説明

通話装置

【課題】残響音によるエコーの発生を抑えた通話装置を提供する。
【解決手段】通話装置1は、受話状態と送話状態を切り替えるボイススイッチ部10と、ボイススイッチ部10が送話以外の状態のときは受話音声の話速を所定の伸長率で伸長させる話速変換処理を行い、ボイススイッチ部10が送話状態のときは上記話速変換処理を停止する話速変換部11とを備える。そして、話速変換部11は、ボイススイッチ部10が送話状態から送話以外の状態に切り替わってから一定時間の間は、上記話速変換処理における話速の伸長率を上記所定の伸長率よりも小さくしており、その結果、残響音を抑えるように上記話速変換処理を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、受話状態と送話状態の切り替えを行うボイススイッチ部に連動させる形で話速変換処理を行う通話装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図9はその一例を示すブロック図であり、この通話装置1は、受話音声と送話音声の大小関係に応じて受話状態と送話状態の切り替えを行うボイススイッチ部10と、受話音声の信号に対して話速が遅くなるように話速変換処理を行う話速変換部11と、スピーカ12及びマイクロホン13とを備える。ボイススイッチ部10は、受話状態又は送話状態において受話又は送話が停止されると、一旦受話状態でも送話状態でもない中立の状態(以下、ニュートラル状態という)に切り替わり、この状態を一定時間継続させた後、受話音声と送話音声の大小関係に応じて受話状態又は送話状態に切り替わる。また、話速変換部11は、ボイススイッチ部10が送話以外の状態(受話状態又はニュートラル状態)のときは受話音声の話速を所定の伸長率で伸長させる話速変換処理を行い、ボイススイッチ部10が送話状態のときは上記話速変換処理を停止させる。
【0004】
したがって、例えば相手側の通話装置2のマイクロホン22を介して入力された受話音声の話速が速い場合でも、この受話音声に対して上記話速変換処理が行われるため、聞き手が聞き取りやすい話速に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−28570号公報(段落[0022]−段落[0032]、及び、第1,2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の通話装置2が反響空間に設置されている場合には、残響音Bが発生してマイクロホン22を介した回り込みが生じる(図9参照)。以下、そのときの動作について図10を参照しながら説明する。
【0007】
時刻t1のときに音声Aが停止されると、ボイススイッチ部10は送話状態からニュートラル状態に切り替わり、この状態を一定時間(図10中の時間T1)継続する。このとき、マイクロホン22を介して残響音Bが入力されると、ボイススイッチ部10がニュートラル状態にあるため、残響音Bに対して上記話速変換処理が行われる。その結果、話速変換された残響音Cは上記一定時間T1よりも長くなり(図10中の時間T2>T1)、この残響音Cによってボイススイッチ部10が受話状態に切り替わるため、スピーカ12からエコーが発生するという問題があった(図10中の音声Dの斜線部)。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、残響音によるエコーの発生を抑えた通話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通話装置は、受話状態と送話状態の切り替えを行うボイススイッチ部と、ボイススイッチ部が送話以外の状態のときは受話音声の話速を所定の伸長率で伸長させる話速変換処理を行い、ボイススイッチ部が送話状態のときは話速変換処理を停止する話速変換部とを備え、話速変換部は、ボイススイッチ部が送話状態から送話以外の状態に切り替わってからの一定時間の間は話速変換処理における話速の伸長率を所定の伸長率よりも小さくしていることを特徴とする。
【0010】
この通話装置において、一定時間における話速の伸長率が1倍であるのが好ましい。
【0011】
また、この通話装置において、一定時間の間は受話音声の音量レベルが徐々に小さくなるように調整し、一定時間の経過後は受話音声の音量レベルが徐々に大きくなるように調整する音量レベル調整部を備えているのも好ましい。
【0012】
さらに、この通話装置において、話速変換部は、ボイススイッチ部が送話状態から送話以外の状態に切り替わると話速の伸長率を1倍に設定するとともに、一定時間をかけて所定の伸長率まで単調に増加させるのも好ましい。
【0013】
また、この通話装置において、ボイススイッチ部から出力された送話音声が受話音声として戻ってくるまでの遅延時間を計測する遅延時間計測部を備え、話速変換部は、遅延時間計測部の計測結果に応じて一定時間を設定するのも好ましい。
【0014】
さらに、この通話装置において、ボイススイッチ部から出力された送話音声が受話音声として戻ってくるまでの遅延時間に応じて一定時間を変更する時間変更部を備えているのも好ましい。
【0015】
また、この通話装置において、予め登録された複数の時間の中から一定時間を選択する時間選択部を備えているのも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
残響音によるエコーの発生を抑えた通話装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の通話装置を用いた通話システムの一例を示すブロック図である。
【図2】同上の動作を説明する説明図である。
【図3】同上を用いた別の通話システムを示すブロック図である。
【図4】同上を用いたさらに別の通話システムを示すブロック図である。
【図5】実施形態2の通話装置を用いた通話システムの一例を示すブロック図である。
【図6】同上の動作を説明する説明図である。
【図7】実施形態3の通話装置を用いた通話システムの一例を示すブロック図である。
【図8】(a)、(b)は同上の動作を説明する説明図である。
【図9】従来の通話装置を用いた通話システムの一例を示すブロック図である。
【図10】同上の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、通話装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は実施形態1の通話装置1を用いて構成された通話システムの一例であり、例えば通話装置1は住宅等の室内に設置されて、玄関先等に設置された相手側の通話装置2とともにインターホンシステムを構成する。
【0020】
通話装置1は、受話ラインL1に接続されたスピーカ12と、送話ラインL2に接続されたマイクロホン13と、受話ラインL1及び送話ラインL2に設けられたボイススイッチ部10と、受話ラインL1に設けられた話速変換部11と、受話ラインL1及び送話ラインL2に設けられた遅延時間計測部14とを備える。また、通話装置2は、スピーカ21とマイクロホン22とを備える。
【0021】
マイクロホン13とボイススイッチ部10の間の送話ラインL2には、マイクロホン13から入力された音声信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ19が接続され、またスピーカ12とボイススイッチ部10の間の受話ラインL1には、ボイススイッチ部10から出力されたデジタル信号をアナログの音声信号に変換するD/Aコンバータ18が接続される。さらに、通話装置2のマイクロホン22と遅延時間計測部14の間の受話ラインL1には、マイクロホン22から入力された音声信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ19が接続され、また通話装置2のスピーカ21と遅延時間計測部14の間の送話ラインL2には、ボイススイッチ部10から出力されたデジタル信号をアナログの音声信号に変換するD/Aコンバータ18が接続される。
【0022】
ボイススイッチ部10は、例えば受話ラインL1と送話ラインL2のそれぞれから入力された音声の大小関係に応じて、送話ラインL2の送話音声を伝送させる送話状態とするか、受話ラインL1の受話音声を伝送させる受話状態とするか、送話でも受話でもない中立の状態(以下、ニュートラル状態という)とするかの切り替えを行う。また、ボイススイッチ部10は、送話状態又は受話状態において送話又は受話が停止されると一旦ニュートラル状態に切り替えられ、さらに送話状態からニュートラル状態に切り替えられた場合にはニュートラル状態が一定時間(本実施形態では図2中の時間T1に設定)保持される。さらに、ボイススイッチ部10は、送話状態、受話状態或いはニュートラル状態それぞれを示す状態信号として、互いに電位の異なる電圧信号を話速変換部11に出力する。
【0023】
話速変換部11は、例えばPICOLA(Pointer Interval Controlled OverLap and Add)アルゴリズムにより、通話装置2のマイクロホン22から入力された受話音声の信号を、話速が所定の割合(本実施形態では話速の伸長率をβ(β>1)倍に設定)だけ遅くなるように変換し出力する機能を有している。そして、このように話速を遅くする処理の場合には、音声の入力時間よりも出力時間の方が長くなるため、所定の長さのフレーズを継続して話速変換し出力できるように、一旦バッファ(図示せず)に蓄積した上で順次ボイススイッチ部10に出力される。
【0024】
遅延時間計測部14は、例えばボイススイッチ部10から出力された送話音声が通話装置2のスピーカ21及びマイクロホン22を介して回り込み、受話ラインL1に戻ってくるまでの時間を計測し、その計測結果を話速変換部11に出力する。そして、話速変換部11は、上記計測結果に応じて、ボイススイッチ部10が送話状態からニュートラル状態に切り替わってからの一定時間T1(図2参照)を設定する。
【0025】
次に、本実施形態の通話システムの動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、相手側の通話装置2が、例えば地下などの反響空間に設置されており、スピーカ21から出力された音声がマイクロホン22を介して通話装置1側に回り込むようになっている。
【0026】
時刻t0のときに、マイクロホン13から入力された音声AはA/Dコンバータ19によりデジタル信号に変換され、ボイススイッチ部10に入力される。ボイススイッチ部10は、この音声Aのデジタル信号により送話状態に切り替わるとともに、このデジタル信号を出力する。ボイススイッチ部10から出力された音声Aのデジタル信号はD/Aコンバータ18によりアナログの音声信号に変換されて通話装置2のスピーカ21から出力される。なおこのとき、話速変換部11は、ボイススイッチ部10が送話状態にあることから話速変換処理を停止させている(話速の伸長率が1倍に設定されている)。またこのとき、遅延時間計測部14は、ボイススイッチ部10から出力された音声Aのデジタル信号が、通話装置2側においてマイクロホン22を介して回り込んだ残響音Bのデジタル信号として戻ってくるまでの時間を計測する。そして、話速変換部11は、この計測結果に応じて上記一定時間T1を設定するのである。ここに、本実施形態では、ボイススイッチ部10は、送話が停止されると送話状態からニュートラル状態に切り替わるとともに、上記一定時間T1が経過するまでニュートラル状態を保持し、送話状態にも受話状態にも切り替えられない。
【0027】
続けて、時刻t1のときにスピーカ13から入力される音声Aが停止されると、ボイススイッチ部10は送話状態からニュートラル状態に切り替わり、このときから上記一定時間T1が開始される。ここで、本実施形態の話速変換部11では、上記一定時間T1の間は話速変換処理における話速の伸長率を所定の伸長率β(β>1)よりも小さくしており、具体的には1倍に設定している。つまり、上記一定時間T1では、話速変換処理を停止させている。また、上記一定時間T1は、通話装置2のマイクロホン22を介して回り込む残響音Bが収束するまでの時間よりも大きく設定されており、この一定時間T1において話速変換処理を停止させることでボイススイッチ部10がニュートラル状態にあるうちに残響音Bが収束することになる。その結果、残響音Bによってボイススイッチ部10が受話状態に切り替えられることがなく、通話装置1のスピーカ12から音声Dは出力されない(図2参照)。
【0028】
而して、本実施形態によれば、相手側の通話装置2が反響の大きい環境や通話路での遅延が生じるような環境に設置されている場合であっても、上記一定時間T1における話速の伸長率を通常の話速変換処理における所定の伸長率β(β>1)よりも小さくすることで、残響音Bによるエコーの発生を抑えるように話速変換処理を制御することができる。また、上記一定時間T1における話速の伸長率を1倍に設定して話速変換処理を停止させた場合には、残響音Bによるエコーの発生を抑えた快適な通話を実現することができる。さらに、遅延時間計測部14の計測結果に応じて上記一定時間T1を設定した場合には、設置環境に合わせた話速変換停止期間を設定することができる。
【0029】
ここに、本実施形態では、ボイススイッチ部10から出力された送話音声が通話装置2のマイクロホン22を介して受話音声として戻ってくるまでの時間を遅延時間計測部14で計測しているが、例えば遅延時間計測部14からテスト信号を送信し、このテスト信号がマイクロホン22を介して戻ってくるまでの時間を計測してもよく、同様に設置環境に合わせた話速変換停止期間を設定することができる。また、本実施形態では、遅延時間計測部14の計測結果に応じて上記一定時間T1を設定しているが、例えば遅延時間が予め分かっているような場合には、図3に示すように時間変更部15により上記一定時間T1を変更できるように構成してもよく、この場合、設置環境に合わせた細やかな時間設定を行うことができる。さらに、図4に示すように、時間選択部16により予め登録された複数の時間の中から上記一定時間t1を選択できるように構成してもよく、この場合、登録された複数の時間の中から最適な時間を選択するだけでいいので、上記一定時間T1を容易に設定することができる。また、話速変換部11のメモリ(図示せず)などに上記一定時間T1を記憶させておき、この一定時間T1に基づいて上記話速変換処理を制御するようにしてもよい。
【0030】
(実施形態2)
通話装置1の実施形態2を図5及び図6に基づいて説明する。本実施形態では、受話音声の音量レベルを調整する音量レベル調整部17を設けている点で実施形態1と異なっており、それ以外の構成は実施形態1と同様であるから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。なお、図5では、遅延時間計測部の図示を省略してある。
【0031】
本実施形態の通話装置1は、スピーカ12と、マイクロホン13と、ボイススイッチ部10と、話速変換部11と、受話音声の音量レベルを調整する音量レベル調整部17とを備える。また、通話装置2は、スピーカ21とマイクロホン22とを備える。
【0032】
音量レベル調整部17は、スピーカ12から出力される音声の音量レベルを調整する機能を有し、送話状態、受話状態或いはニュートラル状態それぞれを示す状態信号として、互いに電位の異なる電圧信号がボイススイッチ部10より入力される。そして、音量レベル調整部17では、後述するように、ボイススイッチ部10の状態に応じて受話音声の音声レベルを調整するのである。
【0033】
次に、本実施形態の通話システムの動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。時刻t0〜t1では、通話装置2のマイクロホン22から入力された音声AがA/Dコンバータ19によりデジタル信号に変換されて話速変換部11に入力される。このとき、話速変換部11では、ボイススイッチ部10が受話状態にあることから受話音声の話速を所定の伸長率(β>1)で伸長させる話速変換処理が行われ、話速変換されたデジタル信号が音量レベル調整部17に出力される。音声レベル調整部17では、ボイススイッチ部10が受話状態にあることから減衰量を調整することなく、そのままの音声Cをボイススイッチ部10に出力する。そして、ボイススイッチ部10から出力された音声Cのデジタル信号はD/Aコンバータ18によりアナログの音声信号に変換され、スピーカ12から音声Dが出力される。
【0034】
続けて、時刻t1〜t2で通話装置1のマイクロホン13から音声Bが入力されると、ボイススイッチ部10において音声Aと音声Bの大小が比較され、例えば本例では音声Bの方が大きいため、ボイススイッチ部10は受話状態からニュートラル状態を経て送話状態に切り替わる。そして、マイクロホン13から入力された音声Bは、A/Dコンバータ19、ボイススイッチ部10及びD/Aコンバータ18を介して通話装置2のスピーカ21から出力される。したがって、時刻t1から音声Bが停止される時刻t2までの間はスピーカ12から音声Dは出力されない(図6参照)。
【0035】
さらに、時刻t2のときに音声Bが停止されてボイススイッチ部10が送話状態からニュートラル状態を経て受話状態に切り替わると、話速変換部11は、実施形態1と同様に、遅延時間計測部(図示せず)の計測結果に応じて設定した一定時間T1の間、話速変換処理を停止する(話速の伸長率を1倍にする)。また、音量レベル調整部17は、一定時間T1において音声Cの減衰量を徐々に大きくすることで、音声Cの音量レベルを徐々に小さくしていく(図6中の斜線部)。そして、一定時間T1が経過すると、話速変換部11は上記の話速変換処理を開始し、また音量レベル調整部17は音声Cの減衰量を徐々に小さくすることで、音声Cの音量レベルを徐々に大きくしていく(図6中の斜線部)。
【0036】
而して、話速変換処理を停止させた状態から話速変換処理を開始する際には話速が切り替わるため、話速の切り替わりにより聞き手が違和感を感じることになるが、本実施形態のように話速変換処理を停止させている期間では音声Cの音量レベルが徐々に小さくなるように調整し、話速変換処理を開始させると音声Cの音量レベルが徐々に大きくなるように調整するアテネーション処理を行うことで、話速の切り替わりタイミングが分かり難くなり、聞き手に与える違和感を和らげることができる。また、通話装置2が反響の大きい環境や通話路で遅延が生じるような環境に設置されている場合には、通話装置2のマイクロホン22を介して回り込んだ残響音によりスピーカ12からエコーが発生する可能性があるが、本実施形態では、上記一定時間T1の間は話速の伸長率を1倍に設定し話速変換処理を停止させているので、残響音によるエコーを抑えた快適な通話を実現することができる。
【0037】
(実施形態3)
通話装置1の実施形態3を図7及び図8に基づいて説明する。本実施形態では、話速変換処理を停止させている一定時間T1の期間において話速の伸長率を1倍からβ(β>1)倍まで単調に増加させている点で実施形態1と異なっており、それ以外の構成は実施形態1と同様であるから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。なお、図7では、遅延時間計測部の図示を省略してある。
【0038】
本実施形態の通話装置1は、スピーカ12と、マイクロホン13と、ボイススイッチ部10と、話速変換部11とを備える。また、通話装置2は、スピーカ21とマイクロホン22とを備える。
【0039】
ここで、本実施形態の通話システムの動作について、図7及び図8を参照しながら説明する。時刻t0〜t1では、通話装置2のマイクロホン22から入力された音声AがA/Dコンバータ19によりデジタル信号に変換されて話速変換部11に入力される。このとき、話速変換部11では、ボイススイッチ部10が受話状態にあることから、受話音声の話速を所定の伸長率(β>1)で伸長させる話速変換処理が行われ、話速変換された音声Cのデジタル信号がボイススイッチ部10に出力される。ボイススイッチ部10は、受話状態に切り替えられているため、D/Aコンバータ18に音声Cのデジタル信号を出力し、D/Aコンバータ18によりアナログ変換された音声Dがスピーカ12から出力される。
【0040】
続けて、時刻t1〜t2で通話装置1のマイクロホン13から音声Bが入力されると、ボイススイッチ部10において音声Aと音声Bの大小が比較され、例えば本例では音声Bの方が大きいため、ボイススイッチ部10は受話状態からニュートラル状態を経て送話状態に切り替わる。そして、マイクロホン13から入力された音声Bは、A/Dコンバータ19、ボイススイッチ部10及びD/Aコンバータ18を介して通話装置2のスピーカ21から出力される。したがって、時刻t1から音声Bが停止される時刻t2までの間はスピーカ12から音声Dは出力されない(図8(a)参照)。
【0041】
さらに、時刻t2のときに音声Bが停止されてボイススイッチ部10が送話状態からニュートラル状態を経て受話状態に切り替わると、話速変換部11は、実施形態1と同様に一定時間T1の間は上記の話速変換処理を停止すべく、話速の伸長率を1倍に設定する。ここにおいて、上述の実施形態1では、一定時間T1の間は話速の伸長率を1倍のままにし、話速変換処理を開始すると同時に話速の伸長率をβ倍に設定しており、その結果、話速変換処理の切り替わり時に発生する話速の変化により聞き手が違和感を感じてしまう。一方、本実施形態では、上記の一定時間T1の間で話速の伸長率を1倍からβ(β>1)倍まで単調に増加させており(図8(b)参照)、その結果、話速変換処理の切り替わり時に発生する話速の急激な変化が抑えられて、それに伴う違和感を和らげることができる。
【0042】
また、通話装置2が反響の大きい環境や通話路での遅延が生じるような環境に設置されている場合には、通話装置2のマイクロホン22を介して回り込んだ残響音によりスピーカ12からエコーが発生する可能性があるが、本実施形態では、上記一定時間T1の間は話速の伸長率を所定の伸長率β(β>1)よりも小さくしているので、残響音によるエコーの発生を抑えることができる。
【0043】
なお、上述の実施形態1〜3において、話速変換部11を受話路ではなく、送話路のA/Dコンバータ19とボイススイッチ部10の間に設置し、話速変換部11とボイススイッチ動作の送話・受話の連動をすべて反転することにより、送話音声の話速変換処理も同様に可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 通話装置
10 ボイススイッチ部
11 話速変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受話状態と送話状態の切り替えを行うボイススイッチ部と、前記ボイススイッチ部が送話以外の状態のときは受話音声の話速を所定の伸長率で伸長させる話速変換処理を行い、前記ボイススイッチ部が送話状態のときは前記話速変換処理を停止する話速変換部とを備え、前記話速変換部は、前記ボイススイッチ部が送話状態から送話以外の状態に切り替わってからの一定時間の間は前記話速変換処理における話速の伸長率を前記所定の伸長率よりも小さくしていることを特徴とする通話装置。
【請求項2】
前記一定時間における話速の伸長率が1倍であることを特徴とする請求項1記載の通話装置。
【請求項3】
前記一定時間の間は受話音声の音量レベルが徐々に小さくなるように調整し、前記一定時間の経過後は受話音声の音量レベルが徐々に大きくなるように調整する音量レベル調整部を備えていることを特徴とする請求項2記載の通話装置。
【請求項4】
前記話速変換部は、前記ボイススイッチ部が送話状態から送話以外の状態に切り替わると話速の伸長率を1倍に設定するとともに、前記一定時間をかけて前記所定の伸長率まで単調に増加させることを特徴とする請求項1記載の通話装置。
【請求項5】
前記ボイススイッチ部から出力された送話音声が受話音声として戻ってくるまでの遅延時間を計測する遅延時間計測部を備え、前記話速変換部は、前記遅延時間計測部の計測結果に応じて前記一定時間を設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の通話装置。
【請求項6】
前記ボイススイッチ部から出力された送話音声が受話音声として戻ってくるまでの遅延時間に応じて前記一定時間を変更する時間変更部を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の通話装置。
【請求項7】
予め登録された複数の時間の中から前記一定時間を選択する時間選択部を備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の通話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156585(P2012−156585A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11188(P2011−11188)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】