説明

連結構造

【課題】一本の部材の各側面に他の部材を取り付けるために用い、曲げモーメントに対する強度に優れ、また部材のめり込みを防止でき、しかも汎用性にも優れた連結構造を提供する。
【解決手段】幹部材41と枝部材51の連結構造を、金具10、11と中心体21とネジ軸棒30、31などで実現する。金具10、11は、幹部材41と枝部材51の境界に挟み込み、中心体21は、雌ネジ22と抜け孔23を有する棒状で、ネジ軸棒30、31は、側面に凸条32が突出する。幹部材41の側面には、交差する一方孔43と他方孔46を加工して、一方孔43の中央に中心体21を差し込み、これを取り囲む一方孔43と他方孔46にネジ軸棒30、31をねじ込む。そして中心体21に螺合する中ボルト25や、抜け孔23を貫通する長ボルト38で金具10、11を幹部材41に取り付け、金具10、11を介して幹部材41と枝部材51を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築において、一本の部材の各側面に他の部材を取り付けた十字状の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、一本の柱の各側面に梁の端面を取り付けた十字状の連結構造は、様々な箇所で使用されている。このような連結構造で、梁を柱に取り付ける方法は様々だが、その一例を図8に示す。この図では、金具を介して個々の梁を柱に取り付けており、四個の金具は同一形状で、対向する一対の金具をボルトとナットで柱に引き寄せている。また金具の前面板には、位置決めのため、上下に並ぶ二個のホゾを設けてあり、さらにホゾの中心には、ボルトを差し込むための前孔を設けてある。なおホゾやボルトを差し込むため、柱にはホゾ穴や下孔を加工してある。
【0003】
図8は、四本の梁を同じ高さに据え付けることを想定しており、四個の金具は、同じ高さに配置する必要がある。しかし単純に金具を同じ高さに配置すると、直交する二本のボルトが柱の内部で干渉してしまい、金具を取り付けることができない。そこで図の金具は、ホゾを上端寄りに偏って配置してあり、上下反転させるとホゾの高さが変わる構造となっている。図のように、対向する二対の金具のうち、一対だけを上下反転させると、直交する二本のボルトが段違いになり、干渉を防止できる。
【0004】
本願と関連のある先行技術の例として、以下の特許文献が挙げられる。特許文献1では、複数の木材の接合構造が開示されており、一の木材の側面に他の木材を十字状に接合している。一の木材には、板状とT字状の接合金物を組み込み、接合金物の板状部を十字状に突出させる。そして、突出する板状部を他の木材に差し込み、双方をボルトなどで一体化すると、一の木材と他の木材が接合される。この接合構造は、一本の木材にあらかじめ接合金物を組み込んでおくことで、現場作業を迅速化できるなどの特徴を有する。
【0005】
特許文献2では、柱の側面に梁を取り付けるための柱梁取付金物が開示されており、柱の内部に十字状の柱側金物を埋め込み、また梁の端部に梁側金物を埋め込み、両金物をボルトで一体化している。柱側金物は、柱の両側面を貫通する主円筒金物と、主円筒金物の側面中央から突出する副円筒金物と、で構成され、主円筒金物と副円筒金物のそれぞれの端面にボルトを差し込み、梁側金物を引き寄せている。この柱梁取付金物は、梁に作用する引張荷重のほか圧縮荷重に対する強度も優れており、梁が柱にめり込むことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−227071号公報
【特許文献2】特開平11−229494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一本の柱の側面に四本の梁を十字状に連結する場合、通常は本願の図8のような方法で十分で、四個の金具を同一形状とすることで、量産によるコストダウンなどの効果を期待できる。しかし、梁に作用する曲げモーメントが大きい場合、図の金具では不利な点がある。図の金具は、上下反転させて使用することを想定しており、ボルトを差し込む前孔の配置に制約がある。そのため、前孔の間隔を極限まで広くすることができず、曲げモーメントに対する踏ん張りが効きにくく、大きな曲げモーメントに対して強度が不足する恐れがある。特に、図中の上下反転させた金具は、前面板の上端からボルトまでの距離が長く、条件が一段と厳しくなる。
【0008】
特許文献1や特許文献2で開示されている技術は、本願の図8とは構造が異なるため、曲げモーメントに対する強度に問題はない。しかし特許文献1では、四方向に延びる梁(他の木材)のうち、対向する二本が柱(一の木材)の側面と面接触しており、梁が柱にめり込む恐れがある。さらに強度を確保するには、多数の固定金物を木材に打ち込む必要があり、作業量が増大する。また、特許文献2で開示されている柱側金物は、梁のめり込みを防止するため、柱の横断面に応じた形状とする必要があり、汎用性に乏しい。しかも副円筒金物の周辺で螺合箇所が多く、経年によって緩みが生じる恐れがある。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、一本の部材の各側面に他の部材を取り付けるために用い、曲げモーメントに対する強度に優れ、また部材のめり込みを防止でき、しかも汎用性にも優れた連結構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、幹部材の各側面に枝部材を連結するためのもので、前記幹部材の側面に接触する前面板と、前記枝部材の端部に設けたスリットに差し込む側面板と、からなる金具を用い、前記枝部材と前記側面板は、双方を貫通する係止具で一体化してあり、また、両端面に雌ネジを有し且つ側面に抜け孔を有する棒状の中心体と、側面に螺旋状の凸条を有し且つ両端面を貫通する貫通孔を有するネジ軸棒と、を用い、前記幹部材の同一横断面上には、側面を貫通して十字状に交差する一方孔と他方孔を設け、該交差する一方孔と他方孔は、前記幹部材の長手方向に間隔をあけて複数設けてあり、前記中心体は、前記一方孔に差し込み、該中心体の抜け孔は、交差する前記他方孔とほぼ同心に揃い、前記ネジ軸棒は、前記一方孔と前記他方孔の両端面にねじ込んであり、前記金具は、前記幹部材の各側面に対向配置し且つ前記幹部材の長手方向に沿って並ぶ前記ネジ軸棒の端面と接しており、前記一方孔を挟んで対向する前記金具は、前記貫通孔を経て前記中心体の雌ネジと螺合する中ボルトで固定してあり、また、前記他方孔を挟んで対向する前記金具は、前記貫通孔と前記抜け孔を経て前記金具同士を結ぶ長ボルトとこれに螺合するナットで固定してあることを特徴とする連結構造である。
【0011】
本発明は、木造建築において、一本の柱の各側面に梁の端面を取り付けた十字状の連結構造に関するものだが、柱と梁との連結以外にも使用でき、汎用性を確保するため、柱を幹部材と称して、梁を枝部材と称するものとする。幹部材と枝部材は、いずれも集成材を含む木製で矩形断面であることを前提とするが、幹部材と枝部材の幅が一致している必要はなく、幹部材が幅広で、枝部材が幅狭であっても構わない。さらに幹部材の一側面には、一本ではなく複数本の枝部材を取り付ける場合もある。
【0012】
金具は、幹部材と枝部材との間に介在して双方を一体化するためのもので、幹部材の側面に接触する前面板と、この前面板から直角に突出して枝部材に差し込む側面板と、からなり、従来から普及している物と同様の形状である。側面板を差し込むため、枝部材の端部には、長手方向に延びるスリットをあらかじめ加工しておく。なお一本の枝部材に対して一個の金具を使用するため、本発明では複数の金具を使用することになるが、原則として、全ての金具は同一形状とする。
【0013】
幹部材の側面に接触した金具は、ボルトやナットで固定する。そのため金具の前面板には、ボルトの軸部を差し込むための孔を設けておく。また金具を枝部材に取り付ける際は、側面板を枝部材のスリットに差し込み、次に枝部材の側面から側面板に向けて棒状の係止具を打ち込む。係止具は、抜け落ちがなければドリフトピンやボルトなどを自在に選択できる。なお係止具を打ち込むため、枝部材と側面板の両方には、あらかじめ孔を設けておく。
【0014】
一方孔と他方孔は、金具を固定するボルトを差し込むための孔で、幹部材の側面を貫通している。本発明では、幹部材の各側面に枝部材を取り付けるため、幹部材の側面に二方向の孔を設ける必要があり、それらを識別するため、直交する一方を一方孔と称して、他方を他方孔と称するものとする。一方孔と他方孔は、幹部材の同一横断面に設けてあり、幹部材の内部で連通している。なお同一横断面の一方孔と他方孔は、それぞれ一列で単純な十字状とすることが多いが、複数列とする場合もある。
【0015】
中心体は、一方孔の中に差し込む金属製の棒状のもので、一方孔に無理なく差し込み可能な大きさとする。中心体の両端面には、雌ネジを設けてあり、金具を固定するボルトを螺合することができる。さらに中心体の側面には、反対側に貫通する抜け孔を設けてある。抜け孔は、他方孔に差し込むボルトを通過させるためのもので、中心体を一方孔に差し込む際、抜け孔と他方孔をほぼ同心に揃える。なお抜け孔にボルトを差し込むと、中心体は移動不能になる。
【0016】
ネジ軸棒は、一方孔や他方孔にねじ込む金属製の円柱状のもので、側面には螺旋状に延びる凸条が突出しており、汎用のラグスクリューと同様の形状である。凸条が一方孔や他方孔の内周に食い込むことで、ネジ軸棒が幹部材と強固に一体化して、ネジ軸棒に作用するあらゆる荷重を分散して幹部材に伝達でき、荷重や経年による幹部材のヒビ割れを防止できる。中心体を所定の位置に差し込んだ後、これを取り囲む一方孔と他方孔の全ての端面からネジ軸棒をねじ込んでいく。なおネジ軸棒には、内部にボルトを通過させるため、両端面の中心を貫く貫通孔を設ける。
【0017】
同一横断面で交差する一方孔と他方孔は、幹部材の長手方向に間隔をあけて二組以上設けて、それぞれに中心体とネジ軸棒を埋め込む。そして、幹部材の同一側面に並ぶ一方孔を塞ぐように金具を対向配置した後、金具側からボルト(中ボルト)を差し込み、ネジ軸棒の貫通孔を経て中心体の雌ネジに螺合させて締め上げると、一方孔に面する金具が固定される。
【0018】
同様に、幹部材の同一側面に並ぶ他方孔を塞ぐように金具を対向配置した後、一方の金具からボルト(長ボルト)を差し込み、その先端を手前側のネジ軸棒の貫通孔から中心体の抜け孔を経て、さらに奥側のネジ軸棒の貫通孔から対向する金具の前面板に到達させる。そしてボルトの先端にナットを螺合して締め上げると、他方孔に面する金具が固定される。
【0019】
一方孔や他方孔に埋め込んだ中心体やネジ軸棒にボルトを差し込み、金具を幹部材の各側面に固定した後、枝部材を金具に差し込み、双方を貫通する係止具を打ち込むと、金具を介して幹部材と枝部材が連結される。この発明は、中心体を用いることで直交するボルトを同一横断面に配置可能で、全ての金具について、前面板の両端付近にボルトを差し込むことができる。そのため金具は、枝部材に作用する曲げモーメントに対して踏ん張りが効きやすく、強度面で優れている。さらに、ネジ軸棒の一端面と幹部材の側面との段差をなくすことで、金具とネジ軸棒が面接触して、枝部材が幹部材にめり込むことを防止できる。
【0020】
請求項2記載の発明は、幹部材の各側面に枝部材を連結するためのもので、前記幹部材の側面に接触する前面板と、前記枝部材の端部に設けたスリットに差し込む側面板と、からなる金具を用い、前記枝部材と前記側面板は、双方を貫通する係止具で一体化してあり、また、両端面に雌ネジを有し且つ側面に抜け孔を有する棒状の中心体と、側面に螺旋状の凸条を有し且つ両端面を貫通する貫通孔を有するネジ軸棒と、側面に螺旋状の凸条を有し且つ両端面に雌ネジを有するネジ軸棒と、を用い、前記幹部材の同一横断面上には、側面を貫通して十字状に交差する一方孔と他方孔を設け、該交差する一方孔と他方孔は、前記幹部材の長手方向に間隔をあけて複数設けてあり、前記中心体は、前記一方孔に差し込み、該中心体の抜け孔は、交差する前記他方孔とほぼ同心に揃い、前記貫通孔を有するネジ軸棒は、前記一方孔の両端面と前記他方孔の一方の端面にねじ込んであり、前記雌ネジを有するネジ軸棒は、前記他方孔の残る一方の端面にねじ込んであり、前記金具は、前記幹部材の各側面に対向配置し且つ前記幹部材の長手方向に沿って並ぶ前記ネジ軸棒の端面と接しており、前記一方孔を挟んで対向する前記金具は、前記貫通孔を経て前記中心体の雌ネジと螺合する中ボルトで固定してあり、また、前記他方孔を挟んで対向する前記金具は、前記貫通孔と前記抜け孔を経て前記ネジ軸棒の雌ネジと螺合する長ボルトおよび反対側から差し込み前記ネジ軸棒の雌ネジと螺合する短ボルトで固定してあることを特徴とする連結構造である。
【0021】
請求項2記載の発明は、基本的に請求項1記載の発明と同じだが、他方孔の両端にねじ込むネジ軸棒のうち、一端側に限り、請求項1記載の発明とは異なるものを用いている。この異なるネジ軸棒は、両端を貫通する貫通孔がなく、両端に雌ネジを設けてあり、ボルトを螺合することができる。そして、他方孔を挟んで対向配置した金具のうち一方は、貫通孔と抜け孔を経てネジ軸棒の雌ネジと螺合する長ボルトで固定され、残る一方の金具は、隣接するネジ軸棒の雌ネジと螺合する短ボルトで固定される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1および2記載の発明のように、柱などの幹部材の各側面に枝部材を取り付ける連結構造において、幹部材の側面に一方孔と他方孔を加工して、そこに中心体とネジ軸棒を埋め込むことで、金具を固定するボルトは、直交する二方向とも、幹部材の同一横断面に揃えることができる。そのため全ての金具について、前面板の両端付近にボルトを差し込み可能で、踏ん張りが効く状態で幹部材に固定でき、枝部材に作用する曲げモーメントに対する強度が向上する。
【0023】
また、ネジ軸棒の一端面を金具と接触させることで、幹部材と枝部材に圧縮荷重が作用した場合でも、その荷重は金具からネジ軸棒に伝達され、さらにネジ軸棒の凸条全体を介して幹部材に分散していく。そのため、圧縮荷重で枝部材が幹部材にめり込むことを防止できる。これとは逆に、幹部材と枝部材に引張荷重が作用した場合も、その荷重はボルトからネジ軸棒に伝達され、同様に幹部材に分散していく。このように本発明は、幹部材と枝部材との境界付近の応力を緩和でき、経年変形が抑制される。
【0024】
そのほか、幹部材の中で隣接する中心体とネジ軸棒は、密着させる必要がなく隙間があっても構わない。そのため、幹部材の横断面形状に応じてこれらを都度製造する必要はなく、汎用性に優れており、コストダウンも実現する。ただし各ボルトについては、ねじ込みに支障がないよう、適した長さの物を使用する。また金具についても、全てを同一形状とすることができ、量産によるコストダウンを期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による連結構造の具体例を示す斜視図である。
【図2】図1の幹部材に中心体とネジ軸棒を埋め込んだ状態の斜視図である。
【図3】図1の幹部材に枝部材を取り付けている状態の斜視図である。
【図4】図3のA−A線およびB−B線の断面図である。ただし四本の枝部材を金具に取り付けた状態で描いてある。
【図5】請求項2記載の発明の具体例を示す斜視図で、図1の連結構造を一部変更したものである。
【図6】幹部材の横断面を細長の矩形状として、その幅広の側面に二本の枝部材を取り付ける連結構成の斜視図である。
【図7】図6の幹部材に枝部材を取り付けた状態の斜視図である。
【図8】木造建築において、一本の柱の各側面に梁の端面を取り付ける十字状の連結構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による連結構造の具体例を示しており、柱の各側面に梁の端面を取り付けており、柱を中心として梁が十字状に配置される。本発明は、柱と梁との連結以外にも汎用的に使用できるため、柱を幹部材41と称して、梁を枝部材51と称している。幹部材41は、地盤などに据え付けられた強固な部材で、対する枝部材51は、幹部材41によって架空に支持される。なお幹部材41と枝部材51のいずれとも、集成材を含む木製であることを前提とする。また図の幹部材41は正方形断面だが、その各側面に取り付ける枝部材51は、縦長の矩形断面である。四本の枝部材51は、横断面形状が同一で、さらに取り付け高さも同一である。
【0027】
個々の枝部材51は、金具10、11を介して幹部材41に取り付ける。金具10、11は、鋼板を成形したもので、四個とも同一形状で、幹部材41の側面に接触する前面板12と、前面板12の両側端から直角に突出する二枚の側面板13と、で構成され、枝部材51の端部には、側面板13を差し込むため、長手方向に延びる二列のスリット53を加工してある。側面板13を枝部材51に差し込んだ後、双方を貫通する棒状の係止具を打ち込むと、枝部材51は金具10、11と一体化する。
【0028】
係止具は、棒状であればよく、ボルトなども使用可能だが、図ではドリフトピン57を使用している。ドリフトピン57を差し込むため、枝部材51の側面には、反対面に貫通する横孔54を上下に三列加工してあり、また側面板13には、二枚とも同心で側溝16と側孔17を設けてある。施工時は、あらかじめ一番上の横孔54にのみドリフトピン57を打ち込み、これを枝部材51の仮置きに利用する。なお枝部材51端面の中央には、金具10、11の前面板12などを収容するため、段差部55を加工してある。
【0029】
金具10、11を幹部材41の側面に取り付けるため、幹部材41の内部には、中心体21とネジ軸棒30、31を埋め込む。そのため幹部材41の側面には、同一横断面で一組となる一方孔43と他方孔46を加工する。一方孔43は、幹部材41の一側面から反対面に貫通しており、他方孔46は、一方孔43に隣接する側面から反対面に貫通しており、両孔は、幹部材41の内部で直角に交差して連通している。さらに本発明では、金具10、11を取り付けるため、幹部材41の長手方向に一定の距離を隔てて、複数組の一方孔43と他方孔46を加工する。なお両孔の内径は同じで、またいずれとも幹部材41の側面中心に位置している。
【0030】
中心体21は、一方孔43に差し込む円柱状の金属棒で、その両端面の中心には、軸方向に延びる雌ネジ22を設けてあり、さらに側面には、反対側に貫通する抜け孔23を設けてある。なお中心体21の外径は、一方孔43の内径よりもわずかに小さい。そのため、無理なく一方孔43に差し込むことができる。そして中心体21を一方孔43に差し込む際は、他方孔46との交差部付近に到達させて、抜け孔23と他方孔46をほぼ同心に揃える。
【0031】
ネジ軸棒30、31は、円柱状の金属棒で、その側面には螺旋状に延びる凸条32が突出しており、汎用のコーチスクリューと同様の外観である。ただしネジ軸棒30、31は、全体を幹部材41に埋め込むため、頭部がなく、その代用として一端に六角部33を設けてあり、無理なく工具を掛けることができる。さらにネジ軸棒30、31の中心には、両端面を貫く貫通孔34を設けてある。またネジ軸棒30、31の外径(凸条32を除く)は、一方孔43や他方孔46の内径とほぼ等しく、凸条32だけが幹部材41に食い込んでいき、ネジ軸棒30、31は幹部材41と強固に一体化する。なお図のネジ軸棒30、31は、全て同一形状である。
【0032】
中心体21を一方孔43に差し込んだ後、中心体21から四方向に延びる一方孔43と他方孔46の全てにネジ軸棒30、31をねじ込んでいく。ネジ軸棒30、31は、六角部33を後方に向けて一方孔43や他方孔46の端部に接触させた後、六角部33に工具を掛けてねじ込んでいく。ねじ込みは、ネジ軸棒30、31の後端面と幹部材41の側面が段差なく揃うまで続ける。ねじ込みが終わると、一方孔43側のネジ軸棒30は、中心体21の端面と対向しており、また他方孔46側のネジ軸棒31は、中心体21の抜け孔23と対向する。
【0033】
一方孔43と他方孔46は、上下に二組加工してあり、それぞれに一個の中心体21を差し込み、これを取り囲むように四個のネジ軸棒30、31をねじ込む。このように中心体21とネジ軸棒30、31を埋め込むと、幹部材41の一側面には、上下に二個のネジ軸棒30、31が並び、これを利用して金具10、11を取り付ける。金具10、11の前面板12には、ネジ軸棒30、31と同心になる上下二個の前孔15を設けてあり、前孔15と貫通孔34を同心に揃えると、ボルトを差し込むことができる。
【0034】
他方孔46を挟んで対向する二個の金具11は、長ボルト38とナット39で幹部材41に取り付ける。対向する二個の金具11を幹部材41の側面に接触させて、前孔15と貫通孔34を上下とも同心に揃えた後、図の左下側の金具11に長ボルト38を差し込む。そして長ボルト38の先端を幹部材41の反対側に突出させて、これにナット39を螺合して締め上げると、二個の金具11が幹部材41の側面に取り付けられる。なお長ボルト38は、ネジ軸棒31の貫通孔34二箇所のほか、中心体21の抜け孔23を貫通している。そのため長ボルト38を差し込むと、中心体21は移動できなくなる。
【0035】
他方孔46を挟んで対向する金具11を取り付けた後、一方孔43を挟んで対向する二個の金具10を中ボルト25で取り付ける。中ボルト25は、個々の金具10の前孔15から差し込み、貫通孔34を経て中心体21の雌ネジ22に螺合する。なお中心体21は、長ボルト38で固定されており、中ボルト25を締め上げても、移動することはない。また、対向する中ボルト25を均等に締め上げることで、長ボルト38を屈曲させることもない。
【0036】
図2は、図1の幹部材41に中心体21とネジ軸棒30、31を埋め込んだ状態である。幹部材41の側面を貫通する一方孔43と他方孔46は、上下に二組加工してあり、上下とも、一方孔43と他方孔46との交差部に中心体21が差し込まれており、その四方を取り囲むようにネジ軸棒30、31がねじ込まれている。なお各ネジ軸30、31の六角部33側の端面は、幹部材41の側面と段差なく並んでいる。
【0037】
一方孔43を挟んで対向する一対の金具10は、中心体21の雌ネジ22に螺合する中ボルト25で取り付けられ、また他方孔46を挟んで対向する一対の金具11は、中心体21の抜け孔23を貫通する長ボルト38とこれに螺合するナット39で取り付けられる。四個の金具10、11を幹部材41に取り付けた後、吊り上げた枝部材51を下降させていき、側面板13をスリット53に差し込み、さらに横孔54から側孔17に向けてドリフトピン57を打ち込むと、枝部材51が金具10、11に固定される。
【0038】
図3は、図1の幹部材41に枝部材51を取り付けている状態である。枝部材51の側面には、上下に三列の横孔54を加工してあるが、その一番上にはあらかじめドリフトピン57を打ち込んである。したがって吊り上げた枝部材51を下降させていくと、そのドリフトピン57が金具10、11の側溝16で受け止められ、枝部材51は、金具10、11に仮置きされた状態になり、その後、無理なく残りの横孔54にドリフトピン57を打ち込むことができる。なおこの図では、四個の金具10、11の高さが等しく、四本の枝部材51も同じ高さに位置する。また枝部材51は、幹部材41よりも幅が狭くなっているが、当然ながら双方を同じ幅にしても構わない。
【0039】
図4は、図3のA−A線およびB−B線の断面図である。ただし四本の枝部材51を金具10、11に取り付けた状態で描いてある。A−A断面は、一方孔43の中心に沿った切断面で、幹部材41の真ん中に中心体21が位置しており、その両側にネジ軸棒30がねじ込まれている。また金具10を取り付けている中ボルト25は、二枚の側面板13の間から差し込まれており、その軸部は前孔15から貫通孔34を経て中心体21の雌ネジ22に螺合している。さらに中心体21の抜け孔23には、紙面を貫通するように長ボルト38が差し込まれている。なお中ボルト25の頭部は、枝部材51の段差部55に収容されている。
【0040】
B−B断面は、他方孔46の中心に沿った切断面で、中心体21は円断面で、その両側にネジ軸棒31がねじ込まれている。また金具11を取り付けている長ボルト38は、左側から差し込まれており、その先端にナット39を螺合してある。長ボルト38とナット39を締め上げると、対向する二個の金具11が幹部材41に取り付けられる。なお長ボルト38の頭部やナット39は、枝部材51の段差部55に収容されている。
【0041】
両断面とも、金具10、11を取り付けている中ボルト25や長ボルト38は、前面板12の上下両端の近傍に差し込まれている。そのため全ての金具10、11は、枝部材51に作用する曲げモーメントに対して踏ん張りが効きやすく、強度面で優れている。またネジ軸棒30、31は、凸条32によって幹部材41と強固に一体化しており、あえて中心体21と接触させる必要がなく、中心体21とネジ軸棒30、31は、一方孔43側と他方孔46側のいずれとも非接触で隙間がある。このように、中心体21やネジ軸棒30、31の長さは、幹部材41の横断面形状に追従させる必要がなく、汎用性が高い。
【0042】
ネジ軸棒30、31の端面は、いずれとも金具10、11の前面板12と接触している。そのため幹部材41と枝部材51との間に作用する圧縮荷重は、幹部材41の側面ではなく、ネジ軸棒30、31で受け止められ、枝部材51が幹部材41にめり込むことを防止できる。さらにネジ軸棒30、31で受け止められた圧縮荷重は、凸条32全域を介して幹部材41に分散していく。これとは逆に、幹部材41と枝部材51との間に作用する引張荷重は、中ボルト25と中心体21、または長ボルト38とナット39を介して、対向する側の金具10、11に伝達して、次にこの金具10、11と接触するネジ軸棒30、31の凸条32全域を介して幹部材41に分散していく。これらの作用により、幹部材41の応力集中を緩和できる。
【0043】
金具10、11を取り付けるボルト類は、この図のように上下二列に限定されるものではなく、連結構造の規模に応じて三列以上とすることもある。そのほか中心体21の抜け孔23は、長ボルト38を差し込む際の利便性を考慮して、強度上の問題がない範囲で大径化または長孔化することもできる。
【0044】
図5は、請求項2記載の発明の具体例で、図1の連結構造を一部変更したものである。この図において、幹部材41の各側面に同一形状の金具10、11を取り付ける点や、上下に一方孔43と他方孔46を加工して、一方孔43に中心体21を差し込み、さらに一方孔43の両側にネジ軸棒30をねじ込む点は、図1と全く同じである。また他方孔46についても、その一端側(図の左下側)にねじ込むネジ軸棒31は、図1と同じである。ただし、他方孔46の残る一方にねじ込むネジ軸棒36(図の右上側)は、図1と異なる。このネジ軸棒36は、貫通孔34の代替として両端を貫通する雌ネジ35を設けてあり、ボルトを螺合できる。
【0045】
図の左下の金具11は、長ボルト38で取り付ける。ただし長ボルト38は、抜け孔23を通過した先で、ネジ軸棒36の雌ネジ35に螺合させる。また図の右上の金具11は、短ボルト37で取り付ける。短ボルト37は、長ボルト38と同様、ネジ軸棒36の雌ネジ35に螺合させる。このように雌ネジ35を設けたネジ軸棒36を使用することで、長ボルト38の全長を抑制できる。これによって、長ボルト38の弾性変形量が小さくなる。
【0046】
図6は、幹部材41の横断面を細長の矩形状として、その幅広の側面に二本の枝部材51を取り付ける連結構成を示している。本発明は、幹部材41の一側面に二本以上の枝部材51を同じ高さで取り付けることもでき、図では、幹部材41の幅広の側面に横二列の他方孔46を加工してある。そのため一本の一方孔43は、二箇所で他方孔46と交差しており、これに対応して中心体28は、二列の他方孔46を跨ぐ長さで、抜け孔23を二箇所に設けてある。なお、一方孔43を挟んで対向する二個の金具10は、中ボルト25で取り付け、他方孔46を挟んで対向する四個の金具11は、長ボルト38とナット39で取り付ける。
【0047】
図7は、図6の幹部材41に枝部材51を取り付けた状態である。一本の幹部材41の側面には、六本の枝部材51が取り付けられている。一個の中心体28は、六個のネジ軸棒30、31で取り囲まれ、また個々の金具10、11は、ネジ軸棒30、31と接触しており、枝部材51が幹部材41にめり込むことはない。なお中心体28は、一方孔43や他方孔46の配置に応じた形状とする必要がある。
【符号の説明】
【0048】
10 金具(一方孔に面するもの)
11 金具(他方孔に面するもの)
12 前面板
13 側面板
15 前孔
16 側溝
17 側孔
21 中心体
22 雌ネジ(中心体の両端面)
23 抜け孔
25 中ボルト
28 中心体(長尺・二箇所の抜け孔)
30 ネジ軸棒(一方孔にねじ込むもの、内部に貫通孔)
31 ネジ軸棒(他方孔にねじ込むもの、内部に貫通孔)
32 凸条
33 六角部
34 貫通孔
35 雌ネジ(ネジ軸棒の中)
36 ネジ軸棒(他方孔にねじ込むもの、内部に雌ネジ)
37 短ボルト
38 長ボルト
39 ナット
41 幹部材(柱)
43 一方孔
46 他方孔
51 枝部材(梁)
53 スリット
54 横孔
55 段差部
57 ドリフトピン(係止具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹部材(41)の各側面に枝部材(51)を連結するためのもので、
前記幹部材(41)の側面に接触する前面板(12)と、前記枝部材(51)の端部に設けたスリット(53)に差し込む側面板(13)と、からなる金具(10、11)を用い、前記枝部材(51)と前記側面板(12)は、双方を貫通する係止具(57)で一体化してあり、
また、両端面に雌ネジ(22)を有し且つ側面に抜け孔(23)を有する棒状の中心体(21、28)と、側面に螺旋状の凸条(32)を有し且つ両端面を貫通する貫通孔(34)を有するネジ軸棒(30、31)と、を用い、
前記幹部材(41)の同一横断面上には、側面を貫通して十字状に交差する一方孔(43)と他方孔(46)を設け、該交差する一方孔(43)と他方孔(46)は、前記幹部材(41)の長手方向に間隔をあけて複数設けてあり、
前記中心体(21、28)は、前記一方孔(43)に差し込み、該中心体(21、28)の抜け孔(23)は、交差する前記他方孔(46)とほぼ同心に揃い、
前記ネジ軸棒(30、31)は、前記一方孔(43)と前記他方孔(46)の両端面にねじ込んであり、
前記金具(10、11)は、前記幹部材(41)の各側面に対向配置し且つ前記幹部材(41)の長手方向に沿って並ぶ前記ネジ軸棒(30、31)の端面と接しており、前記一方孔(43)を挟んで対向する前記金具(10)は、前記貫通孔(34)を経て前記中心体(21、28)の雌ネジ(22)と螺合する中ボルト(25)で固定してあり、また、前記他方孔(46)を挟んで対向する前記金具(11)は、前記貫通孔(34)と前記抜け孔(23)を経て前記金具(11)同士を結ぶ長ボルト(38)とこれに螺合するナット(39)で固定してあることを特徴とする連結構造。
【請求項2】
幹部材(41)の各側面に枝部材(51)を連結するためのもので、
前記幹部材(41)の側面に接触する前面板(12)と、前記枝部材(51)の端部に設けたスリット(53)に差し込む側面板(13)と、からなる金具(10、11)を用い、前記枝部材(51)と前記側面板(12)は、双方を貫通する係止具(57)で一体化してあり、
また、両端面に雌ネジ(22)を有し且つ側面に抜け孔(23)を有する棒状の中心体(21、28)と、側面に螺旋状の凸条(32)を有し且つ両端面を貫通する貫通孔(34)を有するネジ軸棒(30、31)と、側面に螺旋状の凸条(32)を有し且つ両端面に雌ネジ(35)を有するネジ軸棒(36)と、を用い、
前記幹部材(41)の同一横断面上には、側面を貫通して十字状に交差する一方孔(43)と他方孔(46)を設け、該交差する一方孔(43)と他方孔(46)は、前記幹部材(41)の長手方向に間隔をあけて複数設けてあり、
前記中心体(21、28)は、前記一方孔(43)に差し込み、該中心体(21、28)の抜け孔(23)は、交差する前記他方孔(46)とほぼ同心に揃い、
前記貫通孔(34)を有するネジ軸棒(30、31)は、前記一方孔(43)の両端面と前記他方孔(46)の一方の端面にねじ込んであり、
前記雌ネジ(35)を有するネジ軸棒(36)は、前記他方孔(46)の残る一方の端面にねじ込んであり、
前記金具(10、11)は、前記幹部材(41)の各側面に対向配置し且つ前記幹部材(41)の長手方向に沿って並ぶ前記ネジ軸棒(30、31、36)の端面と接しており、前記一方孔(43)を挟んで対向する前記金具(10)は、前記貫通孔(34)を経て前記中心体(21、28)の雌ネジ(22)と螺合する中ボルト(25)で固定してあり、また、前記他方孔(46)を挟んで対向する前記金具(11)は、前記貫通孔(34)と前記抜け孔(23)を経て前記ネジ軸棒(36)の雌ネジ(35)と螺合する長ボルト(38)および反対側から差し込み前記ネジ軸棒(36)の雌ネジ(35)と螺合する短ボルト(37)で固定してあることを特徴とする連結構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96197(P2013−96197A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242763(P2011−242763)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】