説明

連続部分めっき方法および、連続部分めっき装置

【課題】被めっき物を短尺品とせず、安定した部分めっき品質を確保でき、高速で連続的に部分めっきできる連続部分めっき方法、該方法を実施するための連続部分めっき装置、および、部分めっき用の回転ベルトを提供する。
【解決手段】
合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシート13に軟質エラストマー被膜層14を備えてなるマスキング用磁性体シート15を、ベーステープ17上に接着して部分めっき用エンドレス回転ベルト10(10a)を構成し、両回転ベルト10,10間に金属薄板条5を磁力によって挟んだ状態を維持したまま搬送させながら、前記金属薄板条5表面のうち前記回転ベルト10で覆われていない部分に連続部分めっきするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続部分めっき方法および、連続部分めっき装置に関し、より詳しくは、耐めっき特性ならびに高磁力吸引特性を持つ部分めっき用回転ベルトの間に、金属薄板条を挟んだ状態を維持したまま連続的に走行させながら、当該金属薄板条表面のうち前記部分めっき用回転ベルトで覆われていない部分に対して部分めっきするものであり、作業性の向上による短納期化、低コスト化が図れる連続部分めっき方法、連続部分めっき装置、および、連続部分めっき装置を構成する連続部分めっき用の回転ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金めっき等の高価な材料を用いた表面処理を行う場合、コスト低減のために被めっき物の必要最小限の部分だけに部分めっきを施すことが行われる。従来の連続部分めっき方法としては、被めっき物(金属薄板条)のめっき面側を、マスキング治具で覆い、被めっき物のめっき面側でない面側を、弾力性のある循環走行する回転ベルトにより押しつけて、被めっき物をマスキング治具と回転ベルトの間に挟持し、マスキング治具と回転ベルトベルトとともに金属薄板条を搬送しながら、金属薄板条のめっき面側のマスキング治具の開口部から露出した部分にめっき液を吹きつけ、被めっき物とアノード間に所定電圧を負荷して、被めっき物を連続的に部分めっきする方法が開示されている。
【0003】
この場合、マスキング治具側に金属薄板条を押圧し、マスキング治具とを密着させる方式としては、つぎの1)乃至4)の方法が提案されている。
【0004】
1)(回転ドラム方式)回転ドラムの上側周面または下側周面にマスキングベルトを押しつけ、この回転ドラムの下側部分をめっき槽内に浸漬し、被めっき材とアノード間に所定電圧を負荷して、前記マスキングベルトの隙間に位置する被めっき物に部分めっきする方法(特許文献1)、さらに、マスキングベルトの回転ドラム側の面に凸部を設け、回転ドラム側の周面に設けられた凹部に嵌合してマスキングベルトの蛇行(位置変動)を抑制させる方式(特許文献2)。
【0005】
2)(レインボ−セル方式):連続循環移動するマスキングベルトに、循環移動する回転ベルトを組み合わせ、被めっき物(金属薄板条)を両ベルト間に対応位置決めして挟み、マスキングベルト側をかまぼこ形状のスパジャー表面上に、バックテンションを付加して両ベルトを圧接挟持した状態で連続的に走行させ、その際に、ノズルから噴射されためっき液をマスキングベルト側に吹きかけ、被めっき材とアノード間に所定電圧を負荷して、前記被めっき物に連続的に部分めっきする方式を採用した、商品名を「レインボーセル−RBCM/750」とする連続部分めっき装置が上市されている。
【0006】
3)めっき領域を特定する開口を形成したマスク体を、めっき液通孔を形成した多数のブロックを連結して全体的にキャタビラ状に形成された回転ベルトに組み合わせ、回転ベルトの前後回転部間に配置してあるスパージャの上方へ同期的に循環移動自在なプレスベルトを対応位置決めして配し、そして順次送り込まれる短冊状めっき物をマスク体の上面へ載置してはプレスベルトと回転ベルト都で狭持しつつスパージャの上部を通過させ、その際にスパージャよりめっき液を噴射して部分めっきする方法(特許文献3)。
【0007】
4)被めっき物(金属薄板条)をマスキングしてマスキングするマスク部分を個々のマスクプレートとしこれを連結して対抗するエンドレスコンベアとし、被めっき物(金属薄板条)を挟み、めっきゾーン全長にわたる支持構造体で係合、保持し、前記エンドレスコンベアの上下に具備した搬送用コンベアとの摩擦力で搬送し、ノズルから噴射されためっき液を吹きかけ、被めっき物(金属薄板条)とアノード間に所定電圧を負荷して、当該被めっき物(金属薄板条)に部分めっきすることを繰り返す方式(特許文献4)。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4132617号公報
【特許文献2】特開平11−131284号公報
【特許文献3】特公平3−1393号公報
【特許文献4】特表平9−504576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記1)及び2)記載のめっき方法は、回転ドラムの上側周面もしくは下側周面またはスパジャー表面上にバックテンションを付加した状態で押し圧、金属薄板条を圧接した状態で狭持して部分めっき層を形成するので、金属薄板条の板厚に制限を受けるとか、引っ張り搬送やバックテンションの付加などによって生じる伸びの変化に追従することができず、めっき層の形成領域の位置にバラツキが生じるとか、めっき層形成領域外にフラッシュ(にじみ)が発生するという問題があり、また、めっき層の形成位置が、回転ドラムの上側周面もしくは下側周面またはスパジャー表面上での圧接移動距離相当しかないため、めっきできる長さ(めっき有効長)に制限があり、めっき形成効率が悪いという問題があった。
【0010】
上記3)記載の方法は、押しつけ治具でマスキングベルト側に向けて押し圧、単位マスク部に金属薄板条を圧接した状態のまま所定長さ移動させて、めっき層の部分形成を行うので、金属薄板条の板厚に自由度があるものの、めっき層の形成領域の位置にバラツキが生じ易いとか、また、押しつけ治具の押圧付加などによってマスキング強度に強弱ができるためにめっき層形成領域外にフラッシュ(にじみ)が発生するなど、めっき品質が不安定になり、また、めっき形成効率が悪いという問題があった。
【0011】
上記4)記載の方法は、互いに対峙する複数対の押圧ローラによって、マスキングベルトと回転ベルト間に被めっき物(金属薄板条)を圧接、密着するように構成されているため、マスキング強度に強弱ができ、めっき品質が不安定になる等の問題があった。
【0012】
本発明は上記の実情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、被めっき物を短尺品とせず、安定した部分めっき品質を確保でき、高速で連続的に部分めっきできる連続部分めっき方法、および、本方法を実施する連続部分めっき装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的とするところは、前記連続部分めっき装置の要部を構成する部分めっき用の回転ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る連続部分めっき方法は以下の発明を包含する。
(1)合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシートに軟質エラストマー被膜層を備えてなるマスキング用磁性体シートを、ベーステープ上に接着してエンドレスの部分めっき用回転ベルトを構成し、所定のマイナス電位が付加された金属薄板条を前記部分めっき用回転ベルトの磁力によって当該部分めっき用回転ベルト間に挟んだ状態を維持したまま搬送させながら、当該金属薄板条表面のうち前記部分めっき用回転ベルトで覆われていない部分に対して部分めっきを施すところに特徴がある。
(2)上記(1)記載に連続部分めっき方法において、前記部分めっき用回転ベルトの一方が、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された平ベルト、孔付加工された平ベルト、または、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成されかつ孔付加工された平ベルトのうちのいずれかであるところに特徴がある。
(3)上記(1)または(2)に記載の連続部分めっき方法において、前記部分めっき用回転ベルトの一方が、エラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルト、または、エラストマー被膜層を備え磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された磁性金属薄板ベルトであるところに特徴がある。
【0015】
本発明に係る連続部分めっき装置は以下の発明を包含する。
(4)合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシートに軟質エラストマー被膜層を備えてなるマスキング用磁性体シートを、ベーステープ上に接着してエンドレスに形成された部分めっき用回転ベルトと、該部分めっき用回転ベルトを連続的に走行させる駆動手段とを有し、前記部分めっき用回転ベルトの間に、所定のマイナス電位が付加された金属薄板条を前記部分めっき用回転ベルトの磁力によって当該部分めっき用回転ベルト間に挟んだ状態を維持したままめっき槽またはスパジャに搬送、通過させながら、当該金属薄板条表面のうち前記部分めっき用回転ベルトで覆われていない部分に対して連続部分めっきを施す連続部分めっき装置であって、
前記部分めっき用回転ベルトが、平ベルト同士の対、平ベルトと孔付加工された平ベルトとの組、孔付加工された平ベルト同士の対、または、平ベルトもしくは孔付加工された平ベルトとエラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルトとの組のうちのいずれかであるところに特徴がある。
(5)上記(4)記載の連続部分めっき装置において、前記部分めっき用回転ベルトの一方が、エラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルト、または、エラストマー被膜層を備え磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された磁性金属薄板ベルトであるところに特徴がある。
【0016】
本発明に係る部分めっき用の回転ベルトは下記の構成よりなる。
(6)合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシート上に軟質エラストマー被膜層を備えたマスキング用磁性体シートと、該マスキング用磁性体シートの複数をシームレスに接着するとともに全体をエンドレスに形成するためのベーステープとを具備しており、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された平ベルト、孔付加工された平ベルト、または、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成されかつ孔付加工された平ベルトのうちのいずれかであるところに特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の連続部分めっき装置は、被めっき物(金属薄板条)を長尺のまま部分めっき用の回転ベルトの間にマグネットの磁力によって密着、挟持させた状態で搬送するようになっているから、回転ベルトに対して金属薄板条(被めっき物)を均一に面当接できめっき液の浸み込みがないため、めっき境界部分にフラッシュやにじみの発生がなく高精度と高品質の安定した部分めっきができ、さらに、金属薄板条の長さに制限を受けることなくめっき有効長を所望する所定長さに自在に設定できる。
【0018】
また、回転ベルトと金属薄板条との密着性を確保するため、従来の係る装置構成に必須であった例えばめっきするための加圧装置機構や、めっきをするための領域に配設されている機械的加圧装置機構などの障害物(例えばめっき領域に配設されている複数個の押圧ローラなど)が不要となり、めっき装置の全体構造を簡略化できるため装置全体を小型化でき、さらに、金属薄板条片面の部分めっきのみならず両面に対して同時的かつ高速めっきできる連続部分めっき装置の設計自由度が高く、マスキングベルトの低コスト化などと互いに相まって、生産効率が高く、短納期、低コスト化を図った連続部分めっき装置として提供できる。
【0019】
また、めっき液の製品外への飛散量や付着量がともに少ないため、めっき液の管理、廃液処理などが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を実施例によって説明するが、これらはその代表例に過ぎず、様々に設計変更して実施できるものとする。
【0021】
図1は、本発明の一実施例となる連続部分めっき装置1を説明するために概略的に示す平面図である。図2(a))は、回転ベルトの代表的な一使用状態を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線に沿った断面図である。なお、図面中、塗りつぶした部分が部分めっきされる領域であり、また、各部材の厚さなどは、理解を容易にするため誇張して図示されている。以下、同様である。
【0022】
図1において、この連続部分めっき装置1は、めっき槽において長尺の被めっき物(金属薄板条)5に対して連続部分めっきを施すもので、回転ベルト10aと,前記被めっき物(金属薄板条)5のめっき域を特定するための開口11が形成された回転ベルト10bとからなる1対の回転ベルト10の間に、前記被めっき物(金属薄板条)5を磁力によって密着させて挟み込んだ状態のまま1方向に搬送させ、前記回転ベルト10の開口11から露出する前記被めっき物(金属薄板条)5の所定のめっき部分に向けてめっき液を吹き付けて、前記被めっき物(金属薄板条)の所定のめっき部分のみに電気めっきを施す装置であり、被めっき物表面は図示しない給電ローラを介してカソード(陰極)となるように構成されており、被めっき物5のめっき領域にめっき液が供給されると、陰極との間に電流が流れ連続的に部分めっきを施すようになっている。
【0023】
上記部分めっき用の回転ベルト10aは、合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散してマグネットシート13を形成し、該マグネットシート13の磁着面側に軟質エラストマー被膜層14を被覆することによってマスキング用磁性体シート15を形成し、さらに、該マスキング用磁性体シート15複数の磁着面と反対側に、軟質のベーステープ17(例えば接着剤つきポリエステルフィルム)上にシームレスに接着してエンドレスループ状に形成されており、前記回転ベルト10bは、前記回転ベルト10aに、前記被めっき物(金属薄板条)5の所定のめっき部分に向けてめっき液を吹き付けするための開口11を設けたものであり、各回転ベルトのテンション調整機能を兼ねる駆動ローラ3(駆動手段)によって循環走行させることにより、反復して部分めっき処理に使用されるようになっている。
【0024】
なお、部分めっき用の回転ベルト10は、軟質エラストマー被膜層14の磁着面側に必要に応じて所望する所定形状の凹凸形状が形成された平ベルト形状、めっき域を特定するための孔付加工(開口11)が施された平ベルト形状、所望する所定形状の凹凸形状を形成されかつめっき域を特定用の孔付加工(開口11)が施された平ベルト形状などとして形成されている。なお、部分めっき用の回転ベルトの一方にマスキング用磁性体シートが備えられている場合、これと対をなす部分めっき用の回転ベルトとして、マグネットシートを有しておらずかつ軟質エラストマー被膜層で被覆された磁性金属薄板ベルトを使用しても、マスキング用磁性体シートを有する回転ベルトと磁性金属薄板ベルト間に、金属薄板条(被めっき物)を密着して挟持させることができるので、本明細書においては、マグネットシートを有していない前記磁性金属薄板ベルトもまた部分めっき用の回転ベルトとみなすものとする。
【0025】
また、ベーステープ17としてアイランド用マスク(メッシュのベースシート)17aを備えた回転ベルトを使用してスポットめっきをする場合には、部分めっき用回転ベルトの長さを、製品1個の長さの整数倍にすることが好ましく、また、高精度のスポットめっきをする場合には、マスキング用磁性体シートを、最終製品1個1個となるセグメント方式を採用するとともに回転ベルトのベーステープに、孔付またはメッシュ構造の例えばポリエステルテープなど使用することが好ましい。
【0026】
また、めっきの品質を考慮した場合、部分めっき用回転ベルトに、図示しない位置決め手段を備えて金属薄板条の位置合わせを行い、回転ベルト間に金属薄板条(被めっき物)を磁力吸着によって挾みこみ密着させてめっきを施す方法が採用されると、めっき位置精度や、めっき厚の均一性などに優れるから、高精度かつ高品質の部分めっきができる。
【0027】
なお、以上説明した連続部分めっき用の回転ベルトは、後述するように、部分めっき領域の限定や特殊性に鑑み、適宜選択して対に組合せて、使い分けされる。
【0028】
つぎに、上記マグネットシート13は、例えばシリコーンゴムをバインダーとして用い例えばNdFeB(ネオジウム・鉄・ボロン)系磁性粉末を配向、分散させ、所要の厚さ、長さおよび幅に形成されたものである。ただし、前記磁性粉末をNdFeB(ネオジウム・鉄・ボロン)系磁性粉末に限定するものではなく、磁束密度が高く高磁力のマグネットシートを形成し得るものであれば何ででも良く、また、バインダーを前記シリコーンゴムに限定するものではなく、耐薬品性、耐クラック性、および、シート厚の均一精度に優れ、駆動中の寸法変化が少なく、そして、磁束密度を低下させないゴム体であれば、前記シリコーンゴムに代えてこれを使用できるものとする。
【0029】
上記マスキング用磁性体シート15は、マグネットシート13の全面に、軟質エラストマー(硬度;5〜10°)をコーティングして、軟質エラストマー被膜層14を形成したものである。ただし、コーティング剤を限定するものではないが、加工性、耐薬品性、耐クラック性、および、シート厚の均一精度などに優れ、駆動中の寸法変化が少なく、そして、磁束密度を低下させ難いものであることが好ましい。
【0030】
上記軟質のベーステープ17は、マスキング用磁性体シート15を裏から支え、マスキング用磁性体シート15をエンドレス平ベルト状に構成するためのものであり、孔付加工した平ベルトを形成する際には、ベーステープ17として軟質のアイランド用マスク(メッシュのベースシート)17aを使用することが好ましい。なお、ベーステープ17の材質を上記のようにポリエステルフィルムのみに限定するものではないが、耐薬品性を有し、温度による変化が小さく、引張応力に強く伸びも小さく、そして、マスキング用磁性体シート15の吸引力による変形に追従して自在変形可能な柔軟性を保有していることが好ましく、ベーステープ17の裏面の接着材が剥離紙等で被覆されていると、使い勝手に優れるためさらに好ましい。
【0031】
本連続部分めっき装置1によると、被めっき物である金属薄板条5は、駆動手段によって連続走行する部分めっき用回転ベルト10,10の間に、当該部分めっき用回転ベルト10,10の面にほぼ密着した状態に挟持されて入口からめっき槽内に送り込まれ、金属薄板条5を挟んだ状態を維持したまま連続搬送させながらめっき液を噴射し、開口11により特定されためっき領域のみに部分めっきが施され、ついで、出口から送り出され、回転ベルト10,10の転回位置で回転ベルト10,10が互いに引き離される時、これに伴って、部分めっき済み金属薄板条として分離される。
【0032】
つぎに、本発明に係る連続部分めっき方法について説明する。
駆動手段によって循環走行する部分めっき用の回転ベルト10,10の間に、金属薄板条(被めっき物)5を、当該回転ベルト10,10に備えられたマグネット磁力によってほぼ密着、挟持した状態を維持したまま入口からめっき槽内に送り込み、めっき液が噴射される。この時、回転ベルトには開口(孔付き加工)11が施されており、必要に応じて、部分めっき用回転ベルトの金属薄板条側表面に凸部(堤防)が形成されておりこの凸部(堤防)で囲まれた領域に開口が連通するように形成するので、回転ベルト10でマスクされていないめっき域にのみにめっき液を噴射供給することになるから、めっき領域を特定して部分めっきすることができる。
【0033】
部分めっき用回転ベルト10の走行方向は水平方向であっても垂直方向であっても構わないが、被めっき物5の両面に対して部分めっきを行う場合には、回転ベルト10を垂直方向に走行させると両面を均一にめっきできる。また、金属薄板条5の板厚が極めて薄い場合、回転ベルト10を水平方向に走行させると、安定した製品を得ることができるから好ましい。
【0034】
なお、上記部分めっき用の回転ベルト10は、部分めっきの種類によって、つぎの(ア)乃至(ウ)のように組み合わせて使用すると好適であるので、以下、この点について説明する。。
(ア)エッジめっきの場合は、上記平ベルト同士の組合せ、
(イ)ストライブめっきの場合は、上記平ベルトと上記磁性金属薄板ベルトとの組合せ、
(ウ)スポットめっきの場合は、上記孔付加工した平ベルト同士の組合せ。
【0035】
上記(ア)に係る一対の回転ベルト10aはともに、軟質のベーステープ17上に、マスキング用磁性体シート15が裏から支えられ、エンドレスの平ベルト状に構成されたものであり、これら対の回転ベルト10a,10aの間に、エッジめっきする金属薄板条5の上端部もしくは下端部の一方またはその両方が、回転ベルト10a,10aによってマスクされていない状態に密着、狭持され、そのままの状態で搬送され、めっき部分に向けてめっき液が吹き付けられ、前記被めっき物(金属薄板条)5の上端部もしくは下端部の一方またはその両方に電気めっきを施すめっきを施すようになっている(図3参照)。
【0036】
つぎに、上記(イ)記載のストライブめっき法をより具体的に説明する。図4は、好適なストライブめっきをする時の状態を説明するため、模式的に示す要部斜視図である。
【0037】
上記(イ)に係る回転ベルト10の一方は、軟質のベーステープ上にマスキング用磁性体シートの複数が裏から支えられエンドレスの平ベルト状に構成された回転ベルト10aでおり、他方の回転ベルトは、被めっき物(金属薄板条)の長手方向に、軟質エラストマー被膜層を備えたエンドレス磁性金属薄板c’の複数を、所望するめっきストライブ幅で離間させることによって磁性金属薄板ベルト10cとして形成されたものである。すなわち、、平ベルト状に構成されたエンドレス回転ベルトの磁力によって被めっき物(金属薄板条)5の磁着面側(非めっき面側)を密着させ、被めっき物(金属薄板条)5のめっき面側に、上記磁性金属薄板条10c’の複数を所望するめっきストライブ幅で離間させた状態に磁着させ、両者間に被めっき物(金属薄板条)5を密着、挟持した状態のまま搬送して、上記と同様に部分めっき処理するようになっている。すなわち、磁性金属薄板条10c’間の離間させた位置に、所望するめっき幅をもったストライブめっき(部分めっき)を施すrことができる。なお、この場合、めっき装置のめっき槽出入口近傍に、図1に仮想線で示すマグネットリング内蔵ローラ3’を配し、磁性金属薄板条10c’の配設位置および離間幅を正確かつ精密に管理できるように構成されるので、フラッシュ(にじみ)のない繊細な部分ストライブめっきをすることができるのである。
【0038】
つぎに、上記(ウ)記載のスポットめっき法について、非めっき部分としてアイランドを有する部分めっきを具体例として説明する。図5(a)は、部分めっきする時の様子を説明するために模式的に示す要部分解斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のA−A線に沿った断面図である。
【0039】
回転ベルトの一方は、軟質のベーステープ上にマスキング用磁性体シート複数の裏側を支えるエンドレスの平ベルト状に形成された回転ベルト10aであり、他方の回転ベルトは、マスキング用磁性体シート15とベーステープ17間に、被めっき部分を形成する孔(開口11)よりも大経のアイランド用マスク(メッシュのベーステープ)18を介在させアイランドを形成するマスキング用磁性体部分15’を備えた平ベルト状のエンドレス回転ベルト10dであり(図5(b)参照)、両回転ベルト10a,10dの間に被めっき物5を磁力によって密着、狭持した状態のまま搬送して、上記と同様に部分めっき処理するようになっている。
【0040】
すなわち、アイランドを形成するマスキング用磁性体部分15’がアイランド用マスク(メッシュのベーステープ)上に固定されているため、この部分のみがアイランド状の被めっき部分となるのである。
【0041】
つぎに、所定形状の繰り返し形状に加工された被めっき物(略金属薄板条)に対して、部分めっきを施す他のめっき方法について、図6を参照しながら説明する。
図6(a)は、このめっき方法を実施するための回転ベルト10a,10dなどを模式的に示す要部分解斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のA−A線に沿った断面図である。
【0042】
この方法は、所定形状の繰り返し形状に加工された被めっき物5の一部分に対して部分めっきを施すものであり、回転ベルトの一方は、ベーステープ上にマスキング用磁性体シートの複数の裏側を支えるエンドレス平ベルト状に形成された回転ベルト10aであり、他方は、マスキング用磁性体シート13のエラストマー被膜層14に、前記被めっき物5の繰り返し形状に対応する凹部14’が形成されており、凹部14’にめっき領域に対応する孔加工(開口11)が施されている回転ベルトeであり、必要に応じて図示しない位置決め部を介して位置決めして凹部14’内に嵌合させ,両回転ベルト10a,10e間に磁力によつて密着、挟持した状態のまま搬送して、上記と同様に部分めっき処理するようになっているものである。
【0043】
すなわち、所定形状の繰り返し形状に加工された部分のうち、開口を介してめっき液を噴射供給できる部分にのみ連続的に部分めっきを施すことができるのである。なお、この場合にも、上述したアイランド形成用の回転ベルトと同様に構成できることは無論である。
【0044】
以上、本発明に係る連続部分めっき装置、本発明に係る連続部分めっき方法、および、本発明に係る連続部分めっき用回転ベルトについて説明したが、これらはその一例として説明されているに過ぎず、とりわけ連続部分めっき用の回転ベルトを自在設計することができ、そして、当該回転ベルトの組合せもまた自在設計できるため、本発明に係る連続部分めっき方法および連続部分めっき装置もまた自在に設計できるなど、本発明要旨の範囲内において様々に設計変更することができるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の一実施例となる連続部分めっき装置を説明するために概略的に示す平面図である。なお、図中に仮想線で図示したローラはマグネットリング内蔵ローラである。
【図2】図2(a)は、回転ベルトの代表的な一使用状態を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線に沿った断面図である。なお、図面中、塗りつぶした部分が部分めっきされる領域であり、また、各部材の厚さなどは、理解を容易にするため誇張して図示されている。以下の図面も同様である。
【図3】図3は、金属薄板条の上端部のみを部分めっきする時の状態を説明するために模式的に示す要部斜視図である。
【図4】図4(a)は、ストライブめっきする時の一状態を説明するために模式的に示す要部斜視図である。なお、このストライブめっき法を実施する際には、図1に仮想線で図示したマグネットリング内蔵ローラを有する連続部分めっき装置が使用される。
【図5】図5(a)は、部分めっきする時の様子を説明するために模式的に示す要部分解斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図6】図6(a)は、他の部分めっき方法を実施するために使用する回転ベルトを模式的に示す要部分解斜視図であり、図6(b)は図6(a)のA−A断面に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 … 連続部分めっき装置
3 … 駆動ローラ(駆動手段)
3’… マグネットリング内蔵ローラ
5 … 被めっき物(金属薄板条)
10 … 回転ベルト
10a… 回転ベルト
10b… 回転ベルト
10c… 磁性金属薄板ベルト
10c’… 磁性金属薄板条
10d… 回転ベルト
10e… 回転ベルト
11 … 開口
13 … マグネットシート
14 … 軟質エラストマー被膜層
14’… 凹部
15 … マスキング用磁性体シート
15’… マスキング用磁性体シート
17 … 軟質のベーステープ
17a… アイランド用マスク(メッシュのベーステープ
18 … アイランド用マスク(メッシュのベーステープ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシートに軟質エラストマー被膜層を備えてなるマスキング用磁性体シートを、ベーステープ上に接着してエンドレスの部分めっき用回転ベルトを構成し、所定のマイナス電位が付加された金属薄板条を前記部分めっき用回転ベルトの磁力によって当該部分めっき用回転ベルト間に挟んだ状態を維持したまま搬送させながら、当該金属薄板条表面のうち前記部分めっき用回転ベルトで覆われていない部分に対して部分めっきを施すことを特徴とする連続部分めっき方法。
【請求項2】
前記部分めっき用回転ベルトが、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された平ベルト、孔付加工された平ベルト、または、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成されかつ孔付加工された平ベルトのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の連続部分めっき方法。
【請求項3】
前記部分めっき用回転ベルトの一方が、エラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルト、または、エラストマー被膜層を備え磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された磁性金属薄板ベルトであることを特徴とする請求項1または2記載の連続部分めっき方法。
【請求項4】
合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシートに軟質エラストマー被膜層を備えてなるマスキング用磁性体シートを、ベーステープ上に接着してエンドレスに形成された部分めっき用回転ベルトと、該部分めっき用回転ベルトを連続的に走行させる駆動手段とを有し、前記部分めっき用回転ベルトの間に、所定のマイナス電位が付加された金属薄板条を前記部分めっき用回転ベルトの磁力によって当該部分めっき用回転ベルト間に挟んだ状態を維持したままめっき槽またはスパジャに搬送、通過させながら、当該金属薄板条表面のうち前記部分めっき用回転ベルトで覆われていない部分に対して連続部分めっきを施す連続部分めっき装置であって、
前記部分めっき用回転ベルトが、平ベルト同士の対、平ベルトと孔付加工された平ベルトとの組、孔付加工された平ベルト同士の対、または、平ベルトもしくは孔付加工された平ベルトとエラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルトとの組のうちのいずれかであることを特徴とする連続部分めっき装置。
【請求項5】
前記部分めっき用回転ベルトの一方が、エラストマー被膜層を備えた磁性金属薄板ベルト、または、エラストマー被膜層を備え磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された磁性金属薄板ベルトであることを特徴とする請求項4記載の連続部分めっき装置。
【請求項6】
合成樹脂をバインダーに用いて磁気粉末を配向分散して形成されたマグネットシート上に軟質エラストマー被膜層を備えたマスキング用磁性体シートと、該マスキング用磁性体シートの複数をシームレスに接着するとともに全体をエンドレスに形成するためのベーステープとを具備しており、
前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成された平ベルト、孔付加工された平ベルト、または、前記軟質エラストマー被膜層の磁着面側に所望する所定形状の凹凸形状が形成されかつ孔付加工された平ベルトのうちのいずれかに形成されていることを特徴とする部分めっき用回転ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56958(P2008−56958A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233085(P2006−233085)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(591104697)株式会社平井精密 (3)
【出願人】(506294853)
【Fターム(参考)】