説明

連続遠心分離機

【課題】細菌やウイルス等の被分離粒子の混入する液体試料を扱う大型連続遠心分離機において、ロータをチャンバに着脱するためのリフト装置の操作性を改良し、ロータの着脱時におけるロータまたはロータ回転軸の破損を防止する。
【解決手段】
リフト装置50の水平リフト部52および垂直リフト部51の駆動源として電動シリンダ51cおよび52cを採用し、これらシリンダを構成する電動モータ51dおよび52dの負荷電流Fの検出手段を具備せしめ、リフト装置50の操作によるロータ20の台座ホルダ82への着座時の過負荷電流、またはその他の障害物による過負荷電流を検知した場合に、リフト動作を即時、停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被分離粒子が混入している液体試料を連続的に流しながら液体試料中の微小粒子を遠心分離する円筒形ロータを有する連続遠心分離機に関し、特に、円筒形ロータをチャンバ内に着脱させるためのリフト装置を有する連続遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂直状態に配置された円筒形ロータを使用し、該ロータに被分離粒子が混入している液体試料を連続的に注入、通過させながら回転させることによって、分離された微小粒子をロータ内に留め、残りの上澄液を連続的にロータ外に排出するための連続遠心分離機が知られている。例えば、下記特許文献1には、液体媒体中のウイルスを分離するための連続遠心分離機が開示されている。この連続遠心分離機では、ウイルスや培養菌体等を大量に分離してワクチンや医薬品に使用する原料を精製することから、大規模なロータおよびロータ駆動装置と、それらを垂直方向または水平方向に移動するためのリフト装置とを必要としている。
【0003】
このリフト装置は、下記特許文献2に開示されているように、大規模なロータおよびロータ駆動装置を必要とすることから、チャンバ内に回転可能に収納されるロータを支持する水平リフトを有し、かつ該水平リフトを水平ガイドに沿って水平方向に前後動させる水平駆動用油圧シリンダを有する水平リフト装置と、上記水平リフトを支持し、かつ該水平リフトを垂直ガイドに沿って垂直方向に上下動させる垂直駆動用油圧シリンダを有する垂直リフト装置とを具備する。
【0004】
従来、リフト装置の操作は、作業者が上記垂直リフトおよび水平リフトの移動位置を観測しながら、水平駆動用または垂直駆動用の油圧シリンダの操作スイッチを手動によりON・OFF制御することにより行い、これにより、円筒形ロータをチャンバから引出し、作業台として機能するロータカートに移動させて、ロータから分離試料の取出しを行っていた。
【0005】
連続遠心分離機で取り扱われる分離試料は、例えば、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、百日咳ウイルス、エイズウイルス、肝炎ウイルス等であり、それらの出発原料は培養液や動物から採取された細胞や体液等の液体に浮遊させたものであり、連続遠心分離機を用いることによって、大量に分離、精製して、ワクチンまたは医薬品の原料として用いられる。試料を大量に扱うために円筒形ロータの大きさは、例えば、外径が約160mm、長さが約800mmで、チタン合金から製造され、その内部には、最大で約7.6kgの略円柱状のコアと呼ばれるものが内蔵されており、さらに遠心分離するための試料を入れると全体の質量が約40kgを越える大型ロータとなる。これを毎分40,000回転程度の高速回転まで上昇させるため、モータ等の大出力の回転用駆動源が搭載された水平リフト装置を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−322054号公報
【特許文献2】特開2007−21288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の連続遠心分離機において、作業者は、リフト装置の周辺に設置されたリフト操作スイッチによりリフト装置の操作を行うが、例えば、大形のロータが、作業台として機能するロータカートに着座したことを目視によって確認し、リフト操作スイッチから手を離し、リフト装置を停止状態(OFF状態)とする。
【0008】
しかしながら、作業者が、万が一、ロータのロータカートへの着座に気付かない状態で操作を継続した場合、もしくはその着座時点の判別を間違えた場合には、ロータ等の遠心分離機を構成する各部材に異常な過負荷を与えてしまい、それらの部材が破損に至るという問題を生ずる。
【0009】
さらに、作業者が、上記垂直リフト装置の上下動の操作、または上記水平リフト装置の前後動の操作を行った場合、リフト動作の進行方向に障害物が有ることに気付かない状態でその操作を続けてしまう時にも、遠心分離機の各部材に異常な負荷を与えてしまい、損傷につながるという問題がある。
【0010】
したがって、本発明の一つの目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、リフト装置の操作性に優れた連続遠心分離機を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ロータの着脱時におけるロータおよびロータ回転軸の破損を防止することが可能な連続遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明の一つの特徴によれば、チャンバ内に回転可能に収納されるロータと、前記ロータの着脱に際して該ロータを支持する水平リフトを有し、かつ該水平リフトを水平ガイドに沿って水平方向に前後動させる第1の駆動手段を有する水平リフト装置と、前記水平リフトを支持し、かつ該水平リフトを垂直ガイドに沿って垂直方向に上下動させる第2の駆動手段を有する垂直リフト装置と、前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段を制御するための制御装置と、を具備する連続遠心分離機において、前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段は、第1の電動シリンダおよび第2の電動シリンダによってそれぞれ構成し、前記制御装置は、第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの各負荷電流を検出する負荷検出手段を有し、該負荷検出手段の検出信号に基づいて、前記第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの動作をそれぞれ制御する。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、前記制御装置は、前記負荷検出手段が前記第1の電動シリンダまたは前記第2の電動シリンダの過負荷状態を検出したとき、前記水平リフト装置または前記垂直リフト装置の動作を停止させるように制御する。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記制御装置は、前記水平リフト装置または前記垂直リフト装置の各動作方向の負荷押付開始時における過負荷状態を、過負荷検出しきい値として設定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記特徴によれば、制御装置が電動シリンダの駆動によるロータの着座を自動的に検知し、リフト装置の動作を自動的に停止させる機能を備えたので、作業者がロータの着座等を目視で判断する必要がなくなるので、リフト装置の過負荷動作を防止できる。これによって、ロータの着脱時におけるロータおよびロータ回転軸等の破損を防止することができる。また、作業者が、万が一リフト動作方向に障害物があることに気付かずに、リフト動作を続けた場合にも、リフト動作を自動的に停止できるので、遠心機本体のロータ、駆動部回転軸、リフト等の破損を防止することができる。
【0017】
本発明の上記および他の目的、ならびに上記および他の特徴は、以下の本明細書の記述および添付図面から更に明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る連続遠心分離機について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材または要素については同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る連続遠心分離機の外観斜視図、図2は図1に示した連続遠心分離機においてリフト装置のフレームに組込まれた電動シリンダの配置図。図3は図1に示した連続遠心分離機においてロータの着脱作業を示す側面図、図4は図1に示した連続遠心分離機における電動シリンダの制御ブロック図をそれぞれ示す。
【0020】
[連続遠心分離機100の全体構成について]
最初に、連続遠心分離機の全体構成について図1を参照して説明する。
図1に示すように、ロータ回転装置部101は、円筒形ロータ20と、駆動装置部30と、チャンバ41と、チャンバ41を支持するベース42と、垂直上下方向(y方向)の垂直リフト部51および水平前後方向(x方向)の水平リフト部52を有するリフト装置部50とを具備する。このロータ回転装置部101は、ボルト42aによって、設置床に固定されている。
【0021】
円筒形ロータ20は、電動モータ31を含む駆動装置部30の管状の上側回転軸(アッパーシャフト)32に固定ナット32aによって接続され、吊り下げ状態に保持される。円筒形ロータ20の下端部には、管状の下側回転軸(ロアーシャフト)33が固定ナット33aによって取り付けられている。円筒形ロータ20は、水平リフト部52によって駆動装置部30とともに吊り下げられ、垂直リフト部51によって垂直方向において上下動され、円筒形ロータ20の運転前の準備段階または運転終了後には、図1に示すように、吊り下げ状態となる。また、ロータ20の運転時には、ロータ回転装置部101の中空形状体から成るチャンバ41内に収納され、ロータ20の下側回転軸33がベース42に取り付けられた下部軸受部43に挿入され支承される。ロータ20がチャンバ41内に収納された後、アッパープレート45が、チャンバ41の上端部に嵌合され、上蓋部として作用してチャンバ41内を気密に封じる。
【0022】
図3には、ロータ20がチャンバ41内に収納された時のロータ回転装置部101の一部断面図が示されている。チャンバ41内(ロータ室41a)に円筒形ロータ20が設置され、アッパープレート45がチャンバ41内を気密に封じる。チャンバ41内にロータ20を設置する技術は、本願出願人より先に出願された特開2004−322054号公報(上記特許文献1)に詳細に開示され、この技術を本発明に採用することができる。
【0023】
リフト装置部50は、垂直上下方向(y方向)の垂直リフト部51と水平前後方向(x方向)の水平リフト部52とを有する。運転準備の段階または運転後において、縦長の円筒形ロータ20を駆動装置部30の回転出力軸32に着脱するために、リフト装置部50は、円筒形ロータ20を吊り下げる駆動装置部30が搭載されたアッパープレート45を垂直上昇、水平前進、垂直下降させるように構成されている。このリフト装置部50の上昇、前進、下降の移動により、円筒形ロータ20は、駆動装置部30に対して着脱が可能となる。
【0024】
制御装置部60は、筐体62を有し、駆動装置部30を含むロータ回転装置部101およびリフト装置部50の運転を制御するための制御装置で、運転に必要な電源や電気信号を制御するための制御回路(コントローラ)63を内蔵している。また、遠心分離機の運転条件である回転速度、回転時間、温度等を設定し、運転状態を表示し、運転のスタートまたはストップを指示するスイッチを有するコントロールパネル61を有している。制御装置部60から駆動装置部30へ駆動電源および制御回路の配線71が設けられ、さらに、駆動装置部30や下部軸受部43を冷却するための冷却水、リフト装置部50への配線、円筒形ロータ20を冷却するためにチャンバ41内に設けられた冷却コイルへの冷媒等の配管72が設けられている。
【0025】
このような大規模な連続遠心分離機100では、ロータ20の運転準備中または運転終了後の段階において、駆動装置部30は、リフト装置部50により垂直上方向へ移動されるので、駆動装置部30を運転するために必要な駆動電源および制御回路等の配線71、ならびに冷却水の配管72は、制御装置部60からロータ回転装置部101につながれており、さらに、配管72の一部の冷却水や潤滑油の配管は、チャンバ41の上端部に固定されたコネクタ装置(配線コネクタおよび配管コネクタを含む)73へ接続される。これによって、制御装置部60からの配線71および配管72は、ロータ20の運転時には、コネクタ装置73を介して駆動装置部30の接続配管74および接続配線75に接続可能とし、ロータ20の運転準備の段階または運転終了後の段階では、リフト装置部50によって駆動装置部30を垂直上下方向(y方向)および前後水平方向(x方向)へ移動できるように、駆動装置部30の接続配管74および接続配線75を一時的にコネクタ装置73から切り離すことを可能にするものである。
【0026】
このような連続遠心分離機100では、液体試料が、図示されていないポンプ等の送液手段によって駆動装置部30を含むロータ回転装置部101の試料流通用コネクタ部34または44の一方から供給され、管状上側回転軸32および管状下側回転軸33を介して円筒形ロータ20に導入される。その液体試料は円筒形ロータ20内で強大な遠心力を受けて遠心分離され、その上澄液は回転軸32または33の一方の回転軸を介して試料流通用コネクタ部34または44の一方を経て排出される。
【0027】
また、連続遠心分離機100で取り扱われる分離試料は、例えば、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、百日咳ウイルス、エイズウイルス、肝炎ウイルス等であり、それらの出発原料は培養液や動物から採取された細胞や体液等の液体に浮遊させたものである。それらの試料は、連続遠心分離機100を用いることによって、大量に分離、精製して、ワクチンまたは医薬品の原料として用いられる。試料を大量に扱うためにロータ20の一例は、外径が約160mm、長さが約800mmで、チタン合金から製造され、その内部には、最大で約7.6kgの略円柱状のコア(図示なし)と呼ばれるものが内蔵され、さらに遠心分離するための試料を入れると全体の質量が約40kgである。これを、例えば、毎分40,000回転程度の高速回転まで回転させる。
【0028】
[リフト装置部50の構成について]
図2は、垂直リフト部51および水平リフト部52から成るリフト装置部50の構成図を示す。
垂直リフト部51は、水平リフト部52が上下に動くときのガイドとなる上下リフトスライドガイド(垂直ガイド)51aと、該垂直ガイド51aに沿って上下に可動する上下可動スライダ51bと、該上下可動スライダ51bを駆動するための上下用電動シリンダ51cとから構成される。電動シリンダ51cは、電動モータ51dと、電動モータ51dの駆動力に基づいて水平リフト部52を搭載する上記可動スライダ51bを上下方向に移動させるためのロッド51eとから構成されている。
【0029】
水平リフト部52は、水平リフト部52が水平に動くときのガイドとなる水平リフトスライドガイド(水平ガイド)52aと、該水平ガイド52aに沿って前後に可動する前後可動スライダ52bと、該前後可動スライダ52bを駆動するための水平用電動シリンダ52cとから構成される。電動シリンダ52cは、電動モータ52dと、電動モータ52dの駆動力に基づいて駆動装置部30を搭載する上記可動スライダ52bを水平方向に移動させるためのロッド52eとから構成されている。上記電動モータ51dおよび52dは、例えば、DCモータまたはステッピングモータにより構成されている。
【0030】
なお、後述する図3に示されるように(図2には図示なし)、上下リフトスライドガイドを形成する垂直ガイド51aには、リフト操作スイッチ65が取付けられている。このリフト操作スイッチ65は、水平リフト部52を垂直方向(y方向)に上昇させるための垂直リフト部51の上昇スイッチ66と、水平リフト部52をy方向に下降させるための垂直リフト部51の下降スイッチ67と、水平リフト部52を水平方向(x方向)に前進させるための前進スイッチ68と、水平リフト部52をx方向に後退させるための後退スイッチ69とから構成されている。
【0031】
ここで、上昇スイッチ66および下降スイッチ67は、垂直駆動用電動シリンダ51cにおける電動モータ51dの電流の方向を制御するように付加され、前進スイッチ68および後退スイッチ69は、水平駆動用電動シリンダ52cにおける電動モータ52dの電流の方向を制御するように付加されている。
【0032】
また、リフト操作スイッチ65の各種スイッチ66〜69は、それらを押している間だけ水平リフト部52の前後動および垂直リフト部51(水平リフト部52)の上下動が可能となるように構成されている。さらに、垂直ガイド51aの上下には、水平リフト部52の上方への移動限界を検出するための上限限界スイッチ(ストッパ)51fと、下方への移動限界を検知するための下限限界スイッチ(ストッパ)51gとがそれぞれ設けられている。一方、水平リフト部52には、ロータ20を含む駆動装置部30の前方への移動限界を検知するための前方限界スイッチ52fと、後方への移動限界を検知するための後方限界スイッチ(ストッパ)52gとがそれぞれ設けられている。
【0033】
[リフト装置部50によるロータ20の着脱作業例について]
図3は、リフト装置50を用いてロータ20をチャンバ41からロータカート80へ引き出す場合のリフト装置部50の移動状態を示す側面図である。
【0034】
図3に示されるように、ロータ20の着脱時に使用されるロータカート80は、カートフレーム81と、着座時にロータ20の下部を保持する台座ホルダ82と、ロータ20の周側面を保持する背負ホルダ83と、ロータ20がカート80から外れて落下することを防止するための締付けベルト84aおよび84bと、着座動作が終わった際にロータ20を横置き状態にさせるための回転部85と、ロータカート80を移動させるためのキャスタ86とから構成される。
【0035】
試料の遠心分離がなされた後は、ロータ20がチャンバ41から取り出されて洗浄され、あるいは必要に応じて滅菌処理された後、チャンバ41内に再びロータ20が組み込まれる。この場合、ロータ20は、高重量により人手では取り付け、および取り外しが困難であるため、そのチャンバ41に対する着脱は、垂直用電動シリンダ51cおよび水平用電動シリンダ52cによって動作する垂直リフト部51および水平リフト部52によって次のように操作される。
【0036】
試料の遠心分離が終了すると、リフト操作スイッチ65(図3参照)の上昇スイッチ66を押して水平リフト部52を垂直ガイド51aに沿って上昇させる。すると、水平リフト部52およびその先端部に取り付けられたアッパープレート45が駆動装置部30およびロータ20と共に上昇し、ロータ20がチャンバ41内から取り出されて図3の位置Aに示す位置に達するように上昇スイッチ66を押し続ける。位置Aの停止位置は、ロータ20がチャンバ41から完全に上方向へ引き出された状態で、ロータ20が前方または後方に移動してもチャンバ41に衝突しない場所である。
【0037】
次に、リフト操作スイッチ65の前進スイッチ68を押して水平リフト部52をロータ20等と共に、水平方向(x方向)において前進させて位置Bで停止させる。その後、リフト操作スイッチ65の下降スイッチ67を押し、水平リフト部52を下降させ、該水平リフト部52の先端部に吊り下げられたロータ20の下部がロータカート80の台座ホルダ82に着座するような位置Cで下降スイッチ67をOFFにする。ロータ20の下部をロータカート80の台座ホルダ82に載せた後、ロータ20をベルト84aおよび84bにより背負ホルダ83に固定し、固定ナット32aを緩めてロータ20を上側回転軸32から取り外す。
【0038】
以上のようにしてロータ20を取り外した後、チャンバ41内にゴミや塵が入らないようにチャンバ41の上端開口部をアッパープレート45で閉じるが、その作業は以下の手順に沿ってなされる。
【0039】
すなわち、リフト操作スイッチ65の上昇スイッチ66を押し、垂直用電動シリンダ51cを駆動して水平リフト部52を垂直ガイド51aに沿って上昇させ、該水平リフト部52とアッパープレート45および駆動装置部30を、図3の位置Bまで移動させる。次に、後退スイッチ69を押して水平リフト部52とアッパープレート45および駆動装置部30を後退させてアッパープレート45と駆動装置部30を位置Aまで移動させる。その後、下降スイッチ67を押して水平リフト部52を下降させ、該水平リフト部52の先端部に取り付けられたアッパープレート45でチャンバ41の上端開口部を塞ぐ。
【0040】
次に、洗浄および滅菌処理がなされたロータ20は、以上とは逆の手順でチャンバ41内に組み込まれて、再び遠心分離に供される。
【0041】
すなわち、リフト操作スイッチ65の上昇スイッチ66を押して水平リフト部52を垂直ガイド51aに沿って上昇させ、該水平リフト部52をアッパープレート45および駆動装置部30と共に、位置Aまで上昇させる。
【0042】
しかる後、前進スイッチ68を押してこれらを位置Bに移動させる。続いて、下降スイッチ67を押して水平リフト部52を下降させ、該水平リフト部52をアッパープレート45および駆動装置部30と共に位置Cまで移動させ、ロータカート80に載せられたロータ20を固定ナット32aによって上側回転軸32に取り付ける。その後、ロータ20をベルト84a、84bから外して、水平リフト部52の先端部に吊り下げる。
【0043】
ロータ20が水平リフト部52の先端部に吊り下げられると、リフト操作スイッチ65の上昇スイッチ66を押し、水平リフト部52を上昇させてロータ20等を位置Bまで移動させる。次に、後退スイッチ34を押して水平リフト部52をロータ20等と共に位置Aまで後退させる。
【0044】
その後、下降スイッチ67を押して水平リフト部52を下降させ、該水平リフト部52の先端部に吊り下げられたロータ20をチャンバ41内に上方から挿入してこれをセットし、最後に、チャンバ41の上端開口部をアッパープレート45で塞ぐことによって一連の作業が終了する。
【0045】
以上のようなロータ着脱作業において、遠心分離が終わった後において、リフト装置部50によってチャンバ41からロータ20を引き出してロータカート80に乗せる際、ロータ20の下部が台座ホルダ82に着座した後も、操作ミスによりリフト動作が続くようにリフト操作スイッチ65を押し続けた場合には、駆動装置部30の上側回転軸32やリフト装置部50、さらにロータカート80に大きな負荷が加わり、それらが破損する恐れがある。
【0046】
[リフト装置部50の過負荷防止構成について]
上述したように、作業者が、作業ミスによりロータ20をロータカート80に着座させた後も、リフト操作スイッチ65を押し続けたり、また、垂直リフト部51または水平リフト部52のリフト移動方向に何等かの障害物(負荷)があることに気付かない場合、駆動装置部30の上側回転軸32、垂直ガイド51aまたは水平ガイド52aを構成するリフト支柱(フレーム)、またはロータカート80等に大きな負荷が加わり、それらを破損する恐れがある。
【0047】
本発明によれば、そのような操作ミス等による危険性を防止するために、上述したようにリフト装置部50の駆動源として電動シリンダ51cおよび52cを採用して、それらを構成する電動モータ51d、52dの過負荷状態を検出する制御回路63(図4参照)によって過負荷時におけるリフト装置部50の出力を停止させている。
【0048】
図4は、電動シリンダ51c、52cを制御するための制御回路63の機能ブロック図である。制御回路63は、電動シリンダの電動モータ51dまたは52dを駆動するためのモータ駆動回路63aと、モータ駆動回路63aを制御するための駆動制御回路63bと、モータ電流を検出するための負荷電流検出回路(駆動電流検出回路)63cと、モータ駆動回路63aへ駆動電源を供給するための電源回路63dとを具備する。
【0049】
駆動制御回路63bは、上記リフト操作スイッチ65のスイッチ信号および上記限界スイッチ51f、51g、52f、52gのスイッチ信号に基づいて、モータ駆動回路63aの起動、停止を制御する。また、負荷電流検出回路63cによって検出される負荷電流が所定のしきい値電流以上である場合、モータ駆動回路63aを停止させる。次に、制御回路63の制御フローチャートについて図5を参照して説明する。
【0050】
ステップS10においてリフト操作スイッチ65のいずれか一つが押されてON状態となるとリフト装置50の垂直リフト部51または水平リフト部52の垂直電動モータ51dまたは水平電動モータ52dが起動し、リフトが移動する。
【0051】
リフト操作スイッチ65がONされている時、ステップS11で、駆動電流検出回路63c(図4参照)により、垂直電動モータ51dまたは水平電動モータ52dの負荷電流(F)を、常時、監視する。
【0052】
そして、ステップS12において、負荷電流(F)が、過負荷の判定値(x)を超えていないか否かを判断する。負荷電流(F)が判定値(x)を超えていない場合(YESの場合)、ステップS13へ進み、モータ駆動回路63aは通常動作を継続し、リフト装置50は通常のリフト動作を行う。
【0053】
ステップS12において、もし負荷電流(F)が判定値(x)を超えている場合(NOの場合)、リフト装置50は異常状態であると判断し、ステップS14へ進み、駆動電流検出回路63cから駆動制御回路63bへ制御信号を出力し、モータ駆動回路63aの動作を停止して、リフト装置50のリフト動作を停止させる。
【0054】
以上の実施形態の説明から明らかにされるように、本発明によれば、リフト装置の駆動源として電動シリンダを採用することにより、リフト装置を構成する電動シリンダの負荷状態を検出するように構成したので、自動的にリフト装置の異常動作状態を検出し、さらに異常状態におけるリフト装置の運転を停止させることができる。これにより、遠心機本体のロータ、駆動部回転軸、リフト等の破損を防止することができる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る連続遠心分離機全体を示す外観斜視図。
【図2】図1に示した連続遠心分離機に使用されるリウト装置部の構成図。
【図3】図1に示した連続遠心分離機においてロータの着脱作業を示す側面図。
【図4】図1に示した連続遠心分離機における電動シリンダの制御回路図。
【図5】図4に示した制御回路による電動シリンダの制御フローチャート。
【符号の説明】
【0057】
20:円筒形ロータ 30:駆動装置部 31:電動モータ
32:上側回転軸 32a、33a:固定ナット 33:下側回転軸
34:試料流通用コネクタ部 41:チャンバ 41a:ロータ室
42:ベース 42a:ボルト 43:下部軸受部
44:下部試料流通用コネクタ部 45:アッパープレート
50:リフト装置部 51:垂直リフト部 51a:垂直ガイド
51b:上下可動スライダ 51c:上下用電動シリンダ 51d:電動モータ
51e:ロッド 51f:上限限界スイッチ 51g:下限限界スイッチ
52:水平リフト部 52a:水平ガイド 52b:前後可動スライダ
52c:前後用電動シリンダ 52d:電動モータ 52e:ロッド
52f:前方限界スイッチ 52g:後方限界スイッチ
60:制御装置部 61:コントロールパネル 62:筐体
63:制御回路 63a:モータ駆動回路 63b:駆動制御回路
63c:負荷電流検出回路 63d:電源回路 65:リフト操作スイッチ
66:上昇スイッチ 67:下降スイッチ 68:前進スイッチ
69:後退スイッチ 70:配管・配線 71:接続配線
72:接続配管 73:配管・配線コネクタ装置 74:接続配管
75:接続配線 80:ロータカート 81:カートフレーム
82:台座ホルダ 83:背負ホルダ 84a、84b:バンド
85:回転部 100:連続遠心分離機 101:ロータ回転装置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に回転可能に収納されるロータと、前記ロータの着脱に際して該ロータを支持する水平リフトを有し、かつ該水平リフトを水平ガイドに沿って水平方向に前後動させる第1の駆動手段を有する水平リフト装置と、前記水平リフトを支持し、かつ該水平リフトを垂直ガイドに沿って垂直方向に上下動させる第2の駆動手段を有する垂直リフト装置と、前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段を制御するための制御装置と、を具備する連続遠心分離機において、
前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段は、第1の電動シリンダおよび第2の電動シリンダによってそれぞれ構成し、
前記制御装置は、第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの各負荷電流を検出する負荷検出手段を有し、該負荷検出手段の検出信号に基づいて、前記第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの動作をそれぞれ制御することを特徴とする連続遠心分離機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記負荷検出手段が前記第1の電動シリンダまたは前記第2の電動シリンダの過負荷状態を検出したとき、前記水平リフト装置または前記垂直リフト装置の動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載された連続遠心分離機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記水平リフト装置または前記垂直リフト装置の各動作方向の負荷押付開始時における過負荷状態を、過負荷検出しきい値として設定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載された連続遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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