユーザが使用する通帳や金融機関の窓口等に設置している通帳取引装置を一斉に変更することは、物理的にも費用的にも困難である。そのため、通帳の切り替えが完了するまでは、高磁力特性の磁気ストライプ付き通帳を使用するエンドユーザと、低保磁力特性の通帳を使用するエンドユーザと、が併存することになる。また、ATM等の通帳取引装置は、高保磁力特性と低保磁力特性のいずれの通帳にも対応する新型のものに切り替える必要があるが、上記のように通帳取引装置を一斉に変更することができないので、従来の低保磁力特性の通帳に対応する通帳取引装置も、変更が完了するまで使用されることになる。
【0006】
このような移行期間には、従来の通帳取引装置により高保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳に、その磁気ストライプの保磁力特性に対応しない大きさの記録電流である低保磁力記録電流で磁気情報を誤記録するという問題の発生が考えられる。一方、新型の通帳取引装置においても、何らかの要因で、低保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳に、その磁気ストライプの保磁力特性に対応しない大きさの記録電流である高保磁力記録電流で磁気情報を誤記録するという問題の発生が考えられる。磁気ストライプには、その特性上、適正な記録電流で書き込みを行わないと、書き込んだデータが化ける可能性が高い。そのため、上記のように通帳に磁気情報を誤記録するという問題が発生すると、口座番号の誤読等、社会的にも重大問題が増加することが懸念される。
【0007】
そこで、従来、上記の問題に対処した方法や装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【特許文献1】特開平6−60308号公報
【特許文献2】特開2004−296058号公報
【特許文献3】特開2005−182914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明では、高保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳と低保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳とを適正に判別するために、磁気媒体の近傍にバーコード等の保磁力認識情報を記録して、この情報を読み取って保磁力を判定している。しかし、これは、通帳に保磁力認識情報を記録するとともに、通帳取引装置に保磁力認識情報の読み取り手段を通帳取引装置に設けなければならない。そのため、システムの再構築が必要となるので、現行の各装置の改良での対応は困難である。
【0009】
また、引用文献2に記載の発明では、磁気媒体に予備書き込みを行い、書き込みした記録電流に対し、期待した再生出力が得られるか否かによって、磁気媒体の保磁力の判定を行う。そのため、取引を行う度に予備書き込み動作を行うので、処理時間すなわちエンドユーザの待ち時間が増加し、エンドユーザに迷惑をかけてしまう。
【0010】
さらに、引用文献3記載の発明では、磁気カードの走行速度(スキャン速度)及び磁力に基づいて磁気カードの保磁力を判定するので、高保磁力特性の通帳と低保磁力特性の通帳との判別が可能である。しかしながら、両タイプの通帳に、適正な記録電流で書き込みが行われているか否かを判別することはできないので、記録された磁気情報を誤読する可能性があり、その場合には、エンドユーザに迷惑をかけるだけでなく、金融機関の信用低下につながる。
【0011】
このように、従来の方法や装置では、通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報が適正に記録されているか否かを短時間で判別して、磁気情報の誤読や誤記録の発生を防止することができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、通帳の磁気ストライプに、磁気情報がその磁気ストライプの保磁力特性に対応する大きさの記録電流で記録されているか否かを判別して、磁気情報の誤読や誤記録が発生する可能性を低減できる通帳情報記録再生装置及び通帳取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0014】
(1)磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報を磁気ヘッドで読み取り、この磁気情報に対応する再生波形を出力する磁気情報記録再生手段と、
前記再生波形のレベルまたは周期の少なくとも一方を解析し、その結果に基づいて前記磁気情報が、前記磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流である適正記録電流で記録されているか否かを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプには、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性のものや、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性のものがあり、各磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流である適正記録電流で磁気情報が記録されているか否かによって、磁気情報の再生波形のレベルや周期がそれぞれ異なる。この構成においては、通帳情報記録再生装置は、通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報の再生波形のレベルまたは周期の少なくとも一方を解析するので、磁気情報が、磁気ストライプに対して適正記録電流で正しく記録されているか否かを判定できる。したがって、通帳情報記録再生装置が、通帳の磁気ストライプに対して適正記録電流で磁気情報が記録されていると判定した場合には、その磁気情報に基づいて通帳取引を開始できる。また、通帳情報記録再生装置が、通帳の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応しない別の記録電流で磁気情報が記録されていると判定した場合には、磁気情報の誤読により、誤って通帳取引を行うことを確実に防止できる。
【0016】
(2)前記磁気情報記録再生手段がこれまでに出力した過去N回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形を過去再生波形として記憶する記憶手段を備え、
前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形のレベルと、前記記憶手段に記憶されている過去再生波形を平均した基準レベルと、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性の磁気ストライプに対して、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対応した大きさの記録電流で磁気情報を誤って記録した場合には、必要以上に高い電流値にて書き込みが行われているため、磁気情報が飽和してしまい、適正記録電流で記録された場合に比べて、磁気情報の再生波形のレベルが小さくなる。また、磁気ヘッドが摩耗したり、磁気情報記録再生手段が故障したりして読取異常が発生した場合も、同様に、磁気情報の再生波形のレベルが小さくなる。この構成においては、通帳情報記録再生装置は、磁気情報記録再生手段が出力した今回の再生波形のレベルと、磁気情報記録再生手段が出力したN回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のレベルを平均した基準レベルとを比較する。基準レベルをN回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のレベルを平均したものに設定することで、適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のレベルが、磁気ヘッドの摩耗等の経年劣化により徐々に低下している場合でも、適正記録電流で記録されていない磁気情報の再生波形は基準レベルとは異なるレベルとなるので、磁気情報が適正記録電流で記録されていないことを容易に判定できる。例えば、今回の再生波形のレベルがこの基準レベルよりも小さいと、磁気情報が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されていないものと判定でき、通帳の磁気ストライプに磁気情報が誤記録されていることを容易に判定でき、磁気情報の誤読を防止できる。また、この場合には、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性の磁気ストライプに対して、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対応した大きさの記録電流で磁気情報を誤記録した場合か、または磁気情報記録再生手段の読取異常であると判定できる。
【0018】
(3)前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形中の最大ピーク列の波形周期と、予め設定した基準周期と、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
磁気ストライプに磁気情報を記録する際には、一定の周期つまり基準周期で記録するので、磁気情報の再生波形の周期が基準周期と異なる場合には、磁気ストライプに対して磁気情報を適正記録電流と異なる記録電流で誤って記録したか、高レベルのノイズが重畳していることが考えられ、いずれの場合も磁気情報を誤読する可能性が高い。例えば、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対して、低保磁力特性の記録電流で磁気情報を記録すると、十分な電流にて書き込みが行われていないので、磁気ストライプに記録されていた以前の磁気情報が消えずに残り、以前の磁気情報に新たな磁気情報を重ね書きしたような状態となり、再生波形のレベルは適正記録電流で記録された磁気情報と同様であるが、磁気情報の再生波形の周期に乱れが生じる。この構成においては、通帳情報記録再生装置は、磁気情報記録再生手段が出力した今回の再生波形においてピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する。したがって、磁気情報の最大ピーク列の波形周期が、基準周期と異なると、磁気情報が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されていないか、ノイズが重畳したものと判定でき、通帳の磁気ストライプに磁気情報が誤記録されていることを容易に検出でき、磁気情報の誤読防止が可能となる。また、この場合には、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対して、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性の磁気ストライプに対応した大きさの記録電流で磁気情報を誤記録していると判定することも可能である。
【0020】
(4)前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形中の前記最大ピーク列以外にピーク列を含むか否かを判定するとともに、このピーク列を含む場合にそのレベルと、予め設定した閾値のレベルと、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定することを特徴とする。
【0021】
保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対して、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性記録電流で磁気情報を記録すると、十分な電流にて書き込みが行われていないので、磁気ストライプに記録されていた以前の磁気情報が消えずに残り、以前の磁気情報に新たな磁気情報を重ね書きしたような状態となる。そのため、再生波形のピークレベルは適正記録電流で記録された磁気情報と同様なレベルの波形だけでなく、磁気情報の最大ピーク列以外にレベルの小さな波形、つまり最大ピーク列以外のピーク列を含むので、磁気情報の再生波形の周期に乱れが生じる。また、磁気情報にノイズが重畳した場合にも、同様に磁気情報の再生波形の周期に乱れが生じる。しかし、この最大ピーク列以外のピーク列のレベルが、予め設定した閾値のレベル以下であると、磁気情報を適正に読み出すことができる。この構成においては、通帳情報記録再生装置は、解析の対象とする今回の再生波形中の前記最大ピーク列以外にピーク列を含むか否かを判定するとともに、このピーク列を含む場合にそのレベルと、予め設定した閾値のレベルと、を比較する。したがって、磁気情報の再生波形において、最大ピーク列以外のピーク列のレベルが、予め設定した閾値のレベルを超えていると、磁気情報が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されていないものと判定でき、通帳の磁気ストライプに磁気情報が誤記録されていることを容易に検出でき、磁気情報の誤読防止が可能となる。また、磁気情報の再生波形において、最大ピーク列以外のピーク列のレベルが、予め設定した閾値のレベル以下であると、磁気情報にノイズが重畳したものと判定でき、通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報の再生波形における最大ピーク列をが適正に記録されているものと判定して、その磁気情報に基づいて通帳取引を開始することが可能となる。
【0022】
(5)前記判定手段は、前記最大ピーク列の波形周期が前記基準周期と一致する場合には、前記最大ピーク列による磁気情報を生成し、その磁気情報を、磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに対して、前記適正記録電流で前記磁気情報記録再生手段に記録させることを特徴とする。
【0023】
磁気情報の再生波形における最大ピーク列の波形周期が基準周期と一致する場合には、適正記録電流で磁気情報が記録されていない場合でも、最大ピーク列の磁気情報を読み出すことで、磁気ストライプに記録されている磁気情報を復元できる場合がある。この構成においては、基準周期と一致する最大ピーク列による磁気情報を生成して、その磁気情報を、磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに対して、前記適正記録電流で前記磁気情報記録再生手段に記録させる。したがって、磁気ストライプに対して磁気情報が適正記録電流で記録されていない場合でも、磁気情報を復元できるので、磁気情報の誤読を防止できる。
【0024】
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の通帳情報記録再生装置と、
前記通帳情報記録再生装置の判定手段が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で磁気情報が記録されていると判定すると、通帳取引を開始する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成においては、通帳取引装置は、(1)乃至(5)のいずれかに記載の通帳情報記録再生装置を備えているので、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されている場合には、通帳取引を直ちに開始することが可能であり、通帳の磁気ストライプに磁気情報が誤記録されていた場合には、通帳取引を開始しないので、磁気情報を誤読することがない。したがって、磁気ストライプの保磁力特性が異なる通帳が存在する場合に、磁気ストライプの保磁力特性に対応する大きさの記録電流で磁気情報が記録されている場合のみ、通帳取引を行うことが可能となり、磁気情報の誤読の発生を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報を読み取ると、磁気情報が適正記録電流で記録されているか否かを再生波形に基づいて速やかに判別するので、エンドユーザの待ち時間を増加させることなく、磁気情報の誤読や誤記録を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の説明では、従来から使用されている通帳であって、保磁力が一定値よりも低い磁気ストライプである低保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳と、新たに導入される通帳であって、保磁力が一定値よりも高い磁気ストライプである高保磁力特性の磁気ストライプ付き通帳と、の2種類の通帳について、各磁気ストライプの保磁力特性に対応する大きさの記録電流である適正記録電流で磁気情報が記録されているか否かを判定する場合を示す。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る通帳取引装置及び通帳情報記録再生装置のシステム構成図である。通帳情報記録再生装置である通帳処理部1は、通帳取引装置である現金自動取引装置(以下、ATMと称する。)100に搭載されている。図1に示すように、ATM100は、通帳処理部1、カード処理部2、紙幣処理部3、硬貨処理部4、通信部5、操作・表示部6、及び主制御部(CPU)7を備えている。また、通帳処理部1は、磁気情報記録再生部11、処理部12、及びメモリ13を備えている。さらに、磁気情報記録再生部11は、磁気ヘッド21、再生回路22、低保磁力記録回路23、高磁力記録回路24、及び不図示の通帳搬送機構を備えている。
【0029】
通帳処理部1は、磁気ストライプ付き通帳(以下、単に通帳と称する。)9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報の読み取り(再生)、及び通帳9の磁気ストライプ10への磁気情報の書き込み(記録)を行う。カード処理部2は、キャッシュカードに記録された磁気情報の読み取り等の処理を行う。紙幣処理部3は、紙幣の入出金処理を行う。硬貨処理部4は、硬貨の入出金処理を行う。通信部5は、不図示のホスト装置と取引データの送受を行う。操作・表示部6は、操作者の操作の受付、及び操作者への伝達事項の表示等を行う。主制御部(CPU)7は、ATM100の各部の制御を行う。
【0030】
また、通帳処理部1において、磁気情報記録再生部11は、通帳9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報の読み取りや、磁気ストライプ10への磁気情報の記録を行う。
【0031】
処理部12は、磁気情報記録再生部11の制御や、メモリ13に対して再生波形データを記憶させたり、再生波形データを読み出したりする。
【0032】
メモリ13は、磁気情報記録再生部11がこれまでにメモリ13に対して出力した過去N回分の再生波形を過去再生波形として記憶する。
【0033】
さらに、磁気情報記録再生部11において、磁気ヘッド21は、通帳挿入口8から挿入された通帳9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報の読み取り(再生)や、磁気ストライプ10への磁気情報の書き込み(記録)を行う。
【0034】
再生回路22は、磁気ヘッド21が読み取った磁気情報に応じた再生波形を出力する。
【0035】
低保磁力記録回路23は、処理部12から出力された情報を変換して、磁気ヘッド21により通帳9の磁気ストライプ10に低保磁力記録電流で磁気情報として記録させる。ここで、低保磁力記録電流とは、低保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応した大きさの記録電流(適正記録電流)である。低保磁力特性の磁気ストライプに対して低保磁力記録電流で磁気情報を記録すると、磁気情報を適正に記録することができる。
【0036】
高保磁力記録回路24は、処理部12から出力された情報を変換して、磁気ヘッド21により通帳9の磁気ストライプ10に高保磁力記録電流で磁気情報として記録させる。ここで、高保磁力記録電流とは、高保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応した大きさの記録電流(適正記録電流)である。高保磁力特性の磁気ストライプに対して高保磁力記録電流で磁気情報を記録すると、磁気情報を適正に記録することができる。
【0037】
ATM100では、以上のような構成により、磁気ストライプ付き通帳9が通帳挿入口8から挿入されると、通帳処理部1において、磁気ヘッド21で磁気ストライプ10に記録された磁気情報を読み出して、その再生波形の解析を処理部12にて行う。
【0038】
次に、通帳処理部1において、通帳9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報を読み取った際の再生波形出力電流波形の代表例を示す。図2は、磁気ストライプに記録した磁気情報の再生波形を示す図である。なお、図2には、通帳の磁気ストライプに並行して記録された2つの磁気情報の再生波形を示している。図2(A)は、低保磁力特性の磁気ストライプに、対応する低記録電流で記録した磁気情報の再生波形を示す図であり、図2(B)は、図2(A)の時間レンジを拡大した再生波形を示す図である。図2(A),(B)に示すように、低保磁力特性の磁気ストライプに対して、適正記録電流である低保磁力記録電流で磁気情報の書き込みが行われていることから、再生回路22の出力電流のピークレベルが高く、波形の周期が一定であり、波形に乱れがない。
【0039】
また、図示していないが、高保磁力特性の磁気ストライプに、対応する高保磁力記録電流で磁気情報を記録した場合には、その再生波形は図2(A),(B)に示した波形とほぼ同様の波形となる。つまり、高保磁力特性の磁気ストライプに対して、適正記録電流である高保磁力記録電流で磁気情報の書き込みが行われていることから、再生回路22の出力電流のピークレベルが高く、波形の周期が一定であり、波形に乱れがない。
【0040】
図2(C)は、低保磁力特性の磁気ストライプに高保磁力記録電流で記録した磁気情報の再生波形を示す図であり、図2(D)は、図2(C)の時間レンジを拡大した再生波形を示す図である。図2(C),(D)に示すように、低保磁力特性の磁気ストライプに対して、対応しない大きさの記録電流である高保磁力記録電流で磁気情報の書き込みが誤って行われていると、必要以上に高い電流値による磁気情報の書き込みとなり飽和状態となるため、再生回路22の出力電流のピークレベルが、図2(A),(B)に示した場合に比べて低くなっている。また、再生波形は飽和しているが、以前に記録されていた磁気情報は完全に消えているので、再生波形の周期に乱れはない。
【0041】
図2(E)は、高保磁力特性の磁気ストライプに低保磁力用電流で記録した磁気情報の再生波形を示す図であり、図2(F)は、図2(E)の時間レンジを拡大した再生波形を示す図である。図2(E),(F)に示すように、高保磁力特性の磁気ストライプに対して、誤った記録電流である低保磁力記録電流で磁気情報の書き込みが行われていると、十分な電流にて磁気情報の書き込みが行われていないので、磁気ストライプに記録されていた以前の磁気情報が消えずに残り、以前の磁気情報に新たな磁気情報を重ね書きしたような状態となる。そのため、再生波形は適正に記録された磁気情報と同様なのピークレベル波形だけでなく、磁気情報の再生レベルよりも小さなレベルの波形を含むので、磁気情報の再生波形の周期に乱れが生じる。
【0042】
このように、磁気情報の再生波形のレベルや周期を解析することで、磁気情報が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されているか否かを判定できる。すなわち、低保磁力特性の磁気ストライプに適正な記録電流(低保磁力記録電流)で磁気情報を記録したか、誤った記録電流(高保磁力記録電流)で磁気情報を記録したかを判定でき、また、高保磁力特性の磁気ストライプに適正な記録電流(高保磁力記録電流)で磁気情報を記録したか、誤った記録電流(低保磁力記録電流)で磁気情報を記録したかを判定できる。そこで、本発明では、磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報を読み取り、その磁気情報に対応する再生波形のレベルや周期を解析して、磁気情報の記録状態を判定し、磁気情報の誤読や誤記録を防止する。
【0043】
次に、ATM100及び通帳処理部1の具体的な動作について説明する。図3は、磁気ストライプに記録された磁気情報の再生波形の例を示す図である。なお、図3の(A),(B),(H),(I)に示す波形は、再生波形のピークレベルが容易に把握できるように、再生波形の全体を示す時間レンジとしている。また、図3(C)〜(G)に示す波形は、再生波形の周期や詳細な波形の形状が把握できるように、再生波形の一部分を示す時間レンジとしている。図4は、ATM及び通帳処理部の磁気情報の判定動作を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図4に示すように、ATM100の主制御部7は、エンドユーザが取引を選択できるように、操作・表示部6に選択画面を表示させる。主制御部7は、エンドユーザが操作・表示部6を操作して通帳取引を選択したことを検出すると(s1)、通帳挿入のガイダンスを表示する。主制御部7は、エンドユーザがガイダンスに従って、通帳の該当する科目頁を開いて通帳挿入口8から通帳9が挿入されると、不図示の通帳搬送機構により磁気情報記録再生部11に通帳を搬送する。通帳処理部1の処理部12は、通帳搬送機構により搬送された通帳9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報を、磁気ヘッド21で読み取る(s2)。
【0045】
ここで、処理部12は、後述するステップs10において、通帳9の磁気ストライプ10に記録された磁気情報を読み取り、再生波形のレベル及び周期を判定して、磁気ストライプ10に適正記録電流で磁気情報が記録されていると判定した場合には、その再生波形データを出力してメモリ13に記憶させており、メモリ13はこれまでに処理部12から出力されたN回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形データを記憶している。処理部12は、ステップs2の処理を行うと、続いてメモリ13からN回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形データを読み出し、演算を行って基準レベルである出力レベル判定値yを算出する(s3)。具体的には、処理部12は、N回分の適正記録電流で記録された磁気情報における再生波形のピークレベルを平均して、その平均値mを算出する。続いて、処理部12は、算出した平均値mに対し、外的要因等による磁気ストライプの読み取り機能の性能低下や、摩耗等による磁気ヘッド機構部の性能低下による読取出力レベル低下を考慮したマージンxを、前記の平均値mに乗算して、その積を出力レベル判定値yとして算出する。なお、マージンxの値としては、例えば50%〜60%が好適である。
【0046】
基準レベルをN回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のレベルを平均して、マージンxを乗算したものに設定することで、適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のレベルが、磁気ヘッドの摩耗等の経年劣化により徐々に低下している場合でも、適正記録電流で記録されていない磁気情報の再生波形は基準レベルとは異なるレベルとなるので、磁気情報が適正記録電流で記録されていないことを容易に判定できる。例えば、今回の再生波形のレベルがこの基準レベルよりも小さいと、磁気情報が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されていないものと判定でき、通帳の磁気ストライプに磁気情報が誤記録されていることを容易に判定でき、磁気情報の誤読を防止できる。また、この場合には、保磁力が一定値よりも低い低保磁力特性の磁気ストライプに対して、保磁力が一定値よりも高い高保磁力特性の磁気ストライプに対応した大きさの記録電流で磁気情報を誤記録した場合か、または磁気情報記録再生手段の読取異常であると判定できる。
【0047】
処理部12は、算出した出力レベル判定値yと、今回読み取った磁気情報の再生波形の出力レベル(ピークレベル)と、の比較判定を行う(s4)。処理部12は、ステップs4における比較判定1の結果、図3(A)に示すように、今回読み取った磁気情報の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が出力レベル判定値yよりも大きい場合には、ステップs5以降の処理を行う。一方、処理部12は、ステップs4における比較判定の結果、図3(B)に示すように、今回読み取った磁気情報の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が出力レベル判定値y以下の場合には、今回の再生波形の出力レベルが異常であるとして、ステップs13以降の処理を行う。
【0048】
処理部12は、ステップs4の比較判定1にて出力レベルが出力レベル判定値yよりも大きい場合、今回の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録された磁気情報を読み出すレベル(再生レベル)である閾値A以上であるか否かを確認する(s5)。処理部12は、図3(D)に示すように、今回の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が、予め設定している閾値A未満の場合には、今回の再生波形の出力レベルが異常であるとして、ステップs13以降の処理を行う。一方、処理部12は、図3(C)に示すように、今回の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が、予め設定している閾値A以上の場合には、閾値Aにて今回の再生波形の振幅を読み取り、読み取った波形に基づいて今回の再生波形の周期を算出する(s6)。
【0049】
さらに、処理部12は、今回の再生波形の周期と、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録されている磁気情報の再生波形周期である基準周期との比較判定を行う(s7)。ここで、基準周期としては、例えば図3(C)に示す波形の周期が設定されているものとする。また、ステップs7の処理は、図3(C)〜(F)に示した再生波形のような今回の再生波形において、ピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する処理に相当する。
【0050】
処理部12は、判定の結果、図3(G)に示すように、閾値Aにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報が壊れているか、または磁気情報の書き込み時に書き込み方式を誤っている可能性があると判定し、ステップs13以降の処理を行う。
【0051】
一方、処理部12は、判定の結果、図3(C)〜(F)に示す再生波形のように、閾値Aにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が、基準周期と同様の周期であれば、ステップs9の処理に移る。
【0052】
処理部12は、比較判定にて読取波形が正常であった場合、解析の対象とする今回の再生波形を、磁気ストライプに記録されている磁気情報の重ね書きを判定するレベル(重ね書き判定レベル)である閾値Aよりも小さな閾値A’にて波形の振幅を読み取り、読み取った波形から、閾値A’にて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期を算出する(s8)。そして、処理部12は、閾値A’にて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期と、予め設定している基準周期と、の比較判定を行う(s9)。処理部12は、判定の結果、図3(C),(E)に示す再生波形のように、閾値A’において周期が一定の波形であれば、磁気情報及び書き込み方式は正しく、ノイズを含んでいたとしても磁気情報の誤読を誘発するレベルではなく、磁気情報が、低保磁力特性の磁気ストライプに対して対応する低保磁力記録電流で、または高保磁力特性の磁気ストライプに対して対応する高保磁力記録電流で、つまり適正記録電流で記録されていると判定し(s10)、再生波形を出力してメモリ13に記憶させ(s11)、続いて、通常の取引処理に移行する。
【0053】
通常の取引処理に移行すると、処理部12は、通帳9の磁気ストライプ10に対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で磁気情報が記録されていると判定した旨の信号を主制御部7に出力する。主制御部7は、磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流で記録された磁気情報を読み出すレベル(再生レベル)である閾値Aで、磁気情報を読み出して、エンドユーザが操作・表示部6を操作・選択した取引内容に応じた通帳取引を行う。
【0054】
一方、処理部12は、ステップs9における判定の結果、図3(F)に示す再生波形のように、閾値A’にて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報が壊れているか、または低保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応していない大きさの高保磁力記録電流で磁気情報が記録されている磁気情報異常(モードエラー)の障害(a)の状態であると判定し(s12)、磁気情報の復元処理を行う。
【0055】
ステップs4,s5,s7において、ステップs13以降の処理を行うように判定した場合には、処理部12は、まず、ステップs3にて算出した出力レベル判定値yのほぼ半分のレベルを閾値Bに設定し、今回の再生波形の出力レベルが、閾値B以上であるか否かを確認する(s13)。処理部12は、図3(I)に示すように、今回の再生波形の出力レベルが、予め設定している閾値A未満の場合には、磁気情報が壊れているか、または磁気情報の書き込み時に書き込み方式を誤っているか、もしくは磁気情報記録再生部11の故障である磁気情報異常(モードエラー)またはハード異常の障害(c)の状態であると判定して(s17)、エラー処理を行う。
【0056】
エラー処理に移行すると、処理部12は、磁気ストライプ10に記録されたデータの破損、または磁気情報記録再生部11の故障であると判定した旨の信号を主制御部7に出力するとともに、不図示の通帳搬送機構で通帳挿入口8から通帳9を搬出する。また、主制御部7は、通帳9またはATM100に問題が発生したので行員を呼ぶように指示する内容と、エラコードを操作・表示部6に表示させる。
【0057】
一方、処理部12は、ステップs13において、図3(H)に示すように、今回の再生波形の出力レベル(ピークレベル)が、予め設定している閾値B以上の場合には、閾値Bにて今回の再生波形の振幅を読み取り、読み取った波形に基づいて今回の再生波形の周期を算出する(s14)。
【0058】
続いて、処理部12は、閾値Bにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期と、予め設定している正常な波形周期(基準周期)との比較判定を行う(s15)。ここで、ステップs15の処理は、図3(D)に示した再生波形のような今回の再生波形において、ピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する処理に相当する。
【0059】
処理部12は、判定の結果、閾値Bにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期と同様の一定周期であれば、高保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応していない大きさの低保磁力記録電流で磁気情報が記録されている磁気情報異常(モードエラー)の障害(b)の状態であると判定し(s16)、磁気情報復元処理を行う。
【0060】
一方、処理部12は、判定の結果、閾値Bにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報が壊れているか、または磁気情報の書き込み時に書き込み方式を誤っているか、もしくは磁気情報記録再生部11の故障である磁気情報異常(モードエラー)またはハード異常の障害(c)の状態であると判定して(s17)、エラー処理を行う。
【0061】
次に、磁気情報復元処理について説明する。図5は、ATM及び通帳処理部の磁気情報の復元動作を説明するためのフローチャートである。通帳処理部1の処理部12は、まず、今回の再生波形の出力レベルが、磁気ストライプに対して適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形のピークレベルとほぼ同じレベルである閾値C(>閾値A)以上であるか否かを確認する(s21)。処理部12は、図3(D)に示すように、今回の再生波形の出力レベルが、予め設定している閾値C未満の場合には、ステップs24以降の処理を行う。一方、処理部12は、図3(D),(F),(G)に示すように、今回の再生波形の出力レベルが閾値C以上の場合には、閾値Cにて今回の再生波形の振幅を読み取り、読み取った波形に基づいて今回の再生波形の周期を算出する(s22)。さらに、処理部12は、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期と基準周期との比較判定を行う(s23)。ここで、ステップs23の処理は、図3(G)に示した再生波形のような今回の再生波形において、ピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する処理に相当する。
【0062】
処理部12は、判定の結果、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が、基準周期とほぼ同様の一定周期であれば、ステップs30の処理に移る。
【0063】
一方、処理部12は、判定の結果、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報の復元は不可能であると判定して(s29)、処理を終了する。
【0064】
また、処理部12は、ステップs21において、今回の再生波形の出力レベルが予め設定している閾値C未満の場合には、今回の再生波形の出力レベルが、閾値A以上であるか否かを確認する(s24)。処理部12は、今回の再生波形の出力レベルが、閾値A未満の場合には、ステップs27以降の処理を行う。一方、処理部12は、図3(F)に示すように、今回の再生波形の出力レベルが閾値A以上の場合には、閾値Aにて今回の再生波形の振幅を読み取り、読み取った波形に基づいて今回の再生波形の周期を算出する(s25)。さらに、処理部12は、閾値Aにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期と、基準周期との比較判定を行う(s26)。ここで、ステップs26の処理は、図3(F)に示した再生波形のような今回の再生波形において、ピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する処理に相当する。
【0065】
処理部12は、判定の結果、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が、基準周期とほぼ同様の一定周期であれば、ステップs30の処理に移る。
【0066】
一方、処理部12は、判定の結果、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報の復元は不可能であると判定して(s29)、処理を終了する。
【0067】
また、処理部12は、ステップs24において、今回の再生波形の出力レベルが予め設定している閾値A未満の場合には、今回の再生波形の出力レベルが、閾値B以上なので、閾値Bにて今回の再生波形の振幅を読み取り、読み取った波形に基づいて今回の再生波形の周期を算出する(s27)。さらに、処理部12は、閾値Bにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期と、基準周期との比較判定を行う(s28)。ここで、ステップs28の処理は、図3(D)に示した再生波形のような今回の再生波形において、ピークレベルが最大乃至は最大値に対して一定範囲内の波形の集合体である最大ピーク列の波形周期と、基準周期と、を比較する処理に相当する。
【0068】
処理部12は、判定の結果、閾値Bにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が、基準周期とほぼ同様の一定周期であれば、ステップs30の処理に移る。
【0069】
一方、処理部12は、判定の結果、閾値Cにて波形の振幅を読み取った今回の再生波形の周期が基準周期とは異なる周期であれば、磁気情報の復元は不可能であると判定して(s29)、処理を終了する。
【0070】
処理部12は、閾値C,閾値A,閾値Bのいずれかにて波形の振幅を読み取った磁気情報の再生波形の周期が、基準周期とほぼ同じ周期であると、各閾値のいずれかにて読み取った波形に基づいて、磁気情報を読み取る(s30)。続いて、処理部12は、不図示の通帳搬送機構に通帳挿入口8から通帳9を搬出させる(s31)。さらに、処理部12は、復元した磁気情報を主制御部7に出力し、主制御部7は、この磁気情報を、操作・表示部6に表示させて、復元した磁気情報が通帳の情報と一致するか否かを確認し、その結果を入力するよう促す指示を表示させる(s32)。
【0071】
主制御部7は、操作・表示部6において、磁気情報が正しい旨の入力があったことを検出すると(s33)、通帳を挿入するように、操作・表示部6に表示させる(s36)。一方、主制御部7は、ステップs32にて磁気情報が誤っている旨の入力があったことを検出すると、通帳情報を入力するよう促す内容を操作・表示部6に表示させる(s34)。
【0072】
主制御部7は、操作・表示部6において、通帳情報の入力を検出すると(s35)、その通帳情報を一時的に記憶するとともに、通帳9の挿入を指示する内容を操作・表示部6に表示させる(s36)。
【0073】
主制御部7は、通帳9が挿入されたことを検出すると(s37)、正しい復元情報または、操作・表示部6から入力された通帳情報を、通帳処理部1に磁気情報として通帳9の磁気ストライプ10に記録させる(s38)。
【0074】
このとき、主制御部7は、図4に示したフローチャートにおいて、磁気情報の再生波形が障害(a)の状態であると判定した再生波形について磁気情報を復元した場合には、低保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応した大きさの低保磁力記録電流で磁気情報を記録する。また、磁気情報の再生波形が障害(b)の状態であると判定した再生波形について磁気情報を復元した場合には、高保磁力特性の磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応した大きさの高保磁力記録電流で磁気情報を記録する。さらに、通帳の磁気ストライプには、高保磁力特性の磁気ストライプであるか、または低保磁力特性の磁気ストライプであるかを判別するための情報を記録する領域が設けられているので、主制御部7は、復元した情報において、この領域の情報も確認して、磁気ストライプに対して、その保磁力特性に対応する大きさの記録電流で磁気情報を記録する。
【0075】
主制御部7は、磁気情報復元処理を終了すると、続いて通常の取引処理を行う。
【0076】
以上のように、本実施例にて示すように、本発明では媒体の作り直しやシステム的な再構築を必要としないうえ、2度の書き込み等の処理時間の増加となる要因をなくし、通帳挿入時に読み取った1つの磁気情報をいくつもの判定基準にて処理することで、磁気情報の誤読や書き込み間違え等の可能性を低下でき、顧客への影響が大きい重大な問題が発生する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る通帳取引装置及び通帳情報記録再生装置のシステム構成図である。
【図2】磁気ストライプに記録した磁気情報の再生波形を示す図である。
【図3】本磁気ストライプに記録された磁気情報の再生波形の例を示す図である。
【図4】ATM及び通帳処理部の磁気情報の判定動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】ATM及び通帳処理部の磁気情報の復元動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1−通帳処理部 2−カード処理部 3−紙幣処理部 4−硬貨処理部
5−通信部 6−操作・表示部 7−主制御部 8−通帳挿入口 9−通帳
10−磁気ストライプ 11−磁気情報記録再生部 12−処理部
13−メモリ 21−磁気ヘッド 22−再生回路
23−低保磁力記録回路 24−高磁力記録回路 100−ATM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに記録された磁気情報を磁気ヘッドで読み取り、この磁気情報に対応する再生波形を出力する磁気情報記録再生手段と、
前記再生波形のレベルまたは周期の少なくとも一方を解析し、その結果に基づいて前記磁気情報が、前記磁気ストライプに対してその保磁力特性に対応した大きさの記録電流である適正記録電流で記録されているか否かを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする通帳情報記録再生装置。
【請求項2】
前記磁気情報記録再生手段がこれまでに出力した過去N回分の適正記録電流で記録された磁気情報の再生波形を過去再生波形として記憶する記憶手段を備え、
前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形のレベルと、前記記憶手段に記憶されている過去再生波形を平均した基準レベルと、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定する請求項1に記載の通帳情報記録再生装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形中の最大ピーク列の波形周期と、予め設定した基準周期と、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定する請求項2に記載の通帳情報記録再生装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記解析の対象とする今回の再生波形中の前記最大ピーク列以外にピーク列を含むか否かを判定するとともに、このピーク列を含む場合にそのレベルと、予め設定した閾値のレベルと、を比較して、前記磁気情報が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で記録されているか否かを判定する請求項3に記載の通帳情報記録再生装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記最大ピーク列の波形周期が前記基準周期と一致する場合には、前記最大ピーク列による磁気情報を生成し、その磁気情報を、磁気ストライプ付き通帳の磁気ストライプに対して、前記適正記録電流で前記磁気情報記録再生手段に記録させる請求項3または4に記載の通帳情報記録再生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の通帳情報記録再生装置と、
前記通帳情報記録再生装置の判定手段が、磁気ストライプに対して前記適正記録電流で磁気情報が記録されていると判定すると、通帳取引を開始する制御手段と、
を備えた通帳取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−188572(P2007−188572A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4936(P2006−4936)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】