説明

遊動型コネクタ

【課題】サイズの大型化を伴うことなく、十分な強度向上がなされた遊動型コネクタを提供する。
【解決手段】補強部材40は、金属板材から成ると共に、奥行方向Dに延びるようにガイド部12に埋設された第1の板部41と、第1の板部41の奥行方向Dの一端から幅方向Wの内側向きに延びるようにガイド部12に埋設された第2の板部42とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、特に、固定ハウジングに可動ハウジングが遊動自在に連結された遊動型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遊動型コネクタは、相手側コネクタが多少位置ズレした状態で挿入されて来たとしても、相手側コネクタの位置に応じて可動ハウジングが遊動して位置ズレを吸収し、正常な嵌合および電気接続を奏することができる。
【0003】
遊動型コネクタの用途としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器本体内の基板に実装され、その電子機器に取り出し可能に装填されるディスクドライブ装置等のリムーバブルユニットに備えられた相手側コネクタと嵌合および電気接続をなすために用いられる。
【0004】
この種の遊動型コネクタは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
図11を参照すると、特許文献1に開示された遊動型コネクタは、相手側コネクタ(図示せず)の挿抜方向に平行な奥行方向Dならびに奥行方向Dにそれぞれ直交する幅方向Wおよび高さ方向Hを持っている。この遊動型コネクタは、実装対象としての基板(図示せず)に固定される固定ハウジング610と、可撓性を持ち、幅方向Wに複数個並列保持されたコンタクト630(一部分のみ図示)を介して、高さ方向Hに遊動自在に固定ハウジング610に連結された可動ハウジング620とを有している。可動ハウジング620は、被ガイド部(孔部)622を備えている。一方、固定ハウジング610は、孔部622の幅方向Wおよび奥行方向Dの位置を規制しつつ可動ハウジング620の高さ方向Hにおける遊動を案内するガイド部(柱部)612を備えている。
【0006】
ここで、遊動型コネクタにおいては、コンタクトの数量(ピン数)に応じて、可動ハウジングの幅寸法が大きく、また、その重量も増えることになり、固定ハウジングのガイド部に負荷がかかり、遊動型コネクタをある程度の期間使用していくとクラックが生じる虞がある。このため、固定ハウジングと、これに併せて可動ハウジングの材料を、ガラス繊維入りの樹脂として強度を確保する策が採用されることがある。
【0007】
さらに、ガラス繊維入りの樹脂から成るハウジングの採用に加え、固定ハウジングのガイド部をさらに補強すべく、補強部材を固定ハウジングのガイド部に設ける策が採用されることがある。例えば、図11に示された遊動型コネクタは、固定ハウジング610のガイド部612を補強するために、補強部材(金属ピン)640を有している。補強部材640は、ガイド部612の内部を高さ方向Hに貫通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−318763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
遊動型コネクタの用途が、前述したごとくリムーバブルユニット等の電気接続の場合には、ドライブ装置等のリムーバブルユニットは通常、大きく、重いものが多く、相手側コネクタとの嵌合時に、固定ハウジングのガイド部の特に奥行方向に、大変大きな負荷がかかることが想定される。
【0010】
この実情に対し、図11に示されたものをも含め、従来の遊動型コネクタは、補強部材が金属ピンから成っているため、その直径をかなり太いものとしなければ、必ずしも強度が十分とはいえなかった。しかし、十分な強度を確保するために金属ピンを大径化することは、遊動型コネクタ全体の大型化につながり、ひいては、遊動型コネクタが適用される電子機器の大型化をも招来する。
【0011】
それ故、本発明の課題は、サイズの大型化を伴うことなく、十分な強度向上がなされた遊動型コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、実装対象に搭載されて用いられる遊動型コネクタであって、前記実装対象に固定される固定ハウジングと、相手側コネクタとの挿抜方向に平行な奥行方向にそれぞれ直交する幅方向および高さ方向に遊動自在に、前記固定ハウジングに保持された可動ハウジングとを有し、前記可動ハウジングは、被ガイド部を備え、前記固定ハウジングは、前記被ガイド部の前記奥行方向の位置を規制しつつ前記可動ハウジングの遊動を案内するガイド部を備え、前記ガイド部を含む前記固定ハウジングを補強する補強部材をさらに有する遊動型コネクタにおいて、前記補強部材は、金属板材から成ると共に、前記奥行方向に延びるように前記ガイド部に埋設された第1の板部と、前記第1の板部の前記奥行方向の一端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記ガイド部に埋設された第2の板部とを含んでいることを特徴とする遊動型コネクタが得られる。
【0013】
尚、前記補強部材は、前記第1の板部の前記奥行方向の他端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記ガイド部に埋設された第3の板部をさらに含んでいてもよい。
【0014】
また、前記補強部材は、前記第1の板部の前記高さ方向の上端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記被ガイド部の上方に形成された第4の板部をさらに含んでいてもよい。
【0015】
さらに、前記補強部材は、前記固定ハウジングの前記高さ方向の下端から露出もしくは突出し、前記実装対象に接続される端子部をさらに含んでいてもよい。この場合、前記補強部材の前記端子部は、前記固定ハウジングの前記高さ方向の下端から突出し、板状の前記実装対象に形成された孔部を貫通して前記実装対象に設けられた接続部に接続されるように構成されてもよい。
【0016】
また、前記可動ハウジングは、可撓性を有し、前記幅方向に並列保持された複数のコンタクトを介して前記固定ハウジングに保持されるものであってもよい。
【0017】
さらに、前記可動ハウジングは、前記奥行方向に遊動自在に前記固定ハウジングに保持されるものであってもよい。
【0018】
さらにまた、本発明によれば、前記遊動型コネクタと、前記相手側コネクタとを有することを特徴とするコネクターシステムが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による遊動型コネクタは、サイズの大型化を伴うことなく、十分な強度向上がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1による遊動型コネクタを示す斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、ならびに(d)は、図1に示された遊動型コネクタの正面図、平面図、側面図、ならびに図2(a)における切断線2D−2Dに沿った拡大断面図である。
【図3】図1に示された遊動型コネクタにおける補強部材(左側用)を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)、および(c)は、図1に示された遊動型コネクタにおける補強部材(右側用)の正面図、平面図、および側面図である。
【図5】図1に示された遊動型コネクタが相手側コネクタと嵌合する前の状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示された遊動型コネクタが相手側コネクタと嵌合した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例2による遊動型コネクタを示す斜視図である。
【図8】図7に示された遊動型コネクタにおける補強部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例3による遊動型コネクタを示す斜視図である。
【図10】図9に示された遊動型コネクタにおける補強部材を示す斜視図である。
【図11】従来の遊動型コネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による遊動型コネクタは、相手側コネクタの挿抜方向に平行な奥行方向ならびに奥行方向にそれぞれ直交する幅方向および高さ方向を持っており、固定ハウジングと、可動ハウジングとを有している。固定ハウジングは、実装対象に固定される。可動ハウジングは、可撓性を持ち、幅方向に並列保持された複数のコンタクトを介して、高さ方向および幅方向に遊動自在に、固定ハウジングに保持されている。
【0022】
可動ハウジングは、被ガイド部を備えている。一方、固定ハウジングは、被ガイド部の奥行方向の位置を規制しつつ可動ハウジングの遊動を案内するガイド部を備え、ガイド部を含む固定ハウジングを補強する補強部材をさらに有している。
【0023】
本遊動型コネクタは特に、補強部材が、金属板材からなると共に、複数の板部を含んでおり、ガイド部に埋設されている。
【0024】
上記構成により、本遊動型コネクタは、サイズの大型化を伴うことなく、十分に強度が向上している。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明による遊動型コネクタの実施例を説明する。
【実施例1】
【0026】
図1〜図6を参照すると、本発明の実施例1による遊動型コネクタ1は、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器内の基板(図示せず)に実装され、電子機器に着脱される光ディスクドライブ装置等のリムーバブルユニット(図示せず)に設けられた相手側コネクタ200の挿抜方向に平行な奥行方向Dならびに奥行方向Dにそれぞれ直交する幅方向Wおよび高さ方向Hを持つように構成されている。
【0027】
本遊動型コネクタ1は、それぞれ樹脂材から成り、例えばガラス繊維入りの樹脂材が用いられる、固定ハウジング10と、可動ハウジング20とを有している。
【0028】
固定ハウジング10は、実装対象である電子機器内部の基板に実装面13(図2(d))が位置するように固定される。
【0029】
一方、可動ハウジング20は、可撓性を持ち、幅方向Wに沿って並列保持された複数のコンタクト30を介して、高さ方向Hに遊動自在に、固定ハウジング10に保持されている。
【0030】
尚、可動ハウジング20と固定ハウジング10との組み立て時のクリアランス分だけ、可動ハウジング20は奥行方向Dおよび幅方向Wのそれぞれに遊動自在に固定ハウジング10に保持されている。
【0031】
コンタクト30は、図2(d)に示されるように、基板の実装面に形成されたランド(図示せず)にハンダ付けされる端子部31と、本遊動型コネクタ1が相手側コネクタ200(図6参照)と嵌合したときに、相手側コネクタ200のコンタクトと電気的に接続する接触部32と、端子部31と接触部32との間に断面S字状に延在してバネ作用をなす中間部33とを備えている。
【0032】
可動ハウジング20は、奥行方向Dの前方にて、相手側コネクタ200の嵌合方向先端に形成された凹部(図示せず)に対応して形成され、相手側コネクタ200の嵌合を案内すべくテーパ状に突出した挿入ガイド部24が幅方向Wの両端に形成されていると共に、嵌合時に相手側コネクタ200の先端部が入り込む嵌合凹部23が形成されている。嵌合凹部23内では、図2(d)に示されるように、コンタクト30の接触部32が露出しており、嵌合時に相手側コネクタ200のコンタクトと接触するようになっている。
【0033】
また、可動ハウジング20は、幅方向Wの両端にて外側に向かって突出する矩形凸形状の被ガイド部22を備えている。一方、固定ハウジング10は、被ガイド部22に対応して幅方向Wの両端にて内側に開口した矩形凹形状のガイド部12を備えている。ガイド部12は、被ガイド部22の奥行方向Dおよび幅方向Wの位置を規制しつつ可動ハウジング20の高さ方向Hにおける遊動を案内する。
【0034】
さらに、固定ハウジング10は、ガイド部12を含む固定ハウジング10を補強する補強部材40を有している。
【0035】
補強部材40は、金属板材を、打ち抜き加工および曲げ加工を含むプレス加工を施して成ると共に、図3ならびに図4(a)〜(c)に示されるように、第1の板部41と、第2の板部42とを含んでいる。補強部材40はさらに、後に詳述する被固定部46と、第1の板部41と、46との間に延在する中間部45とを備えている。尚、図3の斜視図は本遊動型コネクタ1の幅方向Wの左側用の補強部材40を示し、図4の三面図は本遊動型コネクタ1の幅方向Wの右側用の補強部材40を示している。
【0036】
補強部材40は、その第1の板部41、第2の板部42、および中間部45が、固定ハウジング10のガイド部12に、例えば圧入することによって埋設されている。尚、補強部材40は、インサート成形によって固定ハウジング10のガイド部12に埋設されてもよい。
【0037】
ガイド部12に埋設された補強部材40において、第1の板部41は、奥行方向Dに延在している。一方、第2の板部42は、第1の板部41の奥行方向Dの前方端から幅方向Wの内側向きに延在している。即ち、第1の板部41および第2の板部42は、被ガイド部22を取り囲む平面視L字状をなすように、ガイド部12に埋設されている。尚、本発明において、第2の板部は、第1の板部の奥行方向の後方端から幅方向の内側向きに延在していてもよい。
【0038】
本遊動型コネクタ1は、上記のような補強部材40を有することにより、可動ハウジング20の遊動に伴う負荷や、遊動型コネクタ1の用途がリムーバブルユニット等の電気接続の場合に相手側コネクタ200との嵌合時に特に奥行方向Dにかかる大きな負荷を比較的集中して受ける固定ハウジング10のガイド部12について、「(第1の板部41の奥行方向Dの長さ)×(第2の板部42の幅方向Wの長さ)」の矩形断面を持つ四角柱状の補強部材を埋設した場合と同等あるいはそれに近い強度向上を図ることができる。その反面、補強部材40は板金材から成り、ガイド部12において被ガイド部22にL字状に沿った形状を呈しているため、無用なスペースを占有することなく、省スペースに配置され、遊動型コネクタ1の大型化、ひいては遊動型コネクタ1が適用される電子機器の大型化を招来することもない。このように、本遊動型コネクタ1は、サイズの大型化を伴うことなく、十分に強度が向上している。
【0039】
尚、第2の板部が第1の板部の奥行方向の前方端および後方端のどちらから幅方向の内側向きに延在していても強度向上を図ることができるが、第2の板部が第1の板部の奥行方向の後方端から延在するように構成した場合は、特に、相手側コネクタの挿入時の負荷に対して強度向上が図られる。一方、第2の板部が第1の板部の奥行方向の前方端から延在するように構成した場合は、特に、相手側コネクタの抜去時の負荷に対して強度向上が図られる。
【0040】
さらに、補強部材40は、図2(d)に示されるように、固定ハウジング10の高さ方向Hにおける下面から突出し、実装対象である電子機器の基板(図示せず)に形成されたスリットを貫通し得る被固定部46を備えている。基板のスリットを貫通した被固定部46は、基板の実装面の反対側の面上に、少なくともスリットの周囲に形成されたランド(図示せず)に被固定部46の端子部がハンダ付けされる。
【0041】
被固定部46が基板にハンダ付けされることにより、可動ハウジング20の遊動に伴う負荷や、遊動型コネクタ1の用途がリムーバブルユニット等の電気接続の場合に相手側コネクタ200との嵌合時に特に奥行方向Dにかかる大きな負荷に対し、本遊動型コネクタ1の固定ハウジング10の基板への実装強度が著しく向上される。
【0042】
被固定部46は、二股に割れた楔形状の端子部を呈している。これにより、本遊動型コネクタ1の基板への実装工程において、基板のスリットに端子部を挿入させ易いと共に、挿入後、ハンダ付けがなされるまでの間は遊動型コネクタ1が基板から脱落しないための仮止めの働きをなす。
【0043】
尚、端子部は、固定ハウジング10の下面から突出はせずに、露出しているだけであってもよい。この場合、端子部は、基板の実装面上に形成したランド(図示せず)にハンダ付けされる。また、端子部をハンダ付けするランドとして、基板上の配線パターンのうちのグランドパターンと電気的に同電位としてもよい。
【実施例2】
【0044】
本発明の実施例2の遊動型コネクタ1’は、補強部材の形状が実施例1と異なっている。このため、実施例1と同一または同様の構成や動作については、実施例1の図面および説明を援用的に参照することとし、以下の説明では詳細な説明を省略する。
【0045】
図7を参照すると、本発明の実施例2による遊動型コネクタ1’は、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器内の基板(図示せず)に実装され、電子機器に着脱される光ディスクドライブ装置等のリムーバブルユニット(図示せず)に設けられた相手側コネクタの挿抜方向に平行な奥行方向Dならびに奥行方向Dにそれぞれ直交する幅方向Wおよび高さ方向Hを持つように構成されている。
【0046】
本遊動型コネクタ1’は、それぞれ実施例1と同様にガラス繊維入りの樹脂材から成る、固定ハウジング10’と、可動ハウジング20とを有している。
【0047】
可動ハウジング20は、可撓性を持ち、幅方向Wに沿って並列保持された複数のコンタクト30を介して、高さ方向Hに遊動自在に、固定ハウジング10’に保持されている。
【0048】
また、可動ハウジング20は、幅方向Wの両端にて外側に向かって突出する矩形凸形状の被ガイド部22を備えている。一方、固定ハウジング10’は、被ガイド部22に対応して幅方向Wの両端にて内側に開口した矩形凹形状のガイド部12を備えている。ガイド部12は、被ガイド部22の奥行方向Dおよび幅方向Wの位置を規制しつつ可動ハウジング20の高さ方向Hにおける遊動を案内する。
【0049】
さらに、固定ハウジング10’は、ガイド部12を含む固定ハウジング10’を補強する補強部材40’を有している。
【0050】
補強部材40’は、金属板材を、打ち抜き加工および曲げ加工を含むプレス加工を施して成ると共に、図8に示されるように、第1の板部41と、第2の板部42と、第3の板部43と、被固定部46と、中間部45とを備えている。
【0051】
補強部材40’は、その第1の板部41、第2の板部42、第3の板部43、および中間部45が、固定ハウジング10’のガイド部12に、例えば圧入することによって埋設されている。尚、補強部材40’は、インサート成形によって固定ハウジング10’のガイド部12に埋設されてもよい。
【0052】
ガイド部12に埋設された補強部材40’において、第1の板部41は、奥行方向Dに延在している。また、第2の板部42は、第1の板部41の奥行方向Dの前方端から幅方向Wの内側向きに延在している。さらに、第3の板部43は、第1の板部41の奥行方向Dの後方端から第2の板部42と同様に幅方向Wの内側向きに延在している。即ち、第1の板部41、第2の板部42、および第3の板部43は、被ガイド部22を取り囲む平面視コ字状をなすように、ガイド部12に埋設されている。
【0053】
本遊動型コネクタ1’は、上記のような補強部材40’を有することにより、ガイド部12を含む固定ハウジング10’について、平面視L字状の補強部材40を有する実施例1の遊動型コネクタ1よりもさらなる強度向上がなされている。
【0054】
また、実施例1では、幅方向Wの左右に在るガイド部12それぞれに埋設する補強部材40として、左側用と右側用とで対称的な形状の別部品を用意しなければならなかったのに対し、実施例2の補強部材40’は、左右のガイド部12に対して同一形状の単一種類の部品(共通部品)を用意すればよく、大量生産に有用である。
【実施例3】
【0055】
本発明の実施例3の遊動型コネクタ1”は、補強部材の形状が実施例1、2と異なっている。このため、実施例1、2と同一または同様の構成や動作については、実施例1、2の図面および説明を援用的に参照することとし、以下の説明では詳細な説明を省略する。
【0056】
図9を参照すると、本発明の実施例3による遊動型コネクタ1”は、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器内の基板(図示せず)に実装され、電子機器に着脱される光ディスクドライブ装置等のリムーバブルユニット(図示せず)に設けられた相手側コネクタの挿抜方向に平行な奥行方向Dならびに奥行方向Dにそれぞれ直交する幅方向Wおよび高さ方向Hを持つように構成されている。
【0057】
本遊動型コネクタ1”は、それぞれ実施例1、2と同様にガラス繊維入りの樹脂材から成る、固定ハウジング10”と、可動ハウジング20とを有している。
【0058】
可動ハウジング20は、可撓性を持ち、幅方向Wに沿って並列保持された複数のコンタクト30を介して、高さ方向Hに遊動自在に、固定ハウジング10”に保持されている。
【0059】
また、可動ハウジング20は、幅方向Wの両端にて外側に向かって突出する矩形凸形状の被ガイド部22を備えている。一方、固定ハウジング10”は、被ガイド部22に対応して幅方向Wの両端にて内側に開口した矩形凹形状のガイド部12を備えている。ガイド部12は、被ガイド部22の奥行方向Dおよび幅方向Wの位置を規制しつつ可動ハウジング20の高さ方向Hにおける遊動を案内する。
【0060】
さらに、固定ハウジング10”は、ガイド部12を含む固定ハウジング10”を補強する補強部材40”を有している。
【0061】
補強部材40”は、金属板材を、打ち抜き加工および曲げ加工を含むプレス加工を施して成ると共に、図10に示されるように、第1の板部41と、第2の板部42と、第3の板部43と、第4の板部44と、被固定部46と、中間部45とを備えている。
【0062】
補強部材40”は、その第1の板部41、第2の板部42、第3の板部43、および中間部45が、固定ハウジング10”のガイド部12に、例えば圧入することによって埋設されている。尚、補強部材40”は、インサート成形によって固定ハウジング10”のガイド部12に埋設されてもよい。
【0063】
ガイド部12に埋設された補強部材40”において、第1の板部41は、奥行方向Dに延在している。また、第2の板部42は、第1の板部41の奥行方向Dの前方端から幅方向Wの内側向きに延在している。さらに、第3の板部43は、第1の板部41の奥行方向Dの後方端から第2の板部42と同様に幅方向Wの内側向きに延在している。即ち、第1の板部41、第2の板部42、および第3の板部43は、被ガイド部22を取り囲む平面視コ字状をなすように、ガイド部12に埋設されている。
【0064】
第4の板部44は、第1の板部41の高さ方向Hの上端から幅方向Wの内側向きに延びるように被ガイド部22の上方に形成されている。
【0065】
本遊動型コネクタ1”は、上記のような補強部材40”を有することにより、ガイド部12を含む固定ハウジング10”について、平面視L字状の補強部材40を有する実施例1の遊動型コネクタ1よりもさらなる強度向上がなされている。
【0066】
さらに、補強部材40”が、いわば天蓋またはリミッタとして機能する第4の板部44を備えているため、実施例3の遊動型コネクタ1”においては、可動ハウジング20の高さ方向Hの遊動時に、可動ハウジング20が上向きに過剰に変位することが制限される。これにより、可動ハウジング20が上向きに過剰に変位した場合に起こり得る、可動ハウジング20の支持手段としてのコンタクト30自体の変形、ならびに、固定ハウジング10”、可動ハウジング20それぞれにおけるコンタクト30の埋設箇所や、電子機器の基板におけるコンタクト30のハンダ付け箇所の破損が防止される。他方、可動ハウジング20の下向きの過剰な変位については、例えば実施例1の図2(d)を援用的に参照すれば分かるように、固定ハウジング10(固定ハウジング10”と見做す)における可動ハウジング20を収容する部分の収容部主面14に、可動ハウジング20の下面25が当接することによって制限される。
【0067】
尚、実施例3において、補強部材40”は実施例2の平面視コ字状の補強部材40’に第4の板部が付加された様な構造であるが、本発明においては、実施例1のごとく平面視L字状の補強部材40に第4の板部が付加された様な構造であってもよい。
【0068】
尚、以上説明した実施例1〜3において、補強部材は、平面状の第1の板部に対し、同じく平面状の第2の板部や第3の板部がほぼ直角に屈曲して連続している。しかし、本発明において、補強部材は、板金材から成ると共にコネクタの奥行方向に延びるようにガイド部に埋設された第1の板部と、第1の板部の奥行方向の端部から幅方向の内側向きに延びるようにガイド部に埋設された第2の板部や第3の板部とを含んでさえいれば、各実施例の形状に限定されるものではない。即ち、本発明における補強部材は、板部同士が曲面部分を介して連続していたり、あるいは、各板部が平面状ではなく曲面状を呈していてもよい。
【0069】
また、本発明による遊動型コネクタ1、1’、1”と、これに嵌合可能な相手側コネクタ200とを有するコネクターシステムは、相手側コネクタが多少位置ズレした状態で挿入されて来たとしても、相手側コネクタの位置に応じて可動ハウジングが遊動して位置ズレを吸収し、正常な嵌合および電気接続を奏することができることに加え、遊動型コネクタの特にガイド部を含む固定ハウジングが十分な強度を持っているため、仮に相手側コネクタがリムーバブルユニット等と共に強い挿入力で挿入されて来たとしても、固定ハウジングのガイド部や、遊動型コネクタの実装対象への実装箇所が破損することが軽減される。それにも拘わらず、本コネクターシステムは、全体として小型であり、省スペース搭載が可能であり、遊動型コネクタが適用される電子機器や、相手側コネクタが適用されるリムーバブルユニット等の小型化に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、幾つかの実施例を挙げて本発明について説明してきたが、本発明がその要旨から逸脱しない限りは、種々に変形可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1、1’、1” 遊動型コネクタ
10、10’、10” 固定ハウジング
12 ガイド部
13 実装面
14 収容部主面
20 可動ハウジング
22 被ガイド部
23 嵌合凹部
24 挿入ガイド部
25 下面
30 コンタクト
31 端子部
32 接触部
33 中間部
40、40’、40” 補強部材
41 第1の板部
42 第2の板部
43 第3の板部
44 第4の板部
45 中間部
46 被固定部
200 相手側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装対象に搭載されて用いられる遊動型コネクタであって、
前記実装対象に固定される固定ハウジングと、相手側コネクタとの挿抜方向に平行な奥行方向にそれぞれ直交する幅方向および高さ方向に遊動自在に、前記固定ハウジングに保持された可動ハウジングとを有し、
前記可動ハウジングは、被ガイド部を備え、
前記固定ハウジングは、前記被ガイド部の前記奥行方向の位置を規制しつつ前記可動ハウジングの遊動を案内するガイド部を備え、
前記ガイド部を含む前記固定ハウジングを補強する補強部材をさらに有する遊動型コネクタにおいて、
前記補強部材は、
金属板材から成ると共に、
前記奥行方向に延びるように前記ガイド部に埋設された第1の板部と、前記第1の板部の前記奥行方向の一端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記ガイド部に埋設された第2の板部とを含んでいることを特徴とする遊動型コネクタ。
【請求項2】
前記補強部材は、前記第1の板部の前記奥行方向の他端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記ガイド部に埋設された第3の板部をさらに含んでいる請求項1に記載の遊動型コネクタ。
【請求項3】
前記補強部材は、前記第1の板部の前記高さ方向の上端から前記幅方向の内側向きに延びるように前記被ガイド部の上方に形成された第4の板部をさらに含んでいる請求項1または2に記載の遊動型コネクタ。
【請求項4】
前記補強部材は、前記固定ハウジングの前記高さ方向の下端から露出もしくは突出し、前記実装対象に接続される端子部をさらに含んでいる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遊動型コネクタ。
【請求項5】
前記補強部材の前記端子部は、前記固定ハウジングの前記高さ方向の下端から突出し、板状の前記実装対象に形成された孔部を貫通して前記実装対象に設けられた接続部に接続される請求項4に記載の遊動型コネクタ。
【請求項6】
前記可動ハウジングは、可撓性を有し、前記幅方向に並列保持された複数のコンタクトを介して前記固定ハウジングに保持された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の遊動型コネクタ。
【請求項7】
前記可動ハウジングは、前記奥行方向に遊動自在に前記固定ハウジングに保持されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の遊動型コネクタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の遊動型コネクタと、前記相手側コネクタとを有することを特徴とするコネクターシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−20910(P2013−20910A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155723(P2011−155723)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】