説明

速吸収性経口投与製剤

【課題】ヒスタミン受容体に対する作用と中枢神経系に対する作用を併せ持つ医薬であるジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の吸収性を安全に向上することのできる経口投与製剤を提供すること。
【解決手段】ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩と制酸剤(例えば、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム)とを配合する速吸収性経口投与製剤。特に、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1質量部に対し、制酸剤を0.5〜80質量部配合するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分であるジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の吸収を速めた経口投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩(以下、「ジフェンヒドラミン等」という)は、各種の末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用と中枢神経系に対する作用を併せ持っている薬物である。このうち、中枢神経系に対する作用は睡眠改善薬または鎮暈薬に利用され、一方、末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用は鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に利用されている。両方の作用は共に医薬品として応用され、その結果多くの経口剤が市場に供されている。
【0003】
ジフェンヒドラミン等は、睡眠改善薬または鎮暈薬に用いた場合でも、あるいは、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に用いた場合でも、その効果を発揮するためには、なるべく速く吸収され、速く効果を発揮し始めたほうが、有用性が高まる。
【0004】
ところで、成人男子を対象にした塩酸ジフェンヒドラミンを50mg含有する錠剤または溶液製剤の体内動態を比較した薬物動態試験では、錠剤と溶液製剤でジフェンヒドラミンの最高血清中濃度、最高血清中濃度到達時間および生物学的利用能に差がなかったことが明らかにされている(非特許文献1)。すなわち、錠剤は、経口投与された後、崩壊・溶解の過程を経て消化管から吸収されてジフェンヒドラミンが血中に現れるのに対し、溶液製剤は消化管からの吸収過程だけでジフェンヒドラミンが血中に出現するものであるにも係わらず、錠剤と溶液製剤でジフェンヒドラミンの吸収性が同等であったことから、塩酸ジフェンヒドラミンは消化管内で溶解・溶出しやすい薬物であり、しかも、消化管の透過速度が吸収の律速段階となっていることが明らかになっている。従って、服用時にジフェンヒドラミンが液体となるソフトカプセル剤、硬カプセル剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等の剤形としても、早い効き目は期待できないことは容易に理解される。
【0005】
一方、薬物の消化管吸収を向上させるために、薬物と共に吸収促進剤を配合することも知られている。このような吸収促進剤としては、例えば、カプリン酸ナトリウム等の中鎖脂肪酸及びその塩類(特許文献1)、ポリ−γ−グルタミン酸(特許文献2)、N,N−ジメチルグリシン、チオクト酸、セバシン酸、シキミ酸及びその塩(特許文献3)等が提案されている。しかし、これら吸収促進剤の中には細胞障害を引き起こすものもあり、安全性が充分に確立されているとはいえない。また、これまでの吸収促進剤は難吸収性の薬物を対象としているため、難吸収性の薬物の吸収量を増加することはできでも、ジフェンヒドラミンのように良好に吸収される薬物に対しては、吸収速度をさらに向上させる効果が望めない場合が多い。
【0006】
【非特許文献1】Gielsdorf W, PabstG, Lutz D, Graf F:Pharmacokinetics and bioavailability of diphenhydramine inman:Arzneimittelforschung.1986 Apr;36(4):752-756
【特許文献1】特開平6−192107号公報
【特許文献2】特開2006−36721号公報
【特許文献3】特表2006−515629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、ジフェンヒドラミン等の吸収性を、より安全に高める手段を見出し、ジフェンヒドラミン等製剤、特に睡眠改善薬や鎮暈薬とした時に速やかに効果を発揮する速吸収性経口投与製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような実情に鑑み、本発明者らはジフェンヒドラミン等の消化管からの吸収性について種々検討していたところ、意外にもジフェンヒドラミン等と制酸剤とを組み合わせ配合した時に、消化管からのジフェンヒドラミン等の吸収速度が速くなり、吸収性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明はジフェンヒドラミン等と制酸剤とを配合することを特徴とする速吸収性経口投与製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の速吸収性経口投与製剤は、組み合わせて配合される制酸剤の作用により、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等の剤型に係わらずジフェンヒドラミン等の消化管からの吸収性を向上させることができる。
【0011】
従って、この製剤を使用することにより、服用後、直ちに血漿中ジフェンヒドラミン濃度が最大になり、ジフェンヒドラミンの薬理効果を最大限に発揮できるので、睡眠改善薬、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に剤形を問わず広く適用できる。特に、この製剤を睡眠改善薬に用いることにより、極めて優れた催眠導入効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の速吸収性経口投与製剤(以下、「本発明製剤」という)に含有されるジフェンヒドラミン等としては特に制限無く使用することができる。しかし、ジフェンヒドラミンそのものは常温で液状であり、固型剤として使用するには、例えば、軽質無水ケイ酸などの粉体に塩基を保持させ粉粒体化して用いる必要があるため、酸付加塩を用いることが好ましい。このようなジフェンヒドラミンの酸付加塩としては、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、硫酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン等が例示される。これらジフェンヒドラミンの酸付加塩の中でも、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミンまたはクエン酸ジフェンヒドラミンが好ましく、特に、塩酸ジフェンヒドラミンまたはクエン酸ジフェンヒドラミンが好ましい。
【0013】
本発明製剤におけるジフェンヒドラミン等の含有量は、ジフェンヒドラミンの中枢神経系に対する作用を期待する場合と、末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用を期待する場合またはそれらの剤形により異なるので一概には言えない。例えば、本発明製剤を睡眠改善薬とする場合には、ジフェンヒドラミン等の50mg相当量又はその整数分の1の量を製剤1個中または1分包中に含有させることが好ましい。また、かぜ内服薬および鼻炎内服薬とする場合には、ジフェンヒドラミン等の75mg相当量又はその整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることが好ましい。更に、鎮咳去痰薬とする場合には、塩酸ジフェンヒドラミンであれば90mg、サリチル酸ジフェンヒドラミンであれば120mg、タンニン酸ジフェンヒドラミンであれば150mg又は前記薬剤の整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることが好ましい。
【0014】
一方、本発明製剤において使用される制酸剤は、通常、胃酸を中和するために投与されるものであるが、本発明においてはジフェンヒドラミン等の吸収促進剤として働くものである。この制酸剤としては一般用医薬品向けとして販売され、多くの消費者に安全性と有効性が認められているものが好ましい。このような制酸剤としては、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、天然ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、アミノ酢酸、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げられる。これら制酸剤は1種または2種以上を混合して用いても良い。これらの制酸剤の中でも特に腎に対する負担が少なく、また、長期連用が認められているような、制酸剤、例えば、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウムおよびアミノ酢酸から選ばれる制酸剤の1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0015】
本発明製剤における制酸剤の添加量は、制酸剤の種類によっても異なるが、通常、ジフェンヒドラミン等の1質量部に対し、制酸剤が0.5〜80質量部の範囲にあり、さらに、1.0〜40質量部が好ましく、特に1.2〜6質量部が好ましい。
【0016】
本発明製剤には、上記必須成分であるジフェンヒドラミン等と制酸剤のほかに、他の薬理活性成分や通常に医薬品に使用される成分を適宜その目的に応じて配合しても良い。ジフェンヒドラミン等は、かぜ薬、鼻炎用薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬、睡眠改善薬、鎮暈薬等に用いるため、他の薬理活性成分として、通常、これらの分野でジフェンヒドラミン等と共に用いられる活性成分を配合してもよい。これら活性成分の具体的な例としては、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、エテンザミド、エトドラク、サザピリン、サリチルアミド、セレコキシブ、メディコキシブ、メロキシカム、ラクチルフェネジン、ロキソニン等の解熱鎮痛成分、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワリル尿素等の鎮静成分、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、塩酸ノスカピン、クエン酸ペントキシベリン、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファンフェノールフタリン酸、ノスカピン、ヒベンズ酸チペピジン、フェンジゾサンクロペラスチン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、リン酸ジモルファン等の鎮咳成分、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリン、塩酸トリメトキノール、塩酸メトキシフェナミン、塩酸メチルエフェドリン、メチルエフェドリンサッカリン塩等の気管支拡張成分、塩酸アンブロキソール、塩酸L−エチルシステイン、塩酸メチルシステイン、カルボシステイン、フドステイン、塩酸ブロムヘキシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウム、塩化アンモニウム、メントール、アンモニウム・ウイキョウ精等の去痰成分、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸プソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン等の血管収縮成分、ダツラエキス、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ロートエキス、臭化水素酸スコポラミン等の副交感神経遮断成分、塩酸ジフェニドール等の抗めまい成分、アミノ安息香酸エチル等の鎮吐成分、アンレキサノクス、イブジラスト、塩酸アゼラスチン、塩酸イソチペンジル、塩酸イプロヘプチン、塩酸エピナスチン、塩酸ジフェテロール、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸プロメタジン、塩酸メクリジン、オキサトミド、クロモグリク酸ナトリウム、ジフェニルスルホン酸カルビノキサミン、ジメンヒドリナート、酒石酸アリメマジン、タザノラスト、タンニン酸フェネタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、テオクル酸プロメタジン、テルフェナジン、トシル酸スプラタスト、トラニラスト、フマル酸クレマスチン、フマル酸ケトチフェン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸フェニラミン、メキタジン、レピリナスト、リン酸ジフェテロール等の抗アレルギーおよび抗ヒスタミン成分、塩化リゾチーム、ブロメライン、セラペプターゼ等の消炎酵素成分、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム等の消炎成分、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等の中枢神経刺激成分、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム等のビタミンCおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサミン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、コバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミン等のビタミンB12及びその塩並びにその誘導体、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、イノシトールヘキサニコチネート、ヘプロニカート等のナイアシン及びその塩並びにその誘導体、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール、パンテチン等のパントテン酸及びその塩並びにその誘導体、ビオチン、葉酸、オロチン酸、オロチン酸カリウム、オロチン酸マグネシウム、オロチン酸コリン等のオロチン酸及びその塩並びにその誘導体、パンガミン酸、パンガミン酸カルシウム等のパンガミン酸及びその塩並びにその誘導体、チオクト酸(リポ酸)、チオクト酸アミド等のチオクト酸及びその塩並びにその誘導体、パラアミノ安息香酸及びその塩並びにその誘導体、イノシトール、イノシトールヘキサニコチネート等のイノシトール及びその塩並びにその誘導体、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチン、コリン、オロチン酸コリン、酒石酸水素コリン等のコリン及びその塩並びにその誘導体等のビタミン及びビタミン様作用物質成分、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、5'−リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウム、りん酸三カルシウム、プロピオン酸カルシウム、りん酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酸化カルシウム等のミネラル成分、アセンヤク、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、オウレン、オウヒ、オート、オンジ、ガジュツ、カノコソウ、カバカバ、カミツレ、カモミール、カロニン、カンゾウ、ケイガイ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、ゴミシ、キキョウ、キョウニン、サイシン、サンソウニン、シオン、獣胆、シャコウ、シャジン、シャゼンシ、シャゼンソウ、ショウキョウ、地竜、シンイ、セイヨウヤドリギ、センキュウ、ゼンコ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、セキサン、セネガ、チクセツニンジン、チモ、チャボトケイソウ、チュウトウコウ、チンピ、テンナンショウ、トコン、ナンテンジツ、ニンジン、バイモ、バクモンドウ、パッシフローラ、ハンゲ、ビャクシ、ブクリョウ、ボタンピ、ホップ、ポテンティラ、マオウ、リンデン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の生薬および漢方成分等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明製剤の調製に当たって、必要により配合される通常に医薬品に使用される成分としては、各種担体、安定(化)剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢化剤、滑沢剤、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁(化)剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠化剤、粘稠剤、発泡剤、pH調整剤、稀釈剤および賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等の製剤添加物を挙げることができる。
【0018】
本発明製剤の調製は、経口投与製剤に適した剤形中にジフェンヒドラミン等および制酸剤を配合する以外は、通常行われている製剤化方法(津田恭介・上野寿著、「医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(上)(下)」、地人書館、1971年発行;仲井由宣著、「製剤工学ハンドブック」、地人書館、1983年発行;仲井由宣著、「医薬品の開発11 製剤の単位操作と機械」、廣川書店、1989年発行;橋田充著、「経口投与製剤の設計と評価」、薬業時報社、1995年発行;橋田充著、「経口投与製剤の処方設計」、薬業時報社、1995年発行)により行うことができる。本発明製剤の剤形としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、軟カプセル剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、内服液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等の経口投与形態の固形、半固形、及び、液状の製剤を挙げることができる。また、前記製剤にはマイクロカプセル、ナノカプセル、マイクロスフィアー、ナノスフィアー等の微小粒子を用いてもよい。
【0019】
斯くして得られる本発明製剤は、配合されたジフェンヒドラミン等の吸収性が、従来の製剤より高く、服用後速やかに血漿中ジフェンヒドラミン濃度が最大となるため睡眠改善薬、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に広く適用できるものである。また、本発明製剤を睡眠改善薬に用いれば催眠導入の効果がさらに向上するので特に好ましい。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実 施 例 1
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)100g、アミノ酢酸(協和醗酵株式会社製)600g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)120g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)92g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)4g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)4gを均一に混合し、1カプセルあたりの充填量が、230mgになるように硬カプセルに充填し、1カプセル中に塩酸ジフェンヒドラミン25mgおよびアミノ酢酸150mgを含む硬カプセル剤を得た。
【0022】
比 較 例 1
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)100g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)720g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)92g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)4g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)4gを均一に混合し、1カプセルあたりの充填量が、230mgになるように硬カプセルに充填し、1カプセル中に塩酸ジフェンヒドラミン25mgを含む硬カプセル剤を得た。
【0023】
試 験 例 1
吸収性試験:
(1)試験方法
吸収性試験には1週間の休薬期間を置き、試験実施前日より24時間絶食させたビーグル犬(牡)を用いた。試験薬剤には実施例1または比較例1で得られた硬カプセル剤を用いた。各試験薬剤をビーグル犬に2カプセル(塩酸ジフェンヒドラミンとして50mg)を水30mLと共に経口投与した。各薬剤の投与前、投与後0.5、1、1.5、2、3、4、6、及び8時間に前腕正中皮静脈より血液2mLを採取し、ベノジェクトII真空採血管(ヘパリンナトリウム入:テルモ株式会社)に移した後、遠心分離して得られる血漿を試料として、血漿中のジフェンヒドラミン濃度をHPLCにより測定した。
【0024】
(2)結果
各採血時点の血漿中ジフェンヒドラミン濃度を図1に示した。また、このときの薬物動態パラメータである最高血漿中濃度:Cmax、最高血漿中濃度到達時間:Tmax、血漿中濃度−時間曲線下面積:AUC0−8及びAUC0−∞を表1に示した。実施例1の硬カプセル剤を投与したビーグル犬の血漿中のジフェンヒドラミン濃度は、投与直後から投与1時間後まで比較例1の硬カプセル剤より高い値を示し、Tmaxは1時間速くなり、Cmaxも高かった。この結果により実施例1の硬カプセル剤は比較例1の硬カプセル剤と比べてジフェンヒドラミンの吸収性が向上したことが示された。
【0025】
【表1】

【0026】
実 施 例 2
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)100g、アミノ酢酸(協和醗酵株式会社製)600g、結晶セルロース(セオラスPH101:旭化成ケミカルズ株式会社製)200g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)42g、クロスカルメロースナトリウム(キッコーレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)20g及び軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)48gを混合し、10%ヒドロキシプロピルロース(HPC-L:日本曹達株式会社製)のエタノール溶液240gを加えて混練、造粒および乾燥を行なった後、JIS規格20メッシュのふるいで篩過した。この顆粒1009.4gにステアリン酸マグネシウム(株式会社製)9.8g及びタルク(キハラ化成株式会社製)9.8gを混合し、得られた圧縮成型用顆粒を圧縮成型し、直径9mm、厚さ4.2mm、質量260mgの素錠を得た。次いで、この素錠3000錠に対し、ヒプロメロース2910(TC−5:信越化学株式会社製)を75g、マクロゴール6000(日本油脂株式会社製)を5g、酸化チタン(石原産業株式会社)11gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)9gを含有する10%水系コーティング液を、ハイコーター(フロイント産業株式会社製)にて、乾燥状態で5mg/錠となるようスプレーコーティングして被覆錠剤を得た。
【0027】
実 施 例 3
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)25g、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業株式会社)500g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)225g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LHPC:LH−31:信越化学株式会社製)500gをバーチカルグラニュレーターVG−10(パウレック株式会社)で混合後、精製水1435gを添加し練合した後、ツインドームグランTDG−80(不二パウダル株式会社製)0.8mmスクリーンで押し出し造粒後、流動層乾燥装置FLO−5A/2(フロイント産業株式会社製)にて乾燥し、1包あたり2.5gになるようにアルミヒートシールで分包して分包顆粒剤を得た。
【0028】
実 施 例 4
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)100g、酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社)334g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)246g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)300g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)10g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)10gを均一に混合し、1包あたり500mgなるようにアルミヒートシールで分包して分包散剤を得た。
【0029】
実 施 例 5
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社)400g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)174g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)160g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)8g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)8gを均一に混合し、1包あたり800mgなるようにアルミヒートシールで分包して分包散剤を得た。
【0030】
実 施 例 6
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、炭酸水素ナトリウム(旭硝子株式会社)833g、乳糖(DMVジャパン株式会社製)147g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)150g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)10g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)10gを均一に混合し、1包あたり1.2gなるようにアルミヒートシールで分包して分包散剤を得た。
【0031】
実 施 例 7
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)75g、沈降炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社)750g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)66g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)4.5g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)4.5gを均一に混合し、1カプセルあたりの充填量が200mgになるように硬カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0032】
実 施 例 8
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、無水リン酸水素カルシウム(富山化学工業株式会社)400g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社製)342g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製)4g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)4gを均一に混合し、1カプセルあたりの充填量が200mgになるように硬カプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0033】
実 施 例 9
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、リン酸水素カルシウム(太平化学産業株式会社)アミノ酢酸(協和醗酵株式会社製)500g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)360g、乳糖(メグレ・ジャパン株式会社製)46g、クロスカルメロースナトリウム(キッコーレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)30g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-11:信越化学株式会社製)24g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)10g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)10g及びタルク(キハラ化成株式会社製)10gを混合した後、打錠し、直径9mm、厚さ4.3mm、質量260mgの錠剤を得た。
【0034】
実 施 例 10
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社)667g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)450g、乳糖(メグレ・ジャパン株式会社製)31g、クロスカルメロースナトリウム(キッコーレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)30g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-11:信越化学株式会社製)36g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)12g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)12g及びタルク(キハラ化成株式会社製)12gを混合した後、打錠し、直径9mm、厚さ4.3mm、質量260mgの錠剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の速吸収性経口投与製剤はジフェンヒドラミンを含有しているため、睡眠改善薬、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1または比較例1の硬カプセル剤を投与したビーグル犬の各採血時点の血漿中ジフェンヒドラミン濃度を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩と制酸剤とを配合することを特徴とする速吸収性経口投与製剤。
【請求項2】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の1質量部に対し、制酸剤を0.5〜80質量部配合するものである請求項1記載の速吸収性経口投与製剤。
【請求項3】
睡眠改善薬である請求項1または2記載の速吸収性経口投与製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−174500(P2008−174500A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10445(P2007−10445)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000102496)エスエス製薬株式会社 (50)
【Fターム(参考)】