説明

連続可変トランスミッションを有する推進システム

開示される一実施形態は、機械(10)の推進システム(12)に関する。推進システムは、連続可変トランスミッション(28)を通して推進装置(20)に動作可能に接続された原動機(18)を含み得る。推進システムは、操作者入力に基づいて動作パラメータを調整することを含み得る、連続可変トランスミッションの動作パラメータを制御する推進システム制御機構(24)も含み得る。動作パラメータを制御することは、1つまたは複数の動作状況に基づいて動作パラメータの調整限度を決定し、1つまたは複数の動作状況に基づいて、その調整限度を動作パラメータに適用して、機械の加速およびジャークのうちの少なくとも一方を変更することも含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動機械の推進システムに関し、より詳細には、連続可変トランスミッションを有する推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの可動機械は、動力を複数の任意選択可能な駆動比のうちの任意の比で原動機(エンジン等)から推進装置(車輪等)に伝達するように動作可能な多段階変速機を有する推進システムを含む。多段階変速機によっては、段階的に変化する構成を有するものがあり、これは、トランスミッションが動力を伝達できる離散した駆動比の有限セットを有することを意味する。連続可変トランスミッションとして知られる他の多段階トランスミッションは、トランスミッションの駆動比を連続範囲で調整可能な構成を有する。連続可変トランスミッションに関連する利点としては、トランスミッションの入力速度をトランスミッションの出力速度から切り離すこと、ならびに駆動比、出力速度、およびトルク出力量をトランスミッションにより素早く調整可能なことが挙げられる。これは、推進システムが操作者の可動機械の移動速度を急に変更する要求を満たすのに役立ち得る。不都合なことに、連続可変トランスミッションの急速調整可能性は、操作者入力に応答しての望ましくない急な調整が行われる可能性を生み出す。
【0003】
Ochiaiに付与された(特許文献1)には、連続可変トランスミッションを制御する方法であって、連続可変トランスミッションの駆動比が変更される比率の上限を計算することを含む、方法が開示されている。この(特許文献1)には、連続可変トランスミッションに対するいくつかの制御戦略が、連続可変トランスミッションの駆動比をあまりに急激に変更しすぎ、それにより、連続可変トランスミッションの出力シャフトに負トルクが発生することにより、特定の状況において望ましくない減速を生じさせる恐れがあるという問題が表されている。この問題に対処するために、(特許文献1)の制御方法は、連続可変トランスミッションの駆動比を、その出力比をゼロまで、またはゼロ未満に降下させずに変更できる最大比を計算することを含む。(特許文献1)の制御方法は、計算されたこの最大比を限度として連続可変トランスミッションの駆動比の調整に対して課し、それにより、連続可変トランスミッションの高速調整による減速を回避する。
【0004】
(特許文献1)の制御方法は、連続可変トランスミッションの駆動比の変更比に対する限度を計算して課すことを含むが、それでも特定の欠点が存続する。例えば、(特許文献1)により課される調整限度は、すべての状況において同じように加速を制限する。したがって、(特許文献1)は、加速に対する望ましい限度とは、様々な動作状況に応じて可変であることを認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,931,884号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の推進システムおよび制御方法は、上述した課題のうちの1つまたは複数を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示される一実施形態は、機械の推進システムに関する。この推進システムは、連続可変トランスミッションを通して推進装置に動作可能に接続された原動機を含み得る。推進システムは、操作者入力に基づいて動作パラメータを調整することを含み得る、連続可変トランスミッションの動作パラメータを制御する推進システム制御機構も含み得る。動作パラメータを制御することは、1つまたは複数の動作状況に基づいて動作パラメータの調整限度を調整すること、およびその調整限度を動作パラメータに適用して、1つまたは複数の動作状況に基づいて機械の加速およびジャークのうちの少なくとも一方を変更することも含み得る。
【0008】
別の実施形態は、推進システムを有する機械を推進する方法に関する。この推進システムは、連続可変トランスミッションを通して推進システムおよび推進システム制御機構に動作可能に接続された原動機を含み得る。この機械は、1つまたは複数の他の機械システムも有し得る。この方法は、推進システム制御機構を使用して連続可変トランスミッションの第1の動作パラメータを制御しながら、連続可変トランスミッションを使用して動力を原動機から推進装置に伝達することを含み得る。推進システム制御機構を使用して第1の動作パラメータを制御することは、操作者入力に基づいて動作パラメータを調整することを含み得る。推進システム制御機構を使用して第1の動作パラメータを制御することは、機械の1つまたは複数の他のシステムの1つまたは複数の第2の動作パラメータに基づいて、第1の動作パラメータの調整限度を決定することも含み得る。さらに、推進システム制御機構を使用して第1の動作パラメータを制御することは、調整限度を第1の動作パラメータに適用することを含み得る。
【0009】
開示されるさらなる実施形態は、機械の推進システムに関する。この推進システムは、連続可変トランスミッションを通して推進装置に動作可能に接続された原動機を含み得る。さらに、この推進システムは、少なくとも部分的に、連続可変トランスミッションの動作パラメータを制御することにより、機械の加速およびジャークを制御する得推進システム制御機構を含み得る。連続可変トランスミッションの動作パラメータを制御することは、操作者入力に基づいて動作パラメータを調整することを含み得る。さらに、動作パラメータを制御することは、動作パラメータの調整限度を決定し、その調整限度を動作パラメータに適用することにより、機械の加速およびジャークのうちの少なくとも一方を制限することを含み得、調整限度は、機械の移動方法および操作者により要求される移動方向のうちの少なくとも一方に基づいて決定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示による推進システムの一実施形態を有する機械の線図である。
【図2】本開示による制御方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示による推進システム12の一実施形態を有する可動機械10を示す。推進システム12に加えて、可動機械10は、操舵システム14および機器16を含むが、これらに限定されない様々な他のシステムを有し得る。
【0012】
推進システム12は、原動機18、推進装置20、ドライブトレーン22、および推進システム制御機構24を含み得る。原動機18は、可動装置10を推進させる動力を提供するように動作可能な任意の種類の構成要素であり得る。例えば、原動機18は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、気体燃料駆動式エンジン、またはタービンエンジンであり得る。原動機18は、回転機械動力を供給する回転出力部材26を有し得る。原動機18は、原動機制御機構44も備え得る。原動機制御機構44は、原動機18の動作の1つまたは複数の側面を制御するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、原動機制御機構44は、原動機18を監視し制御する様々なセンサおよび/またはアクチュエータ(図示せず)に動作可能に接続される原動機コントローラ46を含み得る。原動機制御機構46は、1つまたは複数のプロセッサ(図示せず)および1つまたは複数のメモリ装置(図示せず)を含み得る。
【0013】
推進装置20は、推進システム12の1つまたは複数の他の構成要素から動力を受け取り、可動機械10を取り巻く環境にその動力を適用することにより、可動装置10を推進するように動作可能な任意の種類の構成要素を含み得る。例えば、図1に示すように、推進装置20は車輪を含み得る。推進装置20は、車輪に加えて、または車輪に代えて、トラックユニットおよび/またはプロペラが挙げられるが、これらに限定されない様々な他の種類の装置も含み得る。
【0014】
ドライブトレーン22は、動力を原動機18から推進装置20に伝達して、可動機械10を推進するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。例えば、ドライブトレーン22は、原動機18と推進装置20との間に接続された連続可変トランスミッション28、駆動シャフト30、差動ユニット32、および車軸シャフト34を含み得る。連続可変トランスミッション28は、回転入力部材36および回転出力部材38を有し得る。回転入力部材36は、原動機18の回転出力部材26に直接または間接的に接続し得る。駆動シャフト30、差動ユニット32、および車軸シャフト34は、回転出力部材38を推進装置20に接続し得る。
【0015】
連続可変トランスミッション28は、回転入力部材36の速度と回転出力部材38の速度の比を連続範囲で変化させながら、動力を回転入力部材36と回転出力部材38との間で伝達できるようにする任意の構成を有し得る。いくつかの実施形態では、連続可変トランスミッション28は、回転入力部材36と回転出力部材38との間に並列接続される機械的動力伝達路40および油圧的動力伝達路42を有し得る。機械的動力伝達路40は、回転入力部材36と回転出力部材38との間に接続される遊星歯車セット48を含み得る。例えば、回転入力部材36は、遊星歯車セット48の太陽歯車に直接または間接的に接続し得、遊星歯車セット48の遊星枠は回転出力部材38に直接または間接的に接続し得る。
【0016】
油圧的動力伝達路42は、油圧ポンプ50、油圧モータ52、および油圧ポンプ50により汲み上げられた油圧油を油圧モータ52に送る流体伝達システム56を含み得る。流体伝達システム56は、様々な導管、弁、槽、および/または他の既知の油圧構成要素を含みうる。油圧ポンプ50は回転入力部材36に接続し得る。油圧モータ52は、例えば、遊星歯車セット48の輪歯車に接続し得る。遊星歯車セット48への回転入力部材36、油圧モータ52、および回転シャット力部材38のこの接続により、回転入力部材36の速度、油圧モータ52の速度、および回転出力部材38の速度が相互に依存することになる。
【0017】
連続可変トランスミッション28は、遊星歯車セット48と回転出力部材38との間に接続される槽機構80も含み得る。槽機構80は、回転出力部材38が回転入力部材36と同じ方向に回転することになるある動作状態を有し得、槽機構80は、回転出力部材38が回転入力部材36とは逆の方向に回転することになる別の動作状態を有し得る。したがって、槽機構80のある動作状態では、可動機械10を順方向72に推進させることができ、槽機構80の別の動作状態では、可動機械10を逆方向74に推進させることができる。槽機構80は、様々な様式で配置された歯車、プーリ、スプロケット、チェーン、および/またはクラッチが挙げられるが、これらに限定されない動力伝達構成要素の様々な組み合わせを有し得る。
【0018】
連続可変トランスミッション28は、トランスミッション制御機構54も含み得る。トランスミッション制御機構54は、連続可変トランスミッション28の1つまたは複数の動作パラメータを制御するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。トランスミッション制御機構54は、例えば、連続可変トランスミッション28の様々な構成要素に動作可能に接続されたトランスミッションコントローラ58を含み得る。トランスミッションコントローラ58は、1つまたは複数のプロセッサ(図示せず)および1つまたは複数のメモリ装置(図示せず)を含み得る。トランスミッションコントローラ58は、トランスミッションコントローラ58が油圧モータ52の速度および動力出力を制御できるように、油圧的動力伝達路42の1つまたは複数の構成要素に動作可能に接続し得る。トランスミッションコントローラ58は、例えば、トランスミッションコントローラ58が油圧ポンプ50の変位および油圧モータ52の変位を制御できるように、油圧ポンプ50および油圧モータ52に動作可能に接続し得る。油圧モータ52の動作速度および動力出力を制御することにより、トランスミッションコントローラ58は、回転入力部材36の速度と回転出力部材38の速度との比、ならびに回転出力部材38の速度およびトルク出力を制御し得る。トランスミッションコントローラ58は、回転出力部材38が回転入力部材36と同じ方向に回転するか、または逆方向に回転するかを制御し得るように、槽機構80に動作可能に接続することもできる。
【0019】
推進システム制御機構24は、原動機制御機構44、トランスミッション制御機構54、マスタコントローラ60、および可動機械10の操作者インタフェース62の1つまたは複数の操作者入力装置を含み得る。マスタコントローラ60は、1つまたは複数のプロセッサ(図示せず)および1つまたは複数のメモリ装置(図示せず)を含み得る。マスタコントローラ60は、様々なソースから情報を受信し得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、マスタコントローラ60は、推進システム制御機構24の操作者入力装置から入力を受信し得る。これら操作者入力装置は、例えば、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66、加速ペダル68、および減速ペダル70を含み得る。可動機械10の操作者は、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66の「フォワード」動作状態を選択して、順方向72への可動機械10の推進を要求し得る。逆に、操作者は、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66の「リバース」動作状態を選択して、逆方向74への可動機械10の推進を要求し得る。あるいは、操作者は、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66の「ニュートラル」動作状態を選択して、推進システム12が、可動機械10を順方向72または逆方向74のいずれにも推進させないことを要求し得る。
【0021】
フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66がフォワードまたはリバース動作状態の場合、加速ペダル68および減速ペダル70により、操作者は、推進システム12が可動機械10を選ばれた方向に推進する速さを示すことができる。加速ペダル68は、操作者が加速ペダル68のデフォルト位置からどれくらい遠くまで押されたかを示す信号76を生成し得る。同様に、減速ペダル70は、操作者が減速ペダル70のデフォルト位置からどれくらい遠くまで押されたかを示す信号78を生成し得る。一般に、マスタコントローラ60は、加速ペダル68の押下の増大を選ばれた方向への速度を増大する要求として解釈し、減速ペダル70の押下の増大を選ばれた方向への速度を低減する要求として解釈し得る。いくつかの実施形態では、マスタコントローラ60は、信号76、78を集合的に、操作者が望む推進速度の指示として考慮し得る。このような実施形態では、所望の推進速度を定義する信号76と78との関係を使用して、マスタコントローラ60は、減速ペダル70の任意の押下を、少なくとも部分的に、加速ペダル68の任意の押下を提供するものとして、およびこの逆に考慮し得る。
【0022】
操作者入力装置に加えて、様々な他の構成要素および/またはシステムは、情報をマスタコントローラ60に提供し得る。例えば、速度/方向センサ82が、可動機械10の移動速度ならびに可動速度10が順方向72に移動中であるか、それとも逆方向74に移動中であるかを示す信号をマスタコントローラ60に提供し得る。マスタコントローラ60は、他の速度/方向センサ、位置センサ、圧力センサ、および/または温度センサを含むが、これらに限定されない様々な他のセンサ(図示せず)からの信号も受信し得る。
【0023】
マスタコントローラ60は、原動機制御機構44およびトランスミッション制御機構54にも動作可能に接続し得る。例えば、マスタコントローラ60は、原動機制御機構44の原動機コントローラ46ならびにトランスミッション制御機構54のトランスミッションコントローラ58に通信可能にリンクし得る。これにより、マスタコントローラ60は、原動機コントローラ46およびトランスミッションコントローラ58から情報を受信し、制御コマンドを原動機コントローラ46およびトランスミッションコントローラ58を送信することにより、原動機18および連続可変トランスミッション28の制御を調整することができる。
【0024】
推進システム12は、図1に示される構成に限定されない。例えば、連続可変トランスミッション28は異なる構成を有してもよい。連続可変トランスミッション28は、図1に示されない構成要素を含んでもよく、かつ/または連続可変トランスミッション28は、図1に示される構成要素のうちの1つまたは複数を省いてもよい。いくつかの実施形態では、連続可変トランスミッション28は、機械的動力伝達路40の様々な部分および/または連続可変トランスミッション28の他の部分内の駆動比の離散変更の提供を含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、油圧的動力伝達路42に代えて、連続可変トランスミッション28は、機械的動力伝達路40と並列な電力搬送路を有し得る。連続可変トランスミッション28のこのような実施形態は、油圧ポンプ50、油圧モータ52、および流体伝達システム56のそれぞれに代えて、発電機、電気モータ、および電力搬送回路を含み得る。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態では、連続可変トランスミッション28は、並列電力伝達路を有さなくてもよい。例えば、連続可変トランスミッション28は、単一の機械的動力伝達路を有してもよい。あるいは、連続可変トランスミッション28は従来の流体静力学的トランスミッションであってもよい。同様に、連続可変トランスミッション28は、回転入力部材36に直接または間接的に接続された発電機と、回転出力部材38に直接または間接的に直接された電気モータとを含む電力搬送路のみを含んでもよい。
【0026】
ドライブトレーン22は、図1に示すものとは異なる、原動機18の回転出力部材26と推進装置20との間に接続された連続可変トランスミッション28を有してもよい。例えば、ドライブトレーン22は、1つまたは複数のクラッチ、流体カプラ、歯車、プーリ、ベルト、スプロケット、およびチェーンを含むが、これらに限定されない、連続可変トランスミッション28の回転入力部材36と原動機18の回転出力部材26との間に接続される様々な追加の構成要素を含み得る。同様に、ドライブトレーン22は、連続可変トランスミッション28の回転出力部材38と推進装置20との間に接続される追加の動力伝達構成要素を有してもよく、かつ/またはドライブチェーン22は、駆動シャフト30、差動ユニット32、および車軸シャフト34のうちの1つまたは複数を省いてもよい。
【0027】
さらに、推進システム制御機構24は異なる構成を有してもよい。例えば、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66、加速ペダル68、および減速ペダル70と組み合わせて、またはこれらに代えて、推進システム制御機構24は、操作者が推進システム12により可動機械10をどのように推進させたいかの1つまたは複数の側面を指示し得る他の様々な操作者入力装置を含んでもよい。さらに、推進システム制御機構24は、原動機コントローラ46、トランスミッションコントローラ58、およびマスタコントローラ60のうちの1つまたは複数を省いてもよい。さらに、推進システム制御機構24は、原動機コントローラ46、トランスミッションコントローラ58、およびマスタコントローラ60のうちの1つまたは複数に加えて、またはこれ(ら)に代えて、ハードワイヤード制御機構等の様々な他の種類の制御構成要素を含んでもよい。
【0028】
操舵システム14は、順方向72または逆方向74に移動中に、可動機械10がターンするか否か、ターンする方向、およびターンの急さを制御するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。例えば、操舵システム14は、操舵アクチュエータ84および操舵システム制御機構86を含み得る。操舵システム制御機構86の制御下で、操舵アクチュエータ84は、可動機械10の他の構成要素と様々な様式で相互作用して、可動機械10がターンするか否か、ターンする方向、およびターンの急さを制御し得る。いくつかの実施形態では、操舵アクチュエータ84は、推進装置20に対する可動機械10の前輪88の方向を制御し得る。
【0029】
操舵システム制御機構86は、例えば、アクチュエータ制御機構90、操作者インタフェース62の操舵入力装置92、およびマスタコントローラ60を含み得る。アクチュエータ制御機構90は、操舵アクチュエータ84の動作を制御するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。操舵入力装置92は、操作者が可動機械10をどのように操縦したいかを示すために使用し得る任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。例えば、操舵入力装置92はジョイスティックを含み得る。マスタコントローラ60は、操舵入力装置92およびアクチュエータ制御機構90に動作可能に接続し得る。したがって、マスタコントローラ90は、操舵入力装置92からの情報に基づいて、操舵アクチュエータ84を間接的に制御し得る。
【0030】
操舵システム14は、図1に示される構成に限定されない。操舵システム14は、前輪88の方向を制御して可動機械10をターンさせる以外の手法も採用し得る。例えば、操舵システム14は、可動機械10をスキッドステア様式で操舵し得る。さらに、操舵システム14は、マスタコントローラ60に操舵入力装置92からの情報に基づいてアクチュエータ制御機構90を制御させるのではなく、アクチュエータ制御機構90に直接接続された操舵入力装置92を有してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、操舵システム14は、操舵アクチュエータ84およびアクチュエータ制御機構90を省き、操作者に可動機械10を操舵する力を提供するように求めてもよい。
【0031】
機器16は、可動機械10を推進させる以外の1つまたは複数のタスクを実行するように構成される任意の種類の装置であり得る。例えば、図1に示すように、機器16はフロントエンドローダであり得る。機器16は、機器16に動力提供する1つまたは複数のアクチュエータ94を含み得、可動機械10は、アクチュエータ94を制御して機器16を制御する機器制御機構96を含み得る。機器制御機構96は、操作者インタフェース62の機器入力装置98、アクチュエータ制御機構100、およびマスタコントローラ60を含み得る。機器入力装置98は、1つまたは複数のハンドル、ペダル、および/またはボタンを含むが、これらに限定されない、操作者が機器16をどのように操作したいかを示すために使用できる任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。アクチュエータ制御機構100は、アクチュエータ94を制御するように動作可能な任意の1つまたは複数の構成要素を含み得る。マスタコントローラ60は、機器入力装置98およびアクチュエータ制御機構100に動作可能に接続し得、それにより、マスタコントローラ60は、アクチュエータ制御機構100を通してアクチュエータ94を制御して、機器入力装置98からの入力に従って機器16を動作させることができる。
【0032】
機器16および機器制御機構96は、図1に示される構成に限定されない。機器16は、例えば、掘削工具、ホイスト、解体工具、またはこれらと同様のもの等のフロントエンドローダ以外の種類の機器であってもよい。機器制御機構96は、マスタコントローラ60を利用して、機器入力装置98からの情報に基づいてアクチュエータ制御機構100を制御するのではなく、アクチュエータ制御機構100に直接接続された機器入力装置98を有してもよい。さらに、機器制御機構96は、機器入力装置98に加えて他の機器入力装置(図示せず)を含んでもよい。
【0033】
可動機械10は、図1に示される構成に限定されない。例えば、可動機械10は、異なるように構成された推進システム12、操舵システム14、および機器16を有し得る。可動機械10は、図1に示されない様々なシステムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、可動機械10は、機器16に加えて他の機器を含んでもよい。あるいは、可動機械10は機器16を省いてもよい。同様に、可動機械10は操舵システム14を省いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
推進システム12は、任意の可動機械10を推進させる用途を有し得る。原動機18は、回転出力部材26を有する連続可変トランスミッション28の回転入力部材36を回転させることにより、動力を提供して可動機械10を推進させ得る。連続可変トランスミッション28は、この動力の少なくとも部分を回転入力部材36から回転出力部材38に伝達し得る。推進装置20は、回転出力部材38により出力された動力を受け取り、その動力を、可動機械10を取り巻く環境に適用し、それにより、可動機械10を推進させ得る。
【0035】
推進システム12がこのように可動機械10を推進させている間、推進システム制御機構24は、可動機械10の方向および加速の大きさ、ならびに可動機械10のジャーク(加速変更レート)を制御し得る。このために、推進システム制御機構24は、原動機18の1つまたは複数の動作パラメータおよび/または連続可変トランスミッション28の1つまたは複数の動作パラメータを含むが、これらに限定されない、推進システム12の様々な動作パラメータを制御し得る。例えば、推進システム制御機構24は、連続可変トランスミッション28および/または原動機18の動作を調整して、回転出力部材38の速度およびトルク出力を制御することにより、連続可変トランスミッション28の回転出力部材38が出力する動力量を制御し得る。
【0036】
一般に、推進システム制御機構24は、操作者入力に従って回転出力部材38が提供する動力(ひいては可動機械10の加速およびジャーク)を制御し得る。例えば、操作者が加速または減速を要求した場合、推進システム制御機構24は、要求された加速量または減速量に基づく量により、回転出力部材38のトルク出力を調整し得る。同様に、加速機械10が順方向72または逆方向74に移動中であり、操作者がフォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66を操作して、逆の方向への推進を要求した場合、推進システム制御機構24は、回転出力部材38により提供される出力トルクを変更し得る。このような状況では、推進システム制御機構24は、例えば、連続可変トランスミッション28および/または原動機18の動作を調整して、回転出力部材38により出力されるトルクの方向を変更して、まず、可動機械10を減速させ、次に、可動機械10を新たに要求された順方向72または逆方向74に加速させることができる。このような操作者要求の方向シフトに応答して回転出力部材38により出力されるトルクの方向を変更する際、推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に加速ペダル68および減速ペダル70からの信号76、78に基づいて、出力トルクの大きさを制御し得る。
【0037】
しかし、推進システム制御機構24は、操作者の加速、減速、および方向シフトに対する要求に応答して、連続可変トランスミッション28および/または原動機18の調整に限度を課し得る。このような限度を課すことにより、推進システム制御機構24は、過度のレベルの加速およびジャークを回避し得る。以下に詳述するように、推進システム制御機構24は、状況によって異なるように可動機械10の加速および/またはジャークを制限するように、この限度を課し得る。そうすることにより、推進システム制御機構24は、操作者が推進システム12からの大胆な応答を予期し所望する状況では、比較的高いレベルの加速およびジャークを可能にすることができ、その一方で、操作者がこのような大胆な動作を予期または所望しない状況では、加速およびジャークをより低い値に制限することができる。
【0038】
推進システム制御機構24は、状況によって異なるように可動機械10の加速および/またはジャークを制限するために、様々な方法を利用し得る。図2は、推進システム制御機構24がこのために使用し得る制御方法の一実施形態を示す。この例示的な方法では、推進システム制御機構24は、推進に関連する操作者入力の変更を常に監視し得る(ステップ102)。推進システム制御機構24が推進に関連する操作者入力の変更を検出した場合、推進システム制御機構24は、操作者入力の変更に基づいて、連続可変トランスミッション28の動作パラメータの目標調整を決定し得る(ステップ104)。例えば、推進システム制御機構24は、推進に関連する、変更された操作者入力に基づいて、回転出力部材38により出力される動力のパラメータの目標調整を決定し得る。いくつかの実施形態では、推進システム制御機構24は、加速の増大、減速の増大、および/または方向シフトに対する操作者による要求に応答して、回転出力部材38のトルク出力の目標調整を決定し得る。
【0039】
同時に、推進システム制御機構24は、1つまたは複数の動作状況に基づいて、連続可変トランスミッション28の動作パラメータの調整限度を決定し得る(ステップ106)。調整限度は、例えば、回転出力部材38のトルク出力の変更レートに対する限度等の動作パラメータの変更レートに対する限度であり得る。動作パラメータの目標調整および調整限度を計算した後、推進システム制御機構24は、目標調整が調整限度を超えるか否かを判断し得る(ステップ108)。超えない場合、推進システム制御機構24は、目標量だけ動作パラメータを調整し得る(ステップ110)。他方、目標調整が調整限度を超える場合、推進システム制御機構24は、調整限度を課し、目標調整を実施せずに、動作パラメータを最大で調整限度まで調整し得る(ステップ112)。回転出力部材38のトルク出力または回転出力部材38により出力される動力の他の何等かのパラメータの変更レートを制限することにより、推進システム制御機構24は、可動機械10の加速および/またはジャークを制限し得る。したがって、上述したように調整限度を決定し適用することにより、推進システム制御機構24は、調整限度の決定に使用された1つまたは複数の動作状況に基づいて、可動機械10の加速および/またはジャークを変更し得る。
【0040】
1つまたは複数の動作状況に基づいて調整限度を計算することにより、推進システム制御機構24は、調整限度および可動機械10の加速および/またはジャークに対する関連する限度をそのときの状況に合わせることができる。推進システム制御機構24は、調整限度を決定するために、様々な動作状況を使用し得る。いくつかの実施形態では、推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に、可動機械10が順方向72に移動中であるか、それとも逆方向74に移動中であるかに基づいて調整限度を決定し得る。他のすべての要因が等しい状態で、推進システム制御機構24は、可動機械10が順方向72に移動中の場合、可動装置10が逆方向74に移動中の場合よりも調整限度を高く設定し得る。
【0041】
推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に、調整限度を、動作パラメータの目標調整が回転出力部材38でのトルク出力の量の増大を含むか、それとも低減を含むかに基づかせてもよい。いくつかの実施形態では、他のすべての要因が等しい状態で、動作パラメータへの目標調整が、回転出力部材38でのトルク出力の量の増大を含む場合、推進システム制御機構24は、動作パラメータへの目標調整が回転出力部材38でのトルク出力の量の低減を含む場合よりも調整限度を低く設定し得る。操作者は、回転出力部材38での出力トルクの比較的急激な増大よりも、回転出力部材38での出力トルクの比較的急激な低減を受け入れ可能なことを見出し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、調整限度を決定するために、推進システム制御機構24は、移動方向を、可動機械10が加速中であるか、それとも減速中であるかと共に考慮し得る。換言すれば、推進システム制御機構24は、可動機械10が(1)順方向72に移動中であり、かつ加速中であるか、(2)順方向72に移動中であり、かつ減速中であるか、(3)逆方向74に移動中であり、かつ加速中であるか、それとも(4)逆方向74に移動中であり、かつ減速中であるかに応じて調整限度を設定し得る。推進システム制御機構24は、これら4つの異なる状況のそれぞれに対して異なるように調整限度を設定し得る。
【0043】
推進システム制御機構24は、操作者により要求された移動方向が可動機械10の実際の移動方向に一致するか否かに少なくとも部分的に応じて、調整限度を設定してもよい。上述したように、可動機械10が順方向72または逆方向74に移動中の場合、操作者は、フォワード/ニュートラル/リバースセレクタ66の動作状態を変更して、逆の方向への推進を要求し得、要求時、要求される移動方向は一般に、実際の移動方向に一致しない。操作者が方向シフトに関するこのような要求をした場合、推進システム制御機構24は、可動機械10の実際の移動方向が要求される移動方向に一致する場合とは異なるように調整限度を決定し得る。いくつかの実施形態では、すべての他の要因が等しい状態で、推進システム制御機構24は、実際の移動方向が要求された移動方向に一致する場合よりも、実際の移動方向が要求された移動方向に一致しない場合に高い調整限度を設定し得る。
【0044】
推進システム制御機構24は、可動機械10の移動速度に基づいて調整限度を決定してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、他のすべての要因が等しい状態で、推進システム制御機構24は、可動機械10の移動速度の増大に伴って調整限度を低く設定し得る。
【0045】
推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に、推進システム12以外の1つまたは複数のシステムの1つまたは複数の動作状況に基づいて、調整限度を決定してもよい。例えば、推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に、可動機械10がターンをしつつあるか、およびそのターンがどの程度急かを示す動作パラメータ等の操舵システム14の1つまたは複数の動作パラメータに基づいて調整限度を設定してもよい。いくつかの実施形態では、他のすべての要因が等しい状態で、可動機械10のターンが急なほど、推進システム制御機構24が設定し得る調整限度は低い。さらに、推進システム制御機構24は、少なくとも部分的に、機器16の1つまたは複数の動作状況に基づいて、調整限度を決定し得る。例えば、機器16がフロントエンドローダである実施形態では、推進システム制御機構24は、操作者がバケットを上昇させた程度に基づいて調整限度を設定し得る。
【0046】
推進システム制御機構24は、上述した要因の様々な組み合わせおよび/または他の様々な動作状況を使用して、調整限度を決定し得る。いくつかの実施形態では、推進システム制御機構24は、調整限度の決定に常に同じ要因を使用してもよい。あるいは、推進システム制御機構24は、調整限度を決定する際に、時折にのみ1つまたは複数の要因を使用してもよい。
【0047】
推進システム制御機構24が、異なる状況で異なるように可動機械10の加速および/またはジャークを制限するために使用し得る方法は、上述した例に限定されない。例えば、推進システム制御機構24は、調整限度と、調整限度の決定に使用される動作状況との異なる関係を実施し得る。さらに、推進システム制御機構24は、回転出力部材38のトルク出力以外の連続可変トランスミッション28の動作パラメータの調整に限度を設定することにより、可動機械10の加速および/またはジャークを制限し得る。さらに、調整限度を決定し課す際に、推進システム制御機構24は、図2に示される動作を異なる順に実行してもよく、かつ/または他の動作を追加で、もしくは図2に示される動作に代えて実行してもよい。
【0048】
本開示の範囲から逸脱せずに、様々な変更および変形を開示された推進システムおよび制御方法において行い得ることが当業者には理解される。開示される推進システムおよび制御方法の他の実施形態が、本明細書において開示された推進システムおよび制御方法の仕様および実施を考慮することから、当業者には明らかである。仕様および例が単なる例示として考えられ、本開示の真の範囲が以下の特許請求の範囲およびその均等物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(10)の推進システム(12)であって、
連続可変トランスミッション(28)を通して推進装置(20)に動作可能に接続される原動機(18)と、
連続可変トランスミッションの動作パラメータを制御する推進システム制御機構(24)であって、
操作者入力に基づいて動作パラメータを調整すること、および
1つまたは複数の動作状況に基づいて動作パラメータの調整限度を決定し、1つまたは複数の動作状況に基づいて、調整限度を動作パラメータに適用して、機械の加速およびジャークのうちの少なくとも一方を変更することを含む、推進システム制御機構(24)と
を備える、推進システム。
【請求項2】
1つまたは複数の動作状況は機械の移動方向(72)を含む、請求項1に記載の推進システム。
【請求項3】
1つまたは複数の動作状況は、機械の操作者により要求される推進方向(72)を含む、請求項2に記載の推進システム。
【請求項4】
1つまたは複数の動作状況は、操作者入力に基づく動作パラメータの調整により、連続可変トランスミッションのトルク出力が増大しつつあるか、それとも低減しつつあるかを含む、請求項2に記載の推進システム。
【請求項5】
1つまたは複数の動作状況は、機械の操作者により要求される推進方向(72)を含む、請求項1に記載の推進システム。
【請求項6】
1つまたは複数の動作状況は、操作者入力に基づく動作パラメータの調整により、連続可変トランスミッションのトルク出力が増大しつつあるか、または低減しつつあるかを含む、請求項1に記載の推進システム。
【請求項7】
連続可変トランスミッション(28)を通して推進装置(20)、推進システム制御機構(24)、および1つまたは複数の他の機械システム(14)に動作可能に接続された原動機(18)を有する推進システム(12)を有する機械(10)を推進させる方法であって、
推進システム制御機構を使用して連続可変トランスミッションの第1の動作パラメータを制御しながら、連続可変トランスミッションを使用して原動機から推進装置に動力を伝達することを含み、伝達することは、
操作者入力に基づいて第1の動作パラメータを調整すること、
機械の1つまたは複数の他のシステムの1つまたは複数の第2の動作パラメータに基づいて、第1の動作パラメータの調整限度を決定すること、および
調整限度を第1の動作パラメータに適用すること
を含む、方法。
【請求項8】
機械の1つまたは複数の他のシステムは操舵システム(14)を含み、
機械の1つまたは複数の他のシステムの1つまたは複数の第2の動作パラメータに基づいて、動作パラメータの調整限度を決定することは、操舵システムの動作パラメータに基づいて動作パラメータの調整限度を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
機械の1つまたは複数の他のシステムは、機器(16)を含み、
機械の1つまたは複数の他のシステムの1つまたは複数の第2の動作パラメータに基づいて、動作パラメータの調整限度を決定することは、機器の動作パラメータに基づいて動作パラメータの調整限度を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
動作パラメータの調整限度を決定することは、機械の1つまたは複数の他のシステムの1つまたは複数の第2の動作パラメータに加えて、推進システムの1つまたは複数の第3の動作パラメータに基づいて調整限度を決定することを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502234(P2011−502234A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532041(P2010−532041)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/012247
【国際公開番号】WO2009/058282
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】