説明

遅延型過敏症誘導剤含有局所貼付製剤キット

DNCBなどの遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物及びそれの使用法を提供する。多くの具体例において、本発明の組成物は密閉された容器に保存され、負荷されていない局所貼付製剤と共に、例えばキットの形で収容される。本発明の組成物の使用に際しては、液状組成物を負荷されていない局所貼付製剤に装着し、その製剤を局部に貼付する。本発明は、遅延型過敏症誘導剤の投与が所望され、そして殊にAIDSなどのHIV関連症状の治療における使用に適している種々の適用における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遅延型過敏症誘導剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の患者の数は、最近世界的に急激に増加してきており、その数は、1998年末でおよそ3千3百万(WHO)、2001年末で4千万(UNAIDS)と云われている。このような背景にあって、HIVに対するワクチンの開発の需要が増大している。しかし、感染後のウイルスの形態の変化、即ちHIVの形態の変化のため、的確なワクチンが見出されていない。更に、HIV用の多くの治療用薬剤が開発されているが、HIVを完全に治療する薬剤がない。更に最近のAIDS薬(プロテアーゼ阻害剤、非核酸逆転写阻害剤、核酸逆転写阻害剤など)は複雑な技術を必要とする。これらの薬剤を長期投与すると、患者に貧血、末梢神経炎、膵炎、嘔吐、頭痛などの直りにくい副作用を被らすことになる。また、長期投与が薬剤耐性を引き起こす可能性を排除できない。なお、今日の治療様式のもう1つの不利益は、HIV用の今日の治療薬剤費がしばしば1年間1人当たり15,000ドルから20,000ドルの高額に達し、それが患者の接近を必然的に制限しているという、費用の点にある。
【0003】
今日のHIV治療様式の有効な代替物の1つのタイプの薬剤は、体内の免疫組織細胞の活性を増加させることによって、HIV患者の免疫応答を引き出す免疫調節剤として研究されてきたタイプの薬剤である、遅延型過敏症(DTH)誘導剤である。遅延型過敏症誘導剤は、それが皮膚と接触するとタイプ4過敏症を誘導する物質であり、トリニトロベンゼンスルホン酸、クロロピクリン酸(PC)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)が挙げられる。これらのなかで、DNCBはHIVの治療及び免疫学的研究に広く使用されてきている。
DNCBは第二次世界大戦以前にドイツで発明された。1950年代に米国でなされた研究の結果、DNCBは発ガン性がないことが示された。後程、1970年代に、安全性研究が種々のタイプの動物で行われた。DNCBは、一般的にヒトに対する強力な遅延型アレルギー誘導皮膚刺激剤であることが知られており、とりわけ、皮膚疾患免疫学的試験に使用されている。HIV患者におけるDNCB治療の研究が1980年代の半ばからゆっくりと始まり、HIV患者におけるDNCB治療の研究は1990年代の前半に行われ、それからDNCBがHIV治療に有効であると主張された。しかしこの主張は証明されなかった。1990年代の後半になり、PCR分析技術の開発がHIV患者におけるDNCBの効果を確認し始めた。更に、DNCBはまた、癌の可能性のある治療剤として前から研究されていた。試験はDNCBを局所に投与し、遅延型アレルギー反応を誘導し、それにより免疫誘導能を利用する形で行われた。しかし、これらの知見は実用に供されることがなかった。更に、DNCBは、とりわけ、いぼの治療に使用されてきた。
【0004】
最近採用されたHIV患者におけるDNCBの使用法はアセトン溶媒にDNCBを溶解し、生成物をガーゼ様布にしみこませ、これを皮膚に適用することであった。この局所製剤を乾燥し、被覆し、数時間放置する(典型的には少なくとも8時間)。この長い適用時間は、HIV患者を少なくとも8時間の間、健常人と同じ生活様式に導くことを阻害するかなりの長時間、制約することを意味する。この方法はDNCBの適用を提供するが、用量を調節することが困難であり、効果の開始までにいくらかの時間を要する。
DNCBは上記の目的のために利用してもよいが、局所貼付剤が保存されている環境がDNCBの有効性の分解に導くことが多い。DNCB自体が溶解状態では不安定で、高温で一層不安定であることが判明した。DNCBの局所貼付剤が採用されている多くの国では、適切な保存を採用している設備が利用できず、従ってその局所貼付剤が不適切な貯蔵のためにDNCBの分解により最早有効でない。従って、昇温を含め、広範囲の条件下、安定に保存される、局所DTH誘導剤投与剤形の開発が大いに注目されている。
【0005】
(関係文献)
関係する文献には、Sticker et al. 著 樹状細胞とジニトロクロロベンゼン(DNCB):AIDSへの新治療法, Immunol Letters 1991; 29: 191-196;
Stricker et al. 著 Pilot study of topical dinitrochlorobenzene (DNCB) in human immuno deficiency virus infection. Immunol Letters 1993; 36: 1-6;
Stricker et al. 著 Topical dinitrochlorobenzene in HIV disease. J Am Acad Dermatol 1993; 28: 796-797;
Stricker et al. 著 Clinical and immunologic evaluation of HIV-infected patients treated with dinitrochlorobenzene (DNCB). J Am Acad Dermatol 1994; 31: 462-466; Stricker RB, Goldberg B, Mills LB, Epstein WL. 著 Improved results of delayed-type hypersensitivity skin testing in HIV-infected patients treated with topical dinitrochlorobenzene (DNCB). J Am Acad Dermatol 1995; 33: 608-611;
Stricker & Goldberg. 著 Safety of topical dinitrochlorobenzene. Lancet 1995; 346: 1293;
Stricker et al. 著 Improved results of delayed-type hypersensitivity skin testing in HIV-infected patients treated with topical dinitrochlorobenzene. J Am Acad Dermatol 1996; 35: 491-493;
Stricker et al. 著 Decrease in viral load associated with topical dinitrochlorobenzene therapy in HIV disease. Res Virol 1997; 148: 343-348;
Traub et al. 著 Topical immune modulation with dinitrochlorobenzene (DNCB) in HIV disease: A controlled trial from Brazil. Dermatology 1997; 195: 369-373;
Stricker et al. 著 Topical immune modulation (TIM): A novel approach to the immunotherapy of systemic disease. Immunol Letters 1997; 59: 145-150;
Oracion et al. 著 DNCB treatment of HIV-infected patients leads to beneficial immunologic outcomes, reduced viral load, and improved measures of quality-of-life. J Invest Dermatol 1998; 110: 476.
【0006】
(発明の要約)
遅延型過敏症(DTH)誘導剤、例えばDNCBの昇温保存安定液状組成物及びそれの使用法が提供される。多くの具体例において、本発明の組成物は密閉された容器に保存され、負荷されていない局所貼付製剤と共に、例えばキットの形で収容される。本発明の組成物の使用に際しては、液状組成物を負荷されていない局所貼付製剤に装着し、その製剤を局部に貼付する。本発明は、遅延型過敏症誘導剤の投与が所望され、そして殊にAIDSなどのHIV関連症状の治療における使用に適している種々の適用の使用に関する。
【0007】
(図面の簡単な説明)
本発明は、以下の図を参照してより十分に理解されるであろうが、これらは例示目的のためのみである。
図1a及び図1bは、本発明に従う例示の容器の設計図であり、
図2a及び図2bは、本発明に従う局所貼付剤の断面図を示す。
【0008】
(特定具体例の説明)
遅延型超感度誘導剤、例えばDNCBの昇温保存安定液状組成物及びそれの使用法が提供される。多くの具体例において、本発明の組成物は密閉された(sealed)容器に保存され、負荷(unload) されていない局所貼付製剤と共に、例えばキットの形で収容される。本発明の組成物の使用に際しては、負荷されていない局所貼付製剤に液状組成物を装着し、その製剤を局部に貼付する。本発明は、遅延型過敏症誘導剤の投与が所望され、殊にAIDSなどのHIV関連症状の治療における使用に適している種々の適用の使用に関する。
本発明を更に説明する前に、特定の具体例が変形され、それが本請求の範囲に含まれるので、本発明は、以下に述べる発明の特定の具体例に制限されるべきと理解されるものでない。また、採用された用語が特定の具体例を説明する目的のためであり、限定することを意図するものでないことも理解されるべきである。その代わり、本発明の範囲は、本請求の範囲によって確立されるであろう。
【0009】
本明細書及び請求の範囲に使用されている単数形の ”a”、 ”an” 及び ”the” は、文脈から明らかに他のことを意味していない限り、複数形を含む。特に断らない限り、ここで使用される全ての技術的、科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に共通的に理解されているものと同じ意味を有する。
ある値の範囲が示されている場合、その間に存在する値のそれぞれ(その範囲の上限と下限との間において、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、下限の1/10の単位にまで)、および、その言及された範囲における任意の他の言及された値または間に存在する値は本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立してそれらのより小さい範囲に含まれ得る。従って、そのような実施形態もまた本発明に包含される。だが、そのような実施形態は、言及された範囲における何らかの特に含まれない限界に依存する。言及された範囲が上限、下限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる上限、下限のいずれかまたは両方を含まない範囲もまた、本発明においては含まれる。
ここに記載の全ての文献は、本記載発明に関連して使用されるかもしれない文献に記載されている組成物を記載及び開示の目的のための文献として、ここに合体される。
更に本発明を記述するに際して、昇温保存安定液状組成物の代表的具体例をまず、より詳細に記述し、ついで本発明の組成物の使用方法及び該組成物が使用される代表的用途のみならず、種々の容器及びそのキット形態について記述する。
【0010】
昇温保存安定DTH液状組成物
上に要約した通り、本発明は、遅延型過敏症誘導剤(DTH)の昇温保存安定液状組成物を提供する。”遅延型過敏症誘導剤(DTH)”は生体の免疫細胞の活性の増加によって、HIV患者のような対象における免疫学的応答を引き出す免疫調節剤を意味する。遅延型過敏症誘導剤はそれらがヒトの皮膚と接触したときにタイプ4過敏症を誘導する物質であり、それらは限定的でなく、
トリニトロベンゼンスルホン酸、クロロピクリン酸(PC)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)が挙げられる。多くの具体例のなかで、遅延型過敏症誘導剤はDNCBである。昇温保存安定液状組成物は、少なくとも約35℃、概して少なくとも38℃そして、しばしば少なくとも約40℃を超える温度で、長期間、例えば少なくとも約30日間、通常約90日間、少なくとも約180日間、そしてときには、少なくとも1年以上、例えば2.5年間、5年間などの長期間安定である液状組成物を意味する。該組成物は液状組成物であるので、それらは概して、約1から約1000cps、通常は約2から約500cps、そして更に通常は約2から約100cpsの範囲の粘度を有する。
【0011】
本発明の液状組成物は、上記の昇温保存安定性を備えた適切な溶媒中に存するそのDTH剤を含む。多くの例において、溶媒は非揮発性有機溶媒である。本発明の使用に適した代表的溶媒は、エステル型非揮発性有機溶媒及び水酸基または金属イオンを含有しない非揮発性有機溶媒である。エステル型非揮発性有機溶媒の代表的例は、限定的でなく、ジメチルトルアミド、クロタミトン及びパラフィンである。水酸基または金属イオンを含有しない非揮発性有機溶媒の代表的例は、限定的でなく、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル及びセバシン酸ジエチルである。上記の溶媒は、なお発見される溶媒を含め、上で言及されなかった多くの他の溶媒が本発明を実施するために利用されているいかなる態様で制限されると考えるべきでないと理解されるべきである。
本発明の液状組成物中のDTH剤の量は与えられた組成物の特定な溶媒及び/またはDTH剤の特定の型の性質に依拠して必然的に変わりうる。しかし、多くの例では、DTHの量は約0.01から約10.0%(w/w)、通常は約0.1から約5.0%(w/w)、そして更に通常は、約0.2から約3.0%(w/w)である。
【0012】
密封(sealed)容器
上に示したように、本発明の多くの例において、昇温保存安定DTH液状組成物は密封容器にいれられ、その容器中に液状組成物が、該組成物を収納している容器の外部の環境から、該組成物を阻止している収納エレメント(containment element) 中に存している。
該容器は液状組成物の単位用量または複数単位用量を収納していてよいが、多くの場合、概して単位用量を含んでいる。該容器が単用量容器である場合、容器中の液体の量は、概して約0.2mlから約5ml、通常は約0.3mlから約3.5ml、そして更に通常は約0.5mlから約2mlである。
容器が、例えば昇温(上記のような)下、そして種々の湿度、例えば約20%から95%、通常約30%から約80%(湿度)の条件下で保存された条件下、その容器に収納された液状組成物に対して、物質が不活性である限り、該容器は種々の異なった物質から構成されていてもよい。適切な物質の例は、限定的でなく、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(ポリエチレン(PET)やポリプロピレン(PET)など)などのポリマーまたはプラスチック、などである。上記の物質の例は例示であり、いかなる態様においても限定的であると意図したものでないと理解されるべきである。
上記の通り、該容器はいかなる形を有するよう構成されてもよく、その場合に、本発明の容器は、容器の内容物が外部の空気との接触を阻止し、そして長期間密封状態を維持できる容器を提供するよう代表的にデザインされる。
【0013】
図1a(正面図)及び1b(側面図)には、本発明の容器の1態様が示されている。図1a及び1bに示されている通り、容器10は概して筒状部15と取り外し自在シール器20(キャップなど)を有する。取り外し自在シール器は筒状部15と一体として形成されていてもよく、その場合シール器20はひねるか、カットすることにより、除去されてよい。別に、取り外し自在シール器20が筒状体の1部分に分離可能で、噛み合わせるように、例えばねじ山を付けて、液体遮断及び空気遮断シールを提供する。
取り外しできるシール器20に加えて、2次的シール器が固定して容器に取り付けられることが考えられ、その場合の2次的シール器は除去されうるように、または貫通されるように形成され、容器の内容物を放出する。その際に、2次的シール器が容器の内容と周囲の環境間の補足的または1次的空気遮断シールを提供する。
上に示したように、図1a及び1bに示した代表的容器は、単なる代表例であり、本発明をいかなる方法においても制限するものではない。
【0014】
キット
少なくとも上記の昇温に敏感なDTH液状組成物を含むキットが提供される。その際に多くの例において、該液状組成物が、上記の通り、密封容器中に存する。該液状組成物に加えるに、本発明のキットの多くの代表例には、また非負荷局所貼付製剤を含む。
該非負荷局所貼付剤は種々の異なった形状を取りうるが、しかし典型的には、少なくともDTH液状組成物を保持するための液体貯留層と該貼付剤が一旦局所に貼付された場所に貼付剤を維持するための粘着層を含む。
該液体貯留層は貯留し、そして許容される態様で液状DTH組成物を徐々に放出しうる都合よい物質から作成されてよい。液体貯留層は少なくとも約0.1ml、通常は少なくとも1ml、時には約5mlのDTH組成物の量を一般的に保持しうる。液体貯留層は、いかなる都合よい物質から作成されてよく、その代表的物質は、限定的でなく、ガーゼ、例えばPET(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等の非織布である。
上に示したように、非負荷局所貼付製剤は更に、粘着層を含んでよく、その際の粘着層は、貼付剤が使用中に貼付されている主題の適用箇所に局所貼付剤を固定するに役立つ。粘着層は上記の粘着機能を有する限り、多数の異なった物質から作成されてよく、その際の、代表的物質は、限定的でなく、例えばスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、などの外用製剤に通常使用されている高分子接着剤である。
【0015】
図2a(表面図)及び2b(側面図)には、本発明のキットに存しうる非負荷局所貼付製剤の具体例が示されている。図2a及び2bに示されているように、局所貼付剤50には、支持体52,粘着剤層54、液状組成物貯留層56及び剥離層58を含む。図2a及び2bに示した代表的局所貼付剤は、三角形または四角形の形状である。種々の層の面積は異なってよく、各層の代表的面積は以下の通りである。液体貯留層56に関しては、いくつかの例では、長さが約1cmから約7cm、しばしば約3cmから約6cmであり、幅が約1cmから約7cm、しばしば約3cmから約6cmであり、そして高さが約0.2mmから約1.2mm、しばしば約0.5mmから約6mmである。粘着層54に関して、いくつかの例では、長さが約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、幅が約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、そして高さが約0.01mmから約0.2mm、しばしば約0.03mmから約0.1mmであり、そして多くの例では、図2a 及び2b に示す通り、液体貯留層の縁を囲っている。
【0016】
支持体層52は、種々の異なったタイプの物質から作成されている。支持体層として利用される物質を選択するに際して、耐久性が考慮されるべきである。本発明に従う局所貼付剤は一般的に穏和な環境のみならず、過酷な(inhospitable) 環境での使用が意図される。対象の皮膚に適用後、局所貼付剤は厳しい環境に付してもよい。従って、そのような条件下に耐えられる物質がまた、望ましい。更に、支持体層52は、水抵抗性あるいは防水性である物質から作成されるべきであり、それにより、本発明の局所貼付剤を身につけながら、入浴、洗浄を使用者をして可能ならしめることができる。支持体層52は一般に、身体の動きにフィットしうる柔軟性物質から作成され、例えば、種々の非織布、織布、スパンデックス、フランネル、またはこれらの材料とポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、塩化ポリビニルフィルム、エチレン−ビニル酢酸共重合体フィルム、ポリウレタンフィルムなどとのラミネートが挙げられる。支持体層52に関しては、いくつかの例では、長さが約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、幅が約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、そして高さが約0.02mmから約1mm、しばしば約0.03mmから約0.3mmである。
【0017】
また図2bに示すように、液状DTH組成物を負荷する前に、液体貯留層を覆ってもよい剥離ライナーまたは保護層58が存する。その保護層58に関しては、いくつかの例では、長さが約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、幅が約3cmから約9cm、しばしば約5cmから約8cmであり、そして高さが約0.01mmから約0.5mm、しばしば約0.02mmから約0.2mmである。この層は上述の支持体物質を含め、都合よい物質から作成される。
保護層(示されていない)は剥離層の上に置かれていてもよく、その際に保護層は本発明の方法に従い局所貼付剤50の使用に先立ち除去される。従って、キットの局所貼付組成物は個々のポーチまたは類似の容器に存在してもよい。
局所貼付剤は公知の作成法で作成される。作成後局所貼付剤は包装容器に密封される。好適な包装材料の例はアルミニウム層あるいは汚染から局所貼付剤を保護する他のタイプの物質を含む包装材料である。望ましい例として、局所貼付剤が個々に包装されるが、大多数の局所貼付剤は単一の包装に密封されてもよい。
【0018】
本発明のキットの多くの例で、液状組成物/収納エレメント及び非負荷局所貼付剤エレメントが単一で容易に処理できる単位をつくるように、更にキット収納エレメントにパックされ、その際に、キット収納エレメント、例えば箱または類似物は、気密であってもなくてもよく、例えば使用まで貼付剤の組成物と液状組成物を更に保存する。
本発明のキットはまた、一般的に、使用のために局所貼付剤と液状DTH組成物を如何にして作成し、負荷させるかの指示、及び/または宿主に対する遅延型誘導剤の配送のための貼付剤をいかに使用するかの指示を含む。多くの例で、該指示は典型的には、使用のために如何にして局所貼付剤を作成するか、何処に局所貼付剤を貼付するか、投与スケジュールなどの情報を含む。いくつかの例では、本発明のキットは、特別な病状を治療するために貼付剤をDTH誘導剤と共にいかに使用するかの指示を含む。
【0019】
該指示は一般に適切な記録媒体または支持体に記録される。例えば、指示は紙、プラスチックなどの支持体に印刷してよい。従って、指示は、パッケージ挿入物としてキット中に、キットあるいはその組成物(包装またはサブ包装と共に)のラベリング中などに存してもよい。他の例で、指示は、例えばCD−ROM、デスケットなどの適切なコンピューターが読み取りできる貯蔵媒体に存在する電子貯蔵媒体として存在する。他の例として、キット中には、実際の指示が存在しないが、遠隔からの指示、例えばインターネットから指示を得る手段が提供される。この態様の例は、指示が閲覧できるウエブアドレス及び/またはそれから指示がダウンロードされるウエブアドレスを含むキットである。指示と共に、指示を得る手段が適切な基体に記録される。
【0020】
本発明の液状組成物の使用法
また、本発明の保存安定DTH液状組成物の使用法が提供される。一般に本発明の方法は、本発明の液状組成物を提供するステップと、ついでそれを必要としている対象、即ち患者に、液状組成物の十分または有効量を局所に適用するステップを含む。
多くの例で、例えば液状組成物が上述のキットの形で提供される場合、本発明の方法は局所貼付製剤を作成するステップとついでそれを必要としている対象、即ち患者に、局所貼付製剤を適用するステップを含む。これらの例において、局所貼付剤は、典型的にはまず液状DTH組成物を入れている容器を開け、ついでDTH液状組成物の十分量を非負荷局所貼付製剤の液体貯留域に堆積させることにより作成される。
図1a、b、及び2a、bに示めされる代表的形状に関して、これらの図に示めされている組成物から局所貼付剤を作成するための、最初のステップは、典型的には、存在しうる包装 (packing) から局所貼付剤を取り出し、ついで局所貼付剤から保護層58を取り除き、それにより液体貯留層を露出させる。保護層58は粘着層から保護層を剥がすことにより除去しうる。シール装置、例えばキャップは密封容器10から除去され、容器の内容物が局所貼付剤50の粘着層56貯留部に堆積される。上に示めしたように、液状組成物の十分量が適用され、その場合、多くの例で、適用される液体の量は、約0.3mlから約2ml、通常は約0.5mlから約1.5ml、そして更に通常は約0.6mlから約1mlである。2次シール装置が容器の開口部当たりに備え付けられている場合、使用者が適切な物を利用して、2シール装置に穴をあけるか、それを除去する、その際に容器の液状内容物が局所貼付剤50の貯留層に堆積されてもよい。液状組成物が一度貯留層に堆積されると、作成され、負荷された局所貼付剤はそれを必要とする対象に投与、例えば、対象、即ち患者の体の所望箇所に局所貼付剤を貼付してもよい。局所貼付剤は、腕やすねなどの目立たない場所に貼付してよい。
【0021】
上に示したように、本発明の方法は、DNCBなどのDTH誘導剤を必要とする宿主、即ち対象に、局所的に配送する方法である。”局所的配送”とは、皮膚を通して配送、吸収されることを意味する。DTH誘導剤を宿主に局所的に投与するために負荷された局所貼付剤を使用する場合に、局所貼付剤は、上記のように、本発明に従う局所貼付剤を作成後、皮膚に貼付される。
該貼付剤は、通常の如何なる局所部に適用してよい。局所部位は、限定的でなく、腕、すね、胴などが挙げられる。貼付された局所貼付製剤で覆われた表面は、投与薬の所望量が十分に供給されていなければならない。多くの例では、約1から200cm、多くの例で約10から100cm、通常約20から50cm、例えば25cmである。本発明の方法を実施するには、単回あるいは複数回、局所貼付剤は与えられた期間、例えば病気の期間、貼付されてよく、そして治療される。その際に与えられた期間にわたって複数の貼付剤が投与される投与スケジュールは日ごと、週ごと、2週ごと、月ごと、などでよい。
局所貼付剤は患者にDTHの有効または治療量を配送するに十分な期間皮膚との接触が継続される。多くの例では、剤の所望量を配送するに必要な期間は短く、一般的には約6時間を超えなく、例えばせいぜい約60分、1時間、30分を含むせいぜい3時間、そしてある場合には、15分を超えない。該製剤が適用部位に継続されている期間は、組成物の性質及び対象、例えば活性剤に対する感受性に依拠するが、しかし一般的には少なくとも約1分間、そしてしばしば少なくとも5分間である。
【0022】
有用性
上述の液状組成物、それから作成された貼付剤及びそれの使用法はDTH誘導剤の宿主への局所投与が所望されている如何なる応用における使用に関する。一般的にそのような宿主とは、”ほ乳動物”または”ほ乳類類”であり、これらの用語は広義に使用され、食肉目(犬、猫)、けっし目(マウス、モルモット、ラット)、霊長目(ヒト、チンパンジー、サル)を含むほ乳類綱に入る。多くの例では、宿主はヒトである。
多くの例では、本発明の方法は病状の治療における使用に関する。治療とは、少なくとも宿主を苦しめている病状に伴う症候の改善を意味し、その際の改善は広義に使用され、例えばウイルス負荷あるいはそれに伴う副作用などの治療される病状に伴う症候などの少なくともパラメーターの大きさの減少に関係して使用される。従って、治療はまた、病状がまたは少なくともそれに伴う症候が完全に阻害、例えば発生の阻害、または宿主が最早病気状態に罹っていないように、または少なくとも病気状態を特徴づける症候を停止、例えば終結される状態を含む。従って治療には、病気状態の治療とその管理の両方を含む。
【0023】
多くの例で、本発明の方法に従い治療される病気状態は慢性病状である場合である。該慢性病状は、限定的でなく、慢性疲労症候、全身性エリトマト−デス、癩病、リーシュマニア症、そしてサイトメガロウィルス、カンジダ、クリプトコッカス、ニューモシスティスなどの様な例えばウイルス、細菌などの細胞内病原物の存在に伴う疾患が挙げられる。
特別な関心は、免疫無防備症状及び特に、AIDSなどのHIV関連症状の、例えば管理 (management) などの本発明の治療方法の使用にある。HIV関連病の背景の治療は、例えば日和見感染などの、1つ以上の症候の軽減を通じての生活環境基準の改善である。HIV症状に関連した定量しうるパラメーターによって、本発明はウイルス負荷(代用薬 Surrogate maker) の減少及び/またはナチュラルキラー細胞数の増加への使用に関し、一方CD4(代用薬 Surrogate maker)細胞及びCD8細胞の少なくとも1つの細胞の数の変更を伴う。定量化しうるパラメーターのそのような変化は長さで15分を超えない適用回数で達成しうる。
以下の実施例及び比較例は例示であって、限定を目的とするものではない。
【0024】
(実験)
実施例及び比較例を以下に挙げるが、製造法はこれにより限定されない。
I.実施例
A.実施例1: 10%DNCB/ミリスチン酸イソプロピル溶液
DNCB(20g)をミリスチン酸イソプロピル(180g)(w/w)に均一に溶解し、生じたDNCB液状組成物をTPL−419アルミニウムチューブ(容量:2g、内部層:ポリアミド−イミド、竹内プレス工業、日本)に2gずつ入れ、完全に密封(sealed)し、40℃、湿度75%の恒温槽で保管した。
【0025】
B.実施例2: 0.02%DNCB/ミリスチン酸イソプロピル溶液
DNCB(0.04g)をミリスチン酸イソプロピル(199.96g)(w/w)に均一に溶解し、生じたDNCB液状組成物をTPL−419アルミニウムチューブ(容量:2g、内部層:ポリアミド−イミド、竹内プレス工業、日本)に2gずつ入れ、完全に密封し、40℃、湿度75%の恒温槽で保管した。
【0026】
C.実施例3: 10%DNCB/クロタミトン溶液
DNCB(20g)をクロタミトン(180g)(w/w)に均一に溶解し、生じたDNCB液状組成物をTPL−419アルミニウムチューブ(容量:2g、内部層:ポリアミド−イミド、竹内プレス工業、日本)に2gずつ入れ、完全に密封し、40℃、湿度75%の恒温槽で保管した。
【0027】
D.実施例4: 0.02%DNCB/クロタミトン溶液
DNCB(0.04g)をクロタミトン(199.96g)(w/w)に均一に溶解し、生じたDNCB液状組成物をTPL−419アルミニウムチューブ(容量:2g、内部層:ポリアミド−イミド、竹内プレス工業、日本)に2gずつ入れ、完全に密封し、40℃、湿度75%の恒温槽で保管した。
【0028】
II.安定性
安定性試験は実施例ごとの3種のサンプルサイズについて行った。実験は40℃、湿度75%の環境下行った。結果を表1に頭所の値に対する相対的%で示す。
【表1】

【0029】
III.考察
上記の表1に基づくと、各実施例について、40℃でのDNCBを含有する液状組成物の適切な安定性が保証される可能性が示されている。表1が10%及び0.02%の両方の濃度で良好な安定性が得られ、従ってその安定性はDNCBの濃度に依存しないことを示している。従って、このことは本発明に従うDNCB貼付製剤がアフリカなどの熱帯地方や国で使用できることを可能にしている。更に、本発明に従い作成された局所貼付剤を患者の皮膚に短期間適用することにより、患者の生活様式を変更することなく、AIDSの治療を可能にし、従って該患者が健常ヒトと全く同じ生活様式をおくることができる。更に、他のHIV治療薬との併用もまた全く可能である。DNCBの副作用についての研究はしばらくの間行われ、そして発癌性などの生活を脅かす副作用の事例の報告が今日までない。更に、本発明のDNCB水−可溶性局所貼付剤は1週間に1度だけ貼付すると、1人当たり年間およそ600.0ドルの支出で治療が可能となり、そして本発明の貼付剤をして他のHIV治療薬剤より安価し、かつまた、発展途上国にそれを使用することが可能である。
【0030】
本発明がDTH誘導剤の配送に多くの利点を提供することが上記の結果と議論から明らかである。本発明の液状保存安定液状組成物及びそれを含むキットが広く異なった環境で使用するための局所DTH製剤を提供するための能率的、効果的方法を提供する。本発明の製剤がAIDSを含め多くの症状の低費用での治療方法を表す。従って、本発明はその技術への多大な貢献を表す。
本明細書で引用する全ての刊行物と特許は、あたかも各刊行物と特許が特別に、そして個別に引例と共に合体されると指示したかのように、ここで引例と共に合体される。
如何なる刊行物の引用は出願前の開示に関してであり、本発明は先行発明の理由でそのような刊行物に先行する権利を有さないということを認めていると解釈されるべきでない。
上記の発明は理解の明快さのために例示などの方法である程度説明されているが、いくつかの変更、修正が添付の請求の範囲の範囲または精神を逸脱することなくそこになされたことは、この発明の教示に照らし、当業者にとって容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に従う例示の容器の設計図を示す。
【図2】本発明に従う局所貼付剤の断面図を示す。
【符号の説明】
【0032】
10;容器
15;筒状部
20;シール器
50;局所貼付剤
52;支持体
54;粘着剤層
56;液状組成物貯留層
58;剥離層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物であって、該遅延型過敏症誘導剤が約40℃以上の温度で、該遅延型過敏症誘導剤に対して実質的に不活性な非揮発性有機溶媒中に存する該組成物。
【請求項2】
該遅延型過敏症誘導剤が1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)である請求項1に記載の保存安定液状組成物。
【請求項3】
該溶媒が水酸基を含まない溶媒である請求項1に記載の保存安定液状組成物。
【請求項4】
該溶媒が金属イオンを含有しない溶媒である請求項1に記載の保存安定液状組成物。
【請求項5】
該溶媒がエステルである請求項1に記載の保存安定液状組成物。
【請求項6】
該溶媒がアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ジメチルトルアミド、クロタミトン及びパラフィンから選択される溶媒である請求項1に記載の保存安定液状組成物。
【請求項7】
該組成物が密封 (sealed) 容器中に存する請求項1の保存安定液状組成物。
【請求項8】
該液状組成物が約40℃以上の温度で、少なくとも約100日間安定である請求項7に記載の保存安定液状組成物。
【請求項9】
該液状組成物が約40℃以上の温度で、少なくとも約1年間安定である請求項8に記載の保存安定液状組成物。
【請求項10】
約40℃以上の温度で遅延型過敏症誘導剤に対して実質的に不活性な非揮発性有機溶媒中に存する該遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物を入れた密封(sealed) 容器。
【請求項11】
該容器が単位用量容器である請求項10に記載の密封容器。
【請求項12】
該容器が該液状組成物に実質的に不活性な物質を含む請求項10に記載の密封容器。
【請求項13】
該実質的に不活性な物質が金属性物質である請求項12に記載の密封容器。
【請求項14】
該実質的に不活性な物質が重合体物質である請求項12の密封容器。
【請求項15】
該容器が形状において概して筒状で、可動性シール器を有する請求項10に記載の密封容器。
【請求項16】
遅延型過敏症誘導剤の局所製剤を製するためのキットであって、
(a) 約40℃以上の温度で該遅延型過敏症誘導剤に対して実質的に不活性な非揮発性有機溶媒中に存する遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物
及び
(b) 液状組成物貯留領域を有する非負荷局所貼付製剤
を含む該キット。
【請求項17】
該液状組成物が密封(sealed) 容器の中に存する請求項16に記載のキット。
【請求項18】
該密封容器が単位用量容器である請求項16に記載のキット。
【請求項19】
遅延型過敏症誘導剤が1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)である請求項16に記載のキット。
【請求項20】
該局所貼付製剤が
(a) 支持体;
(b) 粘着層;及び
(c) 該液状組成物貯留領域
を含む請求項16に記載のキット。
【請求項21】
該キットが更に指示(instructions)、または支持体上に記録された同一物を得るための手段を含み、該指示は該液状組成物を該非負荷局所貼付剤の該液体貯留領域に装着することによって局所貼付製剤を作成するためのものである、請求項16に記載のキット。
【請求項22】
使用のための局所貼付剤の作成方法であって、該方法が、
(a) 約40℃以上の温度で該遅延型過敏症誘導剤に対して実質的に不活性な非揮発性有機溶媒中に存する遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物を提供し、そして
(b) 使用のための該局所貼付製剤を作成するために非負荷局所貼付製剤の液状組成物貯留領域に、該液状組成物を装着することを含む方法。
【請求項23】
該提供ステップ (a) が該液状組成物の密閉容器を提供し、該容器を開封
することを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該方法が更に、保護容器から該非負荷局所貼付剤を取り出すことを含む請求項22の方法。
【請求項25】
該容器及び該非負荷局所製剤がキット収納エレメント(containment element)中にある請求項23に記載の方法。
【請求項26】
遅延型過敏症誘導剤の局所貼付剤を対象に投与する方法であって、該方法が
(a) 請求項22に記載の方法に従い局所貼付剤を作成し;そして
(b) 該作成された局所貼付剤を、対象に局所的に投与することを含む方法。
【請求項27】
請求項16に記載のキットの作成法であって、該方法が
(a) 約40℃以上の温度で該遅延型過敏症誘導剤に対して実質的に不活性な非揮発性有機溶媒中に存する遅延型過敏症誘導剤の昇温保存安定液状組成物を作成し、
(b) 該作成した液状組成物を容器にいれ、密封し、該液状組成物が充填された密封 (sealed) 容器を作成し、そして
(c) 該密封容器と非負荷局所貼付製剤をキット収納エレメント(containment element)に入れ、該キットを作成することを含む方法。

【公表番号】特表2006−505586(P2006−505586A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546769(P2004−546769)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/030758
【国際公開番号】WO2004/037314
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【Fターム(参考)】