説明

連続処理ラインの速度制御方法及び装置

【課題】速度の制約や、設備上、操業上の制約が被処理材ごとに異なる場合でも、連続処理ラインの能率最大化を達成する速度制御方法を提供する。
【解決手段】帯状の被処理材の連続処理ラインにおいて、貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデル62と、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件64と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備の被処理材の速度を含み構成される評価関数66と、からなる最適化問題60を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数66に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出S10し、該指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作S20する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続処理ラインの速度制御方法及び装置に係り、例えば、鋼板の冷間圧延ライン、酸洗ライン、連続焼鈍ライン、鍍金ライン、コーティングライン、あるいは印刷ラインのように、処理設備の入側及び出側のうち、少なくとも一方に処理の対象となる材料を貯留する設備を有する連続処理ラインにおいて、ライン内の材料の速度を制御する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板製造においては、酸洗ライン、冷間圧延ライン、連続焼鈍ライン、鍍金ライン、コーティングラインのように、薄鋼板を連続して処理するラインが多数存在する。図1に示される如く、このような薄鋼板などの被処理材2を連続して処理する連続処理ラインは、例えば、入側セクション10、中央セクション20及び出側セクション30の3つのセクションと、入側セクション10と中央セクションとの間の上流側に配置された入側ルーパ40と、中央セクション20と出側セクション30との間の下流側に配置された出側ルーパ50とから構成されている。
【0003】
入側セクション10は、薄鋼板などの被処理材2をコイル状に巻き付けたペイオフリール12と、溶接機14と、入側セクション10における被処理材2の速度(以下、入側速度)を決めるブライドルロール16とを有しており、この入側セクション10では、ペイオフリール12上に巻き付けられた被処理材2を巻き出し、その先端と先行する被処理材2の尾端を溶接機14で溶接を行い、一つの長い帯状の鋼帯とする作業が行われる。
【0004】
中央セクション20は、被処理材2を処理する処理装置24と、中央セクション20における被処理材2の速度(以下、中央速度と称する)を決めるブライドルロール22、26とを有しており、この中央セクション20では、処理装置24において、被処理材2に対して熱処理、化学処理、圧延、鍍金処理などの処理が行われ、例えば、被処理材2である鋼板の表面の酸化物スケールを取り除くため、酸による化学処理が行われる。
【0005】
出側セクション30は、処理された被処理材2を所望の長さに切断する切断機34と、切断された被処理材2をコイル状に巻き取るテンションリール36と、出側セクション30における被処理材2の速度(以下、出側速度と称する)を決めるブライドルロール32とを有しており、この出側セクション30では、処理の終わった被処理材2を切断機34で切断し、テンションリール36上に再び巻き取る。
【0006】
入側ルーパ40及び出側ルーパ50は、図1の上下方向にスライドするロール42、52を有し、各セクション間の被処理材2の速度差を吸収する貯留設備である。
【0007】
入側速度を決めるブライドルロール16、中央速度を決めるブライドルロール22、26、及び、出側速度を決めるブライドルロール32は、モータ(図示せず)で駆動される。
【0008】
入側セクション10における溶接機14による被処理材2の溶接は、通例、被処理材2を停止した状態で行われるため、溶接の間は中央セクション20への被処理材2の供給が停止し、又、出側セクション30における切断機34による被処理材2の切断に関しては、被処理材2の分割などで被処理材2を停止、減速することがあり、中央セクション20における中央速度が影響を受ける。
【0009】
処理能率最大化の観点から、中央速度は、設備上、操業上の制約内で最大にするのが望ましく、入側セクション10や出側セクション30における溶接や切断などの作業による中央速度の低下は極力避けなければならない。又、製品品質確保のため、中央速度はあらかじめ設定した下限以上で操業を行う必要がある。
【0010】
入側ルーパ40及び出側ルーパ50は、このような場合に被処理材2を貯留するバッファとして設けられたものであり、ロール42、52を上下方向にスライドさせることで貯留長さを変えて各セクション間の被処理材2の速度差を吸収し、入側セクション10や出側セクション30における作業による被処理材2の速度変化によらず、中央セクション20への被処理材2の供給と払い出しを安定して行う。つまり、中央速度を定常状態に保つためのものである。
【0011】
入側ルーパ40や出側ルーパ50における被処理材の貯蔵可能量(ルーパの容量)が十分であれば、中央速度を常に定常状態における設定値に保つことができるが、被処理材2の長さが短く、入側セクション10や出側セクション30における作業による停止や減速が占める時間比率が大きい場合や、想定外のトラブルなどによって入側や出側における被処理材2である被圧延材の搬送が停止した場合などには、入側ルーパ40内の被圧延材量(以下、入側ループ量と称する)が減少して中央セクション20への供給ができなくなったり、出側ルーパ50内の被圧延材量(以下、出側ループ量と称する)が上限に達し、中央セクション20からの払い出しができなくなる。
【0012】
このような場合、中央速度が下限を切ることがないように、ラインの運転員は入側ループ量を見て中央速度を定常状態における設定値から減速し、作業が終了した後で加速するといった操作を行っていた。速度操作を安全側で行えば、中央セクション20で被処理材2が停止するようなリスクは避けやすいが、能率は低下する。即ち、連続処理ラインの速度制御は手動で行われていたため、ラインの能率は運転員の技能に左右され、設備能力を最大に発揮させることはできなかった。
【0013】
このような問題に対して、連続処理ラインの速度制御の自動化を目指していくつかの方法が提案されている。
【0014】
例えば、特許文献1では、入側セクションにおいて巻き出し中の被処理材の残り長さ、入側ループ量、入側速度、入側における作業による標準停止時間から求めた中央速度と、出側セクションにおける被処理材の分割までの長さ、出側ループ量、出側速度、出側における作業による標準停止時間から求めた中央速度を求め、それら二つの速度のうち小さい方に中央速度を設定する中央速度自動制御方法が開示されている。
【0015】
又、特許文献2では、中央速度を変数とし、計算パラメータの学習機能を有する操業シミュレーションにより入側及び出側ループ量の今後の推移を予測し、中央セクションにおいて被処理材が停止しないような中央セクションの最高速度を求め、これを目標として速度制御する中央速度制御方法が提案されている。
【0016】
【特許文献1】特開昭54−123528号公報
【特許文献2】特開平3−128121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、中央速度の設定値は、被処理材2の鋼種や寸法によって異なるため、先行する被処理材2(先行材)と後行する被処理材2(後行材)に対する中央速度の設定値が異なるときは溶接点が中央セクション20に入ったタイミングで中央速度の設定値が変化する。
【0018】
又、入側セクション10及び出側セクション30における作業も被処理材2ごとに異なることがある。例えば、出側セクション30では、表面品質検査のために被処理材2の長手方向の複数箇所で減速することがあるが、その減速パターンは被処理材2によって異なることがある。言い換えれば、各セクション10、20、30における被処理材2の速度制約は、長手方向で変化する。
【0019】
又、従来法における速度操作のためのいくつかのパラメータの設定は、例えば、中央セクション20で被処理材2が停止しない、入側セクション10あるいは出側セクション30で加速が開始されるタイミングでルーパ量が下限あるいは上限になる等の観点から中央速度の上限中央速度の減速開始点などのパラメータを設定するものであったため、時々刻々変化する速度制約やループ量に対応できなかった。
【0020】
特許文献1では、入側あるいは出側セクションにおける作業が完了して加速を開始するタイミングで入側ルーパ量が下限、出側ルーパ量が上限になるような中央速度を求めているが、その際に上記のような各セクションの速度制約の変化は考慮していないため、求めた中央速度設定値が不適切なものとなる恐れがある。
【0021】
又、特許文献2では、シミュレーションの中で速度制約を考慮することは可能であるが、中央速度がロット間は一定であることを前提としてシミュレーションを繰り返して中央の最高速度を求めているため、能率最大化の観点からは最適なものとなっていない可能性がある。
【0022】
本発明は、前記従来の問題点を解消すべくなされたもので、速度の制約や、設備上、操業上の制約が被処理材ごとに異なる場合でも、連続処理ラインの能率最大化を達成するための最適な速度操作を時々刻々行う速度制御技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、前記問題点を、被処理材ごとに異なる速度制約や、設備上、操業上の制約内で能率最大化を達成するための最適な速度操作量を時々刻々算出することにより解決した。最適な操作量を時々刻々算出する方法としては、入側セクションにおいて巻き出し中の被処理材の長さ、出側セクションにおいて巻き取り中の被処理材の長さ、および入側および出側ループ量の時間変化を表すモデルと、ループ量に関する制約条件と、入側速度、中央速度、出側速度に関する制約条件と、入側速度、中央速度、出側速度のうち少なくとも中央速度に関する評価関数とからなる最適化問題を一定時間ごと、あるいはあらかじめ定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度の時々刻々の指令値を算出するという新たな方法を着想した。
【0024】
具体的には、本発明は、入側から供給される帯状の被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、該処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備とを有する連続処理ラインにおいて、前記貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち、少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、該指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作するようにして前記課題を解決したものである。
【0025】
なお、入側ルーパの入側速度と、出側ルーパの出側速度は、入側、出側の作業次第でシーケンス的に設定される場合が多く、この場合は中央の速度だけを操作すればよいので、少なくとも中央速度を評価すれば良い。
【0026】
又、本発明は、入側から供給される帯状の被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、該処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備とを有する連続処理ラインの速度制御装置において、前記貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出する手段と、該手段により算出された指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作する手段とを備えるようにして前記課題を解決したものである。
【0027】
又、本発明は、複数のコイル状に巻かれた帯状の被処理材を順次巻き出して接続する巻き出し設備と、該接続された被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、前記処理装置で処理された被処理材を切断して再びコイル状に巻き取る巻き取り設備と、前記処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備と、を有する連続処理ラインにおいて、前記巻き出し設備における巻き出し(巻き戻し、払い出しとも称する)中の被処理材の長さ、前記貯留設備における被処理材の長さ、及び、前記巻き取り設備における巻き出し中の各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の速度、前記巻き取り設備における巻き取り中の被処理材の速度、及び、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、該指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作するようにして前記課題を解決したものである。
【0028】
又、本発明は、複数のコイル状に巻かれた帯状の被処理材を順次巻き出して接続する巻き出し設備と、該接続された被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、前記処理装置で処理された被処理材を切断して再びコイル状に巻き取る巻き取り設備と、該処理設備の上側又は下側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備と、を有する連続処理ラインの速度制御装置において、前記巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の長さ、前記貯留設備における被処理材の長さ、及び、前記巻き取り設備における巻き出し中の各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記巻き出し装置における巻き出し中の被処理材の速度、前記巻き取り装置における巻き取り中の被処理材の速度、及び、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出する手段と、該手段により算出された指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作する手段とを備えるようにして前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0029】
従来技術のように速度操作のためのいくつかのパラメータを与えるのではなく、入側及び出側セクションにおける被処理材の長さや入側及び出側ループ量の時間変化を表すモデルと、被処理材ごとに異なる速度やループ量に関する制約条件と、速度に関する評価関数とからなる最適化問題を解くことにより、連続処理ラインの能率を最大化するための時々刻々の最適な速度操作量を求めることができる。即ち、制約範囲内における最適な速度操作量を理論的に求めることができ、能率最大化が達成できる。
【0030】
又、評価関数の中に中央速度だけでなく入側速度や出側速度を含めることにより、入側速度や出側速度も制約範囲内で操作することによってさらなる能率向上を図ることができる。
【0031】
又、貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、貯留設備内の被処理材の全長、貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、制約条件が設定された被処理材の速度のうち少なくとも処理設備の被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、指令値に基づいて被処理材の速度を操作することで、速度の制約や、設備上、操業上の制約が、被処理機材の鋼種や寸法によって、被処理材ごとに異なる場合、例えば、溶接点の前後で異なる場合でも、連続処理ラインの能率最大化を達成するための最適な速度操作を行うことができる。
【0032】
又、巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の長さ、貯留設備における被処理材の長さ、及び、巻き取り設備における巻き出し中の各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、貯留設備内の被処理材の全長、巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の速度、巻き取り設備における巻き取り中の被処理材の速度、及び、処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された被処理材の速度のうち少なくとも処理設備の被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、該指令値に基づいて被処理材の速度を操作することで、上述の効果の他に、巻き出し設備では、現在巻き出し中の先行する被処理材(先行材)の残量が、時々刻々算出できるので、先行材の巻き出しが完了して次に巻き出す被処理材との溶接が開始される時刻や、それが終了して加速が開始される時刻の予測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0034】
本発明を実施する連続処理ラインは、図1に示した如く、入側セクション10から供給される帯状の被処理材2を連続的に処理する処理装置24を有する処理設備である中央セクション20と、該処理装置24の上側あるいは下側の少なくとも一方に位置し、被処理材を貯留する貯留設備である入側ルーパ40又は出側ルーパ50と、被処理材の速度を制御する速度制御装置であるブライドルロール(16等)とを少なくとも有している。
【0035】
図2に示す如く、このような連続処理ラインの、処理能率などを最大化する速度を求めるための最適化問題60を定式化する。
【0036】
最適化問題60は、連続処理ラインの設備あるいは装置における各被処理材2の長さや速度などの状態変数の時間変化を表わすモデル62と、連続処理ラインの設備あるいは装置のうち、処理設備にある被処理材の状態変数に関する制約条件を少なくとも含む複数の制約条件64と、これら制約条件が設定された前記状態変数のうち、少なくとも処理設備である中央セクション20での速度を有して構成される評価関数66と、から成り立っている。
【0037】
定式化された最適化問題を、設定された時刻ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材2の速度を制御する指令値を算出(S10)し、この指令値に基づいて被処理材2の速度を速度制御装置により操作(S20)する。
【0038】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態について説明する。
【0039】
第1実施形態において連続処理ラインは、図1に示した連続処理ラインに関して、入側から供給される帯状の被処理材2を連続的に処理する処理装置24を有する処理設備である中央セクション20と、この処理装置24の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材2を貯留する貯留設備である入側ルーパ40又は出側ルーパ50とを少なくとも有している。
【0040】
図2の最適化問題60に対応する第1実施形態の最適化問題は、貯留設備である入側ルーパ40又は出側ルーパ50における各被処理材2の長さの時間変化を表わすモデルと、入側ルーパ40又は出側ルーパ50内の被処理材2の全長、入側ルーパ40又は出側ルーパ50の入側及び出側における被処理材2の速度、並びに、中央セクション20における被処理材2の速度に関する制約条件と、この制約条件が設定された被処理材2の速度のうち少なくとも中央セクション20の被処理材2の速度を含み構成される評価関数66とから構成される。
【0041】
ここで、図2のモデル62に対応するモデルにおいて、被処理材2の長さや速度などの状態変数として、貯留設備である入側ルーパ40や出側ルーパ50における被処理材2の長さを用いる。又、図2の複数の制約条件64に対応する制約条件において、被処理材2の長さや速度などの状態変数として、貯留設備である入側ルーパ40や出側ルーパ50にある被処理材2の長さと、貯留設備の入側及び出側における被処理材2の速度と、処理設備である中央セクション20における被処理材の速度とを用いる。
【0042】
なお、本実施形態においては、中央セクション20における被処理材の速度は、入側ルーパ40の出側における被処理材の速度、出側ルーパの入側における被処理材の速度と同じになるので、貯留設備の入側ルーパの入側及び出側ルーパの出側、並びに、中央セクションの速度を用いれば良いことになる。
【0043】
この最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材2の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、この指令値に基づいて被処理材2の速度を操作する。
【0044】
以上のような本実施形態では、従来技術のように速度操作のためのいくつかのパラメータを与えるのではなく、入側及び出側セクションにおける被処理材の長さや入側及び出側ループ量の時間変化を表すモデルと、被処理材ごとに異なる速度やループ量に関する制約条件と、速度に関する評価関数とからなる最適化問題を解くことにより、連続処理ラインの能率を最大化するための時々刻々の最適な速度操作量を求めることができる。即ち、制約範囲内における最適な速度操作量を理論的に求めることができ、能率最大化が達成できる。
【0045】
又、評価関数の中に入側速度や出側速度を含めることにより、中央速度だけでなく、入側速度や出側速度も制約範囲内で操作することによってさらなる能率向上を図ることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
【0047】
第2実施形態において連続処理ラインは、図1に示した連続処理ラインに関して、複数のコイル状に巻かれた帯状の被処理材2を順次巻き出して溶接機14で接続し、ペイオフロール20から巻き出す巻き出し設備である入力セクション10と、この接続された被処理材2を連続的に処理する処理装置24を有する処理設備である中央セクション20と、処理装置24で処理された被処理材2を切断機34で切断してテンションロール28で再びコイル状に巻き取る巻き取り設備である出側セクション30と、処理装置24の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材2を貯留する貯留設備である入側ルーパ40や出側ルーパ50とを少なくとも有している。
【0048】
図2の最適化問題60に対応する第2実施形態の最適化問題は、巻き出し設備である入力セクション10における巻き出し中の被処理材2の長さ、貯留設備である入側ルーパ40又は出側ルーパ50における各被処理材の長さ、処理設備である中央セクション20における被処理材2の長さ、及び、巻き取り設備である出側セクション30における巻き出し中の被処理材2の長さの時間変化を表わすモデルと、貯留設備である入側ルーパ40や出側ルーパ50内の被処理材2の全長、巻き出し設備である入側セクション10における巻き出し中の被処理材2の速度、巻き取り設備である出側セクション30における巻き取り中の被処理材2の速度、及び、処理設備である中央セクション20における被処理材2の速度に関する制約条件と、これらの制約条件が設定された被処理材2の速度のうち少なくとも処理設備である中央セクション20の被処理材2の速度を含み構成される評価関数とから構成される。
【0049】
ここで、図2のモデル62に対応するモデルにおいて、被処理材2の状態変数として、複数のコイル状に巻かれた被処理材2を順次巻き出して接続し処理装置24に供給する巻き出し設備である入側セクション10における巻き出し中の被処理材2の長さと、貯留設備である入側ルーパ40や出側ルーパ50における被処理材2の長さと、処理装置24で処理された被処理材2を切断して再びコイル状に巻き取る巻き取り設備である出側セクション30における巻き取り中の被処理材2の長さを用いる。
【0050】
図2の複数の制約条件64に対応する制約条件において、被処理材2の長さや速度などの状態変数として、貯留設備ある入側ルーパ40や出側ルーパ50内の被処理材2の全長と、巻き出し設備である入側セクション10における巻き出し中の被処理材2の速度と、巻き取り設備である出側セクション30における巻き取り中の被処理材2の速度と、処理設備である中央セクション20における被処理材の速度を用いる。
【0051】
前記最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材2の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、この指令値に基づいて被処理材2の速度を操作する。
【0052】
以上のような本実施形態では、第1実施形態の効果の他に、入側セクション10において巻き出し中の被処理材2の長さ、出側セクション30において巻き取り中の被処理材2の長さ、及び入側及び出側ループ量の時間変化を表すダイナミックモデルにより、連続処理ライン内の被処理材の流れを表すことにより、将来にわたる操業状態の予測を可能としている。
【0053】
即ち、入側セクション10では、現在巻き出し中の被処理材(先行材)の残量が、入側速度を与えることによって時々刻々算出できるので、先行材の巻き出しが完了して後行材(次に巻き出す被処理材)との溶接が開始される時刻や、それが終了して加速が開始される時刻の予測が可能になる。
【0054】
入側ルーパ40では、入側速度と中央速度を与えることにより、ループ量の増減が予測できる。
【0055】
又、中央セクション20では、ペイオフリール〜入側ルーパ入側、入側ループ量、入側ルーパ出側〜中央セクションの被処理材の長さを加算することにより、溶接点の位置をトラッキングすることが可能となる。
【0056】
出側セクション30でも、入側と同様、作業開始、終了の時刻が予測可能となる。
【0057】
第1実施形態及び第2実施形態において、ダイナミックモデルは、例えば、入側ルーパ40では、ループ量の時間微分は入側速度と中央速度の差であるという関係から微分方程式、あるいは差分方程式として記述できる。
【0058】
又、速度及びループ量に関する制約は、操業上、設備上の観点から被処理材ごとに与えられる上下限値を不等式制約の形で表すことができる。
又、最適化のための評価関数としては、能率最大化の観点からは各セクションの速度やその二乗した量を現在時刻から将来のある時刻まで積分した値とし、それを最大化するような速度を算出し、速度操作量とすることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、具体的に図3を参照して、本発明を鋼板の連続処理ラインにおいて適用した実施例について詳細に説明する。なお、図3は、連続処理ラインの構成を示す図1に、本実施例において設定した変数を書き加えたものである。
【0060】
まず、図2のモデル62に対応し、ライン内の被処理材2の流れを表すモデルについて説明する。
【0061】
【数1】

【0062】
ここで、kは離散化された時刻、xc,i,jは、i番目の被処理材2のj番目の場所における長さ〔m〕を表し、具体的には、図3に示されたところにおいて、
c,i,1: ペイオフリール12〜入側ルーパ40の入側位置までの被処理材2の長さ、
c,i,2: 入側ルーパ40における被処理材2の長さ、
c,i,3: 中央セクション20における被処理材2の長さ、
c,i,4: 出側ルーパ14における被処理材2の長さ、
c,i,5: 出側ルーパ14の出側位置〜テンションリール32までの被処理材2の長さ

である。
【0063】
ここでは、ライン上に3本の被処理材2がある場合を考え、i=1、2、3(例えば、下流側ほどiが小さいとする)とする。
【0064】
次に、vc,i,jは、被処理材2の以下の区間における速度〔m/sec]である。具体的には、図3に示されたところにおいて、
c,i,1: ペイオフリール12〜入側ルーパ40における入側速度、
c,i,2: 入側ルーパ40〜処理装置24における中央速度、
c,i,3: 処理装置24〜出側ルーパ50における中央速度、
c,i,4: 出側ルーパ50〜テンションリール32における出側速度、
である。
【0065】
ここで、中央セクション20で被処理材2が滞留することはないので、j=2:入側ルーパ40〜処理装置24における中央速度とj=3:処理装置24〜出側ルーパ50における中央速度との速度は同一であるが、モデリングの便宜上、このように変数を設定している。
【0066】
又、速度は上記区間における観測ポイントを通過中の被処理材2に対して与えるものであり、当該区間に別の被処理材2が存在した場合、その速度は零であるとする。
【0067】
なお、第1実施形態の時間変化を表わすモデルの変数、即ち、貯留設備である入側ルーパ40又は出側ルーパ50における各被処理材2の長さが、xc,i,2又はxc,i,4に対応する。
【0068】
又、第2実施形態の時間変化を表わすモデルの変数、即ち、巻き出し設備である入側セクション10における巻き出し中の被処理材2の長さがxc,i,1、貯留設備である中央セクション20における被処理材2の長さがxc,i,3、及び、巻き取り設備である出側セクション30における巻き取り中の被処理材2の長さがxc,i,5、貯留設備である入側ルーパ40における被処理材2の長さがxc,i,2、出側ルーパ50における被処理材2の長さがxc,i,4に対応する。
【0069】
なお、第2実施形態の場合、前記xc,i,1〜xc,i,5の5つの変数が全て用いられているのに対し、第1実施形態の場合、ペイオフリール12、テンションリール32が考慮されないので、xc,i,1とxc,i,5の変数が前述のようには定義されないことになるが、ペイオフリール12、テンションリール32の位置には、代わりに他の設備が配置され、例えば、材料が酸洗ラインに供給されたり、処理された材料が搬出されたりするので、同様にxc,i,1、xc,i,5に相当する変数を定義して用いれば良い。
【0070】
次に、図2の複数の制約条件64に対応し、長さに関する制約条件と速度に関する制約条件と、加減速率(速度の差で表わす)に関する制約条件とについて説明をする。
【0071】
まず下記の変数を定義する。
【0072】
【数2】

【0073】
【数3】

【0074】
【数4】

【0075】
【数5】

【0076】
【数6】

【0077】
ここで、lpor:ペイオフリール12〜入側ルーパ40内の被処理材2の全長、lin:入側ルーパ40内の被処理材2の全長、lcenter:中央セクション20内の被処理材2の全長、lout:出側ルーパ14内の被処理材2の全長、ltr:出側ルーパ14〜テンションリール32内の被処理材2の全長で、図3に対応が示されている。
【0078】
なお、入側ルーパ等の設備内の被処理材の全長とは、ライン上に存在する3本の被処理材に関して、夫々、この設備における被処理材の長さを合計した長さである。
【0079】
上記変数に関する制約条件は、以下のように表される。ここで、不等式の上下限は設備上の制約によって与えられるものである。
【0080】
【数7】

【0081】
又、速度に関する制約条件は以下のように表される。
【0082】
【数8】

【0083】
不等式の上下限は、被処理材ごとに異なる可能性があるが、ここではすべて同じである場合を仮定した。
【0084】
又、加減速率に関する制約条件は以下のように表される。
【0085】
【数9】

【0086】
ここで、次式(5)のように、出側ルーパ14〜テンションリール32における被処理材2の長さが75〜140〔m〕のとき、出側作業のために速度上限を0.5〔m/sec〕とする速度制約を受けるとする。
【0087】
【数10】

【0088】
なお、第1実施形態の変数を対応させると、入側ルーパ40内の被処理材2の全長は、lin、出側ルーパ50内の被処理材2の全長はlout、入側ルーパ40の入側における各被処理材2の速度はvc,i,1、入側ルーパ40の出側における各被処理材2の速度はvc,i,2、出側ルーパ50の入側における各被処理材2の速度はvc,i,3、出側ルーパ50の出側における各被処理材2の速度はvc,i,3、vc,i,4、であり、中央セクション20における被処理材2の速度はvc,i,2(=vc,i,3)となる。
【0089】
又、第2実施形態の変数を対応させると、貯留設備である入側ルーパ40内の被処理材2の全長はlin、貯留設備である出側ルーパ50内の被処理材2の全長はlout、巻き出し設備である入側セクション10における巻き出し中の被処理材2の速度はvc,i,1、巻き取り設備である出側セクション30における巻き取り中の被処理材2の速度はvc,i,4、処理設備である中央セクション20における被処理材2の速度はvc,i,2(=vc,i,3)となる。
【0090】
次に、評価関数について説明する。
【0091】
各セクション10、20、30の最適化の評価関数は、以下のように評価する期間(現在時刻k=0から、将来の時刻k=K−1まで)における入側、中央、出側の各速度に重みを掛けて加算したものとした。ここで、kは、制御周期Tsを単位として時刻を示すパラメータであり、厳密には、時刻は、(K−1)×Tsとなる。
【0092】
【数11】

【0093】
ここで、iはコイル番号、vcenter、vin、voutは、i番目のコイルの中央、入側、出側の各速度、Tsは制御周期(時刻kから時刻k+1までの長さ)、α、βは重みを表す。入側、中央、出側のすべての速度が操作量とみなされており、最適化の対象となる。
【0094】
以上のようにモデルと制約条件と評価関数とから最適化問題が構成される。
【0095】
さて、各セクション10、20、30の速度が大きいほど被処理材2の搬送が速やかに行われるので、処理能率が向上するが、このとき(6)式の評価関数の値も大きくなる。
【0096】
したがって、上述の最適化問題を解くことで、即ち、(2)〜(5)式の制約条件の下で、(6)式の評価関数を最大化するような各セクションでの速度を求めれば、それらは理論上、本連続処理ラインの処理能率を最大化する速度ということができ、それらに従って速度制御を行うことにより、設備上、操業上の制約範囲内で最高の処理能率を達成できることになる。
【0097】
即ち、最適化問題を一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、指令値に基づいて被処理材の速度を操作することで、連続処理ラインの能率最大化を達成するための最適な速度操作を行うことができる。
【0098】
又、中央セクション20のみならず、各セクション10、20、30での速度を求めているので、速度の制約や、設備上、操業上の制約が、被処理機材の鋼種や寸法によって、被処理材ごとに異なる場合、例えば、溶接点の先行材と後行材とで異なる場合でも、連続処理ラインの能率最大化を達成するための最適な速度操作を行うことができる。
【0099】
次に、シミュレーション結果として、上述のように(1)〜(6)式で定義された最適化問題を解くことにより得られる速度操作量を図4に、図4に示される速度操作量に基づいて操作を行った場合の入側及び出側ループ量を図5に示す。
【0100】
なお、(6)式において、Ts=1秒、α=β=1、K=60とした。
【0101】
図4に示された速度操作量は、現在時刻から60秒先までの最適な入側速度、中央速度、出側速度を、現在時刻k=0において算出した結果を示している。いずれの速度も、初期値から加速して上限に達しており、出側速度は(5)式の制約条件に対応して減速し、その制約条件を満たしている。
【0102】
又、図5から、入側ループ量、出側ループ量はともに制約範囲内にあることがわかる。
【0103】
もし、連続処理ラインの操業が現在時刻に想定した通りに行われる場合には、図4の速度操作量に従って60秒間の速度制御を行い、60秒が経過した後に再び最適化の計算を行って次の60秒間の速度操作量を求め、それに従って60秒間の速度制御を行う、という手順を繰り返すことにより、想定したとおりの制御効果を挙げることができる。
【0104】
しかし、入側セクション10や出側セクション30における作業が予定通りに完了しなかった場合や、想定外のトラブルなどによって入側や出側における被圧延材の搬送が停止した場合などには、算出した速度操作量が最適なものとはならない。
【0105】
そこで、最適化計算を制御周期ごと(例えば、図4、図5では1秒ごと)に行うものとし、現在時刻から60秒先までの最適な速度操作量を求め、そのうち現在時刻に対応した速度操作を実施し、次の制御周期で再び60秒先までの最適な速度操作量を求め、現在時刻に対応した速度操作を実施する、という手順を取ることもできる。
【0106】
この場合、(1)式のモデル中の変数の初期値を制御周期ごとに実績値に合わせることができるので、ペイオフリール12、ルーパ40、50やテンションリール32における将来の被処理材長の予測精度が向上するため、操業状態があらかじめ想定したものからずれた場合であっても適切な速度操作量を求めることができる。
【0107】
又、計算負荷の観点から、制御周期ごとに最適化計算を行うのが難しい場合には、例えば、10秒ごとに最適化計算を行うこととし、現在時刻から60秒先までの速度操作量のうち最初の10秒間に対応した速度操作を実施し、10秒後に次の60秒間に対応した最適化計算を行うようにしてもよい。
【0108】
更に、最適化計算を一定周期ごとに行うのではなく、あらかじめ設定したイベントごとに行ってもよい。イベントとしては、例えば、入側セクションや出側セクションにおける作業や、それらの作業を構成する細かなステップの開始及び終了や、被処理材の溶接点がライン内の定められたポイントを通過すること、ペイオフリールの被処理材長、テンションリールの被処理材長、入側及び出側のループ量が定められたしきい値を越えたり割ったりすることなど、ライン内における被処理材の速度や長さに関する事象を用いることができる。
【0109】
また、以上説明した実施例の定式化では、各被処理材長を1つの変数に割り当てていたが、各セクション内に存在する被処理材長の和を変数とすることもできる。その場合、各被処理材を区別するには、溶接部の位置をトラッキングすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】連続処理ラインを示す構成図
【図2】本発明による連続処理ラインの速度制御の概要を示す説明図
【図3】実施例において設定した変数と連続処理ラインの構成との対応を示す説明図
【図4】実施例に基づいて各セクションにおける速度操作量を示す線図
【図5】図4の速度操作量に基づいて操作を行った場合の入側及び出側ループ量のシミュレーション結果を示す線図
【符号の説明】
【0111】
2…被処理材
20…中央セクション
24…処理装置
40…入側ルーパ
50…出側ルーパ
60…最適化問題
62…モデル
64…複数の制約条件
66…評価関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入側から供給される帯状の被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、該処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備とを有する連続処理ラインにおいて、
前記貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、
前記貯留設備内の被処理材の全長、前記貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、
該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、
からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、該指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作することを特徴とする連続処理ラインの速度制御方法。
【請求項2】
入側から供給される帯状の被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、該処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備とを有する連続処理ラインの速度制御装置において、
前記貯留設備における各被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記貯留設備の入側及び出側における被処理材の速度、並びに、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出する手段と、
該手段により算出された指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作する手段と、
を備えたことを特徴とする連続処理ラインの速度制御装置。
【請求項3】
複数のコイル状に巻かれた帯状の被処理材を順次巻き出して接続する巻き出し設備と、該接続された被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、前記処理装置で処理された被処理材を切断して再びコイル状に巻き取る巻き取り設備と、前記処理装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備と、を有する連続処理ラインにおいて、
前記巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の長さ、前記貯留設備における各被処理材の長さ、及び、前記巻き取り設備における巻き出し中の被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、
前記貯留設備内の被処理材の全長、前記巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の速度、前記巻き取り設備における巻き取り中の被処理材の速度、及び、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、
該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、
からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出し、該指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作することを特徴とする連続処理ラインの速度制御方法。
【請求項4】
複数のコイル状に巻かれた帯状の被処理材を順次巻き出して接続する巻き出し設備と、該接続された被処理材を連続的に処理する処理装置を有する処理設備と、前記処理装置で処理された被処理材を切断して再びコイル状に巻き取る巻き取り設備と、該処理設備の上側及び下側の少なくとも一方に位置し被処理材を貯留する貯留設備と、を有する連続処理ラインの速度制御装置において、
前記巻き出し設備における巻き出し中の被処理材の長さ、前記貯留設備における各被処理材の長さ、及び、前記巻き取り設備における巻き出し中の被処理材の長さの時間変化を表わすモデルと、前記貯留設備内の被処理材の全長、前記巻き出し装置における巻き出し中の被処理材の速度、前記巻き取り装置における巻き取り中の被処理材の速度、及び、前記処理設備における被処理材の速度に関する制約条件と、該制約条件が設定された前記被処理材の速度のうち少なくとも前記処理設備における被処理材の速度を含み構成される評価関数と、からなる最適化問題を、一定の時間ごと又は予め定められたイベントの発生ごとに解くことにより、前記評価関数に含まれる被処理材の速度を制御する指令値を時々刻々算出する手段と、
該手段により算出された指令値に基づいて前記被処理材の速度を操作する手段と、
を備えたことを特徴とする連続処理ラインの速度制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−155249(P2008−155249A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346745(P2006−346745)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】