説明

進路表示装置とその制御方法

【課題】進路表示装置のLEDランプを点灯せずに、消灯状態での故障診断及び回線異常検出し、事前にかつ常時監視動作によって監視性能を高めること。
【解決手段】符号変換器2と進路表示機3とを通信端末を介して通信ケーブル4で接続し、進路表示機3の異常を監視する進路表示装置1において、符号変換器2は制御マスターユニットを備え、該制御マスターユニットが、車両入換の進路表示要求の条件入力またはランプ試験要求を含む進路表示要求データを進路表示機3にシリアル通信でデータ伝送し、かつ進路表示機3から進路表示応答データを受信して、このデータに基づく進路表示機3のLEDランプの文字パターン表示と、該LEDランプの点灯動作前の消灯状態での故障及び回線異常の検出を行い、通信プロトコルのフレームに試験要求コマンドを含む場合、LEDランプに瞬時電流を流して、一定周期毎に常時、LEDランプの全ピクセルの断線チェックを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道信号の進路表示装置、特に車両が入線すべき線路を車両関係者に番号表示する進路表示装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の進路表示装置は、信号電球(一般的にLEDランプ)を使用した表示部と、連動装置からの制御信号を信号電球の点灯に必要な電気信号に変換する制御部との2ブロックからなり、それぞれのブロックが線路わきのコンクリート柱等に設置されていた。
【0003】
表示部は、文字あるいは数字の0〜9を表示するために多数の信号電球がドットマトリックス状に組込まれている。これらを実際に設置する場合、例えば、20本の入線線路があるときには、信号電球を2桁表示器用に組合せて、入線線路の番号を0〜19まで表示することとなり、表示部と制御部とを結ぶケーブルには少なくとも信号電球の個数以上の50芯程度の太いケーブルを用いる必要があった。
さらに、連動装置から制御部に延びた制御線も同様に、各信号電球による番号表示を切り替える分だけの数を必要としていた。
【0004】
上述したように連動装置と制御部の間、及び制御部と表示部の間の接続には、多芯の太いケーブルが必要であり、しかも、この多芯ケーブルを長い距離に渡って引き回して配線するため、配線が厄介であり、また多芯ケーブル及び制御部の設置に必要かつ十分なスペースを線路わきに確保しなければならなかった。
【0005】
また、信号用の設備では、故障発生は許されず、万一故障した場合でも安全側に動作するいわゆるフェイルセーフ性が要求される。従来においても、連動装置からの信号をもって直接進路表示の表示を切り替えるようになっていたが、その信号に対する遠隔地での表示部の応答状態を連動装置側に返送する手段が講じられておらず、連動装置側において、装置の異常、例えば入力異常,表示異常,信号電球の断線,多芯ケーブルの異常等を判定することは難しかった。
【0006】
このようなことから、通信プロトコルを規定した通信回線の利用により配線構造を簡素化し、しかも遠隔地の線路表示器の異常を容易に判定できることが望ましい。このための装置として、特許文献1に入換標識装置が開示されている。
【0007】
この装置は、親局Aと子局Bとを有し、図5に示すように、親局Aは、符号変換器52、監視表示器53、および通信端末54を有し、子局Bは、図示しない入換信号機と一ユニット構成として設置され、通信端末55、文字変換回路56、線路表示器57、断線検出回路58、および内部異常検出回路59から構成されている。
【0008】
親局Aと子局Bとの間は、通信端末54,55を介して2芯通信ケーブル50で接続され、通信プロトコルによる直列符号の伝送方式を用いて2局間でデータの相互通信を行い、親局Aより子局Bに指令を発し、子局Bからの応答を親局Aに表示して、子局Bへの入力異常、あるいは子局Bの異常の有無を親局Aにて監視する。
【0009】
上記入換標識装置の表示を入換情報に基づいて変更する連動装置51は、親局Aの符号変換器52に変更された入換線路の表示情報を出力する。そして、符号変換器52が、この車両入換の線路表示内容を直列符号に変換し、これを通信端末54,55によるデータ相互通信で子局Bに伝送する。伝送された直列符号は、文字変換回路56により、線路表示の表記用文字のデータに変換され、線路表示器57の表示面に線路表示内容が文字によって表示される。また、子局Bへの入力異常、あるいは表示異常が親局Aに通知され、監視表示器53に表示される。
【0010】
断線検出回路58は、文字パターンデータによって指定された文字の構成に要するLEDチップの指定位置と、線路表示器57から出力されたLEDチップの点灯位置とを比較し、前記指定位置と点灯位置とが異なるときには、これをLEDチップに断線有として表示異常を通信端末に出力する。また、内部異常検出回路59は、前記LEDチップの指定数と点灯数とを比較するとともに、その差が予め定めた数以上のとき、その他子局Bの内部異常発生を検知し、線路表示不能のときに表示異常を線路表示器57及び通信端末55に出力するように構成されている。
【0011】
この装置では、表示パターンの異常監視は行っているが、それは、表示要求が発生したときだけであり、ランプが点灯した部分の断線しか監視できない。即ち、点灯動作時に始めて断線が発覚するので、故障が発生した後に、これを復旧させるため、対策が事後処理となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−340260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の入換標識装置では、線路表示器の異常は、入換信号機のLEDランプの点灯動作時に、その異常が検出されるので、車両が入線すべき線路へ入庫する際になって始めて進路表示装置の故障が判明する。そのため、この監視方式は、故障が発覚した後、故障を復旧させる事後処理動作となっていた。
【0014】
従って、本発明の課題は、進路表示装置のLEDランプを点灯せずに、即ち、点灯動作前、消灯状態での故障診断及び回線異常検出を行うことにより、事前にかつ常時監視を可能にして監視性能を高め、かつ迅速な故障対応により信頼性を向上させた進路表示装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、符号変換器と進路表示機とを通信端末を介して通信ケーブルで接続し、通信プロトコルによるシリアル通信方式を用いて、データの相互通信を行い、前記進路表示機の異常を監視するための進路表示装置であって、
前記符号変換器は、制御マスターユニットを備え、該制御マスターユニットから一定周期毎に常時、車両入換の進路表示要求の条件入力またはランプ試験要求を含む進路表示要求データを、前記通信端末を介して前記進路表示機にシリアル通信でデータ伝送し、
前記進路表示機は、縦横にドットマトリックス状に配置された複数の前記LEDランプと、該LEDランプの文字パターン表示あるいは内部異常を検出するための制御手段とを備え、該制御手段から前記符号変換器へ、前記進路表示要求データに対する応答として、前記進路表示応答データを返信しており、
前記制御マスターユニットは、前記進路表示機から進路表示応答データを受信して、この応答データに基づき、前記LEDランプの点灯時における文字パターン表示の診断と、該LEDランプの点灯動作とは無関係に、消灯状態でのランプ断線故障及び回線異常を前記一定周期毎に常時監視することを特徴としている。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記制御手段は、各々CPUで構成される表示マスターユニットと表示スレーブユニットからなり、前記符号変換器の制御マスターユニットに対する制御スレーブとして動作し、前記表示スレーブユニットは、複数のCPUから構成され、各CPUにそれぞれ、LEDランプの表示ユニットが左右対称配列に接続されていることを特徴としている。
【0017】
また、他の実施形態によれば、前記進路表示要求データが、前記通信プロトコルのフレームに試験要求コマンドを含む場合、前記進路表示機の文字パターン表示を行わず、前記LEDランプに瞬時電流を流して、前記LEDランプの全ピクセルの断線チェックを行うことを特徴としている。
【0018】
さらに、本発明は、符号変換器と進路表示機とを通信端末を介して通信ケーブルで接続し、通信プロトコルによるシリアル通信方式を用いて、データの相互通信を行い、前記進路表示機の異常を監視するための進路表示装置の制御方法において、
前記符号変換器の制御マスターユニットから、一定周期毎に常時、車両入換の進路表示要求の条件入力またはランプ試験要求を含む進路表示要求データを、前記通信端末を介して前記進路表示機にシリアル通信でデータ伝送し、
前記進路表示機の表示マスターユニットが、前記進路要求データから表示パターンデータを生成し、順次LEDランプに接続された表示スレーブユニットに送信し、表示スレーブユニットが前記LEDランプを所定時間点灯させ、該LEDランプの電流チェックを行い、前記表示マスターユニットに返信して、進路表示応答データを前記符号変換器に送信し、
前記進路表示要求の代わりに前記ランプ試験要求を含む前記進路表示要求データを前記進路表示機にデータ伝送したとき、前記LEDランプを点灯して文字パターン表示をせず、前記LEDランプに瞬時電流を流した消灯状態において、前記LEDランプの全ピクセルの断線チェックを前記一定周期毎に繰り返し動作させる、各工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、符号変換器と進路表示機とを通信ケーブルで接続し、通信プロトコルによるシリアル通信方式を用いて、データの相互通信を行い、前記進路表示機の異常を監視しており、符号変換器からの進路表示要求の代わりに、ランプ試験要求のデータ伝送時に、LEDランプを点灯させることなく、LEDランプに瞬時電流を流して消灯状態での故障診断及び回線異常検出を行うことができる。
【0020】
この結果、進路表示装置の故障を事前にかつ常時監視することを可能にして、監視性能を高め、かつ迅速な故障対応により信頼性が向上する。
また、通信ケーブルの使用により、装置の配線を簡略化するとともに、進路表示機の点検保守管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】符号変換器と進路表示機とを通信ケーブルで接続した本発明に係る進路表示装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る進路表示装置の符号変換器の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る進路表示装置の進路表示機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明における符号変換器と進路表示機との間の伝送サイクルを説明するための図である。
【図5】従来の入換標識装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明に係る進路表示装置1について説明する。
図1は、本発明の進路表示装置1の概略構成を示し、親局としての符号変換器2と子局としての進路表示機3が、2芯の通信ケーブル4で接続されている。通信ケーブル4は、符号変換器2と進路表示機3のそれぞれの通信端末間に接続されているため、通信プロトコルを規定した通信回線の利用により、親局と子局との間で相互にデータが伝送される。
【0023】
符号変換器2は、車両の入換を制御するため、例えば、駅構内の信号機器室内に設置されており、進路表示機3と回線接続され、進路表示機3の表示制御を行うものである。
親局の符号変換器2は、図2に示す内部構成を有し、CPU構成からなる制御マスターユニット5が設けられている。この制御マスターユニット(CPU#0)5は、保安器6、ノイズフィルタ7、電源部8からなる電源ラインに接続されて電力の供給を受け、入力信号として、例えば、0〜19の表示のための条件入力を指定する信号10を、条件入力インターフェース12を介して、また、各種試験スイッチの入力信号11等を受け入れる。
【0024】
一方、制御マスターユニット5からは、RS485インターフェース13を介して保安器14を通過して進路表示機3への出力信号15、及び進路表示機3からのフィードバック応答信号15’に基づき、進路表示機のランプの文字パターン表示、ランプ故障、回線異常を診断して、異常の場合、警報を発生させるための警報接点出力への出力信号16が出力されるようになっている。
ここで、RS485インターフェース13は、通信プロトコルをシリアル伝送するためのインターフェースであり、保安器6,14は、電源線や通信線において、雷やサージなどによって印加された異常電圧・異常電流から、機器を保護するための装置である。
【0025】
制御マスターユニット5は、車両入換の進路表示指令入力を直列符号に変換して通信端末に出力し、さらに進路表示機3からデータ伝送された直列符号による受信内容を進路表示信号と比較してその時の状態を監視し、その結果を警報接点出力に出力する。警報接点出力は、監視表示器等(図示略)に接続され、進路表示機3から伝送通知される軽故障または重故障を個別に出力できる。このため、入力条件異常による重故障を出力でき、また、通信回線障害発生による重故障を出力できる。
【0026】
故障の種別は、進路表示機の表示ピクセル(ドット)の断線が1〜2の場合、軽故障とし、断線ピクセルが滅灯したままで表示を継続する。また、3個以上の場合、重故障として、約1秒後に強制全滅灯する。
【0027】
一方、進路表示機3は、開通している進路を数字及び英文字で表示するもので、車両入換を行う構内、例えば、線路の分岐点近傍に設置される。図3に示すように、進路表示機3は、制御部20と表示部30とを有し、制御部20は、電源ライン22に接続された表示マスターユニット(CPU#1)23を備える。
【0028】
表示マスターユニット23は、CPUで構成され、内部に通信端末としてのRS485インターフェース23aを備えており、外部の保安器24とRS485インターフェース23aを介して、符号変換器2からの出力、即ち、進路表示要求、進路表示応答、試験要求、試験応答の各入力信号が1つのフレームとして、通信プロトコルによるシリアル伝送で送られてくる。
電源ライン22は、符号変換器2の場合と同様に、保安器6’、ノイズフィルタ7’、電源部8’から構成されている。
【0029】
進路表示機3の表示部30は、ここでは、1つのCPU構成ではなく、LEDランプ31のドットマトリックスで構成された表示ユニット32の10位の桁数を表示するための表示スレーブユニット(CPU#8)に順次シリアル接続された他の6個の表示表示スレーブユニット(CPU#7〜#2)が配置されている。
これらの表示スレーブユニット33は、全部で7枚あり、また、LEDランプの表示ユニット32は、それぞれのCPUに対して上下2段構成であるので、全体で14の基板が配置されている。
【0030】
上記表示スレーブユニット33と表示ユニット32の接続構成は、LEDランプの配列を列毎に分割して、プラグインユニット化したことにより、CPUの分散処理が可能となり、回路上のノイズに対する耐性、配線による組立容易性、故障箇所の早期発見等のメリットがある。
【0031】
進路表示指令入力のシリアル信号は、通信プロトコルで規定されたフレームを有し、このフレームに進路表示要求、進路表示応答、試験要求、及び試験応答等に関する情報が組み込まれて伝送される。
このシリアル通信は、本実施形態では、通信端末として、RS−485インターフェース13,23aを用い、1本の信号線で1ビットずつデータの受け渡しを行って、さまざまな機器と通信で情報交換を可能にしている。このRS−485インターフェースでは、通信プロトコルをマスター/スレーブ形式で規定しており、マスター機器がスレーブ機器に対してデータ要求を行い、該当する1台のスレーブだけがデータ応答を返すことで、さまざまな機器との情報の受け渡しを確実に行える。
【0032】
通信端末としてのインターフェースは、RS−485以外の、他のRS−232C,RS−422,カレントループ等であってもよい。また、通信プロトコルは、例えば、データ長が10バイトの電文データフレーム構成を有している。
【0033】
本発明の実施形態では、符号変換器2が進路表示機3に発行する出力信号の進路表示要求データのフレームには、データ長10バイト中に、送信先アドレス、送信元アドレス、電文通番、要求コマンド、要求進路番号、パリティチェック、等が含まれる。また、進路表示機3から符号変換器2に発行する応答信号の進路表示応答データのフレームには、データ長10バイト中に、送信先アドレス、送信元アドレス、電文通番、応答コマンド、確認進路番号、パリティチェック等が含まれる。
【0034】
上記進路表示要求データの要求コマンドには、表示要求と試験要求の何れかのコマンドが含まれ、フレームが試験要求コマンドを含む場合、進路表示機の表示を行わず、LEDランプを点灯させることなく、LEDランプに瞬時(パルス)電流を流して、進路表示機のLEDランプにおける全ピクセルの断線チェックを行う。
【0035】
上記進路表示応答データの応答コマンドには、正常=0、軽故障=1、重故障=2の情報を含んでおり、軽故障の場合、表示機で1〜2ピクセルの断線、重故障の場合、表示機で3ピクセル以上の断線、または通信回線障害が発生したことを示す情報が含まれる。
【0036】
上述した符号変換器2と進路表示機3とは、通信回線により接続され、一定周期(例えば、500ms)毎に常時チェック要求が発行され、また、この通信回線は、進路表示機内部においても、表示マスターユニット23と表示スレーブユニット33との内部伝送に利用されて、上記情報通信が行われる。
【0037】
すなわち、両機器2,3間の伝送内容は、符号変換器2から進路表示機3へは、進路表示要求の電文が、進路表示要求データとして送られる。また、進路表示機3から符号変換器2へは、進路表示応答の電文が、進路表示応答データとして送られる。
【0038】
また、進路表示機3内の伝送内容は、表示マスターユニット23から表示スレーブユニット33へ、表示要求の電文が、表示要求パターンとして送られ、また、表示スレーブユニット33から表示マスターユニット23へ表示応答の電文が表示応答パターンとして送られる。
通信インターフェースの伝送方式は、符号変換器2と進路表示機3との伝送、及び進路表示機内部での伝送とも、シリアル伝送で行われ、RS485インターフェースを用いている。
【0039】
通信制御は、基本的に、符号変換器2を制御マスターとして、進路表示機3を制御スレーブとした対向通信を行う。符号変換器2から送信される進路表示要求データに対して、進路表示機3は、進路表示応答データを返信することで1制御サイクルが完了する。
【0040】
また、1制御サイクル内において進路表示機内部では、表示マスターユニット23と複数のスレーブユニット33間で表示パターンデータが順次分配伝送され、表示制御が行われる。進路表示機3は、進路表示要求データの受信エラーまたは伝送データエラーを検出した場合、そのとき受信した電文を破棄して、返信を行わず、次回の要求データを待つ。進路表示機内部の表示マスターユニット23と表示スレーブユニット33においても、スレーブでのエラー検出時は、電文を破棄して次回の要求データを待つ。
【0041】
符号変換器2と進路表示機3および進路表示機内部の伝送サイクルは、図4に示すようになっている。
すなわち、符号変換器2の制御マスター5から、進路表示要求データが表示マスター23のCPU#1に送られ、表示マスター23のCPU#1から表示スレーブ33のCPU#2へ、順次信号の伝送が行われる。そして、表示スレーブ33のCPU#4から応答信号が、表示マスター23のCPU#1に送られ、そして、表示マスター23から符号変換器2の制御マスター5に応答信号が返信される。
【0042】
したがって、この符号変換器2からの要求データが送られ、進路表示機3からの応答データが符号変換器2に伝送されるまでに、図中、(1)〜(n)までの伝送サイクルが実行され、この時間は、約500msであり、この時間間隔で常時監視が繰り返される。
【0043】
このようにして、通常、符号変換器2から取り込まれる条件入力に従って、表示要求コマンドが500ms毎に進路表示機3に送信されるが、条件入力が無い場合は、代わりに、ランプ試験コマンドが送信される。このコマンドは、進路表示機3に対してランプの点灯は、一切せず、全表示ランプの断線診断のみを行う。そして、診断結果を重故障/軽故障の情報として応答する。この機能により、本装置は無灯時も含めて常時表示ランプの断線監視および伝送状態監視を実現できる。
また、進路番号と表示パターンの対応は、一義的に決められており、例えば、本実施形態では、表示番号0〜19が表示パターン0〜19に対応している。
【0044】
次に、本発明における電文の送受信を説明する。
符号変換器側(制御マスターユニット)では、
(a) 装置が起動すると、500ms毎に条件入力(20回線分)に対応した0〜19の進路番号を表示要求として送信する。条件入力が無い場合、代わりにランプ試験(無表示)要求を送信する。
(b) 電文通番(初期値0x10、試験時は、0x80)は、送信毎に0x10を加算する。そして、
(c) 表示要求送信後、500ms以内に戻る応答を受信する。
(d) 正常応答の場合、(a)に戻り、表示が継続する(なお、直前が軽故障であった場合、軽故障ランプ/出力は解除される)。
(e) 軽故障応答の場合、軽故障ランプを点灯して軽故障警報出力を行った上、(a)に戻り表示が継続される。
(f) 重故障応答および応答が無い場合、重故障ランプを点滅する。
(g) 10秒間動作を停止した後、10秒間ランプチェック要求と応答を繰り返す。この間、重故障応答が再発または応答がない場合、重故障ランプを点灯して重故障出力を発生させた上、装置を停止状態に保持させる(リセットSWにより復帰可能である。)また、この間の応答が全て正常であった場合、装置の再起動を行う(重故障は自動復帰)。
【0045】
一方、表示機側(表示マスターユニット)では、
(a) 表示マスターユニットは、符号変換器(制御マスター)から制御周期(500ms)毎に送信される進路(またはランプチェック)要求データを、バイト毎に受信エラー(オーバーラン/フレーミング/パリティ)チェックを行い、エラー検出時は電文を破棄する。
(b) (a)と同様に、電文通番が不正な場合も電文を破棄する。
(c) (a)と同様に、チェックサムエラー検出時も電文を破棄する。
(d) (a)と同様に、電文情報不正の検出も電文を破棄する。
(e) 電文が正常に解釈された場合、次の内部表示処理を行う。
(1)表示マスターユニットは、受け取った進路(またはランプチェック)要求データから表示パターンデータを生成し、順次各表示スレーブユニットに送信する。電文通番は制御マスターからの通番を順次インクリメントした値を生成する。
(2)表示スレーブユニットは、受信した表示パターンに従ってランプを1秒間点灯する(進路要求データの伝送が途絶えると、表示は、約1秒後に消灯する)。
(3)表示スレーブユニットは、全ての表示スレーブからの表示結果を受信し、不良判定を行い、応答コマンド・応答ステータス・確認進路データなどを生成して応答電文に乗せて返信する。
(f) 以上(a)〜(e)のサイクルが常時繰り返される。
【符号の説明】
【0046】
1:進路表示装置、2:符号変換器、3:進路表示機、4:通信ケーブル、5:制御マスターユニット、13:RS485インターフェース、20:制御部、23:表示マスターユニット、30:表示部、32:表示ユニット、33:表示スレーブユニット、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号変換器と進路表示機とを通信端末を介して通信ケーブルで接続し、通信プロトコルによるシリアル通信方式を用いて、データの相互通信を行い、前記進路表示機の異常を監視するための進路表示装置であって、
前記符号変換器は、制御マスターユニットを備え、該制御マスターユニットから一定周期毎に常時、車両入換の進路表示要求の条件入力またはランプ試験要求を含む進路表示要求データを、前記通信端末を介して前記進路表示機にシリアル通信でデータ伝送し、
前記進路表示機は、縦横にドットマトリックス状に配置された複数の前記LEDランプと、該LEDランプの文字パターン表示あるいは内部異常を検出するための制御手段とを備え、該制御手段から前記符号変換器へ、前記進路表示要求データに対する応答として、前記進路表示応答データを返信しており、
前記制御マスターユニットは、前記進路表示機から進路表示応答データを受信して、この応答データに基づき、前記LEDランプの点灯時における文字パターン表示の診断と、該LEDランプの点灯動作とは無関係に、消灯状態でのランプ断線故障及び回線異常を前記一定周期毎に常時監視することを特徴とする進路表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、各々CPUで構成される表示マスターユニットと表示スレーブユニットからなり、前記符号変換器の制御マスターユニットに対する制御スレーブとして動作し、前記表示スレーブユニットは、複数のCPUから構成され、各CPUにそれぞれ、LEDランプの表示ユニットが左右対称配列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の進路表示装置。
【請求項3】
前記進路表示要求データが、前記通信プロトコルのフレームに試験要求コマンドを含む場合、前記進路表示機の文字パターン表示を行わず、前記LEDランプに瞬時電流を流して、前記LEDランプの全ピクセルの断線チェックを行うことを特徴とする請求項1または2記載の進路表示装置。
【請求項4】
符号変換器と進路表示機とを通信端末を介して通信ケーブルで接続し、通信プロトコルによるシリアル通信方式を用いて、データの相互通信を行い、前記進路表示機の異常を監視するための進路表示装置の制御方法において、
前記符号変換器の制御マスターユニットから、一定周期毎に常時、車両入換の進路表示要求の条件入力またはランプ試験要求を含む進路表示要求データを、前記通信端末を介して前記進路表示機にシリアル通信でデータ伝送し、
前記進路表示機の表示マスターユニットが、前記進路要求データから表示パターンデータを生成し、順次LEDランプに接続された表示スレーブユニットに送信し、表示スレーブユニットが前記LEDランプを所定時間点灯させ、該LEDランプの電流チェックを行い、前記表示マスターユニットに返信して、進路表示応答データを前記符号変換器に送信し、
前記進路表示要求の代わりに前記ランプ試験要求を含む前記進路表示要求データを前記進路表示機にデータ伝送したとき、前記LEDランプを点灯して文字パターン表示をせず、前記LEDランプに瞬時電流を流した消灯状態において、前記LEDランプの全ピクセルの断線チェックを前記一定周期毎に繰り返し動作させることを特徴とする進路表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126295(P2012−126295A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280749(P2010−280749)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000144348)株式会社三工社 (48)
【Fターム(参考)】