説明

連続鋳造装置及びその溶湯状態判断方法

【課題】ルツボ内の溶湯の状態を簡単に判断できる連続鋳造装置を提供する。
【解決手段】被溶解材料13が投入されるルツボ10と、被溶解材料13を投入する材料投入部63と、前記ルツボ10の外周に位置し、投入された被溶解材料13を加熱して溶湯14とする誘導加熱コイル18と、前記誘導加熱コイル18に電流を供給する溶解電源装置50と、前記溶湯14の一部が凝固して形成されたインゴットを下方に引き抜く底板昇降部Lと、前記ルツボ10内の溶湯14の表面位置を検知するために設けられた、前記誘導加熱コイル18への供給電流の周波数を検出する周波数検出部52と、周波数の検出値に基づいて鋳造の制御を行う制御部40とを備える連続鋳造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属等の被溶解材料をルツボ内で溶湯とし、この溶湯を凝固させることにより、鋳造を連続して行う、連続鋳造装置及びその溶湯状態判断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造法は、金属等、導電性の被溶解材料をルツボ(溶解炉)に投入しながら溶解して溶湯とし、これと同時に、ルツボ内で溶湯の一部が徐々に冷却されることで、ルツボの断面形状とほぼ同じ断面形状の棒状または厚板状のインゴット(鋳塊)が連続して形成される鋳造方法である。この連続鋳造法を行う連続鋳造装置の一例として、特許文献1に記載された連続鋳造装置が挙げられる。
【0003】
図5は、特許文献1に係る発明の連続鋳造装置(コールドウォール誘導溶解連続鋳造装置)におけるルツボ部分を示す断面図である。連続鋳造装置の基本的な構造について、図5を参照して説明する。
【0004】
ルツボ10は、例えば、内周面の直径が80〜500mm程度である。このルツボ10は、内部に冷却水通路16aを有する複数のセグメント16が所定寸法のスリット17を介して円周方向に分割された側壁20と、この側壁20の外周面に対し、所定の間隔を有して螺旋状に巻回され、内部に冷却水通路18aを有する銅管製の誘導加熱コイル18と、側壁20に対して上下動可能に配置された水冷式の底板1と、この底板1を上下に移動する引抜シャフト12とを備えている。
【0005】
前記底板1は、上部材2と下部材3とからなる。各部材2,3は、側壁20との間で溶湯14が漏れない程度の空間を有するように、水平方向断面における外径が側壁20の内周面の直径よりわずかに小さい寸法で形成されている。上部材2は、径方向寸法よりも上下方向寸法が小さい有底の中空円筒形である。この中空円筒形である上部材2は倒立され、底部2aが上方に、中空筒部(冷却水室)2dが下方に配置されている。上方に配置される底部2aの径方向中央には、非貫通で円錘台形の空間を有する凹部2bが設けられている。この凹部2bを画定する側面2cはテーパ状に形成されていて、下方に行くほど前記空間が広くなっている。一方、下部材3には、前記上部材2の冷却水室2dに連通する2つの貫通孔が設けられており、冷却水の流入口3aと流出口3bとになっている。また、下部材3の下部における径方向中央部には引抜シャフト12が固定されている。
【0006】
図示した形態では、前記底板1の上部材2と下部材3とは、外周側からシール溶接されて一体にされている。このシール溶接により前記中空筒部2dは、冷却水の流入口3a及び流出口3bと連通した冷却水室2dとなり、流入口3aから流入する冷却水により底板1全体を冷却する。投入された被溶解材料13がルツボ10内で溶解した溶湯14は、溶解の当初には凹部2bに流れ込み、溶湯14の下部に形成される凝固相15の一部となる。この状態で引抜シャフト12を下降させると、凹部2bにおけるテーパ状の側面2cを介して凝固相15に下方への引張り力が伝達され、凝固相15と溶湯14とが徐々に下降する。そして、溶湯14の下部は時間の経過とともに順次凝固相15に変化していき、インゴット(鋳塊)の長さが伸びていく。そして、インゴットが順次下方に引き抜かれ、最終的には、長尺棒状(例えば、長さが300〜1000mm)のインゴットが形成される。
【0007】
図6は、従来の連続鋳造装置の制御装置を含む構成を示す図である。前記引抜シャフト12は、ボールネジ31とナット30とで構成される昇降機構に連結されている。前記引抜シャフト12と前記昇降機構とにより底板昇降部Lが構成される。ボールネジ31を、減速機32を介してサーボモータ33で回転させることにより、引抜シャフト12を上下に昇降できる。また、サーボモータ33は、当該サーボモータ33の回転軸の回転角度を検出するレゾルバ34を備えている。
【0008】
溶解電源装置50は、当該溶解電源装置50と共にLC共振回路を構成する前記誘導加熱コイル18に誘導加熱のための高周波電流を供給する装置であり、例えば、内周面の直径が80mm程度のルツボ10に対して出力100kW程度、周波数10〜50kHz程度の高周波電流を流す装置である。この溶解電源装置50の出力は、溶解電源装置制御部51により制御される。
【0009】
鋳造制御装置40Aは、引抜制御部42と、インバータからなるサーボドライバ44とを主要な構成要素としている。引抜制御部42は、鋳造制御装置40Aの全体を統括制御すると共に、ルツボ10の底板1の昇降動作を制御する。インゴットを下方に引き抜く際には、この引抜制御部42が、前記溶解電源装置制御部51から発された引抜準備完了信号(温度検出等により、ルツボ10内で被溶解材料13が溶解して溶湯14となったことが検知されて発される信号)を受信した後に、サーボドライバ44に指示を出してサーボモータ33を起動することにより底板1を下降させる。この際、前記レゾルバ34により検出されたサーボモータ33の回転角度の検出値は、サーボドライバ44にフィードバックされる。
【0010】
この場合、引抜制御部42は、底板1が基準位置(図6に示す底板1の位置)から一定の所定速度で所定位置(例えば、300〜1000mm下方)まで下降するように、サーボドライバ44を介してサーボモータ33の回転(回転速度および回転量)を制御する。このようにして、ルツボ10内で被溶解材料13を溶解して溶湯14とし、凝固させつつ一定速度で引き抜くことで所定長さのインゴットを製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−141705号公報
【特許文献2】特開2008−194700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のように、従来の連続鋳造装置においては、鋳造制御装置40Aにより、底板1を一定速度で下降させながら、ルツボ10内で溶湯14を凝固させつつ引き抜いている。
【0013】
特許文献1に係る発明では、インゴットの引き抜きは一定速度で行われていた。ここで、引き抜きの途中に、インゴットに割れやくびれ(以下、「割れ等」)が発生することがあった。なお、ここでは、「割れ等」とは、インゴットの上部領域と下部領域が少しでもつながっている状態を言い、各領域が離れてしまった場合を「分断」と言う。
【0014】
インゴットに割れ等が発生する原因としては、ルツボ10の内周面と凝固相15との間にいわゆる「コジ」(ルツボ10の内周面に凝固相15が引っ掛かる等により過負荷が生じた状態)が発生することで、インゴットに過大な引張応力がかかること、または、インゴットのうち溶湯14に近い部分と遠い部分との間の熱応力差の影響が挙げられる。このように割れ等が発生した場合、発生した割れ等を境としてインゴットの下部領域は引き続いて下方に移動させられるが、インゴットの上部領域は、ルツボ10の内周面との摩擦により、前記上部領域の移動速度が低下したり停滞したりすることにより、割れ等が成長してしまうことがあった。このように割れ等が成長すると、最悪の場合、インゴットが上下に分断されてしまい、分断の状況によっては、溶湯14がルツボ10の底部から下方に流れ出たり、ルツボ10からあふれたりする事故が起こり(湯漏れ)、そうなると、装置全体を破壊してしまう結果を招くため大変危険であった。
【0015】
ところで、前記のように、インゴットにおける上部領域の移動速度が低下したり停滞したりすると、被溶解材料13のルツボ10への投入は引き続き行われているため、前記移動速度の低下分、ルツボ10内の溶湯14の表面(液面)が上昇する。このため、ルツボ10内の溶湯14の状態(具体的には、溶湯14の表面が上昇すること)を判断することは、前記事故の発生を予測するために極めて重要である。しかし、従来では、ルツボ10内の溶湯14の状態を判断することは、作業者の目視によってなされていた。しかも、多くの場合では、ルツボ10は気密容器内に設置されており(例えば、図2の状態)、被溶解材料13の溶解および鋳造を、真空中または不活性ガス雰囲気中で行える構造とされている。よって、この構造における目視は、作業者が気密容器に設けられた小さな覗き窓越しに行わざるを得ず、大変困難であった。また、これに加え、インゴットに割れ等がいつ発生するか分からないので、前記目視は、連続鋳造装置の運転中つきっきりで行わねばならず、作業者の負担が大きかった。
【0016】
ところで、特許文献2に係る発明は、前記特許文献1に係る発明にて引き抜き動作が一定速度で行われていたことにより、ルツボ10の内周面と凝固相15との間に「コジ」が発生した場合に、ルツボ10の内周面が損傷することを防止すると共に、引き抜いたインゴットの表面に割れや凸凹等の欠陥が発生することを防止することを課題としている。
【0017】
具体的に、この特許文献2に係る発明の連続鋳造装置は、底板の下降時にサーボモータの負荷トルク電流を検出するトルク電流検出部と、前記トルク電流検出部により検出されたサーボモータの負荷トルク電流が所定の値を超えたことを判定する引抜過負荷判定部と、前記引抜過負荷判定部によりサーボモータの負荷トルク電流が所定の値を超えたと判定された場合に、誘導加熱における溶解電力を所定の割合で増大させる誘導加熱電力増加制御部と、前記引抜過負荷判定部によりサーボモータの負荷トルク電流が所定の値を超えていると判定された状態が所定時間継続した場合に、前記サーボモータを一時休止し前記底板の下降を休止させると共に、所定時間の後に前記サーボモータを再起動し前記底板の下降を再開させる引抜一時休止制御部とを備える。そして、負荷トルク電流が所定の値を超えた場合には、前記誘導加熱電力増加制御部によりルツボにおける溶解電力を増大させ、ルツボの側壁と凝固相との間のコジが発生した部分を軟化あるいは溶解することで過負荷を解消する。
【0018】
つまり、この特許文献2に係る発明は、サーボモータの負荷トルク電流を検出することにより、引抜負荷が増大したことを判定する発明である。しかしながら、前記のようにインゴットに割れ等が発生した場合には、必ずしも引抜負荷が増大するとは限らない。それは、引抜負荷一定で引き抜きがなされていても、割れ等が成長することがあるからである。よって、特許文献2に係る発明は、インゴットに割れ等が発生した場合に有効でない場合がある。しかも、前記のようにルツボ内の溶湯の状態を判断することは、特許文献2に係る発明でも考慮されていない。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑み、ルツボ内の溶湯の状態を簡単に判断でき、これにより、安全かつ安定した連続鋳造が可能な連続鋳造装置、及び、連続鋳造装置の溶湯状態判断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、被溶解材料が投入されるルツボと、前記ルツボに被溶解材料を投入する材料投入部と、前記ルツボの外周に位置し、当該ルツボ内に投入された被溶解材料を加熱して溶湯とする誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに電流を供給する溶解電源装置と、前記ルツボが有する底板を昇降でき、当該底板を下降させることで、当該ルツボ内で前記溶湯の一部が凝固して形成されたインゴットを下方に引き抜く底板昇降部と、前記溶解電源装置から前記誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出する周波数検出部と、前記周波数検出部による周波数の検出値に基づいて鋳造の制御を行う制御部と、を備える連続鋳造装置である。
【0021】
これによれば、周波数検出部が溶解電源装置から誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出することで、ルツボ内における溶湯の表面位置を検知できる。このため、ルツボ内の溶湯の状態を簡単に判断できる。
【0022】
そして、本発明は、更なる態様として、前記制御部は、被溶解材料の前記ルツボへの投入を制御する材料投入制御部、前記インゴットの下方への引き抜きを制御する引抜制御部のうち少なくとも一つを有する。
【0023】
これによれば、周波数判定部により周波数の検出値が上下範囲内にあるか判定され、この判定に応じて鋳造の制御を行う。このため、ルツボ内における溶湯の表面位置を所定範囲に保って鋳造を行うことができる。
【0024】
そして、本発明は、更なる態様として、前記材料投入制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定上限を超えている場合に、前記材料投入部に対し、当該周波数の検出値が設定上限以下になるまで被溶解材料の前記ルツボへの投入を停止させる。
【0025】
これによれば、周波数の検出値が設定上限を超えている場合に、材料投入制御部が材料投入部による被溶解材料のルツボへの投入を停止させる。このため、ルツボ内の溶湯が増え続けることを抑制できる。
【0026】
そして、本発明は、更なる態様として、前記引抜制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定上限を超えた状態が所定時間継続した場合に、前記底板昇降部に対し、前記底板の下降を停止させる。
【0027】
これによれば、周波数の検出値が設定上限を超えた状態が所定時間継続した場合に、引抜制御部が底板昇降部による底板の下降を停止させる。このため、インゴットが上下に分断された状態のまま放置されて湯漏れが発生することを抑制したり、分断にまで至らない状態でも、割れ等が成長することでインゴットが分断されてしまうことを抑制したりできる。
【0028】
そして、本発明は、更なる態様として、前記引抜制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定下限未満の場合に、前記底板昇降部に対し、当該周波数の検出値が設定下限以上になるまで前記底板の下降を停止させる。
【0029】
これによれば、周波数の検出値が設定下限未満の場合に、引抜制御部が底板昇降部による底板の下降を停止させる。このため、ルツボ内の溶湯が減り続けることを抑制できる。
【0030】
また、本発明は、被溶解材料が投入されるルツボと、前記ルツボに被溶解材料を投入する材料投入部と、前記ルツボの外周に位置し、当該ルツボ内に投入された被溶解材料を溶解させて溶湯とする誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに電流を供給する溶解電源装置と、前記ルツボが備える底板を昇降でき、当該底板を下降させつつ、当該ルツボ内で前記溶湯の一部が凝固して形成されたインゴットを下方に引き抜く底板昇降部と、を備える連続鋳造装置における溶湯状態判断方法であって、前記溶解電源装置から前記誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出し、前記周波数の検出値に基づいて前記溶湯の状態を判断する連続鋳造装置の溶湯状態判断方法である。
【0031】
これによれば、溶解電源装置から誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出することで、ルツボ内における溶湯の表面位置を検知できる。このため、ルツボ内の溶湯の状態を簡単に判断できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、ルツボ内の溶湯の状態を簡単に判断できる。このため、安全かつ安定した連続鋳造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳造装置の溶解および鋳造に関する部分を示す構成図である。
【図2】同連続鋳造装置の全体のうち、鋳造制御装置及び溶解電源装置を除く構成図である。
【図3】(A)は周波数の検出値の変化を示したグラフであり、(B)は周波数の検出値の状況と、各状況における処置とを示す一覧表である。
【図4】同連続鋳造装置における鋳造の流れを示すフローチャートである。
【図5】連続鋳造装置のルツボ部分を示す断面図である。
【図6】従来の連続鋳造装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の連続鋳造装置の溶解および鋳造に関する部分の構成を示す図である。この連続鋳造装置は、図2に示すように、ルツボ10が気密容器60内に設置され、金属等の被溶解材料13の溶解および鋳造を、真空中(または不活性ガス雰囲気中)で行うことができる。
【0035】
図1に示す連続鋳造装置は、ルツボ10周りの構成に関しては、従来の連続鋳造装置のうち図5に示した部分と同一である。つまり、底板1が昇降し、ルツボ10内で溶解した被溶解材料13を凝固させながら下方に順次引き抜くことで、インゴット(金属等の鋳塊)を得る装置である。また、底板1を昇降させる昇降機構の駆動源として、サーボモータ33と、減速機32と、ボールネジ31とを用いている。
【0036】
図2は、図1に示した連続鋳造装置のルツボ10部分を気密容器60内に設置した状態を示す。このようにすることで、溶解および鋳造を、真空中(または不活性ガス雰囲気中)で行うことができる。
【0037】
気密容器60は外部から気密状態に遮断され、気密容器60の本体61を水冷できるように二重壁構造にされ、開閉扉62を有している。開閉扉62には、気密容器60内が作業者から目視可能なように覗き窓62aが設けられている。また、開閉扉62には、開閉時に作業者により把持される把手62bが設けられている。また、気密容器60の本体61にも、覗き窓61a、61bが上面に設けられている。
【0038】
気密容器60の本体61の上部には材料投入部63が設けられており、この材料投入部63により、ルツボ10内に被溶解材料13を投入できる。また、ルツボ10の底板1は引抜シャフト12により昇降可能に構成されているため、この引抜シャフト12と気密容器60との気密性を保持するために、引抜シャフト12の外周部12aの部分に軸シール35が設けられている。
【0039】
また、タンク本体61には、第1バルブ64a、第2バルブ64b、第3バルブが並列接続されている。第1バルブ64aは、真空ポンプ65に接続されており、開状態時に気密容器60内の空気を真空ポンプ65により吸引して外部に排気可能にする。第2バルブ64bは、アルゴンガス等を収容したガスボンベ66に接続されており、開状態時にガスボンベ66のアルゴンガス等を気密容器60内に供給可能にする。第3バルブ64cは、外部に開放されており、開状態時に外部の空気を気密容器60に供給可能にする。
【0040】
上記構成により、これらの第1〜第3バルブ64a〜64cの開閉を制御することにより、気密容器60内を真空あるいは不活性ガス雰囲気とした状態において、ルツボ10に材料投入部63から被溶解材料13を投入しつつ、誘導加熱コイル18によりルツボ10内の被溶解材料13を加熱して溶解し、溶湯14とする。
【0041】
図1に示す連続鋳造装置の構成のうち、図6に示す従来の連続鋳造装置の構成と相違するのは、制御部としての鋳造制御装置40及び溶解電源装置50の構成であり、他の構成は図6に示す構成と同様である。このため、図上で同一の要素には同一の符号を付してある。以下、従来の連続鋳造装置と構成が異なる、鋳造制御装置40及び溶解電源装置50を中心に説明する。
【0042】
鋳造制御装置40は、周波数判定部41、引抜制御部42、材料投入制御部43、サーボドライバ44を備えている。そして、溶解電源装置50は、溶解電源装置制御部51、周波数検出部52を備えている。ただし、周波数検出部52については、溶解電源装置50でなく、鋳造制御装置40に設けられていても良いし、場合によっては、連続鋳造装置と別体とされ、連続鋳造装置に対して着脱可能とされていても良い。
【0043】
周波数検出部52は、溶解電源装置制御部51に接続されており、溶解電源装置50から誘導加熱コイル18への供給電流(高周波電流)の周波数を検出する。なお、本実施形態では、この周波数検出部52は、溶解電源装置制御部51とは別に溶解電源装置5に備えられているが、溶解電源装置制御部51と一体であっても良い。また、溶解電源装置制御部51が指示する周波数を検出しても良いし、溶解電源装置50から誘導加熱コイル18までの経路上で周波数を測定することにより、周波数を検出しても良い。つまり、溶解電源装置50から誘導加熱コイル18への供給電流の周波数を検出できるのであれば、周波数検出部52の態様は限定されない。
【0044】
周波数判定部41は、前記周波数検出部52から周波数検出信号を受け取り、溶解電源装置50から誘導加熱コイル18への供給電流の周波数の検出値が、あらかじめ設定された理想値に対して上下幅を持たせた上下範囲内(図3(B)参照)にあるか判定する。
【0045】
周波数の上限及び下限は、被溶解材料13の材質、投入量、供給電力により変わるが、目安として、上限については、ルツボ10内における溶湯14の表面位置がルツボ10の上端となる周波数、下限については、溶湯14が非凝固相を維持できなくなる(全体の凝固が始まる)周波数とする。周波数の上下幅については、供給電流の周波数(10〜50kHz程度)に対し、数百Hzの幅とする。
【0046】
この周波数の判定により、ルツボ10内の溶湯14の状態(具体的には溶湯14の表面位置)を検知できる。この検知結果を利用して、ルツボ10内の溶湯の状態を判断することができる。次に、前記検知の原理について説明する。まず、ルツボ10内の溶湯14が増加すると、被溶解材料13は導電性を有しているから、この導電性を有する被溶解材料13が溶解した溶湯14の表面が上昇した分、LC共振回路を構成する誘導加熱コイル18のインダクタンスが小さくなる。
【0047】
ここで、共振周波数の式
1/f=2π√(LC)
(f:周波数、L:インダクタンス、C:キャパシタンス)
により、インダクタンスとキャパシタンスとの積の平方根に対し、周波数は反比例する関係にある。このため、インダクタンスが小さくなると、供給電流の周波数が大きくなる。
【0048】
つまり、ルツボ10内の溶湯14が増加すると(溶湯14の表面が上昇すると)、周波数が上昇する。逆に、ルツボ10内の溶湯14が減少すると(溶湯14の表面が下降すると)、周波数が下降する。この関係を利用すると、周波数検出部52による周波数の検出値の変化によりルツボ10内の溶湯14の状態を検知できる。
【0049】
次に、引抜制御部42は、ルツボ10の底板1の昇降を制御する。インゴットを引き抜く際には、この引抜制御部42が、溶解電源装置制御部51から引抜準備完了信号(温度検出等により、ルツボ10内で被溶解材料13が溶解して溶湯14となったことが検知されて発される信号)を受信した後に、サーボドライバ44に指示を出してサーボモータ33を起動することにより底板1を下降させ、インゴットを引き抜く。
【0050】
この場合、引抜制御部42は、底板1が基準位置(図1に示す底板1の位置)から所定速度(一定)で所定位置(例えば、300〜1000mm)まで下降するように、サーボモータ33の回転(回転速度および回転量)を制御する。
【0051】
この底板1の所定位置までの下降制御は、例えば、引抜制御部42に位置決め制御機能(底板1を所定位置まで(または、所定距離分)移動させる機能)を付与しておき、底板1を所定位置まで下降させることにより行われる。
【0052】
また、この下降制御は、例えば、引抜シャフト12の下限位置を検出する位置センサ(図示せず)を設けておき、サーボモータ33を一定速度で回転させることにより引抜シャフト12を下降させ、前記位置センサにより下限位置を検出した場合に、サーボモータ33を停止することにより行われる。このようにして、ルツボ10内で被溶解材料13を溶解し、凝固させつつ引き抜くことで所定長さのインゴットを製造できる。
【0053】
この引抜制御部42は、周波数判定部41により周波数の検出値が、あらかじめ設定された上限を超えたと判定された状態が所定時間継続した場合、引き抜き動作を終了するようにサーボドライバ44に指示する。
【0054】
また、引抜制御部42は、周波数判定部41により周波数の検出値があらかじめ設定された下限未満と判定された場合、引き抜き動作を停止するようにサーボドライバ44に指示する。この引き抜き動作の停止は、周波数判定部41により周波数の検出値が下限以上と判定されるまで継続する。
【0055】
材料投入制御部43は、材料投入部63(後述)からルツボ10への被溶解材料13の投入量を制御する。この材料投入制御部43により、インゴットの引き抜きを行う前には、まず、所定量の被溶解材料13がルツボ10に投入される。そして、インゴットを引き抜く際には、この材料投入制御部43が、溶解電源装置制御部51から前記引抜準備完了信号を受信した後に、材料投入部63に指示を出すことにより、インゴットの引き抜きによって減少した溶湯14分に相当する被溶解材料13をルツボ10に投入(追装)する。
【0056】
この材料投入制御部43は、周波数判定部41により周波数の検出値が上限を超えたと判定された場合、材料投入部63からるつぼ10への被溶解材料13の投入を所定時間だけ停止し、所定時間経過までに周波数の検出値が上限以下となった場合には、被溶解材料13の投入を再開する。
【0057】
これら引抜制御部42と材料投入制御部43とにより、周波数判定部41により周波数の検出値が上限を超えたと判定された場合、るつぼ10への被溶解材料13の投入を停止することで、ルツボ10内の溶湯14が増え過ぎないようにできる。そして、前記のように周波数の検出値が上限を超えたと判定された状態が所定時間継続した場合、引き抜き動作を終了することで、インゴットが上下に分断された状態のまま放置されて湯漏れが発生することを抑制したり、分断にまで至らない状態でも、割れ等が成長することでインゴットが分断されてしまうことを抑制したりできる。
【0058】
一方、周波数判定部41により周波数の検出値が下限未満と判定された場合、引き抜き動作が停止され、この停止中にルツボ10内の溶湯14の表面位置を元に戻すことができる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、安全かつ安定した連続鋳造が可能である。
【0060】
次に、周波数検出部52で検出される誘導加熱コイル18への供給電流の周波数(検出値)の変化と、それぞれの場合の処置につき、図3(A)(B)を参照して説明する。
【0061】
図3(A)に示すように、周波数の検出値の変化例としては、(a)〜(d)が挙げられる。具体的には、以下の例を示している。

(a)引き抜き中のインゴットに割れ等が発生したが、周波数の検出値があらかじめ設定された上下範囲内にあるうちに割れ等が修復(自己修復)した例。
(b)引き抜き中のインゴットに割れ等が発生し、ルツボ10への被溶解材料13の投入を停止した後、所定時間内に割れ等が修復されなかったため、引き抜き動作を終了した例。
(c)ルツボ10への材料投入量が過多の状態であり、ルツボ10への被溶解材料13の投入を停止した後に周波数の検出値が上下範囲内となった例。
(d)ルツボ10への材料投入量が過少の状態であり、引き抜き停止後に周波数の検出値が上下範囲内となった例。

これらの場合の処置について以下に説明する(図3(B)に処置を一覧表にしたものを示す)。なお、図3(A)における、周波数の検出値が変化する変化率(グラフの傾斜)は、ルツボ10内の溶湯14の増減に対応している。
【0062】
図3(A)において、周波数の検出値が上方向に変化するということは、すなわち、ルツボ10内の溶湯14の表面が上昇するということである。こうなる原因の一つとしては、ルツボ10への材料投入量が過多であることが考えられる((c)の周波数変化を参照)。
【0063】
原因のもう一つとしては、引き抜き中のインゴットに割れ等が発生した場合が考えられる((a)(b)の周波数変化を参照)。この場合、割れ等を境として、インゴットの下部は引き抜きに伴い引き続き下方に移動するが、割れ等の存在する部分が引き抜きに伴い引き伸ばされ、インゴットの上部の移動速度が下部に比べて低下したり移動が停滞したりすることがある。こうなると、インゴットの引き抜きに伴うルツボ10内における溶湯14の減少量に比べて、ルツボ10に投入される被溶解材料13の量が多くなるため、ルツボ10内の溶湯14が増加する。
【0064】
逆に、図3(A)において、周波数の検出値が下方向に変化するということは、すなわち、ルツボ10内の溶湯14の表面が下降するということである。原因として、ルツボ10への材料投入量が過少であることが考えられる((d)の周波数変化を参照)。
【0065】
図3(A)における(a)の場合、引き抜き当初は、ルツボ10における材料投入量とインゴットの引き抜きとがバランスしており、周波数の検出値は一定で推移する。ところが、途中でインゴットに割れ等が発生すると、引き抜きが継続しているにもかかわらず、ルツボ10内の溶湯14の表面が上昇する。これにより、周波数の検出値が上昇する。(a)の場合、途中で周波数の検出値が下降しているが、これは、周波数の上下範囲内で割れ等が自然に修復したからである。詳しく述べると、この周波数の検出値の下降は、割れ等によりインゴットに生じた空間とルツボ10の内部空間とが連通し、インゴットに生じた空間に溶湯が流入した分、ルツボ10内の溶湯14が減少することにより周波数の検出値が下降すると考えられる。このように割れ等が自然に修復されて、周波数の検出値が上下範囲内を推移する場合には、連続鋳造装置としては特に何の処置も行われず、インゴットの引き抜き及び被溶解材料13のルツボ10への投入(追装)が継続する。
【0066】
(b)の場合、周波数の検出値が上昇し続け、周波数の上限に達している。このように周波数の上限を超えた時点で、材料投入制御部43は、材料投入部63からルツボ10への被溶解材料13の投入を停止させる。これにより、ルツボ10内の溶湯14の表面が上昇しなくなる。(b)の場合では、被溶解材料13の投入を停止後もインゴットの引き抜きが継続している。しかし、発生した割れ等を境としたインゴットの上部領域がルツボ10内で停滞しているため、ルツボ10内での溶湯14の表面位置が変化せず、周波数の検出値が一定となっている(図示した水平線上を推移)。
【0067】
次に、所定時間経過しても、周波数の検出値が上下範囲内にまで下降しなかった場合、前記のようにインゴットの割れ等が自然に修復せずに、上下に分断されてしまった可能性が高く、もし分断されていなかったとしても分断寸前の状態となっている。このまま引き抜きが継続すると、湯漏れ等の事故につながる可能性があるため、引抜制御部42は、この時点でインゴットの引き抜きを終了する。
【0068】
(c)は、インゴットの引き抜きに対応するルツボ10内の溶湯14の減少量に比べ、材料投入量が過多で、ルツボ10内の溶湯14が増加するため、周波数の検出値が上昇する。そして、周波数の上限を超えた時点で、前記(b)の場合と同じく、材料投入制御部43は、材料投入部63からルツボ10への被溶解材料13の投入を停止させる。この場合には、インゴットの引き抜き自体は正常に継続しているため、被溶解材料13の投入が停止されると、ルツボ10内の溶湯14の表面が下降する。このため、周波数の検出値が下降する。周波数の検出値が上限以下になると、被溶解材料13の投入が再開される(図3(A)には記載していない)。材料投入量が変更されない限り、周波数の検出値が上昇・下降を繰り返すように制御される。
【0069】
(d)は、インゴットの引き抜きに対応するルツボ10内の溶湯14の減少量に比べ、材料投入量が過少で、ルツボ10内の溶湯14が減少するため、周波数の検出値が下降する。そして、周波数の下限未満となった時点で、引抜制御部42は、インゴットの引き抜きを停止する。これにより、ルツボ10内の溶湯14の表面が上昇する。このため、周波数の検出値が上昇する。周波数の検出値が下限以下になると、インゴットの引き抜きが再開される(図3(A)には記載していない)。材料投入量が変更されない限り、周波数の検出値は下降・上昇を繰り返すように制御される。
【0070】
次に、図4は、本実施形態の連続鋳造装置における鋳造の流れをフローチャートで示したものである。以下、図4を参照して説明する。
【0071】
ルツボ10内にあらかじめ投入されていた被溶解材料13が溶解し、インゴットの引き抜き準備が完了すると(ステップS1)、引抜制御部42は、サーボドライバ44に指示信号を送ってサーボモータ33を起動し、ルツボ10の底板1を下降させ、これと共に、材料投入制御部43から材料投入部63に指示信号を送り、ルツボ10に被溶解材料13を投入(追装)する(ステップS2)。
【0072】
周波数判定部41は、溶解電源装置50による誘導加熱コイル18への供給電流(高周波電流)の周波数検出信号を周波数検出部52から受け取り(ステップS3)、周波数の検出値が上限以内かどうか(つまり、被溶解材料13の投入とインゴットの引き抜きとがバランスしているか)を判定する(ステップS4)。この周波数判定部41により、前記周波数の検出値が上限以下と判定された場合は(ステップS4:YES)、ステップS5に移行する。
【0073】
ステップS5にて、周波数判定部41は、周波数検出部52による周波数の検出値が下限以上かどうかを判定する(ステップS5)。この周波数判定部41により、前記周波数の検出値が下限以上と判定された場合は(ステップS5:YES)、ステップS6に移行する。
【0074】
ステップS6にて、引抜制御部42は、底板1が下限(引き抜き位置下限)に到達したかどうかにより所定引き抜き量に到達したかを判定し、所定引き抜き量に到達していないと判定した場合は(ステップS6:NO)、インゴットの引き抜きを継続するためステップS3に移行する。所定引き抜き量に到達したと判定した場合(ステップS6:YES)、引抜制御部42はサーボドライバ44に指示信号を送り、引き抜き動作を終了し、これと共に、材料投入部63によるルツボ10内への被溶解材料13の投入も終了する(ステップS7)。これで鋳造が完了する(ステップS8)。
【0075】
一方、ステップS4にて、周波数の検出値が上限を超えていると周波数判定部41により判定された場合は(ステップS4:NO)、材料投入過多、あるいは、インゴットに割れ等が発生したことにより、るつぼ10内の溶湯14が増加した状態であるため、材料投入制御部43から材料投入部63に指示信号を送り、被溶解材料13の投入を停止する(ステップS9)。
【0076】
材料投入制御部43は、被溶解材料13の投入停止状態を所定時間継続させ、所定時間経過後に(ステップS10:YES)、ステップS11に移行する。所定時間経過までは、ステップS10を繰り返す。
【0077】
ステップS11では、周波数判定部41により、周波数の検出値が上限以内かどうかを判定する。周波数の検出値が上限以内と判定された場合は(ステップS11:YES)、材料投入制御部43から材料投入部63に指示信号を送り、被溶解材料13の投入を開始(再開)し(ステップS12)、インゴットの引き抜きを継続するためステップS3に移行する。
【0078】
一方、周波数検出部52による周波数の検出値が上限を超えていると判定された場合は(ステップS11:NO)、引抜制御部42はサーボドライバ44に指示信号を送り、引き抜き動作を停止する(ステップS13)。具体的には、サーボモータ33を停止させて底板1の下降を停止させる。これにより鋳造が中止される(ステップS14)。
【0079】
また、ステップS5にて、周波数の検出値が下限未満と周波数判定部41により判定された場合は(ステップS5:NO)、ルツボ10内の溶湯14が減少しているため、引抜制御部42はサーボドライバ44に指示信号を送り、引き抜き動作を停止する(ステップS15)。具体的には、サーボモータ33を一時停止させて底板1の下降を停止させる。
【0080】
引抜制御部42は、引き抜き動作の停止状態を所定時間継続させ、所定時間経過後に(ステップS16:YES)、ステップS17に移行する。所定時間経過までは、ステップS16を繰り返す。
【0081】
ステップS17では、周波数判定部41により、周波数検出部52による周波数の検出値が下限以上かどうかを判定する。周波数の検出値が下限以上と判定された場合は(ステップS17:YES)、引抜制御部42はサーボドライバ44に指示信号を送り、引き抜き動作を開始(再開)し(ステップS18)、ステップS6に移行する。
【0082】
一方、周波数検出部52による周波数の検出値が下限未満と判定された場合は(ステップS17:NO)、ステップS16に移行する。
【0083】
前記流れにより、本実施形態では、インゴットの引き抜き時に、溶解電源装置50による誘導加熱コイル18への供給電流(高周波電流)の周波数を検出し、それを基に引き抜き制御及び材料投入制御を行う。これにより、インゴットに割れ等が発生した場合であっても、湯漏れ等の重大な事故に至ることを回避できる。このため、事故の発生可能性を予測したり、インゴットの引き抜きが安定していることを予測したりできる。よって、安全で安定した連続鋳造が可能である。また、インゴットの品質を高く保つことができる。
【0084】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、ルツボ10への被溶解材料13の投入が過多である場合(図3に示した(c)の場合)、または、過少である場合(図3に示した(d)の場合)への対策として、周波数検出部52で検出された周波数の変化に応じて材料投入量を増減させ、被溶解材料13の投入を適正化する制御を行っても良い。
【0086】
また、本実施形態では、周波数の検出値が上下範囲内にある場合には、特に何の処置も行われないが、周波数の理想値(図3(B)参照)を目標値として、材料投入量またはインゴットの引き抜き速度を調整する制御を行っても良い。また、周波数の検出値の変化率の変化(図3(B)におけるグラフの傾きの変曲点)を基に、インゴットに割れ等が発生したことを検知し、その時点で即、材料投入量またはインゴットの引き抜き速度を調整する制御を行っても良い。
【0087】
また、本実施形態では、周波数検出部52による周波数の検出値を周波数判定部41で判定し、この判定結果に応じて引抜制御部41及び材料投入制御部42が動作しているが、これ以外に、前記周波数の検出値を用いて、警報の表示、警報音の発出、溶湯14の状況(表面位置等)の表示等を行っても良く、前記周波数の検出値を用いて種々の動作をさせることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 ルツボ
1 底板
13 被溶解材料
14 溶湯
18 誘導加熱コイル
40 制御部、鋳造制御装置
41 周波数判定部
42 引抜制御部
43 材料投入制御部
52 周波数検出部
50 溶解電源装置
63 材料投入部
L 底板昇降部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶解材料が投入されるルツボと、
前記ルツボに被溶解材料を投入する材料投入部と、
前記ルツボの外周に位置し、当該ルツボ内に投入された被溶解材料を加熱して溶湯とする誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに電流を供給する溶解電源装置と、
前記ルツボが有する底板を昇降でき、当該底板を下降させることで、当該ルツボ内で前記溶湯の一部が凝固して形成されたインゴットを下方に引き抜く底板昇降部と、
前記溶解電源装置から前記誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出する周波数検出部と、
前記周波数検出部による周波数の検出値に基づいて鋳造の制御を行う制御部と、を備える連続鋳造装置。
【請求項2】
前記制御部は、被溶解材料の前記ルツボへの投入を制御する材料投入制御部、前記インゴットの下方への引き抜きを制御する引抜制御部のうち少なくとも一つを有する請求項1に記載の連続鋳造装置。
【請求項3】
前記材料投入制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定上限を超えている場合に、前記材料投入部に対し、当該周波数の検出値が設定上限以下になるまで被溶解材料の前記ルツボへの投入を停止させる請求項2に記載の連続鋳造装置。
【請求項4】
前記引抜制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定上限を超えた状態が所定時間継続した場合に、前記底板昇降部に対し、前記底板の下降を停止させる請求項3に記載の連続鋳造装置。
【請求項5】
前記引抜制御部は、前記周波数検出部による周波数の検出値が設定下限未満の場合に、前記底板昇降部に対し、当該周波数の検出値が設定下限以上になるまで前記底板の下降を停止させる請求項2または3に記載の連続鋳造装置。
【請求項6】
被溶解材料が投入されるルツボと、
前記ルツボに被溶解材料を投入する材料投入部と、
前記ルツボの外周に位置し、当該ルツボ内に投入された被溶解材料を溶解させて溶湯とする誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに電流を供給する溶解電源装置と、
前記ルツボが備える底板を昇降でき、当該底板を下降させつつ、当該ルツボ内で前記溶湯の一部が凝固して形成されたインゴットを下方に引き抜く底板昇降部と、を備える連続鋳造装置における溶湯状態判断方法であって、
前記溶解電源装置から前記誘導加熱コイルへの供給電流の周波数を検出し、前記周波数の検出値に基づいて前記溶湯の状態を判断する連続鋳造装置の溶湯状態判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99760(P2013−99760A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244607(P2011−244607)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】