遊技機
【課題】正規の構成部材であるか否かを確認できる識別部を備えた遊技機を提供する。
【解決手段】パチンコ機は、各種電子部品62,64が実装された制御基板60によって制御される。この制御基板60の表面には、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部90が設けられている。識別部90は、赤外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部96と、この赤外線検査部96の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層98とを備えている。
【解決手段】パチンコ機は、各種電子部品62,64が実装された制御基板60によって制御される。この制御基板60の表面には、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部90が設けられている。識別部90は、赤外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部96と、この赤外線検査部96の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層98とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不正防止対策が施された構成部材を備えた遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機に代表される遊技機は、遊技の進行を制御するための種々の制御基板を構成部材として備えている。これらの制御基板には、遊技内容に関わるプログラムやデータを記憶したROMが搭載されているため、不正なプログラム等が記憶されたROMと交換されることを防ぐことが肝要である。このため、遊技機では、ベース部材とカバー部材とからなる基板ケースに制御基板を収納している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の基板ケースでは、ベース部材とカバー部材とを係合手段を介して組み付けた後、ベース部材の側壁部分およびカバー部材の側壁部分に突出形成されたカシメ部を介して、締結方向へしか回転できないワンウェイネジ等によりベース部材とカバー部材とが分離不能に固定される。すなわち、このような構成の基板ケースでは、カシメ部を破断しない限り開封することができないから、不正な制御基板との交換を防止することができ、しかも破断時には痕跡が残るので、開封したことを認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−65791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年は不正行為者の不正行為が巧妙化しており、ベース部材側のカシメ部を傷付けることなくカバー部材側のカシメ部のみを破断して除去することで、ベース部材とカバー部材を分離して不正な制御基板に交換した後、別の基板ケースにおいてカバー部材側のカシメ部を傷付けることなくベース部材側のカシメ部のみを破断して除去することで得たカシメ部が残っている別のカバー部材を、カシメ部を残しておいた前記ベース部材に組み付けて再びワンウェイネジ等で固定することで、正規品を装うようにする不正行為が行われる場合がある。このように、制御基板を交換した基板ケースを構成するベース部材またはカバー部材の一方の部材に、別に用意した他方の部材を組み付ける不正行為においては、両部材の何れのカシメ部にも破断時の痕跡が残らないので、開封されたことを認識することができない。そこで、制御基板自体について、適正な電子部品が実装された正規品であるか否かを確認できることが求められている。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る遊技機に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、正規の構成部材であるか否かを簡単に確認できる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の遊技機は、
遊技機(10)を構成する構成部材(60)の表面に、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部(90,120,122,124,126,128)を備えたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、構成部材に向けて赤外線を照射することで、正規の構成部材であれば、識別部が赤外線領域で発光するのに対し、不正な構成部材に交換されていれば、基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、識別部によって発せられる赤外線を検出することで、赤外線を照射した構成部材が正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、赤外線または赤外線以外の光線をあてても、人の目で識別可能な態様で識別部が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の模倣を困難にすることができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記識別部(90)は、外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部(96)と、この赤外線検査部(96)の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層(98)とを備えたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、赤外線検査部が保護層で被覆されて保護されているので、例えば赤外線検査部を削り取って再利用する等の不正行為を困難にし得る。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記構成部材は、遊技機(10)の制御を担う制御基板(60)であり、
前記識別部(90)は、電子部品(62,63,64)の端子(63a,64a)を制御基板(60)に固定するハンダ(66)の溶融温度より高い耐熱性を有する耐熱樹脂層(92)を備え、
前記識別部(90)は、制御基板(60)に固定された電子部品(63,64)の端子(63a,64a)を固定するハンダ(66)を被覆するように設けられたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、構成部材である制御基板に固定した電子部品の端子を被覆するように、耐熱樹脂層を含む識別部が設けられいるので、ハンダを溶融させて電子部品を取り外す不正行為を困難にし得る。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記識別部は、前記構成部材としての制御基板に実装された電子部品の表面に配設されたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、前記構成部材としての制御基板に実装された電子部品の表面に識別部を配設することで、電子部品が正規品であるか否かを確認することができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記構成部材(60)には、前記識別部(90)が所定パターンで設けられたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、識別部による赤外線波長域の発光だけでなく、構成部材に現れる識別部による赤外線波長域の発光パターンによっても、正規品であるか否かを判別することができる。
【0012】
請求項6に係る発明では、前記構成部材は、遊技機(10)の制御を担う制御基板(60)であり、
前記制御基板(60)は、赤外線を透過可能な基板ケース(70)に収納され、
前記識別部(90)に対して赤外線を照射すると共に識別部(90)が発した赤外線を検出する検査装置(100,101)を該識別部(90)に対して位置決めするガイド部(78)が、制御基板(60)の識別部(90)に臨む基板ケース(70)の板面に設けられたことを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、基板ケースが赤外線を透過可能に構成されているので、基板ケースに制御基板を収納したまま検査装置で識別部による赤外線波長域の発光の有無を確認することができる。しかも、基板ケースには、検査装置をガイド部に合わせると識別部と位置決めされるので、検査装置による識別部の検出条件を一定にすることができ、より正確な真贋判定を行い得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る遊技機によれば、構成部材が正規品であるか否か簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施例に係るパチンコ機の正面図である。
【図2】実施例のパチンコ機の背面図である。
【図3】実施例の基板ケースの背面図である。
【図4】実施例の基板ケースの正面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】実施例の基板ケースを分解して示す概略斜視図である。
【図7】実施例の制御基板の固定面を示す要部拡大図である。
【図8】実施例の制御基板を実装面側から見た状態で示す概略斜視図であって、ROMおよびICチップを分解した状態である。
【図9】図7のB−B線断面図である。
【図10】図9のC部拡大図である。
【図11】(a)は、実施例の検査装置を示す概略側面図であり、(b)は(a)のX矢視図である。
【図12】実施例の検査装置の制御ブロック図である。
【図13】制御基板の固定面に設けられた識別部を示す説明図であって、赤外線検査部の配置パターンの変更例を示す。
【図14】(a)は、変更例の識別部を示す断面図であり、(b)は変更例の識別部の正面図である。
【図15】別の変更例の識別部を示す断面図である。
【図16】検査装置と識別部との関係の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る遊技機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。また、以下の説明において前・後および左・右とは、特に断りのない限り、図1に示すように遊技機を正面側(遊技者側)から見た場合において指称するものとする。
【実施例】
【0016】
(パチンコ機について)
図1および図2に示すように、実施例に係るパチンコ機10は、矩形枠状に形成されて遊技店の図示しない設置枠台に固定される固定枠としての外枠11の開口前面側に、遊技盤(図1参照)が着脱可能に保持された本体枠としての中枠14が開閉および着脱可能に組み付けられている。中枠14の前面側には、遊技盤30を透視保護するガラス板17を備えた装飾枠としての前枠16が開閉可能に組み付けられると共に、前枠16の下方にパチンコ球を貯留する下球皿20が開閉可能に組み付けられる。そして、前枠16の下部には、下球皿20の上側に位置して、パチンコ球Sを貯留する上球皿21が組み付けられており、前枠16の開閉に合わせて上球皿21も一体的に開閉するよう構成される。また、中枠14には、下球皿20の右側に位置するように回動操作可能なハンドル部材22が配設されており(図1参照)、該ハンドル部材22の回動操作によって中枠14の下部に設けられた球発射装置(図示せず)により上球皿21に貯留したパチンコ球が遊技盤30の遊技領域に向けて打ち出されるようになっている。
【0017】
(遊技盤について)
前記遊技盤30には、遊技領域が前面に設けられるベニヤ板や透明なアクリル板からなる板状本体の後側に配設した裏ユニットとも呼ばれる設置部材32に、各種図柄を変動表示可能な図柄表示部を有する図柄表示装置34が配設されている(図2参照)。遊技盤30には、図柄表示装置34の図柄表示部に対応する位置に前後に開口する表示開口部(図示せず)が開設され、該表示開口部に所要の装飾を施したセンター役物とも称される装飾部材(図示せず)が臨むようになっている。また、遊技盤30の所要位置には、パチンコ球Sの入賞により図柄表示装置34の図柄を変動開始させる始動入賞装置や、大当りの発生時に開放する特別入賞装置(何れも図示せず)等が配設されている。
【0018】
図2に示すように、パチンコ機10の裏側には、各種電気部品を制御する制御基板60を備えた制御装置40,42,44,46,48,50が配設されている。遊技盤30の後面に着脱可能に配設される図柄表示装置34の後面には、遊技盤30に設けられる可動演出装置(図示せず)や発光装置26や図柄表示装置34を制御したり、前枠16に設けられるスピーカ24や発光装置26等を制御する統括制御装置42が配設されている。また、図柄表示装置34の後面には、右側に偏倚した部位に設置された統括制御装置42の左側に、図柄表示装置34の表示を制御する表示制御装置44が配設されている。そして、統括制御装置42は、遊技盤30の後側に配設される主制御装置40に配線接続され、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。また、球通出案内部36の後面には、パチンコ機10の電源制御を行う電源装置46や、球発射装置を制御する発射制御装置48や、球通路ユニット38に配設した球払出装置39を制御する払出制御装置50や、外部端末に接続されるインターフェース基板52等が配設されている。なお、これらの各装置46,48,50,52は、主制御装置40に配線接続され、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。なお、実施例では、表示制御装置44と払出制御装置50との間に主制御装置40が配設されている(図2参照)。
【0019】
実施例のパチンコ機10は、該パチンコ機10を構成する所定の構成部材に、該構成部材を取り換えたりする等の不正行為の有無を識別するために、識別部90が付与されている。ここで、主制御装置40の主制御基板(制御基板)60に識別部90を設ける場合について、以下に説明する。主制御基板60は、統括制御装置42、電源装置46、発射制御装置48、払出制御装置50、インターフェース基板52等に信号を送るパチンコ機全体の制御を統括する重要な制御基板である。
【0020】
(主制御装置について)
図3〜図6に示すように、主制御装置40は、パチンコ機10の全体を制御する主制御基板60を基板ケース70に収納して構成される。図6に示すように、主制御基板60は、長方形の板状体であって、所要の回路パターンが形成されると共に、ROM(実施例ではCPUおよびRAMを内蔵した1チップROM)62やICチップ64等の電子部品および複数のコネクタソケットが後面(実装面60a)に設置されている(図6ではROM62とICチップ64のみ表示)。そして、コネクタソケットには、各種装置や他の制御装置46,48,50,52に接続する配線コネクタ(図示せず)が接続される。
【0021】
図8に示すように、ROM62およびICチップ64には、複数の端子62a,64aが本体の長手辺の夫々に並べて設けられており、ROM62は、これらの端子62aをROMソケット63に挿入して保持されている。ROMソケット63には、複数の端子63aが本体の長手辺の夫々に並べて設けられており、この端子63aの夫々を主制御基板60の厚み方向に貫通形成された端子孔61に後方から挿通し、主制御基板60の前面(固定面60b)に突き出た端子63aの夫々をハンダ66で固定するようになっている(図9参照)。同様にICチップ64は、端子64aの夫々を主制御基板60の端子孔61に後方から挿通し、主制御基板60の固定面60bに突き出た端子64aの夫々をハンダ66で固定するようになっている。実施例の主制御基板60では、ROM62(ROMソケット63)とICチップ64とが上下に並べて配置され、左右方向に並ぶ複数の端子62a,63a,64aの列(以下、単に端子列という)が左右方向に並んでいる。すなわち、主制御基板60の固定面60bには、4条の端子列63a,63a,64a,64aが上下の関係で並行配置されている。そして、実施例では、ROMソケット63の端子列63aとICチップ64の端子列64aに後述する識別部90が設けらている(図7または図9参照)。
【0022】
(基板ケースについて)
図3〜図6に示すように、基板ケース70は、設置部材32側に配置されるベース部材72と、このベース部材72の後側に組付けられるカバー部材80とから基本的に構成され、ベース部材72とカバー部材80との間に画成される収納空間70aに主制御基板60が収納される。主制御基板60は、実装面60aをカバー部材80の後述する板状部80aに対向させると共に、ROMソケット63やICチップ64等の電子部品の端子63a,64aがハンダ66で固定される固定面60bをベース部材72の後述する板状部72aに対向させた姿勢で、基板ケース70の収納空間70aに収納されている(図5参照)。また、基板ケース70は、収納空間70aに収納する主制御基板60の形状に合わせて長方形に形成され、長手を左右方向に延在させた姿勢で設置部材32の下部に着脱可能に取り付けられている(図2参照)。
【0023】
(ベース部材について)
前記ベース部材72は、赤外線を透過する透明な合成樹脂成形品であって、図6に示すように、主制御基板60の固定面60bに対向する長方形の板状部72aの上下および左の外周縁に、後方(カバー部材80側)へ向けて外壁部72bが立ち上がる略箱状に形成されている。ベース部材72には、上側の外壁部72bおよび下側の外壁部72bの内側に、所定間隔離間して夫々の外壁部72bと平行に内壁部72cが立設されて、上側の内外の壁部72b,72cの間および下側の内外の壁部72b,72cの間に、スライド溝73が夫々画成されている。また、ベース部材72では、右側の外周縁に内外の壁部72b,72cが形成されず、上下のスライド溝73,73の左端部が何れも開放している。
【0024】
上側の内外の壁部72b,72cの間には、板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されると共に、下側の内外の壁部72b,72cの間には、同じく板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されている(図5参照)。なお、ベース部材72において、上下の係止部74は、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。また、板状部72aの右端部には、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)の突片75,75が外方(右側方)に向けて延出して形成されている(図6参照)。更に、ベース部材72の左側の外壁部72bには、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)のベース側カシメ部76,76が外方(左側方)に向けて延出して形成されると共に、左側の外壁部72bにおける両ベース側カシメ部76,76の間に、ベース側連結部77が外方(左側方)に向けて延出して形成されている。
【0025】
前記ベース部材70には、板状部72aにおいて主制御基板60の固定面60bに設けられた識別部90に対向する部位にベース側ガイド部(ガイド部)78が設けられている(図3または図5参照)。実施例では、主制御基板60におけるROMソケット63の上下の端子列63a,63aおよびICチップ64の上下の端子列64a,64aの夫々に対応して識別部90が設けられ、主制御基板60の固定面60bに左右方向に延在する4条の識別部90の夫々に1対1の関係で対応して、ベース側ガイド部78が基板ケース70の板状部72aに設けられている。すなわち、板状部72aには、左右方向に延在する4条のベース側ガイド部78が上下の関係で並行するよう形成され(図7参照)、ベース側ガイド部78の左右方向の幅が対応する識別部90の左右方向の幅に合わせて設定されている。各ベース側ガイド部78は、前方に開放した溝状に形成されている(図5参照)。ベース側ガイド部78は、上下の側面が平行に形成されると共に、底面(後面)が基板ケース70に収納された主制御基板60の固定面60bと平行な関係で延在するよう形成されている。
【0026】
(カバー部材について)
前記カバー部材80は、透明な合成樹脂成形品であって、図5または図6に示すように、主制御基板60の実装面60aに対向する略長方形の板状部80aの上下および左右の外周縁の夫々に、前方(ベース部材72側)へ向けて外壁部80bが立ち上がる箱状に形成されている。なお、主制御基板60の実装面60a側に後述する赤外線検査部96を備えた識別部90を設けるのであれば、カバー部材80は赤外線を透過可能に構成される。カバー部材80の上下の外壁部80b,80bは、ベース部材72における上下のスライド溝73,73に夫々収容可能に設定されると共に、カバー部材80の左右の壁部80b,80bは、ベース部材72の板状部72aの左右方向の幅寸法と略同一に設定されている。すなわち、基板ケース70では、ベース部材72の上下の外壁部72bの内側にカバー部材80の上下の外壁部80bが臨む状態で、ベース部材72とカバー部材80とが組み付けられる。また、カバー部材80は、外壁部80bに囲まれた内側に主制御基板60を収納して、該主制御基板60に挿通するピンやネジ等の固定部材により主制御基板60を保持するよう構成される(図5参照)。
【0027】
前記カバー部材80の板状部80aは、主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の大きな主板面80aaと、該板状部80aの左上角部および右下角部に形成されて主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の小さな副板面80abとからなり、該副板面80abが主板面80aaより前側(ベース部材72側)に位置する階段状に形成されている(図6参照)。そして、板状部80aにおける副板面80abには、主制御基板60のコネクタソケット(図示せず)に対応してソケット開口80cが開設され、該ソケット開口80cを介して基板ケース70の外側に臨むコネクタソケットに配線コネクタ(図示せず)が接続される。なお、板状部80aにおける副板面abの外周縁には、後側に延出する規制壁81が形成されており(図6参照)、規制壁81は、ソケット開口80cの外側に臨むコネクタソケットに接続されている配線コネクタのコネクタソケットからの抜き外しを困難にして、不正行為者の配線コネクタに対する不正行為を抑制するよう機能する。
【0028】
前記カバー部材80には、板状部80aにおける主制御基板60のROM62に対向する部位に、前方(主制御基板60側)に向けて凹ませてカバー側ガイド部(ガイド部)88が形成されると共に、カバー側ガイド部88の前面(制御基板60側の面)に前方へ突出した保持片89が設けられている(図5参照)。保持片89は、主制御基板60をカバー部材80の前面に取り付けた際に、ROM62を位置決め保持するよう構成されている。カバー側ガイド部88は、主制御基板60の実装面60a側においてROM62またはROMソケット63に識別部90(赤外線検査部96)を設けた場合、後述する検査装置100による検査に際して該検査装置100を識別部90に対して位置決めするよう機能する。
【0029】
前記カバー部材80の上下の外壁部80b,80bには、左右方向に離間してベース部材72の係止部74と同数の切欠部82が形成されると共に、各切欠部82における右端の後端部には右方に延出する引掛部83が突設されている(図6参照)。引掛部83の左方への延出寸法は、切欠部82の左右寸法より小さく設定されており、引掛部83の延出端と切欠部82の左端との間には、係止部74の通過を許容する隙間が前側に開放するよう形成される。また、カバー部材80において、上側の外壁部80bの切欠部82および引掛部83と、下側の外壁部80bの切欠部82および引掛部83とは、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。実施例の基板ケース70では、ベース部材72に対してカバー部材80の上下の外壁部80b,80bを、対応するスライド溝73,73に対して各切欠部82の隙間が係止部74に対応する状態で収容した後、該ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各係止部74に対応する引掛部83が夫々係止して、ベース部材72にカバー部材80が組み付けられる。
【0030】
前記カバー部材80の右側の外壁部80bには、ベース部材72の各突片75と対応する位置に、該突片75が挿脱可能な挿通孔84が夫々形成されている(図6参照)。そして、カバー部材80の上下の外壁部80b,80bをベース部材72のスライド溝73,73に収容した状態で、各突片75に対して対応する挿通孔84が左方の整列位置に臨み、ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各挿通孔84に対応する突片75が挿通するよう構成される。
【0031】
前記カバー部材80の左側の外壁部80bには、ベース部材72の各ベース側カシメ部76と対応する位置にカバー側カシメ部85が外方(左側方)に向けて夫々延出して形成されている(図6参照)。そして、締結方向にしか回転操作できないワンウェイネジ(図示せず)によりベース側カシメ部76とカバー側カシメ部85とを締結することで、両カシメ部76,85が分離不能に固定される。すなわち、ベース側カシメ部76とカバー側カシメ部85とをワンウェイネジで一旦締結すると、両カシメ部76,85を破壊しなければ、ベース部材72とカバー部材80とを分離することができず、両者72,80の不正開放を非常に困難にしている。なお、ワンウェイネジを締結したカバー側カシメ部85には、ワンウェイネジを覆って操作不能とするキャップ85aが嵌め込まれる(図3参照)。カバー部材80の左側の外壁部80bには、両カバー側カシメ部85,85の間に、ベース部材72のベース側連結部77と対応するカバー側連結部86が外方(右側方)に向けて延出して形成される。なお、両連結部77,86は、図示しないネジ等の固定部材により固定される。
【0032】
(基板ケースの取り付け構造について)
前記基板ケース70の設置部材32への取付構造について簡単に説明する。基板ケース70は、ベース部材72における板状部72aの右側前面に設けられ、設置部材12の後面に設けた受部(図示せず)に引っ掛ける爪部72d(図4参照)と、カバー部材80における左側の外壁部80bの上部に設けられ、設置部材32の後面に設けた位置決めピン(図示せず)が挿通される位置決め孔が形成された取付部80dと、左側の外壁部80b中央に設けた固定部80eとを備えている。なお、固定部80eには、ナイラッチ等の取着具87が装着されている(図3参照)。そして、基板ケース70は、設置部材32の受部に爪部72dを引っ掛けると共に、設置部材32の位置決めピンを取付部80dの位置決め孔に挿入したもとで、固定部80eに装着されている取着具87を設置部材32に設けた図示しない保持孔に係合することで、設置部材32に対して着脱可能に組み付けられる。
【0033】
図5または図7に示すように、主制御基板60には、固定面60b側に識別部90が設けられている。識別部90は、端子列63a,64a毎に付与されており、端子列63a,64a全体を覆うように設けられている。ここで、実施例の主制御基板60の固定面60bには、ROMソケット63における上下の端子列63a,63aの夫々に対応して識別部90,90が設けられると共に、ICチップ64における上下の端子列63a,63aの夫々に対応して識別部90,90が設けられている。すなわち、主制御基板60の固定面60bには、左右方向に並ぶ端子列63a,64aに対応して左右方向に延在する識別部90が、上下の関係で4条設けられ、ROMソケット63の端子列63aと比べてICチップ64の端子列64aの左右幅が小さいので、ROMソケット63の端子列63aに対応する識別部90と比べてICチップ64の端子列64に対応する識別部90の左右幅が小さくなっている(図7参照)。図9または図10に示すように、識別部90は、耐熱性を有する合成樹脂からなる耐熱樹脂層92と、加熱により呈色する呈色部94と、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する赤外線検査部96と、この赤外線検査部96を覆う保護層98とから構成されている。
【0034】
図10に示すように、耐熱樹脂層92は、主制御基板60の前側に突出した端子63a,64aの周りを覆うように盛られて該端子63a,64aを主制御基板60に固定するハンダ66を少なくとも被覆するように設けられ、ハンダ66に対して識別部90の外方からアクセスできないように保護している。実施例では、耐熱樹脂層92が主制御基板60の固定面60bに突出する端子列63a,64aの全体を覆うように筋状に形成されている。耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化樹脂や湿気硬化樹脂を用いることができる。また、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリイミド、ポリシラン、オキセタン樹脂等の紫外線硬化樹脂や可視光硬化樹脂等の光硬化樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂としては、該樹脂の硬化に際して主制御基板60に熱等の影響を与えない紫外線硬化樹脂が好適であり、実施例ではアクリル系紫外線硬化樹脂とエポキシ系樹脂との混合体が用いられている。
【0035】
前記耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度よりも高い耐熱性を有している。耐熱樹脂層92の耐熱性とは、ハンダ66の溶融温度まで加熱しても被覆対象(ハンダ66)から人の指先で少なくとも剥離可能とならないことをいう。実施例で採用した前記樹脂であれば、ハンダ66の溶融温度である235℃〜250℃程度(例えば鉛含有ハンダであれば235℃、金−錫系ハンダであれば245℃程度)で加熱しても主制御基板60から剥離することが難しい。また、実施例の耐熱樹脂層92は、工具等によって衝撃等を加わえて無理やり剥がそうとしても、ひび割れて層状のまま剥離することができないよう構成される。更に、耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度を上回る温度まで加熱されり、該溶融温度程度で長時間加熱されたとしても、粘性が高い飴状になったり焦げたりする等の外観の変化や脆くなる等の変質をしてしまう。すなわち、主制御基板60のICチップ64等を取り換えた後に、剥離した耐熱樹脂層92を用いて端子列64aを再度被覆する再利用を行うことはできない。なお、耐熱樹脂層92は、ハンダ66を溶融するためのハンダゴテやドライヤ等の加熱手段の温度(340℃〜370℃)より高い耐熱性を有しているのが好ましく、加熱手段の温度よりも高い耐熱性を有していれば、加熱手段によってハンダ66を溶融させてICチップ64等の電子部品を取り外す行為を耐熱樹脂層92によってより確実に阻止できる。
【0036】
前記呈色部94は、ハンダ66の溶融温度よりも低い温度の加熱により呈色するよう構成されており、この呈色部94の色彩の変化によって識別部90(主制御基板60)に、不正な熱が加えられたか否かを目視により確認できるようになっている。ここで、呈色とは、加熱によって色が表れる発色や、加熱によって加熱前の色から他の色に変わる変色や、加熱によって加熱前の色が消える変色や、加熱によって加熱前と同じ色であっても色が濃くなったり薄くなったりする変色等、目視によって確認できる色彩の変化が起こることをいう。 実施例では、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂中に、加熱により呈色する呈色材が混入されて、耐熱樹脂層92が呈色部94として機能するようになっている。呈色部94は、パチンコ機10の通常の設置環境において季節変動やホール内温度の調節等によって変化する温度領域である常温域(例えば40℃以下)で呈色しないように構成され、ハンダ66の溶融温度である235℃〜250℃の温度まで加熱されると呈色するようになっている。すなわち、呈色部94は、常温域より高く、ハンダ66の溶融温度より低い温度で呈色するように設定され、例えば150℃〜200℃の範囲で呈色温度(呈色部94が呈色する温度)が設定されている。
【0037】
前記呈色部94を構成する呈色材としては、温度が元へ戻っても復色しない不可逆性のものと、温度が元へ戻れば復色する可逆性のものがあるが、不可逆性のものが望ましい。不可逆性の呈色材としては、Ni、Co、Pb、Ca、Ag、Mn、Fe等の重金属の有機金属塩や複塩を主成分として、所定温度で熱分解することで呈色するものを用いることができる。可逆性の呈色材としては、異分子間の電子授受(例えばラクトン型、ラクタム型などの染料とフェノール化合物との電子授受)を利用したものであって、例えばロイコ染料と顕色剤と溶媒との混合物を用いることができる。可逆性の呈色材としては、コレストリック型液晶をマイクロカプセルの殻に閉じ込めた結晶の分子配向性の変化を用いたものであったり、Hg、Ag、Cu、Pbなど重金属のヨウ化物、またはそれらの錯塩の結晶遷移を利用したものを採用することができる。
【0038】
図10に示すように、赤外線検査部96は、耐熱樹脂層92の表面に付与されており、赤外線の照射を受けて、目視できない赤外線波長域で発光(赤外線を発する)ようになっている。以下の説明において、赤外線検査部96に照射される赤外線を「入射赤外線」といい、入射赤外線によって赤外線検査部96から発せられる赤外線を「励起赤外線」という。実施例の赤外線検査部96は、所定波長域の入射赤外線によって励起されて入射赤外線と異なる特定波長域で発光するよう構成され、例えば赤外線検査部96は、800nmの入射赤外線に励起されて、1000nmの励起赤外線を発するようになっている。赤外線検査部96は、ZnSを母体とし、Nd等の発光中心をド−プした蛍光体や、WO4、P4O12、Mo4O16等の酸化物にNd等をド−プした蛍光体や、Ndの一部をY、Sc、La、Ce等で置換した蛍光体等で構成されている。なお、赤外線検査部96は、蛍光体を付着させるバインダとして、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を含んでいてもよく、このバインダは赤外線の透過を妨げるものではない。赤外線検査部96は、無色透明あるいは下地となる耐熱樹脂層と同色とされて、識別部90の外観に影響を与えないよう構成するのが望ましい。実施例では、赤外線検査部96が無色透明であって、識別部90において赤外線検査部96が付与されている部位と赤外線検査部96が付与されていない部位との見分けが付かないようになっている。なお、赤外線検査部96は、入射赤外線が照射されると当該入射赤外線を反射や吸収等して、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を返す構成であってもよい。
【0039】
前記赤外線検査部96は、ROMソケット63およびICチップ64の端子63a,64aに接触させないように、所定パターンで付与される。実施例の識別部90では、端子列63a,64a全体を被覆する耐熱樹脂層92の短手方向中央部に位置して、該耐熱樹脂層92の長手方向(端子列の並び方向)全体に亘って延在するパターンで赤外線検査部96が設けられている(図7または図10参照)。識別部90における赤外線検査部96のパターンは、後述する検査装置100による検査に際しての識別部90の読み取り方向に形成されている。実施例では、端子列63a,64aの並び方向に延在するベース側ガイド部78で案内して、検査装置100を該並び方向に沿って移動させつつ赤外線検査部96の読み取りを行うので、識別部90において端子列63a,64aの並び方向に延在する長手方向に赤外線検査部96のパターンが形成されている。
【0040】
前記保護層98は、赤外線検査部96を保護するコーティングであって、赤外線検査部96を少なくとも覆うように設ければよいが、実施例では耐熱樹脂層92を部分的に覆う赤外線検査部96とこの赤外線検査部96から露出した耐熱樹脂層92の所定部位とを保護層98で覆っている(図10参照)。保護層98は、赤外線を透過するよう構成され、外方から赤外線検査部96に照射される入射赤外線と、赤外線検査部96で発光される励起赤外線との何れも保護層98で変調することなく透過するようになっている。また、保護層98は、無色透明であり、呈色部94の呈色変化を保護層98を介して目視可能になっている。ここで、保護層98は、耐熱樹脂層92と同じ合成樹脂で構成されている。
【0041】
(検査装置について)
次に、パチンコ機10を構成する構成部材である主制御基板60の適否を検査する検査装置100について説明する。図11または図12に示すように、検査装置100は、識別部90が設けられた主制御基板60に入射赤外線を照射する照射部104と、赤外線検査部96が発する励起赤外線を検知する検知部106と、この検知部106で検知された励起赤外線を予め設定された照合基準と照合する照合部108と、この照合部108の照合結果に基づいて所定の情報を外部に報知する報知部112とを備えている。なお、検査装置100の検査対象となる識別部90は、赤外線検査部96を備えている。また、検査装置100は、検査者が指先操作可能な操作部114を備え、この操作部114の操作によって照射部104による入射赤外線の照射または照射停止を操作し得るようになっている。
【0042】
図11に示すように、検査装置100は、携帯可能なサイズのハウジング102に、照射部104、検知部106、照合部108、報知部112および操作部114が設けられてユニット化されており、検査者が検査装置100を持ち運んで、例示した主制御基板60だけでなくパチンコ機10における任意の構成部材を検査し得るようになっている。なお、実施例のハウジング102は、細長い角柱状のペン型に形成されている(図11参照)。検査装置100は、照射部104および検知部106が、ハウジング102における一方の先端面(検査先端部103という)側に臨むように設けられ、検査装置100は、検査先端部103を主制御基板60(検査対象)に向かい合わせて検査を行うようになっている。なお、検査装置100は、検査先端部103の角部が円弧状に面取りされている。
【0043】
前記照射部104は、入射赤外線を検査対象に対して照射するものであって、例えば発光ダイオードが用いられる。実施例の照射部104は、赤外線検査部96が反射・吸収・発光させることができる一定波長域の入射赤外線を、操作部114のON操作に基づいて連続的に照射するよう構成され、操作部114のOFF操作により照射を停止するようになっている。
【0044】
前記検知部106は、ハウジング102における照射部104が臨む面と同じ面に臨むように設けられ、照射部104から照射された入射赤外線によって励起された赤外線検査部96の励起赤外線を検知するようになっている。検知部106としては、フォトダイオード、フォトトランジスタあるいはCCD等を用いることができ、実施例では検知部106としてフォトダイオードが採用されている。また、検知部106は、赤外線検査部96が発する特定波長域の赤外線だけを透過するフィルタ106aが設けられて、検知部106は該特定波長域の赤外線を検知するよう構成されている。ここで、照射部104から照射した入射赤外線が赤外線検査部96以外の部位で反射や吸収(変調)されることで、照射した入射赤外線の波長のまま等、赤外線検査部96が発する特定波長域以外の赤外線が、検査対象から返ってくることが考えられる。実施例の検知部106のように、照射部からの入射赤外線(例えば800nm)に励起されて赤外線検査部96が発する特定波長域(例えば1000nm)だけを検知するよう構成することで、赤外線検査部96以外を検知してしまう誤検知を防止できる。
【0045】
前記照合部108は、検知部106と電気的に接続されており(図12参照)、検知部106から励起赤外線の検知信号が入力されるようになっている。照合部108は、フィルタ106aによって透過された特定波長域の励起赤外線の検知受光強度を数値化する変換手段109と、照合基準が設定・記憶され、変換手段109で数値化された検知信号値と照合基準とを比較して適否を判断する比較判定手段110とを備えている。実施例の比較判定手段110には、適正な赤外線検査部96を備えた識別部90が付与された主制御基板60に対して基板ケース70のベース側ガイド部78で位置決めして適切な距離および位置で照射部104から入射赤外線を照射した際に、検知部106で検知されるべき受光強度の検出信号の値(設定受光強度)が、赤外線検査部96の付与量の変動や照射部104における入射赤外線の照射強度のばらつき、入射赤外線の安定度、基板ケース70による減衰等を考慮した所定の幅を持たして記憶されている。比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であれば、報知部112に良判定信号を出力する。これに対し、比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値を下回れば、報知部112に対して何も信号を出力しない。また、比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であっても、予め比較判定手段110に設定された所定の上限値(上限値>設定受光強度)よりも検知受光強度が高ければ、報知部112に対して何も信号を出力しない。
【0046】
前記報知部112は、LED等からなる発光手段112aと音出力手段112bとを備え、正常および異常の少なくとも一方の情報を、光と音との両方によって報知し得るよう構成されている。報知部112は、比較判定手段110から良判定信号が入力されると、発光手段112aが発光すると共に、ビープ音等の機械音や音声等が音出力手段112bから出力され、検査者は報知部112による光および音の報知によって検査対象が正規品であると判断できる。これに対して、報知部112は、比較判定手段110から良判定信号が入力されないと、発光手段112aを消灯すると共に音出力手段112bから何も出力されないので、検査者は報知部112の無反応により検査対象が正規品ではないと判断できる。
【0047】
前記検査装置100は、検査先端部103の一辺の幅が基板ケース70に形成されたベース側ガイド部78の短手方向(端子列63a,64aの並び方向と交差する方向)の幅に合わせて形成されており、検査先端部103をベース側ガイド部78に挿入することで、基板ケース70に収納された主制御基板60の識別部90に対して検査先端部103が位置合わせされるようになっている。また、検査先端部103の他辺の幅がベース側ガイド部78の長手方向(端子列63a,64aの並び方向)より短尺に設定されている。検査装置100は、検査先端部103をベース側ガイド部78の底面(後面)に当接させた状態で、検査先端部103をベース側ガイド部78の長手方向一端から長手方向他端へ向けて変位させて赤外線検査部96のパターンを読み取るようになっている。ここで、照射部104および検知部106は、基板ケース70に当接されるハウジング102の検査端面(端面)103aよりも内側に位置すると共に、該検査先端部103を基板ケース70に当接させた際に該基板ケース70に収納された主制御基板60に対向可能に設けられている。
【0048】
実施例の識別部90を設けた主制御基板60等の構成部材を備えたパチンコ機10と検査装置100とは、互いに関連付けられており、パチンコ機10の識別部90と検査装置100とによって検査システムが構成される。すなわち、検査装置100は、主制御基板60に付与された識別部90の赤外線検査部96に合わせて、照射部104から照射する入射赤外線の波長域や、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を検知するため検知部106や、照合部108の照合基準が設定されている。また、パチンコ機10には、識別部90に対して検査装置100の照射部104および検知部106を位置合わせし得るベース側ガイド部78が設けられ、このベース側ガイド部78は検査装置100における照射部104および検知部106を識別部90の赤外線検査部96のパターンを適切に読み取るように案内するよう構成されている。
【0049】
前記識別部90の作用について説明する。識別部90は、パチンコ機10の製造過程で厳密な管理の下で主制御基板60に付与されるものであって、製造メーカー以外の設備が整っていない環境(例えばホール等)では識別部90と同じものを形成することが難しく、識別部90の複製が容易ではない。また、識別部90は、単一の構成ではなく、耐熱樹脂層92、呈色部94、赤外線検査部96および保護層98を組み合わせた複合物であるので、識別部90を複製する不正行為がより行い難くなっている。そして、基板ケース70を介して外側から目視できる識別部90を主制御基板60に設けておけば、不正行為に対する牽制となる。
【0050】
前記識別部90は、ハンダ66を被覆する耐熱樹脂層92を備えているので、端子63a,64aを主制御基板60に対して固定しているハンダ66に対して外方からアクセスできない。また、耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度より高い耐熱性を有しているので、ハンダゴテ等の加熱手段で耐熱樹脂層92を融かすと共にハンダを融かして、ROMソケット63やICチップ64を主制御基板60から取り外そうとしても、ハンダゴテによる加熱で耐熱樹脂層92自体を融かして除去することが難しく、耐熱樹脂層92を介する熱伝導でハンダを融かすこともできない。すなわち、耐熱樹脂層92を備えた識別部90を端子列63a,64aに設けることで、ROMソケット63およびICチップ64を主制御基板60から取り外すことが難しく、ROM62やICチップ64を不正品と取り換える不正行為を防止することができる。更に、耐熱樹脂層92は、時間をかけて過剰に加熱しても、非常に脆くなったり粘性が高くなるので主制御基板60に設けられた原形を保った状態で剥離させることができず、耐熱樹脂層92を元の耐熱樹脂層92として再利用できない。更にまた、実施例の耐熱樹脂層92は、衝撃等の力を加えて主制御基板60から剥離しようとしても、細かく砕けてしまい、主制御基板60に設けられた原形を保った状態で剥離させることができない。このように、耐熱樹脂層92は、主制御基板60から剥離できたとしても、主制御基板60に設けられた原形から変質するよう構成されているので、剥離した耐熱樹脂層92を再度用いることができず、主制御基板60から剥離させるまでに時間をかけさせてROM62やICチップ64の取り換え行為を阻むだけでなく、不正行為者による識別部90の複製や再生を困難にし得る。耐熱樹脂層92は、過剰に加熱されると、飴状になったり焦げたりする等、外観が変化して痕跡が残るので、耐熱樹脂層92に対して不正な攻撃があったことを目視により容易に確認でき、ROM62やICチップ64等が取り換えられた可能性があることを早期に発見し得る。
【0051】
前記識別部90は、加熱による呈色する呈色部94として耐熱樹脂層92が機能するよう構成されている。ハンダゴテ等の加熱手段で耐熱樹脂層92を融かすと共にハンダ66を融かして、ROMソケット63やICチップ64を主制御基板60から取り外そうとした際に、耐熱樹脂層92の色が変わる。すなわち、耐熱樹脂層92の呈色によって不正行為が行われた痕跡が残るので、耐熱樹脂層92に対して不正な攻撃があったことを目視により容易に確認でき、ROM62やICチップ64等が取り換えられた可能性があることを早期に発見し得る。また、呈色部94としての耐熱樹脂層92は、常温で変化せずにハンダ66の溶融温度より低い温度の加熱によって色が変化するよう構成されて、加熱によってハンダ66が溶融する前に耐熱樹脂層92の色が変わるので、不正行為が行われた痕跡を残すことができる。しかも、呈色部94は、ハンダ66の溶融温度より高い耐熱性を有している耐熱樹脂層92として構成されているので、ハンダゴテ等によって耐熱樹脂層92が融ける前に色が変化し、この色が変化した耐熱樹脂層92を前述した如く剥離することが難しいから、不正行為が行われた痕跡をより確実に残すことができる。
【0052】
前記識別部90は、入射赤外線によって励起された励起赤外線を発する赤外線検査部96を備えているので、主制御基板60に向けて入射赤外線を照射することで、適正なROM62やICチップ64が実装された正規の主制御基板60であれば、主制御基板60に付された識別部90の赤外線検査部96が赤外線領域で発光するのに対し、赤外線検査部96を備えていない不正な主制御基板60に交換されていれば、照合基準を満たす赤外線は主制御基板60から発せられない。すなわち、識別部90の赤外線検査部96によって発せられる励起赤外線を検知して照合基準と照合することで、入射赤外線を照射した主制御基板60が正規品であるか否かを簡単に確認できる。ここで、赤外線検査部96は、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を発するので、照射した入射赤外線の単なる反射と区別することができ、赤外線検査部96を精度よく検知し得る。また、赤外線検査部96を端子62a,63a64aや電子部品本体に付着しないように設けることで、正規の手順でROM62やICチップ64等を取り外して例えば情報を書き換えて主制御基板60に戻した際に、ROM62やICチップ64に残った赤外線検査部96が誤検知されることを回避できる。
【0053】
ところで、ブラックライトによって紫外線を当てることで可視光を発光する紫外線発光型蛍光体を、偽造等の不正防止のために用いることも考えられる。紫外線発光型蛍光体は、服飾等の広い分野で用いられ、ブラックライトの入手がも容易であると共に紫外線発光型蛍光体の存在を検知するセンサーも市販されている。そして、紫外線発光型蛍光体は、ブラックライトを当てることで目視によって容易に確認することができ、紫外線発光型蛍光体が前述の如く広く流通していることから、紫外線発光型蛍光体による不正防止対策を複製することは比較的容易である。実施例の赤外線検査部96は、入射赤外線によって励起されて励起赤外線を発するので、赤外線検査部96自体または赤外線検査部96のパターンが、入射赤外線の照射の有無にかかわらず、目視が不可能であり、仮に赤外線を照射したとしても専用の検査装置100を保有していない者は、赤外線検査部96の存在が分からない。このように、赤外線検査部96は、入射赤外線または入射赤外線以外の光線(可視光や紫外線)をあてても、人の目で識別可能な態様で赤外線検査部96が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の複製をより困難にすることができる。
【0054】
前記識別部90は、赤外線検査部96を被覆する保護層98を備えているので、保護層98によって赤外線検査部96の削り取りを困難にし得る。例えば保護層98を削り取った後に赤外線検査部96を耐熱樹脂層92から削り取ったとしても、保護層98を構成する樹脂と赤外線検査部96を構成する蛍光体との分離が困難であり、同様に耐熱樹脂層92を構成する樹脂と赤外線検査部96を構成する蛍光体との分離も困難である。すなわち、既存の識別部90から赤外線検査部96を削り取って、この削り取った蛍光体を溶媒等に混ぜて別の主制御基板60に再度付着したとしても、正規(元)の赤外線検査部96における蛍光体の単位面積当たりの存在量(含有量)より再付着させた蛍光体の単位面積当たりの存在量(含有量)が少なくなる。ここで、赤外線検査部96は、励起赤外線の発光強度が蛍光体の含有量に比例するので、正規の赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度よりも再生した赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度が小さくなる。励起赤外線(赤外線検査部96)の適否を判断する照合基準として、発光強度(実施例では検知部106での受光強度)を設定することで、設定された発光強度を下回る励起赤外線であれば、検査対象が不正品であることが分かり、設定された発光強度以上の励起赤外線であれば、検査対象が適正品であることが分かる。すなわち、赤外線検査部96は、単に蛍光体を存在させるだけでなく、その存在量もコントロールすることで、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。このように、実施例の識別部90によれば、赤外線検査部96の再利用を阻むことができるので、ROM62やICチップ64等を取り換えた後に複製した赤外線検査部96を付与して偽装する不正行為を困難にし得る。
【0055】
次に、検査装置100による主制御基板60の検査について説明する。基板ケース70は、取着具87を設置部材32の保持孔から引き抜き、設置部材32の位置決めピンから取付部80dを取り外すと共に設置部材32の受部から爪部72dを取り外すことで、設置部材32から工具を用いることなく簡単に取り外すことができる。基板ケース70の前面側に設けられた4条のベース側ガイド部78のうちの一つを選び、ベース側ガイド部78の一端部に検査装置100の検査先端部103を整合させる。検査先端部103は、ベース側ガイド部78の上下の側面に挟まれて上下方向に位置決めされ、ベース側ガイド部78が対向する識別部90の一端部に対して照射部104および検知部106が対向配置されるように位置合わせされる。また、検査先端部103をベース側ガイド部78の底面に当接させることで、識別部90に対する照射部104および検知部106の離間距離が決まる。
【0056】
前記検査装置100の操作部114をON操作することで、照射部104から入射赤外線が識別部90に向けて照射される。ここで、検査装置100は、照射部104をベース側ガイド部78によって識別部90に対して位置決めした状態で入射赤外線を照射するので、識別部90に対する入射赤外線の照射強度および照射角度等の照射条件を一定にすることができる。実施例の識別部90は、赤外線検査部86が識別部90の左右方向(延在方向)全体に亘って設けられているので、入射赤外線によって励起された赤外線検査部96によって励起赤外線が発せられる。検査装置100は、検知部106でフィルタ106aを透過した特定波長域の励起赤外線だけを検知する。ここで、検査装置100は、検知部106をベース側ガイド部78によって識別部90に対して位置決めした状態で励起赤外線を受光するので、検知部106における励起赤外線の受光条件を一定にすることができる。検査装置100は、検知部106で検知した特定波長域の励起赤外線の検知受光強度を照合部108の変換手段109で数値に変換し、比較判定手段110で検知受光強度の数値と予め比較判定手段110に記憶されている設定受光強度の数値を比較する。
【0057】
前記検査装置100は、比較判定手段110で検知受光強度と設定受光強度を比較した結果、検知受光強度が設定受光強度以上であれば、報知部112の発光手段112aが発光されると共に音出力手段112bから所定の音が出力される良報知が行われる。これに対して、比較判定手段110で検知受光強度と設定受光強度を比較した結果、検知受光強度が設定受光強度以上とならなければ、報知部112の発光手段112aが消灯したままで音出力手段112bから音は出力されない。そして、検査者は、検査装置100の報知部112の良報知によって赤外線検査部96を検知していることが分かり、この赤外線検査部96が設けられた主制御基板60が正規品であることを判断できる。
【0058】
前記検査装置100は、操作部114をON操作したまま検査先端部103をベース側ガイド部78に沿わせて他端側に移動することで、該検査先端部103がベース側ガイド部78の上下の側面で案内されて、主制御基板60に対して所定経路で変位させることができる。ここで、ベース側ガイド部78は、端子列63a,64aの並び方向に延在する識別部90に合わせて延在するように形成されているので、検査先端部103をベース側ガイド部78の案内下に移動することで、照射部104および検知部106を識別部90をなぞるように移動させることができる。すなわち、照射部104および検知部106が、識別部90と対向した状態で識別部90の延在方向に沿って平行に変位され、実施例の赤外線検査部96が識別部90の延在方向全体に亘って設けられているので、ベース側ガイド部78の一端から他端に変位させる間に亘って報知部112から良である旨の情報(発光手段112aの発光および音出力手段112bの音出力)が報知される。そして、検査者は、検査先端部103をベース側ガイド部78の一端から他端へ移動した際に、この移動全体に亘って検査装置100の報知部112が良報知していることにより、適正なパターンの赤外線検査部96が存在していることが分かり、報知部112の報知から判別できる赤外線検査部96のパターンによっても主制御基板60が正規品であることを判断できる。仮に赤外線検査部96が端子列63a,64aの一端部に部分的に複製されていたら、検査装置100は、ベース側ガイド部78の一端で報知部112から良報知されるものの、ベース側ガイド部78の他端側に検査先端部103を移動すると良報知がなされない。他のベース側ガイド部78に対応する識別部90についても、検査装置100によって前述した手順で同様に検査される。
【0059】
このように、主制御基板60の識別部90(赤外線検査部96)に向けて照射部104から入射赤外線を照射することで、正規の主制御基板60であれば、赤外線検査部96が赤外線領域で発光するのに対し、不正な主制御基板60に交換されていれば、照合基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、検査装置100では、赤外線検査部96によって発せられる励起赤外線を検知部106で検知して、照合部108で照合基準と照合した結果に基づいて報知部112から報知される情報(良報知)によって、入射赤外線を照射した主制御基板60が正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、検査装置100は、識別部90から離れた位置から検査を行うことができ、主制御基板60に検査先端部103を接触させることなく検査を行うことができる。すなわち、検査装置100による検査に際して、主制御基板60を基板ケース70から取り外すことは必須ではなく、主制御基板60を基板ケース70に収納したまま検査を行うことができる。また、検査装置100は、携帯可能なユニット形態であるので、主制御基板60に対して該検査装置100側を任意に動かして該主制御基板60の適否を検査することができる。
【0060】
前記検査装置100は、励起赤外線の有無を単に判別しているのではなく、検知部106で検知された励起赤外線の検知受光強度が、予め設定された設定受光強度以上であるか否かを照合部108で照合している。前述したように、赤外線検査部96を識別部90から削り取って不正な主制御基板60に再生したとしても、正規の赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度よりも再生した赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度が小さくなるので、検査装置100の検査で良報知されない。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96における蛍光体の存在量を、例えばロットや機種や構成部材等で変更し、これらロットや機種や構成部材等に合わせた設定受光強度を照合基準として設定した検査装置100を用意することで、識別部90に合わせた検査装置100を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0061】
前記検査装置100は、励起赤外線の有無を単に判別しているのではなく、照合基準として設定された特定波長域の励起赤外線を検知部106が検知したか否かを照合するよう構成されている。例えば、正規の赤外線検査部96に用いられる蛍光体と異なる波長域で励起赤外線を発する蛍光体で赤外線検査部96を形成したとしても、検査装置100の照合基準を満たさないので、検査装置100の検査で良報知されない。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96の励起赤外線の波長域を、例えばロットや機種や構成部材等で変更し、これらロットや機種や構成部材等に合わせた特定波長域を照合基準として設定した検査装置100を用意することで、識別部90に合わせた検査装置100を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0062】
前記検査装置100は、赤外線検査部96による励起赤外線の有無だけを単に判別しているのではなく、赤外線検査部96のパターンに応じて表れる報知パターンによっても、主制御基板60が正規品であるか否かを判別することができる。実施例の識別部90が設けられた主制御基板60であれば、検査装置100でベース側ガイド部78で規定される所定経路に沿って識別部90を検査すると、該識別部90の赤外線検査部96のパターンに応じて良報知がなされる。例えば、正規の赤外線検査部96のパターンと異なるパターンで赤外線検査部96を主制御基板60に形成したとしても、検査装置100の良報知のパターンによって検査者が当該主制御基板60が不正品である蓋然性があることを判別できる。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96のパターンを、例えばロットや機種や構成部材等で変更することで、これらロットや機種や構成部材等に合わせた赤外線検査部96のパターン情報を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0063】
前記検査装置100は、検査対象となる主制御基板60の識別部90に対して相対的な位置関係が決まっている基板ケース70等の検査対象と異なる構成部材を、識別部90に対する位置合わせ基準として用いて検査を行うようになっている。すなわち、検査装置100による主制御基板60の検査に際して、検査装置100を主制御基板60に対して位置決めするための専用の治具は必要はない。また、検査装置100は、主制御基板60かから離した状態で検査を行えるので、主制御基板60に合わせて特別な形状とすることも特に必要はない。検査装置100は、主制御基板60以外のパチンコ機10を構成する構成部材の検査にも用いることができ、汎用性が高い。
【0064】
実施例のパチンコ機10は、識別部90に合わせてベース側ガイド部78が基板ケース70に設けられており、ベース側ガイド部78に検査装置100の検査先端部103を整合させると共に該検査先端部103を基板ケース70に当接させることで、照射部104および検知部106を基板ケース70に接触させずに、基板ケース70に収納された主制御基板60の識別部90との離間距離および平行位置を一定に保った状態で検査を行い得る。すなわち、検査装置100による赤外線検査部96の検査条件を一定にすることができ、より正確な真贋判定を行い得る。
【0065】
(変更例)
(1)実施例では、識別部90が設けられる構成部材として主制御基板60を例に挙げたが、パチンコ機を構成する構成部材の何れに識別部を設けてもよい。例えば主制御基板60以外の統括制御基板や払出制御基板などの制御基板、払出制御装置50や入賞装置等のパチンコ球の払い出しに関係する装置、あるいは基板ケース70等、不正行為者によって取り換え等の攻撃を受ける可能性がある構成部材に識別部を設けると特に有効である。
(2)検査装置100を識別部90に対して位置合わせするガイド部78は、省略してもよい。また、ガイド部は、例えば構成部材から突出形成されたリブ状片やその他の形状であってもよく、検査装置100の検査先端部103を、検査対象と平行する一方向だけの移動を規制する構成であったり、検査対象と平行する3方向の移動または全方向の移動を規制する構成であってもよい。
(3)実施例では、遊技機としてパチンコ機を例示して説明したが、これに限られるものではなく、アレンジボール機やピンボール機、スロットマシン機等の各種遊技機を採用し得る。
【0066】
(4)識別部90は、呈色部94を独立した層としてもよく、赤外線検査部96に呈色材を混ぜて赤外線検査部96を呈色部94として機能させたり、保護層98に呈色材を混ぜて保護層98を呈色部94として機能させてもよい。
(5)識別部90における耐熱樹脂層92、呈色部94、赤外線検査部96の積層順序は、実施例の順序に限定されず、例えば赤外線検査部96を覆うように耐熱樹脂層92を設けたり、呈色部94を覆うように耐熱樹脂層92を設けてもよい。なお、赤外線検査部96を耐熱樹脂層92で覆えば、この耐熱樹脂層92が保護層98として機能する。
(6)識別部90は、保護層98によって赤外線検査部96の付与部位が外方から目視により判別できないのであれば、赤外線検査部96を着色してもよい。
(7)実施例では、端子列53a,54a全体を覆うように識別部90を設けたが(図7参照)、端子列の一部分を覆うように識別部を設けてもよい。例えば図13に示すように、電子部品118の端子列118aの両端部を覆うように識別部120,122,124を2つの部分120a,120b,122a,122b,124a,124bに振り分けて設け、端子列118aの中央部を露出させる構成であってもよい。
【0067】
(8)識別部90における赤外線検査部96のパターンは、実施例の構成に限定されず、識別部間で赤外線検査部のパターンを変えたり、1つの識別部の中で複数の赤外線検査部を互いに間隔をあけて設けたり、識別部の中で赤外線検査部を設ける部位や数を変えてパターンを形成してもよい。図13(a)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部120では、該識別部120の一端部(図中左側)に赤外線検査部96が該識別部120に沿う帯状に設けられ、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部120では、該識別部120の他端部(図中右側)に赤外線検査部96が該識別部120に沿う帯状に設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって所定範囲で報知されてから非報知になる報知パターンが表れ、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、非報知から報知部112で所定範囲で報知される報知パターンが表れる。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部120,120の報知パターンによっても真贋判定が可能である。図13(b)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部122では、該識別部122における一端側部分122a中央に赤外線検査部96が点状に設けられ、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部120では、該識別部120の他端側部分122b中央に赤外線検査部96が点状に設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって短い範囲で報知されてから非報知になる報知パターンが表れ、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、非報知から報知部112で短い範囲で報知される報知パターンが表れる。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部122,122の報知パターンによっても真贋判定が可能である。図13(c)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部124では、該識別部124における一端側部分124aに点状の赤外線検査部96が2箇所設けられると共に、該識別部124における他端側部分124bに点状の赤外線検査部96が2箇所設けられる。また、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部124では、該識別部124における一端側部分124a中央に点状の赤外線検査部96が1箇所設けられると共に、該識別部124における他端側部分124b中央に点状の赤外線検査部96が1箇所設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって4回の報知があり、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、2回の報知がある。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部124,124の報知パターンによっても真贋判定が可能である。
【0068】
(9)実施例では、端子53a,54a全体を識別部90で完全に覆う構成であるが、図14に示すように電子部品118の端子118aの一部(図14では先端部)が識別部126から突出する構成であってもよい。端子118aの先端部が識別部126の外方に臨んでいるので(図14(a)参照)、電子部品118の検査を行う際に、端子118aに検査器具を接触させることができ、電子部品118のメンテナンスを行い易い。また、識別部126において赤外線検査部96は、端子118aに接触しないように設けられ、端子118aの並び方向と交差する方向に挟んで端子118aの両側に赤外線検査部96,96を設けても(図14(b)上段参照)、端子118aの片側に並び方向に沿って赤外線検査部96を設けてもよい(図14(b)下段参照)。
【0069】
(10)識別部90は、主制御基板60の固定面60bに設ける構成に限定されず、図15に示すように実装面60a側に識別部128を設けてもよい。なお、図15に示す識別部128は、赤外線検査部96単層で構成されている。識別部128は、主制御基板60の固定面60bにおけるROMソケット63およびICチップ64の端子周りに設けられるだけでなく、実装面60aにおける端子孔61の周りにも設けられている。また、識別部128は、ROMソケット63におけるROM62の接続部にも設けられている。なお、実装面60a側に設けた識別部128は、前述した基板ケース70のカバー側ガイド部88で検査装置100の検査先端部103を位置決めした状態で検査するとよい。ここで、実装面60a側に設けられる識別部128は、耐熱樹脂層92および呈色部94を設けず赤外線検査部96だけで構成するのが望ましい。識別部128を主制御基板60の実装面60aに設けることで、基板ケース70をパチンコ機本体から取り外すことなく識別部128の検査を行うことができるメリットがある。識別部128を主制御基板60の実装面60aと固定面60bとの両方に設けることで、固定面60b側の識別部は耐熱樹脂層92を設けてハンダ66への不正行為を防止して、実装面60a側の識別部は赤外線検査部96によって基板ケース70を取り外すことなく簡単に検査でき、不正行為をより行い難くできる。
【0070】
(11)検査装置100は、照射部104、検知部106および必要に応じて操作部114を同一ハウジングに設けた第1のユニットと、照合部108および報知部112を同一ハウジングに設けた第2のユニットとを別々に構成してもよい。また、検査装置100の照射部104、検知部106、照合部108、報知部112を夫々独立したハウジングに設けてもよい。
(12)実施例の検査装置100は携帯型であるが、可搬型または固定型であってもよい。またパチンコ機10に組み込んでもよい。
(13)報知部による報知は、種々の態様を採用できる。例えばパチンコ機10の発光装置26を点滅させたり、遊技盤30の図柄表示装置34に文字または図形等を表示させるなど視覚的に報知したり、パチンコ機10に設けられたスピーカ24から警報音等を発生させるような聴覚的に報知する等、パチンコ機10を用いて報知してもよい。また、パチンコ機が設けられた島設備やホールコンピュータで報知する態様であってもよい。
(14)実施例では、照合基準として励起赤外線の強度、励起赤外線の波長域および励起赤外線の検知パターンを挙げたが、照合基準として何れか1つだけを設定しても、何れか2つまたは全部を組み合わせて設定してもよい。すなわち、励起赤外線の波長域を照合基準とする場合は、特定波長域の励起赤外線だけを透過するフィルタ106aを設けることで該特定波長域の励起赤外線だけを検知部106で検知し、照合部108は、照合基準として設定された特定波長域の励起赤外線を検知部106が検知したか否かを照合するよう構成される。また、励起赤外線の検知パターンを照合基準とする場合は、照射部104および検知部106を主制御基板60等の検知対象に対して所定経路に沿って変位した際に、照合部108は、検知部106による励起赤外線の検知が照合基準として設定された所定パターンで表れるか否かを照合するよう構成される。
(15)照合部108には、適正な赤外線検査部96を備えた識別部90に対して特定波長域の入射赤外線を照射した際に、検知部106で検知されるべき励起赤外線の波長域の値を記憶させてもよい。すなわち、検知部106で検知した励起赤外線の受光強度だけでなく、設定された波長域の値と検知部106で検知した励起赤外線の波長域の値を比較するよう構成される。
(16)照射部104から入射赤外線を連続的に照射する例を説明したが、照射部104から所定パターンのパルス状に入射赤外線を照射してもよい。この場合、検査装置100は、照射部104から照射されたパターンで検知部106で励起赤外線が検知されるか否かも照合部108における照合基準として設定される。
【0071】
(17)検査装置100を識別部90に対して位置決めするガイド部78は、識別部90の夫々に対応して設ける構成に限定されず、複数列の識別部90に対応させて設けてもよい。例えば図16に示すように、基板ケース70は、ROMソケット63の上下2つの端子列63a,63aに対応する2列の識別部90,90に合わせて形成されたベース側ガイド部78と、ICチップ64の上下2つの端子列64a,64aに対応する2列の識別部90,90に合わせて形成されたベース側ガイド部78とを備えている。変更例の検査装置101は、照射部104および検知部106が検知端面103aの中央ではなく、照射部104および検知部106が検知端面103aの何れか一方に偏倚して配置されている(図16参照)。検査装置101は、上側の識別部90を検査する際には、照射部104および検知部106を上側に位置させて、ベース側ガイド部78の上面に検査先端部103の上面を当接させて位置決めするようになっている。検査装置101は、下側の識別部90を検査する際には、検査装置101を反転して照射部104および検知部106を下側に位置させて、ベース側ガイド部78の下面に検査先端部103の下面を当接させて位置決めするようになっている。このように、変更例の検査装置101によれば、識別部90とベース側ガイド部78を1対1で設けなくても、該検査装置101を反転するだけで照射部104および検知部106を識別部90に対向させることができる。
【0072】
(18)識別部は、耐熱樹脂層および呈色部の両方または何れか一方を省略して、赤外線検査部だけ、あるいは赤外線検査部および保護層から構成してもよい。
(19)識別部は、耐熱樹脂層および呈色部の両方を省略した構成であれば、電子部品の端子を固定するハンダを覆う構成に限定されず、制御基板の板面、電子部品本体、基板ケースやその他の部材に適宜設けることができる。
(20)制御基板や中継基板に実装されるCPU、ROM、RAM、抵抗やコンデンサ等の電子部品に、赤外線検査部だけまたは赤外線検査部および保護層を備えた識別部を配設することで、当該電子部品自体を識別部によって正規品であるか否かを簡単に確認することができる。識別部は、電子部品の表面であれば、制御基板に対向する面以外の側面や上面の何れの面に設けてもよい。また、識別部は、文字、一次元あるいは二次元コード、または模様等の所定のパターンで設けることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 パチンコ機(遊技機)
60 主制御基板(構成部材)
62 ROM(電子部品)
63 ROMソケット(電子部品)
63a,64a 端子
66 ハンダ
70 基板ケース
78 ベース側ガイド部(ガイド部)
90,120,122,124,126,128 識別部
92 耐熱樹脂層
96 赤外線検査部
98 保護層
100,101 検査装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、不正防止対策が施された構成部材を備えた遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機に代表される遊技機は、遊技の進行を制御するための種々の制御基板を構成部材として備えている。これらの制御基板には、遊技内容に関わるプログラムやデータを記憶したROMが搭載されているため、不正なプログラム等が記憶されたROMと交換されることを防ぐことが肝要である。このため、遊技機では、ベース部材とカバー部材とからなる基板ケースに制御基板を収納している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の基板ケースでは、ベース部材とカバー部材とを係合手段を介して組み付けた後、ベース部材の側壁部分およびカバー部材の側壁部分に突出形成されたカシメ部を介して、締結方向へしか回転できないワンウェイネジ等によりベース部材とカバー部材とが分離不能に固定される。すなわち、このような構成の基板ケースでは、カシメ部を破断しない限り開封することができないから、不正な制御基板との交換を防止することができ、しかも破断時には痕跡が残るので、開封したことを認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−65791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年は不正行為者の不正行為が巧妙化しており、ベース部材側のカシメ部を傷付けることなくカバー部材側のカシメ部のみを破断して除去することで、ベース部材とカバー部材を分離して不正な制御基板に交換した後、別の基板ケースにおいてカバー部材側のカシメ部を傷付けることなくベース部材側のカシメ部のみを破断して除去することで得たカシメ部が残っている別のカバー部材を、カシメ部を残しておいた前記ベース部材に組み付けて再びワンウェイネジ等で固定することで、正規品を装うようにする不正行為が行われる場合がある。このように、制御基板を交換した基板ケースを構成するベース部材またはカバー部材の一方の部材に、別に用意した他方の部材を組み付ける不正行為においては、両部材の何れのカシメ部にも破断時の痕跡が残らないので、開封されたことを認識することができない。そこで、制御基板自体について、適正な電子部品が実装された正規品であるか否かを確認できることが求められている。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る遊技機に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、正規の構成部材であるか否かを簡単に確認できる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の遊技機は、
遊技機(10)を構成する構成部材(60)の表面に、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部(90,120,122,124,126,128)を備えたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、構成部材に向けて赤外線を照射することで、正規の構成部材であれば、識別部が赤外線領域で発光するのに対し、不正な構成部材に交換されていれば、基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、識別部によって発せられる赤外線を検出することで、赤外線を照射した構成部材が正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、赤外線または赤外線以外の光線をあてても、人の目で識別可能な態様で識別部が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の模倣を困難にすることができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記識別部(90)は、外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部(96)と、この赤外線検査部(96)の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層(98)とを備えたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、赤外線検査部が保護層で被覆されて保護されているので、例えば赤外線検査部を削り取って再利用する等の不正行為を困難にし得る。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記構成部材は、遊技機(10)の制御を担う制御基板(60)であり、
前記識別部(90)は、電子部品(62,63,64)の端子(63a,64a)を制御基板(60)に固定するハンダ(66)の溶融温度より高い耐熱性を有する耐熱樹脂層(92)を備え、
前記識別部(90)は、制御基板(60)に固定された電子部品(63,64)の端子(63a,64a)を固定するハンダ(66)を被覆するように設けられたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、構成部材である制御基板に固定した電子部品の端子を被覆するように、耐熱樹脂層を含む識別部が設けられいるので、ハンダを溶融させて電子部品を取り外す不正行為を困難にし得る。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記識別部は、前記構成部材としての制御基板に実装された電子部品の表面に配設されたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、前記構成部材としての制御基板に実装された電子部品の表面に識別部を配設することで、電子部品が正規品であるか否かを確認することができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記構成部材(60)には、前記識別部(90)が所定パターンで設けられたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、識別部による赤外線波長域の発光だけでなく、構成部材に現れる識別部による赤外線波長域の発光パターンによっても、正規品であるか否かを判別することができる。
【0012】
請求項6に係る発明では、前記構成部材は、遊技機(10)の制御を担う制御基板(60)であり、
前記制御基板(60)は、赤外線を透過可能な基板ケース(70)に収納され、
前記識別部(90)に対して赤外線を照射すると共に識別部(90)が発した赤外線を検出する検査装置(100,101)を該識別部(90)に対して位置決めするガイド部(78)が、制御基板(60)の識別部(90)に臨む基板ケース(70)の板面に設けられたことを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、基板ケースが赤外線を透過可能に構成されているので、基板ケースに制御基板を収納したまま検査装置で識別部による赤外線波長域の発光の有無を確認することができる。しかも、基板ケースには、検査装置をガイド部に合わせると識別部と位置決めされるので、検査装置による識別部の検出条件を一定にすることができ、より正確な真贋判定を行い得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る遊技機によれば、構成部材が正規品であるか否か簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施例に係るパチンコ機の正面図である。
【図2】実施例のパチンコ機の背面図である。
【図3】実施例の基板ケースの背面図である。
【図4】実施例の基板ケースの正面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】実施例の基板ケースを分解して示す概略斜視図である。
【図7】実施例の制御基板の固定面を示す要部拡大図である。
【図8】実施例の制御基板を実装面側から見た状態で示す概略斜視図であって、ROMおよびICチップを分解した状態である。
【図9】図7のB−B線断面図である。
【図10】図9のC部拡大図である。
【図11】(a)は、実施例の検査装置を示す概略側面図であり、(b)は(a)のX矢視図である。
【図12】実施例の検査装置の制御ブロック図である。
【図13】制御基板の固定面に設けられた識別部を示す説明図であって、赤外線検査部の配置パターンの変更例を示す。
【図14】(a)は、変更例の識別部を示す断面図であり、(b)は変更例の識別部の正面図である。
【図15】別の変更例の識別部を示す断面図である。
【図16】検査装置と識別部との関係の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る遊技機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。また、以下の説明において前・後および左・右とは、特に断りのない限り、図1に示すように遊技機を正面側(遊技者側)から見た場合において指称するものとする。
【実施例】
【0016】
(パチンコ機について)
図1および図2に示すように、実施例に係るパチンコ機10は、矩形枠状に形成されて遊技店の図示しない設置枠台に固定される固定枠としての外枠11の開口前面側に、遊技盤(図1参照)が着脱可能に保持された本体枠としての中枠14が開閉および着脱可能に組み付けられている。中枠14の前面側には、遊技盤30を透視保護するガラス板17を備えた装飾枠としての前枠16が開閉可能に組み付けられると共に、前枠16の下方にパチンコ球を貯留する下球皿20が開閉可能に組み付けられる。そして、前枠16の下部には、下球皿20の上側に位置して、パチンコ球Sを貯留する上球皿21が組み付けられており、前枠16の開閉に合わせて上球皿21も一体的に開閉するよう構成される。また、中枠14には、下球皿20の右側に位置するように回動操作可能なハンドル部材22が配設されており(図1参照)、該ハンドル部材22の回動操作によって中枠14の下部に設けられた球発射装置(図示せず)により上球皿21に貯留したパチンコ球が遊技盤30の遊技領域に向けて打ち出されるようになっている。
【0017】
(遊技盤について)
前記遊技盤30には、遊技領域が前面に設けられるベニヤ板や透明なアクリル板からなる板状本体の後側に配設した裏ユニットとも呼ばれる設置部材32に、各種図柄を変動表示可能な図柄表示部を有する図柄表示装置34が配設されている(図2参照)。遊技盤30には、図柄表示装置34の図柄表示部に対応する位置に前後に開口する表示開口部(図示せず)が開設され、該表示開口部に所要の装飾を施したセンター役物とも称される装飾部材(図示せず)が臨むようになっている。また、遊技盤30の所要位置には、パチンコ球Sの入賞により図柄表示装置34の図柄を変動開始させる始動入賞装置や、大当りの発生時に開放する特別入賞装置(何れも図示せず)等が配設されている。
【0018】
図2に示すように、パチンコ機10の裏側には、各種電気部品を制御する制御基板60を備えた制御装置40,42,44,46,48,50が配設されている。遊技盤30の後面に着脱可能に配設される図柄表示装置34の後面には、遊技盤30に設けられる可動演出装置(図示せず)や発光装置26や図柄表示装置34を制御したり、前枠16に設けられるスピーカ24や発光装置26等を制御する統括制御装置42が配設されている。また、図柄表示装置34の後面には、右側に偏倚した部位に設置された統括制御装置42の左側に、図柄表示装置34の表示を制御する表示制御装置44が配設されている。そして、統括制御装置42は、遊技盤30の後側に配設される主制御装置40に配線接続され、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。また、球通出案内部36の後面には、パチンコ機10の電源制御を行う電源装置46や、球発射装置を制御する発射制御装置48や、球通路ユニット38に配設した球払出装置39を制御する払出制御装置50や、外部端末に接続されるインターフェース基板52等が配設されている。なお、これらの各装置46,48,50,52は、主制御装置40に配線接続され、主制御装置40からの制御信号に基づいて所定の制御を実行するようになっている。なお、実施例では、表示制御装置44と払出制御装置50との間に主制御装置40が配設されている(図2参照)。
【0019】
実施例のパチンコ機10は、該パチンコ機10を構成する所定の構成部材に、該構成部材を取り換えたりする等の不正行為の有無を識別するために、識別部90が付与されている。ここで、主制御装置40の主制御基板(制御基板)60に識別部90を設ける場合について、以下に説明する。主制御基板60は、統括制御装置42、電源装置46、発射制御装置48、払出制御装置50、インターフェース基板52等に信号を送るパチンコ機全体の制御を統括する重要な制御基板である。
【0020】
(主制御装置について)
図3〜図6に示すように、主制御装置40は、パチンコ機10の全体を制御する主制御基板60を基板ケース70に収納して構成される。図6に示すように、主制御基板60は、長方形の板状体であって、所要の回路パターンが形成されると共に、ROM(実施例ではCPUおよびRAMを内蔵した1チップROM)62やICチップ64等の電子部品および複数のコネクタソケットが後面(実装面60a)に設置されている(図6ではROM62とICチップ64のみ表示)。そして、コネクタソケットには、各種装置や他の制御装置46,48,50,52に接続する配線コネクタ(図示せず)が接続される。
【0021】
図8に示すように、ROM62およびICチップ64には、複数の端子62a,64aが本体の長手辺の夫々に並べて設けられており、ROM62は、これらの端子62aをROMソケット63に挿入して保持されている。ROMソケット63には、複数の端子63aが本体の長手辺の夫々に並べて設けられており、この端子63aの夫々を主制御基板60の厚み方向に貫通形成された端子孔61に後方から挿通し、主制御基板60の前面(固定面60b)に突き出た端子63aの夫々をハンダ66で固定するようになっている(図9参照)。同様にICチップ64は、端子64aの夫々を主制御基板60の端子孔61に後方から挿通し、主制御基板60の固定面60bに突き出た端子64aの夫々をハンダ66で固定するようになっている。実施例の主制御基板60では、ROM62(ROMソケット63)とICチップ64とが上下に並べて配置され、左右方向に並ぶ複数の端子62a,63a,64aの列(以下、単に端子列という)が左右方向に並んでいる。すなわち、主制御基板60の固定面60bには、4条の端子列63a,63a,64a,64aが上下の関係で並行配置されている。そして、実施例では、ROMソケット63の端子列63aとICチップ64の端子列64aに後述する識別部90が設けらている(図7または図9参照)。
【0022】
(基板ケースについて)
図3〜図6に示すように、基板ケース70は、設置部材32側に配置されるベース部材72と、このベース部材72の後側に組付けられるカバー部材80とから基本的に構成され、ベース部材72とカバー部材80との間に画成される収納空間70aに主制御基板60が収納される。主制御基板60は、実装面60aをカバー部材80の後述する板状部80aに対向させると共に、ROMソケット63やICチップ64等の電子部品の端子63a,64aがハンダ66で固定される固定面60bをベース部材72の後述する板状部72aに対向させた姿勢で、基板ケース70の収納空間70aに収納されている(図5参照)。また、基板ケース70は、収納空間70aに収納する主制御基板60の形状に合わせて長方形に形成され、長手を左右方向に延在させた姿勢で設置部材32の下部に着脱可能に取り付けられている(図2参照)。
【0023】
(ベース部材について)
前記ベース部材72は、赤外線を透過する透明な合成樹脂成形品であって、図6に示すように、主制御基板60の固定面60bに対向する長方形の板状部72aの上下および左の外周縁に、後方(カバー部材80側)へ向けて外壁部72bが立ち上がる略箱状に形成されている。ベース部材72には、上側の外壁部72bおよび下側の外壁部72bの内側に、所定間隔離間して夫々の外壁部72bと平行に内壁部72cが立設されて、上側の内外の壁部72b,72cの間および下側の内外の壁部72b,72cの間に、スライド溝73が夫々画成されている。また、ベース部材72では、右側の外周縁に内外の壁部72b,72cが形成されず、上下のスライド溝73,73の左端部が何れも開放している。
【0024】
上側の内外の壁部72b,72cの間には、板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されると共に、下側の内外の壁部72b,72cの間には、同じく板状部72aから所定間隔離間する位置において左右方向に離間して複数の係止部74が形成されている(図5参照)。なお、ベース部材72において、上下の係止部74は、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。また、板状部72aの右端部には、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)の突片75,75が外方(右側方)に向けて延出して形成されている(図6参照)。更に、ベース部材72の左側の外壁部72bには、上下方向に離間して複数(実施例では2つ)のベース側カシメ部76,76が外方(左側方)に向けて延出して形成されると共に、左側の外壁部72bにおける両ベース側カシメ部76,76の間に、ベース側連結部77が外方(左側方)に向けて延出して形成されている。
【0025】
前記ベース部材70には、板状部72aにおいて主制御基板60の固定面60bに設けられた識別部90に対向する部位にベース側ガイド部(ガイド部)78が設けられている(図3または図5参照)。実施例では、主制御基板60におけるROMソケット63の上下の端子列63a,63aおよびICチップ64の上下の端子列64a,64aの夫々に対応して識別部90が設けられ、主制御基板60の固定面60bに左右方向に延在する4条の識別部90の夫々に1対1の関係で対応して、ベース側ガイド部78が基板ケース70の板状部72aに設けられている。すなわち、板状部72aには、左右方向に延在する4条のベース側ガイド部78が上下の関係で並行するよう形成され(図7参照)、ベース側ガイド部78の左右方向の幅が対応する識別部90の左右方向の幅に合わせて設定されている。各ベース側ガイド部78は、前方に開放した溝状に形成されている(図5参照)。ベース側ガイド部78は、上下の側面が平行に形成されると共に、底面(後面)が基板ケース70に収納された主制御基板60の固定面60bと平行な関係で延在するよう形成されている。
【0026】
(カバー部材について)
前記カバー部材80は、透明な合成樹脂成形品であって、図5または図6に示すように、主制御基板60の実装面60aに対向する略長方形の板状部80aの上下および左右の外周縁の夫々に、前方(ベース部材72側)へ向けて外壁部80bが立ち上がる箱状に形成されている。なお、主制御基板60の実装面60a側に後述する赤外線検査部96を備えた識別部90を設けるのであれば、カバー部材80は赤外線を透過可能に構成される。カバー部材80の上下の外壁部80b,80bは、ベース部材72における上下のスライド溝73,73に夫々収容可能に設定されると共に、カバー部材80の左右の壁部80b,80bは、ベース部材72の板状部72aの左右方向の幅寸法と略同一に設定されている。すなわち、基板ケース70では、ベース部材72の上下の外壁部72bの内側にカバー部材80の上下の外壁部80bが臨む状態で、ベース部材72とカバー部材80とが組み付けられる。また、カバー部材80は、外壁部80bに囲まれた内側に主制御基板60を収納して、該主制御基板60に挿通するピンやネジ等の固定部材により主制御基板60を保持するよう構成される(図5参照)。
【0027】
前記カバー部材80の板状部80aは、主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の大きな主板面80aaと、該板状部80aの左上角部および右下角部に形成されて主制御基板60の実装面60aに対する離間距離の小さな副板面80abとからなり、該副板面80abが主板面80aaより前側(ベース部材72側)に位置する階段状に形成されている(図6参照)。そして、板状部80aにおける副板面80abには、主制御基板60のコネクタソケット(図示せず)に対応してソケット開口80cが開設され、該ソケット開口80cを介して基板ケース70の外側に臨むコネクタソケットに配線コネクタ(図示せず)が接続される。なお、板状部80aにおける副板面abの外周縁には、後側に延出する規制壁81が形成されており(図6参照)、規制壁81は、ソケット開口80cの外側に臨むコネクタソケットに接続されている配線コネクタのコネクタソケットからの抜き外しを困難にして、不正行為者の配線コネクタに対する不正行為を抑制するよう機能する。
【0028】
前記カバー部材80には、板状部80aにおける主制御基板60のROM62に対向する部位に、前方(主制御基板60側)に向けて凹ませてカバー側ガイド部(ガイド部)88が形成されると共に、カバー側ガイド部88の前面(制御基板60側の面)に前方へ突出した保持片89が設けられている(図5参照)。保持片89は、主制御基板60をカバー部材80の前面に取り付けた際に、ROM62を位置決め保持するよう構成されている。カバー側ガイド部88は、主制御基板60の実装面60a側においてROM62またはROMソケット63に識別部90(赤外線検査部96)を設けた場合、後述する検査装置100による検査に際して該検査装置100を識別部90に対して位置決めするよう機能する。
【0029】
前記カバー部材80の上下の外壁部80b,80bには、左右方向に離間してベース部材72の係止部74と同数の切欠部82が形成されると共に、各切欠部82における右端の後端部には右方に延出する引掛部83が突設されている(図6参照)。引掛部83の左方への延出寸法は、切欠部82の左右寸法より小さく設定されており、引掛部83の延出端と切欠部82の左端との間には、係止部74の通過を許容する隙間が前側に開放するよう形成される。また、カバー部材80において、上側の外壁部80bの切欠部82および引掛部83と、下側の外壁部80bの切欠部82および引掛部83とは、上下対称な位置関係で配置されて、その形状も上下対称となっている。実施例の基板ケース70では、ベース部材72に対してカバー部材80の上下の外壁部80b,80bを、対応するスライド溝73,73に対して各切欠部82の隙間が係止部74に対応する状態で収容した後、該ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各係止部74に対応する引掛部83が夫々係止して、ベース部材72にカバー部材80が組み付けられる。
【0030】
前記カバー部材80の右側の外壁部80bには、ベース部材72の各突片75と対応する位置に、該突片75が挿脱可能な挿通孔84が夫々形成されている(図6参照)。そして、カバー部材80の上下の外壁部80b,80bをベース部材72のスライド溝73,73に収容した状態で、各突片75に対して対応する挿通孔84が左方の整列位置に臨み、ベース部材72に対してカバー部材80を左方にスライドすることで、各挿通孔84に対応する突片75が挿通するよう構成される。
【0031】
前記カバー部材80の左側の外壁部80bには、ベース部材72の各ベース側カシメ部76と対応する位置にカバー側カシメ部85が外方(左側方)に向けて夫々延出して形成されている(図6参照)。そして、締結方向にしか回転操作できないワンウェイネジ(図示せず)によりベース側カシメ部76とカバー側カシメ部85とを締結することで、両カシメ部76,85が分離不能に固定される。すなわち、ベース側カシメ部76とカバー側カシメ部85とをワンウェイネジで一旦締結すると、両カシメ部76,85を破壊しなければ、ベース部材72とカバー部材80とを分離することができず、両者72,80の不正開放を非常に困難にしている。なお、ワンウェイネジを締結したカバー側カシメ部85には、ワンウェイネジを覆って操作不能とするキャップ85aが嵌め込まれる(図3参照)。カバー部材80の左側の外壁部80bには、両カバー側カシメ部85,85の間に、ベース部材72のベース側連結部77と対応するカバー側連結部86が外方(右側方)に向けて延出して形成される。なお、両連結部77,86は、図示しないネジ等の固定部材により固定される。
【0032】
(基板ケースの取り付け構造について)
前記基板ケース70の設置部材32への取付構造について簡単に説明する。基板ケース70は、ベース部材72における板状部72aの右側前面に設けられ、設置部材12の後面に設けた受部(図示せず)に引っ掛ける爪部72d(図4参照)と、カバー部材80における左側の外壁部80bの上部に設けられ、設置部材32の後面に設けた位置決めピン(図示せず)が挿通される位置決め孔が形成された取付部80dと、左側の外壁部80b中央に設けた固定部80eとを備えている。なお、固定部80eには、ナイラッチ等の取着具87が装着されている(図3参照)。そして、基板ケース70は、設置部材32の受部に爪部72dを引っ掛けると共に、設置部材32の位置決めピンを取付部80dの位置決め孔に挿入したもとで、固定部80eに装着されている取着具87を設置部材32に設けた図示しない保持孔に係合することで、設置部材32に対して着脱可能に組み付けられる。
【0033】
図5または図7に示すように、主制御基板60には、固定面60b側に識別部90が設けられている。識別部90は、端子列63a,64a毎に付与されており、端子列63a,64a全体を覆うように設けられている。ここで、実施例の主制御基板60の固定面60bには、ROMソケット63における上下の端子列63a,63aの夫々に対応して識別部90,90が設けられると共に、ICチップ64における上下の端子列63a,63aの夫々に対応して識別部90,90が設けられている。すなわち、主制御基板60の固定面60bには、左右方向に並ぶ端子列63a,64aに対応して左右方向に延在する識別部90が、上下の関係で4条設けられ、ROMソケット63の端子列63aと比べてICチップ64の端子列64aの左右幅が小さいので、ROMソケット63の端子列63aに対応する識別部90と比べてICチップ64の端子列64に対応する識別部90の左右幅が小さくなっている(図7参照)。図9または図10に示すように、識別部90は、耐熱性を有する合成樹脂からなる耐熱樹脂層92と、加熱により呈色する呈色部94と、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する赤外線検査部96と、この赤外線検査部96を覆う保護層98とから構成されている。
【0034】
図10に示すように、耐熱樹脂層92は、主制御基板60の前側に突出した端子63a,64aの周りを覆うように盛られて該端子63a,64aを主制御基板60に固定するハンダ66を少なくとも被覆するように設けられ、ハンダ66に対して識別部90の外方からアクセスできないように保護している。実施例では、耐熱樹脂層92が主制御基板60の固定面60bに突出する端子列63a,64aの全体を覆うように筋状に形成されている。耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化樹脂や湿気硬化樹脂を用いることができる。また、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリイミド、ポリシラン、オキセタン樹脂等の紫外線硬化樹脂や可視光硬化樹脂等の光硬化樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂としては、該樹脂の硬化に際して主制御基板60に熱等の影響を与えない紫外線硬化樹脂が好適であり、実施例ではアクリル系紫外線硬化樹脂とエポキシ系樹脂との混合体が用いられている。
【0035】
前記耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度よりも高い耐熱性を有している。耐熱樹脂層92の耐熱性とは、ハンダ66の溶融温度まで加熱しても被覆対象(ハンダ66)から人の指先で少なくとも剥離可能とならないことをいう。実施例で採用した前記樹脂であれば、ハンダ66の溶融温度である235℃〜250℃程度(例えば鉛含有ハンダであれば235℃、金−錫系ハンダであれば245℃程度)で加熱しても主制御基板60から剥離することが難しい。また、実施例の耐熱樹脂層92は、工具等によって衝撃等を加わえて無理やり剥がそうとしても、ひび割れて層状のまま剥離することができないよう構成される。更に、耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度を上回る温度まで加熱されり、該溶融温度程度で長時間加熱されたとしても、粘性が高い飴状になったり焦げたりする等の外観の変化や脆くなる等の変質をしてしまう。すなわち、主制御基板60のICチップ64等を取り換えた後に、剥離した耐熱樹脂層92を用いて端子列64aを再度被覆する再利用を行うことはできない。なお、耐熱樹脂層92は、ハンダ66を溶融するためのハンダゴテやドライヤ等の加熱手段の温度(340℃〜370℃)より高い耐熱性を有しているのが好ましく、加熱手段の温度よりも高い耐熱性を有していれば、加熱手段によってハンダ66を溶融させてICチップ64等の電子部品を取り外す行為を耐熱樹脂層92によってより確実に阻止できる。
【0036】
前記呈色部94は、ハンダ66の溶融温度よりも低い温度の加熱により呈色するよう構成されており、この呈色部94の色彩の変化によって識別部90(主制御基板60)に、不正な熱が加えられたか否かを目視により確認できるようになっている。ここで、呈色とは、加熱によって色が表れる発色や、加熱によって加熱前の色から他の色に変わる変色や、加熱によって加熱前の色が消える変色や、加熱によって加熱前と同じ色であっても色が濃くなったり薄くなったりする変色等、目視によって確認できる色彩の変化が起こることをいう。 実施例では、耐熱樹脂層92を構成する合成樹脂中に、加熱により呈色する呈色材が混入されて、耐熱樹脂層92が呈色部94として機能するようになっている。呈色部94は、パチンコ機10の通常の設置環境において季節変動やホール内温度の調節等によって変化する温度領域である常温域(例えば40℃以下)で呈色しないように構成され、ハンダ66の溶融温度である235℃〜250℃の温度まで加熱されると呈色するようになっている。すなわち、呈色部94は、常温域より高く、ハンダ66の溶融温度より低い温度で呈色するように設定され、例えば150℃〜200℃の範囲で呈色温度(呈色部94が呈色する温度)が設定されている。
【0037】
前記呈色部94を構成する呈色材としては、温度が元へ戻っても復色しない不可逆性のものと、温度が元へ戻れば復色する可逆性のものがあるが、不可逆性のものが望ましい。不可逆性の呈色材としては、Ni、Co、Pb、Ca、Ag、Mn、Fe等の重金属の有機金属塩や複塩を主成分として、所定温度で熱分解することで呈色するものを用いることができる。可逆性の呈色材としては、異分子間の電子授受(例えばラクトン型、ラクタム型などの染料とフェノール化合物との電子授受)を利用したものであって、例えばロイコ染料と顕色剤と溶媒との混合物を用いることができる。可逆性の呈色材としては、コレストリック型液晶をマイクロカプセルの殻に閉じ込めた結晶の分子配向性の変化を用いたものであったり、Hg、Ag、Cu、Pbなど重金属のヨウ化物、またはそれらの錯塩の結晶遷移を利用したものを採用することができる。
【0038】
図10に示すように、赤外線検査部96は、耐熱樹脂層92の表面に付与されており、赤外線の照射を受けて、目視できない赤外線波長域で発光(赤外線を発する)ようになっている。以下の説明において、赤外線検査部96に照射される赤外線を「入射赤外線」といい、入射赤外線によって赤外線検査部96から発せられる赤外線を「励起赤外線」という。実施例の赤外線検査部96は、所定波長域の入射赤外線によって励起されて入射赤外線と異なる特定波長域で発光するよう構成され、例えば赤外線検査部96は、800nmの入射赤外線に励起されて、1000nmの励起赤外線を発するようになっている。赤外線検査部96は、ZnSを母体とし、Nd等の発光中心をド−プした蛍光体や、WO4、P4O12、Mo4O16等の酸化物にNd等をド−プした蛍光体や、Ndの一部をY、Sc、La、Ce等で置換した蛍光体等で構成されている。なお、赤外線検査部96は、蛍光体を付着させるバインダとして、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を含んでいてもよく、このバインダは赤外線の透過を妨げるものではない。赤外線検査部96は、無色透明あるいは下地となる耐熱樹脂層と同色とされて、識別部90の外観に影響を与えないよう構成するのが望ましい。実施例では、赤外線検査部96が無色透明であって、識別部90において赤外線検査部96が付与されている部位と赤外線検査部96が付与されていない部位との見分けが付かないようになっている。なお、赤外線検査部96は、入射赤外線が照射されると当該入射赤外線を反射や吸収等して、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を返す構成であってもよい。
【0039】
前記赤外線検査部96は、ROMソケット63およびICチップ64の端子63a,64aに接触させないように、所定パターンで付与される。実施例の識別部90では、端子列63a,64a全体を被覆する耐熱樹脂層92の短手方向中央部に位置して、該耐熱樹脂層92の長手方向(端子列の並び方向)全体に亘って延在するパターンで赤外線検査部96が設けられている(図7または図10参照)。識別部90における赤外線検査部96のパターンは、後述する検査装置100による検査に際しての識別部90の読み取り方向に形成されている。実施例では、端子列63a,64aの並び方向に延在するベース側ガイド部78で案内して、検査装置100を該並び方向に沿って移動させつつ赤外線検査部96の読み取りを行うので、識別部90において端子列63a,64aの並び方向に延在する長手方向に赤外線検査部96のパターンが形成されている。
【0040】
前記保護層98は、赤外線検査部96を保護するコーティングであって、赤外線検査部96を少なくとも覆うように設ければよいが、実施例では耐熱樹脂層92を部分的に覆う赤外線検査部96とこの赤外線検査部96から露出した耐熱樹脂層92の所定部位とを保護層98で覆っている(図10参照)。保護層98は、赤外線を透過するよう構成され、外方から赤外線検査部96に照射される入射赤外線と、赤外線検査部96で発光される励起赤外線との何れも保護層98で変調することなく透過するようになっている。また、保護層98は、無色透明であり、呈色部94の呈色変化を保護層98を介して目視可能になっている。ここで、保護層98は、耐熱樹脂層92と同じ合成樹脂で構成されている。
【0041】
(検査装置について)
次に、パチンコ機10を構成する構成部材である主制御基板60の適否を検査する検査装置100について説明する。図11または図12に示すように、検査装置100は、識別部90が設けられた主制御基板60に入射赤外線を照射する照射部104と、赤外線検査部96が発する励起赤外線を検知する検知部106と、この検知部106で検知された励起赤外線を予め設定された照合基準と照合する照合部108と、この照合部108の照合結果に基づいて所定の情報を外部に報知する報知部112とを備えている。なお、検査装置100の検査対象となる識別部90は、赤外線検査部96を備えている。また、検査装置100は、検査者が指先操作可能な操作部114を備え、この操作部114の操作によって照射部104による入射赤外線の照射または照射停止を操作し得るようになっている。
【0042】
図11に示すように、検査装置100は、携帯可能なサイズのハウジング102に、照射部104、検知部106、照合部108、報知部112および操作部114が設けられてユニット化されており、検査者が検査装置100を持ち運んで、例示した主制御基板60だけでなくパチンコ機10における任意の構成部材を検査し得るようになっている。なお、実施例のハウジング102は、細長い角柱状のペン型に形成されている(図11参照)。検査装置100は、照射部104および検知部106が、ハウジング102における一方の先端面(検査先端部103という)側に臨むように設けられ、検査装置100は、検査先端部103を主制御基板60(検査対象)に向かい合わせて検査を行うようになっている。なお、検査装置100は、検査先端部103の角部が円弧状に面取りされている。
【0043】
前記照射部104は、入射赤外線を検査対象に対して照射するものであって、例えば発光ダイオードが用いられる。実施例の照射部104は、赤外線検査部96が反射・吸収・発光させることができる一定波長域の入射赤外線を、操作部114のON操作に基づいて連続的に照射するよう構成され、操作部114のOFF操作により照射を停止するようになっている。
【0044】
前記検知部106は、ハウジング102における照射部104が臨む面と同じ面に臨むように設けられ、照射部104から照射された入射赤外線によって励起された赤外線検査部96の励起赤外線を検知するようになっている。検知部106としては、フォトダイオード、フォトトランジスタあるいはCCD等を用いることができ、実施例では検知部106としてフォトダイオードが採用されている。また、検知部106は、赤外線検査部96が発する特定波長域の赤外線だけを透過するフィルタ106aが設けられて、検知部106は該特定波長域の赤外線を検知するよう構成されている。ここで、照射部104から照射した入射赤外線が赤外線検査部96以外の部位で反射や吸収(変調)されることで、照射した入射赤外線の波長のまま等、赤外線検査部96が発する特定波長域以外の赤外線が、検査対象から返ってくることが考えられる。実施例の検知部106のように、照射部からの入射赤外線(例えば800nm)に励起されて赤外線検査部96が発する特定波長域(例えば1000nm)だけを検知するよう構成することで、赤外線検査部96以外を検知してしまう誤検知を防止できる。
【0045】
前記照合部108は、検知部106と電気的に接続されており(図12参照)、検知部106から励起赤外線の検知信号が入力されるようになっている。照合部108は、フィルタ106aによって透過された特定波長域の励起赤外線の検知受光強度を数値化する変換手段109と、照合基準が設定・記憶され、変換手段109で数値化された検知信号値と照合基準とを比較して適否を判断する比較判定手段110とを備えている。実施例の比較判定手段110には、適正な赤外線検査部96を備えた識別部90が付与された主制御基板60に対して基板ケース70のベース側ガイド部78で位置決めして適切な距離および位置で照射部104から入射赤外線を照射した際に、検知部106で検知されるべき受光強度の検出信号の値(設定受光強度)が、赤外線検査部96の付与量の変動や照射部104における入射赤外線の照射強度のばらつき、入射赤外線の安定度、基板ケース70による減衰等を考慮した所定の幅を持たして記憶されている。比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であれば、報知部112に良判定信号を出力する。これに対し、比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値を下回れば、報知部112に対して何も信号を出力しない。また、比較判定手段110は、変換手段109で数値化された検知受光強度の値と設定受光強度の値とを比較し、検知受光強度の値が設定受光強度の値以上であっても、予め比較判定手段110に設定された所定の上限値(上限値>設定受光強度)よりも検知受光強度が高ければ、報知部112に対して何も信号を出力しない。
【0046】
前記報知部112は、LED等からなる発光手段112aと音出力手段112bとを備え、正常および異常の少なくとも一方の情報を、光と音との両方によって報知し得るよう構成されている。報知部112は、比較判定手段110から良判定信号が入力されると、発光手段112aが発光すると共に、ビープ音等の機械音や音声等が音出力手段112bから出力され、検査者は報知部112による光および音の報知によって検査対象が正規品であると判断できる。これに対して、報知部112は、比較判定手段110から良判定信号が入力されないと、発光手段112aを消灯すると共に音出力手段112bから何も出力されないので、検査者は報知部112の無反応により検査対象が正規品ではないと判断できる。
【0047】
前記検査装置100は、検査先端部103の一辺の幅が基板ケース70に形成されたベース側ガイド部78の短手方向(端子列63a,64aの並び方向と交差する方向)の幅に合わせて形成されており、検査先端部103をベース側ガイド部78に挿入することで、基板ケース70に収納された主制御基板60の識別部90に対して検査先端部103が位置合わせされるようになっている。また、検査先端部103の他辺の幅がベース側ガイド部78の長手方向(端子列63a,64aの並び方向)より短尺に設定されている。検査装置100は、検査先端部103をベース側ガイド部78の底面(後面)に当接させた状態で、検査先端部103をベース側ガイド部78の長手方向一端から長手方向他端へ向けて変位させて赤外線検査部96のパターンを読み取るようになっている。ここで、照射部104および検知部106は、基板ケース70に当接されるハウジング102の検査端面(端面)103aよりも内側に位置すると共に、該検査先端部103を基板ケース70に当接させた際に該基板ケース70に収納された主制御基板60に対向可能に設けられている。
【0048】
実施例の識別部90を設けた主制御基板60等の構成部材を備えたパチンコ機10と検査装置100とは、互いに関連付けられており、パチンコ機10の識別部90と検査装置100とによって検査システムが構成される。すなわち、検査装置100は、主制御基板60に付与された識別部90の赤外線検査部96に合わせて、照射部104から照射する入射赤外線の波長域や、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を検知するため検知部106や、照合部108の照合基準が設定されている。また、パチンコ機10には、識別部90に対して検査装置100の照射部104および検知部106を位置合わせし得るベース側ガイド部78が設けられ、このベース側ガイド部78は検査装置100における照射部104および検知部106を識別部90の赤外線検査部96のパターンを適切に読み取るように案内するよう構成されている。
【0049】
前記識別部90の作用について説明する。識別部90は、パチンコ機10の製造過程で厳密な管理の下で主制御基板60に付与されるものであって、製造メーカー以外の設備が整っていない環境(例えばホール等)では識別部90と同じものを形成することが難しく、識別部90の複製が容易ではない。また、識別部90は、単一の構成ではなく、耐熱樹脂層92、呈色部94、赤外線検査部96および保護層98を組み合わせた複合物であるので、識別部90を複製する不正行為がより行い難くなっている。そして、基板ケース70を介して外側から目視できる識別部90を主制御基板60に設けておけば、不正行為に対する牽制となる。
【0050】
前記識別部90は、ハンダ66を被覆する耐熱樹脂層92を備えているので、端子63a,64aを主制御基板60に対して固定しているハンダ66に対して外方からアクセスできない。また、耐熱樹脂層92は、ハンダ66の溶融温度より高い耐熱性を有しているので、ハンダゴテ等の加熱手段で耐熱樹脂層92を融かすと共にハンダを融かして、ROMソケット63やICチップ64を主制御基板60から取り外そうとしても、ハンダゴテによる加熱で耐熱樹脂層92自体を融かして除去することが難しく、耐熱樹脂層92を介する熱伝導でハンダを融かすこともできない。すなわち、耐熱樹脂層92を備えた識別部90を端子列63a,64aに設けることで、ROMソケット63およびICチップ64を主制御基板60から取り外すことが難しく、ROM62やICチップ64を不正品と取り換える不正行為を防止することができる。更に、耐熱樹脂層92は、時間をかけて過剰に加熱しても、非常に脆くなったり粘性が高くなるので主制御基板60に設けられた原形を保った状態で剥離させることができず、耐熱樹脂層92を元の耐熱樹脂層92として再利用できない。更にまた、実施例の耐熱樹脂層92は、衝撃等の力を加えて主制御基板60から剥離しようとしても、細かく砕けてしまい、主制御基板60に設けられた原形を保った状態で剥離させることができない。このように、耐熱樹脂層92は、主制御基板60から剥離できたとしても、主制御基板60に設けられた原形から変質するよう構成されているので、剥離した耐熱樹脂層92を再度用いることができず、主制御基板60から剥離させるまでに時間をかけさせてROM62やICチップ64の取り換え行為を阻むだけでなく、不正行為者による識別部90の複製や再生を困難にし得る。耐熱樹脂層92は、過剰に加熱されると、飴状になったり焦げたりする等、外観が変化して痕跡が残るので、耐熱樹脂層92に対して不正な攻撃があったことを目視により容易に確認でき、ROM62やICチップ64等が取り換えられた可能性があることを早期に発見し得る。
【0051】
前記識別部90は、加熱による呈色する呈色部94として耐熱樹脂層92が機能するよう構成されている。ハンダゴテ等の加熱手段で耐熱樹脂層92を融かすと共にハンダ66を融かして、ROMソケット63やICチップ64を主制御基板60から取り外そうとした際に、耐熱樹脂層92の色が変わる。すなわち、耐熱樹脂層92の呈色によって不正行為が行われた痕跡が残るので、耐熱樹脂層92に対して不正な攻撃があったことを目視により容易に確認でき、ROM62やICチップ64等が取り換えられた可能性があることを早期に発見し得る。また、呈色部94としての耐熱樹脂層92は、常温で変化せずにハンダ66の溶融温度より低い温度の加熱によって色が変化するよう構成されて、加熱によってハンダ66が溶融する前に耐熱樹脂層92の色が変わるので、不正行為が行われた痕跡を残すことができる。しかも、呈色部94は、ハンダ66の溶融温度より高い耐熱性を有している耐熱樹脂層92として構成されているので、ハンダゴテ等によって耐熱樹脂層92が融ける前に色が変化し、この色が変化した耐熱樹脂層92を前述した如く剥離することが難しいから、不正行為が行われた痕跡をより確実に残すことができる。
【0052】
前記識別部90は、入射赤外線によって励起された励起赤外線を発する赤外線検査部96を備えているので、主制御基板60に向けて入射赤外線を照射することで、適正なROM62やICチップ64が実装された正規の主制御基板60であれば、主制御基板60に付された識別部90の赤外線検査部96が赤外線領域で発光するのに対し、赤外線検査部96を備えていない不正な主制御基板60に交換されていれば、照合基準を満たす赤外線は主制御基板60から発せられない。すなわち、識別部90の赤外線検査部96によって発せられる励起赤外線を検知して照合基準と照合することで、入射赤外線を照射した主制御基板60が正規品であるか否かを簡単に確認できる。ここで、赤外線検査部96は、入射赤外線と異なる波長域の励起赤外線を発するので、照射した入射赤外線の単なる反射と区別することができ、赤外線検査部96を精度よく検知し得る。また、赤外線検査部96を端子62a,63a64aや電子部品本体に付着しないように設けることで、正規の手順でROM62やICチップ64等を取り外して例えば情報を書き換えて主制御基板60に戻した際に、ROM62やICチップ64に残った赤外線検査部96が誤検知されることを回避できる。
【0053】
ところで、ブラックライトによって紫外線を当てることで可視光を発光する紫外線発光型蛍光体を、偽造等の不正防止のために用いることも考えられる。紫外線発光型蛍光体は、服飾等の広い分野で用いられ、ブラックライトの入手がも容易であると共に紫外線発光型蛍光体の存在を検知するセンサーも市販されている。そして、紫外線発光型蛍光体は、ブラックライトを当てることで目視によって容易に確認することができ、紫外線発光型蛍光体が前述の如く広く流通していることから、紫外線発光型蛍光体による不正防止対策を複製することは比較的容易である。実施例の赤外線検査部96は、入射赤外線によって励起されて励起赤外線を発するので、赤外線検査部96自体または赤外線検査部96のパターンが、入射赤外線の照射の有無にかかわらず、目視が不可能であり、仮に赤外線を照射したとしても専用の検査装置100を保有していない者は、赤外線検査部96の存在が分からない。このように、赤外線検査部96は、入射赤外線または入射赤外線以外の光線(可視光や紫外線)をあてても、人の目で識別可能な態様で赤外線検査部96が発光しないので、不正行為対策を行っていること自体が気づかれ難く、不正行為者の複製をより困難にすることができる。
【0054】
前記識別部90は、赤外線検査部96を被覆する保護層98を備えているので、保護層98によって赤外線検査部96の削り取りを困難にし得る。例えば保護層98を削り取った後に赤外線検査部96を耐熱樹脂層92から削り取ったとしても、保護層98を構成する樹脂と赤外線検査部96を構成する蛍光体との分離が困難であり、同様に耐熱樹脂層92を構成する樹脂と赤外線検査部96を構成する蛍光体との分離も困難である。すなわち、既存の識別部90から赤外線検査部96を削り取って、この削り取った蛍光体を溶媒等に混ぜて別の主制御基板60に再度付着したとしても、正規(元)の赤外線検査部96における蛍光体の単位面積当たりの存在量(含有量)より再付着させた蛍光体の単位面積当たりの存在量(含有量)が少なくなる。ここで、赤外線検査部96は、励起赤外線の発光強度が蛍光体の含有量に比例するので、正規の赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度よりも再生した赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度が小さくなる。励起赤外線(赤外線検査部96)の適否を判断する照合基準として、発光強度(実施例では検知部106での受光強度)を設定することで、設定された発光強度を下回る励起赤外線であれば、検査対象が不正品であることが分かり、設定された発光強度以上の励起赤外線であれば、検査対象が適正品であることが分かる。すなわち、赤外線検査部96は、単に蛍光体を存在させるだけでなく、その存在量もコントロールすることで、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。このように、実施例の識別部90によれば、赤外線検査部96の再利用を阻むことができるので、ROM62やICチップ64等を取り換えた後に複製した赤外線検査部96を付与して偽装する不正行為を困難にし得る。
【0055】
次に、検査装置100による主制御基板60の検査について説明する。基板ケース70は、取着具87を設置部材32の保持孔から引き抜き、設置部材32の位置決めピンから取付部80dを取り外すと共に設置部材32の受部から爪部72dを取り外すことで、設置部材32から工具を用いることなく簡単に取り外すことができる。基板ケース70の前面側に設けられた4条のベース側ガイド部78のうちの一つを選び、ベース側ガイド部78の一端部に検査装置100の検査先端部103を整合させる。検査先端部103は、ベース側ガイド部78の上下の側面に挟まれて上下方向に位置決めされ、ベース側ガイド部78が対向する識別部90の一端部に対して照射部104および検知部106が対向配置されるように位置合わせされる。また、検査先端部103をベース側ガイド部78の底面に当接させることで、識別部90に対する照射部104および検知部106の離間距離が決まる。
【0056】
前記検査装置100の操作部114をON操作することで、照射部104から入射赤外線が識別部90に向けて照射される。ここで、検査装置100は、照射部104をベース側ガイド部78によって識別部90に対して位置決めした状態で入射赤外線を照射するので、識別部90に対する入射赤外線の照射強度および照射角度等の照射条件を一定にすることができる。実施例の識別部90は、赤外線検査部86が識別部90の左右方向(延在方向)全体に亘って設けられているので、入射赤外線によって励起された赤外線検査部96によって励起赤外線が発せられる。検査装置100は、検知部106でフィルタ106aを透過した特定波長域の励起赤外線だけを検知する。ここで、検査装置100は、検知部106をベース側ガイド部78によって識別部90に対して位置決めした状態で励起赤外線を受光するので、検知部106における励起赤外線の受光条件を一定にすることができる。検査装置100は、検知部106で検知した特定波長域の励起赤外線の検知受光強度を照合部108の変換手段109で数値に変換し、比較判定手段110で検知受光強度の数値と予め比較判定手段110に記憶されている設定受光強度の数値を比較する。
【0057】
前記検査装置100は、比較判定手段110で検知受光強度と設定受光強度を比較した結果、検知受光強度が設定受光強度以上であれば、報知部112の発光手段112aが発光されると共に音出力手段112bから所定の音が出力される良報知が行われる。これに対して、比較判定手段110で検知受光強度と設定受光強度を比較した結果、検知受光強度が設定受光強度以上とならなければ、報知部112の発光手段112aが消灯したままで音出力手段112bから音は出力されない。そして、検査者は、検査装置100の報知部112の良報知によって赤外線検査部96を検知していることが分かり、この赤外線検査部96が設けられた主制御基板60が正規品であることを判断できる。
【0058】
前記検査装置100は、操作部114をON操作したまま検査先端部103をベース側ガイド部78に沿わせて他端側に移動することで、該検査先端部103がベース側ガイド部78の上下の側面で案内されて、主制御基板60に対して所定経路で変位させることができる。ここで、ベース側ガイド部78は、端子列63a,64aの並び方向に延在する識別部90に合わせて延在するように形成されているので、検査先端部103をベース側ガイド部78の案内下に移動することで、照射部104および検知部106を識別部90をなぞるように移動させることができる。すなわち、照射部104および検知部106が、識別部90と対向した状態で識別部90の延在方向に沿って平行に変位され、実施例の赤外線検査部96が識別部90の延在方向全体に亘って設けられているので、ベース側ガイド部78の一端から他端に変位させる間に亘って報知部112から良である旨の情報(発光手段112aの発光および音出力手段112bの音出力)が報知される。そして、検査者は、検査先端部103をベース側ガイド部78の一端から他端へ移動した際に、この移動全体に亘って検査装置100の報知部112が良報知していることにより、適正なパターンの赤外線検査部96が存在していることが分かり、報知部112の報知から判別できる赤外線検査部96のパターンによっても主制御基板60が正規品であることを判断できる。仮に赤外線検査部96が端子列63a,64aの一端部に部分的に複製されていたら、検査装置100は、ベース側ガイド部78の一端で報知部112から良報知されるものの、ベース側ガイド部78の他端側に検査先端部103を移動すると良報知がなされない。他のベース側ガイド部78に対応する識別部90についても、検査装置100によって前述した手順で同様に検査される。
【0059】
このように、主制御基板60の識別部90(赤外線検査部96)に向けて照射部104から入射赤外線を照射することで、正規の主制御基板60であれば、赤外線検査部96が赤外線領域で発光するのに対し、不正な主制御基板60に交換されていれば、照合基準を満たす赤外線は発せられない。すなわち、検査装置100では、赤外線検査部96によって発せられる励起赤外線を検知部106で検知して、照合部108で照合基準と照合した結果に基づいて報知部112から報知される情報(良報知)によって、入射赤外線を照射した主制御基板60が正規品であるか否かを簡単に確認できる。しかも、検査装置100は、識別部90から離れた位置から検査を行うことができ、主制御基板60に検査先端部103を接触させることなく検査を行うことができる。すなわち、検査装置100による検査に際して、主制御基板60を基板ケース70から取り外すことは必須ではなく、主制御基板60を基板ケース70に収納したまま検査を行うことができる。また、検査装置100は、携帯可能なユニット形態であるので、主制御基板60に対して該検査装置100側を任意に動かして該主制御基板60の適否を検査することができる。
【0060】
前記検査装置100は、励起赤外線の有無を単に判別しているのではなく、検知部106で検知された励起赤外線の検知受光強度が、予め設定された設定受光強度以上であるか否かを照合部108で照合している。前述したように、赤外線検査部96を識別部90から削り取って不正な主制御基板60に再生したとしても、正規の赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度よりも再生した赤外線検査部96による励起赤外線の発光強度が小さくなるので、検査装置100の検査で良報知されない。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96における蛍光体の存在量を、例えばロットや機種や構成部材等で変更し、これらロットや機種や構成部材等に合わせた設定受光強度を照合基準として設定した検査装置100を用意することで、識別部90に合わせた検査装置100を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0061】
前記検査装置100は、励起赤外線の有無を単に判別しているのではなく、照合基準として設定された特定波長域の励起赤外線を検知部106が検知したか否かを照合するよう構成されている。例えば、正規の赤外線検査部96に用いられる蛍光体と異なる波長域で励起赤外線を発する蛍光体で赤外線検査部96を形成したとしても、検査装置100の照合基準を満たさないので、検査装置100の検査で良報知されない。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96の励起赤外線の波長域を、例えばロットや機種や構成部材等で変更し、これらロットや機種や構成部材等に合わせた特定波長域を照合基準として設定した検査装置100を用意することで、識別部90に合わせた検査装置100を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0062】
前記検査装置100は、赤外線検査部96による励起赤外線の有無だけを単に判別しているのではなく、赤外線検査部96のパターンに応じて表れる報知パターンによっても、主制御基板60が正規品であるか否かを判別することができる。実施例の識別部90が設けられた主制御基板60であれば、検査装置100でベース側ガイド部78で規定される所定経路に沿って識別部90を検査すると、該識別部90の赤外線検査部96のパターンに応じて良報知がなされる。例えば、正規の赤外線検査部96のパターンと異なるパターンで赤外線検査部96を主制御基板60に形成したとしても、検査装置100の良報知のパターンによって検査者が当該主制御基板60が不正品である蓋然性があることを判別できる。すなわち、検査装置100は、赤外線検査部96を複製するような不正行為によっても欺かれ難く、主制御基板60の真贋判定を精度よく行うことができる。また、赤外線検査部96のパターンを、例えばロットや機種や構成部材等で変更することで、これらロットや機種や構成部材等に合わせた赤外線検査部96のパターン情報を有している者だけが主制御基板60の真贋判定を行うことができ、不正行為者の複製等の不正行為をより困難にすることができる。
【0063】
前記検査装置100は、検査対象となる主制御基板60の識別部90に対して相対的な位置関係が決まっている基板ケース70等の検査対象と異なる構成部材を、識別部90に対する位置合わせ基準として用いて検査を行うようになっている。すなわち、検査装置100による主制御基板60の検査に際して、検査装置100を主制御基板60に対して位置決めするための専用の治具は必要はない。また、検査装置100は、主制御基板60かから離した状態で検査を行えるので、主制御基板60に合わせて特別な形状とすることも特に必要はない。検査装置100は、主制御基板60以外のパチンコ機10を構成する構成部材の検査にも用いることができ、汎用性が高い。
【0064】
実施例のパチンコ機10は、識別部90に合わせてベース側ガイド部78が基板ケース70に設けられており、ベース側ガイド部78に検査装置100の検査先端部103を整合させると共に該検査先端部103を基板ケース70に当接させることで、照射部104および検知部106を基板ケース70に接触させずに、基板ケース70に収納された主制御基板60の識別部90との離間距離および平行位置を一定に保った状態で検査を行い得る。すなわち、検査装置100による赤外線検査部96の検査条件を一定にすることができ、より正確な真贋判定を行い得る。
【0065】
(変更例)
(1)実施例では、識別部90が設けられる構成部材として主制御基板60を例に挙げたが、パチンコ機を構成する構成部材の何れに識別部を設けてもよい。例えば主制御基板60以外の統括制御基板や払出制御基板などの制御基板、払出制御装置50や入賞装置等のパチンコ球の払い出しに関係する装置、あるいは基板ケース70等、不正行為者によって取り換え等の攻撃を受ける可能性がある構成部材に識別部を設けると特に有効である。
(2)検査装置100を識別部90に対して位置合わせするガイド部78は、省略してもよい。また、ガイド部は、例えば構成部材から突出形成されたリブ状片やその他の形状であってもよく、検査装置100の検査先端部103を、検査対象と平行する一方向だけの移動を規制する構成であったり、検査対象と平行する3方向の移動または全方向の移動を規制する構成であってもよい。
(3)実施例では、遊技機としてパチンコ機を例示して説明したが、これに限られるものではなく、アレンジボール機やピンボール機、スロットマシン機等の各種遊技機を採用し得る。
【0066】
(4)識別部90は、呈色部94を独立した層としてもよく、赤外線検査部96に呈色材を混ぜて赤外線検査部96を呈色部94として機能させたり、保護層98に呈色材を混ぜて保護層98を呈色部94として機能させてもよい。
(5)識別部90における耐熱樹脂層92、呈色部94、赤外線検査部96の積層順序は、実施例の順序に限定されず、例えば赤外線検査部96を覆うように耐熱樹脂層92を設けたり、呈色部94を覆うように耐熱樹脂層92を設けてもよい。なお、赤外線検査部96を耐熱樹脂層92で覆えば、この耐熱樹脂層92が保護層98として機能する。
(6)識別部90は、保護層98によって赤外線検査部96の付与部位が外方から目視により判別できないのであれば、赤外線検査部96を着色してもよい。
(7)実施例では、端子列53a,54a全体を覆うように識別部90を設けたが(図7参照)、端子列の一部分を覆うように識別部を設けてもよい。例えば図13に示すように、電子部品118の端子列118aの両端部を覆うように識別部120,122,124を2つの部分120a,120b,122a,122b,124a,124bに振り分けて設け、端子列118aの中央部を露出させる構成であってもよい。
【0067】
(8)識別部90における赤外線検査部96のパターンは、実施例の構成に限定されず、識別部間で赤外線検査部のパターンを変えたり、1つの識別部の中で複数の赤外線検査部を互いに間隔をあけて設けたり、識別部の中で赤外線検査部を設ける部位や数を変えてパターンを形成してもよい。図13(a)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部120では、該識別部120の一端部(図中左側)に赤外線検査部96が該識別部120に沿う帯状に設けられ、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部120では、該識別部120の他端部(図中右側)に赤外線検査部96が該識別部120に沿う帯状に設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって所定範囲で報知されてから非報知になる報知パターンが表れ、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、非報知から報知部112で所定範囲で報知される報知パターンが表れる。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部120,120の報知パターンによっても真贋判定が可能である。図13(b)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部122では、該識別部122における一端側部分122a中央に赤外線検査部96が点状に設けられ、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部120では、該識別部120の他端側部分122b中央に赤外線検査部96が点状に設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって短い範囲で報知されてから非報知になる報知パターンが表れ、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、非報知から報知部112で短い範囲で報知される報知パターンが表れる。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部122,122の報知パターンによっても真贋判定が可能である。図13(c)に示す例では、電子部品118の一方の端子列118aに対応する一方の識別部124では、該識別部124における一端側部分124aに点状の赤外線検査部96が2箇所設けられると共に、該識別部124における他端側部分124bに点状の赤外線検査部96が2箇所設けられる。また、電子部品118の他方の端子列118aに対応する他方の識別部124では、該識別部124における一端側部分124a中央に点状の赤外線検査部96が1箇所設けられると共に、該識別部124における他端側部分124b中央に点状の赤外線検査部96が1箇所設けられる。この場合、検査装置100で一方の識別部120を左側から右側に検査した際に、報知部112によって4回の報知があり、検査装置100で他方の識別部120を左側から右側に検査した際に、2回の報知がある。すなわち、1つの電子部品118に対応する2つの識別部124,124の報知パターンによっても真贋判定が可能である。
【0068】
(9)実施例では、端子53a,54a全体を識別部90で完全に覆う構成であるが、図14に示すように電子部品118の端子118aの一部(図14では先端部)が識別部126から突出する構成であってもよい。端子118aの先端部が識別部126の外方に臨んでいるので(図14(a)参照)、電子部品118の検査を行う際に、端子118aに検査器具を接触させることができ、電子部品118のメンテナンスを行い易い。また、識別部126において赤外線検査部96は、端子118aに接触しないように設けられ、端子118aの並び方向と交差する方向に挟んで端子118aの両側に赤外線検査部96,96を設けても(図14(b)上段参照)、端子118aの片側に並び方向に沿って赤外線検査部96を設けてもよい(図14(b)下段参照)。
【0069】
(10)識別部90は、主制御基板60の固定面60bに設ける構成に限定されず、図15に示すように実装面60a側に識別部128を設けてもよい。なお、図15に示す識別部128は、赤外線検査部96単層で構成されている。識別部128は、主制御基板60の固定面60bにおけるROMソケット63およびICチップ64の端子周りに設けられるだけでなく、実装面60aにおける端子孔61の周りにも設けられている。また、識別部128は、ROMソケット63におけるROM62の接続部にも設けられている。なお、実装面60a側に設けた識別部128は、前述した基板ケース70のカバー側ガイド部88で検査装置100の検査先端部103を位置決めした状態で検査するとよい。ここで、実装面60a側に設けられる識別部128は、耐熱樹脂層92および呈色部94を設けず赤外線検査部96だけで構成するのが望ましい。識別部128を主制御基板60の実装面60aに設けることで、基板ケース70をパチンコ機本体から取り外すことなく識別部128の検査を行うことができるメリットがある。識別部128を主制御基板60の実装面60aと固定面60bとの両方に設けることで、固定面60b側の識別部は耐熱樹脂層92を設けてハンダ66への不正行為を防止して、実装面60a側の識別部は赤外線検査部96によって基板ケース70を取り外すことなく簡単に検査でき、不正行為をより行い難くできる。
【0070】
(11)検査装置100は、照射部104、検知部106および必要に応じて操作部114を同一ハウジングに設けた第1のユニットと、照合部108および報知部112を同一ハウジングに設けた第2のユニットとを別々に構成してもよい。また、検査装置100の照射部104、検知部106、照合部108、報知部112を夫々独立したハウジングに設けてもよい。
(12)実施例の検査装置100は携帯型であるが、可搬型または固定型であってもよい。またパチンコ機10に組み込んでもよい。
(13)報知部による報知は、種々の態様を採用できる。例えばパチンコ機10の発光装置26を点滅させたり、遊技盤30の図柄表示装置34に文字または図形等を表示させるなど視覚的に報知したり、パチンコ機10に設けられたスピーカ24から警報音等を発生させるような聴覚的に報知する等、パチンコ機10を用いて報知してもよい。また、パチンコ機が設けられた島設備やホールコンピュータで報知する態様であってもよい。
(14)実施例では、照合基準として励起赤外線の強度、励起赤外線の波長域および励起赤外線の検知パターンを挙げたが、照合基準として何れか1つだけを設定しても、何れか2つまたは全部を組み合わせて設定してもよい。すなわち、励起赤外線の波長域を照合基準とする場合は、特定波長域の励起赤外線だけを透過するフィルタ106aを設けることで該特定波長域の励起赤外線だけを検知部106で検知し、照合部108は、照合基準として設定された特定波長域の励起赤外線を検知部106が検知したか否かを照合するよう構成される。また、励起赤外線の検知パターンを照合基準とする場合は、照射部104および検知部106を主制御基板60等の検知対象に対して所定経路に沿って変位した際に、照合部108は、検知部106による励起赤外線の検知が照合基準として設定された所定パターンで表れるか否かを照合するよう構成される。
(15)照合部108には、適正な赤外線検査部96を備えた識別部90に対して特定波長域の入射赤外線を照射した際に、検知部106で検知されるべき励起赤外線の波長域の値を記憶させてもよい。すなわち、検知部106で検知した励起赤外線の受光強度だけでなく、設定された波長域の値と検知部106で検知した励起赤外線の波長域の値を比較するよう構成される。
(16)照射部104から入射赤外線を連続的に照射する例を説明したが、照射部104から所定パターンのパルス状に入射赤外線を照射してもよい。この場合、検査装置100は、照射部104から照射されたパターンで検知部106で励起赤外線が検知されるか否かも照合部108における照合基準として設定される。
【0071】
(17)検査装置100を識別部90に対して位置決めするガイド部78は、識別部90の夫々に対応して設ける構成に限定されず、複数列の識別部90に対応させて設けてもよい。例えば図16に示すように、基板ケース70は、ROMソケット63の上下2つの端子列63a,63aに対応する2列の識別部90,90に合わせて形成されたベース側ガイド部78と、ICチップ64の上下2つの端子列64a,64aに対応する2列の識別部90,90に合わせて形成されたベース側ガイド部78とを備えている。変更例の検査装置101は、照射部104および検知部106が検知端面103aの中央ではなく、照射部104および検知部106が検知端面103aの何れか一方に偏倚して配置されている(図16参照)。検査装置101は、上側の識別部90を検査する際には、照射部104および検知部106を上側に位置させて、ベース側ガイド部78の上面に検査先端部103の上面を当接させて位置決めするようになっている。検査装置101は、下側の識別部90を検査する際には、検査装置101を反転して照射部104および検知部106を下側に位置させて、ベース側ガイド部78の下面に検査先端部103の下面を当接させて位置決めするようになっている。このように、変更例の検査装置101によれば、識別部90とベース側ガイド部78を1対1で設けなくても、該検査装置101を反転するだけで照射部104および検知部106を識別部90に対向させることができる。
【0072】
(18)識別部は、耐熱樹脂層および呈色部の両方または何れか一方を省略して、赤外線検査部だけ、あるいは赤外線検査部および保護層から構成してもよい。
(19)識別部は、耐熱樹脂層および呈色部の両方を省略した構成であれば、電子部品の端子を固定するハンダを覆う構成に限定されず、制御基板の板面、電子部品本体、基板ケースやその他の部材に適宜設けることができる。
(20)制御基板や中継基板に実装されるCPU、ROM、RAM、抵抗やコンデンサ等の電子部品に、赤外線検査部だけまたは赤外線検査部および保護層を備えた識別部を配設することで、当該電子部品自体を識別部によって正規品であるか否かを簡単に確認することができる。識別部は、電子部品の表面であれば、制御基板に対向する面以外の側面や上面の何れの面に設けてもよい。また、識別部は、文字、一次元あるいは二次元コード、または模様等の所定のパターンで設けることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 パチンコ機(遊技機)
60 主制御基板(構成部材)
62 ROM(電子部品)
63 ROMソケット(電子部品)
63a,64a 端子
66 ハンダ
70 基板ケース
78 ベース側ガイド部(ガイド部)
90,120,122,124,126,128 識別部
92 耐熱樹脂層
96 赤外線検査部
98 保護層
100,101 検査装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機を構成する構成部材の表面に、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部を備えた
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記識別部は、赤外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部と、この赤外線検査部の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層とを備えた請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記構成部材は、遊技機の制御を担う制御基板であり、
前記識別部は、電子部品の端子を制御基板に固定するハンダの溶融温度より高い耐熱性を有する耐熱樹脂層を備え、
前記識別部は、制御基板に固定された電子部品の端子を固定するハンダを被覆するように設けられた請求項1または2記載の遊技機。
【請求項4】
前記識別部は、前記構成部材としての基板に実装された電子部品の表面に配設された請求項1または2記載の遊技機。
【請求項5】
前記構成部材には、前記識別部が所定パターンで設けられた請求項1〜4の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記構成部材は、遊技機の制御を担う制御基板であり、
前記制御基板は、赤外線を透過可能な基板ケースに収納され、
前記識別部に対して赤外線を照射すると共に識別部が発した赤外線を検出する検査装置を該識別部に対して位置決めするガイド部が、制御基板の識別部に臨む基板ケースの板面に設けられた請求項1〜5の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項1】
遊技機を構成する構成部材の表面に、照射された赤外線と異なる波長域の赤外線を発する識別部を備えた
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記識別部は、赤外線によって励起されて赤外線波長域で発光する赤外線検査部と、この赤外線検査部の外面を被覆し、赤外線を透過可能な保護層とを備えた請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記構成部材は、遊技機の制御を担う制御基板であり、
前記識別部は、電子部品の端子を制御基板に固定するハンダの溶融温度より高い耐熱性を有する耐熱樹脂層を備え、
前記識別部は、制御基板に固定された電子部品の端子を固定するハンダを被覆するように設けられた請求項1または2記載の遊技機。
【請求項4】
前記識別部は、前記構成部材としての基板に実装された電子部品の表面に配設された請求項1または2記載の遊技機。
【請求項5】
前記構成部材には、前記識別部が所定パターンで設けられた請求項1〜4の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記構成部材は、遊技機の制御を担う制御基板であり、
前記制御基板は、赤外線を透過可能な基板ケースに収納され、
前記識別部に対して赤外線を照射すると共に識別部が発した赤外線を検出する検査装置を該識別部に対して位置決めするガイド部が、制御基板の識別部に臨む基板ケースの板面に設けられた請求項1〜5の何れか一項に記載の遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−17552(P2013−17552A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151516(P2011−151516)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000135210)株式会社ニューギン (1,935)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000135210)株式会社ニューギン (1,935)
【Fターム(参考)】
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