説明

連続的に移動する基材上においてカーボン・ナノチューブを製造する装置及び方法

巻き取り可能な長さの基材が通過できる大きさに形成された基材入口を有する少なくとも1つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンを備えた装置。装置は、カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと熱的に連結した少なくとも1つの加熱器も備える。装置は、カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと流体的に連結した少なくとも1つの供給ガス流入口を備える。装置は、運転中、大気に開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、概略的には、連続的に移動する基材上においてカーボン・ナノチューブを製造する装置及び方法に関する。
【0002】
(関連出願の記載)
本願は、2009年4月10日出願の米国仮特許出願第61/168,516号、及び2010年1月15日出願の米国仮特許出願第61/295,624号に基づいて優先権を主張するものであり、これらは参照により全て本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし。
【背景技術】
【0004】
本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」(単数ではCNT、複数ではCNTs)とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、二層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)を含むフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のうちのすべてをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は開口端を有していてもよい。CNTsには他の物質を封入するものが含まれる。カーボン・ナノチューブは優れた物理的性質を示す。強度の最も高いCNTsは、高炭素鋼の約80倍の強度かつ6倍のじん性(すなわちヤング率)を示し、また、6分の1の密度を示す。
【0005】
現在のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成技術により、様々な用途に用いられる「遊離した(loose)」CNTsのバルク量(bulk quantity)が与えられる。これらのバルクCNTsは、例えば、複合材料システムにおける調節剤(modifier)又はドーパント(dopant)として用いられる。このように改質された複合材料には、CNTsの存在により期待される理論的改良のごく一部を示す性質の強化が見られる。CNT強化の十分な潜在能力を実現できなかったのは、1つには、構造体内におけるCNTsの効果的な分散ができないことに加え、得られた複合材料におけるCNTsを低率(1〜4%)以上にドープ(dope)できないことに関連する。CNT配列の難しさ及びCNT−マトリックス間の界面特性とあいまって、この低担持量は、例えば、機械的性質などの複合材料の性質が、CNTsの理論的強度と比較した場合に、実際には殆ど増加しないという点に関係してくる。バルクCNTの組み込みにおける物理的な限界に加え、処理の非効率性、及び最終CNT製品の精製に要する後処理により、CNTsの価格は高価なままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の欠点を克服する1つの取り組みは、CNTsを組織化し、複合材料に強化材料を与えるために用いられる有用な基材(例えば、繊維など)に直接CNTsを成長させる技術を開発することであろう。CNTsをほぼ連続的に成長させる試みはなされているが、バッチ式処理なしで連続的にロール・ツー・ロール方式(roll to roll)により運転する試みは、そのいずれもが成功していない。本願発明は、様々な基材上でのCNTsの連続的な生成を可能にする装置及び方法を提供するとともに、関連する利点をも提供するものである。
【0007】
CNTsの繊維基材上に直接CNTsを成長させようとする処理があるが、その例示としては、Curlissなどによる、米国特許第7,338,684号に開示された処理がある。この特許は、気相成長の炭素繊維強化複合材料を生成するための方法を開示している。その特許によれば、触媒前駆体(例えば、硝酸鉄溶液など)が、繊維母材へのコーティングとして適用される。その後、コーティングされた母材は、通常、300℃〜800℃の範囲の温度で、空気中で加熱されて、前駆体を分解し酸化触媒粒子を生成する。実施例には30時間の加熱時間を開示しているものもある。触媒粒子を金属状態に還元するために、母材は、水素を含む流動ガス混合物にさらされる。これは、通常、約1時間〜約12時間の時間、400℃〜800℃の温度で行われる。
【0008】
気相成長した炭素繊維(すなわちCNTs)は、気相の炭化水素ガス混合物を、約500℃〜1200℃の温度で母材と接触させることにより生成される。前記特許によれば、繊維は、複合材料の母材上で成長し、結果として絡み合った(tangled)多量の炭素繊維(カーボン・ナノチューブ)となる。成長のための反応時間は、基本的に、供給ガスの組成と温度の関数として、15分から2時間の間で変動する。
【0009】
米国特許第7,338,684号に開示された取り組みに関する処理時間は、効率的に処理するには長すぎる。さらに、様々な工程の処理時間における著しい変動により、その処理は、連続的に移動する基材上においてカーボン・ナノチューブを生成する連続処理ラインとして実施するには不適当である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、巻き取り可能な長さの基材に、直線的、及び/又は、連続的なCNTの合成を可能にする装置に関する。この装置には、巻き取り可能な長さの基材が通過できる大きさに形成された基材入口を備えた少なくとも1つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンが含まれる。また、装置には、カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと熱的に連結した少なくとも1つの加熱器と、カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと流体的に連結した少なくとも1つの供給ガス流入口と、が含まれる。装置は、運転中、大気に開放されている。CNTの成長は、環境気圧又はこれに近い圧力で行われる。装置には、カーボン・ナノチューブ成長ゾーンの両側に、1以上のパージゾーンが任意に含まれる。装置は、カーボン・ナノチューブの連続的な成長のためのシステムに組み込まれるように設計される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の実施形態による連続処理におけるCNTs合成のための装置を簡略化した斜視図。
【図2】本願発明の例示的な実施形態による連続処理におけるCNTs合成のための装置を簡略化した鉛直断面図(cross-sectional side view)。
【図3】本願発明による装置の実施形態の鉛直断面図。
【図4】本願発明による装置の実施形態の鉛直断面図。
【図5】本願発明による図3の装置の水平断面図(top cross-sectional view)。
【図6】本願発明による装置の実施形態の水平断面図。
【図7】本願発明による装置の別の実施形態の側面図(transverse side view)。
【図8】図7の実施形態の平面図(transverse top view)。
【図9】図7の実施形態の水平断面図(longitudinal top cross sectional view)。
【図10】図7の実施形態の長手方向の鉛直断面図(longitudinal side cross sectional view)。
【図11】図7の実施形態の平面図。
【図12】図7の実施形態の鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明は、概略的には、連続的に移動する基材上においてカーボン・ナノチューブを製造するための装置及び方法に関する。ある実施形態によれば、装置100は、移動する基材106上又はその内部にそのままの状態で直接CNTsを成長、製造、析出、あるいは生成するために用いられ、開口端を有し、大気圧より僅かに高い大気での、小空洞における化学蒸着(CVD)CNT成長システムの形態をとる。例示的な実施形態によれば、CNTsは、複数ゾーンの装置100内において、大気圧及び高温(通常、約550℃〜約800℃までの範囲)でCVDにより成長する。合成が大気圧で起こるということは、繊維上にCNTを合成する連続処理ラインに装置100を組み込むことを容易にする一因である。また、CNT成長が数秒単位で起こるということは、従来技術において数分単位(あるいはもっと長い)とは対照的に、本明細書で開示された装置を連続処理ラインに用いることを可能にする別の特徴である。CNT合成は、巻き取り可能な基材を機能化する連続処理を行うのに十分な速度で行われる。このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0013】
装置100には、2つの急冷ゾーン又はパージゾーン(purge zone)114、116の間に配設された成長加熱器(growth heater)110を備えた少なくとも1つのCNT成長ゾーン108が含まれる。成長加熱器は、いくつでも備えることができる(例えば、図4の加熱器110a、110b、110c、110d)。装置100には、任意に、供給ガス128を予熱する予熱器(pre-heater)132、及び供給ガス128を拡散するための供給ガス拡散器136が含まれる。
【0014】
様々な材料及び用途へのCNT導入によりもたらされる潜在的な強化を実現するために、本明細書には、CNTsを基材表面に直接適用するための装置が開示されている。基材表面に直接適用されたCNTsは、特にシリコンウェーハ又は複合繊維材料の場合に、完成構造体における全体的なCNTの分散、配置、及び配列を向上させる。複合材料の場合、繊維又は織物の表面上にCNTsを組み込むことは、遊離した(loose)CNTsを樹脂にドープしなければならない代わりに、複合構造体にCNTsを事前に配列させ配置させることにより、CNTの担持量を増大させる。連続処理において基材上に直接CNTsを成長させることにより、これらの物理的特性が向上するだけでなく、全体のCNTコストが低減される。最終的な有用基材表面上にCNTsを直接成長させることにより、CNTの精製及び添加/混合/配置/分散に関連する補助コストが削除される。
【0015】
図1に関して、装置100には、巻き取り可能な長さの基材106が連続的に通過できるサイズに形成された基材入口118があり、これにより、基材106上に直接CNTが合成及び成長可能となる。装置100は、前処理パージゾーン(又は第1パージゾーン)114と後処理パージゾーン(又は第2パージゾーン)116との間にシード(seed)成長ゾーン(又はCNT成長ゾーン)108を備えた複数ゾーンの装置である。装置100は、運転中、大気に開放されており、第1の端部120及び第2の端部124を備えて、これにより、基材106が、第1の端部120における基材入口118を通って装置100に入り、第1パージゾーン114、CNT成長ゾーン108、第2パージゾーン116を通過し、第2の端部124における基材出口122(図2に図示)を通って出てくる。ある実施形態において、CNT成長システムは、還元反応により触媒粒子を活性化させるために特別に設けられるさらなるゾーンを含む。このような実施形態においては、触媒活性ゾーンは、第1パージゾーン114とCNT成長ゾーン108の間に配置される。
【0016】
装置100は、CNT成長ゾーン108の内外との間で、基材106を途切れなく搬送することを可能にして、バッチ運転(batch run)を不要なものにする。巻き取り可能な長さの基材106から始まり、基材106上におけるCNT浸出の終了後に最終生成物を巻き取るシステム中を基材106が連続的に移動するときに、巻き取り可能な長さの基材106は、CNTをリアルタイムに急成長させる最適条件を確立した平衡成長システム(equilibrated growth system)を効率的に通過する。従来、例えば、CNT長さ、密度、及び他の特性などのパラメータを制御しながら、これを連続的かつ効率的に行うことは実現できなかった。
【0017】
ある実施形態において、巻き取り可能な基材上におけるCNTs浸出の連続処理は、毎分約0.5フィート〜毎分約36フィートのラインスピードを達成できる。この実施形態において、CNT成長ゾーン108が長さ3フィートであり、750℃で運転する場合、例えば、約1ミクロン〜約10ミクロンの長さを有するCNTsを生成するために、毎分約6フィート〜毎分約36フィートのラインスピードで処理が行われる。また、例えば、約10ミクロンから約100ミクロンの長さを有するCNTsを生成するために、毎分約1フィート〜毎分約6フィートのラインスピードで処理が行われる。例えば、約100ミクロン〜約200ミクロンの長さを有するCNTsを生成するために、毎分約0.5フィート〜毎分約1フィートのラインスピードで処理が行われる。CNTの長さは、ラインスピード及び成長温度のみに関係するものではなく、供給ガス及び不活性キャリアガスのいずれの流量もCNTの長さに影響を与える。例えば、高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分36フィート)で、不活性ガスの1%未満からなる炭素原料ガスの流量では、1ミクロンから5ミクロンの長さを有するCNTsとなる。高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分36フィート)で、不活性ガスの1%を上回る炭素原料ガスの流量では、5ミクロンから10ミクロンの長さを有するCNTsとなる。このCNT連続成長システムにもたらされる成長速度は、温度、用いられるガス、基材残留時間、及び触媒により変動するが、成長速度は、毎秒0.01〜10ミクロンの範囲で可能である。
【0018】
CNT成長ゾーン108は、大気開放(open-air)型の連続運転、貫流チャンバー(flow-through chamber)である。CNT成長ゾーン108は、例えば、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、又は他の高温金属若しくはその混合物などの金属の筐体で形成、あるいは包まれる(bound)ことで、更なる機能が付与され、構造的な剛性の向上に加え、熱サイクルの反復による焼き曲がり(thermal warping)を低減する。CNT成長ゾーン108は、円形の、矩形の、楕円形の、若しくは、あらゆる多角形の、又は、通過する基材の外形及び大きさに基づく、幾何学的な様々な横断面を有する。
【0019】
CNT成長ゾーン108の内部容積は、CNT成長ゾーン108の長さに略等しい長さを有する基材106の容積と比較され得る。ある実施形態において、CNT成長ゾーン108は、CNT成長ゾーン108内に配設された基材106の容積に対して僅か約10000倍以下の内部容積を有するように設計される。殆どの実施形態において、この数字は、僅か約4000倍以下に大きく低減される。他の実施形態では、これは、約3000倍以下まで低減される。同様に、CNT成長ゾーン108の横断面積は、基材106の横断面積に対して約10000倍、4000倍、又は3000倍までに制限される。理論に拘束されるものではないが、CNT成長ゾーン108の大きさを低減することにより、供給ガス128と触媒粒子でコーティングされた基材との間における高確率の相互作用が確保される。大容積化すると、処理される基材は有効容積のごく一部だけであるので、結果的に好ましくない過度の反応が生じる。CNT成長ゾーン108は、幅が、ミリメートル程度から1600mmを超える範囲に及ぶ。CNT成長ゾーン108は、矩形の横断面と約0.27立方フィートの容積とを有する。CNT成長ゾーン108内の温度は、その内面の適切な位置に配置された(strategically placed)内蔵熱電対により制御可能である。CNT成長ゾーン108は、ごく小さいため、筐体の温度はCNT成長ゾーン108及び内部のガスと略等しくなる。CNT成長ゾーン108は約550℃に維持される。
【0020】
ここで図2、図3、及び図4に関して、パージゾーン114、116のいずれもが、同じ機能を提供する。CNT成長ゾーン108からの供給ガス128(図2に図示)は装置100より流出するので、パージゾーン114、116は、パージガス130(図2に図示)の連続流を供給して外部環境からCNT成長ゾーン108を保護する。これには、パージゾーン114を予熱すること及び/又はパージゾーン116を冷却することが任意に含まれる。これは、意図しない酸化を引き起こし基材106(図3及び図4に図示)又はCNT材料にダメージを与える、供給ガス128と外気との好ましくない混合の防止に役立つ。パージゾーン114、116はCNT成長ゾーン108から隔離されて、加熱されたCNT成長ゾーン108からの過度の熱損失又は熱伝達を防ぐ。ある実施形態において、1以上の排気口142(図2に図示)がパージゾーン114、116とCNT成長ゾーン108との間に配置される。このような実施形態において、ガスはCNT成長ゾーン108とパージゾーン114、116との間で混合しないで、その代わり排気口142を通して大気へ流出する。これにより、多数のCNT成長ゾーン108(例えば、図4の108a、108b)が直列に用いられ、取り付けられ、あるいは共用されて、全体的な有効CNT成長ゾーンを延長した場合に、重要となるガス混合も防止される。この実施形態におけるパージゾーン114、116でも冷却ガスパージを提供し、基材106がCNT成長ゾーン108に入出する際の温度の低減を確保する。
【0021】
供給ガス128は、1以上の供給ガス流入口112(例えば、図4の112a及び112b)を介して、装置100のCNT成長ゾーン108に流入する。供給ガス128は、供給ガス流入口マニホールド(manifold)134(図4に図示)を通過し、そして、供給ガス拡散器136(図4に図示)を介してCNT成長ゾーン108に流れる。供給ガス128は、基材106上又はその中に存在するシード(seed)と反応してCNTsを形成し、残余の供給ガス128は排気マニホールド140(図6に図示)を通過するか、あるいは、CNT成長ゾーン108から流出する。パージガス130は、CNT成長ゾーン108の内側の高温ガスが、CNT成長ゾーン108の外側の富酸素ガスと混合し、CNT成長ゾーン108に入出する基材106に悪影響を及ぼす局所的な酸化状態を形成することを防止する。パージガス130は、パージガス流入口126、127(図2に図示)で装置100のパージゾーン114、116に流入し、CNT成長ゾーン108と外部環境との間の緩衝材となる。パージガス130は、周囲の気体がCNT成長ゾーン108に流入することを防止し、図2に示されるように、装置100の端部120、124における夫々の基材入口118又は基材出口122を通るか、排気マニホールド140(図6に図示)を通るかのいずれかにより流出する。
【0022】
パージガス予熱器132(図3に図示)は、第1パージゾーン114内への導入前に、パージガス130を予熱する。CNT成長ゾーン108は、CNT成長ゾーン108に含まれる加熱器110(図3に図示)により更に加熱される。図示されるように、加熱器110は基材106の両側にある。しかし、加熱器110は、CNT成長ゾーン108内のどこにあってもよく、CNT成長ゾーン108の長さ方向に沿うか、幅広のシステムの場合には、幅方向に沿うかのいずれかにより配置され、CNT成長処理を適切に制御するため確実に定温加熱する。加熱器110は、CNT成長ゾーン108を加熱して、事前に設定したレベルに運転温度を維持する。加熱器110は図示省略のコントローラーにより制御される。加熱器110は、CNT成長ゾーン108を運転温度付近に維持可能であれば、いかなる装置であってもよい。これとは別に、又はこれに加えて、加熱器111(図5及び図6に図示)は、供給ガス128を予熱する。加熱器110、111、132のいずれも、特定の加熱器がCNT成長ゾーン108と熱的に連結する限りは、CNT成長ゾーン108と連動して用いられる。加熱器110、111、132には、抵抗加熱要素(resistively heated element)により加熱されるガスラインの長コイル、及び/又は、速度を低下させて、その後、抵抗加熱器(例えば、赤外線加熱器)により加熱される一連の膨張管が含まれる。方法は問わず、ガスは、室温付近からCNT成長に適した温度(例えば、約25℃から約800℃まで)まで加熱される。ある実施形態において、加熱器110、111及び/又は132は、CNT成長ゾーン108内の温度が約550℃から約850℃、最大で約1000℃までになるように加熱する。温度の制御装置(図示省略)は、CNT成長ゾーン108内の温度を監視及び/又は調節する。計測は、CNT成長ゾーン108を規定するプレート(plate)又は他の構造物上のポイント(例えば、図9のプローブ160)で行われる。CNT成長ゾーン108の高さが相対的に低いので、プレート間の温度勾配はごく小さく、このため、プレートの温度計測は、CNT成長ゾーン108内の温度を精確に反映する。
【0023】
基材106は、CNT成長ゾーン108と比較して熱容量が小さいので、基材106は、殆ど直ちにCNT成長ゾーン108の温度となる。したがって、予熱を省略して、室温のガスが、加熱器110により加熱するための成長ゾーンに流入することを可能にする。ある実施形態において、パージガスのみが予熱される。他の供給ガスは、パージガス予熱器132後にパージガスに加えられる。これが行われることにより、長時間運転をの間にパージガス予熱器132内で起こる長期のすす付着(sooting)及び閉塞(clogging)状態を低減することができる。予熱されたパージガスは、その後、供給ガス流入口マニホールド134に流入する。
【0024】
供給ガス流入口マニホールド134により、ガスを更に混合するための空洞に加え、CNT成長ゾーン108内の全てのガス挿入ポイントにガスを拡散し分配する手段が提供される。これらの挿入ポイントは、1以上の供給ガス拡散器136(例えば、パターン化された一連の穴を備えたガス拡散プレート)に組み込まれている。適切な位置に配置されたこれらの穴は、確実に圧力及びガス流量分布を一定にする。加熱器110が均一な温度の発生源を使用できる場合には、供給ガスはCNT成長ゾーン108に流入する。
【0025】
ここで図5に関して、1つの例示的な実施形態においては、基材106は第1パージゾーン114に入り、この場合、パージガス予熱器132により予熱されたパージガス130が基材106を暖める一方で、外気がCNT成長ゾーン108へ侵入するのを同時に防止する。その後、基材106は、CNT成長ゾーン108の第1の端部120における基材入口118を通過する。図5及び図6に図示されるように、基材106は、CNT成長ゾーン108に入り、加熱器110(図6に図示)により加熱され、そして、供給ガス128(図2に図示)にさらされる。供給ガス128は、CNT成長ゾーン108に流入する前に、いずれの加熱器111からも、供給ガス流入口112の全てを通り、供給ガス流入口マニホールド134を通り、供給ガス拡散器136を通って移動する。供給ガス128及び/又はパージガス130は、第1パージゾーン114及び/又はCNT成長ゾーン108から排気口142及び/又は排気マニホールド140を介して流出し、大気圧又はこれより僅かに高い圧力を維持する。基材106は、必要に応じて、十分なCNT成長が生じるまで更にCNT成長ゾーン108を通って進む。図5に図示されるように、基材106は、CNT成長ゾーン108の第2の端部124における基材出口122を通過し、第2パージゾーン116に入る。別の方法として、第1パージゾーン114及び第2パージゾーン116を同じゾーンとし、基材106が装置100内で方向転換し、基材入口118を介してCNT成長ゾーン108から排出されることも可能である。いずれにせよ、基材はパージゾーンに入ってから装置100から排出される。パージゾーン114及び116には、夫々、パージガス流入口126及び127(図2に図示)を介して導入されたパージガスがあり、これにより、その内部のパージガス130は緩衝材として機能し、供給ガス128が外気と接触することを防止する。同様に、パージゾーン114及び116は、夫々、適切な緩衝を得るために、排気ポート142(図2に図示)及び/又は排気マニホールド140(図6に図示)を有する。アクセス・プレート138(図5に図示)は、洗浄及び他のメンテナンスのために、CNT成長ゾーン108にアクセスできるようにしている。
【0026】
ここで図7〜12に関して、1つの実施形態においては、CNT成長ゾーン108は、スカート144、パイプ接続部146、及びプラグ接続部148で構成される。例えば、ガス・シール絶縁体(gas seal insulation)150などの絶縁体は、外部環境に対する障壁となる。ステンレス鋼支持材(standoff)152は、銅プレート154を支持し、そして、石英レンズ156を支持する。前述の実施形態と同様に、供給ガスはガス流入口158を介してCNT成長ゾーン108に流入し、温度はプローブ160により監視される。図7〜12に図示される実施形態は実用的であるが、ファイリング(filing)のときには、前述の実施形態が好ましい。
【0027】
ある実施形態において、多数の基材106(例えば、図4の106a、106b、106c)は、いかなるときでも装置100を通過することができる。同様に、加熱器は、特定のCNT成長ゾーン108の内側か外側のいずれかに、いくつでも用いられる。
【0028】
本教示の装置及び方法のいくつかの潜在的利点には、限定するものではないが、改善された断面積;向上したゾーン分け;改善された材料;触媒還元とCNT合成の組み合わせが含まれる。
【0029】
処理される材料の多くは、相対的に平面的(例えば、薄いテープ又はシート状の形態)であるので、従来の円形横断面では容積を十分に利用できない。容積が増加すると、ガスパージを同レベルに維持するために、パージガス流量を増加させる必要があるので、このような円形横断面では十分なシステムパージを維持することが困難になる。このため、従来の円形横断面は、開放環境におけるCNTsの大量生産には有効ではない。さらに、このような円形横断面では、供給ガス流量の増加が必要になる。パージガス流量の相対的増加には供給ガス流量の増加を必要とする。例えば、12K繊維の容積は、矩形横断面を有する例示的なCNT成長ゾーン108の全容積の2000分の1である。同等の円筒状の成長チャンバー(例えば、矩形横断面のCNT成長ゾーン108と同じ平坦化された繊維を収容する幅を有する円筒状チャンバー)では、繊維の容積は、CNT成長ゾーン108の容積の17,500分の1である。蒸着処理(gas deposition processes)(例えば、CVDなど)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与える。例示的な矩形のCNT成長ゾーン108には、かなりの量の過剰容積―つまり、無用の反応が起こる(例えば、ガスが、それ自体で反応する、あるいは、チャンバー壁と反応する)容積―があるが、円筒状チャンバーでは、その容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会が増加するため、所望の反応が有効に生じるには、円筒状チャンバーではより緩やかになってしまい、これは連続処理の進行には問題となる。加えて、円筒状チャンバーを使用した場合、矩形横断面を有する例示的なCNT成長ゾーンと同じ流量比で供給するためには、より大量の供給ガスが必要である点に注目されたい。従来の円形横断面に関連する別の問題は温度分布である。相対的に小径のチャンバーが用いられた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に必要とされるなど、サイズの増大に伴い、温度勾配は増加する。このような温度勾配により、基材の全域で製品品質がばらつくことになる(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)。この問題は、対応する基材106に厳密に適合した横断面(例えば、矩形)を有するCNT成長ゾーン108を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、CNT成長ゾーン108は、基材106のサイズが増加したときに、高さを一定に維持することができる。CNT成長ゾーン108の頂部と底部の間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。
【0030】
また、従来の円形横断面のチャンバーは供給ガスの導入を必要とする。管状炉が使用されるので、従来のCNT合成チャンバーは、供給ガスを一端で導入し、それをチャンバーに通して他端へと導く。本明細書に開示された例示的な実施形態において、供給ガスは、CNT成長ゾーン108の中心又は内部に(CNT成長ゾーン108のうち、両側面か、頂部及び底部プレートか、いずれかを通って対称的に)導入される。これにより、流入する供給ガスが、CNT成長が最も活発なシステムの最高温度の部位に連続的に補充されるので、全体的なCNT成長速度が向上する。このような一定の供給ガス補充は、本教示のCNT成長ゾーン(複数も含む)108により示される成長速度の向上にとって重要な側面である。
【0031】
高温の供給ガスが外部環境と接触すると、基材材料(例えば、繊維)の分解が増加する。従来のCNT合成処理では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが必要とされる。本明細書に開示されたCNT成長ゾーン108の一端又は両端のいずれかにおけるパージゾーン114、116は、内部システムと外部環境との間の緩衝材となる。パージゾーン116は、連続処理ラインに必要とされるような短時間での冷却を実現する。
【0032】
例示的な実施形態による金属(例えば、ステンレス鋼)の使用は殆ど見られず、実際には常識に反している。金属、特にステンレス鋼は、炭素析出(すなわち、すす及び副生成物の形成)が起こりやすい。一方、石英は、析出物が殆どなく、洗浄がより簡単である。また、石英は、試料の観察もしやすい。しかしながら、ステンレス鋼上におけるすす及び炭素析出物の増加は、より着実、高速、効率的、かつ、安定的なCNTの成長をもたらす。大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、CNT成長ゾーン108で起こるCVD処理では拡散が制限されると考えられている。すなわち、触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が(不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧のために、システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素が触媒粒子に付着してCNTsの合成能力を低下させる。このため、例示的な実施形態に従って、本発明者は「汚れの付いた(dirty)」装置を意図的に運転している。炭素がCNT成長ゾーン108の壁面上の単分子層に一度析出すると、炭素は、それ自体を覆って析出しやすくなる。得られる炭素には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、残りの炭素ラジカルが、触媒を被毒させない好ましい速度で触媒と反応する。既存のシステムが「清浄に(cleanly)」運転しても、連続処理のために開放状態であれば、成長速度が低下してCNTsの生産量ははるかに小さくなる。
【0033】
装置100の使用により、CNT成長ゾーン108内で起こる触媒還元とCNT成長のいずれもが可能となる。還元工程を、個別の工程として実施すると、連続処理用に十分タイムリーに行うことができないので、これは重要なことである。従来、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本願発明によれば、両工程はCNT成長ゾーン108内で行われるが、これは、少なくとも1つには、供給ガスを導入するのが、CNT成長ゾーン108の端部ではなく、中心部であることによる。還元処理は、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる;この時点までに、ガスには、触媒と反応して酸化還元を引き起こす(水素ラジカルの相互作用による)前に壁面と反応して冷える時間がある。還元が生じるのは、この移行領域である。CNTの成長はシステム内で最も高温の等温ゾーンで起こり、CNT成長ゾーンの中心近傍における供給ガス流入口の近位で成長速度が最速となる。
【0034】
例示的な実施形態は、あらゆる種類の基材とともに用いられる。用語「基材」は、CNTsが合成可能なあらゆる基礎材料を含むものであり、この材料には、限定するものではないが、炭素繊維、グラファイト繊維、セルロース系繊維、ガラス繊維、金属繊維(例えば、鋼、アルミニウムなど)、メタリック(metallic)繊維、セラミック繊維、メタリック−セラミック(metallic-ceramic)繊維、アラミド繊維、又は、これらの組み合わせを含んで構成されるあらゆる基材が含まれる。基材には、例えば、繊維トウ(通常約1000から約12000の繊維を有する)に加えて、平面的な基材(例えば、織物、テープ、又は他の繊維ブロードグッズ(fiber broadgoods))及びCNTsが合成可能な基礎材料に配列された繊維又はフィラメント(filament)が含まれる。
【0035】
ある実施形態において、本願発明の装置は、カーボン・ナノチューブが浸出した繊維を製造する。本明細書では、用語「浸出する(infused)」は、化学的又は物理的に結合することを意味し、用語「浸出(infusion)」は、結合処理を意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファンデルワールス力の介在による物理吸着が含まれ得る。例えば、ある実施形態において、CNTsは、基材に直接結合される。また、ある程度の機械的結合も起こると考えられている。結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング、及び/又は、CNTs及び基材間にはさまれて配置された遷移金属ナノ粒子を介して基材へ浸出するなど、間接的であってもよい。本明細書に開示されたCNT浸出基材において、カーボン・ナノチューブは、前述のように、直接的又は間接的に基材に「浸出する」ことが可能である。CNTが基材に「浸出する」具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0036】
基材への浸出に有用なCNTsには、単層CNTs、二層CNTs、多層CNTs、及びこれらを混合したものが含まれる。そのうちのどのCNTsを用いるかは、CNT浸出基材の用途によって決まる。CNTsは、熱的及び/又は電気的伝導の用途に、あるいは、絶縁体として用いられる。ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、単層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、多層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブは、単層ナノチューブと多層ナノチューブの組み合わせである。単層及び多層ナノチューブに特有の性質には、繊維の最終用途にみあう、ナノチューブのいずれか1つの合成を決定付ける相違がある。例えば、単層ナノチューブは半導体的又は金属的である一方、多層ナノチューブは金属的である。
【0037】
前述から明らかなように、従来のチャンバーと例示的な装置及び方法との間の2つの重要な違い、それは、触媒還元時間及びCNT合成時間である。例示的な方法において、これらの工程には、従来のシステムのように数分から数時間ではなくて、数秒しか時間がかからない。従来のチャンバーでは、触媒粒子の化学的性質及び配置を制御できないため、バッチ式方法(batchwise fashion)でのみ実施可能な、多大な時間を要する多重補助工程(multiple time-consuming sub operation)を含む処理となってしまう。
【0038】
例示的な実施形態のバリエーションにおいては、CNT成長の連続処理ラインが用いられ、フィラメント・ワインディング(filament winding)処理の向上が可能となる。このバリエーションにおいて、CNTsは、前述のシステム及び処理を用いて基材(例えば、グラファイト・トウ、ガラス・ロービングなど)上に形成され、その後、樹脂槽を通過して樹脂含浸したCNT浸出基材が生成される。基材は、樹脂含浸後、デリバリー・ヘッド(delivery head)により回転するマンドレル(mandrel)の表面上に位置を合わされる。そして、基材は、既知の方法による正確な幾何学的パターンでマンドレルに巻かれる。これらの付加的な補助工程は連続的に行われ、基本的な連続処理を拡張する。
【0039】
前述のフィラメント・ワインディング処理により、パイプ、チューブ、又は雄型を介して特長的に製造される他の形態がもたらされる。しかし、本明細書に開示されるワインディング処理から形成される形態は、従来のフィラメント・ワインディング処理を介して生成されるものとは異なる。具体的には、本明細書に開示される処理において、その形態は、CNT浸出基材を含む複合材料から形成される。このため、このような形態にとって、CNT浸出基材によりもたらされる強化された強度などは有益となるであろう。
【0040】
本明細書では、用語「巻き取り可能な寸法」とは、材料をスプール(spool)又はマンドレルに巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、基材の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な寸法」の基材は、本明細書に記載されるように、CNT浸出のための1回分の処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻き取り可能な寸法の基材の1つの例としては、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドのAS4 12k炭素繊維のトウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)が挙げられる。特に、工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンド(高重量のスプール用で、通常、3k/12Kのトウ)のスプールで入手されるが、より大きなスプールには特注を必要とする。本願発明の処理は、5〜20ポンドのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールの使用も可能である。さらに、例えば、100ポンド以上の極めて長大な巻き取り長を、取り扱いが容易な寸法、例えば、50ポンドのスプール2つに分割する前処理工程を組み込むこともできる。
【0041】
本明細書では、用語「供給ガス」とは、揮発化、霧化、粉末化、あるいは流体化が可能であり、高温において、少なくともいくつかの遊離炭素ラジカルに解離又は分解可能であり、これにより、触媒の存在下、基材上にCNTsが形成される、炭素化合物のあらゆるガス、固体、又は液体をいう。ある実施形態において、供給ガスは、アセチレン、エチレン、メタノール、メタン、プロパン、ベンゼン、天然ガス、又はこれらの組み合わせを含んで構成される。
【0042】
本明細書では、用語「パージガス」とは、揮発化、霧化、粉末化、あるいは流体化が可能であり、別のガスに置換可能なあらゆるガス、固体、又は液体をいう。パージガスは、任意で、対応する供給ガスよりも低温にされる。ある実施形態において、パージガスには、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、又はヘリウム)と炭素原料(例えば、アセチレン、エチレン、エタン、メタン、一酸化炭素)との質量流量の調節された混合物、及び、通常、約0〜約10%の供給ガスを、残りを構成する不活性ガスと混合した類似の炭素含有ガス、が含まれる。しかし、他の実施形態において、第3のプロセスガスとして、追加的なガス(例えば、アンモニア、水素、及び/又は酸素)を約0%〜約10%の範囲で混合することもできる。
【0043】
本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、NPsは球形である必要はないが、球の等価直径が約0.1〜約100ナノメートルのサイズの粒子をいう。遷移金属NPsは、特に、基材上においてCNTを成長させる触媒として機能する。
【0044】
本明細書では、用語「材料滞留時間」とは、巻き取り可能な寸法の基材に沿う各ポイントが、本明細書に記載されるCNT浸出処理の間、CNTの成長状態にさらされる時間をいう。この定義には、多数のCNTの成長ゾーンを用いる場合の材料残留時間が含まれる。
【0045】
本明細書では、用語「ラインスピード」とは、本明細書に記載されるCNT浸出処理により、巻き取り可能な寸法の基材を送り込むことができるスピードをいい、この場合、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)ゾーン長を材料残留時間で除して算出される速度である。
【0046】
当然のことながら、前述の実施形態は単に本願発明の具体例にすぎず、当業者であれば、本願発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態の多くの変形例を考え出すことができる。例えば、本明細書において、数々の具体的詳細が、本願発明の例示的な実施形態の説明及び理解を完全にするために与えられている。しかしながら、当業者であれば、本願発明の1以上の詳細がなくても、又は他の処理、材料、構成要素などで本願発明を実施でき得ることを認識するであろう。
【0047】
また、例示的な実施形態の態様を分かり難くすることを避けるため、場合によっては、周知の構造、材料、又は工程を詳細に図示又は説明しない。当然のことながら、図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。本明細書全体にわたって「1つの実施形態」又は「一実施形態」又は「ある実施形態」に言及しているのは、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴が、本願発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ことを意味する。したがって、本明細書の全体にわたって様々な箇所で現れる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。さらに、特定の機能、構造、材料、又は特徴を、1以上の実施形態で適切な方法により組み合わせることができる。このため、このように変形したものは、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き取り可能な長さの基材が通過できる大きさに形成された基材入口を有する少なくとも1つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンと、
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと熱的に連結した少なくとも1つの加熱器と、
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンと流体的に連結した少なくとも1つの供給ガス流入口と、
を含んで構成され、
運転中、大気に開放されている装置。
【請求項2】
パージゾーンを含んで構成された請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンの両側に少なくとも2つのパージゾーンを含んで構成された請求項1に記載の装置。
【請求項4】
基材出口を含んで構成された請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記供給ガス流入口が、前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンにある請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記パージゾーンにパージガス流入口を含んで構成された請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンの横断面積が、前記巻き取り可能な長さの基材の横断面積の約10000倍以下である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンが、前記巻き取り可能な長さの基材の一部の容積の約10000倍以下の内部容積を備え、前記巻き取り可能な長さの基材の前記一部は、前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンの長さと略等しい長さを備えた請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンが、金属を含んで構成される筐体により形成された請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記金属は、ステンレス鋼を含んで構成された請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも2つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンを含んで構成された請求項1に記載の装置。
【請求項12】
巻き取り可能な長さの基材が通過できる大きさに形成された基材入口を備えた少なくとも1つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンを有し、大気に開放された装置を提供するステップと、
基材を提供するステップと、
前記基材の一部を、前記基材入口を介して前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンに導入するステップと、
供給ガスを、前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンに導入するステップと、
前記基材の前記一部を前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンに通し、これにより、カーボン・ナノチューブを前記基材の前記一部に形成するステップと、
を含んで構成された方法。
【請求項13】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンから、前記基材の前記一部、及び、この上に形成されたカーボン・ナノチューブを取り出すステップを含んで構成された請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップが請求項12に記載された順序で行われる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記装置は、少なくとも1つのパージゾーンを備え、前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンに前記基材の前記一部を導入する前に、前記パージゾーンをパージするステップを更に含んで構成された請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンに前記供給ガスを導入する前に、前記供給ガスを予熱するステップを更に含んで構成された請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記装置は、前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンのうち前記パージゾーンの反対側に追加のパージゾーンを含んで構成され、前記基材の前記一部が前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンを通過した後に、前記追加のパージゾーンをパージするステップを更に含んで構成された請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記装置は、少なくとも2つのカーボン・ナノチューブ成長ゾーンを備え、前記基材の前記一部を前記カーボン・ナノチューブ成長ゾーンの夫々に通すステップを含んで構成された請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記基材は巻き取り可能な長さの基材であり、前記巻き取り可能な長さの基材を前記装置に連続的に通すステップを含んで構成された請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−523363(P2012−523363A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504678(P2012−504678)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025660
【国際公開番号】WO2010/117515
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】