説明

連続的に走行する鋼ストリップのための圧延機においてロールを交換するための方法

本発明は、連続的に走行する鋼ストリップ圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するためのロールスタンド(C)においてロールを交換する方法に関し、スタンドが、連続的な走行方向(D)でみて圧延機に沿って連続して配置された複数(N)のロールスタンドの一部であり、ロールの自由締付け位置におけるロールスタンバイ機能が、前記複数(N)のスタンドの内の少なくとも1つの専用のスタンド(CA)に割り当てられており、ロールの締付けに関連した調節を制御する初期設定値が、作動圧延位置にある他のスタンドに個々に割り当てられており、ロール交換を行う際に、自由締付け位置(C)へ移動する時に、前記スタンド(C)の初期設定値と、作動圧延位置にあるスタンドの初期設定値とが、専用のスタンド(CA)を含む前記スタンドのそれぞれの間で個々に再配分される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、連続的に走行する鋼ストリップの圧延機においてロールを交換するための方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、圧延ロールの交換を必要とする、タンデム連続圧延機における鋼ストリップの冷間圧延の技術分野に関する。
【0003】
鋼ストリップの冷間圧延は様々なタイプの圧延機において行うことができる。
【0004】
"リバーシブル式"で知られる圧延装置において、圧延されるストリップは、少なくとも2つのユニットの間で、一方の走行方向へ、次いで他方の走行方向へ交互に移動し、異なる圧延ランの間にストリップを繰り出すか又は巻き取ることができる。これらの繰出し/巻取りユニットの間で、ストリップは、圧延機に20万〜60万トン/年の能力を提供するシングルロールスタンドか、又は30万〜100万トン/年の製造能力を提供する2つの連続して配置されたスタンドにおいて圧延される。
【0005】
"タンデム式"で知られる圧延装置において、圧延されるストリップは、走行方向でみて上流の繰出しユニットと下流の巻取りユニットとの間に相前後して連続して配置された複数のロールスタンドにおいて一走行方向に移動する。前記ロールスタンドは、公知のように、"ワークロール"として知られる圧延ロールを支持する支柱と、ワークロールのたわみを制限する支持ロールと、場合によっては、支持ロールとワークロールとの間の中間ロールの1つ又は2つの対とを有している。最も硬い鋼を圧延するための特別な用途は、例えば"センジミア"として知られる圧延機等の、複数のロールのアセンブリも有する。タンデム式の冷間圧延機の複数の形式が存在する。慣用の圧延機は、リールごとに作動させ、年に70万〜150万トンの圧延鋼を生産することができる。この圧延機の投資コストは高く、装置全体に亘って各リールのヘッドの係合を必要とするという欠点を有する。別のタンデム圧延機は、連続モードで運転するように編成されており、繰出しユニットから出てくるリールの尾部は、第2の繰出しユニットによって繰り出される新たなリールのヘッドに溶接される。このような連続圧延機は、100万トン〜300万トン/年の生産速度を達成する。
【0006】
圧延運転の連続性を保証するために割り当てられる投資を考慮すると、線形歩留り(linear yield)の損失、すなわち所要の公差を超えた圧延されたストリップの量を減じることが必要であるのと同様に、圧延機が圧延していない非稼働時間をできるだけ排除することが必要である。
【0007】
メンテナンス等の様々な理由から、ロールスタンドにおけるロール、特にワークロール及び中間ロール、又は複数のロールのカセットを定期的に交換することが必要であり、圧延はこの作業の間は中断されねばならない。
【0008】
実際には、圧延中にロールは高い圧力を受け、このことは、ロール表面の漸進的冷間硬化を生じ、この漸進的冷間硬化が大きすぎると、ロールを脆化させ、き裂又は剥離を生じることがある。
【0009】
また、圧延されるストリップと、支持ロール又は中間ロールとにワークロールが常に接触することは、ロールの表面条件の劣化を生じ、特に圧延機の下流(圧延機からの出口)の最後のロールスタンドにおける表面条件が、圧延されるストリップの所要の表面品質をもはや達成できない場合には、ロールを交換する必要がある。
【0010】
最後に、圧延プログラムに応じて、通常、ワークロールの直径、又は少なくとも1つのロールスタンドの構成を、例えば"クォート"モードから"セクストン"モード若しくはマルチロールモードに変更することができる。次いで、該当するロールの物理的変更を行うことが必要である。
【0011】
ロール交換作業をできるだけ単純化及び短縮するために、国際公開第2007/060370号パンフレットに記載のように、自動化された装置又は手順が長い間提供されてきた。交換時間は、装置に応じて、2分〜3分である。
【0012】
ロール交換による生産性の低下は、冷間硬化及び表面摩耗が極めて急速に生ずる極めて小さなロールが装備された圧延機におけるスタンドの場合、例えばステンレス鋼を圧延するために使用されるマルチロールスタンドの場合に、特に大きい。
【0013】
年に5万リール(約100万トン)のステンレス鋼を圧延するための、4つのスタンドを備えたタンデム圧延機を考えると、約1〜3リールごとに、最後のスタンドにおけるロールを交換するために圧延機を停止させる必要がある。極めて迅速なロール交換は少なくとも2分かかるので、その結果、下流における最後のスタンドにおけるロールの交換中に"裏で"別のスタンドにおけるロールが交換されるとしても(その頻度はより少ない)、一年の交換時間は、1700時間/年に達し、つまり一日24時間、年間300日稼働する場合に24%の停止率に達する。最善の場合でも、3つのリールごとに交換することによって8%に低下するが、それでも依然として極めて高い。
【0014】
さらに、圧延機を再始動させる場合(ストリップ移動の停止)、最適な圧延条件はすぐに得られるのではなく、ストリップは、ストリップの約50〜75メートルに亘って許容公差を超えて圧延され、このことは線形歩留りに影響する。
【0015】
圧延を中断せずにロール交換を行うための試みがなされてきた。6つのスタンドを備えるタンデム圧延機に適した方法は、例えば特開昭62−275515号公報に開示されている。ロールスタンドにおいてロールを交換するためのこの方法は、連続的に走行する鋼ストリップ圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するために適応されており、前記スタンドは、連続的な走行方向で圧延機に沿って連続して配置された複数のロールスタンドの一部を形成している。(前記文献の図2に記載の例に従って)ロール交換がいずれかのスタンドにおいて計画されると、ロールの停止は、そのロールの圧下率(圧延される製品の厚さの圧下の割合)を、以下の順序に従って上流及び下流のスタンドに配分することにより準備される:
−交換が行われるスタンドの開放を補償するために必要な分だけ、(交換が行われるスタンドの上流の)スタンドの圧下率を増大させ、これを、タンデム圧延機における第1のスタンド、次いで第2のスタンドへと順に行う
−低い残留値のみを保持しながら、交換を行うスタンドの圧下率を減じる
−上流のスタンドに対して既に行われたように、(交換が行われるスタンドの下流)のスタンドの圧下率を増大させ、その際、まず該当するスタンドに最も近いスタンドにおいて、次いで次のスタンドへと行う
−すぐ上流に配置されたスタンドの圧下率の増大と同時に、該当するスタンドを完全に開放する
−該当するスタンドにおいてロールを交換する
−前記該当するスタンドのすぐ上流に配置されたスタンドの圧下率を減じると同時に、該当するスタンドを低い圧下率で参加させる
−タンデム圧延機における第1のスタンドから始めて、次いで第2のスタンドへと順に、上流のスタンドの圧下率を初期レベルへ戻す
−該当するスタンドを初期圧下レベルで参加させる
−最も近いスタンドから始めて、該当するスタンドの下流のスタンドの圧下の最初のレベルへ戻す。
【0016】
この手順は、分かるように、作動圧延位置に残るロールの締付力と、スタンドにおけるモータの速度及びトルクとを、他のスタンドへ、すなわち6つのスタンドを備えるこのタンデム圧延機における幾つかのスタンドに対して15〜20%の過負荷として配分することを必要とする。しかしながら、ロールスタンドの締付力は、胴の直径と共に低下するロールのヘルツ圧力抵抗の限界内でのみ増大することができる。この限界に達した場合、ロールの交換を考慮して20%の能力余裕を維持する必要があるとすると、圧延機アセンブリは最大能力で作動することができず、生産能力の観点から常に不利である。従って、"オン・ザ・フライ"でのロール交換による生産性の向上は、限界になるか又は存在しなくなる。
【0017】
さらに、特開昭62−275515に記載のような上流及び下流のスタンドの締付けの増大及び次いで減少の連続は、プロセスを通じてストリップ厚さの良好な連続性を生じず、従って、幾つかの段階における不正確な最終圧延厚さと、線形歩留りの低下とを生じる。
【0018】
最後に、(各スタンドにおける圧下率、各スタンドにおけるロールの回転速度、各スタンドの間の牽引を含む)与えられた製品及び特定の最終厚さのための圧延プランは、交換が行われるスタンドにおいて生ぜしめられない厚さの圧下の分を、交換の場所の上流及び下流のスタンドのそれぞれに分配するために、交換過程の間に12回変更されなければならない。
【0019】
6つのスタンドを用いる通常圧延から残りの5つのスタンドを用いる圧延へのこの移行と、6つのスタンドを用いる圧延への戻しとは、管理することが困難であり、圧下の増大が鋼の金属挙動の変化、例えば冷間硬化を生じるならば決定的となる恐れさえある。
【0020】
この移行が圧延されるストリップのフォーマットの変更と同時に行われる場合(フォーマットは、幅、インプット厚さ、冶金を意味するものと取られる)、移行の管理はほとんど不可能であることが分かるであろう。特開昭62−275515号公報は、ロール交換作業に特有の、公差を超えた長さと、溶接部を除去するために行われる不可避の切断とを組み合わせるために、ストリップ溶接部の通過中にローラ交換を行うことが有利であることを示している。従って、ロールの交換とのストリップ溶接部の通過の体系化は、必然的にストリップフォーマットの全ての変更との同時発生を生じ、どのようなストリップであれ、交換作業を正確に制御することができないリスクを増大させる。
【0021】
本発明の課題は、前記問題を解決することができる、連続的に走行する鋼ストリップ圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するためのロールスタンドにおいてロールを交換するための方法を提案することである。
【0022】
1つの解決手段は請求項1に記載の方法によって提案される。
【0023】
連続的に走行する鋼ストリップ冷間圧延機(タンデム式)のための少なくとも1つのワークロール(ストリップ締付け機能を備える)を支持するためのロールスタンドにおいてロールを交換する方法に基づき、前記スタンドは、連続的な走行方向でみて圧延機に沿って連続した配置された複数のロールスタンドの一部を形成しており、以下のことが提案される:
−ロールの自由締付け位置における圧延スタンバイ機能(すなわちストリップに圧力を加えない)は、複数のスタンドの内の少なくとも1つの専用のスタンドに割り当てられている
−ロールの締付けに関連する調節を制御する初期設定値は、作動圧延位置にある他のスタンドに個々に割り当てられている
−ロール交換の際、スタンドを自由締付け位置に移動させる場合に、前記スタンドの初期設定値と、作動圧延位置にとどまるスタンドの初期設定値とは、専用のスタンドを含む前記スタンドのそれぞれの間で個々に再配分される。
【0024】
言い換えれば、圧延機は複数のスタンドを有しており、そのうち1つのスタンドは常に自由締付け位置へ配置される(前記専用のスタンド)。複数のスタンドの内の1つのスタンドが作動させられなくなる圧延機とは異なり、本発明による専用のスタンドは、少なくとも1つのロールが交換されなければならないスタンドの代わりに用いられる。従って、極めて有利なことに、残りのスタンドにおける圧下率の新たな複雑な配分を回避することができる。なぜならば、単に1つのスタンドの締付け設定値を別のスタンドに引き継ぐ若しくは再分配することができるからであり、2つのスタンドは、作動した連続した走行するストリップ圧延位置に参加させられる。同様に、この設定値引き継ぎ作業は、調整の極めてバイナリの形式にとどまり、従って、特異性の条件及びストリップフォーマット、及びストリップ溶接又は切断との同時発生を回避する。
【0025】
従って、引き継がれた/再配分された設定値によるスタンド締付けの増大及び減少の連続は、著しく単純化及び低減され、このことは、圧延機の出口におけるストリップ厚さを所要の公差にさらに制御可能にし、優れた線形歩留りをも保証する。
【0026】
もちろん、該当するスタンドの間の設定値の同期した引き継ぎにより、本発明は、ストリップ移動を中断せずにロールを交換することを可能にする。ロール交換の間、圧延機の生産性は、ロールを交換しない状態と同じく最大のままである。
【0027】
従属請求項も、異なる態様又は実施形態による本発明の利点を示している。
【0028】
実施形態及び適用の例は図面を用いて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】本発明の第1の実施形態による交換の方法を示す図である。
【図1b】本発明の第1の実施形態による交換の方法を示す図である。
【図2a】本発明の第1の実施形態の変化態様による交換の方法を示す図である。
【図2b】本発明の第1の実施形態の変化態様による交換の方法を示す図である。
【図3a】本発明の第2の実施形態による交換の方法を示す図である。
【図3b】本発明の第2の実施形態による交換の方法を示す図である。
【図3c】本発明の第2の実施形態による交換の方法を示す図である。
【0030】
以下で説明される全ての図面は、ストリップBの走行方向Dに沿って連続的に走行するストリップBに沿って連続して配置された、6つのスタンド及びロールC1,C2,C3,C4,C5,C6を示している。分かりやすくするため、対称平面Ax(2つのストリップ表面に対して平行でかつ等距離である)によって分割されたストリップの上側区分も示されている。作動圧延位置にある、6つのロールの内の5つのロールにはそれぞれ、締付け設定値R1,R2,R3,R4,R5が割り当てられている。広い意味で、「スタンド」との用語は、同じスタンドにおける少なくとも1つのロールを示すために用いられる。同様に、「第1のスタンド」、「第2のスタンド」、「第Nのスタンド」が用いられる。この数字は、第1のスタンドがストリップ走行方向Dでみて最も上流に(圧延機へのストリップの入口に)配置されており、後続のスタンドは、第1のスタンドの下流に次々に配置されている。
【0031】
概略的には、示された圧延機は、前記連続的に走行する鋼ストリップの圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するように適応されたロールスタンドCにおけるロールを交換する方法の実施を提供し、前記スタンドCは、連続的な走行方向Dで圧延機に沿って連続して配置された複数N(この場合N=6)のスタンドの一部を形成している。
【0032】
ロールの自由締付け位置における圧延スタンバイ機能は、複数Nのスタンドのうちの少なくとも1つの専用のスタンドCAに割り当てられている。
【0033】
ロールの締付けに関連した調節を制御する初期設定値は、作動圧延位置にある他のスタンドに個々に割り当てられている。
【0034】
ロール交換の際に、スタンドCを自由締付け位置へ移動させる場合、前記スタンドCの初期設定値と、作動圧延位置にとどまるスタンドの初期設定値とは、専用のスタンドCAを含む前記スタンドのそれぞれの間で個々に再配分される。
【0035】
ストリップBは、圧延機を構成する合計N個のスタンドのうちのN−1個のロールスタンドを通過することによって常に圧延され、圧延機におけるスタンドのいずれか1つは、ロールの交換が行われているか(スタンドCとして示されている)又は新たな交換作業を待機するスタンバイ位置を占めている(スタンドCA又はCで示されている)。
【0036】
従って、ロールを交換しようとするスタンドCは、別のスタンドにおける次のロール交換までは、初期の専用のスタンドCAの状態と同様にスタンバイ位置に位置する。
【0037】
ロールを交換しようとするスタンドCに対する、スタンバイ状態の専用のスタンドCAの相対的な位置に応じて、方法の第1の実施形態は、図1a及び図1bと、図2a及び図2bとによってそれぞれ示された2つの態様を有する。
【0038】
図1aは、第2のスタンドC=C2のためのロール交換の前の圧延機状態を示している。ストリップの走行方向Dで、専用のスタンドCA=C6は第6のスタンドC6の次に配置されており、ひいては、交換を行おうとする第2のスタンドC=C2の下流に配置されている。専用のスタンドCA=C6は、自由締付け位置において圧延スタンバイ状態にある。この段階で、最初の5つのスタンドC1,C=C2,C3,C4,C5は、これらのスタンドに割り当てられた初期締付け設定値R1,R2,R3,R4,R5のそれぞれに従って作動圧延位置を占めており、ストリップの増大する圧延を生じる。第5のロールC5における最後の設定値R5により、ストリップは圧延機の出口において厚さEを有することができる。
【0039】
図1bは、図1aに示したようなロール交換段階(第2のスタンドC=C2)における圧延機状態を示している。走行方向Dでみて、初期スタンバイ位置における専用のスタンドCA=C6の上流に配置された第2のスタンドC=C2におけるロール交換の間、前記第2のスタンドC=C2の初期設定値R2は、第2のスタンドのすぐ下流に配置された第3のスタンドC3に引き継がれ、この第3のスタンドC3の初期設定値R3自体は、第3のスタンドのすぐ下流に配置された第4のスタンドC4に引き継がれ、必要であれば(この場合のように)、この第4のスタンドC4の初期設定値R4自体は、第4のスタンドのすぐ下流に配置された第5のスタンドC5に引き継がれ、スタンバイ位置にある専用のスタンドCA=C6まで同様に引き継がれて、この専用のスタンドは次いで最後の第5の設定値R5において作動圧延位置に移動させられる。
【0040】
次いで、第2のスタンドC=C2におけるロール交換を、ストリップの移動を中断せずに行うことができる。また、この第2のスタンドに、別のロール/スタンドCの交換が行われるまで、専用のスタンドCA=C6(今は作動圧延機能を果たしている)のスタンバイ機能を割り当てることができる。従って、この方法は、望まれるならば、専用のスタンドの(圧延を行わない)スタンバイ機能を、ロール交換が行われたスタンドの内の1つに単に割り当て、スタンドの次の交換を待機することにより、時間の制限を受けずに行うことができる。
【0041】
図2aは、図1a及び図1bに示したロール交換を第5のスタンドC=C5に対して行う態様における圧延機状態を示している。ストリップの走行方向Dでみて、専用のスタンドCA=C3は(図1a及び図1bとは異なり)第3のスタンドC3であり、従って、交換を行おうとする第5のスタンドC=C5の上流に配置されている。専用のスタンドCA=C3は自由締付け位置において圧延スタンバイ機能を果たしている。この段階において、最初の2つのスタンドと最後の3つのスタンドC1,C=C2,C4,C5,C6は、これらのスタンドに割り当てられた初期締付け設定値R1,R2,R3,R4,R5のそれぞれに従って作動圧延位置を占めており、ストリップの増大する圧延を生じている。第6のロールC6における最後の設定値R5により、ストリップは、圧延機からの出口において厚さEを有することができる。
【0042】
図2bは、図2aに示したようなロール交換段階における圧延機状態(第5のスタンドC=C5)を示している。走行方向Dでみて、スタンバイ位置における(第3)の最初の専用のスタンドCA=C3の下流に配置された第5のスタンドC=C5におけるロール交換の間、前記第5のスタンドC=C5における最初の設定値R4は、第5のスタンドのすぐ上流に配置された第4のスタンドC4に引き継がれ、この第4のスタンドC4の最初の設定値は、この第4のスタンドのすぐ上流に配置された第3のスタンドC3(ここでは専用のスタンドCAでもある)に引き継がれる。第1及び第2のスタンドC1,C2は、それぞれの設定値R1,R2における締付け位置を維持する。交換のためのスタンドCと、交換のためのスタンドの上流における専用のスタンドCAとの間にさらにスタンドが挿入されているとすれば、前記挿入されたスタンドの最初の設定値自体は、そのスタンドのすぐ下流に配置されたスタンドへ引き継がれており、スタンバイ位置にある専用のスタンドCAまで同様に引き継がれ、この専用のスタンドCAは、第3の設定値(ロール交換の前の第4のスタンドの最初の設定値)において作動圧延位置へ移動させられる。
【0043】
次いで、第5のスタンドC=C5におけるロール交換を、ストリップの移動を中断せずに行うことができる。図1a及び図1bによる第1の実施形態と同様に、次いで、別のロール/スタンドCの交換を行うまで、この第5のスタンドに専用のスタンドCA=C3(今は作動圧延機能を果たしている)のスタンバイ機能を割り当てることができる。従って、この方法は、望まれるならば、ロール交換が行われたスタンドのうちの1つに専用のスタンドの(圧延を行わない)スタンバイ機能を単に再割り当てし、スタンドの次の交換を待機することによって、時間の制限なく実施することができる。
【0044】
図1a及び図1bと、図2a及び図2bとに示された両方の場合において、単に最初の圧延プランに属する調節設定値の、スタンドからスタンドへの一回の引き継ぎが行われるだけであり、圧延プランに対する特定の複雑な変更は行われない。
【0045】
また、自動ストリップ厚さ制御システム(Automatic Gauge Control, "AGC"として知られている)による調節設定値の引き継ぎは、前記ストリップのいかなる部分も厚さ公差を超えないように、スタンド間ストリップ走行時間を考慮するように編成される。従って、変更作業は線形歩留りに影響しない。
【0046】
最後に、ロール交換を行うスタンドから他のスタンドへの圧下量の分配によって一時的に過負荷されなくてよいことにより、全てのスタンドは最大能力で作動することができ、これは、タンデム式の連続的に走行する鋼ストリップ圧延機と同じだけの、投資に対する回収を得る最良の方法である。
【0047】
図3a,図3b及び図3cには本発明の第2の実施形態が示されている。原理的に、図3a及び図3bは、スタンバイ位置における専用のスタンドCA=C6が走行方向Dでみて作動圧延位置における最後のスタンドC5の下流に配置されているという点において、図1a及び図1bと同じである。スタンドCAは、スタンドCAの上流に配置された他の全てのスタンドにおけるロール交換を許容するために専用化されている。圧延機におけるいずれかのスタンドにおいてロール交換を行うまではスタンドCAは作動させられず、交換の間だけ作動する。ロール交換作業の間を除き、この専用のスタンドはスタンバイ位置を占める(圧延機能を行わない)。
【0048】
従って、有利には、この専用のスタンドCAは、最も頻繁にロールが交換されるスタンドである最後の作動したロールスタンドの下流に配置されている。
【0049】
図3a及び図3bを既に説明したが、図3cは、上流のスタンドC=C2を作動圧延位置へ戻した後(このスタンドに対して、図3bに示した状態の間に少なくとも1つのロールを交換することができた)、専用のスタンドCAをスタンバイ機能へ戻すことを示している。従って、図3cから図3aに戻る。
【0050】
より正確にいうと、図3bに示したように、第2のスタンドC=C2におけるロール交換の間、第2のスタンドの初期設定値R2は、走行方向Dでみて第2のスタンドのすぐ下流に配置された第3のスタンドC3に引き継がれ、この第3のスタンドC3の初期設定値R3自体は、第3のスタンドのすぐ下流に配置された第4のスタンドC4に引き継がれ、専用のスタンドCA=C6まで同様に引き継がれ、この専用のスタンドCA=C6自体は、第2のスタンドC=C2におけるロール交換の間、作動圧延機能を果たす。最後に、図3cに示したように第2のスタンドC=C2におけるロール交換の後、初期設定値R2は、交換された第2のスタンドC=C2に対して回復され、下流に配置されたスタンドC3,C4,...の初期設定値のそれぞれについても、専用のスタンドCA=C6まで同様に繰り返され、専用のスタンドCA=C6は、自由ストリップ締付け位置における圧延スタンバイ機能に戻される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に走行する鋼ストリップ圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するためのロールスタンド(C)においてロールを交換する方法であって、前記ロールスタンドが、連続的な走行方向(D)でみて圧延機に沿って連続して配置された複数(N)のロールスタンドの一部を形成しているものにおいて、
ロールの自由締付け位置におけるロールスタンバイ機能が、前記複数(N)のスタンドの内の少なくとも1つの専用のスタンド(CA)に割り当てられており、
ロールの締付けに関連した調節を制御する初期設定値が、作動圧延位置にある他のスタンドに個々に割り当てられており、
ロール交換を行う際に、自由締付け位置(C)へ移動する時に、前記ロールスタンド(C)の初期設定値と、作動圧延位置にあるロールスタンドの初期設定値とが、専用のスタンド(CA)を含む前記ロールスタンドのそれぞれの間で個々に再配分されることを特徴とする、連続的に走行する鋼ストリップ圧延機のための少なくとも1つのワークロールを支持するためのロールスタンド(C)においてロールを交換する方法。
【請求項2】
走行方向(D)でみて、スタンバイ位置にある専用のスタンド(CA=C6)の上流に配置されたロールスタンド(C=C2)においてロールを交換する場合、前記ロールスタンド(CA=C2)の初期設定値が、該スタンド(CA=C2)のすぐ下流に配置されたロールスタンド(C3)に引き継がれ、該ロールスタンド(C3)の初期設定値自体は、該ロールスタンド(C3)のすぐ下流に配置されたロールスタンド(C4)に引き継がれ、必要であれば、スタンバイ位置にある専用のスタンド(CA=C6)まで同様に引き継がれ、該専用のスタンド(CA=C6)が作動圧延位置に移動させられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
走行方向(D)でみて、スタンバイ位置にある専用のスタンド(CA=C3)の下流に配置されたロールスタンド(C=C5)においてロールを交換する場合、前記ロールスタンド(C=C5)の初期設定値が、該ロールスタンド(C=C5)のすぐ上流に配置されたロールスタンド(C4)に引き継がれ、該ロールスタンド(C4)の初期設定値自体は、該ロールスタンド(C4)のすぐ上流に配置されたロールスタンド(C3)に引き継がれ、必要であれば、スタンバイ位置にある専用のスタンド(CA)まで同様に引き継がれる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
スタンバイ位置にある専用のスタンド(CA=C6)が、走行方向(D)でみて、作動圧延位置にある最後のロールスタンド(C5)の下流に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ロールスタンド(C=C2)においてロールを交換する場合、前記ロールスタンドの初期設定値が、走行方向(D)でみて前記ロールスタンドの直ぐ下流に配置されたロールスタンド(C3)に引き継がれ、下流の前記ロールスタンド(C3)の初期設定自体は、該ロールスタンド(C3)の直ぐ下流に配置されたロールスタンド(C4)に引き継がれ、専用のスタンド(CA=C6)まで同様に引き継がれ、ロールスタンド(C=C2)においてロールを交換した後、交換されたロールスタンド(C=C2)に対して初期設定値が回復され、その下流に配置されたロールスタンド(C3,C4,...)の初期設定値のそれぞれについても、専用のスタンド(CA=C6)まで同様に初期設定値が回復され、前記専用のスタンド(CA=C6)が再び自由締付け位置における圧延スタンバイ機能に戻される、請求項4記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2011−524810(P2011−524810A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514080(P2011−514080)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000857
【国際公開番号】WO2009/153415
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(503087245)シーメンス ヴェ メタルス テクノロジーズ エスアーエス (19)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VAI Metals Technologies SAS
【住所又は居所原語表記】51 rue Sibert, F−42400 Saint−Chamond, France
【Fターム(参考)】