説明

連続式生野菜処理装置

【課題】水洗洗浄後の生野菜に損傷を与えることなく均一に水切り及び冷却を行うことができ、省スペースで効率的な連続式生野菜処理装置を提供する。
【解決手段】生野菜の鮮度維持に適した冷却空間101に配設され、生野菜の付着水除去及び冷却する連続式生野菜処理装置100において、搬送面11に複数の通風部11aを有し生野菜を連続搬送するコンベア1と、コンベア1の幅方向両端に設けられた側壁5と、搬送面11を上下振動させる第1の加振部2と、搬送面11に空気流を吹き出す空気吹き出し口3と、コンベア1の下方に延設されたダクト41内を陽圧に維持し、冷却空間101の空気をコンベア下方からコンベア上方に吹き上げる陽圧部4とを備え、コンベア搬送方向上流側から順に、第1の加振部2、空気吹き出し口3、陽圧部4が配置されこれらにより生野菜の付着水を除去するとともに、陽圧部4で冷却空間101の空気により生野菜を冷却する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生野菜の表面に付着した水分の除去及び生野菜の冷却を連続的に効率よく行うことができる連続式生野菜処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外食産業で提供されるサラダ用カット野菜等に使用される生野菜の水切りには、回転ドラムを有する遠心式脱水機が多く用いられている。回転脱水による生野菜の水切りは、生野菜の表面に付着している水分を取り除くだけでなく、ドラム内における生野菜の重なりにより生野菜を傷つけてしまうことがあった。また、必要以上の脱水により生野菜自身の持っている養分を含む水分まで出てしまい旨みが抜けてしまうことがあり、さらに養分が付着した生野菜は細菌繁殖の可能性を高めて日持ちが短くなるなどサラダ用生野菜としての品質を低下させることが指摘されている。
【0003】
そこで、特許文献1(特開昭63−296648号公報)には、回転ドラムを有する遠心式脱水機において、ドラムが回転軸に対して傾斜する構成とするとともに野菜の供給コンベアが左右への移動機能及び往復回転可能なベルトを有する構成とし、野菜がそのままの形で脱水、搬出できるようにすることで野菜脱水後にカット野菜が傷つくことを防止するとともに適度な脱水を行うことを可能としたカット野菜用連続脱水装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平03−103164号公報)には、もやし類をコンベア上に載せて移送しながらエアノズルから空気噴流を吹き付けてもやし類に付着している水滴を吹き飛ばして脱水を行う処理装置が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3(特開2003−93032号公報)には、振動が付与されるコンベア上にもやし類を載せて移送し、もやし類が振動によりコンベアの表面との接触を繰り返すことで付着している水分をコンベアの表面に移して水切りを行う方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−296648号公報
【特許文献2】特開平03−103164号公報
【特許文献3】特開2003−93032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような回転脱水による生野菜の水切りは、生野菜の傷みを防止可能な構成であっても、必要以上の脱水により生野菜の表面に付着している水分を取り除くだけでなく生野菜の旨みが抜けてサラダ用生野菜としての品質を低下させることが指摘されている。
また、特許文献2に開示されるように、エアノズルから空気噴流を吹き付けてもやし類に付着している水滴を吹き飛ばして行う脱水処理は、もやし類まで吹き飛ばして落下させてしまう商品ロスが多く発生し、さらに空気噴流は加圧されて温風になって吹き付けられるためもやし類の鮮度を低下させる問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3に開示されるように、振動が付与されるコンベア上にもやし類を載せて移送し、もやし類が振動によりコンベアの表面との接触を繰り返すことで付着している水分をコンベアの表面に移して水切りを行う処理方法は、もやし類に損傷を与えずに水切りを行うことができるが、所定の水切りを行うためには相応の長さのコンベア長が必要となり、コンベアの設置に大きなスペースを必要とする問題がある。
【0009】
そこで、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、水洗洗浄後の生野菜に損傷を与えることなく均一に水切り及び冷却を行うことができ、適度な水切りと冷却により生野菜の旨みを維持可能であるとともに省スペースで効率的な連続式生野菜処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る連続式生野菜処理装置は、生野菜の鮮度維持に適した冷却空間に配設され、連続搬送される前記生野菜に付着した水を除去しながら冷却する連続式生野菜処理装置において、前記生野菜の搬送面に複数の通風部を有し、該生野菜を連続搬送するコンベアと、前記コンベアの幅方向両端に設けられた側壁と、前記コンベアの下方に設けられ前記搬送面を上下に振動させる第1の加振部と、前記コンベアの上方に設けられ前記搬送面に空気流を吹き出す空気吹き出し口と、前記コンベアの下方に鉛直方向に延設されたダクト内に前記冷却空間の空気を吸引して該ダクト内を陽圧に維持し、前記ダクト内の空気をコンベア下方から前記通風部を介してコンベア上方に吹き上げる陽圧部とを備え、前記コンベアの搬送方向上流側から順に、前記第1の加振部、前記空気吹き出し口、前記陽圧部が配置されこれらにより前記生野菜の付着水を除去するとともに、前記陽圧部で前記冷却空間の空気により前記生野菜を冷却することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、コンベアで搬送される水洗処理後の生野菜は、まず第1の加振部で上下に振動を与えられ、コンベア上で飛び跳ねさせられながらコンベア幅全体に均されるとともに付着している水をコンベアに落下させる。そして、空気吹き出し口から吹き出される空気により生野菜に付着している水滴を吹き飛ばすことにより生野菜は適度な水切り状態となり、次いで陽圧部でコンベアの下方から上方に吹き上げる冷却空間の空気により生野菜に付着している余分な水滴をさらに除去するとともに、冷却空間の空気によって生野菜を冷却する。
【0012】
このように、3段階に分けて生野菜の付着水除去を行なうことにより、振動や空気吹き出しを強力にし過ぎることなく段階的に付着水を除去することが可能で、生野菜が傷ついたり吹き飛ばされることを防止できる。さらに、適度な水切りと冷却が可能であることから生野菜の旨みを維持することができ、サラダ用カット野菜等の連続的な水切り、冷却に適した処理装置とすることができる。
また、最も上流側に第1の加振部を配置し、コンベアの搬送面に振動を与えているため、生野菜を搬送面上で分散させることができ下流側での付着水除去を効率よく行なえる。特に、2段目の付着水除去手段として空気吹き出し口を配置しているため、搬送面上に分散した生野菜に均一に空気をあてることが可能となり、生野菜の付着水除去効率を高くできる。なお、空気吹き出し口から吹き出す空気の温度は、冷却空間の空気温度と同一かこれに近い温度であることが好ましい。
【0013】
さらに、3段目の付着水除去手段である陽圧部では、装置周囲の冷却空間の空気を吸引して陽圧にしたダクトから通風部を介してコンベア上方に空気を吹き上げるようにしたため、生野菜の付着水除去と冷却を同時に行なうことができる。また、生野菜の付着水除去時に冷却を行なう構成としたため、生野菜の旨みを維持することが可能となる。特に、ファン等により直接生野菜に風をあてると生野菜が部分的に乾燥しすぎるおそれがあるが、陽圧にしたダクトから通風部を介して空気が吹き上げるようにしたため、均一に適度な風量で生野菜に空気をあてることができる。
さらにまた、コンベアの幅方向両端に側壁を配置しているため、振動や吹き出し空気や吹き上げ空気により生野菜がコンベアから落下することを防止できる。
上記したように、生野菜の付着水除去及び冷却を効率よく行なうことが可能となるため、コンベアの搬送距離を短くでき、省スペース化が図れる。
【0014】
また、前記加振部は、前記コンベアの搬送面背面を打撃して振動を与える回転ハンマであり、該回転ハンマが前記コンベアの幅方向に複数配列されていることが好ましい。
このように、回転ハンマをコンベアの幅方向に複数配列することにより、コンベアの幅方向に均一に生野菜を分散させることができる。
【0015】
また、前記空気吹き出し口は、前記コンベアの幅方向に長尺に開口したスリット状に形成されており、前記空気吹き出し口が存在する領域に、前記コンベアの上部を覆うように生野菜飛散防止用蓋が設けられていることが好ましい。
このように、空気吹き出し口をスリット状に形成することにより、少ない空気量で生野菜全体に均一に空気を吹き付けることができる。また、生野菜飛散防止用蓋を設けることにより、生野菜が吹き出し空気により飛散することを防止できる。
【0016】
さらに、前記陽圧部は、前記ダクトの下部に軸流扇が設けられており、該軸流扇で前記ダクト内に前記冷却空間の空気を吸引するように構成することが好ましい。
このように、ダクト下部に軸流扇を設けることにより、ダクト内部に冷却空間の空気を容易に吸引することが可能となる。
【0017】
さらにまた、前記陽圧部が位置する前記コンベアの下方に、該コンベアを上下に振動させる第2の加振部が設けられていることが好ましい。
このように、第2の加振部により陽圧部の搬送面に振動を与えることにより、生野菜を搬送面上に均一に分散させることができ、分散した生野菜に対して効率よく付着水除去及び均一な冷却を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のように本発明によれば、第1の加振部と、空気吹き出し口と、陽圧部との3段階に分けて付着水除去を行なうことにより、振動や空気吹き出しを強力にし過ぎることなく段階的に付着水除去することが可能で、生野菜が傷ついたり吹き飛ばされることを防止できる。
また、最も上流側に配置された第1の加振部により生野菜を搬送面上で分散させることができ、下流側での生野菜の付着水除去を効率よく行なえる。特に、2段目の付着水除去手段として空気吹き出し口を配置しているため、搬送面上に分散した生野菜に均一に空気をあてることが可能となり、生野菜の付着水除去効率を高くできる。さらに、3段目の付着水除去手段である陽圧部では、生野菜の付着水除去と冷却を同時に行なうことができ、これにより生野菜の旨みを維持することが可能となる。さらにまた、コンベアの幅方向両端に側壁を配置しているため、振動や吹き出し空気により生野菜がコンベアから落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続式生野菜処理装置の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る連続式生野菜処理装置の平面図である。
【図3】図2に示す連続式生野菜処理装置のA−A矢視図である。
【図4】図2に示す連続式生野菜処理装置のB−B矢視図であり、(A)は回転ハンマがコンベアと離間している状態を示す図で、(B)は回転ハンマによりコンベアに振動を与えている状態を示す図である。
【図5】スリット状の空気吹き出しによる水切り効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。本発明の連続式生野菜処理装置で行なう処理は生野菜の付着水除去と冷却であり、処理対象には例えばサラダ用カット野菜に使用される水洗処理後の生野菜が好適に用いられる。
【0021】
本発明に係る連続式生野菜処理装置の一実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。
連続式生野菜処理装置100は、生野菜の鮮度維持に適した冷却空間101に配設され主に、生野菜を連続搬送するコンベア1と、コンベア1の幅方向両端に設けられた側壁と、コンベア1に沿って搬送方向上流側から順に設けられた第1の加振部2、空気吹き出し口3、陽圧部4とを備える。そして、第1の加振部2、空気吹き出し口3、陽圧部4により生野菜の付着水を除去するとともに、陽圧部4で冷却空間101の空気により生野菜を冷却するように構成されている。
なお、冷却空間101の温度は、5℃〜15℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10℃前後であるとよい。これは、上記範囲内の温度が、最も生野菜の鮮度を高く維持できるためである。
【0022】
前記コンベア1は、搬送面11であるコンベアベルトの少なくとも搬送方向両端をローラ12で支持された構成を備え、ローラ12を駆動するモータ(不図示)により図中矢印方向に搬送面11が移動するようになっている。コンベア1の搬送面11は複数の通風部11aを有している。通風部11aは、搬送面11の下方空間と上方空間とを連通する穴若しくは隙間であり、搬送面11全面に均一に存在していることが好ましい。特にコンベア1はメッシュコンベアであることが好ましい。これは、メッシュコンベアは通風部11aを小さくでき生野菜が落下することなく、且つ搬送面11に均一に通風部11aが存在することにより均一な付着水除去が可能であるためである。
【0023】
前記側壁5は、コンベア1の搬送面11の幅方向両端に立設されており、搬送面11上を搬送される生野菜が、第1の加振部2による振動や空気吹き出し口3からの吹き出し空気や陽圧部4からの吹き上げ空気によって搬送面11の幅方向左右から落下することを防止する。ここでは、側壁5のみを記載した例を示したが、コンベア1を囲繞する中空ケーシングであってもよい。
【0024】
前記加振部2は、搬送面11の下方に設けられ、搬送面11を上下に振動させる。該加振部2はコンベア1の搬送面背面を打撃して振動を与える回転ハンマ21であることが好ましい。具体的には、複数の回転ハンマ21をコンベア1の幅方向に、互いに所定間隙を存して配列し、モータ(不図示)により回転ハンマ21を回転させてコンベア1の搬送面11背面に回転ハンマ21を周期的に当てる。図4(A)に示すように回転ハンマは楕円状に形成されており、回転ハンマ21の長軸が水平に位置する時には搬送面11から離間し、図4(B)に示すように回転ハンマ21の長軸が回転して鉛直方向に近づくにつれて搬送面11背面に接触し、搬送面11背面を押し上げ、ΔHだけ搬送面11が上昇することとなる。回転ハンマ21はさらに回転するに従い図4(A)の状態に戻る。これらが周期的に繰り返されることにより、搬送面11に上下方向の振動が与えられる。また、コンベア幅方向に配列された複数の回転ハンマ21が、コンベア搬送方向に複数列設けられていることが好ましい。図2では一例として回転ハンマ列を2列設けた場合を示している。このように、回転ハンマ列を複数列設けることにより、搬送面11の広域に振動を与えることが可能となる。また、複数の回転ハンマ21、及び回転ハンマ列は、それぞれが同期して駆動されることが好ましい。
【0025】
前記空気吹き出し口3は、コンベア1の上方に設けられ搬送面11に空気流を吹き出す。好ましくは、該空気吹き出し口3は、コンベア幅方向に長尺に開口したスリット状に形成されているとよい。このとき、開口幅は側壁5の両壁内面に亘って形成される。これにより、少ない空気量で生野菜全体に均一に空気を吹き付けることができる。このスリット状の空気吹き出し口3は、空気が供給されるヘッダ31の下部に設けられており、ヘッダ31からの空気を空気吹き出し口3から搬送面11に吹き出すようになっている。このとき、空気吹き出し口3は、上方から下方の搬送面11に鉛直方向に空気を吹き出すように構成されていることが好ましく、これにより搬送面11上の生野菜が吹き飛ばされることを防止できる。また、スリット状の空気吹き出し口3は、コンベア1の搬送方向に所定間隔を存して複数設けられていることが好ましい。図1では一例として2つの空気吹き出し口3を設けた場合を示している。
【0026】
なお、空気吹き出し口3から吹き出す空気は、冷却空間101と同一温度又はこれに近い温度であることが好ましい。これにより、生野菜の鮮度を維持することが可能となる。
また、スリット状の空気吹き出し口3より帯状の空気流の噴射を断続的に数回行なうことが好ましい。これにより常時噴射するよりも生野菜の乾燥を防ぎ鮮度を維持できる。最も好適には、空気吹き出し口3からの空気の吹き出し流速を80〜120m/sとし、2〜4回噴射を行なうとよい。これにより、生野菜を適度な水切り状態とすることができる。
【0027】
さらに、空気吹き出し口3が存在する領域には、コンベア1の上部を覆うように生野菜飛散防止用蓋32が設けられている。この生野菜飛散防止用蓋32を設けることによって、空気吹き出し口3からの吹き出し空気により生野菜が飛散してコンベア1から落下することを防止できる。
【0028】
前記陽圧部4は、コンベア下方に鉛直方向に延設されたダクト41内に冷却空間101の空気を吸引して陽圧に維持し、この空気をコンベア下方から通風部11aを介してコンベア上方に吹き上げる。具体的には、円筒状に形成されたダクト41がコンベア1の反転搬送面13下部より鉛直方向下方に延設され、該ダクト41の下部に軸流扇42が配置されている。ダクト41の幅は側壁5の両壁内面に亘って設けられている。軸流扇42は、該軸流扇42下方の冷却空間101より上方のダクト41内に冷却空間101の空気を吸引し、ダクト41内を所定の陽圧に維持する。ダクト41の上部は側壁5で囲繞されたコンベア空間に連通しており、陽圧のダクト41から空気が上方に噴出し、搬送面11の通風部11aを介して搬送面上方に空気が吹き上げるようになっている。最も好適には、コンベア下方から上方に抜ける風速が5〜10m/sとなるようにダクト41内を陽圧に維持するとよい。なお、コンベア空間は中空ケーシングにより囲繞されていることが好ましく、これによりダクト41から噴き上げた冷却空気がコンベア空間内を通流して生野菜の冷却効果を高めることができる。
【0029】
また、陽圧部4が位置するコンベア1の下方に、該コンベア1を上下に振動させる第2の加振部が設けられている。この第2の加振部は、第1の加振部と同様に回転ハンマ45であることが好ましい。回転ハンマ45は、複数配列されていてもよい。
【0030】
次に、上記した構成を備える連続式生野菜処理装置100による作用を説明する。なお、以下に示す数値は実際に実験により与えた/得られた数値であり、一例として示している。
水洗洗浄後のカットされたサラダ用生野菜は、コンベア1の搬送面11に載置されて移送中に、まず第1の加振部2で回転ハンマ21により上下に振動を与えられた搬送面11上で飛び跳ねさせられながらコンベア幅全体に均されるとともに、生野菜に付着している水をコンベア1に落下させる。そして、スリット状の空気吹き出し口3から風速100m/sの帯状の空気流を2回噴射し、これにより生野菜に付着している水滴が吹き飛ばされて5%の水切りが達成される。
【0031】
次いで、陽圧部4で、回転ハンマ45からの振動により生野菜は搬送面11上を飛び跳ねながら、コンベア1の下方から上方に吹き上げる冷却空間101の空気により生野菜に付着している余分な水滴がさらに除去されるとともに、冷却空間101の空気によって短い距離で効率良く生野菜が冷却される。
【0032】
このように、第1の加振部2と空気吹き出し口3と陽圧部4の3段階に分けて生野菜の付着水除去を行なうことにより、振動や空気吹き出しを強力にし過ぎることなく段階的に付着水除去することが可能で、生野菜が傷ついたり吹き飛ばされることを防止できる。また、最も上流側に第1の加振部2を配置し、コンベア1の搬送面11に振動を与えているため、生野菜を搬送面11上で分散させることができ下流側での生野菜の付着水除去を効率よく行なえる。特に、2段目の付着水除去手段として空気吹き出し口3を配置しているため、搬送面11上に分散した生野菜に均一に空気をあてることが可能となり、生野菜の付着水除去効率を高くできる。
【0033】
さらに、3段目の付着水除去手段である陽圧部4では、冷却空間101の空気を吸引して陽圧にしたダクト41から通風部11aを介してコンベア上方に空気を吹き上げるようにしたため、生野菜の付着水除去と冷却を同時に行なうことができる。また、生野菜の付着水除去時に冷却を行なう構成としたため、生野菜の旨みを維持することが可能となる。特に、ファン等により直接生野菜に風をあてると生野菜が部分的に乾燥しすぎるおそれがあるが、陽圧にしたダクト41から通風部11aを介して空気が吹き上げるようにしたため、均一に適度な風量で生野菜に空気をあてることができる。
上記したように、生野菜の付着水除去及び冷却を効率よく行なうことが可能となるため、コンベアの搬送距離を短くでき、省スペース化が図れる。
【0034】
本実施形態の連続式野菜処理装置100において、2段目の付着水除去手段である空気吹き出し口3による生野菜の除水率を評価する試験を行なった。
処理対象である生野菜には、キャベツ用スライス機にてスライスしたキャベツ(キャベツ千切り)を用い、キャベツ千切りに重量比20%の水を加えた。なお、水の重量比20%はキャベツ千切りの吸水試験に基づき設定したもので、本試験対象となるキャベツ千切りを、水洗洗浄により吸水したキャベツ千切りとほぼ同じ状態とするためである。
他の試験条件は、室内環境の温度17.2℃、相対湿度45%で、コンベアスピード3.2m/min、スリット状の空気吹き出し口3の吹き出し流速100m/sとした。なお、この試験では冷却効果の評価はしていないため、室内環境は冷却空間の温度範囲には設定していない。
【0035】
これらの試験条件で、コンベア1の搬送面11にキャベツ千切りを厚さ30mmで堆積させた場合と、厚さ50mmで堆積させた場合の2例について、スリット状に形成した空気吹き出し口3を1回通過させるごとにそれぞれの重量歩留を測定した。
【0036】
図5に試験結果を示す。
キャベツ千切りを厚さ30mmに堆積させた場合、その重量歩留は、空気吹き出し口3の通過回数1回のときは96.8%、2回のときは94.6%で、通過回数が増加するとともに重量歩留は比例的に低下し、通過回数4回のときは91.0%にまでなる。キャベツ千切りを厚さ50mmに堆積させた場合も同様に、空気吹き出し口3の通過回数が増加するとともにその重量歩留は比例的に低下する。キャベツ千切りの重量歩留が低下するということは、キャベツ千切りの除水率が増加するということである。すなわちこの結果から、コンベア1の搬送面11に沿ってスリット状空気吹き出し口3の設置本数を多くした方が除水率が高くなることがわかる。
【0037】
ここで、本装置の1段目の付着水除去手段である第1の加振部2と、3段目の付着水除去手段である陽圧部4とにおける付着水除去作用を考慮した上で、2段目の空気吹き出し口3における適切な除水率は、少なくとも5%と考えられる。したがって、キャベツ千切りの堆積厚さが30mmの場合は少なくとも空気吹き出し口3を2本設置し、堆積厚さが50mmの場合は少なくとも空気吹き出し口3を4本設置することが好ましい。
【0038】
一方、キャベツ千切りの堆積厚さに着目すると、例えば空気吹き出し口3の通過回数が2回のとき、堆積厚さ30mmでは重量歩留が94.6%であるのに対して、堆積厚さ50mmでは重量歩留が97.2%である。その差は空気吹き出し口3の通過回数が増加するにしたがって開いていく。この結果から、堆積厚さが薄い方が除水率が高くなることがわかる。したがって、空気吹き出し口3の設置本数が固定である場合、コンベア1上に供給するキャベツ千切りの堆積厚さは、所望の除水率が得られる堆積厚さ以下とすることが好ましい。
【0039】
なお、本装置の陽圧部4においては、図5のように厚さ50mmに堆積したキャベツ千切りが搬送されて来ても回転ハンマ42からの振動を受けるので、コンベア下方からの吹き上げ空気が堆積したキャベツ千切りの中を通過して短い距離で効率良く冷却することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 コンベア
2 第1の加振部
3 空気吹き出し口
4 陽圧部
5 側壁
11 搬送面
11a 通風部
21 回転ハンマ
31 ヘッダ
32 生野菜飛散防止用蓋
41 ダクト
42 軸流扇
45 回転ハンマ
100 連続式野菜処理装置
101 冷却空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生野菜の鮮度維持に適した冷却空間に配設され、連続搬送される前記生野菜に付着した水を除去しながら冷却する連続式生野菜処理装置において、
前記生野菜の搬送面に複数の通風部を有し、該生野菜を連続搬送するコンベアと、
前記コンベアの幅方向両端に設けられた側壁と、
前記コンベアの下方に設けられ前記搬送面を上下に振動させる第1の加振部と、
前記コンベアの上方に設けられ前記搬送面に空気流を吹き出す空気吹き出し口と、
前記コンベアの下方に鉛直方向に延設されたダクト内に前記冷却空間の空気を吸引して該ダクト内を陽圧に維持し、前記ダクト内の空気をコンベア下方から前記通風部を介してコンベア上方に吹き上げる陽圧部とを備え、
前記コンベアの搬送方向上流側から順に、前記第1の加振部、前記空気吹き出し口、前記陽圧部が配置されこれらにより前記生野菜の付着水を除去するとともに、前記陽圧部で前記冷却空間の空気により前記生野菜を冷却することを特徴とする連続式生野菜処理装置。
【請求項2】
前記加振部は、前記コンベアの搬送面背面を打撃して振動を与える回転ハンマであり、該回転ハンマが前記コンベアの幅方向に複数配列されていることを特徴とする請求項1に記載の連続式生野菜処理装置。
【請求項3】
前記空気吹き出し口は、前記コンベアの幅方向に長尺に開口したスリット状に形成されており、前記空気吹き出し口が存在する領域に、前記コンベアの上部を覆うように生野菜飛散防止用蓋が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続式生野菜処理装置。
【請求項4】
前記陽圧部は、前記ダクトの下部に軸流扇が設けられており、該軸流扇で前記ダクト内に前記冷却空間の空気を吸引するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の連続式生野菜処理装置。
【請求項5】
前記陽圧部が位置する前記コンベアの下方に、該コンベアを上下に振動させる第2の加振部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の連続式生野菜処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−254758(P2011−254758A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132563(P2010−132563)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】