連続成膜装置
【課題】 ターゲットの交換や成膜処理ソースのメンテナンスが容易で、しかも設置スペースが少なくて済む連続成膜装置を提供する。
【解決手段】 本発明の連続成膜装置は、一端が閉塞されたチャンバ本体1と、前記チャンバ本体1の開口部を中間フランジ31を介して開閉自在に閉塞するベースフランジ2を有する。前記ベースフランジ2には巻出しロール12、巻取りロール13及び成膜ロール11を回転自在に支持するロールユニット3が設けられる。前記中間フランジ31には、前記ベースフランジ2が前記チャンバ本体1の開口部を中間フランジ31と共に閉塞する際、前記ロールユニット3が挿通する挿通穴が形成されると共に前記成膜ロール11に対向するように成膜処理ソース4が設けられる。
【解決手段】 本発明の連続成膜装置は、一端が閉塞されたチャンバ本体1と、前記チャンバ本体1の開口部を中間フランジ31を介して開閉自在に閉塞するベースフランジ2を有する。前記ベースフランジ2には巻出しロール12、巻取りロール13及び成膜ロール11を回転自在に支持するロールユニット3が設けられる。前記中間フランジ31には、前記ベースフランジ2が前記チャンバ本体1の開口部を中間フランジ31と共に閉塞する際、前記ロールユニット3が挿通する挿通穴が形成されると共に前記成膜ロール11に対向するように成膜処理ソース4が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状の被成膜基材を走行させつつ、その表面に機能性薄膜を連続的に成膜する連続成膜装置(ロールコーター)に関する。
【背景技術】
【0002】
連続成膜装置は、プラスチックや無機質などで形成された長尺のフィルムやシートからなる被成膜基材を、真空チャンバ内で連続的に走行させ、その表面に種々の機能性薄膜をスパッタリングや蒸着によって成膜するものである。
このような連続成膜装置の一例を図11及び図12に示す。この連続成膜装置は、筒状部とその一端を閉塞する端板23とによって構成されたチャンバ本体1と、チャンバ本体1の他端開口部を開閉自在に気密に閉塞するベースフランジ2とを備え、前記ベースフランジ2をチャンバ本体1の開口部に気密に連結一体化することにより真空チャンバが構成される。前記ベースフランジ2は、モータを備えた走行機構により架台5に敷設されたレール6A,6B上を走行する台車7に立設され、これよってチャンバ本体1に対して進退自在とされる。8はベースフランジ2の立設用支持部材である。前記ベースフランジ2には、ベースフランジ2がチャンバ本体1に連結したとき、チャンバ本体1の内部に収納されるロールユニット3が設けられている。
【0003】
このロールユニット3は、被成膜基材(以下、単に「フィルム」という。)を搬送するものであり、フィルムが巻き掛けられる成膜ロール11と、上部に設けられた巻出しロール12及び巻取りロール13と、前記巻出しロール12から巻出されたフィルムを成膜ロール11へ導く案内ロール14及びロードセルロール15と、成膜ロール11から前記巻取りロール13へ導くロードセルロール16と案内ロール17を備え、これらのロールは、前記ベースフランジ2に上部ピラー19、下部ピラー20,20によって連結支持されたロール支持板21と、前記ベースフランジ2に設けられた支持部材によって回転自在に両持ち支持されている。前記ベースフランジ2の後部には前記成膜ロール11、巻出しロール12、巻取りロール13を回転駆動するモータ及び駆動機構(図示省略)が設けられる。前記成膜ロール11は、定速モータにより定速回転されて、巻き掛けられたフイルムを搬送する。巻出しロール12並びに巻取りロール13は、ロードセルロール15,16で検出される張力をフィードバックしてトルク制御されており、所定の張力条件でフィルムを巻出し、巻き取る。案内ロール14,17はフィルムの搬送軌道方向を変えるのに使用され、ロールへの巻取り角などを適正範囲に維持する役目を有する。
【0004】
一方、前記チャンバ本体1の端板23には、前記ベースフランジ2をチャンバ本体1に連結したとき、前記成膜ロール11の外周面に対向するように成膜処理ソース4がカソードフランジ24を介して着脱自在に片持ち状に支持されている。前記チャンバ本体1には、覗き窓25が設けられ、またターボ分子ポンプなどの真空ポンプ26が複数個付設され、これらのポンプ26には粗引配管27が連通接続される。またチャンバ本体1の端板23には、水蒸気を吸着排気するためのコールドトラップ配管28が連通接続される。
【0005】
フィルムへの成膜は以下のようにして行われる。まず、ベースフランジ2をチャンバ本体1の開口部に気密に連結して、真空チャンバを構成し、その内部を真空排気する。その後、フィルムを前記巻出しロール12から案内ロール14、ロードセルロール15、成膜ロール11へと搬送し、成膜ロール11上で成膜マスク18を介して、例えばスパッタリングにより成膜する。成膜されたフィルムは、ロードセルロール16、案内ロール17を介して巻取りロール13へと搬送され、同ロールに巻き取られる。
【0006】
成膜後、ベースフランジ2を後方へ移動してロールユニット3をチャンバ本体1の外部へ引き出した状態(解放状態)で、フィルムボビンの交換や通紙、成膜マスクの清掃が行われる。一方、成膜処理ソース4に設けられたターゲットの消耗に伴ってこれを交換したり、また成膜処理ソース4のメンテナンス、交換が適宜行われる。
ターゲットの交換は、チャンバ本体1内に作業者が入り、成膜処理ソース4に付設されたターゲットを人力で交換している。また、成膜処理ソース4が片持ち構造のため十分な剛性を要し、重量構造物となるため、成膜処理ソースのメンテナンス、交換などは、チャンバ本体1の端板23の後方に設けた専用治具29を搭載したメンテナンス台車30を用いて行われている。
【0007】
上記連続成膜装置では、チャンバ本体1はその筒状部の一端が端板23によって閉塞されたものであり、成膜処理ソース4はチャンバ本体1の端板23から挿脱することによってチャンバ本体1内に設置されるが、特開平10−36987号公報(特許文献1)に記載されているように、チャンバ本体1の筒状部に対して端板23を開閉自在としたものもがある。また、前記チャンバ本体1の筒状部は、その横断面形状は、通常、丸形であるが、特開2001−302050号公報に記載されているように、方形や多角形など種々の形状のものがある。
【特許文献1】特開平10−36967号公報
【特許文献2】特開2001−302050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
連続成膜装置を用いてフィルムに成膜する場合、ターゲットの消耗に伴ってこれを交換する必要があるが、ターゲットは長さが1mを超える様な大形のものも用いられている。このようなものは、重量が大きいため、作業性が悪い。さらに、ターゲットは成膜ロールに対向させる必要があるため、図例のように上側に配置された成膜処理ソース4のターゲットは、対向面が下向きに傾き、取り付けの際にターゲットが落下しないように注意して作業を行う必要がある。
また、成膜処理ソース4の着脱は、カソードカバー類を外して、専用治具29の連結面とカソードフランジ24とを合わせて固定し、成膜処理ソース4をカソードフランジごとチャンバ本体1の後方へ引き出す必要があるが、チャンバ本体1の端板23の後部には真空ポンプ26や各種配管が付設されているので、メンテナンス台車30の移動ストロークが必要以上に大きくなり、装置の設置スペース効率が悪いという問題がある。特に、床単価の高いクリーンルームに設置する場合はトータル設備コストが高くなる。また、成膜処理ソースの交換作業についても、専用治具29にカソードフランジ24を連結した後、回転させて成膜処理ソース4がリフターのレベルと合うようにして、チャンバ本体1から引き出す、といった煩わしい作業を行う必要がある。
【0009】
一方、引用文献1の装置のように、チャンバ本体1の端板23を開閉自在とすることで、この端板23に片持ち支持した成膜処理ソース4のメンテナンス、ターゲットの交換が容易になるが、ロールユニット3をチャンバ本体1から引き出すのに必要なベースフランジ2の移動スペースと、成膜処理ソース4をチャンバ本体1の筒状部から引き出すための端板23の移動スペースが必要であり、設置スペースが大きくなるという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、ターゲットの交換や成膜処理ソースのメンテナンスが容易で、しかも設置スペースが少なくて済む連続成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連続成膜装置は、巻出しロールから成膜ロールに巻き付けられた被成膜基材の表面に機能性被膜を成膜し、成膜後の被成膜基材を巻取りロールに巻き取る連続成膜装置であって、一端が閉塞されたチャンバ本体と、前記チャンバ本体の開口部を中間フランジを介して開閉自在に閉塞するベースフランジを有し、前記ベースフランジには前記巻出しロール、巻取りロール及び成膜ロールを回転自在に支持するロールユニットが設けられ、前記中間フランジには、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記成膜ロールに対向するように成膜処理ソースが設けられたものである。
【0011】
この連続成膜装置によれば、巻出しロールや巻取りロールのフィルムボビンの交換や成膜マスクの清掃などの際は、中間フランジをチャンバ本体の開口部に連結したまま、ベースフランジを後方へ移動させて、ロールユニットをベースフランジごとチャンバ本体から引き出すことで、スペースのある装置の側方からロールや成膜マスクに容易にアクセスすることができ、フィルムボビンの交換等の作業を容易に行うことができる。また、成膜処理ソースをメンテナンスしたり、成膜ターゲットの交換を行う際は、ベースフランジを後方へ移動させ、中間フランジをベースフランジ側に移動させて成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出すことにより、成膜処理ソースに対しても装置の側方から容易にアクセスすることができ、これらの作業を容易に行うことができる。この際、中間フランジは、ベースフランジに隣接するまで後方へ移動させることができるため、メンテナンス領域を含めた装置の設置スペースが小さくて済み、設置スペース効率を向上させることができる。特に、連続成膜装置を高価なクリーンルームに設置する際には、その床面積を小さくすることができ、さらにチャンバ本体の閉塞側端部をクリーンルームの壁面に埋め込むことができるので、クリーンルーム内の設置面積をより小さくすることができ、クリーンルームの建設費を含むトータルな設備費の低減を図ることができる。
【0012】
前記連続成膜装置において、前記中間フランジに対向するように成膜処理ソース支持板を設け、前記成膜処理ソースを前記中間フランジと成膜処理ソース支持板とに設けられた支持部材をおくことで両持ち支持することができる。このような両持ち支持構造は、成膜処理ソースが長尺である場合においても、成膜処理ソースを高剛性構造とする必要がなくなり、成膜処理ソースを軽量化することができ、これに伴ってメンテナンス時の作業性、安全性が向上する。ここでいう成膜処理ソースとは、CVD(化学気相成膜)ソース、イオンビームソース、プラズマソース、蒸着ソース、スパッタソース等の各種成膜に係わる処理を行うユニットを指す。
【0013】
また、前記成膜処理ソースを両持ち支持する場合、成膜処理ソースは前記支持部材に着脱自在に支持することが好ましい。これにより、成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出した状態(中間フランジの解放状態)で装置の側方から成膜処理ソースを支持部材に対して容易に着脱し、交換することができるので、交換作業が大幅に向上する。これによって、例えば成膜処理ソースがロータリーマグネトロンスパッタソースの場合においても、その円筒状ターゲットを容易に交換することができる。
【0014】
また、前記成膜処理ソースは、前記支持部材に回転可能に支持されるようにすることが好ましい。成膜処理ソースを回転可能に支持することで、中間フランジを開放した状態で、成膜処理ソースの処理側を成膜ロール表面(内側)へ向いた方向から装置外側に向けるように回転させることで、装置の側方(装置外側)から容易にアクセスすることができるようになり、メンテナンス性をより向上させることができる。
【0015】
前記成膜処理ソースとしてスパッタソースを用いる場合、成膜処理ソースを前記支持部材に回転可能に支持するように設けることで、長尺のプレーナー型スパッタソースの場合であっても、重量のある長尺ターゲットの交換を容易かつ安全に行うことができる。すなわち、長尺ターゲットの交換の際に、ターゲットの表面を外側に向けるように、しかもターゲットが落下し難いようにターゲットの表面を斜め上向きにするように成膜処理ソースを回転させることで、重量のある長尺ターゲットであっても、これを容易かつ安全に取り付け、取り外しすることができる。スパッタソースは、プレーナー型に限定されず、柱状などであってもかまわない。
【0016】
また、前記連続成膜装置において、前記成膜処理ソースを前記中間フランジにヒンジ機構を介して片持ち支持された構造とすることもできる。このような構造とすることにより、中間フランジを解放した状態で、成膜処理ソースをヒンジ機構によって外側に容易に開くことができるので、広い場所でターゲットの交換や成膜処理ソースのメンテナンスを容易に行うことができ、作業性、安全性が向上する。
【0017】
また、前記連続成膜装置において、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記中間フランジに前記ロールユニットが挿通する挿通穴が形成されたものとすることで、中間フランジが環状となり、ベースフランジと中間フランジ、中間フランジとチャンバ本体の開口部とがそれぞれ外周部で当接させることができ、シール部材を介してこれらを容易に気密に連結することができる。しかも、ベースフランジ及び中間フランジの連結面が平坦状となるため、その製作も容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の連続成膜装置によれば、ロールユニットを備えたベースフランジとは別に、ベースフランジとチャンバ本体との間に中間フランジを設け、これに成膜処理ソースを付設するようにしたので、ロールユニットをチャンバ本体から引き出すようにベースフランジを移動させることでロールユニット関連のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出すように中間フランジをベースフランジ側に移動させることで、ターゲットや成膜処理ソースのメンテナンスや交換も容易に行うことができ、しかも設置スペースも少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の連続成膜装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係るスパッタリング連続成膜装置の全体側面図を、図2は図1のA矢視から見た正面図を示している。
この連続成膜装置は、筒状部の一端が端板23によって閉塞されたチャンバ本体1と、前記チャンバ本体1の開口部に対して近接離反自在に移動し、成膜ロール11、巻出しロール12、巻取りロール13、案内ロール14,17、ロードセルロール15,16、成膜マスク18などを備えたロールユニット3が設けられたベースフランジ2と、前記チャンバ本体1とベースフランジ2との間に移動自在に設けられた中間フランジ31を備える。前記中間フランジ31はベースフランジ2と同様、架台5に敷設されたレール32A,32B上を走行する台車33に立設され、図示省略したモータによりレール上を走行するようになっている。34は中間フランジ31の両側部に設けられる立設用支持部材である。前記チャンバ本体1には、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプ26およびその粗引配管、コールドトラップ配管等が設けられているが、配管類は記載省略されている。なお、図11及び図12に示した従来の連続成膜装置と同様の構成は、同一符号が付してあり、その説明を省略する。また、図1は、説明の便宜上、側面から見て各部構成が重ならないように描かれているが、後述するように、ベースフランジ2のロールユニット3と中間フランジ2とは長さ方向において正面から見て重なってもよいので、架台5の長さは、図7に示すように、図1より短くすることができる。
【0020】
前記中間フランジ2には、図2や図5に示すように、前記ベースフランジ2を移動する際、そのロールユニット3を挿通する挿通穴35が形成されており、その下部には前記ロールユニット3の成膜ロール11に対向するように左右に上下2段のスパッタソース(成膜処理ソース)4が設けられている。前記中間フランジ31をチャンバ本体1にシール部材を介して気密に連結し、さらに前記ロールユニット3を前記挿通穴35に挿通させて、ベースフランジ2を前記中間フランジ31の外面に気密に連結することで、前記チャンバ本体1の開口部は気密に閉塞され、真空チャンバが構成される。この状態において、チャンバ本体1内では、前記スパッタソース4は前記ロールユニット3の成膜ロール11の長さ方向に沿って対向配置される。前記スパッタソース4は、図1に示すように、前記中間フランジ31にピラー36を介して設けた成膜処理ソース支持板37と、中間フランジ31に各々設けた支持部材38,39によって両持ち支持されている。図2において、中間フランジ31の外周部の二点鎖線(裏面も同様)はシール部位を示し、シール材は、チャンバ本体1の開口フランジ部及びベースフランジ2の外周部に設けられる。
【0021】
前記スパッタソース4としては各種のものを用いることができるが、その一例として、プレーナー型(平板型)マグネトロンスパッタソース4Aの取付け構造を図3に示す。
このスパッタソース4Aは、平板状のターゲット41と、前記ターゲット41が一側面に着脱自在に取り付けられるカソードボディ42と、前記カソードボディ42の内部に設けられ、マグネトロン放電を行うためのマグネットアセンブリ43とで構成される。中間フランジ31及び成膜処理ソース支持板37には、前記支持部材38,39が付設され、これらは絶縁樹脂で形成された軸受体38A、39Aを備え、前記カソードボディ42の両端に形成された軸部が前記軸受体38A,39Aに回転自在に支持される。なお、前記カソードボディ42は、その内部に冷却水路(図示省略)が形成されており、成膜ロール11側に取り付けられたターゲット41を冷却するようになっている。
【0022】
前記絶縁樹脂で形成された軸受体38A,39Aを有する支持部材38,39は、前記軸受体38A,39A及びこれを保持する外筒部が、図4に示すように2つ割り構造となっていて、その上蓋部44がボルトによって基部45に取付け取外し自在になっている。このため、上蓋部44を外した状態でカソードボディ42の軸部を基部45の軸受半部に載せ、上蓋部44を取り付けることで、カソードボディ42は支持部材38,39に対して着脱自在とされる。前記軸受体38A,39Aは、カソードボディ42の絶縁材としての役目と共に、メンテナンスの際の回転軸受としての役目を果たす。このカソードボディ42は、成膜時には前記支持部材38,39の外側に設けられた接地シールド部材46に設けた回転止め47によって回転しないように固定される。また、前記支持部材38,39の内側(成膜ロール側)にも接地シールド部材48がターゲットの端部を覆うように設けられる。
【0023】
前記ベースフランジ2側から見た前記中間フランジ31の裏面には、図5、図6に示すように、凹部50が形成され、その底面に絶縁樹脂で形成されたシール部材51が前記支持部材38と同心状に気密に付設され、その中心部に引き出しアダプタ52が設けられ、この引き出しアダプタ52に冷却水配管53A,53B及び電源ケーブル54が取り付けられる。供給側の冷却水配管53Aから供給された冷却水はアダプタ内に形成された流路を通して前記カソードボディ42の冷却水路に冷却水を供給し、これを冷却した後、リターン側の冷却水配管53Bを通って外部に排出される。なお、図5において、中間フランジ31の立設用支持部材34は図示省略されている。
【0024】
前記凹部50に連通し、中間フランジ31の側面に開口する配管・配線孔55が形成され、前記冷却水管53A,53B、電源ケーブル54はこの配管・配線孔55を通して外部へ引き出される。一方、前記凹部50に対向したベースフランジ2には、図3に示すように、前記引き出しアダプタ52が干渉しないように穴部56が設けられ、その外側は蓋57によって気密に閉塞されている。前記ベースフランジ2の穴部56の周りにはOリング等のシール部材58が付設されており、ベースフランジ2と中間フランジ31とを連結した際に、前記凹部50の周りを気密にシールするようになっている。59はベースフランジ外周部のシール部材である。これにより、ベースフランジ2、中間フランジ31、チャンバ本体1が相互に連結して、真空チャンバを構成するとき、前記凹部50、配管・配線孔55は大気に連通するが、真空チャンバの内部は大気から遮断される。尚、中間フランジ31から外部に引き出された配線、配管は、図示しない中間固定部材や受け部材により支持され、中間フランジ31の移動の際に、これらもスムーズに移動するようになっている。
【0025】
上記連続成膜装置は、スパッタソース4,4Aが両持ち構造で中間フランジ31に設けられているので、成膜ロール11や成膜マスク18のメンテナンス、巻出しロール12や巻取りロール13におけるボビンの交換の際は、中間フランジ31をチャンバ本体1の開口部に隣接した状態でベースフランジ2を後退させ、ロールユニット3をチャンバ本体1及び中間フランジ31から抜き出すことにより、その側方が開放される。このため、解放された側方から各部材に容易にアクセスすることができ、ボビンの交換やメンテナンス等を容易に行うことができる。
また、ターゲットの交換やスパッタソース4,4Aをメンテナンスする場合、図7に示すように、ロールユニット3が中間フランジ31の挿通穴35に挿通した状態となっていてもよいため、中間フランジ31を、後退したベースフランジ2に隣接するように後退させることができ、解放された側方からスパッタソース4,4Aに容易にアクセスすることができ、ターゲットの交換やスパッタソースのメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、メンテナンススペースが少なくて済み、メンテナンス領域を含む装置の設置領域も少なくて済む。
【0026】
ここで、前記プレーナ型スパッタソース4Aのターゲットの交換作業について詳しく説明する。まず、スパッタソース4Aの接地シールド部材46,48やカバー類を外し、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部44を緩め、回転止め47を外した後、カソードボディ42を回転させ、ターゲット41の向きを外側に向けて仮止め(図示省略)することで、装置の側方から外側に向けられたターゲット41に容易にアクセスすることができ、ターゲット41をカソードボディ42に容易に脱着することができる。このため、容易かつ安全にカソード交換を行うことができる。また、このスパッタソース4Aを交換する場合は、中間フランジ31を解放した状態で、冷却水配管53A,53Bから水抜きを行った後、配管や配線を外し、引出しアダプター52やシール部材51を外した後、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部44を外して、開放されている装置の側方からリフターのアームをスパッタソース4Aの下部に挿入してアームをやや上昇させてアームにスパッタソースを担持させつつ、カソードボディ42の軸部を支持部材38,39の基部45の軸受半部から上方へ抜いた後、アームを装置と干渉しない場所に移動することで、スパッタソース4Aを容易に装置外に取り出すことができる。新しいスパッタソースを取り付ける場合もリフターを用いて、前記作業と逆の作業を行うことで支持部材38,39に容易に組み込むことができる。
【0027】
上記実施形態において、スパッタソース4の具体例としてプレーナ型スパッタソース4Aを用いた例を示したが、スパッタソースとしてはこの他、円筒形ターゲットを回転させて使用するロータリーマグネトロンスパッタソースを用いることもできる。このスパッタソース4Bの両持ち支持構造を図8に示す。
【0028】
このスパッタソース4Bは、円筒形ターゲット61と、前記円筒形ターゲット61の内部にマグネトロン放電を行うための静止状態で保持されるマグネットアセンブリ63と、前記円筒形ターゲット61の両端を気密に閉塞すると共に前記マグネットアセンブリ63の両端に設けられた軸部を支持する円筒状の回転支持部材62A,62Bとで構成される。中間フランジ31及び成膜処理ソース支持板37には、絶縁樹脂で形成された軸受体38A,39Aを備えた支持部材38,39が付設され、前記回転支持部材62A,62Bの中間軸部が前記軸受体38A,39Aにベアリング64を介して回転自在に支持されている。前記支持部材38,39は、前記プレーナー型マグネトロンスパッタソース4Aと同様、その軸受体とこれを保持する外筒部が2つ割り構造となっていて、その上蓋部がボルトによって基部に取付け取外し自在になっている。また、前記支持部材38,39の外筒部の先端には接地シールド部材66が付設されている。
【0029】
前記中間フランジ31の裏面には、凹部50が形成され、その底面に絶縁樹脂で形成されたシール部材67が気密に付設され、その内筒部に内装された回転シール68を介して前記回転支持部材62Aを気密かつ回転自在に支持している。前記回転支持部材62Aは、プーリ70に連結され、このプーリ70の後軸部にはスリップリング71、ロータリージョイント72が連結される。前記ロータリージョイント72は絶縁材で形成された回転止め部材73によって回転止めされ、その内部に設けられた心棒は、前記プーリ70及び回転支持部材62Aの中心孔に沿って延設され、前記マグネットアセンブリ63の軸部に着脱自在に連結される。前記プーリ70は、凹部50に設けたモータ(図示省略)の出力軸に絶縁ベルト74を介して連動連結され、モータの回転が絶縁ベルト74、プーリ70を介して前記円筒状ターゲット61を保持した回転支持部材62A,62Bに伝達される。
【0030】
前記ロータリージョイント72には冷却水配管53A,53Bが接続され、前記スリップリング71にはブラシを介して電源ケーブル54から電気が供給される。前記冷却水配管53Aから供給された冷却水はプーリ70の軸部に形成された流路を通って前記回転支持部材62Aに冷却水を供給する。冷却水配管53A,53B、電源ケーブル54は、中間フランジ31に形成された配管・配線孔55を通して外部へ引き出される。これらの構成は前記プレーナー型マグネトロンスパッタソースの場合と同様であり、また、図3と同様、前記凹部50Aに対向したベースフランジ2には、前記ロータリージョイント72と干渉しないように穴部が設けられ、その外側は蓋によって気密に閉塞される。
【0031】
前記ロータリーマグネトロンスパッタソース4Bを用いた場合においても、スパッタソース4Bがチャンバ本体1から抜き出るように中間フランジ31をベースフランジ側に後退させることで、装置の側方からスパッタソース4Bに容易にアクセスすることができ、水抜きや配管、配線を外し後、プーリ70、シール部材67を外し、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部を着脱することで、リフターを用いてスパッタソース4Bを容易に着脱することができる。円筒状ターゲット61は、パッタソース4Bのように予め組み込んだユニットとして取り扱われ、円筒状ターゲット61の交換も容易に行うことができる。
【0032】
上記実施形態は、スパッタソース4,4A,4Bを両持ち支持した例であるが、本発明はスパッタソースの支持構造としてはこれに限るものではない。以下、スパッタソース4を中間フランジ31に対して片持ち支持した実施形態について図9及び図10を参照して説明する。
【0033】
この実施形態において、中間フランジ31には連結フランジ81がヒンジ機構82を介して開閉自在に設けられており、この連結フランジ81にスパッタソース4が取り付けられている。前記連結フランジ81は、閉状態において中間フランジ31にボルト等によって固定される。
前記中間フランジ31には前記連結フランジ81によって開閉される穴部83が設けられ、この穴部83は中間フランジ31の側方に開口した配管・配線孔55を介して外部につながっている。この配管・配線孔55を通って配管された冷却水管、電源ケーブルは前記穴部83から前記連結フランジ81に片持ち状に支持されたスパッタソース4に接続される。
前記連結フランジ81の外周部にはシール部材が付設され、前記穴部83を連結フランジ81によって閉じることで、前記穴部83の開口は連結フランジ81によって気密に閉塞される。また、前記穴部83に対応したベースフランジ2には、図3と同様、部材の干渉を回避するための穴部が設けられ、その後端開口は蓋によって閉塞されている。ベースフランジ2の穴部の周りにはシール部材が付設されているので、ベースフランジ2を中間フランジ31に連結した際、前記中間フランジ31の穴部83の裏面側開口はベースフランジ2によって気密に閉塞される。
【0034】
この中間フランジ31の場合、ターゲットを交換する時は、連結フランジ81を中間フランジ21に固定するボルト類を外して、図10中の二点鎖線で示すように、連結フランジ81に取り付けたスパッタソース4を外側に開くことにより、ターゲット面を装置の側方に展開することができ、アクセスが容易になる。ターゲットやスパッタソース4の交換は、この装置側方の広いエリアにてリフターなどの汎用補助具を用いることによって、容易かつ安全に行うことができる。
【0035】
上記実施形態では、中間フランジ31を台車33に立設し、台車33に設けたモータによって走行するようにしたが、中間フランジ31をベースフランジ2あるいはチャンバ本体1に連結する、引っ掛けアームやボルト締結部材などの適宜の連結機構を設けることで中間フランジ用台車33のモータや走行機構を省くこもでき、装置構成をよりシンプルにすることができる。この場合、ベースフランジ2のみを移動する場合は、チャンバ本体1あるいは中間フランジ31に設けた連結機構を用いて中間フランジ31をチャンバ本体1に連結しておけばよく、一方、中間フランジ31をベースフランジ2側に移動させる際は、ベースフランジ2あるいは中間フランジ31に設けた連結機構を用いて中間フランジ31をベースフランジ2に連結して、中間フランジ31をベースフランジ2と共に移動させればよい。
【0036】
また、上記実施形態では、中間フランジ31はその中央部にロールユニット3が挿通可能な挿通穴35が開設された環状構造をしており、これによってベースフランジ2、中間フランジ31、チャンバ本体1を各々外周部で容易にシールすることができるが、中間フランジとしてはかかる環状構造に限るものではなく、例えば環状の前記中間フランジの下半部のみでもよい。この場合、ベースフランジ2はその上半部がチャンバ本体1の開口部に直接連結されるような形態とされる。また、チャンバ本体1の筒状部の横断面形状についても、円形に限らず、方形や多角形など適宜の形状とすることができる。
また、上記連続成膜装置をクリーンルームに設置する場合、前記連続成膜装置のチャンバ本体1の一端は端板にて閉塞されており、この端板側から成膜機器の交換やメンテナンスを行うことはないので、図1に示すように、チャンバ本体1の閉塞側端部をクリーンルームの内壁90に埋設するようにしてもよい。これにより、クリーンルーム内の装置の設置面積をより小さくすることができる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、成膜処理ソースとして、スパッタソースの例を挙げて説明したが、成膜処理ソースとしては他の成膜処理のソースを用いてもよい。具体的には、CVDソースや蒸着ソースを用いても同様の装置構成が実現できる。さらに、イオンビームソースやプラズマソースを配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図2】図1のA矢視から見た中間フランジ及びベースフランジの正面図である。
【図3】図1のB線断面におけるプレーナ型スパッタソースの取付け構造を示す断面図である。
【図4】図3のA線断面図であり、支持部材の2つ割り構造を示す。
【図5】図1のC矢視図であり、ベースフランジ側から見た中間フランジの裏面を示す。
【図6】図5のA部拡大図である。
【図7】ターゲットの交換、スパッタソースをメンテナンスする際の連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図8】図1のB線断面におけるロータリーマグネトロンスパッタソースの取付け構造を示す断面図である。
【図9】中間フランジの他例を示し、チャンバ本体側から見た正面図である。
【図10】図9の中間フランジの平面図である。
【図11】従来の連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図12】図10のA矢視から見たベースフランジの正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 チャンバ本体
2 ベースフランジ
3 ロールユニット
4,4A,4B スパッタソース(成膜処理ソース)
11 成膜ロール
12 巻出しロール
13 巻取りロール
31 中間フランジ
35 挿通穴
38,39 支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状の被成膜基材を走行させつつ、その表面に機能性薄膜を連続的に成膜する連続成膜装置(ロールコーター)に関する。
【背景技術】
【0002】
連続成膜装置は、プラスチックや無機質などで形成された長尺のフィルムやシートからなる被成膜基材を、真空チャンバ内で連続的に走行させ、その表面に種々の機能性薄膜をスパッタリングや蒸着によって成膜するものである。
このような連続成膜装置の一例を図11及び図12に示す。この連続成膜装置は、筒状部とその一端を閉塞する端板23とによって構成されたチャンバ本体1と、チャンバ本体1の他端開口部を開閉自在に気密に閉塞するベースフランジ2とを備え、前記ベースフランジ2をチャンバ本体1の開口部に気密に連結一体化することにより真空チャンバが構成される。前記ベースフランジ2は、モータを備えた走行機構により架台5に敷設されたレール6A,6B上を走行する台車7に立設され、これよってチャンバ本体1に対して進退自在とされる。8はベースフランジ2の立設用支持部材である。前記ベースフランジ2には、ベースフランジ2がチャンバ本体1に連結したとき、チャンバ本体1の内部に収納されるロールユニット3が設けられている。
【0003】
このロールユニット3は、被成膜基材(以下、単に「フィルム」という。)を搬送するものであり、フィルムが巻き掛けられる成膜ロール11と、上部に設けられた巻出しロール12及び巻取りロール13と、前記巻出しロール12から巻出されたフィルムを成膜ロール11へ導く案内ロール14及びロードセルロール15と、成膜ロール11から前記巻取りロール13へ導くロードセルロール16と案内ロール17を備え、これらのロールは、前記ベースフランジ2に上部ピラー19、下部ピラー20,20によって連結支持されたロール支持板21と、前記ベースフランジ2に設けられた支持部材によって回転自在に両持ち支持されている。前記ベースフランジ2の後部には前記成膜ロール11、巻出しロール12、巻取りロール13を回転駆動するモータ及び駆動機構(図示省略)が設けられる。前記成膜ロール11は、定速モータにより定速回転されて、巻き掛けられたフイルムを搬送する。巻出しロール12並びに巻取りロール13は、ロードセルロール15,16で検出される張力をフィードバックしてトルク制御されており、所定の張力条件でフィルムを巻出し、巻き取る。案内ロール14,17はフィルムの搬送軌道方向を変えるのに使用され、ロールへの巻取り角などを適正範囲に維持する役目を有する。
【0004】
一方、前記チャンバ本体1の端板23には、前記ベースフランジ2をチャンバ本体1に連結したとき、前記成膜ロール11の外周面に対向するように成膜処理ソース4がカソードフランジ24を介して着脱自在に片持ち状に支持されている。前記チャンバ本体1には、覗き窓25が設けられ、またターボ分子ポンプなどの真空ポンプ26が複数個付設され、これらのポンプ26には粗引配管27が連通接続される。またチャンバ本体1の端板23には、水蒸気を吸着排気するためのコールドトラップ配管28が連通接続される。
【0005】
フィルムへの成膜は以下のようにして行われる。まず、ベースフランジ2をチャンバ本体1の開口部に気密に連結して、真空チャンバを構成し、その内部を真空排気する。その後、フィルムを前記巻出しロール12から案内ロール14、ロードセルロール15、成膜ロール11へと搬送し、成膜ロール11上で成膜マスク18を介して、例えばスパッタリングにより成膜する。成膜されたフィルムは、ロードセルロール16、案内ロール17を介して巻取りロール13へと搬送され、同ロールに巻き取られる。
【0006】
成膜後、ベースフランジ2を後方へ移動してロールユニット3をチャンバ本体1の外部へ引き出した状態(解放状態)で、フィルムボビンの交換や通紙、成膜マスクの清掃が行われる。一方、成膜処理ソース4に設けられたターゲットの消耗に伴ってこれを交換したり、また成膜処理ソース4のメンテナンス、交換が適宜行われる。
ターゲットの交換は、チャンバ本体1内に作業者が入り、成膜処理ソース4に付設されたターゲットを人力で交換している。また、成膜処理ソース4が片持ち構造のため十分な剛性を要し、重量構造物となるため、成膜処理ソースのメンテナンス、交換などは、チャンバ本体1の端板23の後方に設けた専用治具29を搭載したメンテナンス台車30を用いて行われている。
【0007】
上記連続成膜装置では、チャンバ本体1はその筒状部の一端が端板23によって閉塞されたものであり、成膜処理ソース4はチャンバ本体1の端板23から挿脱することによってチャンバ本体1内に設置されるが、特開平10−36987号公報(特許文献1)に記載されているように、チャンバ本体1の筒状部に対して端板23を開閉自在としたものもがある。また、前記チャンバ本体1の筒状部は、その横断面形状は、通常、丸形であるが、特開2001−302050号公報に記載されているように、方形や多角形など種々の形状のものがある。
【特許文献1】特開平10−36967号公報
【特許文献2】特開2001−302050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
連続成膜装置を用いてフィルムに成膜する場合、ターゲットの消耗に伴ってこれを交換する必要があるが、ターゲットは長さが1mを超える様な大形のものも用いられている。このようなものは、重量が大きいため、作業性が悪い。さらに、ターゲットは成膜ロールに対向させる必要があるため、図例のように上側に配置された成膜処理ソース4のターゲットは、対向面が下向きに傾き、取り付けの際にターゲットが落下しないように注意して作業を行う必要がある。
また、成膜処理ソース4の着脱は、カソードカバー類を外して、専用治具29の連結面とカソードフランジ24とを合わせて固定し、成膜処理ソース4をカソードフランジごとチャンバ本体1の後方へ引き出す必要があるが、チャンバ本体1の端板23の後部には真空ポンプ26や各種配管が付設されているので、メンテナンス台車30の移動ストロークが必要以上に大きくなり、装置の設置スペース効率が悪いという問題がある。特に、床単価の高いクリーンルームに設置する場合はトータル設備コストが高くなる。また、成膜処理ソースの交換作業についても、専用治具29にカソードフランジ24を連結した後、回転させて成膜処理ソース4がリフターのレベルと合うようにして、チャンバ本体1から引き出す、といった煩わしい作業を行う必要がある。
【0009】
一方、引用文献1の装置のように、チャンバ本体1の端板23を開閉自在とすることで、この端板23に片持ち支持した成膜処理ソース4のメンテナンス、ターゲットの交換が容易になるが、ロールユニット3をチャンバ本体1から引き出すのに必要なベースフランジ2の移動スペースと、成膜処理ソース4をチャンバ本体1の筒状部から引き出すための端板23の移動スペースが必要であり、設置スペースが大きくなるという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、ターゲットの交換や成膜処理ソースのメンテナンスが容易で、しかも設置スペースが少なくて済む連続成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連続成膜装置は、巻出しロールから成膜ロールに巻き付けられた被成膜基材の表面に機能性被膜を成膜し、成膜後の被成膜基材を巻取りロールに巻き取る連続成膜装置であって、一端が閉塞されたチャンバ本体と、前記チャンバ本体の開口部を中間フランジを介して開閉自在に閉塞するベースフランジを有し、前記ベースフランジには前記巻出しロール、巻取りロール及び成膜ロールを回転自在に支持するロールユニットが設けられ、前記中間フランジには、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記成膜ロールに対向するように成膜処理ソースが設けられたものである。
【0011】
この連続成膜装置によれば、巻出しロールや巻取りロールのフィルムボビンの交換や成膜マスクの清掃などの際は、中間フランジをチャンバ本体の開口部に連結したまま、ベースフランジを後方へ移動させて、ロールユニットをベースフランジごとチャンバ本体から引き出すことで、スペースのある装置の側方からロールや成膜マスクに容易にアクセスすることができ、フィルムボビンの交換等の作業を容易に行うことができる。また、成膜処理ソースをメンテナンスしたり、成膜ターゲットの交換を行う際は、ベースフランジを後方へ移動させ、中間フランジをベースフランジ側に移動させて成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出すことにより、成膜処理ソースに対しても装置の側方から容易にアクセスすることができ、これらの作業を容易に行うことができる。この際、中間フランジは、ベースフランジに隣接するまで後方へ移動させることができるため、メンテナンス領域を含めた装置の設置スペースが小さくて済み、設置スペース効率を向上させることができる。特に、連続成膜装置を高価なクリーンルームに設置する際には、その床面積を小さくすることができ、さらにチャンバ本体の閉塞側端部をクリーンルームの壁面に埋め込むことができるので、クリーンルーム内の設置面積をより小さくすることができ、クリーンルームの建設費を含むトータルな設備費の低減を図ることができる。
【0012】
前記連続成膜装置において、前記中間フランジに対向するように成膜処理ソース支持板を設け、前記成膜処理ソースを前記中間フランジと成膜処理ソース支持板とに設けられた支持部材をおくことで両持ち支持することができる。このような両持ち支持構造は、成膜処理ソースが長尺である場合においても、成膜処理ソースを高剛性構造とする必要がなくなり、成膜処理ソースを軽量化することができ、これに伴ってメンテナンス時の作業性、安全性が向上する。ここでいう成膜処理ソースとは、CVD(化学気相成膜)ソース、イオンビームソース、プラズマソース、蒸着ソース、スパッタソース等の各種成膜に係わる処理を行うユニットを指す。
【0013】
また、前記成膜処理ソースを両持ち支持する場合、成膜処理ソースは前記支持部材に着脱自在に支持することが好ましい。これにより、成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出した状態(中間フランジの解放状態)で装置の側方から成膜処理ソースを支持部材に対して容易に着脱し、交換することができるので、交換作業が大幅に向上する。これによって、例えば成膜処理ソースがロータリーマグネトロンスパッタソースの場合においても、その円筒状ターゲットを容易に交換することができる。
【0014】
また、前記成膜処理ソースは、前記支持部材に回転可能に支持されるようにすることが好ましい。成膜処理ソースを回転可能に支持することで、中間フランジを開放した状態で、成膜処理ソースの処理側を成膜ロール表面(内側)へ向いた方向から装置外側に向けるように回転させることで、装置の側方(装置外側)から容易にアクセスすることができるようになり、メンテナンス性をより向上させることができる。
【0015】
前記成膜処理ソースとしてスパッタソースを用いる場合、成膜処理ソースを前記支持部材に回転可能に支持するように設けることで、長尺のプレーナー型スパッタソースの場合であっても、重量のある長尺ターゲットの交換を容易かつ安全に行うことができる。すなわち、長尺ターゲットの交換の際に、ターゲットの表面を外側に向けるように、しかもターゲットが落下し難いようにターゲットの表面を斜め上向きにするように成膜処理ソースを回転させることで、重量のある長尺ターゲットであっても、これを容易かつ安全に取り付け、取り外しすることができる。スパッタソースは、プレーナー型に限定されず、柱状などであってもかまわない。
【0016】
また、前記連続成膜装置において、前記成膜処理ソースを前記中間フランジにヒンジ機構を介して片持ち支持された構造とすることもできる。このような構造とすることにより、中間フランジを解放した状態で、成膜処理ソースをヒンジ機構によって外側に容易に開くことができるので、広い場所でターゲットの交換や成膜処理ソースのメンテナンスを容易に行うことができ、作業性、安全性が向上する。
【0017】
また、前記連続成膜装置において、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記中間フランジに前記ロールユニットが挿通する挿通穴が形成されたものとすることで、中間フランジが環状となり、ベースフランジと中間フランジ、中間フランジとチャンバ本体の開口部とがそれぞれ外周部で当接させることができ、シール部材を介してこれらを容易に気密に連結することができる。しかも、ベースフランジ及び中間フランジの連結面が平坦状となるため、その製作も容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の連続成膜装置によれば、ロールユニットを備えたベースフランジとは別に、ベースフランジとチャンバ本体との間に中間フランジを設け、これに成膜処理ソースを付設するようにしたので、ロールユニットをチャンバ本体から引き出すようにベースフランジを移動させることでロールユニット関連のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに成膜処理ソースをチャンバ本体から引き出すように中間フランジをベースフランジ側に移動させることで、ターゲットや成膜処理ソースのメンテナンスや交換も容易に行うことができ、しかも設置スペースも少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の連続成膜装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係るスパッタリング連続成膜装置の全体側面図を、図2は図1のA矢視から見た正面図を示している。
この連続成膜装置は、筒状部の一端が端板23によって閉塞されたチャンバ本体1と、前記チャンバ本体1の開口部に対して近接離反自在に移動し、成膜ロール11、巻出しロール12、巻取りロール13、案内ロール14,17、ロードセルロール15,16、成膜マスク18などを備えたロールユニット3が設けられたベースフランジ2と、前記チャンバ本体1とベースフランジ2との間に移動自在に設けられた中間フランジ31を備える。前記中間フランジ31はベースフランジ2と同様、架台5に敷設されたレール32A,32B上を走行する台車33に立設され、図示省略したモータによりレール上を走行するようになっている。34は中間フランジ31の両側部に設けられる立設用支持部材である。前記チャンバ本体1には、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプ26およびその粗引配管、コールドトラップ配管等が設けられているが、配管類は記載省略されている。なお、図11及び図12に示した従来の連続成膜装置と同様の構成は、同一符号が付してあり、その説明を省略する。また、図1は、説明の便宜上、側面から見て各部構成が重ならないように描かれているが、後述するように、ベースフランジ2のロールユニット3と中間フランジ2とは長さ方向において正面から見て重なってもよいので、架台5の長さは、図7に示すように、図1より短くすることができる。
【0020】
前記中間フランジ2には、図2や図5に示すように、前記ベースフランジ2を移動する際、そのロールユニット3を挿通する挿通穴35が形成されており、その下部には前記ロールユニット3の成膜ロール11に対向するように左右に上下2段のスパッタソース(成膜処理ソース)4が設けられている。前記中間フランジ31をチャンバ本体1にシール部材を介して気密に連結し、さらに前記ロールユニット3を前記挿通穴35に挿通させて、ベースフランジ2を前記中間フランジ31の外面に気密に連結することで、前記チャンバ本体1の開口部は気密に閉塞され、真空チャンバが構成される。この状態において、チャンバ本体1内では、前記スパッタソース4は前記ロールユニット3の成膜ロール11の長さ方向に沿って対向配置される。前記スパッタソース4は、図1に示すように、前記中間フランジ31にピラー36を介して設けた成膜処理ソース支持板37と、中間フランジ31に各々設けた支持部材38,39によって両持ち支持されている。図2において、中間フランジ31の外周部の二点鎖線(裏面も同様)はシール部位を示し、シール材は、チャンバ本体1の開口フランジ部及びベースフランジ2の外周部に設けられる。
【0021】
前記スパッタソース4としては各種のものを用いることができるが、その一例として、プレーナー型(平板型)マグネトロンスパッタソース4Aの取付け構造を図3に示す。
このスパッタソース4Aは、平板状のターゲット41と、前記ターゲット41が一側面に着脱自在に取り付けられるカソードボディ42と、前記カソードボディ42の内部に設けられ、マグネトロン放電を行うためのマグネットアセンブリ43とで構成される。中間フランジ31及び成膜処理ソース支持板37には、前記支持部材38,39が付設され、これらは絶縁樹脂で形成された軸受体38A、39Aを備え、前記カソードボディ42の両端に形成された軸部が前記軸受体38A,39Aに回転自在に支持される。なお、前記カソードボディ42は、その内部に冷却水路(図示省略)が形成されており、成膜ロール11側に取り付けられたターゲット41を冷却するようになっている。
【0022】
前記絶縁樹脂で形成された軸受体38A,39Aを有する支持部材38,39は、前記軸受体38A,39A及びこれを保持する外筒部が、図4に示すように2つ割り構造となっていて、その上蓋部44がボルトによって基部45に取付け取外し自在になっている。このため、上蓋部44を外した状態でカソードボディ42の軸部を基部45の軸受半部に載せ、上蓋部44を取り付けることで、カソードボディ42は支持部材38,39に対して着脱自在とされる。前記軸受体38A,39Aは、カソードボディ42の絶縁材としての役目と共に、メンテナンスの際の回転軸受としての役目を果たす。このカソードボディ42は、成膜時には前記支持部材38,39の外側に設けられた接地シールド部材46に設けた回転止め47によって回転しないように固定される。また、前記支持部材38,39の内側(成膜ロール側)にも接地シールド部材48がターゲットの端部を覆うように設けられる。
【0023】
前記ベースフランジ2側から見た前記中間フランジ31の裏面には、図5、図6に示すように、凹部50が形成され、その底面に絶縁樹脂で形成されたシール部材51が前記支持部材38と同心状に気密に付設され、その中心部に引き出しアダプタ52が設けられ、この引き出しアダプタ52に冷却水配管53A,53B及び電源ケーブル54が取り付けられる。供給側の冷却水配管53Aから供給された冷却水はアダプタ内に形成された流路を通して前記カソードボディ42の冷却水路に冷却水を供給し、これを冷却した後、リターン側の冷却水配管53Bを通って外部に排出される。なお、図5において、中間フランジ31の立設用支持部材34は図示省略されている。
【0024】
前記凹部50に連通し、中間フランジ31の側面に開口する配管・配線孔55が形成され、前記冷却水管53A,53B、電源ケーブル54はこの配管・配線孔55を通して外部へ引き出される。一方、前記凹部50に対向したベースフランジ2には、図3に示すように、前記引き出しアダプタ52が干渉しないように穴部56が設けられ、その外側は蓋57によって気密に閉塞されている。前記ベースフランジ2の穴部56の周りにはOリング等のシール部材58が付設されており、ベースフランジ2と中間フランジ31とを連結した際に、前記凹部50の周りを気密にシールするようになっている。59はベースフランジ外周部のシール部材である。これにより、ベースフランジ2、中間フランジ31、チャンバ本体1が相互に連結して、真空チャンバを構成するとき、前記凹部50、配管・配線孔55は大気に連通するが、真空チャンバの内部は大気から遮断される。尚、中間フランジ31から外部に引き出された配線、配管は、図示しない中間固定部材や受け部材により支持され、中間フランジ31の移動の際に、これらもスムーズに移動するようになっている。
【0025】
上記連続成膜装置は、スパッタソース4,4Aが両持ち構造で中間フランジ31に設けられているので、成膜ロール11や成膜マスク18のメンテナンス、巻出しロール12や巻取りロール13におけるボビンの交換の際は、中間フランジ31をチャンバ本体1の開口部に隣接した状態でベースフランジ2を後退させ、ロールユニット3をチャンバ本体1及び中間フランジ31から抜き出すことにより、その側方が開放される。このため、解放された側方から各部材に容易にアクセスすることができ、ボビンの交換やメンテナンス等を容易に行うことができる。
また、ターゲットの交換やスパッタソース4,4Aをメンテナンスする場合、図7に示すように、ロールユニット3が中間フランジ31の挿通穴35に挿通した状態となっていてもよいため、中間フランジ31を、後退したベースフランジ2に隣接するように後退させることができ、解放された側方からスパッタソース4,4Aに容易にアクセスすることができ、ターゲットの交換やスパッタソースのメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、メンテナンススペースが少なくて済み、メンテナンス領域を含む装置の設置領域も少なくて済む。
【0026】
ここで、前記プレーナ型スパッタソース4Aのターゲットの交換作業について詳しく説明する。まず、スパッタソース4Aの接地シールド部材46,48やカバー類を外し、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部44を緩め、回転止め47を外した後、カソードボディ42を回転させ、ターゲット41の向きを外側に向けて仮止め(図示省略)することで、装置の側方から外側に向けられたターゲット41に容易にアクセスすることができ、ターゲット41をカソードボディ42に容易に脱着することができる。このため、容易かつ安全にカソード交換を行うことができる。また、このスパッタソース4Aを交換する場合は、中間フランジ31を解放した状態で、冷却水配管53A,53Bから水抜きを行った後、配管や配線を外し、引出しアダプター52やシール部材51を外した後、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部44を外して、開放されている装置の側方からリフターのアームをスパッタソース4Aの下部に挿入してアームをやや上昇させてアームにスパッタソースを担持させつつ、カソードボディ42の軸部を支持部材38,39の基部45の軸受半部から上方へ抜いた後、アームを装置と干渉しない場所に移動することで、スパッタソース4Aを容易に装置外に取り出すことができる。新しいスパッタソースを取り付ける場合もリフターを用いて、前記作業と逆の作業を行うことで支持部材38,39に容易に組み込むことができる。
【0027】
上記実施形態において、スパッタソース4の具体例としてプレーナ型スパッタソース4Aを用いた例を示したが、スパッタソースとしてはこの他、円筒形ターゲットを回転させて使用するロータリーマグネトロンスパッタソースを用いることもできる。このスパッタソース4Bの両持ち支持構造を図8に示す。
【0028】
このスパッタソース4Bは、円筒形ターゲット61と、前記円筒形ターゲット61の内部にマグネトロン放電を行うための静止状態で保持されるマグネットアセンブリ63と、前記円筒形ターゲット61の両端を気密に閉塞すると共に前記マグネットアセンブリ63の両端に設けられた軸部を支持する円筒状の回転支持部材62A,62Bとで構成される。中間フランジ31及び成膜処理ソース支持板37には、絶縁樹脂で形成された軸受体38A,39Aを備えた支持部材38,39が付設され、前記回転支持部材62A,62Bの中間軸部が前記軸受体38A,39Aにベアリング64を介して回転自在に支持されている。前記支持部材38,39は、前記プレーナー型マグネトロンスパッタソース4Aと同様、その軸受体とこれを保持する外筒部が2つ割り構造となっていて、その上蓋部がボルトによって基部に取付け取外し自在になっている。また、前記支持部材38,39の外筒部の先端には接地シールド部材66が付設されている。
【0029】
前記中間フランジ31の裏面には、凹部50が形成され、その底面に絶縁樹脂で形成されたシール部材67が気密に付設され、その内筒部に内装された回転シール68を介して前記回転支持部材62Aを気密かつ回転自在に支持している。前記回転支持部材62Aは、プーリ70に連結され、このプーリ70の後軸部にはスリップリング71、ロータリージョイント72が連結される。前記ロータリージョイント72は絶縁材で形成された回転止め部材73によって回転止めされ、その内部に設けられた心棒は、前記プーリ70及び回転支持部材62Aの中心孔に沿って延設され、前記マグネットアセンブリ63の軸部に着脱自在に連結される。前記プーリ70は、凹部50に設けたモータ(図示省略)の出力軸に絶縁ベルト74を介して連動連結され、モータの回転が絶縁ベルト74、プーリ70を介して前記円筒状ターゲット61を保持した回転支持部材62A,62Bに伝達される。
【0030】
前記ロータリージョイント72には冷却水配管53A,53Bが接続され、前記スリップリング71にはブラシを介して電源ケーブル54から電気が供給される。前記冷却水配管53Aから供給された冷却水はプーリ70の軸部に形成された流路を通って前記回転支持部材62Aに冷却水を供給する。冷却水配管53A,53B、電源ケーブル54は、中間フランジ31に形成された配管・配線孔55を通して外部へ引き出される。これらの構成は前記プレーナー型マグネトロンスパッタソースの場合と同様であり、また、図3と同様、前記凹部50Aに対向したベースフランジ2には、前記ロータリージョイント72と干渉しないように穴部が設けられ、その外側は蓋によって気密に閉塞される。
【0031】
前記ロータリーマグネトロンスパッタソース4Bを用いた場合においても、スパッタソース4Bがチャンバ本体1から抜き出るように中間フランジ31をベースフランジ側に後退させることで、装置の側方からスパッタソース4Bに容易にアクセスすることができ、水抜きや配管、配線を外し後、プーリ70、シール部材67を外し、2つ割りの支持部材38,39の上蓋部を着脱することで、リフターを用いてスパッタソース4Bを容易に着脱することができる。円筒状ターゲット61は、パッタソース4Bのように予め組み込んだユニットとして取り扱われ、円筒状ターゲット61の交換も容易に行うことができる。
【0032】
上記実施形態は、スパッタソース4,4A,4Bを両持ち支持した例であるが、本発明はスパッタソースの支持構造としてはこれに限るものではない。以下、スパッタソース4を中間フランジ31に対して片持ち支持した実施形態について図9及び図10を参照して説明する。
【0033】
この実施形態において、中間フランジ31には連結フランジ81がヒンジ機構82を介して開閉自在に設けられており、この連結フランジ81にスパッタソース4が取り付けられている。前記連結フランジ81は、閉状態において中間フランジ31にボルト等によって固定される。
前記中間フランジ31には前記連結フランジ81によって開閉される穴部83が設けられ、この穴部83は中間フランジ31の側方に開口した配管・配線孔55を介して外部につながっている。この配管・配線孔55を通って配管された冷却水管、電源ケーブルは前記穴部83から前記連結フランジ81に片持ち状に支持されたスパッタソース4に接続される。
前記連結フランジ81の外周部にはシール部材が付設され、前記穴部83を連結フランジ81によって閉じることで、前記穴部83の開口は連結フランジ81によって気密に閉塞される。また、前記穴部83に対応したベースフランジ2には、図3と同様、部材の干渉を回避するための穴部が設けられ、その後端開口は蓋によって閉塞されている。ベースフランジ2の穴部の周りにはシール部材が付設されているので、ベースフランジ2を中間フランジ31に連結した際、前記中間フランジ31の穴部83の裏面側開口はベースフランジ2によって気密に閉塞される。
【0034】
この中間フランジ31の場合、ターゲットを交換する時は、連結フランジ81を中間フランジ21に固定するボルト類を外して、図10中の二点鎖線で示すように、連結フランジ81に取り付けたスパッタソース4を外側に開くことにより、ターゲット面を装置の側方に展開することができ、アクセスが容易になる。ターゲットやスパッタソース4の交換は、この装置側方の広いエリアにてリフターなどの汎用補助具を用いることによって、容易かつ安全に行うことができる。
【0035】
上記実施形態では、中間フランジ31を台車33に立設し、台車33に設けたモータによって走行するようにしたが、中間フランジ31をベースフランジ2あるいはチャンバ本体1に連結する、引っ掛けアームやボルト締結部材などの適宜の連結機構を設けることで中間フランジ用台車33のモータや走行機構を省くこもでき、装置構成をよりシンプルにすることができる。この場合、ベースフランジ2のみを移動する場合は、チャンバ本体1あるいは中間フランジ31に設けた連結機構を用いて中間フランジ31をチャンバ本体1に連結しておけばよく、一方、中間フランジ31をベースフランジ2側に移動させる際は、ベースフランジ2あるいは中間フランジ31に設けた連結機構を用いて中間フランジ31をベースフランジ2に連結して、中間フランジ31をベースフランジ2と共に移動させればよい。
【0036】
また、上記実施形態では、中間フランジ31はその中央部にロールユニット3が挿通可能な挿通穴35が開設された環状構造をしており、これによってベースフランジ2、中間フランジ31、チャンバ本体1を各々外周部で容易にシールすることができるが、中間フランジとしてはかかる環状構造に限るものではなく、例えば環状の前記中間フランジの下半部のみでもよい。この場合、ベースフランジ2はその上半部がチャンバ本体1の開口部に直接連結されるような形態とされる。また、チャンバ本体1の筒状部の横断面形状についても、円形に限らず、方形や多角形など適宜の形状とすることができる。
また、上記連続成膜装置をクリーンルームに設置する場合、前記連続成膜装置のチャンバ本体1の一端は端板にて閉塞されており、この端板側から成膜機器の交換やメンテナンスを行うことはないので、図1に示すように、チャンバ本体1の閉塞側端部をクリーンルームの内壁90に埋設するようにしてもよい。これにより、クリーンルーム内の装置の設置面積をより小さくすることができる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、成膜処理ソースとして、スパッタソースの例を挙げて説明したが、成膜処理ソースとしては他の成膜処理のソースを用いてもよい。具体的には、CVDソースや蒸着ソースを用いても同様の装置構成が実現できる。さらに、イオンビームソースやプラズマソースを配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図2】図1のA矢視から見た中間フランジ及びベースフランジの正面図である。
【図3】図1のB線断面におけるプレーナ型スパッタソースの取付け構造を示す断面図である。
【図4】図3のA線断面図であり、支持部材の2つ割り構造を示す。
【図5】図1のC矢視図であり、ベースフランジ側から見た中間フランジの裏面を示す。
【図6】図5のA部拡大図である。
【図7】ターゲットの交換、スパッタソースをメンテナンスする際の連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図8】図1のB線断面におけるロータリーマグネトロンスパッタソースの取付け構造を示す断面図である。
【図9】中間フランジの他例を示し、チャンバ本体側から見た正面図である。
【図10】図9の中間フランジの平面図である。
【図11】従来の連続成膜装置の全体配置側面図である。
【図12】図10のA矢視から見たベースフランジの正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 チャンバ本体
2 ベースフランジ
3 ロールユニット
4,4A,4B スパッタソース(成膜処理ソース)
11 成膜ロール
12 巻出しロール
13 巻取りロール
31 中間フランジ
35 挿通穴
38,39 支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻出しロールから成膜ロールに巻き付けられた被成膜基材の表面に機能性被膜を成膜し、成膜後の被成膜基材を巻取りロールに巻き取る連続成膜装置であって、
一端が閉塞されたチャンバ本体と、前記チャンバ本体の開口部を中間フランジを介して開閉自在に閉塞するベースフランジを有し、
前記ベースフランジには前記巻出しロール、巻取りロール及び成膜ロールを回転自在に支持するロールユニットが設けられ、
前記中間フランジには前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記成膜ロールに対向するように成膜処理ソースが設けられた、連続成膜装置。
【請求項2】
前記中間フランジに対向するように成膜処理ソース支持板が設けられ、前記成膜処理ソースが前記中間フランジと成膜処理ソース支持板とに設けられた支持部材によって両持ち支持された、請求項1に記載した連続成膜装置。
【請求項3】
前記成膜処理ソースは、前記支持部材に着脱自在に支持された、請求項2に記載した連続成膜装置
【請求項4】
前記成膜処理ソースは、前記支持部材に回転可能に支持された、請求項2又は3に記載した連続成膜装置
【請求項5】
前記成膜処理ソースは、スパッタソースである、請求項3又は4に記載した連続成膜装置。
【請求項6】
前記成膜処理ソースは、前記中間フランジにヒンジ機構を介して片持ち支持された、請求項1に記載した連続成膜装置。
【請求項7】
前記中間フランジには、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記ロールユニットが挿通するロールユニット挿通穴部が形成された、請求項1から6のいずれか1項に記載した連続成膜装置。
【請求項1】
巻出しロールから成膜ロールに巻き付けられた被成膜基材の表面に機能性被膜を成膜し、成膜後の被成膜基材を巻取りロールに巻き取る連続成膜装置であって、
一端が閉塞されたチャンバ本体と、前記チャンバ本体の開口部を中間フランジを介して開閉自在に閉塞するベースフランジを有し、
前記ベースフランジには前記巻出しロール、巻取りロール及び成膜ロールを回転自在に支持するロールユニットが設けられ、
前記中間フランジには前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記成膜ロールに対向するように成膜処理ソースが設けられた、連続成膜装置。
【請求項2】
前記中間フランジに対向するように成膜処理ソース支持板が設けられ、前記成膜処理ソースが前記中間フランジと成膜処理ソース支持板とに設けられた支持部材によって両持ち支持された、請求項1に記載した連続成膜装置。
【請求項3】
前記成膜処理ソースは、前記支持部材に着脱自在に支持された、請求項2に記載した連続成膜装置
【請求項4】
前記成膜処理ソースは、前記支持部材に回転可能に支持された、請求項2又は3に記載した連続成膜装置
【請求項5】
前記成膜処理ソースは、スパッタソースである、請求項3又は4に記載した連続成膜装置。
【請求項6】
前記成膜処理ソースは、前記中間フランジにヒンジ機構を介して片持ち支持された、請求項1に記載した連続成膜装置。
【請求項7】
前記中間フランジには、前記ベースフランジが前記チャンバ本体の開口部を中間フランジと共に閉塞する際、前記ロールユニットが挿通するロールユニット挿通穴部が形成された、請求項1から6のいずれか1項に記載した連続成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−322055(P2006−322055A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147754(P2005−147754)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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