説明

速効性処方剤

【課題】 腸溶性被覆を有する塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンの速効性処方剤を提供する。
【解決手段】崩壊剤を含有し、リン酸緩衝液で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて測定した時に、(a)試験開始から30分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンの全量の少なくとも約40%が溶出し、(b)60分後の時点で、少なくとも約70%が溶出し、(c)90分後の時点で、約80%が溶出し、そして(d)試験開始から120分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンの全量の少なくとも約90%が溶出することを特徴とする速効性処方剤を開示する。好ましい処方剤は、少なくとも1層からなる腸溶性被覆を有する芯を有し、芯が塩酸ピリドキシン、コハク酸ドキシラミン、および非活性賦形剤として増量剤または結合剤、崩壊剤、滑沢剤、シリカフローコンディショナーと安定剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共力作用を示す一対の活性成分であるコハク酸ドキシラミンと塩酸ピリドキシン(以後「DS−P」と略す)を含有する薬剤である速効性処方剤、好ましくは腸溶性被覆を有する錠剤である速効性処方剤に関する。DS−Pは悪心と嘔吐の治療に有用であり、特に妊娠中の悪心と嘔吐(以後「NVS」と略す)に有用であるが、これに限定されるものではない。したがって、本発明は、DS−Pの適用が知られているすべての治療法および将来実施される治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
DS−Pの医薬用処方剤は公知である。現在カナダで市販されているディクレクチン(Diclectin)(Duchesnay Inc.製)という処方剤は、活性成分として塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンを含有している。さらに、ディクレクチンは賦形剤として、ラクトース、微晶質セルロース、三ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムを含有している。
【0003】
ディクレクチンは、妊娠中の安全性について世界でもっとも研究のされている医薬品である。優れた安全特性を有することから、ディクレクチンはNVPの治療に最も適した医薬品である。現処方剤はショ糖で被覆され、いくつかの欠点がある。そのうちの一つは、遅効性である。現処方剤では、活性成分が吸収される小腸において、2種の活性成分(塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミン)がほぼ完全に溶出するのに摂取から4時間以上かかる。NVPに苦しんでいる女性のように、緊急に症状を軽減したい患者にとっては、屡々この時間は長すぎると考えられる。
【0004】
現処方剤の他の欠点は、患者のコンプライアンスに関するものである。NVPに苦しんでいる女性は、嗅覚過敏を屡々訴えており、これは様々なニオイや味が悪心や嘔吐を引き起こすことを意味する。現在の腸溶性被覆の製造に有機溶媒やフタレート類が使われていることと共に、現処方剤を被覆したショ糖のニオイや味も、この薬剤を摂取するのを妨げるほどに妊娠中の女性を悩ましている。
【0005】
現在市販されている錠剤の大きさにも問題がある。NVPに苦しんでいる女性は、嚥下に屡々問題を持っているので、小さな錠剤は患者のコンプライアンスを改善する。さらに、小さな錠剤は大きな錠剤より無害に見え、患者は少量の薬剤を摂取しているとの印象をもつだろう。その結果、患者のコンプライアンスを顕著に増加するだろう。
【0006】
最後に、現処方剤は乳糖を含有している。そのため、乳糖不耐症に苦しんでいる患者は摂取することができない。
【0007】
したがって、従来技術の欠点を克服した、改良した速効性処方剤を、悪心と嘔吐に苦しんでいる患者に提供することが望ましい。
【0008】
しかしながら、DS−Pは腸溶性被覆を有する錠剤として経口摂取されるので、新規な経口処方剤は胃を無傷で通過しなければならないし、錠剤が意図する到着点、即ち腸、に到達した時点で直ちに2種の活性成分を放出しなければならない。
【0009】
本発明で解決しなければならなかった主な課題は、共力作用を示す一対の活性成分を速効性処方として投与すると共に、従来技術の欠点を克服した剤形を提供することである。一つの活性成分の溶出が他の活性成分の溶出を妨害しないように、2種の活性成分が類似した溶出曲線を示す処方剤を提供することが重要だった。このことは2種の活性成分による共力的な治療効果の見地からも重要であった。
【0010】
発明の概要
まとめると、本発明は、DS−Pを包含する新規な水性腸溶性被覆された処方剤であり、その溶出特性は速効性処方剤であることを示している。
【0011】
更に本発明は、活性成分の速効性を示す特定のインビトロ溶出特性を有する医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、簡単に且つ繰り返し製造するのに適している。
【0012】
本発明の更なる利用可能性は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、本発明の精神とその範囲に含まれる様々な改変や改良は当業者にとって明らであることから、この詳細な説明は本発明の好ましい態様を例示しているにすぎない。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の他の目的およびその特徴は、本発明の好ましい態様を例示するための、以下の詳細な説明から理解することができる。
【0014】
広い意味において、本発明は、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンを含有する速効性処方剤を提供する。
【0015】
本発明の処方剤は、医学や獣医学の分野において、悪心および/または嘔吐の症状が薬物の介入を必要とする時に使用することができる。本発明の処方剤は治療目的に使用することを意図していることから、処方剤やその構成成分は薬学的に許容されるものでなければならない。好ましい処方剤は錠剤、丸剤またはカプセルにつめたビーズまたは溶液等の経口用剤形である。最も好ましい処方剤は錠剤である。本発明の錠剤は、胃を無傷で通過できることが好ましい。この特徴について試験するために、本発明の錠剤を代用胃液「SGF」中で少なくとも1時間崩壊に耐えるか否かを試験した。
【0016】
本発明によれば、処方剤は、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下の溶出特性は、好ましくは高速液体クロマトグラフィで測定した時に、下記の溶出特性を満足する。
(a)試験開始から30分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも約40%が溶出する;
(b)試験開始から60分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも約70%が溶出する;
(c)試験開始から90分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも約80%が溶出する;
(d)試験開始から120分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも約90%が溶出する。
【0017】
本発明において、溶出特性に関するいずれの記載も、放出された塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンの量を、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、合衆国薬局方(United State Pharmacopoeia)収載の2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で、好ましくは高速液体クロマトグラフィで測定した溶出試験の結果に基づくものである。
【0018】
本願明細書および請求項で用いる「腸溶性被覆」とは、1つまたは複数の層からなる被覆であって、ヒト胃液中で崩壊に耐えられるが、ヒト腸液中で崩壊する被覆のみならず、更に、ヒト胃液中で非常にゆっくりと崩壊するが、ヒト腸液中では速やかに崩壊する被覆を意味する。広義において、「腸溶性被覆」は、たとえば真性腸溶性被覆の上に施されるいかなる仕上げの化粧被覆のみならず、真性腸溶性被覆より以前に錠剤の圧縮成形された芯の上に施されるいかなるシール被覆も包含する。
【0019】
最も好ましい態様において、本発明の処方剤は水性腸溶性被覆で被覆された芯を含有している。この芯は、活性成分である塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンと共に、非活性成分である増量剤(filler)または結合剤、崩壊剤、滑沢剤、シリカフローコンディショナー(silica flow conditioner)および安定剤を包含する。
【0020】
増量剤または結合剤の例には、アラビアゴム、アルギン酸、リン酸水素カルシウム(二塩基性)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、デキストレート類(dextrates)、ショ糖、タイロース(tylose)、準備ゼラチン化デンプン(pregelatinized starch)、硫酸カルシウム、アミロース、グリシン、ベントナイト、マルトース、ソルビトール、エチルセルロース、リン酸水素二ナトリウム、ピロ亜硫酸二ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ブドウ糖、グアーガム(guar gum)、液体ブドウ糖(liquid glucose)、コンプレッシブル糖(compressible sugar)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(magnesium aluminum silicate)、マルトデキストリン、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート類、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、トラガカント微晶質セルロース(tragacanth microcrystalline cellulose)、デンプンおよびゼインが含まれる。最も好ましい増量剤または結合剤は、微晶質セルロースである。
【0021】
崩壊剤の例には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度)、微晶質セルロース、セルロース粉末、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム(sodium croscarmellose)、クロスポビドン(crospovidone)、メチルセルロ−ス、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、スターチグリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、デンプン、ピロ亜硫酸二ナトリウム、エダタミル二ナトリウム(disodium edathamil)、エデト酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、架橋ポリビニルピロリジン類(crosslinked polyvinylpyrollidines)、準備ゼラチン化デンプン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム(sodium carboxymethyl starch)および微晶質セルロースが含まれる。最も好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム(sodium crosscarmelose)である。
【0022】
滑沢剤の例には、ステアリン酸カルシウム、キャノーラ油、パルミチン酸ステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、I型水素添加植物油(hydrogenated vegetable oil (type I))、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポロクサマー(poloxamer)、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸フマル酸ナトリウム(sodium stearate fumarate)、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリン、ラウリル硫酸マグネシウム、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム/酢酸ナトリウム(混合物)およびDL ロイシンが含まれる。最も好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0023】
シリカフローコンディショナーの例には、二酸化ケイ素およびケイ酸アルミニウムマグネシウムが含まれる。最も好ましいシリカフローコンディショナーは、二酸化ケイ素である。
【0024】
安定剤の例には、アラビアゴム、アルブミン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ベントナイト、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、シクロデキストリン類、モノステアリン酸グリセリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸ナトリウム、カルナウバ蝋、キサンタンガム(xanthan gum)、デンプン、ステアレート(類)、ステアリン酸、ステアリン酸モノグリセリドおよびステアリルアルコールが含まれる。最も好ましい安定剤は、三ケイ酸マグネシウムである。
【0025】
本発明の好ましい態様において、新規な速効性ディクレクチン処方剤の芯は、以下の成分を包含する:約4〜10重量%、最も好ましくは約7重量%の塩酸ピリドキシン;約4〜10重量%、最も好ましくは約7重量%のコハク酸ドキシラミン;約40〜80重量%、最も好ましくは約62重量%の微晶質セルロース;約10〜30重量%、最も好ましくは約18重量%の三ケイ酸マグネシウム;約0.5〜5重量%、最も好ましくは約1重量%の二酸化ケイ素;約0.5〜5重量%、最も好ましくは約3重量%のクロスカルメロースナトリウム;そして約0.5〜5重量%、最も好ましくは約3重量%のステアリン酸マグネシウム。
【0026】
実施例1
145mgの、ディクレクチン速効性処方剤の芯用の処方の一例を以下に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記の成分からなる芯に対して、処方剤を比較的無傷で胃を通過させ、且つ腸で速やかに溶出させる水性腸溶性被覆剤を用いて、腸溶性被覆を施す。
【0029】
被覆には、下記の被覆処方剤を採用する。
【0030】
【表2】

【0031】
シール被覆の目的は、腸溶性被覆のために平滑な表面を提供し、それにより腸溶性被覆のむらを生じる芯表面の盛り上がり、窪みまたは裂け目を防ぐことである。
【0032】
溶出データ
上記した速効性処方剤は、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時、下記の表3のインビトロ溶出特性を示した。数値は、試験開始時に速効性処方剤に含まれていた活性成分の量に対する溶出した活性成分の量の百分率である。
【0033】
【表3】

【0034】
ラン1〜3に見られる、5分後の時点の極端に低い溶出率は、5分間では芯をなす処方剤が崩壊しなかったためであると説明できる。
【0035】
製造方法の例
本発明の処方剤を、上記の表1に示した成分を使用して調製した。コハク酸ドキシラミンと国民医薬品集(NF)収載の二酸化ケイ素を、2立方フィートのV形ブレンダー(V-Blender)に混合してプレブレンドを得る。得られたプレブレンドを40メッシュの篩付きのクアドロ社(Quadro Co)製粉砕機モデル196Sにより粉砕する。
【0036】
塩酸ピリドキシンも40メッシュの篩付きのクアドロ社製粉砕機モデル196Sにより粉砕する。その後、粉砕した塩酸ピリドキシンを、ドキシラミンと国民医薬品集収載の二酸化ケイ素とのプレブレンドと混合した。
【0037】
微晶質セルロースは粉砕し、40メッシュの篩にかけ、次に大まかに二等分する。微晶質セルロースの半分を650Lのガレイビン(650L Gallay Bin)中で上記で製造した2種の活性成分を含むプレブレンドと合せ、そこに微晶質セルロースの残りの半分を加える。ガレイビンに充填した成分を混合してブレンドを得、そこに三ケイ酸マグネシウムとクロスカルメロースを加えて新たに得られた混合物を更に混合した。最後にステアリン酸マグネシウムを加えてさらに混合して最終ブレンドを得、芯用の処方剤の調製を終える。
【0038】
最終ブレンドを錠剤形状に圧縮成形し、ついでシール被覆、市販の水性腸溶性被覆剤を用いた腸溶性被覆、および美粧のための表層被覆を施す。製造工程の全体を図2に示す。
【0039】
表2の成分を使用する全ての被覆工程、すなわち芯を被覆するシール被覆、腸溶性被覆およびオパドライ ホワイトによる被覆(着色被覆)は、いずれも蠕動ポンプを装備したベクターハイTM 被覆用パン(Vector HiTM coater pan)で有利に実施することができる。
【0040】
実施例2
146mgの、ディクレクチン速効性処方剤の芯用の処方の他の例を以下に示す。芯用の処方剤は、上記実施例1と同様に製造した。この例は、本発明の処方剤の速効性が、異なる賦形剤のグループによっても得られることを示している。
【0041】
【表4】

【0042】
被覆には、下記の被覆用処方剤を採用する。
【0043】
【表5】

【0044】
実施例2の速効性処方剤は、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時、下記の表6のインビトロ溶出特性を示した。数値は、試験開始時に速効性処方剤に含まれていた活性成分の量に対する溶出した活性成分の量の百分率である。
【0045】
【表6】

【0046】
これらの結果から、新規な処方剤は、溶出特性に示される速効性を有することが判明した。塩酸ピリドキシンは、試験開始から120分以内に平均溶出率が90%を超える。同様に、コハク酸ドキシラミンも、試験開始から120分以内にその平均溶出率が90%を超える。
【0047】
実施例3(従来技術の処方剤を使用した比較例)
以下に示したのは、従来技術のディクレクチン処方剤の一例である。1錠が146.2mgの錠剤が提供される。この例の処方剤は、本発明の処方剤と比べてその溶出特性が著しく遅効性であることがわかる。
【0048】
【表7】

【0049】
被覆には、下記の被覆用処方剤を採用する。
【0050】
【表8】

【0051】
実施例3に示した、現在使用されている処方剤は、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時、下記の表9のインビトロ溶出特性を示した。数値は、試験開始時に速効性処方剤に含まれていた活性成分の量に対する溶出した活性成分の量の百分率である。
【0052】
【表9】

【0053】
これらの結果から、従来の処方剤は、本発明の新規な処方剤と比らべて著しく遅効性の溶出パターンを示している。実際、90分後の時点で平均してドキシラミンは60%、塩酸ピリドキシンは67%しか溶出していない。緩慢なインビトロ溶出特性は遅効性であることを表している。実施例1と2で示したように、新規な処方剤は著しく速効性の溶出特性を示しており、これは速効性作用をもたらす。新規な処方剤は従来技術に伴う欠点のすべてではないにしても、その多くを克服している。
【0054】
本願明細書において用いた用語と説明は、本発明の好ましい態様を例示しているにすぎず、当業者が本発明を実施するにあたり可能と考える多くの変更を限定するものではない。現に公知であるか否かにかかわらず、本発明の機能に直接影響をもたらすことのない本発明のすべての変形もまた、本願の請求の範囲によって包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の速効性処方剤二例の溶出特性を、従来技術の処方剤の溶出特性と比較した図である。はじめに示した速効性処方剤の溶出特性(実施例1)では、2種の活性成分は45分以内にほぼ100%が放出された。2番目に示した速効性処方剤の溶出特性(実施例2)でも、2種の活性成分は120分以内に約95%が放出された。最後に比較のために示した、現在入手可能な処方剤の溶出特性(従来技術)では、240分以内に約100%の塩酸ピリドキシンと約90%のコハク酸ドキシラミンが放出された。
【図2】図2は、本発明の好ましい処方剤を製造するための、好ましい製造方法の概略を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸溶性被覆を有する塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンの速効性処方剤であって、崩壊剤を含有し、pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時に、下記(a)〜(d)の溶出特性を満足することを特徴とする速効性処方剤。
(a)試験開始から30分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも40%が溶出する;
(b)試験開始から60分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも70%が溶出する;
(c)試験開始から90分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも80%が溶出する;
(d)試験開始から120分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも90%が溶出する。
【請求項2】
pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時に、下記(a)〜(c)の溶出特性も満足することを特徴とする請求項1に記載の速効性処方剤。
(a)試験開始から15分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも20%が溶出する;
(b)試験開始から45分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも60%が溶出する;
(c)試験開始から75分後の時点で、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも80%が溶出する。
【請求項3】
pH6.8のリン酸緩衝液1000ml中で、37℃において、2型溶出試験装置を用いて毎分100回転の条件下で測定した時に、試験開始から5分以内に、塩酸ピリドキシンとコハク酸ドキシラミンのそれぞれの全量の少なくとも40%が溶出することを特徴とする請求項1または2に記載の速効性処方剤。
【請求項4】
少なくとも1層からなる腸溶性被覆を有する芯を有し、該芯が塩酸ピリドキシン、コハク酸ドキシラミン、および非活性賦形剤として増量剤または結合剤、崩壊剤、滑沢剤、シリカフローコンディショナーと安定剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の速効性処方剤。
【請求項5】
該増量剤または結合剤が微晶質セルロースから構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項6】
該崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムから構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項7】
該滑沢剤がステアリン酸マグネシウムから構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項8】
該シリカフローコンディショナーが二酸化ケイ素から構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項9】
該安定剤が三ケイ酸マグネシウムから構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項10】
該芯が下記(a)〜(g)を包含することを特徴とする請求項1または2に記載の速効性処方剤。
(a)4〜10重量%の塩酸ピリドキシン;
(b)4〜10重量%のコハク酸ドキシラミン;
(c)40〜80重量%の微晶質セルロース;
(d)10〜30重量%の三ケイ酸マグネシウム;
(e)0.5〜5重量%の二酸化ケイ素;
(f)0.5〜5重量%のクロスカルメロースナトリウム;そして
(g)0.5〜5重量%のステアリン酸マグネシウム。
【請求項11】
該芯が下記(a)〜(g)を包含することを特徴とする請求項10に記載の速効性処方剤。
(a)7重量%の塩酸ピリドキシン;
(b)7重量%のコハク酸ドキシラミン;
(c)62重量%の微晶質セルロース;
(d)18重量%の三ケイ酸マグネシウム;
(e)0.7重量%の二酸化ケイ素;
(f)2.5重量%のクロスカルメロースナトリウム;そして
(g)2.8重量%のステアリン酸マグネシウム。
【請求項12】
該少なくとも1層からなる腸溶性被覆が水性原料から形成されることを特徴とする請求項4に記載の速効性処方剤。
【請求項13】
該少なくとも1層からなる腸溶性被覆が、芯を被覆するシール被覆、該シール被覆を被覆する真性腸溶性被覆、および該真性腸溶性被覆を被覆する化粧被覆から構成されてなることを特徴とする請求項12に記載の速効性処方剤。
【請求項14】
哺乳動物の悪心と嘔吐の症状緩和用処方剤である請求項1または2に記載の速効性処方剤。
【請求項15】
ヒトの妊娠中の悪心と嘔吐の症状緩和用処方剤である請求項1または2に記載の速効性処方剤。
【請求項16】
請求項4の処方剤から構成されてなる、悪心と嘔吐を伴う症状を緩和するための薬剤。
【請求項17】
請求項4の速効性処方剤を製造するための方法であって、下記の工程を包含することを特徴とする方法。
・コハク酸ドキシラミンとシリカフローコンディショナーを混合して、プレブレンドを得;
・該プレブレンドと塩酸ピリドキシンを混合して、活性成分ブレンドを得;
・該活性成分ブレンドと非活性賦形剤である増量剤または結合剤、崩壊剤、滑沢剤と安定剤を混合し、最終ブレンドを得;そして
・該最終ブレンドを打錠し、被覆する。
【請求項18】
最後に行う打錠と被覆の工程が、該最終ブレンドを錠剤形状に圧縮成形し、得られる錠剤形状物にシール被覆を施し、次いで腸溶性被覆を施し、更に着色被覆を施すことを包含する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−302688(P2007−302688A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184031(P2007−184031)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【分割の表示】特願2003−506908(P2003−506908)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(502240065)デュシェネ インク (3)
【Fターム(参考)】