説明

通水性鋼矢板とそれを用いた通水性鋼製壁

【課題】土留め壁や擁壁、護岸壁、あるいは地震時の液状化対策として、良好な通水性を備える鋼製壁およびそのための鋼矢板を提供する。
【解決手段】通水性鋼矢板100を幅方向に連結して打設することで擁壁(鋼製壁)500を構築する。通水性鋼矢板100は、鋼矢板基体120として、例えばハット型鋼矢板等が用いられ、鋼矢板基体120の凹部面側に通水経路部130が形成されている。鋼矢板基体120の所定位置、例えば鋼矢板基体120の下部の一個所には、通水経路部130に通じる連通孔160が設けられている。通水性上必要であれば、鋼矢板基体120の長手方向中間位置に、連通孔160をさらに1〜数個設けてもよい。擁壁500において、鋼矢板100の通水経路部130は背面側の地盤に向いており、連通孔160は、前面の地表面近くの高さに位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板基体の一方の面に長手方向に沿って通水経路部を備え、かつその通水経路部と鋼矢板基体の反対側とを連通させる連通孔を有する通水性鋼矢板とそれを用いた通水性鋼製壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土留め壁や擁壁、護岸壁には、壁体により支持される地盤に地下水(間隙水)が過度に滞留して地滑りや軟弱化が生じるのを防ぐため、地盤中の地下水を排水するための水抜き孔が設けられる。このような壁体を鋼矢板で構築する場合、孔を備える鋼矢板を用いることになるが、これに係る技術として、例えば特許文献1〜3を挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、鋼矢板壁の中立軸上またはその近傍に透水孔が設けられた鋼矢板壁が記載されている。
【0004】
特許文献2の通水性鋼矢板は、鋼矢板とその長手方向に沿って配置した内側通水筒によって構成され、内側通水筒の上部には内筒開口部が開口され、内側通水筒の下部には鋼矢板を貫通する矢板開口部が設けられた構造である。
【0005】
特許文献3の通水性鋼矢板は、地下壁の一部または全体を半透水部とするもので、具体的には、壁体を貫通する貫通孔が設けられ、貫通孔の開口率が半透水部の面積の0.1〜1.0%に設定されるものである。
【0006】
これとは別に、埋立地その他、地震時に液状化が発生する恐れのある地盤においては、液状化対策として、矢板や杭等に排水部材を取り付けて打設し、地震時にこれらの排水部材を通じて過剰間隙水圧を逸散させることで液状化を抑制する技術が各種開発されている。
【0007】
例えば、特許文献4には、鋼矢板の一方の面または両面に、多数の小孔を形成した溝形鋼あるいは平板などを取り付けて、中空の排水部材を形成したり、あるいは通水経路部となる立体網状構造体などからなる排水部材を取り付け、地震時に地盤内に発生した過剰間隙水圧を排水部材を通じて地上に逸散させることで、液状化を防止することが記載されている。その他、同様の液状化抑止技術が、特許文献5、特許文献6等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−336252号公報
【特許文献2】特開2007−100416号公報
【特許文献3】特開2005−282000号公報
【特許文献4】特開平02−225712号公報
【特許文献5】特開平09−242100号公報
【特許文献6】特開平10−168868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記擁壁等においては、地盤中の間隙水の流れは非常に緩やかである。そのため、特許文献1、3の鋼矢板(壁)では、効果的かつ円滑に間隙水が流れるには、鋼矢板(壁)全体にわたって、透水孔を設けるのが好ましい。そのため、矢板の領域全体(全長)にわたって、矢板の過度の強度低下を招かないよう細かい透水孔を多数あける必要があるので、孔あけ作業が煩雑であったり、孔が目詰まりしやすい等の課題がある。
【0010】
さらに、鋼矢板壁の地盤と反対側(以下、こちらの側を「(壁体の)前面側」といい、地盤側を「(壁体の)背面側」ということがある)に宅地や道路がある場合は、多数の孔から水抜きされる状態は景観上好ましくない。
【0011】
また鋼矢板壁の前面側の壁面がコンクリートで化粧されるとすれば、コンクリートに鋼矢板壁の水抜き穴に対応した水抜き孔をあけるか、あるいはコンクリートの水抜き穴まで鋼矢板とコンクリートの間を排水が通るような構造としなければならない。
【0012】
特許文献2の通水用鋼矢板では、加工や仕組みが複雑なため、材料・加工費が嵩む上、施工も容易ではない。また、上流側に面している矢板開口部は矢板の下部に限定されているため、特に矢板開口部よりも高い位置にある上流側の土中の間隙水は、通水抵抗の大きい土中を通って矢板に到達しなければならず、効果的に通水できるとは言えない。
【0013】
一方、液状化対策としての鋼矢板(壁)として、特許文献4〜6を用いると、地震時の過剰間隙水圧発生時には排水部材側の地盤の間隙水を地上へ排出して、周辺地盤の過剰間隙水圧を消散させることができる。
【0014】
しかし、これらの構造では、壁体により間隙水の流れが遮られるため、壁体で仕切られた地下水の流れの下流側(以下、単に「下流側」(反対側を「上流側」)ということがある。)に地下水を利用する施設(農地、井戸、養殖場等)や保護すべき植生・生態系などが存在する場合は、これらへの悪影響が懸念される。
【0015】
本発明は、上述した用途に好適な、良好な通水性を備える鋼製壁およびそのための鋼矢板を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の請求項1に係る通水性鋼矢板は、
鋼矢板基体と、該鋼矢板基体の一方の面に長手方向に沿って設けられた通水経路部とを備える鋼矢板であって、
前記通水経路部は、その長手方向に沿って略均一に、当該鋼矢板が打設される地盤との間で間隙水の通水が可能であり、
かつ、通水経路部の内部は、該地盤よりも水の流れに対する抵抗が小さく、
前記鋼矢板基体には、前記通水経路部と当該通水経路部が設けられた側と反対側とを連通させる1以上の連通孔が形成されている、
ことを特徴とするものである。
【0017】
ここでいう鋼矢板基体は、典型的には、従来、鋼矢板として多用されている幅方向両端に継手を有するU形鋼矢板やハット形鋼矢板であるが、それ以外の鋼矢板も適用可能である。
【0018】
通水経路部は、鋼矢板の長手方向の必要区間に設けられており、ことさら液状化対策を考慮しない場合は、複数の区間に分かれていてもよい。通水経路部の内部は、上流側の地盤から到達した間隙水が通水経路部の長手方向にスムーズに流れればよく、そのために十分な程度に、水の流れに対する抵抗(以下、「通水抵抗」という。)が地盤よりも小さくかつ必要な断面積を有していればよい。
【0019】
請求項2は、請求項1に係る通水性鋼矢板において、前記通水経路部は、前記鋼矢板基体に取り付けられた外殻体によって形成され、前記外殻体には、通水孔が前記外殻体の長手方向に沿って略均一に備えられ、当該通水孔には、前記地盤からの土砂の侵入を抑制するフィルターが設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項3は、請求項1に係る通水性鋼矢板において、前記通水経路部は、立体網状構造体からなり、当該立体網状構造体は、その内部への土砂の侵入を抑制するフィルターで被覆されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項4は、請求項1に係る通水性鋼矢板において、前記通水経路部は、透水性のあるリブ型構造体または管状体からなり、前記格子体または管状体は、その内部への土砂の侵入を抑制するフィルターで被覆されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項2〜4は、本願発明の通水性鋼矢板における通水経路部の具体的な形態例を特定したものである。フィルターは、土砂の侵入を防止できればよく、メッシュ間隔や材質等は使用環境に応じて適切なものを選定すればよい。
【0023】
請求項2における通水経路部の形態は、例えば、前述した特許文献4等における液状化抑止のための過剰間隙水圧を逸散させるための排水経路となる多数の小孔を形成した溝形鋼あるいは平板などを取り付けてなる排水部材の形態と、同様であってもよい。この構造では、溝型鋼あるいは平板が外殻体に相当し、小孔が通水孔に相当する。
【0024】
請求項3、4の通水性鋼矢板においては、市販の排水材には立体網状構造体、リブ型構造体または管状体とフィルターが一体となった製品があるので、これらを適用してもよい。
【0025】
請求項2〜4の通水性鋼矢板における通水経路部は、中空またはそれに近いので、通水抵抗が極めて小さい。
【0026】
請求項5は、請求項1〜4に係る通水性鋼矢板において、前記連通孔には、前記通水経路部への土砂の侵入を抑制するフィルターを設けてあることを特徴とするものである。
【0027】
連通孔を通過する流れは、特に連通孔の数や面積が小さいときは、縮流によって地盤中に比べて流速が大きくなっている。そのため、連通孔に土砂が詰まると、流れの抵抗が大きくなる。また、連通孔が上流側に面した場合(地下水の流れの向きが変わって上流側になることもある)などは、連通孔を通じて、通水経路部に土砂が侵入する恐れがある。
【0028】
そこで、連通孔に、網状その他、適当なフィルターを装着することで、目詰まりや土粒子の侵入を防止し、通水機能を損なわないようにすることができるようになる。連通孔を被覆するフィルターも、前述と同様に、使用環境に応じて適切なものを選べばよい。
【0029】
請求項6に係る鋼製壁は、鋼矢板を連結して構成される鋼製壁であって、前記鋼矢板の一部または全部が請求項1〜5に係る通水性鋼矢板であることを特徴とするものである。
【0030】
鋼製壁を構成する全ての鋼矢板が請求項1〜5の通水性鋼矢板である必要は必ずしもなく、通水性鋼矢板と通水性のない通常の鋼矢板を混在させる形で鋼製壁を形成させることもできる。もちろん、通水性が重視される領域においては、通水性鋼矢板のみで構成されてもよい。
【0031】
請求項7は、請求項6に係る鋼製壁において、当該鋼製壁は、その一方の面において地盤を支持するものであって、前記地盤を支持する面に前記通水経路部を備え、前記地盤を支持する面と反対面側における地表面よりも上にある前記連通孔のうち最も下にある連通孔は、前記地表面付近の高さにあることを特徴とするものである。
【0032】
請求項8は、請求項6に係る鋼製壁において、当該鋼製壁は、その一方の面において地盤を支持するものであって、前記地盤を支持する面に前記通水経路部を備え、前記地盤を支持する面と反対面側における地表面よりも上にある前記連通孔のうち最も下にある連通孔は、当該鋼製壁の上端と前記地表面との中間の高さにあることを特徴とするものである。
【0033】
請求項7、8の鋼製壁は、主として切土面や盛土に対する土留め壁や擁壁として用いられることを想定したものである。前述したように、土留壁や擁壁の前面側は、例えば道路であったり敷地であったりする場合が多い。
【0034】
このような用途において、請求項7の鋼製壁は、鋼矢板の長手方向(鋼製壁としては上下方向)に沿って設けられた通水経路部に向かって、地盤の深さ方向の広い範囲から間隙水が流入し、通水がスムーズな通水経路部を通じて、地表面近くに設けられた連通孔から壁体前面側の地表面付近に排水できる。
【0035】
これにより、地盤中の間隙水の水位の過度の上昇が抑制されまたは上昇した水位を速やかに下げることができる。通水性をさらに上げたい場合は、さらに例えば中間位置の高さにも別の連通孔を1つ以上設けてもよい。
【0036】
ここで、請求項7の鋼製壁と、特許文献1や特許文献3に記載されるような通水経路部なしで貫通孔を壁体に備える鋼矢板による鋼製壁とを比較すると、請求項7に記載の通水性鋼製壁は、地盤中の上下方向の広い範囲から間隙水が流入し得るので、連通孔の数や総面積が少なくて済む。使用形態や要求性能や地盤の条件によって異なるものの、特許文献1や特許文献3の壁体と比較して壁面面積の開孔率で数分の1〜数十分の1(環境によっては0.1%未満)でも同等の通水性を発揮する。すなわち、基体に設ける孔が少ないので、前述したような孔あけ作業の煩雑さ、外観上の懸念が小さく、あるいは鋼矢板(壁)の強度としても有利である。
【0037】
一方、請求項8の鋼製壁は、請求項7の鋼製壁とほぼ同様の効果を有するが、地盤中の常時における地下水位をある程度コントロールすることができる。鋼製壁の下端より下方を通過して下流側へ向かう流れがほとんど無視できる環境では、地盤中の地下水の水位は、最も低い位置にある連通孔よりも低くならない。
【0038】
そこで、連通孔を適度な高さに設けることで、地盤中の常時における地下水位をある程度の高さに維持することができる。そのため、前述したような、農地、井戸、養殖場等が存在したり、保護すべき植生・生態系などが存在する状況において有効である。
【0039】
請求項9は、請求項6に係る鋼製壁において、当該鋼製壁は、その全部または大部分が地中に埋設されるものであり、前記連通孔が前記鋼矢板基体に複数形成されており、前記通水経路部が設けられている位置で長手方向に分散して配置されていることを特徴とするものである。
【0040】
請求項10は請求項6に係る鋼製壁において、当該鋼製壁は、その全部または大部分が地中に埋設されるものであり、当該鋼製壁の両方の面に、前記通水経路部を備えていることを特徴とするものである。
【0041】
請求項9、10の鋼製壁は、鋼製壁が地震時に液状化の恐れがある地盤に埋設される場合を想定したものであり、常時は地下水の円滑な流れを遮断せず、地震時には液状化抑制の効果を備える。特許文献4〜6の鋼矢板を用いた鋼製壁では、常時においては、鋼矢板壁で隔てられた地盤間の円滑な地下水流を阻害する恐れがある。
【0042】
このような用途において、請求項9の鋼製壁は、鋼矢板の長手方向(鋼製壁としては上下方向)に沿って通水経路部が設けられ、さらに通水経路部が設けられている位置の長手方向(鋼製壁としては上下方向)に沿って複数の連通孔が分散して配置されているので、常時において、地下水をスムーズに通過させることができる。
【0043】
さらに、地震時に液状化の恐れがある地盤においては、請求項9の鋼矢板壁は、通水経路部を通して、通水経路部の上部の開口部から過剰な間隙水を地上に排出し、地震時の液状化を抑制することができる。
【0044】
液状化防止の観点では、液状化をより抑制したい側の面に通水経路部を備えるのが好ましい。両方の地盤の液状化を抑制したい場合は、請求項10の鋼製壁のように両方の面に通水径路部が備わっていてもよい。この構造では、連通孔は長手方向に分散して配置されている必要はなく、常時の通水が可能な程度に所定の位置に一つ又は複数の連通孔を備えていればよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の鋼矢板は、上述したように、土留め壁、擁壁や護岸壁、あるいは液状化対策としての鋼製壁に好適である。
【0046】
また、本発明の鋼製壁は、例えば土留め壁、擁壁や護岸壁としては、抵抗が小さい通水経路部を壁体背面側に備えることで、地盤中の広い領域から間隙水を矢板に到達させて、連通孔を通じて前面側に効率的に排水することができる。これにより、必要な通水機能を得るための鋼矢板基体に設ける連通孔の大きさや数を小さくすることができる。
【0047】
また、本発明の鋼製壁は、液状化の恐れがある地盤の地中壁としては、常時は地下水の円滑な流れを遮断せず、地震時には液状化抑制の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る鋼製壁の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態における通水性鋼矢板を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図3】本発明に係る鋼製壁(図1のもの)の効果を説明するために、擁壁構造物における地下水の水位や流れを概略的に示した断面図であり、(a)は水抜き孔を備えない鋼矢板で擁壁を構築した場合、(b)は地表面近くに水抜き孔を設けただけの鋼矢板を用いた擁壁を構築した場合、(c)は図1の擁壁を構築した場合である。
【図4】従来の盛土の擁壁構造物の構成例を示した断面図であり、(a)は擁壁背面側に砕石層等を設ける場合、(b)は擁壁背面側にマット状の排水材を埋設する場合である。
【図5】本発明に係る鋼製壁の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る鋼製壁(図5のもの)の効果を説明するために、擁壁構造物における地下水の水位や流れを概略的に示した断面図であり、(a)、(b)は図5の護岸壁を構築した場合、(c)は、水抜き孔のみを備える(通水経路部を備えない)鋼矢板で護岸壁を構築した場合である。
【図7】通水性鋼矢板の変形例としてU形鋼矢板を用いた場合の正面上側から見た斜視図である。
【図8】図7の通水性鋼矢板を用いて構築される鋼製壁(擁壁)の水平断面図である。
【図9】通水性鋼矢板の変形例としてZ形鋼矢板を用いた場合の正面上側から見た斜視図である。
【図10】図9の通水性鋼矢板を用いて構築される鋼製壁(擁壁)の水平断面図である。
【図11】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図12】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図13】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図14】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図15】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図16】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図17】本発明に係る鋼製壁を地震時の液状化対策目的での地中壁として設けたときの地下水の水位や流れのイメージを示した断面図である。
【図18】図17の実施形態における通水性鋼矢板の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図19】図17の実施形態における通水性鋼矢板の変形例としてU形鋼矢板を用いた場合の水平断面図である。
【図20】通水性鋼矢板の他の例を示したもので、(a)は正面上側から見た斜視図、(b)は断面図、(c)は要部を裏面側から見た図である。
【図21】図20の通水性鋼矢板111を用いて構築した締切り壁の例を示す水平断面図である。
【図22】本発明に係る鋼製壁を地震時に液状化のある地盤に設けられた盛土構造物の法尻強化対策として設けたときの地下水の水位や流れのイメージを示した断面図である。
【図23】(a)、(b)はそれぞれ本発明における鋼矢板の打設の態様として、通水経路部の先端を保護材等で取り付けて、通水経路部を鋼矢板基体に沿わせつつ地上から供給しながら打設する場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0050】
図1および図2に、本発明に係る鋼製壁および通水性鋼矢板の一例を示す。
【0051】
図1は、擁壁としての本発明に係る鋼製壁の例である。擁壁(鋼製壁)500は、図2の通水性鋼矢板100を幅方向に連結して打設されることで構築されている。擁壁500において、鋼矢板100の通水経路部130は背面側の地盤に向いており、連通孔160は、前面の地表面近くの高さに位置している。
【0052】
図2の通水性鋼矢板100は、鋼矢板基体120としてハット型鋼矢板(継手部は図示省略)が用いられ、鋼矢板基体120の凹部面側に通水経路部130が形成されている。具体的には、鋼矢板基体120のウェブのハット形凹面側に、フィルター150で被覆された、透水性のある長尺のリブ型構造体が取り付けられており、これが通水経路部130として働く。
【0053】
フィルターで覆われた樹脂性リブ型構造体としては、例えば、排水材としての市販製品である前田工繊(株)製のエンドレンマットRS(「エンドレンマット」は登録商標)を例示することができ、これを鋼矢板基体120に沿わせて設けることで通水経路部130とすることができる。
【0054】
この通水経路部(リブ型構造体)130は、その表面が細かな格子状になっているので、長手方向に沿って略均一に地盤との間で間隙水の通水が可能となっている。また、この通水経路部(リブ型構造体)130の内部は、リブが断続的に形成されているだけなので、通水抵抗が極めて小さい。なお、リブ型構造体やフィルターは、上記市販品に限定されるものでなく使用環境等によって選択すればよい。
【0055】
一方、鋼矢板基体120の所定位置には、通水経路部130に通じる連通孔160が設けられている。図2(要部裏面図として図2(c))では、連通孔160は、鋼矢板基体120の下部の一個所に設けられている。さらに、連通孔160の周囲の鋼矢板基体120に補強材(たとえば鋼材)190を溶接する等より補強されるのが好ましい。なお、通水性上必要であれば、例えば鋼矢板基体120の長手方向中間位置に、連通孔がさらに1〜数個設けられてもよい。
【0056】
通水経路部130の下端部位置には、保護部180が設けられている。保護部180により通水経路部130の先端が鋼矢板基体120に取り付けられるとともに、鋼矢板100の打設時に通水経路部130の先端が保護される。
【0057】
図1及び図2における通水性鋼矢板100は、鋼矢板基体(ハット形鋼矢板)120のウェブの凹面側に通水経路部130を備えているが、これとは逆に、ウェブのハット形凸面側に通水経路部を備える通水性鋼矢板としてもよい。この通水性鋼矢板の場合、鋼矢板基体(ハット形鋼矢板)の継手部(爪部)を背面地盤側に向けて連結することができる。
【0058】
図3は、擁壁構造物における地下水の水位や流れを概略的に示した図であり、これを用いて図1に示した本発明に係る鋼製壁(擁壁)500の効果を説明する。
【0059】
図3(a)は水抜き孔を備えない鋼矢板で擁壁を構築した場合、図3(b)は地表面近くに水抜き孔を設けただけの鋼矢板を用いた擁壁を構築した場合、図3(c)は図1の擁壁500を構築した場合である。
【0060】
図3(a)のように水抜き孔を設けない場合は、地盤中の間隙水は、擁壁を通じて前面側に排出されないので、豪雨等に見舞われた場合など、間隙水が滞留して地盤中の水位が上昇する。これにより、地盤の有効応力が低下しせん断強度が低下して、地盤が軟弱になったり地滑りを起こしたりする原因となり得る。
【0061】
図3(b)のように下部に水抜き孔を設けた鋼矢板を用いた鋼製壁の場合は、背面地盤中の間隙水は、地盤を通って水抜き孔に集中して流れようとする。しかし、地盤の通水抵抗は大きいので、排水の効率はあまりよくない。そのため、豪雨等の際に排水が追いつかなくなると急激に水位が上昇し、最悪の場合図3(a)と同様に地滑り等を招きうる。
【0062】
これに対し、本発明の図3(c)の場合は、通水経路部の通水抵抗が極めて小さいので、通水経路部の長さ(深さ)方向全長にわたって背面側地盤から通水経路部内に間隙水が流入する。そのため、地盤中で、前述のような水抜き孔への流れの集中が生じにくい。その結果、豪雨等に見舞われても、地盤中の間隙水を効果的に排出し、地下水位の過度の上昇を抑制することができる。また、いったん上昇した地下水位を短時間で低下させることができる。
【0063】
なお、図3(b)に代わって、長手方向の全領域にわたって略均一な密度で水抜き孔を設けた鋼矢板を用いた鋼製壁(擁壁)を用いた場合、孔の数や総面積によっては、地盤中の間隙水の流れを図3(c)と同様とし、効果的な排水を可能にすることもできる。
【0064】
しかし、このような効果を得るための連通孔の面積(壁面面積に対する開孔率)は、使用形態や要求性能や地盤の条件によって異なるものの、図3(c)の鋼製壁(すなわち、図2の鋼矢板500を用いた図1の鋼製壁500)は、長手方向の全領域にわたって略均一な密度で水抜き孔を設けた鋼矢板を用いた鋼製壁(擁壁)と比較して、数分の1〜数十分の1(環境によっては0.1%未満)でよい。そのため、鋼矢板(鋼矢板基体)に設ける孔が少ないので、前述したような孔あけ作業の煩雑さ、目詰まり、外観上の懸念が小さく、あるいは鋼矢板(壁)の強度としても有利である。
【0065】
なお、従来の盛土の擁壁構造物でも、図4(a)のように擁壁背面側の地盤の擁壁近傍に透水性の高い砕石層等が設けられることで擁壁近傍の通水抵抗を低くして、良好な排水性を確保することができる。あるいは、図4(b)のように擁壁背面側の地盤にマット状の排水材が埋設されることもある。しかし、図1の鋼製壁によれば、図4(a)のような砕石層を省略したり、図4(b)のようにマット状排水材を別に埋設することを省略することができる。
【0066】
さらに、鋼矢板製の擁壁の一つの特長は、鋼矢板を打設して擁壁を構築後に、道路・宅地側を掘削・切土する施工が可能なことであるが、擁壁を構築した後に擁壁の背面に図4の砕石層やマット状排水材を設けることが困難である。このような切土面の擁壁構造物においても、図1の鋼製壁によれば、良好な排水性が得られる。
【0067】
図5は、図2の通水性鋼矢板100と同様の通水性鋼矢板を用いて構築された擁壁(鋼製壁)501の例である。但し、連通孔160は、図1、図2の例よりも上部にあり、擁壁501において地表面よりもかなり高い位置に設けられている。それ以外は、図1の鋼製壁および図2の鋼矢板と同様である。
【0068】
図6は、図3と同様に擁壁構造物における地下水の水位や流れを概略的に示した図であり、これを用いて図5に示した本発明に係る鋼製壁(擁壁)501の効果を説明する。図6(a)、(b)は図5の護岸壁を構築した場合、図6(c)は、水抜き孔のみを備える(通水経路部を備えない)鋼矢板で護岸壁を構築した場合である。
【0069】
降雨等により地盤中の地下水位が通水孔の高さよりも高くなると、図6(b)、(c)に示すように、通水孔を通じて地盤中の間隙水が排出される。このとき、効果的な排水という目的では、図6(b)の構造は、図3(c)の構造には及ばないものの、図6(c)の構造と比較すれば圧倒的に効果的である。
【0070】
一方、鋼製壁の下端より下方を通過して前面側の地盤に流れがほとんど無視できる環境では、地盤中の地下水の水位が連通孔の高さと同等以下の場合、図6(a)に示すように連通孔を通じて排水されない。逆にいえば、連通孔を適度な高さに設けることで、地盤中の常時における地下水位をある程度の高さに維持することができる。
【0071】
次に、通水性鋼矢板に関する変形例について説明する。
【0072】
図7の通水性鋼矢板101は、鋼矢板基体121として、図2のハット形鋼矢板に換えてU形鋼矢板を用いた例である。これ以外は、図2と同様の構成である。通水性鋼矢板111を用いて鋼製壁(擁壁)502を構築する場合、図8のように通水性鋼矢板111を1枚おきに打設して、地盤側に通水経路部130を向ければよい。
【0073】
図9の通水性鋼矢板102は、鋼矢板基体122として、図2のハット形鋼矢板に換えてZ形鋼矢板を用いた例で、Z形鋼矢板(鋼矢板基体)122のウェブに通水経路部130が設けられている。これ以外は、図2と同様の構成である。通水性鋼矢板102を用いて鋼製壁(擁壁)503を構築する場合、例えば図10のような構造とすればよい。
【0074】
図11の通水性鋼矢板103は、通水経路部131が図2のものとは異なり、これ以外は図2と同様の構成である。
【0075】
図11において、通水経路部131は、鋼矢板基体120に溶接された長尺で断面C形状の溝型鋼(外殻体)からなる。通水経路部(外殻体)131には、その長手方向略全長にわたって通水孔141が設けられており、長手方向に沿って略均一に、地盤との通水が可能になっている。
【0076】
通水孔141には、通水経路部131の内部への土砂の侵入を抑制するフィルター151が設けられている。フィルター151としては、材質は特に限定されず、目の細かい繊維や通水性の高い不織布やステンレス網などが例示される。
【0077】
図11では、通水孔141にそれぞれに別々のフィルター151が設けられているが、面積の広いシート状のフィルターを用いて複数の通水孔141を覆うように(より端的には、一枚物のフィルターで全ての通水孔141を覆うように)すれば簡便である。また、連通孔160にも、フィルター170を設置したり、貼り付けたりしておいてもよい。
【0078】
図12の通水性鋼矢板104は、通水経路部132が立体網状構造体からなる点で図2のものとは異なり、これ以外は図2と同様の構成である。立体網状構造体(通水経路部)132はフィルター152で被覆されている。
【0079】
立体網状構造体としては新光ナイロン社製のヘチマロン(「ヘチマロン」は登録商標)等が例示される。また、排水材料の市販製品である前田工繊(株)製の「エンドレンマット」(「エンドレンマット」は登録商標)等は立体網状構造体がフィルター(不織布)で覆われた構造であり、これを鋼矢板基体120に取り付けて通水経路部としてもよい。
【0080】
図13の通水性鋼矢板105は、通水経路部133が図2のものとは異なり、これ以外は図2と同様の構成である。通水経路部133は、透水性のある樹脂繊維を編んで作られた管状体が複数本並んだ構造となっており、これがフィルター153で被覆されている。排水材料の市販製品である前田工機社製の「モノドレン」(「モノドレン」は登録商標))や前田工繊(株)製の「エンドレンフィルター」等は、このような複数の管状体がフィルターで覆われた構造であり、これらを鋼矢板基体120に取り付けて通水経路部133としてもよい。
【0081】
図14の通水性鋼矢板106は、連通孔161として細かい孔が複数個設けられている点で図2のものとは異なり、これ以外は図2と同様の構成である。図2のように比較的大きめの連通孔160を設けるのと比較して、孔あけ作業はやや煩雑になるが、鋼矢板基体120の強度に及ぼす影響が小さいので連通孔161の周囲の補強を省略し得る。
【0082】
図15の通水性鋼矢板107は、図2の通水性鋼矢板100の連通孔160の上側にも、別の連通孔160を1〜数個設けた例である。この通水性鋼矢板107で、図1または図5と同様の擁壁を構築すると、最下部にのみ連通孔を設けた場合より地盤中の間隙水の排水性が高まる。したがって排水性を重視したい場合は、このような構造としてもよい。
【0083】
図16の通水性鋼矢板108は、図1の通水性鋼矢板100における鋼矢板基体120の長手方向の1〜数か所に、フリクションカッター191を、通水経路部130の前方になるよう溶接したものである。フリクションカッター191は、通水性鋼矢板108の打設時に、フィルター150を保護し、また打設力を低減させる効果がある。
【0084】
また、前述したように、鋼製壁(擁壁)500〜503の前面はコンクリートで覆われても(いわゆる化粧をされても)よい。この場合、被覆コンクリートには、鋼製壁の連通孔から前面側に流れて来る水を排水する排水経路(端的には水抜き孔)が設けられる。
【0085】
図17は、地震時の液状化対策目的での地中壁としての本発明に係る鋼製壁およびこれを設けたときの地下水の水位や流れのイメージを示したものである。
【0086】
地中壁(鋼製壁)600は、図18の通水性鋼矢板110を幅方向に連結して打設することで構築されている。地中壁600において、鋼矢板110の通水経路部130は、地中構造物側に向いている。
【0087】
図18の通水性鋼矢板110は、図2の通水性鋼矢板100とほぼ同様の構造だが、通水経路部103は、通水性鋼矢板110が打設される地盤の地表面近傍から液状化層下端近傍までの長さ(深さ)をカバーする長さを有する。また、複数の連通孔162が、通水経路部130が設けられた鋼矢板基体120の長手方向の全領域にわたって略均一な密度で設けられている点で、図2の通水性鋼矢板100と異なる。
【0088】
図17の地中壁(鋼製壁)600においては、連通孔162側にも地盤があるので、常時において地下水の円滑な流れを阻害しないためには、図18のように、連通孔162が鋼矢板の長手方向の全領域にわたって略均一な密度で設けられているのが好ましい。
【0089】
使用環境にもよるが、目安としての開孔率は、地中壁全体の面積に対して0.1%〜1%程度である。必要であれば、鋼矢板基体の通水経路部103が設けた位置以外の個所にも、通水のための孔を、基体の強度が実用上問題ない範囲で設けてもよい。
【0090】
図17の地中壁(鋼製壁)600には、地震時における液状化防止の効果も期待される。そこで、通水経路部130は、地盤の液状化層の間隙水を地上に排出できる程度の十分な長さを有する。
【0091】
好ましくは、図18のように、通水性鋼矢板110が打設される地盤の地表面近傍から液状化層下端近傍までの長さ(深さ)をカバーする長さを有する。液状化抑止の基本的な考え方は、従来の排水部材を設けた液状化抑止機能を有する鋼製壁と同じである。
【0092】
なお、例えば、鋼矢板基体を図7のようなU形鋼矢板とし、図19に示す地中壁601のように通水経路部130が地中壁601の両面に存在するように打設すれば、締切り壁の両側の地盤に対して液状化防止効果も期待できる。
【0093】
また、図20のような通水性鋼矢板111を用いて、図21に示すような締切り壁602としてもよい。図20の通水性鋼矢板111は、図2の通水性鋼矢板100とほぼ同様だが、鋼矢板基体120のウェブのハット形凸面側にも通水経路部130(フィルター150は省略)が設けられている点で、図2の通水性鋼矢板100と異なる。
【0094】
通水性鋼矢板111を用いて構築された地中壁602は、連通孔160を挟むようにして通水経路部130、130が設けられているので、地中壁近傍の地盤における地下水の流れが、上流側/下流側ともに、連通孔16に集中しない。そのため、連通孔の数や総面積を小さくすることができる。また地中壁602の両面に締切り壁の両側の地盤に対して液状化防止効果も期待できる。
【0095】
図22は、地震時に液状化のある地盤に設けられた盛土構造物の法尻強化対策としての地中壁の例である。この例では、図20の通水性鋼矢板を用いて図21の構造の壁体を構築しているが、通水性や液状化対策についての考え方およびそのための構造は、前述の地中壁の例と同様である。
【0096】
次に鋼矢板の打設の態様について、説明する。
【0097】
1つの打設態様は、鋼矢板基体に通水経路部をあらかじめ取り付けて通水性鋼矢板として打設する。例えば、図11のように通水経路部(溝型鋼)131が基体に溶接されている鋼矢板103や、図16において、フリクションカッター191により通水経路部130がフリクションカッター191で鋼矢板基体120に向けて押さえられている通水性鋼矢板108を打設する。
【0098】
あるいは、例えば、図2の通水性鋼矢板100を打設する際に、長尺の保護板で通水経路部を抑えながら打設し、打設後に保護板を引き抜くという方法もある。
【0099】
別の打設態様は、通水経路部によっては、図23(a)、(b)に示すように、通水経路部の先端を保護材等で取り付けて、通水経路部を鋼矢板基体に沿わせつつ地上から供給しながら打設する。
【0100】
この場合は、打設後に通水性鋼矢板としての形態となる。たとえば、通水経路部が樹脂製で長尺のマット状の場合(上述で例示した排水材としての市販製品はこれに該当する)は、このような方法が可能である。
【符号の説明】
【0101】
100、101、102、103、104、105、106、107、108、110、111…通水性鋼矢板、
120、121、122…鋼矢板基体、
130、131…通水経路部、
141…通水孔、
150、151、152、153…フィルター、
160、161、162…連通孔、
170…フィルター、
180…保護部、
190,191…補強材、
500、501、502、503…擁壁、
600、601,602…地中壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板基体と、該鋼矢板基体の一方の面に長手方向に沿って設けられた通水経路部とを備える鋼矢板であって、
前記通水経路部は、その長手方向に沿って略均一に、当該鋼矢板が打設される地盤との間で間隙水の通水が可能であり、
かつ、通水経路部の内部は、該地盤よりも水の流れに対する抵抗が小さく、
前記鋼矢板基体には、前記通水経路部と当該通水経路部が設けられた側と反対側とを連通させる1以上の連通孔が形成されている、
ことを特徴とする通水性鋼矢板。
【請求項2】
前記通水経路部は、前記鋼矢板基体に取り付けられた外殻体によって形成され、前記外殻体には、通水孔が前記外殻体の長手方向に沿って略均一に備えられ、当該通水孔には、前記地盤からの土砂の侵入を抑制するフィルターが設けられていることを特徴とする請求項1記載の通水性鋼矢板。
【請求項3】
前記通水経路部は、立体網状構造体からなり、当該立体網状構造体は、その内部への土砂の侵入を抑制するフィルターで被覆されていることを特徴とする請求項1記載の通水性鋼矢板。
【請求項4】
前記通水経路部は、透水性のあるリブ型構造体または管状体からなり、前記格子体または管状体は、その内部への土砂の侵入を抑制するフィルターで被覆されていることを特徴とする請求項1記載の通水性鋼矢板。
【請求項5】
前記連通孔には、前記通水経路部への土砂の侵入を抑制するフィルターを設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の通水性鋼矢板。
【請求項6】
鋼矢板を連結して構成される鋼製壁であって、前記鋼矢板の一部または全部が請求項1〜5のいずれかに記載の通水性鋼矢板であることを特徴とする鋼製壁。
【請求項7】
当該鋼製壁は、その一方の面において地盤を支持するものであって、前記地盤を支持する面に前記通水経路部を備え、前記地盤を支持する面と反対面側における地表面よりも上にある前記連通孔のうち最も下にある連通孔は、前記地表面付近の高さにあることを特徴とする請求項6記載の鋼製壁。
【請求項8】
当該鋼製壁は、その一方の面において地盤を支持するものであって、前記地盤を支持する面に前記通水経路部を備え、前記地盤を支持する面と反対面側における地表面よりも上にある前記連通孔のうち最も下にある連通孔は、当該鋼製壁の上端と前記地表面との中間の高さにあることを特徴とする請求項6記載の鋼製壁。
【請求項9】
当該鋼製壁は、その全部または大部分が地中に埋設されるものであり、前記連通孔が前記鋼矢板基体に複数形成されており、前記通水経路部が設けられている位置で長手方向に分散して配置されていることを特徴とする請求項6記載の鋼製壁。
【請求項10】
当該鋼製壁は、その全部または大部分が地中に埋設されるものであり、当該鋼製壁の両方の面に、前記通水経路部を備えていることを特徴とする請求項6記載の鋼製壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−112158(P2012−112158A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261183(P2010−261183)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】