説明

通気ノズル及び通気ノズルを設けたプラスチックフィルム延伸装置

供給空洞(17)と、溢流装置を介して供給空洞(17)に接続される分配空洞装置(19)とを備え、特に帯状材料(3)を加熱する改良された通気ノズル。一体の加熱装置(35a)を備えかつ通気ノズル(9)の長手方向(L)に延びる少なくとも1つの温度調節区間(35)を通気ノズル(9)内に設けて、帯状材料の特性を改良する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載する特に帯状材料を加熱する通気ノズル及び請求項15に記載するプラスチックフィルム延伸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通気ノズルは、例えば、特許文献1により公知である。既知の通気ノズルを用いて、一般に温度及び湿度等の状態を調整する状態調整ガスと称する加熱ガス又は冷却ガスを供給空洞内に導入でき、供給空洞から、圧力を均等化する圧力調整空洞を介して分配空洞内に状態調整ガスを導入することができる。分配空洞内を支配する静圧は、可能な限り均一であり、通気ノズルから流出する際に、分配空洞内の静圧は、動圧及びそれに伴う流出速度に変換される。帯状物品に対する横方向流出速度の均一性は、分配空洞内の静圧の均一性に依存する。空気流又はガス流を均一に流出させて、通気ノズルに対し僅かな間隔で離間して通気ノズルに接触させずに浮遊させて帯状材料を搬送することができる。
【0003】
通気ノズルを通過して搬送する種々の帯状材料を冷却し、多少加熱するか又は強度に加熱して、冷却し、加熱若しくは加温し又は熱した状態調整ガスを通気ノズルにそれぞれ供給することができる。
【0004】
従って、この種の通気ノズルは、特に、帯状物品、特に帯状のプラスチックフィルムを連続的に又は同時に延伸し、熱固定して、最終的に弛緩できるプラスチックフィルムの延伸装置に適する。例えば、熱可塑性ポリマーにより形成されるプラスチックフィルムの側方の側縁を保持して、その後、機械走行方向(MD方向)に、次に横方向(TD方向)に連続的に又は同時にプラスチックフィルムを延伸し、熱固定して、前記のように、最後に弛緩させることができる。種々の炉内区間内で、機械走行方向でも横方向でもこの方法の工程を実施することができる。その場合に、適切な方法で空気流を温度調節し、温度調節された空気流により、搬送方向に対して横方向に通気ノズルからフィルムを浮遊させて保持し搬送することができ、その目的で、帯状材料、特に帯状フィルムの上方及び/又は下方で通気ノズルのノズルケースから空気流を流出させる。ノズルケース形式の通気ノズルは、単一又は複数のスリット及び/又は流出開口部を空気流出側に備えたスリットノズル又は穴ノズルの形状を有する。その場合に、ノズル噴出方向は、通常、帯状材料の搬出方向に対して垂直又はある程度斜め及び/又は搬出方向に向けられる。
【0005】
この種の通気ノズルにより、一部には、通気ノズルの全作業幅に沿って極めて均一な空気噴出速度が得られる利点がある。それにより、処理すべき帯状材料、通常、処理すべきプラスチックフィルムの作業幅に沿う熱伝達も、極めて一定である。また、この種の通気ノズルにより、帯状材料/プラスチックフィルムの温度を作業幅に沿って一定に維持することができる。
【0006】
しかしながら、特に、延伸装置では、延伸区間内の帯状物品のV字延伸領域により(横延伸領域内及び/又は同時延伸装置では)、下記の欠点が生じる:
a)帯状物品の通過速度が高いと、帯状物品の加熱領域からV形状の延伸領域内に空気が引きずり込まれる。加熱領域内の空気又は状態調整ガスは、通常、延伸領域内よりも熱く、それにより延伸区間内で側縁に常に広がる傾向によりより冷たい領域が生じる;
b)加熱領域内の高空気速度により、帯状物品に延伸領域内よりも高い静圧が生じる。過剰な圧力により暖かい空気が予熱区間から延伸区間の中央に侵入し、これにより帯状材料の側縁又はプラスチックフィルムの側縁は、状態調整ガスの通路の陰(死角又はデッドスペース)となる;
c)また、フィルム側縁がより厚く(骨組形状)なる改良された延伸工程を得るため、より良好に隅々まで十分に延伸すべきプラスチックフィルムを加熱して、フィルム品質を向上しなければならない;
d)フィルムと移送装置との間の速度差及び温度差により、作業幅に沿ってフィルム特性が変化し、当業者には公知の幾何学的及び特徴的に不均一な曲り(非特許文献1)、収縮特性及びヤング率(Eモジュール)が発生する。
【0007】
通気ノズルを使用して帯状材料を横延伸する方法は、例えば、特許文献2(特許文献3に相当)から公知である。特許文献2では、一般にプラスチックフィルム、特別な場合にプラスチックフィルム側縁を加熱又は冷却するために、付加的な加熱装置又は断熱装置を設けることができる。走行方向に負の温度勾配を有する延伸領域内の温度を制御するとき、側縁区間の上部又は下部に熱絶縁カバー薄板を組み込み、延伸領域で熱絶縁カバー薄板を越えて流れてフィルムの温度を調節する空気の交換により、熱絶縁カバーを位置決めして側縁区間の冷却を阻止する技術が、提案される。熱絶縁カバー薄板により、空気流の方向を偏向し又は制限して、帯状物品への熱伝達係数を変更することができる。カバー薄板をフィルムの中央領域内に取り付けると、同様に、温度を上昇させて側縁区間内のより高い温度が得られる。
【0008】
また、特許文献4では、2軸方向にポリマーフィルムを延伸するとき、赤外線加熱によりフィルムの作業幅にわたり温度を調節することができる。その場合に、輻射熱により高エネルギ密度で帯状物品を直接加熱するため、薄いフィルム又は特殊なフィルムの帯状物品では、問題を発生することがある。
【0009】
その場合に、フィルムの温度を調節する種々の仕様の加熱装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0907476号公報
【特許文献2】欧州特許第1883525号公報
【特許文献3】国際公開第WO2006/119959号公報
【特許文献4】国際公開第WO2006/130141号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】韓国化学工学ジャーナル「ポリエチレンフィルム2軸延伸工程での湾曲現象の分析」パク・オー・オー、キム・ダブリュウ・エス、パク・シー・アイ、ヤン・エス・エム共著2001年第18巻第3号317〜321頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の課題は、改良された通気ノズル及び改良された通気ノズルを有するプラスチックフィルム延伸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、請求項1に記載の特徴により通気ノズルの課題を解決し、請求項15に記載の特徴によりプラスチックフィルム延伸装置の課題を解決する。本発明の好適な実施の形態を下位の請求項に記載する。
【0014】
本発明の通気ノズルは、従来の通気ノズルと比較して本質的な利点を有する。
【0015】
本発明の技術的範囲内の本質的な一特性として、帯状物品(帯状材料、シート状材料及び特にプラスチック箔フィルムを含む)に対し横方向に調節可能な温度分布を通気ノズルにより形成することができ、その場合、特に、帯状材料の上方と下方又は帯状材料に対して横方向の空気噴出速度及びそれに伴う動圧の均一性を変化させずに、帯状材料の横延伸が減少する場合(例えば、定温区間内又はフィルムが薄い場合及び/又は作業速度が大きい場合)でも、均一に平坦に装置を通り、通気ノズルから帯状材料(フィルム)を浮遊させることが判明した。本発明の通気ノズルにより、最終的に曲り及び収縮特性とヤング率(Eモジュール分布)に関して、処理された帯状物品及び特に最終フィルム特性の改良された特性が得られる。
【0016】
既知のノズルと同様に、本発明の通気ノズルでは、帯状材料に沿って(通常、帯状材料の搬出方向に対して横方向に)、十分な動圧で十分な量の所望の状態調整ガス(通常空気流の適切な流れ)を帯状材料に向って噴出(流出)することができる。また、空気ノズルを通過して帯状材料を搬送するとき、通気ノズルに対して間隔を空けて浮遊させ、通気ノズルを通過させて、確実に帯状材料を搬送することができる。その場合に、従来と同様に、帯状材料の上方及び/又は下方に本発明の通気ノズルを配置することができる。
【0017】
予め所定の温度に調節した空気流又は状態調整ガスを通気ノズルに供給する従来技術とは異なり、フィルムを適切な温度に調節する温度調節装置を内部に設けた通気ノズルを提案する。加熱装置を含む温度調節装置は、通常状態調整ガス、特に空気を特定の温度に加熱して、帯状材料を所望の温度に加熱するのみならず、通気ノズルの付近を通過する帯状材料を通気ノズルから浮遊させて搬送することができる。
【0018】
その場合に、機械走向方向(MD方向)にもそれに対して横方向(TD方向)にも、通気ノズルを通過して搬送される帯状材料内に制御可能な温度分布を発生させる構成を本発明の通気ノズルに付与することができる。有限要素法(FEM, finite elements method)による実際の計算では、延伸装置の一周するチェーンレール軌道近傍にあるフィルムの側縁での熱伝達係数(WUK)は、フィルムの中央での熱伝達係数に極めて近いことが、判明した。
【0019】
フィルムの延伸工程間に発生するフィルム側縁のより大きい厚さ(骨組形状)、チェーンレールによる影響及び中央に引きずり込まれる空気に基づき、フィルム側縁に異なる周辺条件が支配することを勿論考慮し、材料温度が異なれば材料内の延伸応力が異なるので、一方のフィルム側縁と他方のフィルム中央とでは、部分的に異なる延伸特性が発生する周辺条件も認められる。フィルム側縁細片幅にも周辺条件が適用される。例えば、フィルム延伸装置により延伸する帯状材料、即ち特にプラスチックフィルムの側縁に、特に下記影響パラメータが生じる:
a)熱伝達係数により帯状材料/フィルムの温度に影響を与える空気流出速度若しくはガス流出速度、又は
b)空気温度若しくはガス温度
【0020】
その場合に、処理する帯状材料/プラスチックフィルムに対し、温度の変化は、より単純かつより直接的に影響を与える。
【0021】
本発明では、通気ノズルの作業幅に沿って状態調整ガス(通常は空気)の温度を調節し、異なる温度に制御することができ、異なる温度の状態調整ガスによりフィルム幅に沿ってフィルムの温度に影響を与えることができる。従って、簡単な手段でかつ温度制御目的に合致させて、加工すべき帯状材料、特に延伸すべきフィルム側縁の近傍又は特にフィルム側縁自体の温度とは異なる温度に帯状フィルムの中央の温度を調節することができる。
【0022】
その場合に、例えば、二重空洞ノズル、三重空洞ノズル(独国特許第19623471号公報)、二重流れノズル、伸縮二重流れノズル、浮遊ノズル等により、帯状材料の作業幅に沿って、一定の熱伝達係数と異なる温度を有する均一な空気流出速度を実現することができる。
【0023】
本発明の技術的範囲内では、帯状材料の作業幅にわたり±2%未満で空気速度を変更できることが、判明した。
【0024】
また、フィルムの応力−延伸特性の温度依存性により、温度条件が異なれば、異なる延伸状況が発生するので、フィルムの作業幅にわたる異なる温度分布を調節することにより、帯状のプラスチックフィルムのフィルム側縁とフィルム中央との間の異なる延伸状況の発生も減少させる。フィルムの曲り特性、ヤング率(Eモジュール)変化及び収縮特性での変化が、延伸状況の変化に連動する。
【0025】
本発明の実施の形態を以下図面について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フィルム延伸装置を略示する平面図
【図2】図1に示すフィルム延伸装置の略示断面図
【図3】ノズルケースを有する本発明の通気ノズルを示す部分斜視図
【図4】図3と同一の対象の内部を透視する斜視図
【図5】ノズル壁を除去して図3と図4の実施の形態を部分的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、帯状の材料を処理する装置の基本構造、即ち合成樹脂製薄膜(プラスチックフィルム)(「薄膜」という)を延伸する延伸装置を示す。即ち、延伸装置は、横方向に又は長手方向と横方向に同時に帯状材料3’、 即ち薄膜3を連続的に延伸することができる。
【0028】
図1の平面図に対して垂直な延伸装置の中央垂直面又は対称面Mに対して対称に配置される一対のテンター軌道5は、それぞれ一周の閉ループを形成し、テンター(薄膜3の両側縁3aを把持して、テンター軌道5に沿って移動し、これにより薄膜3を長さ方向及び横方向に引張して薄膜3を延伸させるクリップ)7をテンター軌道5上でかつそれに沿って循環させることができる。図1は、一対のテンター軌道5に対称に配置される複数のテンター7を示す。薄膜は、図1に示す延伸装置の左端から延伸装置に導入され、図示しないが、薄膜の両側縁3aをテンター7により把持し、テンター軌道5に沿ってテンター7を移動し、これにより、薄膜3は、テンター7により長さ方向及び横方向に引張されて延伸されながら、延伸装置内で右端に向かって移送される。その場合、テンター7は、帯状材料である薄膜3の両側の各側縁3aを対向して把持し、テンター軌道5に沿って循環し、これにより、長さ方向、横方向又は長さと横方向とに薄膜3を延伸させながら延伸装置内を移動させる。その後、テンター7は、加熱区間Aの後方に配置される延伸区間B内のV字状領域で互いに離間する方向にかつ均一なテンター速度でテンター軌道5に沿って搬送され、これにより、薄膜3は、均一なテンター速度で横方向に延伸され、その後、テンター7は、徐々に加速され、それに伴い隣り合うテンター7のテンター間隔が増大すると、横方向のみならず、同時に長さ方向にも薄膜3が延伸される。また、薄膜3は、延伸区間Bの後方に配置されて一定の温度に保持される定温区間Cを通過するとき、薄膜3の内部組織が弛緩され、内部応力及び内部歪が除去され、図1に図式的に示す定温区間Cでは、薄膜3の両側に対向して配置されるテンター7間の横間隔は、僅かに増加し、再び僅かに減少する幅増減部10を一周するテンター軌道5に設けることができ、薄膜3を再び周囲温度に冷却する冷却区間Dが定温区間Cの後段に通常連続して設けられる。
【0029】
その後、定温区間C又は冷却区間Dの後段に設けられるテンター軌道5の排出区間で、テンター7は、延伸装置の右端に配置される排出区間で薄膜3を解放して、延伸された薄膜3を排出区間から搬出方向8に引き出し可能となり、更に、排出区間から外側に配置されるテンター軌道5の帰路区間Rの復帰軌道5’を通り左端の進入区間に戻される。換言すれば、(排出区間の端部で薄膜3の側縁3aを再び解放した後に)テンター7は、帰路区間Rの復帰軌道5’に沿って逆方向に待機領域Sに戻り、待機領域Sでは、隣り合うテンター7のテンター間隔を減少(通常値0に減少する)させ、隣接するテンター7と通常接触しながら、再び進入領域Aに移動される。
【0030】
図2の略示断面に示すように、適切な箇所、即ち、薄膜3の下方のみならず、上方にも通気ノズル9を配置することが好ましい。薄膜3は、下方と上方の2つの通気ノズル9の間を通過する。例えば、延伸区間Bの直前又は更に延伸区間Bの一部、即ち加熱区間Aから延伸区間B内にこの種の通気ノズル9を設けることが好ましい。しかしながら、原則的に定温区間C内又は冷却区間D内に通気ノズル9を配置してもよい。通気ノズル9を配置する場所は、通常制限されない。通気ノズル9は、基本的に薄膜3の下方と上方とにそれぞれ正確に位置決めされ配置される。しかしながら、薄膜3の搬送方向、即ち搬出方向8に互いに相対的に変位させて、通気ノズル9を薄膜3の下方と上方に原則的に配置することもできる。その場合に、延伸装置の搬送方向に任意の頻度で変位個所を反復することができる。そのとき、例えば、薄膜3に対して5mm乃至300mm間隔で通気ノズル9を通常薄膜3の平面Eに対して平行に配置し、それにより、通気ノズル9の平面に対して垂直又は斜めに流動する噴出空気(又は漏出環境調整ガス)により、非接触で薄膜3を加熱しかつ噴出空気を介して薄膜3を浮遊搬送することができる。
【0031】
図2から明らかなように、通気ノズル9は、搬出方向8、即ち機械長手方向(MD方向)と、搬出方向8に直角な機械横方向(TD方向)とを含む薄膜3、即ち帯状材料3’の平面Eに対して原則的に平行に通常配置される。テンター軌道5の付属品であるレール5’を図2に断面で示し、詳細には図示しないが、原則的に公知の適切な支持構造5”を介してレール5’が支持される。その場合に、細長い薄膜3に隣接して配置されるレール部分5’上に移動可能に支持されるテンター7は、薄膜3の対応部分を把持し、延伸装置を駆動して薄膜3を移送し、移送しながら薄膜3を延伸し、そのとき図2に断面で示す一周する各テンター軌道5の外側に配置される帰路区間Rの復帰軌道5’に沿ってテンター7が排出区間から進入区間へ再び戻される。
【0032】
次に、図3乃至図5について本発明の通気ノズル9の他の構造を説明する。
【0033】
各通気ノズル9は、例えば、長手方向の長さLに対して横方向に伸びる矩形又は方形の横断面を形成するノズルケース11を有する。ノズルケース11は、薄膜3の搬出方向8に対して横方向に通常配置され、搬出方向8即ち機械長手方向MDに対して垂直にノズルケース11を配置することが好ましいが、機械方向MDに対して斜めに配置することもできる。
【0034】
ノズルケース11は、特に第1の空洞17(以下部分的に供給空洞とも称する)及び空気流を分配する分岐された空洞システム19とを有する多空洞システムにより原理上構成される。その場合に、下記のように、ノズルケース11の長手方向Lに並置されて延伸する2つの分配空洞19’と19”をノズルケース11に設けることができる。
【0035】
状態調整ガスを搬送方向22に導入する供給開口部21が通気ノズル9の一端面、例えば前端面のみに通常設けられ、通気ノズル9の反対端面にも同様に状態調整ガスを導入できるが、反対端面は、通常閉鎖される。
【0036】
方形断面又は矩形断面を有するノズルケース11の内部に設けられる壁構造体23は、供給空洞17と分配空洞19,19’とを分離するが、壁構造体23は、ノズルケース11の長手方向に延びかつ稜を有する薄板形式の隔壁が好ましい。U字断面形状に形成される壁構造体23は、ノズルケース11のノズル流出開口部(溢流装置)27から間隔を空けてノズル流出側に配置される上壁23aと、上壁23aに接続されてノズル流出開口部27から離間して延びる2つの側方の側壁23bと、側壁23bに接続されかつ側壁23bから外側に張り出すフランジ23cとを備える。
【0037】
ノズルケース11自体は、ノズル流出側の頂壁11aと、頂壁11aに接続されかつ垂直に延伸する一対の平行な側壁11bと、側壁11bの下端に接続されかつ頂壁11と並行に配置されて供給空洞17を閉鎖する底壁11cとを有する。一対の平行な側壁11bは、ノズル流出側に向かってノズル流出開口部27から離間して上方に伸びる。
【0038】
図示の実施の形態では、内側の壁構造体23の2つのフランジ23cは、ノズルケース11の側壁11bの内側に堅固に結合される。
【0039】
側壁21b及び頂壁11aから離間する壁構造体23により、供給空洞17が形成されると共に、壁構造体23の側壁23bとノズルケース11の頂壁11aと11bの間に分配空洞19,19’が形成される。
【0040】
図示の実施の形態では、内側の壁構造体 23の側壁23の下端から外側に延びる一対のフランジ23cに多数の流出開口部27(例えば、スリット、孔、穴及び/又は切欠及び/又は長穴の形状)が形成され、少なくとも1つの前側の供給開口部21から供給される状態調整ガスは、その後、流出開口部27を通り、ノズルケース11の全長又は主要長さにわたり流出開口部27に近い分配空洞19内に流入する。状態調整ガスが流出開口部27を通過するとき、ノズルの長手方向Lと機械走行方向に対して横方向とに流れる状態調整ガスの流動方向は、角度90°偏向され、帯状材料に向かい又は頂壁11aに対して垂直上方に流動する。これにより、供給空洞17と分配空洞19,19’の間で圧力が均等化される。
【0041】
更に、頂壁11aに形成される多数のノズル流出開口部29を通る分配空洞19からの状態調整ガスは、垂直又は斜めに帯状材料3の一方向又は一方向とは逆方向に、かつノズル長手方向Lに対して垂直に流出する。図示の実施の形態では、ノズル流出開口部29は、長さ方向の4列29aに形成され、ノズルケース11の長手方向に各列の隣り合うノズル流出開口部29は、互いに所定の間隔29bで離間して配置される。ノズル流出開口部29の数、位置及び大きさは、広い範囲内で任意に選択することができる。スリット形状、より長い寸法のノズル流出開口部又は異なる形状に形成される流出開口部を単独で又は組合せてノズル流出開口部29を形成してもよい。
【0042】
本実施の形態では、図示のように、内側の壁構造体23の頂壁23aと頂壁11aとの間に接続される中間壁又は縦隔壁33は、ノズルケース11の幅方向中央を通りノズルケース11に垂直にかつ長手方向に延びる対称平面S内に配置され、縦隔壁33により、垂直の中央長手対称平面Sに対して左右の分配空洞19’,19”が対称に形成される。必要に応じて、所定の寸法を有する穴部、孔部又は切欠等の開口部を中間壁又は縦隔壁33に設けて、2つの分配空洞19’,19”間の圧力を均等化することができる。
【0043】
特に、図4と図5に示すように、ノズルケース11の長手方向及びそれに伴って通気ノズル9の長手方向Lに温度調節部(温度調節区間)35を設けて、処理すべき帯状材料の温度を良好に調節することができる(図3と同様に、ノズルケース11の外側の側壁部分11bと頂壁11aとを部分的に除去した斜視図で図4を示し、頂壁11aを除去して、本発明に使用するノズルケース11を略示平面図で図5を示す)。例えば、フランジ23cから頂壁11aまでの高さと同一の高さ又は間隔で加熱装置35aを温度調節部35内に配置することが好ましい。この場合、特に、図5の略示平面図から明らかなように、各温度調節区間を構成する各温度調節部35は、ノズルケース11の長手方向Lに互いに離間して配置され、しかも、長手方向Lに対して横方向に延びる横隔壁135により、隣接する温度調節区間35を完全に又は部分的に分離することができる。図示の実施の形態では、前記の通り、ノズルケース11の長手方向の全長にわたり上方の中間壁又は縦隔壁33が延びるので、ノズルケース11の垂直の対称平面Sに対し左右両側に分離して、2つの温度調節区間(調質区間又は品質調整区間)35が形成され、各温度調節区間35に一体化された加熱装置35aが設けられる。ノズルケース11の長手方向に延びる中間壁又は縦隔壁33を除去し又は縦隔壁33に開口部37を形成して、分配空洞19,19’間の状態調整ガス圧力を均等化すれば、ノズルケース11の長手方向に延びる部分毎に連結された単一の温度調節区間がそれぞれ形成され、例えば単一の加熱装置35a又は例えば図5に示すように、少なくとも2つの加熱装置35aが温度調節区間内に収容される。その場合に、接続箇所36で図示しない電力供給線に接続される電気式環状加熱器35’aを加熱装置35aに設けることもできるが、ガス燃焼器又は蒸気媒体式若しくは油媒体式熱交換器等の他の加熱器を使用することもできる。
【0044】
従って、単一の空気流入側21から又はノズルケース11の両端に設けられる対向する2つの空気流入側21からノズルケース11の下方の供給空洞17内に状態調整ガスのガス流又は空気流(加熱後に、無加熱で又は冷却後に)を導入し、側方に設けられたノズル流出開口部27を通じて上方の分配空洞装置19内にノズル幅全体に沿って均一に流入させることができる。
【0045】
図4は、ノズルケース11の長手方向に互いに離間して分配空洞19内に配置される分離壁又は横隔壁135を示し、横隔壁135によりノズルケース11の長手方向に互いに分離する複数の分配空洞19’,19”を形成し、フランジ23cに形成される連絡開口部27を通じて供給空洞17内の空気流を下方から上方に流動させて、各分配空洞19’,19”内に流入し、その後、ノズル流出開口部29を通じて各分配空洞19’,19”から空気流を流出することができる。また、ノズルケース11の長手方向に配置される縦隔壁33と横隔壁135により、垂直の対称平面Sの左側と右側に多数の個別の分配通路119が分離して形成され、個別の分配通路119に別体の各加熱装置35aを設けて、分配通路119に状態調整ガスを貫流させることができる。また、場合により異なる条件又はやや異なる条件で貫流する状態調整ガスを別体の加熱装置35aにより加熱して、分配空洞19、分配通路119内で処理すべき帯状材料、特に薄膜3の種々の箇所を異なる強度で加熱することができる。その場合に、分離壁又は横隔壁135によりノズルケース11の上方部分内の状態調整ガスの混合を防止して、一般に帯状材料3、特に帯状の薄膜3の所望の箇所を個別に制御して加熱することができる。
【0046】
その場合に、通気ノズル9を通って流れる状態調整ガスの温度を各温度調節区間35内で直接又は間接的に測定して状態調整ガスの温度を制御することができる。例えば、環状加熱器又は棒状加熱器35’aの表面温度を測定すれば、状態調整ガスの温度を間接的に測定することができる。他の測定温度も、原則的に使用することができる。得られる測定温度値に基づき、その後、各温度調節区間35の加熱を所望の温度に個別に制御することができる。
【0047】
必要に応じて、ノズルケース11の長手方向に延びる中央の縦隔壁33を除去し又は圧力均等化用の開口部37を設けて、ノズルケース11の長手方向に分離する各分配空洞19’,19”をノズルケース11の横方向に連係して形成することができる。
【0048】
広範囲に種々の方法でノズルケース11の長手方向に各分配空洞19を分割することができる。通気ノズル9の長手方向に例えば50mmから500mmの長さに制御可能な各温度調節部及び各温度調節区間35を選択することが好ましく、その場合に、温度調節区間35のノズルケース11の長さ方向に均一長さでも異なる長さでも選択することができる。
【0049】
これにより、特に、薄膜3の側縁(通常、薄膜3の他の部分よりも厚い)を、薄膜3の他の部分とは異なる温度に調節し制御することができる。例えば、他の延伸装置では部分的に必要であり又は有意義な別体の側縁加熱装置を省略することもできる。特に、リニアモータによりテンター軌道5に沿って移動すれるテンターを備えるフィルム延伸装置でも、本発明の通気ノズル9を使用すれば、別体の側縁加熱装置を省くことができる。
【0050】
処理装置の種々の箇所に本発明の通気ノズル9を使用することができる。例えば、予熱ノズルとして通気ノズル9を使用し、横隔壁135を個別に省略し、通気ノズル9の内部に連絡する加熱装置を設けることもできる。ノズルケース11の垂直の長手対称平面の左側にも、右側にも通気ノズル9に連絡する熱装置を設けることができる。
【0051】
本発明の解決課題は、温度調節区間35に使用される電気エネルギを極力節約することにある。基礎空気温度から各温度制御区間35内に個別に必要なより高水準に各温度制御区間35を加熱すればよいからである。換言すれば、本発明の通気ノズル9内の温度調節装置により、約150℃(例えば、ポリプロピレンフィルムの薄膜3)の予熱空気又一般に予熱状態調整ガスを約5°K(ケルビン)高い155℃の水準に加熱することができる。
【0052】
一般に使用される処理すべき帯状材料、特に帯状フィルムの作業幅にわたり異なる温度に加熱した状態調整ガスを薄膜3に直接作用させて、薄膜3の温度を保持できる場合もある。
【0053】
図示の実施の形態とは異なり、複数の異なる加熱区間を有する伸縮可能なスリットノズルを原則的に使用することもできる。帯状材料に対する間隔を減少させて、伸縮可能なスリットノズルを使用すれば、帯状材料(特に、薄膜3)の温度に与える状態調整ガスの温度影響を一層強化できるので、加熱区間、延伸区間、定温区間及び/又は冷却区間内で薄膜3を正確な位置で所望の温度に制御することができる。
【0054】
因みに、共通の加熱装置及び/又は温度調節装置を供給空洞17内に設けて、連絡開口部27から分配空洞9内に流入する前の状態調整ガス全体を加熱することもできる。
【0055】
本発明の通気ノズル9は、(a) 帯状材料又は帯状物品に対して垂直に状態調整ガスを流出すること、及び(b) 帯状材料又は帯状物品の方向に斜め及び/又は平行及び/又は帯状材料ないし帯状物品の方向及び/又は搬出方向に向って斜め及び/又は平行に状態調整ガスを流出することが重要であり、かつ/又は装置内で(a)及び(b)のように方向付けされかつ/又は取り付けることができる。
【0056】
前記実施の形態から明らかなように、本発明の技術的範囲内で状態調整ガス(通常は空気)の温度を通気ノズル9の作業幅に沿って調節し、異なる温度に制御することができ、温度調節された状態調整ガスによりフィルム幅にわたりフィルム温度に影響を与えることができる。換言すれば、通気ノズル9の長手方向Lに設けられる複数の温度調節区間35により、状態調整ガスの温度と、各温度調節区間35に対応するフィルム温度を薄膜3の作業幅に沿って調節することができる。例えば、簡単な手段により、薄膜3の中央と側縁の近傍、特に側縁自体とで異なる温度に加熱して、加熱目的に適合させて処理すべき帯状材料、特に延伸すべき帯状の薄膜3の温度を調節することができる。
【0057】
その場合に、機械走行方向(MD方向)でも横方向(TD方向)でも搬送される帯状材料に制御可能な温度分布(プロファイル)を付与する構成を本発明の通気ノズル9に付与することができる。換言すれば、幅方向に帯状材料の温度を制御できる上、機械走行方向に帯状材料の温度を制御することができる(即ち、機械走行方向に異なる位置に配置される2つの分配空洞19’,19”内で状態調整ガスを異なる温度に調節する場合)。
【0058】
前記のように、例えば、温度調節区間35に設ける加熱装置を別体の加熱装置35a形式で構成できるので、複数の温度調節区間35にそれぞれ別体の加熱装置35aを装備することができる。
【符号の説明】
【0059】
(3)・・帯状材料、 (8)・・搬出方向、 (9)・・通気ノズル、 (17)・・供給空洞、 (19)・・分配空洞装置、 (19’)・・第1の分配空洞装置、 (19”)・・第2の分配空洞装置、 (27)・・連絡開口部、 (29)・・ノズル流出開口部、 (33)・・中間壁(隔壁)、 (35)・・温度調節区間、 (35a)・・加熱装置、 (119)・・流動通路、 (135)・・横隔壁、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に帯状材料(3)を加熱する状態調整ガスを通気ノズル(9)に供給する少なくとも1つの供給空洞(17)と、少なくとも1つの溢流装置を介して供給空洞(17)に接続される分配空洞装置(19)とを備え、
帯状材料(3)の搬出方向(8)に対して横方向に通気ノズル(9)の長手方向の運転位置を配置し、通気ノズル(9)の長手方向(L)に対して横方向に状態調整ガスを分配空洞装置(19)から流動させて、通気ノズル(9)の長手方向に設けた単一又は複数のノズル流出開口部(29)から帯状材料(3)の幅に沿って状態調整ガスを流出させる通気ノズルにおいて、
通気ノズル(9)の長手方向(L)に延びかつ加熱装置(35a)を内蔵する少なくとも1つの温度調節区間(35)を通気ノズル(9)内に設け、
通気ノズル(9)の長手方向(L)に設けた複数の温度調節区間(35)を介して、帯状材料(3)の幅に沿って状態調整ガスの温度と状態調整ガスに接触するフィルムの温度を異なる温度に調節できることを特徴とする通気ノズル。
【請求項2】
通気ノズル(9)の長手方向(L)に複数の温度調節区間(35)を設け、温度調節区間にそれぞれ別体の加熱装置(35a)を設けた請求項1に記載の通気ノズル。
【請求項3】
通気ノズル(9)の長手方向(L)に沿って複数の温度調節区間(35)を互いに異なる位置に配置し、
通気ノズル(9)の長手方向(L)に対して横方向に配置した横隔壁(135)により温度調節区間(35)を互いに分離し、
供給空洞(17)から溢流装置を通り、横隔壁により形成される流動通路(119)となる各温度調節区間(35)内に状態調整ガスを導入し、
各温度調節区間(35)から下流に配置されるノズル流出開口部(29)を介して通気ノズル(9)から状態調整ガスを流出させる請求項1又は2に記載の通気ノズル。
【請求項4】
温度調節区間(35)の長さは、50mmから1000mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項5】
少なくとも1つの温度調節区間(35)及び好ましくは複数の温度調節区間(35)を分配空洞装置(19)の領域内に設けた請求項1〜4の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項6】
分配空洞装置(19)の領域内に少なくとも1つの中間壁又は隔壁(33)を通気ノズル(9)の長手方向(L)に設け、
いずれも通気ノズル(9)の長手方向(L)に対して横方向にかつ中間壁又は隔壁により分離して、少なくとも1つの第1の分配空洞装置(19’)と、第1の分配空洞装置(19’)に隣接して配置される第2の分配空洞装置(19”)を形成した請求項1〜5の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項7】
供給空洞(17)と少なくとも1つの分配空洞(19)との間に設けられる溢流装置は、供給空洞(17)から少なくとも1つの分配空洞(19)内に状態調整ガスを流入させる多数の連絡開口部(27)を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項8】
nを整数の自然数>0とすると、通気ノズル(9)の長手方向(L)に延びる中間壁又は隔壁(33)と、隔壁(33)に対して横方向に延びる横隔壁(135)とにより、2n個の通路形状の分配空洞(19,119)を形成し、分配空洞内に個別に加熱装置(35a)を収容した請求項1〜7の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項9】
単一又は複数の加熱装置(35a)は、環状加熱器又は棒状加熱器(35’a)を有し又はそれにより構成される請求項1〜8の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項10】
ガス、電気、熱媒油又は蒸気等の種々の加熱媒体により単一又は複数の発熱装置(35a)を加熱できる請求項1〜9の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項11】
状態調整ガスは、帯状材料に対して垂直に流出可能である請求項1〜10の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項12】
状態調整ガスは、帯状材料の方向に斜め及び/又は平行に流出可能である請求項1〜11の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項13】
状態調整ガスは、帯状材料に向って斜め及び/又は平行に流出可能である請求項1〜12の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項14】
通気区間に設けられる複数の制御可能な温度調節区間(35)では、通気ノズルにより帯状材料の上方及び/又は下方の空気噴出速度及び/又は動圧を調節し及び/又は制御して、帯状材料の曲り、収縮及び縦弾性係数(Eモジュール)等の互いの偏差を減少させる請求項1〜13の何れか1項に記載の通気ノズル。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の通気ノズルを有することを特徴とするプラスチックフィルム延伸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−516339(P2013−516339A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546373(P2012−546373)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006297
【国際公開番号】WO2011/079885
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510331593)ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (2)
【Fターム(参考)】