通行監視システム
【課題】許可者による通行に紛れて非許可者が立入制限エリアへの出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視し得る通行監視システムを得る。
【解決手段】画像処理部10は、ドア3が設けられた所定の出入口2を、当該出入口2の近傍領域5を含めて撮影するカメラ1と、ドア3の開閉状態を検出する第1の検出部15と、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、出入口2の近傍領域5を移動する人物20を検出する第2の検出部16と、第1の検出部15及び第2の検出部16による検出結果D6,D7に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する判定部19とを備える。
【解決手段】画像処理部10は、ドア3が設けられた所定の出入口2を、当該出入口2の近傍領域5を含めて撮影するカメラ1と、ドア3の開閉状態を検出する第1の検出部15と、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、出入口2の近傍領域5を移動する人物20を検出する第2の検出部16と、第1の検出部15及び第2の検出部16による検出結果D6,D7に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する判定部19とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行監視システムに関し、特に、立入制限エリア内への不正侵入を監視するための通行監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立入制限エリア内への不正侵入を監視するために、立入制限エリアへの出入口の近傍領域を監視カメラによって撮影するとともに、撮影された映像をハードディスク等に記録するシステムが存在する。
【0003】
例えば下記特許文献1には、立入制限エリアへの出入口の近傍領域の上方に距離センサ(距離画像撮像手段)を設置し、当該距離センサによって検出された被写体までの距離情報(距離画像情報)に基づいて、出入口を通行する人物の抽出を行う監視システムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−243972号公報(図2(a)及び明細書の第0048段落乃至第0050段落参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された監視システムによると、侵入者が床を這った姿勢で出入口の通行を試みた場合には、距離センサから床までの距離と、距離センサから侵入者までの距離とに大差がないため、距離センサが侵入者の存在を検出できない可能性がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、許可者による通行に紛れて非許可者が立入制限エリアへの出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視し得る通行監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る通行監視システムは、ドアが設けられた所定の出入口を、当該出入口の近傍領域を含めて撮影するカメラと、前記ドアの開閉状態を検出する第1の検出部と、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記出入口の近傍領域を移動する人物を検出する第2の検出部と、前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記ドアが開いてから次に閉じるまでの間に前記出入口を通行した人物が一か複数かを判定する判定部とを備える。
【0008】
第2の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第1の検出部は、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記ドアの開閉状態を検出することを特徴とする。
【0009】
第3の発明に係る通行監視システムは、第2の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像の全領域の一部に、前記ドアの開閉状態を検出するために前記第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する第1の設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
第4の発明に係る通行監視システムは、第2又は第3の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像内において前記出入口を特定し、特定された前記出入口自身を、前記出入口を通行する人物を検出するために前記判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する第2の設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第5の発明に係る通行監視システムは、第4の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第2の設定部は、閉じられている状態での前記ドアの位置と、開かれている状態で前記第1の検出部によって検出された前記ドアの位置とに基づいて、前記出入口を特定することを特徴とする。
【0012】
第6の発明に係る通行監視システムは、第2の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第1の検出部は、開かれている状態の前記ドアを検出している状況において、その開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった場合、開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった時点から、その状態が所定時間継続したことにより、前記ドアが閉じられたことを検出することを特徴とする。
【0013】
第7の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、前記第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の前記人物として検出することを特徴とする。
【0014】
第8の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、前記カメラによる撮像画像内で前記円が移動した場合、前記第2の検出部は、前記円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部がドアの開閉状態を検出し、第2の検出部が出入口の近傍領域を移動する人物を検出し、判定部は、第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、ドアが開いてから次に閉じるまでの間に出入口を通行した人物が一か複数かを判定する。従って、許可者による通行に紛れて非許可者が出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視することが可能となる。
【0016】
第2の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部は、カメラによって撮影された映像に基づいて、ドアの開閉状態を検出する。従って、ドアの開閉状態を検出するための専用のセンサを設置する必要がないため、コストの低減を図ることが可能となる。
【0017】
第3の発明に係る通行監視システムによれば、第1の設定部は、カメラによる撮影画像の全領域の一部に、ドアの開閉状態を検出するために第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する。従って、第1の検出部は、第1の監視領域のみを監視すれば足り、撮影画像の全領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。
【0018】
第4の発明に係る通行監視システムによれば、第2の設定部は、カメラによる撮影画像内において出入口を特定し、特定された出入口自身を、出入口を通行する人物を検出するために判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する。従って、判定部は、第2の監視領域のみを監視すれば足り、それよりも広い領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。しかも、立入制限エリアへの侵入を試みる侵入者は必ず出入口を通行するため、出入口自身を第2の監視領域として設定することにより、侵入者の存在を確実に検出することが可能となる。
【0019】
第5の発明に係る通行監視システムによれば、第2の設定部は、閉じられている状態でのドアの位置と、開かれている状態で第1の検出部によって検出されたドアの位置とに基づいて、出入口を特定する。従って、第2の設定部は、現時点におけるドアの開き具合に応じて、第2の監視領域を適切に設定することが可能となる。
【0020】
第6の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部は、開かれているドアを検出しなくなった状態が所定時間継続したことにより、ドアが閉じられたことを検出する。従って、光の加減やノイズ等に起因して、第1の検出部が、実際に開かれている状態のドアを瞬間的に検出できなかった場合であっても、ドアが閉じられたと第1の検出部が誤って検出してしまうことを回避できる。その結果、判定部による通行人の単複判定を正確に行うことが可能となる。
【0021】
第7の発明に係る通行監視システムによれば、第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の人物として検出する。従って、同一の人物に関して頭部や肩部等の複数の円が検出された場合には、これら複数の円を包含する一つの円が一人の人物として検出される。その結果、例えば、出入口の近傍領域を移動する人物が突飛な動きをして、その人物の頭部の移動量が瞬間的に大きくなる場合であっても、同一人物であるとしてその人物を正確に追跡することが可能となる。
【0022】
第8の発明に係る通行監視システムによれば、第2の検出部は、カメラによる撮像画像内で円が移動した場合、円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定する。カメラの設置位置や設置角度等に応じて人物に対応する円の大きさも異なることとなるが、円の中心位置情報のみならず半径情報をも用いることにより、移動する人物の追跡をより正確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0024】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図及び上面図である。本実施の形態に係る通行監視システムは、立入制限エリアへの出入口を通行する人物を監視するためのシステムである。ここで、立入制限エリアとは、予め入室が許可された者(以下「許可者」と称す)以外の者の立ち入りが禁止されているエリアを意味する。
【0025】
図1,2を参照して、立入制限エリアの出入口2には、ドア3が設けられている。図1,2においては、ドア3よりも右側が立入制限エリアである。ドア3の横の壁には、カードリーダ4が設置されている。所定のカードキーが予め許可者に付与されており、カードリーダ4によってカードキーの内容を読み取ることによって、ドア3の施錠が一時的に解除される。また、出入口2の近傍領域5の上方の天井には、動画撮影が可能なカメラ1が設置されている。カメラ1は、ドア3が設けられた出入口2を、出入口2の近傍領域5を含めて撮影する(図1の破線参照)。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る通行監視システムにおける画像処理部10の機能構成を示すブロック図である。カメラ1の後段には、処理部11が接続されている。処理部11の後段には、差分画像生成部12及び画像記憶部13が接続されている。差分画像生成部12の後段には、第1の設定部14、第1の検出部15、第2の検出部16、及び第2の設定部17が接続されている。第1の検出部15及び第2の検出部16の後段には、判定部19が接続されている。また、第1の検出部15には、タイマ18が接続されている。
【0027】
カメラ1によって撮像された画像D0は、処理部11に入力される。処理部11は、画像D0に対してエッジ強調処理及び2値化処理を行う。
【0028】
図4は、ドア3が閉められている状態でカメラ1によって撮影され、処理部11によってエッジ強調処理及び2値化処理が施された、背景画像D1を示す図である。背景画像D1には、ドア3や近傍領域5の床が映っている。図3を参照して、背景画像D1は画像記憶部13に記憶される。
【0029】
図5は、許可者である人物20によってドア3が開けられた状態でカメラ1によって撮影され、処理部11によってエッジ強調処理及び2値化処理が施された、画像D2を示す図である。画像D2には、ドア3及び近傍領域5の床に加えて、出入口2の一部及び人物20が映っている。図3を参照して、画像D2は差分画像生成部12に入力される。
【0030】
差分画像生成部12は、処理部11から入力された画像D2と、画像記憶部13から読み出した背景画像D1とに基づいて、差分画像D3を生成する。その際、差分画像生成部12は、画像D2と背景画像D1とで、対応する画素の画素値をそれぞれ比較し、背景画像D1よりも画像D2のほうが画素値が大きい画素を、差分画像D3内における黒画素として設定する。
【0031】
図6は、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3を示す図である。背景画像D1と画像D2との差分をとったことにより、差分画像D3には、画像D2内の人物20に対応する人物30のエッジの一部、画像D2内のドア3に対応するドア31のエッジの一部、及び画像D2内の出入口2に対応する出入口32のエッジの一部が、それぞれ現れている。図3を参照して、差分画像D3は、第1の設定部14、第1の検出部15、第2の検出部16、及び第2の設定部17に入力される。
【0032】
<第1の設定部14による処理>
図7は、図3に示した第1の設定部14による処理の内容を説明するための図である。本実施の形態に係る通行監視システムが導入され、カメラ1が所定の箇所に設置されると、まず初期設定が行われる。かかる初期設定においては、図4に示した背景画像D1が取得され、その後、ドア3を開ける状況がカメラ1によって撮影される。これにより、図3に示した差分画像生成部12によって、図6,7に示した差分画像D3が作成される。差分画像D3は、第1の設定部14に入力される。
【0033】
ドア3が開けられると差分画像D3内にドア31のエッジ41が現れるので、第1の設定部14は、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、差分画像D3内でエッジ41を検出する。そして、第1の設定部14は、初めて検出された瞬間におけるエッジ41の位置として、閉められている状態のドア3に対応するエッジ42の位置を検出する。
【0034】
次に、第1の設定部14は、差分画像D3の全画像領域25内に、エッジ42を一辺とする矩形又は扇形の領域(図7に示した例では正方形の領域)を、第1の監視領域26として設定する。第1の監視領域26をエッジ42の左方に設定するか右方に設定するかは、数秒後に検出されるエッジ41の位置に基づいて決定することができる。図7に示した例では、エッジ42よりも左側でエッジ41が検出されるため、第1の監視領域26はエッジ42の左方に設定される。
【0035】
第1の監視領域26は、ドア3の開閉状態を検出するために第1の検出部15が監視すべき領域であり、第1の監視領域26の位置情報D4は、第1の設定部14によって保持される。図3を参照して、位置情報D4は、第1の設定部14から第1の検出部15に入力される。
【0036】
このように、第1の設定部14は、カメラ1による撮影画像(具体的には差分画像D3)の全画像領域25の一部に、ドア3の開閉状態を検出するために第1の検出部15が監視すべき第1の監視領域26を設定する。従って、第1の検出部15は、第1の監視領域26のみを監視すれば足り、全画像領域25を監視する必要がないため、第1の検出部15の処理の負荷を低減することが可能となる。
【0037】
<第1の検出部15による処理>
本実施の形態に係る通行監視システムが導入され、初期設定が完了すると、カメラ1を用いた近傍領域5(図1,2参照)の監視が開始される。
【0038】
第1の検出部15は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、ドア3の開閉状態を検出する。以下、具体的に説明する。
【0039】
上記の通り、第1の設定部14によって設定された第1の監視領域26に関する位置情報D4は、第1の設定部14から第1の検出部15に入力されている。また、図3を参照して、第1の検出部15には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3も入力されている。
【0040】
図7を参照して、第1の検出部15は、差分画像D3の全画像領域25内の第1の監視領域26を監視し、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、第1の監視領域26内でエッジ41を探索する。エッジ41が検出されない場合は、第1の検出部15は、ドア3は閉じられている状態であると判定する。
【0041】
ドア3が開けられると、第1の監視領域26内にドア31のエッジ41が現れる。第1の検出部15は、エッジ41を検出することにより、ドア3が開けられている状態であることを検出する。また、第1の検出部15は、第1の監視領域26内におけるエッジ41の位置により、ドア3の開き具合を検出することもできる。
【0042】
このように、第1の検出部15は、エッジ41が検出されていることにより、開かれている状態のドア3を検出する。また、第1の検出部15は、検出されているエッジ41が検出されなくなることにより、ドア3が閉じられたことを検出する。
【0043】
ここで、図3を参照して、第1の検出部15には、タイマ18が接続されている。第1の検出部15は、検出されているエッジ41が検出されなくなった時点から、タイマ18を用いて経過時間を計測する。そして、エッジ41が検出されない状態が所定時間(例えば数秒)以上継続したことにより、ドア3が閉じられたことを検出する。一方、検出されているエッジ41が検出されなくなった後、上記の所定時間が経過するよりも前に再びエッジ41が検出された場合には、第1の検出部15は、ドア3は閉じられていないと判断する。
【0044】
これにより、光の加減やノイズ等に起因して、第1の検出部15が、実際に開かれている状態のドア3を瞬間的に検出できなかった場合であっても、ドア3が閉じられたと第1の検出部15が誤って検出してしまうことを回避できる。その結果、後述する判定部19による通行人の単複判定を正確に行うことが可能となる。
【0045】
<第2の検出部16による処理>
図8は、図3に示した第2の検出部16による処理の内容を説明するための図である。第2の検出部16は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、出入口2の近傍領域5(図1,2参照)を移動する人物を検出する。以下、具体的に説明する。
【0046】
図3に示したように、第2の検出部16には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3が入力されている。図8に示した例では、差分画像D3内に、図5に示した人物20に対応する人物30のエッジが現れている。このように、近傍領域5内に人物20が存在すると、差分画像D3内に人物30のエッジが現れる。
【0047】
図8を参照して、第2の検出部16は、差分画像D3の全画像領域25を監視し、ハフ変換を用いた円(真円及び楕円)の検出手法によって、差分画像D3内で円形のエッジを探索する。円形のエッジが検出されない場合は、第2の検出部16は、近傍領域5内に人物が存在しないと判定する。
【0048】
近傍領域5内に人物20が存在すると、差分画像D3内に人物30のエッジが現れる。図8に示した例では、第2の検出部16は、人物30の頭部に対応する真円50と、人物30の胴体に対応する楕円51とを検出する。
【0049】
次に、第2の検出部16は、真円50と楕円51とを包含する一つの円52を規定する。このようにして規定された円52が、人物20(人物30)に対応する円として取り扱われる。図8に示すように、円52の内周は、真円50及び楕円51の各外周に接している。なお、図8に示した例では、互いに重なる真円50と楕円51とを包含して一つの円52が規定されたが、重ならずに互いに近接する複数の円が存在する場合には、これらの複数の円も包含されて、一つの円52が規定される。第2の検出部16は、例えば、複数の円の複数の半径のうち最大の半径を求め、その最大半径よりも離間距離が短い複数の円を一つのグループとして包含して、一つの円52を規定する。
【0050】
次に、第2の検出部16は、上記のようにして規定した円52の中心位置Cと半径Rとを求め、これらの情報を、人物20に関する位置情報として保持し、人物20の移動の追跡に利用する。
【0051】
図9は、第2の検出部16による人物の移動の追跡処理の第1の例を説明するための図である。図9(A)及び図9(B)を参照して、円52aは、第1フレームにおいて検出された円52であり、円52bは、第1フレームよりも後の第2フレームにおいて検出された円52である。つまり、第1フレームでは、中心位置がCaで半径がRaの円52aが検出され、第2フレームでは、中心位置がCbで半径がRbの円52bが検出されたということである。中心位置Cbは、中心位置Caに対して距離Lだけ離間している。なお、第2フレームは、第1フレームに連続するフレームであっても良いし、第1フレームから数フレーム後のフレームであっても良い。
【0052】
図9(A)を参照して、距離Lは、半径Ra以下である。この場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と同じ人物に対応する円であると判定する。つまり、第2の検出部16は、円52aに対応する人物と円52bに対応する人物とは、同一人物であると判定する。
【0053】
図9(B)を参照して、距離Lは、半径Raよりも大きい。この場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と異なる人物に対応する円であると判定する。つまり、第2の検出部16は、円52aに対応する人物と円52bに対応する人物とは、別の人物であると判定する。
【0054】
このように、第2の検出部16は、カメラ1による撮像画像内で円52が移動した場合、円52a,52bの中心位置Ca,Cb及び円52aの半径Raに基づいて、移動の前後の円52a,52bが同一人物に対応する円であるか否かを決定する。カメラ1の設置位置や設置角度等に応じて人物20に対応する円52の大きさも異なることとなるが、円52の中心位置Cのみならず半径Rをも用いることにより、移動する人物20の追跡をより正確に行うことが可能となる。
【0055】
図10は、第2の検出部16による人物の移動の追跡処理の第2の例を説明するための図である。ここでは、例えば、出入口2の近傍領域5を移動する人物20が突飛な動きをして、その人物20の頭部の移動量が瞬間的に大きくなった状況を想定している。図10(A)は、円52を用いて人物の移動を追跡する例を示しており、一方、図10(B)は、人物の頭部に対応する円50のみを用いて人物の移動を追跡する例を示している。
【0056】
図10(B)を参照して、円50aは、第1フレームにおいて検出された円50であり、円50bは、第2フレームにおいて検出された円50である。つまり、第1フレームでは円50aが検出され、第2フレームでは円50bが検出されたということである。なお、上記と同様に、第2フレームは、第1フレームに連続するフレームであっても良いし、第1フレームから数フレーム後のフレームであっても良い。
【0057】
図10(B)に示した例では、距離Lは半径Raよりも大きくなっている。従って、この例の場合、第2の検出部16は、円50bは、円50aに対応する人物と異なる人物に対応する円であると、誤って判定してしまう。
【0058】
これに対し、図10(A)を参照して、円52aは、第1フレームにおいて検出された円52であり、円52bは、第2フレームにおいて検出された円52である。つまり、第1フレームでは円52aが検出され、第2フレームでは円52bが検出されたということである。
【0059】
図10(A)に示した例では、距離Lは半径Ra以下である。従って、この例の場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と同一人物に対応する円であると、正しく判定する。
【0060】
上記の通り、本実施の形態に係る第2の検出部16は、差分画像D3内で重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の人物として検出する。従って、図8に示したように、同一の人物に関して頭部や肩部等の複数の円50,51が検出された場合には、これら複数の円50,51を包含する一つの円52が一人の人物として検出される。その結果、図10(A)に示したように、例えば、出入口2の近傍領域5を移動する人物20が突飛な動きをして、その人物20の頭部の移動量が瞬間的に大きくなる場合であっても、同一人物であるとしてその人物20を正確に追跡することが可能となる。
【0061】
<第2の設定部17による処理>
図11は、図3に示した第2の設定部17による処理の内容を説明するための図である。第2の設定部17は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、カメラ1による撮影画像内において出入口2を特定する。そして、特定された出入口2を含む領域を、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき第2の監視領域として設定する。以下、具体的に説明する。
【0062】
図3に示したように、第2の設定部17には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3が入力されている。図11を参照して、ドア3が開けられると差分画像D3内にドア31のエッジ41が現れるので、上記の通り、第1の検出部15は、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、差分画像D3内でエッジ41を検出する。また、第1の検出部15は、初めて検出された瞬間におけるエッジ41の位置として、閉められている状態のドア3に対応するエッジ42の位置を検出する。
【0063】
第2の設定部17は、エッジ41,42の位置情報を第1の検出部15から受け取る。そして、エッジ41の一端とエッジ42の一端とを結ぶ線分43を規定し、エッジ41,42及び線分43によって囲まれる三角形の領域を、第2の監視領域44として設定する。結果として、第2の監視領域44は、差分画像D3内の出入口2自身を含む領域として設定される。
【0064】
第2の監視領域44は、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき領域であり、第2の監視領域44の位置情報D5は、第2の設定部17によって保持される。図3を参照して、位置情報D5は、第2の設定部17から判定部19に入力される。
【0065】
このように、第2の設定部17は、カメラ1による撮影画像内において出入口2を特定し、特定された出入口2自身を含む領域を、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき第2の監視領域44として設定する。従って、判定部19は、第2の監視領域44のみを監視すれば足り、それよりも広い領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。しかも、立入制限エリアへの侵入を試みる侵入者は必ず出入口2を通行するため、出入口2自身を第2の監視領域44として設定することにより、侵入者の存在を確実に検出することが可能となる。
【0066】
また、第2の設定部17は、閉じられている状態でのドア3の位置(エッジ42)と、開かれている状態で第1の検出部15によって検出されたドア3の位置(エッジ41)とに基づいて、出入口2を特定する。従って、第2の設定部17は、現時点におけるドア3の開き具合に応じて、第2の監視領域44を適切に設定することが可能となる。
【0067】
<判定部19による処理>
図12〜14は、図3に示した判定部19による処理の内容をそれぞれ説明するための図である。これらの図においては、(A)→(B)→・・・→(F)の順に時間が進行している。図3を参照して、判定部19は、第1の検出部15によるドア3の開閉状態の検出結果D6と、第2の検出部16による移動人物の検出結果D7とに基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する。以下、具体的に説明する。
【0068】
図3を参照して、第1の検出部15から判定部19に、ドア3の開閉状態の検出結果D6が入力される。具体的には、ドア3が開けられたことを知らせる情報と、その次にドア3が閉じられたことを知らせる情報とが、検出結果D6として第1の検出部15から判定部19に入力される。
【0069】
また、第2の検出部16から判定部19に、移動人物の検出結果D7が入力される。具体的には、各時刻において第2の検出部16によって検出された一又は複数の円52(図8参照)の位置情報が、検出結果D7として第2の検出部16から判定部19に入力される。
【0070】
また、第2の設定部17から判定部19に、各時刻における第2の監視領域44(図11参照)の位置情報D5が入力される。
【0071】
判定部19は、入力されたこれらの情報に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に、第2の監視領域44を横切った円52の数が一であるか複数であるかによって、出入口2を通行した人物が一であるか複数であるかを判定する。
【0072】
図5,12を参照して、図12(A)の時点では、人物20によってドア3が開けられ始めたことに伴って、差分画像D3内に第2の監視領域44が設定される。また、人物20に対応する円52が検出されているが、この時点では、人物20はドア3の前に立っており、差分画像D3内においても、円52と第2の監視領域44とは互いに重なっていない。
【0073】
図12(B)の時点では、人物20によってドア3が大きく開けられたことに伴って、第2の監視領域44の面積も大きくなっている。但し、この時点でも、円52と第2の監視領域44とは互いに重なっていない。
【0074】
図12(C)の時点では、人物20が移動して出入口2に近付いたことに伴って、円52が右側に移動し、円52の一部が第2の監視領域44に重なっている。
【0075】
図12(D)の時点では、人物20がさらに移動して体の一部が出入口2内に進入したことに伴って、円52がさらに右側に移動し、円52の一部は第2の監視領域44を横切っている。
【0076】
図12(E)の時点では、人物20によってドア3が閉じられ始めたことに伴って、第2の監視領域44の面積も小さくなっている。
【0077】
図12(F)の時点では、人物20が出入口2を通過してドア3を閉じたことに伴って、円52は第2の監視領域44を完全に横切って検出されなくなるとともに、差分画像D3内において第2の監視領域44も消失している。
【0078】
図12に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図12(A))から次に閉じられる瞬間(図12(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は1個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は一であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理は行われない。
【0079】
一方、図13に示した例では、許可者に対応する円52が第2の監視領域44を横切った後に、侵入者に対応する円60が第2の監視領域44を横切っている。よって、図13に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図13(A))から次に閉じられる瞬間(図13(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は2個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は複数であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理が行われる。
【0080】
図14に示した例では、円52のほかに、近傍領域5を通行する通行人に対応する円70が検出されている。ところが、円70は第2の監視領域44を横切っていない。よって、図14に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図14(A))から次に閉じられる瞬間(図14(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は1個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は一であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理は行われない。
【0081】
このように、本実施の形態に係る通行監視システムによれば、第1の検出部15がドア3の開閉状態を検出し、第2の検出部16が出入口2の近傍領域5を移動する人物20を検出し、判定部19は、第1の検出部15及び第2の検出部16による検出結果に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する。従って、許可者による通行に紛れて非許可者が出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視することが可能となる。
【0082】
なお、以上の説明では、立入制限エリアに入室する許可者の後を追って非許可者が入室する状況(いわゆる後追い)を例にとって説明したが、立入制限エリアから退室する許可者とすれ違って非許可者が入室する状況(いわゆるすれ違い)の場合であっても、本実施の形態に係る通行監視システムは、非許可者の侵入を検知することが可能である。
【0083】
<変形例1>
図15は、図1に対応させて、本実施の形態の変形例に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。図1ではカメラ1が近傍領域5の上方の天井に設置されたが、図15に示すように、ドア3の上方の壁にカメラ1を設置してもよい。
【0084】
カメラ1は、ドア3の正面斜め上方から近傍領域5を撮影している。従って、ドア3に向かって歩いてくる人物の顔を、カメラ1によって正面から撮影でき、セキュリティ性を高めることができる。
【0085】
また、近傍領域5の上方の天井には鏡80が設置されている。鏡80は、カメラ1の撮影画角内(太い破線参照)に配置されている。カメラ1によって撮影された映像内には鏡80が映り込んでおり、その鏡80には、上方から眺めた近傍領域5の様子が映し出されている。従って、鏡80に映し出されている映像を対象として画像処理部10(図3参照)による処理を実行することによって、上記と同様の効果を得ることができる。
【0086】
<変形例2>
以上の説明では、第1の検出部15は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、ドア3の開閉状態を検出した。これに限らず、ドア3の開閉状態を検出するための専用のセンサをドア3又は出入口2に設置し、第1の検出部15は、そのセンサからの検出信号に基づいて、ドア3の開閉状態を検出してもよい。なお、この場合、第2の監視領域44は、例えば差分画像D3の全画像領域25として設定される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通行監視システムにおける画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】背景画像を示す図である。
【図5】撮影画像を示す図である。
【図6】差分画像を示す図である。
【図7】図3に示した第1の設定部による処理の内容を説明するための図である。
【図8】図3に示した第2の検出部による処理の内容を説明するための図である。
【図9】第2の検出部による人物の移動の追跡処理の第1の例を説明するための図である。
【図10】第2の検出部による人物の移動の追跡処理の第2の例を説明するための図である。
【図11】図3に示した第2の設定部による処理の内容を説明するための図である。
【図12】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図13】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図14】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態の変形例に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 カメラ
2,32 出入口
3,31 ドア
5 近傍領域
10 画像処理部
12 差分画像生成部
14 第1の設定部
15 第1の検出部
16 第2の検出部
17 第2の設定部
18 タイマ
19 判定部
20,30 人物
25 全画像領域
26 第1の監視領域
41,42 エッジ
44 第2の監視領域
52 円
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行監視システムに関し、特に、立入制限エリア内への不正侵入を監視するための通行監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立入制限エリア内への不正侵入を監視するために、立入制限エリアへの出入口の近傍領域を監視カメラによって撮影するとともに、撮影された映像をハードディスク等に記録するシステムが存在する。
【0003】
例えば下記特許文献1には、立入制限エリアへの出入口の近傍領域の上方に距離センサ(距離画像撮像手段)を設置し、当該距離センサによって検出された被写体までの距離情報(距離画像情報)に基づいて、出入口を通行する人物の抽出を行う監視システムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−243972号公報(図2(a)及び明細書の第0048段落乃至第0050段落参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された監視システムによると、侵入者が床を這った姿勢で出入口の通行を試みた場合には、距離センサから床までの距離と、距離センサから侵入者までの距離とに大差がないため、距離センサが侵入者の存在を検出できない可能性がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、許可者による通行に紛れて非許可者が立入制限エリアへの出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視し得る通行監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る通行監視システムは、ドアが設けられた所定の出入口を、当該出入口の近傍領域を含めて撮影するカメラと、前記ドアの開閉状態を検出する第1の検出部と、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記出入口の近傍領域を移動する人物を検出する第2の検出部と、前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記ドアが開いてから次に閉じるまでの間に前記出入口を通行した人物が一か複数かを判定する判定部とを備える。
【0008】
第2の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第1の検出部は、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記ドアの開閉状態を検出することを特徴とする。
【0009】
第3の発明に係る通行監視システムは、第2の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像の全領域の一部に、前記ドアの開閉状態を検出するために前記第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する第1の設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
第4の発明に係る通行監視システムは、第2又は第3の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像内において前記出入口を特定し、特定された前記出入口自身を、前記出入口を通行する人物を検出するために前記判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する第2の設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第5の発明に係る通行監視システムは、第4の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第2の設定部は、閉じられている状態での前記ドアの位置と、開かれている状態で前記第1の検出部によって検出された前記ドアの位置とに基づいて、前記出入口を特定することを特徴とする。
【0012】
第6の発明に係る通行監視システムは、第2の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記第1の検出部は、開かれている状態の前記ドアを検出している状況において、その開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった場合、開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった時点から、その状態が所定時間継続したことにより、前記ドアが閉じられたことを検出することを特徴とする。
【0013】
第7の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、前記第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の前記人物として検出することを特徴とする。
【0014】
第8の発明に係る通行監視システムは、第1の発明に係る通行監視システムにおいて特に、前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、前記カメラによる撮像画像内で前記円が移動した場合、前記第2の検出部は、前記円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部がドアの開閉状態を検出し、第2の検出部が出入口の近傍領域を移動する人物を検出し、判定部は、第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、ドアが開いてから次に閉じるまでの間に出入口を通行した人物が一か複数かを判定する。従って、許可者による通行に紛れて非許可者が出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視することが可能となる。
【0016】
第2の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部は、カメラによって撮影された映像に基づいて、ドアの開閉状態を検出する。従って、ドアの開閉状態を検出するための専用のセンサを設置する必要がないため、コストの低減を図ることが可能となる。
【0017】
第3の発明に係る通行監視システムによれば、第1の設定部は、カメラによる撮影画像の全領域の一部に、ドアの開閉状態を検出するために第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する。従って、第1の検出部は、第1の監視領域のみを監視すれば足り、撮影画像の全領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。
【0018】
第4の発明に係る通行監視システムによれば、第2の設定部は、カメラによる撮影画像内において出入口を特定し、特定された出入口自身を、出入口を通行する人物を検出するために判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する。従って、判定部は、第2の監視領域のみを監視すれば足り、それよりも広い領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。しかも、立入制限エリアへの侵入を試みる侵入者は必ず出入口を通行するため、出入口自身を第2の監視領域として設定することにより、侵入者の存在を確実に検出することが可能となる。
【0019】
第5の発明に係る通行監視システムによれば、第2の設定部は、閉じられている状態でのドアの位置と、開かれている状態で第1の検出部によって検出されたドアの位置とに基づいて、出入口を特定する。従って、第2の設定部は、現時点におけるドアの開き具合に応じて、第2の監視領域を適切に設定することが可能となる。
【0020】
第6の発明に係る通行監視システムによれば、第1の検出部は、開かれているドアを検出しなくなった状態が所定時間継続したことにより、ドアが閉じられたことを検出する。従って、光の加減やノイズ等に起因して、第1の検出部が、実際に開かれている状態のドアを瞬間的に検出できなかった場合であっても、ドアが閉じられたと第1の検出部が誤って検出してしまうことを回避できる。その結果、判定部による通行人の単複判定を正確に行うことが可能となる。
【0021】
第7の発明に係る通行監視システムによれば、第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の人物として検出する。従って、同一の人物に関して頭部や肩部等の複数の円が検出された場合には、これら複数の円を包含する一つの円が一人の人物として検出される。その結果、例えば、出入口の近傍領域を移動する人物が突飛な動きをして、その人物の頭部の移動量が瞬間的に大きくなる場合であっても、同一人物であるとしてその人物を正確に追跡することが可能となる。
【0022】
第8の発明に係る通行監視システムによれば、第2の検出部は、カメラによる撮像画像内で円が移動した場合、円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定する。カメラの設置位置や設置角度等に応じて人物に対応する円の大きさも異なることとなるが、円の中心位置情報のみならず半径情報をも用いることにより、移動する人物の追跡をより正確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0024】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図及び上面図である。本実施の形態に係る通行監視システムは、立入制限エリアへの出入口を通行する人物を監視するためのシステムである。ここで、立入制限エリアとは、予め入室が許可された者(以下「許可者」と称す)以外の者の立ち入りが禁止されているエリアを意味する。
【0025】
図1,2を参照して、立入制限エリアの出入口2には、ドア3が設けられている。図1,2においては、ドア3よりも右側が立入制限エリアである。ドア3の横の壁には、カードリーダ4が設置されている。所定のカードキーが予め許可者に付与されており、カードリーダ4によってカードキーの内容を読み取ることによって、ドア3の施錠が一時的に解除される。また、出入口2の近傍領域5の上方の天井には、動画撮影が可能なカメラ1が設置されている。カメラ1は、ドア3が設けられた出入口2を、出入口2の近傍領域5を含めて撮影する(図1の破線参照)。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る通行監視システムにおける画像処理部10の機能構成を示すブロック図である。カメラ1の後段には、処理部11が接続されている。処理部11の後段には、差分画像生成部12及び画像記憶部13が接続されている。差分画像生成部12の後段には、第1の設定部14、第1の検出部15、第2の検出部16、及び第2の設定部17が接続されている。第1の検出部15及び第2の検出部16の後段には、判定部19が接続されている。また、第1の検出部15には、タイマ18が接続されている。
【0027】
カメラ1によって撮像された画像D0は、処理部11に入力される。処理部11は、画像D0に対してエッジ強調処理及び2値化処理を行う。
【0028】
図4は、ドア3が閉められている状態でカメラ1によって撮影され、処理部11によってエッジ強調処理及び2値化処理が施された、背景画像D1を示す図である。背景画像D1には、ドア3や近傍領域5の床が映っている。図3を参照して、背景画像D1は画像記憶部13に記憶される。
【0029】
図5は、許可者である人物20によってドア3が開けられた状態でカメラ1によって撮影され、処理部11によってエッジ強調処理及び2値化処理が施された、画像D2を示す図である。画像D2には、ドア3及び近傍領域5の床に加えて、出入口2の一部及び人物20が映っている。図3を参照して、画像D2は差分画像生成部12に入力される。
【0030】
差分画像生成部12は、処理部11から入力された画像D2と、画像記憶部13から読み出した背景画像D1とに基づいて、差分画像D3を生成する。その際、差分画像生成部12は、画像D2と背景画像D1とで、対応する画素の画素値をそれぞれ比較し、背景画像D1よりも画像D2のほうが画素値が大きい画素を、差分画像D3内における黒画素として設定する。
【0031】
図6は、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3を示す図である。背景画像D1と画像D2との差分をとったことにより、差分画像D3には、画像D2内の人物20に対応する人物30のエッジの一部、画像D2内のドア3に対応するドア31のエッジの一部、及び画像D2内の出入口2に対応する出入口32のエッジの一部が、それぞれ現れている。図3を参照して、差分画像D3は、第1の設定部14、第1の検出部15、第2の検出部16、及び第2の設定部17に入力される。
【0032】
<第1の設定部14による処理>
図7は、図3に示した第1の設定部14による処理の内容を説明するための図である。本実施の形態に係る通行監視システムが導入され、カメラ1が所定の箇所に設置されると、まず初期設定が行われる。かかる初期設定においては、図4に示した背景画像D1が取得され、その後、ドア3を開ける状況がカメラ1によって撮影される。これにより、図3に示した差分画像生成部12によって、図6,7に示した差分画像D3が作成される。差分画像D3は、第1の設定部14に入力される。
【0033】
ドア3が開けられると差分画像D3内にドア31のエッジ41が現れるので、第1の設定部14は、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、差分画像D3内でエッジ41を検出する。そして、第1の設定部14は、初めて検出された瞬間におけるエッジ41の位置として、閉められている状態のドア3に対応するエッジ42の位置を検出する。
【0034】
次に、第1の設定部14は、差分画像D3の全画像領域25内に、エッジ42を一辺とする矩形又は扇形の領域(図7に示した例では正方形の領域)を、第1の監視領域26として設定する。第1の監視領域26をエッジ42の左方に設定するか右方に設定するかは、数秒後に検出されるエッジ41の位置に基づいて決定することができる。図7に示した例では、エッジ42よりも左側でエッジ41が検出されるため、第1の監視領域26はエッジ42の左方に設定される。
【0035】
第1の監視領域26は、ドア3の開閉状態を検出するために第1の検出部15が監視すべき領域であり、第1の監視領域26の位置情報D4は、第1の設定部14によって保持される。図3を参照して、位置情報D4は、第1の設定部14から第1の検出部15に入力される。
【0036】
このように、第1の設定部14は、カメラ1による撮影画像(具体的には差分画像D3)の全画像領域25の一部に、ドア3の開閉状態を検出するために第1の検出部15が監視すべき第1の監視領域26を設定する。従って、第1の検出部15は、第1の監視領域26のみを監視すれば足り、全画像領域25を監視する必要がないため、第1の検出部15の処理の負荷を低減することが可能となる。
【0037】
<第1の検出部15による処理>
本実施の形態に係る通行監視システムが導入され、初期設定が完了すると、カメラ1を用いた近傍領域5(図1,2参照)の監視が開始される。
【0038】
第1の検出部15は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、ドア3の開閉状態を検出する。以下、具体的に説明する。
【0039】
上記の通り、第1の設定部14によって設定された第1の監視領域26に関する位置情報D4は、第1の設定部14から第1の検出部15に入力されている。また、図3を参照して、第1の検出部15には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3も入力されている。
【0040】
図7を参照して、第1の検出部15は、差分画像D3の全画像領域25内の第1の監視領域26を監視し、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、第1の監視領域26内でエッジ41を探索する。エッジ41が検出されない場合は、第1の検出部15は、ドア3は閉じられている状態であると判定する。
【0041】
ドア3が開けられると、第1の監視領域26内にドア31のエッジ41が現れる。第1の検出部15は、エッジ41を検出することにより、ドア3が開けられている状態であることを検出する。また、第1の検出部15は、第1の監視領域26内におけるエッジ41の位置により、ドア3の開き具合を検出することもできる。
【0042】
このように、第1の検出部15は、エッジ41が検出されていることにより、開かれている状態のドア3を検出する。また、第1の検出部15は、検出されているエッジ41が検出されなくなることにより、ドア3が閉じられたことを検出する。
【0043】
ここで、図3を参照して、第1の検出部15には、タイマ18が接続されている。第1の検出部15は、検出されているエッジ41が検出されなくなった時点から、タイマ18を用いて経過時間を計測する。そして、エッジ41が検出されない状態が所定時間(例えば数秒)以上継続したことにより、ドア3が閉じられたことを検出する。一方、検出されているエッジ41が検出されなくなった後、上記の所定時間が経過するよりも前に再びエッジ41が検出された場合には、第1の検出部15は、ドア3は閉じられていないと判断する。
【0044】
これにより、光の加減やノイズ等に起因して、第1の検出部15が、実際に開かれている状態のドア3を瞬間的に検出できなかった場合であっても、ドア3が閉じられたと第1の検出部15が誤って検出してしまうことを回避できる。その結果、後述する判定部19による通行人の単複判定を正確に行うことが可能となる。
【0045】
<第2の検出部16による処理>
図8は、図3に示した第2の検出部16による処理の内容を説明するための図である。第2の検出部16は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、出入口2の近傍領域5(図1,2参照)を移動する人物を検出する。以下、具体的に説明する。
【0046】
図3に示したように、第2の検出部16には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3が入力されている。図8に示した例では、差分画像D3内に、図5に示した人物20に対応する人物30のエッジが現れている。このように、近傍領域5内に人物20が存在すると、差分画像D3内に人物30のエッジが現れる。
【0047】
図8を参照して、第2の検出部16は、差分画像D3の全画像領域25を監視し、ハフ変換を用いた円(真円及び楕円)の検出手法によって、差分画像D3内で円形のエッジを探索する。円形のエッジが検出されない場合は、第2の検出部16は、近傍領域5内に人物が存在しないと判定する。
【0048】
近傍領域5内に人物20が存在すると、差分画像D3内に人物30のエッジが現れる。図8に示した例では、第2の検出部16は、人物30の頭部に対応する真円50と、人物30の胴体に対応する楕円51とを検出する。
【0049】
次に、第2の検出部16は、真円50と楕円51とを包含する一つの円52を規定する。このようにして規定された円52が、人物20(人物30)に対応する円として取り扱われる。図8に示すように、円52の内周は、真円50及び楕円51の各外周に接している。なお、図8に示した例では、互いに重なる真円50と楕円51とを包含して一つの円52が規定されたが、重ならずに互いに近接する複数の円が存在する場合には、これらの複数の円も包含されて、一つの円52が規定される。第2の検出部16は、例えば、複数の円の複数の半径のうち最大の半径を求め、その最大半径よりも離間距離が短い複数の円を一つのグループとして包含して、一つの円52を規定する。
【0050】
次に、第2の検出部16は、上記のようにして規定した円52の中心位置Cと半径Rとを求め、これらの情報を、人物20に関する位置情報として保持し、人物20の移動の追跡に利用する。
【0051】
図9は、第2の検出部16による人物の移動の追跡処理の第1の例を説明するための図である。図9(A)及び図9(B)を参照して、円52aは、第1フレームにおいて検出された円52であり、円52bは、第1フレームよりも後の第2フレームにおいて検出された円52である。つまり、第1フレームでは、中心位置がCaで半径がRaの円52aが検出され、第2フレームでは、中心位置がCbで半径がRbの円52bが検出されたということである。中心位置Cbは、中心位置Caに対して距離Lだけ離間している。なお、第2フレームは、第1フレームに連続するフレームであっても良いし、第1フレームから数フレーム後のフレームであっても良い。
【0052】
図9(A)を参照して、距離Lは、半径Ra以下である。この場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と同じ人物に対応する円であると判定する。つまり、第2の検出部16は、円52aに対応する人物と円52bに対応する人物とは、同一人物であると判定する。
【0053】
図9(B)を参照して、距離Lは、半径Raよりも大きい。この場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と異なる人物に対応する円であると判定する。つまり、第2の検出部16は、円52aに対応する人物と円52bに対応する人物とは、別の人物であると判定する。
【0054】
このように、第2の検出部16は、カメラ1による撮像画像内で円52が移動した場合、円52a,52bの中心位置Ca,Cb及び円52aの半径Raに基づいて、移動の前後の円52a,52bが同一人物に対応する円であるか否かを決定する。カメラ1の設置位置や設置角度等に応じて人物20に対応する円52の大きさも異なることとなるが、円52の中心位置Cのみならず半径Rをも用いることにより、移動する人物20の追跡をより正確に行うことが可能となる。
【0055】
図10は、第2の検出部16による人物の移動の追跡処理の第2の例を説明するための図である。ここでは、例えば、出入口2の近傍領域5を移動する人物20が突飛な動きをして、その人物20の頭部の移動量が瞬間的に大きくなった状況を想定している。図10(A)は、円52を用いて人物の移動を追跡する例を示しており、一方、図10(B)は、人物の頭部に対応する円50のみを用いて人物の移動を追跡する例を示している。
【0056】
図10(B)を参照して、円50aは、第1フレームにおいて検出された円50であり、円50bは、第2フレームにおいて検出された円50である。つまり、第1フレームでは円50aが検出され、第2フレームでは円50bが検出されたということである。なお、上記と同様に、第2フレームは、第1フレームに連続するフレームであっても良いし、第1フレームから数フレーム後のフレームであっても良い。
【0057】
図10(B)に示した例では、距離Lは半径Raよりも大きくなっている。従って、この例の場合、第2の検出部16は、円50bは、円50aに対応する人物と異なる人物に対応する円であると、誤って判定してしまう。
【0058】
これに対し、図10(A)を参照して、円52aは、第1フレームにおいて検出された円52であり、円52bは、第2フレームにおいて検出された円52である。つまり、第1フレームでは円52aが検出され、第2フレームでは円52bが検出されたということである。
【0059】
図10(A)に示した例では、距離Lは半径Ra以下である。従って、この例の場合、第2の検出部16は、円52bは、円52aに対応する人物と同一人物に対応する円であると、正しく判定する。
【0060】
上記の通り、本実施の形態に係る第2の検出部16は、差分画像D3内で重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の人物として検出する。従って、図8に示したように、同一の人物に関して頭部や肩部等の複数の円50,51が検出された場合には、これら複数の円50,51を包含する一つの円52が一人の人物として検出される。その結果、図10(A)に示したように、例えば、出入口2の近傍領域5を移動する人物20が突飛な動きをして、その人物20の頭部の移動量が瞬間的に大きくなる場合であっても、同一人物であるとしてその人物20を正確に追跡することが可能となる。
【0061】
<第2の設定部17による処理>
図11は、図3に示した第2の設定部17による処理の内容を説明するための図である。第2の設定部17は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、カメラ1による撮影画像内において出入口2を特定する。そして、特定された出入口2を含む領域を、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき第2の監視領域として設定する。以下、具体的に説明する。
【0062】
図3に示したように、第2の設定部17には、差分画像生成部12によって生成された差分画像D3が入力されている。図11を参照して、ドア3が開けられると差分画像D3内にドア31のエッジ41が現れるので、上記の通り、第1の検出部15は、ハフ変換を用いた直線検出手法によって、差分画像D3内でエッジ41を検出する。また、第1の検出部15は、初めて検出された瞬間におけるエッジ41の位置として、閉められている状態のドア3に対応するエッジ42の位置を検出する。
【0063】
第2の設定部17は、エッジ41,42の位置情報を第1の検出部15から受け取る。そして、エッジ41の一端とエッジ42の一端とを結ぶ線分43を規定し、エッジ41,42及び線分43によって囲まれる三角形の領域を、第2の監視領域44として設定する。結果として、第2の監視領域44は、差分画像D3内の出入口2自身を含む領域として設定される。
【0064】
第2の監視領域44は、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき領域であり、第2の監視領域44の位置情報D5は、第2の設定部17によって保持される。図3を参照して、位置情報D5は、第2の設定部17から判定部19に入力される。
【0065】
このように、第2の設定部17は、カメラ1による撮影画像内において出入口2を特定し、特定された出入口2自身を含む領域を、出入口2を通行する人物20を検出するために判定部19が監視すべき第2の監視領域44として設定する。従って、判定部19は、第2の監視領域44のみを監視すれば足り、それよりも広い領域を監視する必要がないため、処理の負荷を低減することが可能となる。しかも、立入制限エリアへの侵入を試みる侵入者は必ず出入口2を通行するため、出入口2自身を第2の監視領域44として設定することにより、侵入者の存在を確実に検出することが可能となる。
【0066】
また、第2の設定部17は、閉じられている状態でのドア3の位置(エッジ42)と、開かれている状態で第1の検出部15によって検出されたドア3の位置(エッジ41)とに基づいて、出入口2を特定する。従って、第2の設定部17は、現時点におけるドア3の開き具合に応じて、第2の監視領域44を適切に設定することが可能となる。
【0067】
<判定部19による処理>
図12〜14は、図3に示した判定部19による処理の内容をそれぞれ説明するための図である。これらの図においては、(A)→(B)→・・・→(F)の順に時間が進行している。図3を参照して、判定部19は、第1の検出部15によるドア3の開閉状態の検出結果D6と、第2の検出部16による移動人物の検出結果D7とに基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する。以下、具体的に説明する。
【0068】
図3を参照して、第1の検出部15から判定部19に、ドア3の開閉状態の検出結果D6が入力される。具体的には、ドア3が開けられたことを知らせる情報と、その次にドア3が閉じられたことを知らせる情報とが、検出結果D6として第1の検出部15から判定部19に入力される。
【0069】
また、第2の検出部16から判定部19に、移動人物の検出結果D7が入力される。具体的には、各時刻において第2の検出部16によって検出された一又は複数の円52(図8参照)の位置情報が、検出結果D7として第2の検出部16から判定部19に入力される。
【0070】
また、第2の設定部17から判定部19に、各時刻における第2の監視領域44(図11参照)の位置情報D5が入力される。
【0071】
判定部19は、入力されたこれらの情報に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に、第2の監視領域44を横切った円52の数が一であるか複数であるかによって、出入口2を通行した人物が一であるか複数であるかを判定する。
【0072】
図5,12を参照して、図12(A)の時点では、人物20によってドア3が開けられ始めたことに伴って、差分画像D3内に第2の監視領域44が設定される。また、人物20に対応する円52が検出されているが、この時点では、人物20はドア3の前に立っており、差分画像D3内においても、円52と第2の監視領域44とは互いに重なっていない。
【0073】
図12(B)の時点では、人物20によってドア3が大きく開けられたことに伴って、第2の監視領域44の面積も大きくなっている。但し、この時点でも、円52と第2の監視領域44とは互いに重なっていない。
【0074】
図12(C)の時点では、人物20が移動して出入口2に近付いたことに伴って、円52が右側に移動し、円52の一部が第2の監視領域44に重なっている。
【0075】
図12(D)の時点では、人物20がさらに移動して体の一部が出入口2内に進入したことに伴って、円52がさらに右側に移動し、円52の一部は第2の監視領域44を横切っている。
【0076】
図12(E)の時点では、人物20によってドア3が閉じられ始めたことに伴って、第2の監視領域44の面積も小さくなっている。
【0077】
図12(F)の時点では、人物20が出入口2を通過してドア3を閉じたことに伴って、円52は第2の監視領域44を完全に横切って検出されなくなるとともに、差分画像D3内において第2の監視領域44も消失している。
【0078】
図12に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図12(A))から次に閉じられる瞬間(図12(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は1個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は一であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理は行われない。
【0079】
一方、図13に示した例では、許可者に対応する円52が第2の監視領域44を横切った後に、侵入者に対応する円60が第2の監視領域44を横切っている。よって、図13に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図13(A))から次に閉じられる瞬間(図13(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は2個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は複数であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理が行われる。
【0080】
図14に示した例では、円52のほかに、近傍領域5を通行する通行人に対応する円70が検出されている。ところが、円70は第2の監視領域44を横切っていない。よって、図14に示した例では、ドア3が開けられた瞬間(図14(A))から次に閉じられる瞬間(図14(F))までの間に、第2の監視領域44を横切った円の数は1個である。従って、判定部19は、出入口2を通行した人物は一であると判定する。この場合、警報を鳴らす等の非常通報処理は行われない。
【0081】
このように、本実施の形態に係る通行監視システムによれば、第1の検出部15がドア3の開閉状態を検出し、第2の検出部16が出入口2の近傍領域5を移動する人物20を検出し、判定部19は、第1の検出部15及び第2の検出部16による検出結果に基づいて、ドア3が開いてから次に閉じるまでの間に出入口2を通行した人物が一か複数かを判定する。従って、許可者による通行に紛れて非許可者が出入口を通行すること(いわゆる共連れ)を確実に監視することが可能となる。
【0082】
なお、以上の説明では、立入制限エリアに入室する許可者の後を追って非許可者が入室する状況(いわゆる後追い)を例にとって説明したが、立入制限エリアから退室する許可者とすれ違って非許可者が入室する状況(いわゆるすれ違い)の場合であっても、本実施の形態に係る通行監視システムは、非許可者の侵入を検知することが可能である。
【0083】
<変形例1>
図15は、図1に対応させて、本実施の形態の変形例に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。図1ではカメラ1が近傍領域5の上方の天井に設置されたが、図15に示すように、ドア3の上方の壁にカメラ1を設置してもよい。
【0084】
カメラ1は、ドア3の正面斜め上方から近傍領域5を撮影している。従って、ドア3に向かって歩いてくる人物の顔を、カメラ1によって正面から撮影でき、セキュリティ性を高めることができる。
【0085】
また、近傍領域5の上方の天井には鏡80が設置されている。鏡80は、カメラ1の撮影画角内(太い破線参照)に配置されている。カメラ1によって撮影された映像内には鏡80が映り込んでおり、その鏡80には、上方から眺めた近傍領域5の様子が映し出されている。従って、鏡80に映し出されている映像を対象として画像処理部10(図3参照)による処理を実行することによって、上記と同様の効果を得ることができる。
【0086】
<変形例2>
以上の説明では、第1の検出部15は、カメラ1によって撮影された映像に基づいて、ドア3の開閉状態を検出した。これに限らず、ドア3の開閉状態を検出するための専用のセンサをドア3又は出入口2に設置し、第1の検出部15は、そのセンサからの検出信号に基づいて、ドア3の開閉状態を検出してもよい。なお、この場合、第2の監視領域44は、例えば差分画像D3の全画像領域25として設定される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る通行監視システムが導入された環境を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通行監視システムにおける画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】背景画像を示す図である。
【図5】撮影画像を示す図である。
【図6】差分画像を示す図である。
【図7】図3に示した第1の設定部による処理の内容を説明するための図である。
【図8】図3に示した第2の検出部による処理の内容を説明するための図である。
【図9】第2の検出部による人物の移動の追跡処理の第1の例を説明するための図である。
【図10】第2の検出部による人物の移動の追跡処理の第2の例を説明するための図である。
【図11】図3に示した第2の設定部による処理の内容を説明するための図である。
【図12】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図13】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図14】図3に示した判定部による処理の内容を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態の変形例に係る通行監視システムが導入された環境を示す側面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 カメラ
2,32 出入口
3,31 ドア
5 近傍領域
10 画像処理部
12 差分画像生成部
14 第1の設定部
15 第1の検出部
16 第2の検出部
17 第2の設定部
18 タイマ
19 判定部
20,30 人物
25 全画像領域
26 第1の監視領域
41,42 エッジ
44 第2の監視領域
52 円
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアが設けられた所定の出入口を、当該出入口の近傍領域を含めて撮影するカメラと、
前記ドアの開閉状態を検出する第1の検出部と、
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記出入口の近傍領域を移動する人物を検出する第2の検出部と、
前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記ドアが開いてから次に閉じるまでの間に前記出入口を通行した人物が一か複数かを判定する判定部と
を備える、通行監視システム。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記ドアの開閉状態を検出する、請求項1に記載の通行監視システム。
【請求項3】
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像の全領域の一部に、前記ドアの開閉状態を検出するために前記第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する第1の設定部をさらに備える、請求項2に記載の通行監視システム。
【請求項4】
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像内において前記出入口を特定し、特定された前記出入口自身を、前記出入口を通行する人物を検出するために前記判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する第2の設定部をさらに備える、請求項2又は3に記載の通行監視システム。
【請求項5】
前記第2の設定部は、閉じられている状態での前記ドアの位置と、開かれている状態で前記第1の検出部によって検出された前記ドアの位置とに基づいて、前記出入口を特定する、請求項4に記載の通行監視システム。
【請求項6】
前記第1の検出部は、開かれている状態の前記ドアを検出している状況において、その開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった場合、開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった時点から、その状態が所定時間継続したことにより、前記ドアが閉じられたことを検出する、請求項2に記載の通行監視システム。
【請求項7】
前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、
前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、
前記第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の前記人物として検出する、請求項1に記載の通行監視システム。
【請求項8】
前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、
前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、
前記カメラによる撮像画像内で前記円が移動した場合、前記第2の検出部は、前記円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定する、請求項1に記載の通行監視システム。
【請求項1】
ドアが設けられた所定の出入口を、当該出入口の近傍領域を含めて撮影するカメラと、
前記ドアの開閉状態を検出する第1の検出部と、
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記出入口の近傍領域を移動する人物を検出する第2の検出部と、
前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記ドアが開いてから次に閉じるまでの間に前記出入口を通行した人物が一か複数かを判定する判定部と
を備える、通行監視システム。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記ドアの開閉状態を検出する、請求項1に記載の通行監視システム。
【請求項3】
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像の全領域の一部に、前記ドアの開閉状態を検出するために前記第1の検出部が監視すべき第1の監視領域を設定する第1の設定部をさらに備える、請求項2に記載の通行監視システム。
【請求項4】
前記カメラによって撮影された映像に基づいて、前記カメラによる撮影画像内において前記出入口を特定し、特定された前記出入口自身を、前記出入口を通行する人物を検出するために前記判定部が監視すべき第2の監視領域として設定する第2の設定部をさらに備える、請求項2又は3に記載の通行監視システム。
【請求項5】
前記第2の設定部は、閉じられている状態での前記ドアの位置と、開かれている状態で前記第1の検出部によって検出された前記ドアの位置とに基づいて、前記出入口を特定する、請求項4に記載の通行監視システム。
【請求項6】
前記第1の検出部は、開かれている状態の前記ドアを検出している状況において、その開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった場合、開かれている状態の前記ドアを検出しなくなった時点から、その状態が所定時間継続したことにより、前記ドアが閉じられたことを検出する、請求項2に記載の通行監視システム。
【請求項7】
前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、
前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、
前記第2の検出部は、重なる又は近接する複数の円を検出した場合、当該複数の円を包含する一つの円を規定し、当該一つの円を一人の前記人物として検出する、請求項1に記載の通行監視システム。
【請求項8】
前記カメラは、前記出入口の近傍領域の上方に設置されており、
前記第2の検出部は、前記カメラによる撮像画像内において円を検出することによって、前記人物を検出し、
前記カメラによる撮像画像内で前記円が移動した場合、前記第2の検出部は、前記円の中心位置情報及び半径情報に基づいて、移動の前後の円が同一人物に対応する円であるか否かを決定する、請求項1に記載の通行監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−191793(P2008−191793A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23577(P2007−23577)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500040908)株式会社メガチップスシステムソリューションズ (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500040908)株式会社メガチップスシステムソリューションズ (80)
【Fターム(参考)】
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