説明

造粒機およびそれを備えた缶用材料処理システム

【課題】 形状や大きさが揃った良好なペレットを製造することのできる造粒機およびそれを備えた缶用材料処理システムを提供すること。
【解決手段】 造粒機40を、チャンバー41と、ハンマ47を備えた回転体と、スクリーン部48とで構成した。そして、スチール缶10を供給口42からチャンバー41内に入れ、ハンマ47で衝撃を加えることによってスクリーン部48に叩き付けてペレットに形成したのちに、スクリーン部48に形成された取出孔51,51aから取り出すようにした。また、スクリーン部48の表面をハンマ47のから所定間隔を保ち、かつその回転軌道に沿った曲面に形成した。また、上流側の取出孔51aを他の取出孔51よりも小さくした。さらに、チャンバー41内の上部側に衝撃用空間部43aを形成した。また、チャンバー41の供給口42の近傍にカッティングライナー52を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールまたはアルミニウムからなる缶用材料を造粒してペレットを製造する造粒機およびそれを備えた缶用材料処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料水等を収容するために、スチールやアルミニウムからなる缶が用いられている。このような缶のうち、一般に、スチール缶は、底部と周面部がスチールで構成され蓋部がアルミニウムで構成さており、アルミニウム缶は、全体がアルミニウムで構成されている。そして、缶の周面部の表面には、塗装による絵文字が表示されている。また、使用後の空缶は、廃棄物処理施設において再生処理が行われ、新たな材料として再利用される。この場合、スチール材とアルミニウム材とを分離して、別々にペレットとして再生処理することも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この再生処理では、空缶を加熱手段で加熱して塗装層や不純物を除去したのちに、造粒機によって粒状のペレットに形成している。そして、スチール材からなるペレットは、鉄や鋼の材料として用いられたり、製鉄や製鋼の際に冷却材として用いられたりしている。また、アルミニウム材からなるペレットは、鉄や鋼の溶融金属中に含まれる酸素ガスや不純物を除去したり、スラグの改質をしたりするために用いられている。
【特許文献1】特許第3284398号公報
【発明の開示】
【0004】
前述した空缶をペレットに再生処理する場合、ペレットの形状や大きさを揃えることが好ましく、そのためには、加工精度のよい造粒機が必要となる。しかしながら、従来の造粒機やそれを用いた缶用材料処理システムでは、均一なペレットを製造することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、形状や大きさが揃った良好なペレットを製造することのできる造粒機およびそれを備えた缶用材料処理システムを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る造粒機の構成上の特徴は、スチールまたはアルミニウムからなる缶用材料を造粒して所定の大きさのペレットに成形する造粒機であって、缶用材料を供給するための供給口と、所定の大きさに成形されたペレットを通過させて取り出すための取出孔とが設けられたチャンバーと、チャンバー内に設けられ、缶用材料に衝撃を加えることによってペレットを成形するハンマを備えた回転体と、チャンバー内に回転体の外周部に対向して配置され、回転体の外周部との対向面が、ハンマの先端部の回転軌道から所定間隔を保ち、かつ回転軌道に沿った曲面に形成されたスクリーン部とを備え、取出孔がスクリーン部に所定間隔を保って複数個設けられていることにある。
【0007】
前述したように構成した本発明に係る造粒機では、ハンマを備えた回転体の外周部に対向する部分に、ハンマの先端部の回転軌道から所定間隔を保ち、かつ回転軌道に沿った曲面に形成されたスクリーン部を設けている。したがって、供給口からチャンバー内に供給された缶用材料は、ハンマの打撃を受けながら回転体とスクリーン部との間を回転体の回転方向に沿って移動する。その間に、缶用材料は、ハンマとスクリーン部とに衝突しながら破砕されて所定の大きさの粒状のペレットに形成されていく。
【0008】
この場合のハンマの先端部の回転軌道とは、ハンマだけの回転軌道ではなく、回転体が回転するときのハンマの先端部の軌道である。また、ハンマの先端部の回転軌道に沿った曲面は、ハンマが複数個ある場合に、各ハンマの先端部の回転軌道に沿う曲面としてもよいし、回転体の中心軸からの各部分までの長さを一定にした曲面としてもよい。このように、スクリーン部における回転体と対向する面が、ハンマの先端部の回転軌道に沿った曲面に形成されているため、缶用材料がスクリーン部によって細かく切断されることがなく良好な球状に形成される。そして、缶用材料からなる粒状のペレットの大きさが、取出孔を通過できる大きさになったときに、そのペレットは、取出孔からチャンバーの外部に出て行く。この造粒処理は、すべてのペレットの大きさが所定の大きさになって取出孔を通過するまで繰り返される。
【0009】
この場合、缶用材料が、スチールからなる本体部とアルミニウムからなる蓋部とで構成されたスチール缶であれば、造粒機から取り出されたペレットは、選別装置を用いてスチールからなるペレットとアルミニウムからなるペレットとに選別する。この場合、磁力を利用した選別装置や比重の差を利用した選別装置を用いることができる。また、予め、本体部と蓋部とを分離させてスチールからなる缶用材料とアルミニウムからなる缶用材料とに分けて、これらを別々に処理することもできる。また、これらの缶用材料は、缶の状態のまま造粒機のチャンバー内に供給してもよいし、予め所定の大きさに切断してチャンバー内に供給してもよい。缶用材料を予め所定の大きさに切断しておくと、造粒機を用いた造粒処理が短時間で行えるとともに、各ペレットの大きさを揃え易くなる。
【0010】
また、本発明に係る造粒機の他の構成上の特徴は、スクリーン部をチャンバー内の下部側部分に設け、回転体の回転方向における上流側に位置する取出孔の開口の大きさを、回転体の回転方向における下流側に位置する取出孔の開口の大きさよりも小さくしたことにある。
【0011】
これによると、回転方向の上流側の取出孔の部分を通過した所定の大きさ以上の缶用材料は、ハンマとスクリーン部とによって衝撃され所定の大きさになったときに、下流側の取出孔を通過してチャンバーの外部に出て行く。このため、ペレットの大きさは、開口が小さな取出孔を通過できる大きさと開口が大きな取出孔を通過できる大きさとの間の大きさになり、得られるペレットの大きさが所定の範囲内に揃うようになる。このため、良好なペレットを得ることができる。また、この場合の開口の大きさは、開口の形状が円形であれば、直径とし、開口の形状が円形以外であれば、面積とする等、開口が小さな取出孔を通過するペレットの大きさが、開口が大きな取出孔を通過するペレットよりも小さくなるように設定されていればよい。
【0012】
また、本発明に係る造粒機のさらに他の構成上の特徴は、スクリーン部をチャンバー内の下部側部分に設けるとともに、回転体の回転方向におけるスクリーン部よりも下流側部分に、缶用材料が飛び跳ねることのできる衝撃用空間部を形成したことにある。このように、チャンバー内に衝撃用空間部を設けることにより、缶用材料が衝撃用空間部内で飛び跳ねるようになり、より球状に近づいていく。すなわち、ハンマとスクリーン部との間では、缶用材料は、押し潰されたり、擦り付けられたりしながら回転体の回転に追従して回転移動するが、衝撃用空間部内で飛び跳ねることによって、角部や突出部が効果的に押し潰されて球状になっていく。
【0013】
また、本発明に係る造粒機のさらに他の構成上の特徴は、チャンバー内における供給口の近傍で、回転体の回転方向における衝撃用空間部よりも下流側の部分に、供給口に供給された缶用材料が逆流することを防止するための逆流防止部を設けたことにある。これによると、供給口からチャンバー内に供給された缶用材料が逆流することがなくなるため、缶用材料は適正な方向に移動しながら効果的にペレットに成形されていく。
【0014】
また、本発明に係る造粒機のさらに他の構成上の特徴は、チャンバー内における供給口の近傍で、かつ回転体の回転方向におけるスクリーン部よりも上流側における回転体の外周部に対向する部分に、缶用材料を切断または破砕するためのカッティング部を設けたことにある。これによると、供給口からチャンバー内に供給された缶用材料は、カッティング部によって所定の大きさに切断または破砕されたのちに、スクリーン部に送られるため、ハンマとスクリーン部による造粒処理を効率的に行える。また、この場合の切断は、ハンマの回転で缶用材料をカッティング部に叩きつけることによって行い、缶用材料をハンマとカッティング部との間隔以下の大きさにする。
【0015】
また、本発明に係る造粒機のさらに他の構成上の特徴は、チャンバー内に、回転体の外周部に対向して配置され、回転体の外周部との対向面が、回転体の回転方向に沿った波状に形成された波形スクリーン部を設けたことにある。この波形スクリーン部は、回転体の回転方向におけるスクリーン部の上流側に設けることが好ましい。また、チャンバー内にカッティング部が設けられている場合には、波形スクリーン部は、カッティング部とスクリーン部との間に設けることが好ましい。これによると、缶用材料をより球状に近いペレットに形成することができる。
【0016】
また、本発明に係る缶用材料処理システムの構成上の特徴は、造粒機を備えた缶用材料処理システムであって、造粒機で造粒される前の缶用材料を加熱処理するための加熱装置を含むことにある。また、この場合、加熱装置を、回転式のロータリーキルンで構成することが好ましい。
【0017】
これによると、缶用材料の表面の塗装層や、缶用材料に付着する不純物等を燃焼させて除去することができ、良好なペレットを得ることができる。また、缶用材料がスチールの本体部とアルミニウムの蓋部とからなるスチール缶である場合には、加熱の際の熱膨張の違いから本体部と蓋部との結合部を緩めることができる。このため、スチールとアルミニウムとを分離しやすくなり、スチールからなるペレットにアルミニウムが混入したり、アルミニウムからなるペレットにスチールが混入したりすることを防止できる。
【0018】
また、加熱装置をロータリーキルンで構成した場合には、缶用材料は、ロータリーキルンの中で回転しながら加熱される。このため、缶用材料がスチールとアルミニウムからなる場合は、熱膨張の違いにより係合部が外れ易くなるとともに、回転による振動で分離するか、または分離し易い状態になる。この結果、加熱処理後に、スチールとアルミニウムとの分離処理が容易に行えるようになる。また、このロータリーキルンは、上流側から下流側にかけて下り傾斜になるようにして設置することが好ましい。これによって、缶用材料は上流側から下流側にスムーズに搬送される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る造粒機を備えた缶用材料処理システムの一実施形態を図面を用いて詳しく説明する。図1は、同実施形態に係る缶用材料処理システムSを示している。この缶用材料処理システムSは、主としてジュースやビール等の飲料水を収容するために使用された使用済みのスチール缶10を再生処理して粒状のペレット(図示せず)に成形するための処理システムである。この缶用材料処理システムSは、加熱処理用のロータリーキルン20および造粒処理用の造粒機40を含む各装置で構成されている。
【0020】
使用済みのスチール缶10は、例えば、家庭ごみ収集場や自動販売機の回収ボックス等から回収されて、公共のリサイクルステーション11に保管されたものである。そして、スチール缶10は、運搬業者の搬送車12によって、リサイクルステーション11からペレットを成形する産業廃棄物処理業者の施設に運搬される。産業廃棄物処理業者の施設に運搬されたスチール缶10は、施設内の搬送装置13によって、ロータリーキルン20に搬送される。
【0021】
搬送装置13は、図2に示すように、基台14a,14bを備えており、基台14aに取り付けられたバケットコンベア15と、基台14bに取り付けられたベルトコンベア16とで構成されている。バケットコンベア15は、一定量のスチール缶10を収容できるバケット15aと、バケット15aを移動させるための移動機構を備えたレール部15bとで構成されている。レール部15bは、バケット15aを上方移動させたのちに、ロータリーキルン20の上方に向って水平移動させるように構成され、バケット15aがレール部15bの下流端部(図2における上部の左側端部)に達したときに、反転させて内部のスチール缶10を落下させる。
【0022】
ベルトコンベア16は、上流端部(図2における右側端部)がバケットコンベア15の下流端部の下方に位置し、下流端部がロータリーキルン20の上方に位置するように設置されている。そして、ベルトコンベア16の上流端部には、バケット15aから落下してくるスチール缶10を受け取って、ベルト16a上に送るための搬送ホッパー16bが取り付けられている。また、このベルトコンベア16の上流端部は、軸部16cに回転可能に支持されており、軸部16cを中心に回転することにより、ベルトコンベア16の下流端部は水平方向の位置調節が可能になっている。
【0023】
ロータリーキルン20は、図3に示すように、台部21に設けられた回転筒体22、回転筒体22を軸線周りに回転可能な状態で支持する一対のガイド部23,24、回転筒体22を回転駆動させるための駆動装置25、前炉26および後炉27を備えている。台部21は、上流側(図3の左側)に設置された上下2段からなる上流台部21a、中央に設置された中台部21bおよび下流側(図3の右側)に設置された下流台部21cとからなっている。そして、上流台部21aの上下段部における各上面と下流台部21cの上面とは水平面になっており、中台部21bの上面は、上流から下流にかけて下り傾斜になった傾斜面になっている。
【0024】
回転筒体22は、外周面における上流側部分と下流側部分とにそれぞれフランジ状のガイド突部22a,22bが形成されており、ガイド突部22a,22b間におけるガイド突部22bの近傍には、駆動装置25の駆動部25aが係合するためのフランジ状の係合突部22cが形成されている。一対のガイド部23,24は、それぞれ中台部21bの上面における上流側と下流側に設置され、回転筒体22を上流端よりも下流端が下方に位置するように傾斜させて支持している。
【0025】
ガイド部23,24は、それぞれ、ガイド突部22a,22bの周面に沿うようにして一定間隔で設けられた複数のローラ23a,24aと、ローラ23a,24aを回転可能に支持する支持部23b,24bとを備えている。また、駆動装置25は、中台部21bの上面における係合突部22cの近傍位置に設置されて、その駆動部25aを係合突部22cに係合させている。したがって、駆動装置25を駆動させると、回転筒体22は、ガイド突部22a,22bの周面を、ガイド部23,24の複数のローラ23a,24aにおける周面に当て、ガイド部23,24によってガイドされた状態で、軸線周りに回転する。
【0026】
前炉26は、回転筒体22の上流側開口を塞ぐようにして上流台部21aの下段部に設置されている。そして、前炉26の上流側の側部における略中央には、回転筒体22の中心軸に向けてバーナー26aが設けられており、このバーナー26aの発火によって、回転筒体22の内部に搬送されるスチール缶10が加熱される。また、後炉27は、回転筒体22の下流側開口を塞ぐようにして下流台部21cに設置されている。そして、後炉27の下流側の側部における中央には、回転筒体22の中心軸に向けてバーナー27aが取り付けられており、このバーナー27aの発火によって、回転筒体22内を搬送されるスチール缶10が加熱される。また後炉27の下端部には排出口27bが形成されている。
【0027】
さらに、前炉26の下端部には、ダストコンベア26bが連結され、前炉26の前部には、投入シュート28が設けられている。ダストコンベア26bは、前炉26および回転筒体22の内部で発生する燃焼による炭化物や粉状のダストを外部に排出する。投入シュート28は、ベルトコンベア16の下流端部の下方に設置された投入ホッパー29の下方に設置されており、投入ホッパー29を介してベルトコンベア16から落下してくるスチール缶10を受け取って前炉26内に送る。また、投入ホッパー29の上端部には、上端開口を開閉するための上蓋29aが着脱可能に設けられ、投入ホッパー29の下端部には、投入ホッパー29と投入シュート28との間の通路を開閉するための下蓋29bが設けられている。
【0028】
また、前炉26の上端部には、排出管31を介して、上流台部21aの上段部に設置された再燃焼炉32が連結されている。再燃焼炉32は、前炉26および回転筒体22の内部で発生する温度が略400℃の排ガスを850℃まで加熱して完全燃焼させたのちに水スプレー式の急冷塔33に送る。そして、急冷塔33で冷却された排ガスは、バグフィルター34でろ過されたのちに、排風ファン35の作動により外部に排出される。また、ロータリーキルン20で加熱処理されたスチール缶10は、排出口27bから排出され、コンベア13aによって造粒機40に搬送され、造粒機40によって所定の粒径のペレットになるまで造粒処理される。
【0029】
造粒機40は、図4および図5に示したように構成されている。造粒機40は箱状のチャンバー41を備えており、チャンバー41の上面における一端部には、スチール缶10を供給するための供給口42が形成されている。そして、チャンバー41内の空間部43には、軸部44によって回転可能に支持された複数の円板状の支持体45が軸部44の軸方向に沿って一定間隔を保って設けられている。また、軸部44の端部は、モータ(図示せず)に接続されており、支持体45は、軸部44を介してモータの駆動によって回転する。
【0030】
そして、支持体45の外周側部分には、円周に沿って複数のピン46が一定間隔で取り付けられており、各ピン46にそれぞれ複数のハンマ47が取り付けられている。ハンマ47は、ピン46を中心として回転可能になっており、軸部44の回転に伴って揺動することによりチャンバー41内に供給されるスチール缶10を打ち砕く。なお、軸部44、支持体45、ピン46およびハンマ47で本発明に係る回転体が構成される。また、回転するハンマ47の上部側を除く部分に対応する部分に、ハンマ47の先端部から所定間隔を保つようにしてスクリーン部48が形成されている。
【0031】
このスクリーン部48は、図6に示したスクリーン49を6個並べて形成されており、一方の端部と供給口42との間の距離および他方の端部と供給口42との間の距離がそれぞれ略等しくなるように設定されている。そして、各スクリーン49は、湾曲板状の曲面部材49aと、曲面部材49aの裏面(湾曲が突出した面)に取り付けられた棒状の補強部材49b,49cとで構成されている。補強部材49bは、曲面部材49aの幅方向(長手方向)に沿って直線状に延びる長い棒で構成され、曲面部材49aの裏面における軸部44等からなる回転体の回転方向aに沿った両側縁部と中央部にそれぞれ設けられている。また、補強部材49cは、曲面部材49aの円弧に沿った湾曲した棒で構成され、各補強部材49b間を接続するようにして軸部44等からなる回転体の軸方向に一定間隔で設けられている。
【0032】
そして、各曲面部材49aには、所定の大きさに形成されたペレット(図示せず)を取り出すための複数の円形の取出孔51が形成されている。この取出孔51のうちの回転方向aで示した回転方向の上流側に位置するスクリーン49に設けられた取出孔51a(図4参照)の直径は、他の取出孔51の直径よりも小さくなるように設定されている。この直径は、造粒するペレットの大きさに応じて適宜設定されるが、回転方向の上流側に位置する取出孔51aの直径を、他の取出孔51の直径よりも1mm程度小さくすることが好ましい。
【0033】
また、供給口42の下方におけるスクリーン部48の上側部分には、本発明のカッティング部を構成するカッティングライナー52が水平方向に形成されている。このカッティングライナー52は、図7および図8に示したように構成されている。すなわち、カッティングライナー52は、板状の平面部52aの表面に側面形状が細長い略三角形に形成された4個の突部52bを上部側の幅が狭く下部側の幅が広くなるようにした状態で一定間隔で設けた形状に形成されている。
【0034】
このため、各突部52b間に形成される溝部52cの深さは、上部側が浅く、下部側が深くなっている。また、平面部52aの所定の4箇所には、取付用の穴部53が形成されており、カッティングライナー52は、この穴部53に固定部材(図示せず)を通させてチャンバー41の壁部に固定させることにより取り付けられている。また、このカッティングライナー52の幅方向の長さは、スクリーン49の幅の略1/4に形成されており、4個のカッティングライナー52を水平方向に配置してカッティング部が構成されている。
【0035】
このカッティングライナー52の突部52bの下端部と回転したときのハンマ47の先端部との間の隙間の長さは、チャンバー41内におけるスクリーン部48等とハンマ47の先端部との間の隙間の長さの中で最小になるように設定されている。そして、4個のカッティングライナー52で構成されるカッティング部と、スクリーン部48との間には、表面が波状になった波型スクリーン部が形成されている。この波型スクリーン部は、図9に示した波型スクリーン53で構成されており、スクリーン49と略同形の曲面板53aの表面(湾曲の凹部側の面)に波型の複数の凹凸部53bを形成して構成されている。
【0036】
また、スクリーン部48の下流側端部とチャンバー41の内壁面との間には、仕切り板54が形成され、仕切り板54と供給口42の近傍部分との間に広い衝撃用空間部43aが形成されている。そして、衝撃用空間部43aの下流端には、供給口42から供給されたスチール缶10が逆流することを防止するための逆流防止板55が設けられている。この逆流防止板55は、図10に示したように、チャンバー41に固定される固定部55a、固定部55aの下流側端部から下方に延びる止板55bと、L形に形成された固定部55aと止板55bの両側部分にそれぞれ設けられた補強板55cとで構成されている。
【0037】
止板55bの下端部と回転状態のハンマ47の先端部との間の距離は、供給口42から供給されたスチール缶10は通過できず、所定の大きさに切断または破砕されたスチール缶10は通過できる長さに設定されている。また、供給口42と逆流防止板55との間には、供給口42に供給されたスチール缶10を下方にガイドするためのガイド板56が設けられている。なお、チャンバー41の上面における供給口42以外の部分には開口部が形成され、その開口部を開閉するための蓋57がチャンバー41の側部に設けられた軸部57aに回転可能に取り付けられている。また、この缶用材料処理システムSは、缶用材料処理システムSが備える各装置を制御するための制御装置(図示せず)を備えている。
【0038】
この構成において、使用済みのスチール缶10を粒状のペレットに成形する場合には、まず、リサイクルステーション11からスチール缶10を処理施設に搬入する。ついで、スチール缶10をバケットコンベア15のバケット15aに入れ、制御装置を操作することによって、缶用材料処理システムSが備える各装置を作動させる。これによって、バケット15aは、レール部15bに沿って上昇したのちに水平方向に移動し、レール部15bの下流端部に達したときに反転して、内部のスチール缶10を搬送ホッパー16b内に落下させる。
【0039】
ベルトコンベア16は、搬送ホッパー16bを介してベルト16a上に落下してくるスチール缶10をベルトコンベア16の下流端部側に搬送する。この場合、軸部16cを中心として、ベルトコンベア16を水平方向に回転させることにより、ベルトコンベア16の下流端部を投入ホッパー29の上方に位置決めしておく。また、この際、投入ホッパー29は、上蓋29aが取り外されて上端部が開口し、下蓋29bが閉じて下端部が閉塞した状態にしておく。ベルトコンベア16の下流端部に搬送されたスチール缶10は、投入ホッパー29内に落下して溜まっていく。
【0040】
投入ホッパー29内に所定量のスチール缶10が溜まると、下蓋29bが開いて、スチール缶10は、投入シュート28を通過して前炉26から回転筒体22内に充填されていく。そして、回転筒体22内に所定量のスチール缶10が充填されるまで、下蓋29bを開閉操作させながら、バケットコンベア15およびベルトコンベア16によるスチール缶10の搬送が行われる。そして、回転筒体22内に所定量のスチール缶10が充填されると、投入ホッパー29の上端開口に上蓋29aを取り付けるとともに、下蓋29bを閉じる。
【0041】
回転筒体22内に入ったスチール缶10は、前炉26のバーナー26aと後炉27のバーナー27aとの発火により加熱されながら、回転筒体22の上流端から下流端に搬送される。この際、バーナー26a,27aは、回転筒体22の中央部または中央部よりもやや上方に向けて、バーナー26a,27aの発火が直接空缶に当たらないようにしておく。これによって、スチール缶10は、蓋部を構成するアルミニウム材を過度に酸化させることなく、表面の塗装層を炭化させるとともに内部の残液等を燃焼して除去することができる。
【0042】
また、回転筒体22内の温度が適温である400℃に達すると、バーナー26a,27aの発火を停止させた状態でスチール缶10を回転筒体22内で搬送することが好ましい。そして、回転筒体22内の温度が低下、例えば、350℃以下になると、再度、バーナー26a,27aを発火させるといった操作を行うこともできる。これによって、スチール缶10の加熱温度を適正温度に維持することができる。
【0043】
また、スチール缶10が回転筒体22内を通過する際、スチール缶10は加熱されて、そのスチールからなる本体部とアルミニウムからなる蓋部との係合部が、互いの熱膨張率の違いから係合を解除しようとして変形する。また、スチール缶10は、回転筒体22の回転により、攪拌されるとともに振動される。この攪拌によって、スチール缶10の表面全体が略均一に加熱されて、塗装層の良好な炭化が可能になる。また、振動によって、スチールとアルミニウムとは、さらに分離しようとする。この結果、回転筒体22内を通過するまでに、スチール缶10のスチール材とアルミニウム材とは、分離するか、または分離しかかった状態になる。
【0044】
そして、回転筒体22の下流端に搬送された空缶は、後炉27の下部に設けられた排出口27bから排出されて下方に落下する。排出口27bから落下したスチール缶10は、コンベア13aによって、造粒機40に搬送される。また、その際、回転筒体22内で発生する炭化物や粉塵は、ダストコンベア26bによって、外部に送られて処理され、排ガスは、再燃焼炉32に送られて高温加熱して完全燃焼したのちに濾過されて外部に放出される。
【0045】
造粒機40に搬送されたスチール缶10は、供給口42から造粒機40の空間部43内に投入される。そして、造粒機40の空間部43に入ったスチール缶10は、モータの駆動によって回転する回転体に取り付けられた複数のハンマ47によってカッティングライナー52に押し付けられて切断されたり破砕されたりする。さらに、スチール缶10は、ハンマ47によって波型スクリーン53やスクリーン部48に叩き付けられながら粒状になっていく。この際、スチール缶10は、ハンマ47の先端部と波型スクリーン53やスクリーン部48とによって突出した部分を削り取られるようにして所定の大きさの粒状のペレットに成形される。そして、スチール缶10は波型スクリーン53やスクリーン部48を通過する際には、表面が滑らかな曲面になるように加工される。
【0046】
所定の大きさに成形された粒状のペレットは、取出孔51から落下して、所定の容器(図示せず)内に収容される。この場合、ペレットの粒径は目的に応じて種々の寸法、例えば5mm〜40mm程度に設定することができる。そして、例えば、取出孔51の直径を17mmに設定した場合、得られるペレットの粒径を15mm以下にすることができる。この場合、取出孔51のうちの上流側に位置する取出孔51aの直径は16mm程度にしておく。
【0047】
また、大きさが大きすぎて取出孔51から取り出せなかったペレットは衝撃用空間部43a内に移動する。そして、衝撃用空間部43a内で飛び跳ねてさらに球状に近い形状にされたのちに再度、供給口42の下方からスクリーン部48側に運ばれて行く。そして、所定の大きさのペレットになったときに、取出孔51から外部に出て行く。そして、選別装置によって、スチールからなるペレットとアルミニウムからなるペレットとに分別されて、それぞれの用途に応じて使用される。
【0048】
このように、本発明に係る造粒機40では、供給口42からチャンバー41内に供給されたスチール缶10は、ハンマ47の打撃を受けながら回転体と、カッティングライナー52、波型スクリーン53およびスクリーン部48との間を回転体の回転方向に沿って移動する。その間に、スチール缶10は、ハンマ47とスクリーン部48等とに衝突しながら破砕されて所定の大きさの粒状のペレットに形成されていく。この場合、スクリーン部48における曲面部材49aが、ハンマ47の先端部の回転軌道に沿った湾曲面に形成されているため、スチール缶10は良好な球状に形成される。そして、粒状のペレットの大きさが、取出孔51を通過できる大きさになったときに、そのペレットは、取出孔51から外部に出て行くため、各ペレットの大きさは、すべての同程度になる。
【0049】
また、回転体の回転方向の上流側に位置する取出孔51aの大きさを、他の取出孔51の大きさよりも小さくしたため、ペレットの大きさは、小さな取出孔51aを通過できる大きさと大きな取出孔51を通過できる大きさとの間の大きさになり、得られるペレットの大きさが所定の範囲内に揃うようになる。このため、良好なペレットを得ることができる。さらに、チャンバー41内の上部側部分に、衝撃用空間部43aを形成したため、スチール缶10が衝撃用空間部43a内で飛び跳ねるようになり、角部や突出部が効果的に押し潰されてスチール缶10はより良好な球状に近づいていく。
【0050】
また、本発明に係る缶用材料処理システムSは、回転式のロータリーキルン20からなる加熱装置を備えている。このため、スチール缶10の表面の塗装層や、スチール缶10に付着する不純物等を燃焼させて除去することができ、良好なペレットを得ることができる。また、スチール缶10は、ロータリーキルン20の中で回転しながら加熱されるため、スチールからなる本体部分とアルミニウムからなる蓋部が、熱膨張の違いにより係合部が外れ易くなるとともに、回転による振動で分離するか、または分離し易い状態になる。この結果、加熱処理後に、スチールとアルミニウムとの分離が容易に行えるようになる。
【0051】
また、他の実施形態として、スチール缶10を造粒処理する前に、所定の大きさに切断しておくこともできる。この場合、例えば、対向して設置された回転刃部を備えた公知のシュレッダー(図示せず)を用いることができる。また、この切断処理は、スチール缶10を加熱処理する前に行ってもよいし、加熱処理後に行ってもよい。これによると、造粒機40に送られてくるアルミニウム粒状体成形用の材料はスチール缶10でなく、所定の大きさに切断されたアルミニウムの切断片であるため、造粒機40による造粒処理が短時間で効率よく行える。また、成形されるアルミニウム粒状体の大きさも一定に揃えることができる。
【0052】
さらに、スチール缶10に代えて、アルミニウム缶を用いることができる。この場合、スチールとアルミニウムとを選別する処理は不要になる。また、本発明の缶用材料を構成するスチール缶やアルミニウム缶の大きさも適宜変更することができ、容量が350cc以下の小さな缶からドラム缶のような大きな缶まで使用が可能である。さらに、本発明で使用する加熱装置や造粒機は、前述したロータリーキルン20や造粒機40に限定するものでなく、同様の機能を備えた装置であれば、他の構造の装置であっても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る缶用材料処理システムを示した概略構成図である。
【図2】搬送装置を示した正面図である。
【図3】ロータリーキルンを示した正面図である。
【図4】造粒機を示した縦断面図である。
【図5】造粒機を示した横断面図である。
【図6】スクリーンを示した図であり、(a)は正面面、(b)は裏面図、(c)は(a)の6−6断面図である。
【図7】カッティングライナーを示した斜視図である。
【図8】カッティングライナーを示した図であり、(a)は正面面、(b)は側面図である。
【図9】波型スクリーンを示した図であり、(a)は正面面、(b)は側面図である。
【図10】逆流防止板を示した図であり、(a)は正面面、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0054】
10…スチール缶、20…ロータリーキルン、40…造粒機、41…チャンバー、42…供給口、43a…衝撃用空間部、44…軸部、45…支持体、46…ピン、47…ハンマ、48…スクリーン部、49…スクリーン、51,51a…取出孔、52…カッティングライナー、53…波型スクリーン、55…逆流防止板、S…缶用材料処理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールまたはアルミニウムからなる缶用材料を造粒して所定の大きさのペレットに成形する造粒機であって、
前記缶用材料を供給するための供給口と、所定の大きさに成形された前記ペレットを通過させて取り出すための取出孔とが設けられたチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記缶用材料に衝撃を加えることによって前記ペレットを成形するハンマを備えた回転体と、
前記チャンバー内に前記回転体の外周部に対向して配置され、前記回転体の外周部との対向面が、前記ハンマの先端部の回転軌道から所定間隔を保ち、かつ前記回転軌道に沿った曲面に形成されたスクリーン部とを備え、
前記取出孔が前記スクリーン部に所定間隔を保って複数個設けられていることを特徴とする造粒機。
【請求項2】
前記スクリーン部を前記チャンバー内の下部側部分に設け、前記回転体の回転方向における上流側に位置する取出孔の開口の大きさを、前記回転体の回転方向における下流側に位置する取出孔の開口の大きさよりも小さくした請求項1に記載の造粒機。
【請求項3】
前記スクリーン部を前記チャンバー内の下部側部分に設けるとともに、前記回転体の回転方向における前記スクリーン部よりも下流側部分に、前記缶用材料が飛び跳ねることのできる衝撃用空間部を形成した請求項1または2に記載の造粒機。
【請求項4】
前記チャンバー内における前記供給口の近傍で、前記回転体の回転方向における前記衝撃用空間部よりも下流側の部分に、前記供給口に供給された前記缶用材料が逆流することを防止するための逆流防止部を設けた請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の造粒機。
【請求項5】
前記チャンバー内における前記供給口の近傍で、かつ前記回転体の回転方向における前記スクリーン部よりも上流側における前記回転体の外周部に対向する部分に、前記缶用材料を切断または破砕するためのカッティング部を設けた請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の造粒機。
【請求項6】
前記チャンバー内に、前記回転体の外周部に対向して配置され、前記回転体の外周部との対向面が、前記回転体の回転方向に沿った波状に形成された波形スクリーン部を設けた請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の造粒機。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載の造粒機を備えた缶用材料処理システムであって、
前記造粒機で造粒される前の缶用材料を加熱処理するための加熱装置を含む缶用材料処理システム。
【請求項8】
前記加熱装置を、回転式のロータリーキルンで構成した請求項7に記載の缶用材料処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−326479(P2006−326479A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153095(P2005−153095)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(595117301)
【出願人】(501395649)株式会社アールニッセイ (5)
【Fターム(参考)】