遊技装置及び遊技場システム
【課題】 従業員の作業負担を軽減するとともに、パチンコ機の稼動実績に即した閾値を設定して、釘調整に有用な平均特賞出玉を得る。
【解決手段】 ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機1からの所定の信号にもとづいて大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を閾値にもとづいてグループ分けし、グループにおける獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部45を備えた。
【解決手段】 ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機1からの所定の信号にもとづいて大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を閾値にもとづいてグループ分けし、グループにおける獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部45を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機で行われた遊技に関する情報を管理する遊技装置と、この遊技装置を備えた遊技場システムに関し、特に、ラウンド数の異なる特定遊技が複数種類実行される遊技機について、各特定遊技間における特賞出玉の閾値を自動的に設定して、発生頻度の一番高い特定遊技を選択し、この特定遊技の平均特賞出玉を算出して信頼性の高い釘調データを取得する遊技装置及び遊技場システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊技場に設置される遊技機としてパチンコ機が知られている。
パチンコ機は、遊技者が発射ハンドルを操作して遊技球を盤面に発射させ、この発射した遊技球が所定の入賞口に入賞することで、所定数の入賞球が払い出されるという遊技機である。
【0003】
このパチンコ機においては、通常、遊技者にとって有利な特定遊技と、この特定遊技以外の遊技である通常遊技とが行われるようになっている。
特定遊技とは、始動口に入賞した遊技球を検出することで抽せんを行い、この抽せんの結果、大当りになると大当り状態に移行し、盤面に配設され扉状に形成された大入賞口が所定期間及び所定回数開放されて、遊技球の入賞率が高まる遊技状態をいう。
【0004】
ここで、大当り状態における大入賞口の1回の開閉を1ラウンドという。例えば、大当り状態において、大入賞口が開き、所定数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか所定時間(例えば、30秒)が経過すると、該大入賞口が閉じて1ラウンドが終了するようになっている。
また、1回の大当り状態における大入賞口の開閉回数をラウンド数といい、パチンコ機の機種ごとにラウンド数が決められている。例えば、従来では15ラウンドのみ(一種類)の機種が多かったが、近年では、5ラウンドと8ラウンドと16ラウンドのように、ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を実行可能なパチンコ機が登場してきている。
【0005】
ところで、大当り状態に移行したパチンコ機からは、大当り状態を示す大当り信号が出力される。この大当り信号は、大当り状態の種類を区別することなく一のシリアル信号として出力される。そして、パチンコ機を管理するホールコンピュータでは、パチンコ機からの大当り信号の受信を開始してから終了するまでの間に受信したアウト信号とセーフ信号にもとづいて、大当り状態1回当たりの出玉数(獲得遊技媒体数)をカウントし、これを特賞出玉として記憶している。そして、営業時間が終了すると、大当り状態の種類に関係なく、すべての大当り状態の特賞出玉を合計し、大当り状態の発生回数で除算して、特賞出玉の平均値を算出していた。
【0006】
ところが、このようにホールコンピュータで算出される特賞出玉は、釘調整の指標の一つとされており、遊技場の管理者にとって重要な管理データとなっている。このため、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を把握できないと、的確な釘調整を行うことができない。
そこで、カウントした特賞出玉が、大当り状態のどの種類の特賞出玉かを判定することができ、この判定した大当り状態の種類と該特賞出玉とを対応付けて記憶する遊技機管理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この技術によれば、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を管理できるので、各種類における特賞出玉の平均値を有用な釘調データとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−94960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、次のような問題があった。
同技術では、カウントした特賞出玉が大当り状態のどの種類の特賞出玉かを判定しているが、この判定を行うために、大当り状態の種類ごとに設定出玉数を設け、特賞出玉と設定出玉数との誤差が所定範囲内にあるか否かを判断して、該特賞出玉をいずれかの種類に振り分けていた。
そして、この振り分けに使用する設定出玉数には、メーカから発表された特賞中の出玉を、そのまま用いていた。このメーカ発表値は、遊技店がパチンコ機を導入する際に該メーカから渡されるデータである。このため、導入後、そのパチンコ機が稼動を開始して実際に払出す出玉数とは相違していた。しかも、釘調整は、毎日の出玉に応じて調整すべきものであるため、メーカ発表値は参考程度にしかならず、正確さに欠けていた。
【0009】
また、設定出玉数は、遊技場の従業員が、ホールコンピュータに手入力していた。このため、ラウンド数が二つ以上ある場合には、複数の設定出玉数を入力しなければならず、従業員に負担がかかっていた。
さらに、従業員の設定出玉数の入力操作が間違っていると、特賞出玉の平均値を正確に算出できず、的確な釘調整が行えなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、従業員の作業負担を軽減するとともに、パチンコ機の稼動実績に即した値を設定して、より正確な平均特賞出玉を算出し、的確な釘調整を実行可能とする遊技装置及び遊技場システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の遊技装置は、一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機からの所定の信号にもとづいて遊技データを集計する遊技装置であって、大当り状態を示す大当り信号が出力されている間に出力された所定の信号にもとづいて該大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を閾値にもとづいてグループ分けし、グループにおける獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部を備えた構成としてある。
【0012】
また、本発明の遊技場システムは、一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機と、このパチンコ機から出力された所定の信号を入力して遊技データを集計する遊技装置とを備えた遊技場システムであって、遊技装置は、前述の遊技装置としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遊技装置及び遊技場システムによれば、閾値が遊技装置により自動的に算出・設定されるため、従業員の作業負担を軽減できる。
また、閾値が自動的に設定されるので、従業員の入力間違いがなくなり、より正確な平均特賞出玉を算出できる。
さらに、遊技装置が、パチンコ機の稼動実績にもとづいて閾値を設定することから、この設定した閾値を用いて算出された正確な平均特賞出玉により、的確な釘調整を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における遊技場システムの構成を示す概略図である。
【図2】パチンコ機の構成を示す正面図である。
【図3】パチンコ機、台コンピュータ、島コンピュータ、ホールコンピュータの各間の信号の流れ、及び、パチンコ機から出力される信号の構成を示すブロック図である。
【図4】ホールコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図5】釘調データの構成を示す図表である。
【図6】特賞出玉履歴の構成を示す図表である。
【図7】パチンコ機から出力される大当り信号、アウト信号、セーフ信号の出力例を示す波形図である。
【図8】閾値自動設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】閾値自動設定処理を実行したときに算出される各データの具体例を示す図であって、(a)は、特賞出玉履歴、(b)は、特賞出玉のソート結果、(c)は、特賞出玉発生値とデータ件数との対応テーブル、(d)は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値、(e)は、大当り状態ごとの特賞出玉発生値の和と平均値、(f)は、閾値を示す。
【図10】特賞出玉振分処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】閾値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順を示すフローチャートである。
【図13】特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分けた結果と、大当り状態の種類ごとの特賞出玉の件数を示す図である。
【図14】閾値補正処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る遊技装置及び遊技場システムの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[遊技装置及び遊技場システム]
まず、本発明の遊技装置及び遊技場システムの実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の遊技場システムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、遊技場システム1は、複数のパチンコ機10と、これらパチンコ機10毎に設けられた複数の台コンピュータ20と、パチンコ機10の島単位に設けられた複数の島コンピュータ30と、これら島コンピュータ30に接続されたホールコンピュータ40とを備えている。
【0017】
パチンコ機10は、図2に示すように、遊技媒体である遊技球を盤面11に向けて発射させる際に操作する発射ハンドル12が、該パチンコ機10の正面右下に配置されている。また、盤面11には、遊技球が入賞することで所定数の遊技球が払出される入賞口13や、遊技球が入賞すると変動図柄表示装置16に表示されている図柄が変動を開始する始動口14、大当り状態で開放し遊技球が入賞することで所定数の遊技球が払い出される大入賞口15などが配置されている。
さらに、盤面11には、該盤面11から前方へ立設された多数の釘17が、列状又は分散して配設されており、盤面11の上方から落下してきた遊技球の進行方向を変化させている。特に、入賞口13や始動口14の上部開口の直上には、命釘17−1と呼ばれる一又は二本の釘が立設されており、この命釘17−1の傾斜角度が入賞口13等への入賞の確率に影響を与えている。
【0018】
また、大入賞口15あるいはその周辺に向かって落下してくる遊技球の進行経路の側方には、大入賞口15への遊技球の入賞のしやすさを左右するより釘(寄釘)17−2と呼ばれる釘が立設している。より釘17−2は、その傾斜角度によって、遊技球が大入賞口15の方へ進みやすくしたり、あるいは、大入賞口15から外れる方向へ進みやすくしたりする重要な釘である。このため、遊技場の管理者は、後述する釘調データ(特に、最大回数発生した大当り状態の種類における特賞出玉の平均値)を指標としつつ、より釘17−2の傾斜角度を調整する釘調整を行うことで、出玉率が遊技場の営業方針に近づくようにしている。
【0019】
このパチンコ機10は、遊技場に複数設置されている。具体的には、パチンコ機10は、図1に示すように、複数のパチンコ機10が所定数単位でまとめられた、いわゆる「島」単位で設置されており、遊技場内に複数の遊技機島が並列されるようになっている。
このパチンコ機10は、通常のパチンコ機と同様の構成、機能を備えており、遊技球を使用した遊技の内容や方法も既存のパチンコ機と同様のものとなっている。
【0020】
このパチンコ機10からは、所定の信号が出力されている。所定の信号は、具体的には、図3に示すように、遊技球の貸出や貯玉として登録された遊技球の引出しに伴い出力される玉貸信号と、パチンコ機10が大当り状態のときに出力される大当り信号と、変動図柄表示装置16の変動・停止に伴い出力されるスタート信号と、所定数(例えば、10個)の遊技球を払出すごとに出力されるセーフ信号と、所定数(例えば、10個)の遊技球が遊技盤に投入されるごとに出力されるアウト信号がある。
【0021】
台コンピュータ20は、一又は二以上のパチンコ機10に対応して設けられており、パチンコ機10から出力された所定の信号を受信して島コンピュータ30へ送信する信号中継装置である。
【0022】
島コンピュータ30は、遊技機10の島ごとに設けられており、台コンピュータ20から送られてきた信号を入力し、この信号に対して所定の処理を行い、ホールコンピュータ40の要求に応じて、その処理後の信号をホールコンピュータ40に送信する。
また、島コンピュータ30は、ホールコンピュータ40から送られてきた信号を、台コンピュータ20を介してパチンコ機10へ送ることができる。
【0023】
ホールコンピュータ(管理装置)40は、パチンコ機10からの信号を、台コンピュータ20及び島コンピュータ30を介して受信し、その集計を行うデータ集計用のコンピュータであり、通常、遊技場管理者が操作可能な場所、例えば、カウンタ奥の管理室等に設置されている。
このホールコンピュータ40は、図4に示すように、通信部41と、記憶部42と、入力操作部43と、出力表示部44と、制御部45とを有している。
通信部41は、島コンピュータ30に接続されており、所定の信号を送受信する。
【0024】
記憶部42は、例えば、ROM、RAM、HDDなどで構成することができ、ホールコンピュータ40の有する各種機能を実行するための所定のデータやプログラムを記憶する。この記憶部42が記憶する所定のデータとしては、例えば、パチンコ機10から送信されてきた信号の示す遊技情報や、その出力信号にもとづき算出された遊技情報、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を振り分けるための閾値などがある。
【0025】
また、記憶部42は、釘調整を行う際に参照される釘調データを記憶している。釘調データは、各遊技機10について、営業日ごとに算出された各種データをまとめたものである。この釘調データとして管理されるデータには、図5に示すように、「アウト」、「スタート」、「ベース」、「BY」、「確ベース」、「TY」がある。
【0026】
「アウト」は、累計のアウト玉数を示す。
「スタート」は、1分間当たりの平均スタート回数(平均始動入賞回数)を示す。
「ベース」は、大当り状態及び確率変動状態にない通常状態での出玉率を示す。
「BY」は、通常状態での有効スタート入賞以外の出玉率を示すものであり、次式を用いて算出できる。
「BY」=「ベース」−「スタート」×賞球数 ・・・(式1)
【0027】
「確ベース」は、確率変動状態にある期間の出玉率を示す。
「TY」は、大当り状態の種類における特賞出玉の平均を示す。
なお、図5に示した釘調データの「TY」の欄には、発生回数が最も多い大当り状態の種類(同図では、8ラウンドの大当り状態)における特賞出玉の平均を示しているが、これに限るものではなく、例えば、複数の大当り状態の種類ごと(例えば、5ラウンドと8ラウンドと16ラウンドのそれぞれ)の特賞出玉の平均を欄分けして示すことができる。そして、この場合、各欄ごとにラウンド数を項目名として記載することができる。また、同図に示すように、「TY」の欄に、発生回数が最も多い大当り状態の種類における特賞出玉の平均を示す場合でも、ラウンド数を項目名として記載することができる。
【0028】
さらに、記憶部42は、大当り状態における出玉数(特賞出玉)を特賞出玉履歴として記憶している。
特賞出玉履歴は、図6に示すように、「番号」と、「特賞出玉」とを項目として構成されている。「番号」は、大当り状態ごとに付された通し番号である。「特賞出玉」は、大当り状態ごとに算出された特賞出玉数を示す。
【0029】
入力操作部43は、遊技場の従業員等が操作することにより、所定のデータや指示、命令などを選択・入力できるようになっている。
出力表示部44は、入力操作部43での入力指示にもとづいて、所定のデータ、例えば、釘調データ(図5参照)や特賞出玉履歴(図6参照)などを表示する。
【0030】
制御部45は、例えば、CPUにより構成することができ、記憶部42に記憶されているプログラムを読み込んで実行することにより、ホールコンピュータ40の構成各部に指令を送り、又は自ら動作して、ホールコンピュータ40の有する各種機能を実行・制御する。
【0031】
また、制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、特賞出玉を算出する。具体的には、次の手順で算出することができる。
大当り信号、アウト信号、セーフ信号が、図7に示すような波形で、パチンコ機10から出力され通信部41で受信されたものとする。
制御部45は、大当り信号が出力されている間を大当り状態とし、この大当り状態が開始してから終了するまでの間に出力されたアウト信号のパルス数(図7のaにおけるパルス数)及びセーフ信号のパルス数(図7のbにおけるパルス数)をそれぞれカウントする。そして、カウントしたアウト信号のパルス数に1パルスあたりのアウト玉数(例えば、10個)を乗算して該大当り状態におけるアウト玉数を算出し、カウントしたセーフ信号のパルス数に1パルスあたりのセーフ玉数(例えば、10個)を乗算して該大当り状態におけるセーフ玉数を算出し、該大当り状態におけるアウト玉数からセーフ玉数を減算して得られた差を、該大当り状態における特賞出玉とする。
なお、本実施形態においては、アウト信号とセーフ信号を用いて大当り状態における払出玉数(特賞玉数)を算出するため、それらアウト信号とセーフ信号を、「払出玉数に関する所定の信号」というものとする。
【0032】
さらに、制御部45は、閾値を自動設定し、この閾値を用いて、算出した複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分け、最も多く発生した大当り状態における特賞出玉の平均を算出する処理を実行する。この処理については、後記の「平均特賞出玉算出方法」にて詳述する。
【0033】
なお、遊技場システム1が導入された遊技場には、図1に示す各装置の他、例えば、遊技媒体を遊技者に貸出す貸出機、遊技媒体の数量を計数する計数機、遊技媒体を景品に交換する際に所定のデータが入力されるPOS端末、遊技機10や会員に関する情報を閲覧可能に表示する遊技データ表示装置などの各種装置を設置することができる。
【0034】
また、遊技場によっては、パチンコ機10以外の遊技機として、例えば、スロットマシン等が設置されることもあり、そのような遊技場においても、図1に示したような本実施形態の遊技場管理装置のシステムを適用することができる。
なお、本実施形態においては、台コンピュータ20、島コンピュータ30、ホールコンピュータ40、その他遊技場システム1に接続可能な装置や機器を、「遊技装置」というものとする。
【0035】
[平均特賞出玉算出方法]
次に、本実施形態の遊技装置が実行する平均特賞出玉算出方法について、図面を参照して説明する。
なお、ここでは、平均特賞出玉算出方法を、次の三つの処理に分けて説明する。
(1)閾値自動設定処理
(2)最大回数平均特賞出玉算出処理
(3)閾値補正処理
なお、これら(1)〜(3)の各処理は、遊技機ごと、機種ごと、島ごと、遊技場ごとに実行することができる。
【0036】
(1)閾値自動設定処理
閾値自動設定処理は、特賞出玉履歴(図6参照)として管理されている複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分ける際の指標となる閾値を自動的に算出し設定する処理である。
この閾値自動設定処理は、過去に算出された複数の特賞出玉における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定するものである。
【0037】
この閾値自動設定処理について、図8〜図11を参照して説明する。
図8は、閾値自動設定処理の全体の流れを示すフローチャート、図9は、閾値自動設定処理を実行することにより得られるデータを示す図、図10は、閾値自動設定処理のうち特賞出玉振分処理の手順を示すフローチャート、図11は、閾値自動設定処理のうち閾値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0038】
(1−1)閾値自動設定処理の全体の流れ
ホールコンピュータ40の制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、所定期間内(例えば、一営業日における営業開始から終了までの間)に発生した複数の大当り状態ごとに、特賞出玉を算出し、この算出された特賞出玉を特賞出玉履歴として記憶部42に記憶させる(図6参照)。
【0039】
制御部45は、記憶部42から特賞出玉のデータ(過去に算出された特賞出玉のデータ)を所定数取り出す(特賞出玉の取得、図8のステップ10)。
ここでは、図6に示す50個の特賞出玉のデータを取り出したものとする。
次いで、制御部45は、取り出した特賞出玉のデータを、それら特賞出玉の示す数値順(昇順又は降順)に並べ替えて、特賞出玉の数列を形成する(ソート処理、ステップ11)。
このソート処理を実行する前の特賞出玉のデータ(特賞出玉履歴から取り出した状態の特賞出玉)を図9(a)に、ソート処理を実行した後の特賞出玉のデータ(昇順に並べた特賞出玉の数列)を図9(b)に示す。
【0040】
続いて、制御部45は、ソートした特賞出玉を参照し、玉数ごとにデータ件数をカウントしてテーブル化する(ステップ12)。
例えば、図9(b)に示すソート結果では、特賞出玉の最少玉数が480であるため、1個から470個までの特賞出玉のデータ件数は、0件となる(図9(c)参照)。また、図9(b)では、特賞出玉が480個のデータ件数は1件、490個のデータ件数は3件、500個のデータ件数は6件、510個のデータ件数は3件、520個のデータ件数は1件、530個から710個までのデータ件数は0件となる。こうしてカウントされたデータ件数は、図9(c)に示すようにテーブル化されて記憶部42に記憶される。
なお、図9(b)に示す「480」、「490」、・・・と、図9(c)に示す「480」、「490」、・・・とは、同じ「特賞出玉」を示す数値であるが、前者は、一回の大当り状態における「特賞出玉」を示すのに対し、後者は、データ件数に対応した「特賞出玉」を示すものであるので、説明を明確にする観点から、後者を特に「特賞出玉発生値」ということとする。
【0041】
さらに、制御部45は、変数Xと変数Y(X)とを用意し、変数Xに特賞出玉発生値を与えるとともに、この特賞出玉発生値に対応したデータ件数を変数Y(X)に与える。
例えば、特賞出玉発生値が1個の場合、データ件数は0件であるため、X=1、Y(1)=0となる。また、特賞出玉発生値が480個の場合、データ件数は1件であるため、X=480、Y(480)=1となる。さらに、特賞出玉発生値が490個の場合、データ件数は3件であるため、X=490、Y(490)=3となる。同様に、500個以上の特賞出玉発生値についても、その特賞出玉発生値をXに、データ件数をY(X)にそれぞれ代入する。この代入処理は、少なくともデータ件数が1件以上の特賞出玉発生値のすべてについて行う。
【0042】
そして、制御部45は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値の最大玉数を変数MAXに付与する(ステップ13)。例えば、図9(c)において、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値の最大玉数は、「1610」であるので、この「1610」を変数MAXに与える。
その後、制御部45は、特賞出玉振分処理(ステップ14)と、閾値算出処理(ステップ15)を実行する。これらの各処理については、後記の「(1−2)特賞出玉振分処理」、「(1−3)閾値算出処理」で詳述する。
なお、本実施形態においては、特賞出玉が10個単位で払出されることを想定しているが、10個単位に限るものではなく、パチンコ機10に設定された特賞出玉の単位玉数に応じて閾値自動設定処理及びこれを含む平均特賞出玉算出方法を実行することができる。
【0043】
(1−2)特賞出玉振分処理
制御部45は、特賞出玉振分処理で用いる各変数に初期値を与える(図10のステップ20)。具体的には、A=0、S=1、T=1、X=0、Z=0となる。なお、各変数の意味については、それら変数を用いる段階で順次説明する。
次いで、制御部45は、X=X+10を行い(ステップ21)、続いて、Y(X)が0よりも大きいか否かを判断する(ステップ22)。これらステップ21及びステップ22の処理は、データ件数が1件以上となっている特賞出玉発生値を、ソートされた順番(昇順)で検索するものである。具体的には、特賞出玉発生値のうち「10個」から順番に、「20個」、「30個」、・・・について10個毎に検索し、データ件数が1件以上となっている特賞出玉発生値を抽出する。
【0044】
判断の結果、Y(X)が0よりも大きくない場合、つまり、Y(X)=0の場合(図9(c)の例では、特賞出玉発生値が1〜470個の場合)は、ステップ21及びステップ22の処理を繰り返す。
一方、Y(X)が0よりも大きい場合(図9(c)の例では、特賞出玉発生値が480個の場合)、制御部45は、次いで、A(S,T)にXの値を与える(ステップ23)。ここで、変数A(S,T)は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値を示す。また、Sは、ラウンド数の異なる大当り状態のそれぞれに付される番号、Tは、一の大当り状態における特賞出玉発生値のそれぞれに付される通し番号を示す。具体的に、図9(c)のデータについてステップ23を実行すると、S=1、T=1、X=480であるので、A(S,T)=Xは、A(1,1)=480となる。
【0045】
続いて、制御部45は、T=T+1を実行する(ステップ24)。また、X=X+10を実行する(ステップ25)。
そして、制御部45は、Y(X)が0よりも大きいか否かを判断する(ステップ26)。
判断の結果、Y(X)が0よりも大きくない場合、つまり、Y(X)=0の場合は、Z=Z+1を実行し(ステップ27)、ステップ25以降の処理を実行する。ここで、変数Zは、データ件数が0件である特賞出玉発生値が連続している数を示す。
【0046】
一方、Y(X)が0よりも大きい場合は、制御部45は、次いで、Zが「10」よりも大きいか否かを判断する(ステップ28)。この判断は、A(S,T)の算出が、次の大当り状態の種類における特賞出玉に関するものか否かを判断するためのものである。換言すれば、ステップ26で「Y(X)>0」と判断されたX(今回の特賞出玉発生値X)と、ステップ22(又は、前回のステップ26)で「Y(X)>0」と判断されたX(前回の特賞出玉発生値X)との数値差が所定数以上(100以上)の値を示しているか否かを判断し、所定数以上であれば、今回の特賞出玉発生値Xは、次の大当り状態の種類における特賞出玉に関するものと判断するものである。
なお、Zと比較される値は、本実施形態においては、「10」としているが、これは、複数種類の大当り状態における特賞出玉の各間の差が100以上あることを想定したものであり、特賞出玉の単位玉数である10個で除算して得られた「10」をZと比較する値としたものである。ただし、Zと比較する値は、「10」に限るものではなく、大当り状態の種類を区別可能な任意の数とすることができる。
【0047】
判断の結果、Zが「10」以上であるときは、S=S+1とT=1を実行し(ステップ29)、ステップ30へ移行する。ここで、「S=S+1」は、ステップ30の「A(S,T)」が次の大当り状態の種類に関する値になることを示す。また、「T=1」は、次の大当り状態の種類における一つ目の特賞出玉発生値であることを示す。
一方、Zが「10」未満であるときは、S=S+1及びT=1を実行せずにステップ30へ移行する。
次いで、制御部45は、A(S,T)にXの値を与える(ステップ30)。
そして、制御部45は、Z=0を実行する(ステップ31)。これは、Zをリセットするためである。
さらに、制御部45は、XがMAXの示す値以上か否かを判断する(ステップ32)。
判断の結果、XがMAXの示す値以上の場合は、特賞出玉振分処理を終了し、続いて閾値算出処理(ステップ15)を実行する。
一方、XがMAXの示す値未満の場合は、ステップ24以降の処理を実行する。
【0048】
この特賞出玉振分処理を実行した結果を、図9(d)に示す。この図9(d)の右欄は、図9(a)に示した複数の特賞出玉のうち、同じ値を示す特賞出玉をまとめつつ、昇順に並べたものである。そして、このように複数の特賞出玉を昇順に並べたときに隣接する特賞出玉間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所の有無を検索し、当該箇所があるときは、この箇所を境界として、それら複数の特賞出玉を複数のグループに分けたものである。
なお、このように特賞出玉発生値のグループ分けができるのは、大当り状態の種類ごとにラウンド数が規定されているからである。つまり、1ラウンドにおける遊技球の払出玉数の上限は、法令で決まっているので、ラウンド数に応じた払出玉数もほぼ所定範囲内で発生する。このことから、特賞出玉は、各大当り状態の種類ごとに設定されたラウンド数に相当する払出玉数のいずれかに近い値として発生するため、大当り状態の種類ごとにグループ分けすることができる。
また、図9(b)〜(d)に示す処理結果は、特賞出玉を昇順に並べているが、昇順に限るものではなく、降順に並べることができる。降順の場合も、同じ閾値を得ることができる。
【0049】
(1−3)閾値算出処理
制御部45は、図11に示すように、各変数に初期値を与える(ステップ40)。
具体的には、B=0、S=1、T=1、U=1、V=0、D=0、E=0となる。なお、各変数の意味については、それら変数を用いる段階で順次説明する。
次いで、制御部45は、B(U)=B(U)+A(S,T)を行う(ステップ41)。ここで、変数B(U)は、大当り状態ごと(グループごと)の特賞出玉発生値の和を示す。
続いて、制御部45は、T=T+1を行う(ステップ42)。
そして、制御部45は、A(S,T)が0と同じか否かを判断する(ステップ43)。この判断は、特賞出玉発生値の和の算出を継続するか否かを判断するものである。
【0050】
判断の結果、A(S,T)が0ではない場合、つまり、A(S,T)が1以上の場合には、ステップ41以降の処理を実行する。
一方、A(S,T)が0と同じ場合は、制御部45は、次いで、C(U)=B(U)/(T−1)を実行する(ステップ44)。ここで、変数C(U)は、特賞出玉発生値の和を、その特賞出玉発生値の数で除算して得られた商、つまり、その大当り状態の種類(そのグループ)における特賞出玉発生値の平均値(相加平均)を示す。
【0051】
具体的に、図9(d)を例に算出すると、Uが1の場合(一つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(1)=480+490+500+510+520=2500となる。また、Tは、ステップ44においては、6となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(1)=2500/(6−1)=500となる。
さらに、Uが2の場合(二つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(2)=720+780+790+800+810+820=4720となる。また、Tは、ステップ44においては、7となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(2)=4720/(7−1)=786.67となる。
また、Uが3の場合(三つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(3)=1600+1610=3210となる。また、Tは、ステップ44においては、3となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(3)=3210/(3−1)=1605となる。
これらの算出結果を、図9(e)に示す。
【0052】
次いで、制御部45は、S=S+1、T=1、U=U+1を実行する(ステップ45)。ここで、「S=S+1」は、ステップ46以降の処理が次の大当り状態の種類に関する処理に移行させるための演算である。また、「T=1」は、次の大当り状態の種類における一つ目の特賞出玉発生値に移行させるものである。さらに、「U=U+1」は、変数Bに関する処理を、次の大当り状態の種類に関する処理に移行させるための演算である。
【0053】
続いて、制御部45は、A(S,T)が0と同じか否かを判断する(ステップ46)。この判断は、次の大当り状態に関する特賞出玉発生値のデータがあるか否かを判断するものである。
判断の結果、A(S,T)が0ではない場合、つまり、A(S,T)が1以上の場合は、ステップ41以降の処理を実行する。
一方、A(S,T)が0と同じである場合、制御部45は、V=V+1を実行する(ステップ47)。ここで、変数Vは、ステップ49の式「D=C(V)+C(V+1)」に用いるC(V)を特定する。
【0054】
そして、制御部45は、C(V+1)が0であるか否かを判断する(ステップ48)。これは、閾値をすべて算出したか否かを判断するものである。
判断の結果、C(V)が0であるときは、閾値算出処理を終了する。
一方、C(V)が0ではないときは、制御部45は、続いて、D=C(V)+C(V+1)を実行する(ステップ49)。ここで、変数Dは、一の大当り状態の種類と次の大当り状態の種類(一のグループと次のグループ)のそれぞれについて算出された特賞出玉発生値の平均値の和を示す。
そして、制御部45は、E(V)=D/2を実行する(ステップ50)。ここで、変数E(V)は、閾値を示す。また、「E(V)=D/2」は、一の大当り状態の種類(一のグループ)の特賞出玉発生値の平均値と次の大当り状態の種類(次のグループ)の特賞出玉発生値の平均値とを加算して2で除算した商を閾値として算出するものである。
この閾値E(V)を算出すると、ステップ47以降の処理を実行する。
【0055】
具体的に、図9(e)を例に算出すると、大当り状態ごとの特賞出玉発生値の平均値は、C(1)=500、C(2)=786.67、C(3)=1605である。この場合、一回目のDは、500+786.67=1286.67となり、閾値E(1)は、E(1)=1286.67/2=643.33となる。また、二回目のDは、786.67+1605=2391.67となり、閾値E(2)は、E(2)=2391.67/2=1195.83となる(図9(f))。
【0056】
この閾値算出処理を実行することにより、図9(d)に示した複数の特賞出玉(該特賞出玉の示す数値の大小にもとづいて並べたもの)において、隣接する特賞出玉間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所の有無を探し出し、当該箇所があるときは、この箇所を大当り状態の種類を区分けする箇所として閾値を設定することができる。
なお、本実施形態の「平均特賞出玉算出方法」は、ラウンド数の異なる大当り状態が三種類あることを前提としているが、大当り状態は、三種類に限るものではなく、二種類や四種類以上とすることもできる。
具体的に、大当り状態(グループ)が四種類の場合について、図11のステップ47〜ステップ50の処理は、次のように実行される。
【0057】
前提として、各グループごとの特賞出玉発生値の平均値は、ステップ44の処理により、次のように算出されたものとする。
C(1)=100
C(2)=200
C(3)=300
C(4)=400
【0058】
ここで、ステップ40ではV=0が設定されているので、ステップ47を最初に処理すると、V=V+1=0+1=1となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(1+1)=C(2)=200となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(1)+C(2)=100+200=300となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=300/2=150となり、グループC(1)とグループC(2)との間の閾値(一つ目の閾値)が算出される。
【0059】
次いで、ステップ47では、V=V+1=1+1=2となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(2+1)=C(3)=300となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(2)+C(3)=200+300=500となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=500/2=250となり、グループC(2)とグループC(3)との間の閾値(二つ目の閾値)が算出される。
【0060】
続いて、ステップ47では、V=V+1=2+1=3となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(3+1)=C(4)=400となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(3)+C(4)=300+400=700となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=700/2=350となり、グループC(3)とグループC(4)との間の閾値(二つ目の閾値)が算出される。
【0061】
さらに、ステップ47では、V=V+1=3+1=4となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(4+1)=C(5)=0となり、閾値算出処理が終了する。
このように、グループが四つある場合は、閾値が三つ算出される。また、グループが五つある場合は、閾値が四つ算出される。さらに、グループが六つある場合は、閾値が五つ算出される。つまり、ラウンド数の異なる大当り状態(グループ)が二種類以上ある場合には、各グループ間において、それぞれ閾値が算出される。
【0062】
なお、この閾値自動設定処理において、複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに分けたものを「グループ」と称しているが、後述する最大回数平均特賞出玉算出処理において、複数の特賞出玉を閾値にもとづいて分けたものも「グループ」と称しており、異なる処理において同じ語句を用いている。このように同じ語句を用いることによる混同を避けるため、特許請求の範囲においては、前者の「グループ」を「群」と呼ぶものとする。
【0063】
(2)最大回数平均特賞出玉算出処理
最大回数平均特賞出玉算出処理は、大当り状態の複数種類の中から最も発生回数の多い種類を選出し、この種類における特賞出玉の平均値を算出する処理である。また、発生回数が最も多い大当り状態の種類に振り分けられた特賞出玉の中から、異常値を示す特賞出玉を除外し、残る正常な特賞出玉により平均特賞出玉を算出するものである。これは、遊技中に玉詰まりなどの異常事態が発生し、この異常事態発生中に特賞出玉が取得されると、この特賞出玉も異常値を示すようになるが、こうした想定外の値を示す特賞出玉を用いて平均特賞出玉を算出すると、的確な釘調整が行えなくなるので、異常値を示す特賞出玉を除外するものである。
【0064】
この最大回数平均特賞出玉算出処理について、図12、図13を参照して説明する。
図12は、最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順を示すフローチャート、図13は、特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分けた結果と、大当り状態の種類ごとの特賞出玉の件数を示す図である。
【0065】
(2−1)最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順
ホールコンピュータ40の記憶部42は、制御部45が閾値自動設定処理を実行して得られた閾値を記憶している(ステップ60)。
制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、所定期間内(例えば、一営業日における営業開始から終了までの間)に発生した複数の大当り状態ごとに、特賞出玉を算出する。この算出された特賞出玉は、特賞出玉履歴として記憶部42に記憶される(図6参照)。
【0066】
営業時間終了後、制御部45は、記憶部42から、特賞出玉のデータと、閾値とを取り出す。そして、その閾値を用いて、特賞出玉を大当り状態の種類ごと(グループごと)に振り分ける(ステップ61)。
次いで、制御部45は、各特賞出玉発生値ごとに発生件数を算出し、大当り状態の種類ごと(グループごと)に発生件数を合計する(ステップ62)。
続いて、大当り状態の各種類のうち発生件数が最も多い種類(複数のグループのうち大当り状態が最も多く発生したグループ)を選出する(ステップ63)。
【0067】
そして、この発生件数が最も多い大当り状態の種類(大当り状態が最も多く発生したグループ)において、特賞出玉の標準偏差を算出する(ステップ64)。
また、その大当り状態の種類(そのグループ)における特賞出玉の中に、所定以上の偏差データがあるか否かを判断する(ステップ65)。
判断の結果、所定以上の偏差データがあるときは、その偏差データを除いた特賞出玉を用いて、平均特賞出玉を算出し(ステップ66)、これを釘調データとして記憶部42に記憶させる(ステップ67)。
一方、所定以上の偏差データがないときは、すべての特賞出玉を用いて、平均特賞出玉を算出し(ステップ68)、これを釘調データとして記憶部42に記憶させる(ステップ67)。
【0068】
(2−2)具体例
次に、最大回数平均特賞出玉算出処理について、具体例をもって説明する。
記憶部42に記憶されている特賞出玉は、図5に示すように、50個のデータからなるものとする。また、閾値Eは、図9(f)に示すように、E(1)=643.33と、E(2)=1195.83の二つであるものとする。この場合、大当り状態の種類は、E(1)よりも特賞出玉が小さい第一種類と、E(1)よりも大きくE(2)よりも小さい第二種類と、E(3)よりも大きい第三種類の三種類となる。
制御部45は、二つの閾値を用いて、各特賞出玉を、三種類ある大当り状態のいずれかに振り分ける。例えば、番号1の特賞出玉800は、E(1)よりも大きくE(2)よりも小さいので第二種類に振り分けられる。また、番号3の特賞出玉500は、E(1)よりも小さいので第一種類に振り分けられる。さらに、番号15の特賞出玉1600は、E(2)よりも大きいので第三種類に振り分けられる。このように、振り分けられた結果を図13(a)に示す。
【0069】
なお、本実施形態においては、第一種類に振り分けられた特賞出玉を第一グループ、第二種類に振り分けられた特賞出玉を第二グループ、第三種類に振り分けられた特賞出玉を第三グループというものとする。そして、これにともない、以下の説明においては、「(各)大当り状態の種類ごと」を「グループごと」、「第一種類」を「第一グループ」、「第二種類」を「第二グループ」、「第三種類」を「第三グループ」にそれぞれ読み替えることができる。
【0070】
次いで、制御部45は、各大当り状態の種類ごとに、各特賞出玉の発生件数を算出する。例えば、図13(b)に示すように、第一種類における特賞出玉480の発生件数は1件、特賞出玉490の発生件数は3件、特賞出玉500の発生件数は6件、第二種類における特賞出玉720の発生件数は1件、第三種類における特賞出玉1600の発生件数は1件のように算出される。
【0071】
続いて、制御部45は、各大当り状態の種類ごとに、各特賞出玉発生値の発生件数を合計して、大当り状態の種類ごとの発生件数を算出する。例えば、図13(b)に示すように、第一種類においては、特賞出玉発生値480の発生件数が1件、特賞出玉発生値490の発生件数が3件、特賞出玉発生値500の発生件数が6件、特賞出玉発生値510の発生件数が3件、特賞出玉発生値520の発生件数が1件であるので、これらを合計して得られた14件が第一種類の発生件数となる。
そして、制御部45は、大当り状態の各種類の中から発生件数が最も多い種類を選出する。図13(b)においては、第一種類の発生件数が14件、第二種類の発生件数が34件、第三種類の発生件数が2件となっているので、第二種類が、発生件数の最も多い種類として選出される。
【0072】
次いで、制御部45は、発生件数が最も多い大当り状態において、特賞出玉の標準偏差を算出する。
標準偏差は、次の手順で算出することができる。
特賞出玉の相加平均を算出する(ステップ70)。第二種類の特賞出玉をX1〜Xn、特賞出玉の数をnで表すと、相加平均Mは、次式で算出できる。
M=(X1+X2+・・・+Xn)/n ・・・(式2)
【0073】
具体的に、図13(b)に示す第二種類のデータを用いると、次のようになる。
X1=720
X2=X3=780
X4=X5=X6=X7=X8=X9=790
X10=X11=・・・=X26=800
X27=X28=X29=X30=X31=X32=810
X33=X34=820
n=34
M={(720×1)+(780×2)+(790×6)+(800×17)+(810×6)+(820×2)}/34
=797.6 ・・・(式3)
【0074】
次いで、標本分散σ2を算出する。標本分散σ2は、次式を用いて算出できる。
σ2={(X1−M)2+(X2−M)2+・・・+(Xn−M)2}/n
・・・(式4)
つまり、標本分散σ2は、特賞出玉の各データから相加平均を減算し、この減算により得られた差を二乗して合計し、この合計を特賞出玉のデータ件数で除算することにより算出できる。
【0075】
式4は、次式のように表すこともできる。
σ2={Σ(Xi−M)2}/n ・・・(式5)
ただし、i=1〜n
【0076】
具体的に、図13(b)に示す第二種類のデータを用いて標本分散σ2を算出すると、次のようになる。
σ2=[{(720-797.6)2×1}+{(780-797.6)2×2}+{(790-797.6)2×6}+{(800-797.6)2×17}+{(810-797.6)2×6}+{(820-797.6)2×2}]/34
=265.05 ・・・(式6)
【0077】
次いで、標準偏差σを算出する。標準偏差σは、次式を用いて算出できる。
σ=(σ2)1/2 ・・・(式7)
つまり、標準偏差σは、標本分散σ2の正の平方根を計算することにより得ることができる。
【0078】
具体的に、式6にて算出した標本分散σ2を用いて標準偏差σを算出すると、次のようになる。
σ=(265.05)1/2=16.3 ・・・(式8)
【0079】
次に、この標準偏差σを用いて、最大回数平均特賞出玉の算出に用いる特賞出玉の範囲cを設定する。この範囲cは、次式により定めることができる。
c=M±3σ ・・・(式9)
【0080】
具体的に、相加平均M=797.6、標準偏差σ=16.3とすると、範囲cは、次式のようになる。
c=797.6±3×16.3=797.6±48.8
・・・(式10)
つまり、範囲cは、748.8〜846.4の間となる。
【0081】
次いで、制御部45は、第二種類における特賞出玉の中から、範囲cに含まれる特賞出玉を抽出し、範囲cに含まれない特賞出玉を異常データとして除外する。
具体的に、図13(b)に示す第二種類における特賞出玉には、「720」、「780」、「790」、「800」、「810」、「820」があるが、範囲cに含まれる特賞出玉は、「780」、「790」、「800」、「810」、「820」の五つであり、「720」は、含まれないので、これを異常データとして除外する。
【0082】
続いて、制御部45は、範囲cに含まれている特賞出玉を用いて、第二種類における特賞出玉の平均値M0を算出する。
具体的には、次式により算出される。
M0={(780×2)+(790×6)+(800×17)+(810×6)+(820×2)}/33=800
・・・(式11)
このように、第二種類における特賞出玉の平均値M0の算出にあたっては、該第二種類における特賞出玉の中から範囲cに含まれない特賞出玉(ここでは、「720」)を異常データとして除外し、範囲cに含まれる特賞出玉(ここでは、「780」等の五つのデータ)を用いて当該平均値M0の算出を行っている。
ここで、異常データは、パチンコ機1にて玉詰まりなどの異常が発生したときに取得されるデータである。一方、特賞出玉の平均値M0は、パチンコ機1が正常に動作することを前提に算出されるデータであり、想定される平均値(例えば、8ラウンドのときは「800」など)からの偏倚を釘調整の指標とするものである。よって、想定される平均値から掛け離れた値を示す異常データを特賞出玉の平均値の算出に用いると、該平均値自体が異常値を示す不正確な値となり、釘調整の指標とすることができなくなる。
このことから、異常データを除外した特賞出玉を用いて平均値M0を算出することで、該特賞出玉の平均値M0を正確に求めることができ、釘調整に有用な釘調データを得ることができる。
【0083】
この平均値M0は、釘調データの「TY」として、記憶部42に記憶され(図5参照)、釘調整の際の指標とされる。
この「TY」を指標として釘調整を行う場合、例えば、「TY」が795のように小さい値を示しているときは、パチンコ機10の盤面11に立設された釘17のうち大入賞口15への遊技球の入賞を左右するより釘17−2の傾斜角度を調整して、遊技球が大入賞口15に入りやすくなるようにする。一方、「TY」が815のように大きい値を示しているときは、より釘17−2の傾斜角度を調整して、遊技球が大入賞口15に入りにくくなるようにする。このような調整を行うことで出玉率を調節するものである。
【0084】
なお、式9の「c=M±3σ」においては、σに乗算する数値として「3」を用いているが、「3」に限るものではなく、任意の数値を用いることができる。ただし、「3」は、品質管理などで一般に用いられている数値であり、本実施形態においても、「720」などの異常データを排除するのに適切な数値であるため、「3」を採用したものである。
【0085】
また、本実施形態においては、発生回数の最も多い大当り状態の種類について特賞出玉の平均を算出することとしたが、これに限るものではなく、大当り状態の複数種類のすべてについて特賞出玉の平均を算出することができる。この場合も、(2)最大回数平均特賞出玉算出処理を実行することにより、それら特賞出玉の平均を算出できる。そして、大当り状態の複数種類のすべてについて算出された特賞出玉の平均は、図5に示す釘調データの「TY」の項目に各欄を設けてそれぞれ表示することができる。
【0086】
(3)閾値補正処理
閾値補正処理は、過去に設定した閾値Eaを、新たに算出した閾値Ebと置き換えて設定していくことで、閾値を補正する処理であり、特に、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉に、閾値Eaの算出で用いた特賞出玉を含めることで、閾値Ebの精度を高めるものである。
この閾値補正処理について、図14を参照して説明する。図14は、閾値補正処理の実行手順を示すフローチャートである。
なお、ここでは、営業時間が終了するごとに(毎営業日ごとに)、該閾値補正処理を実行するものとする。
【0087】
ホールコンピュータ40の記憶部42は、前営業日に設定した閾値Eaを記憶している。また、記憶部42は、当日の特賞出玉を特賞出玉履歴として記憶している(図6参照)。
ホールコンピュータ40の制御部45は、記憶部42から特賞出玉のデータを所定数取り出し、閾値自動設定処理を実行して新たな閾値Ebを算出する(当日閾値取得、図14のステップ70)。
ここで、閾値Eaの算出に用いた特賞出玉が過去10営業日分の特賞出玉であるとすると、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉は、その過去10営業日分の特賞出玉と、当日の特賞出玉の両方を含むものとする。このように、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉に、閾値Eaの算出で用いた特賞出玉を含めることで、閾値Eaよりも精度の高い閾値Ebを算出できる。また、閾値Eの算出に用いる特賞出玉を増やすことで、閾値Eをより適切な値に近づけることができる。
【0088】
次いで、制御部45は、記憶部42に閾値Eaが記憶されているか否かを確認する(前日閾値記憶あり?、ステップ71)。
確認の結果、記憶部42に閾値Eaが記憶されているときは、記憶部42から閾値Eaを削除するとともに、閾値Ebを新たに記憶部42に記憶させて、閾値Eの補正を行う(ステップ72、ステップ73)。
一方、記憶部42に閾値Eaが記憶されていないときは、閾値Ebを記憶部42に記憶させる(ステップ73)。
【0089】
このように、複数営業日にわたって閾値補正処理を実行することにより、特賞出玉の実績値が蓄積されるのにともなって、閾値をより適切な値に近づけることができ、特賞出玉の振り分けをより正確なものとして、平均特賞出玉の算出精度を高めることができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の遊技装置及び遊技場システムによれば、遊技装置が閾値を自動的に算出・設定するため、遊技場の従業員が閾値を手入力する必要がなくなり、該従業員の作業負担を軽減できる。
また、従業員が閾値を手入力する必要がなくなるので、その従業員による入力ミスの発生を回避できる。これにより、異常値を示す閾値を用いて平均特賞出玉を算出することが無くなるので、該平均特賞出玉を正確に求めることができる。
【0091】
さらに、閾値の算出に用いられる特賞出玉が、遊技機メーカから発表された特賞中の出玉ではなく、パチンコ機の稼動実績である特賞出玉であるため、その稼動実績に即した平均特賞出玉を算出でき、的確な釘調整を実行できる。
しかも、平均特賞出玉の算出に用いる特賞出玉を標準偏差の範囲内としたので、異常値を示す特賞出玉を除外し、正常な値を示す特賞出玉のみを使用して、平均特賞出玉をより正確に算出できる。例えば、遊技球の玉詰まりや遊技盤上で詰まった場合に異常値を示す特賞出玉を除くことができる。
【0092】
また、ホールコンピュータの出力表示部に釘調データの一覧表を表示し、「TY」の表示欄に、発生回数の一番多い大当り状態の種類における平均特賞出玉を表示することで、この平均特賞出玉を釘調整に活用できる。特に、「TY」の表示領域が狭い場合でも、大当り状態の種類毎の平均特賞出玉のすべてを表示する必要はなく、釘調整に有用な平均特賞出玉(最多発生回数の大当り状態の平均特賞出玉)を表示すればよい。
【0093】
以上、本発明の遊技装置及び遊技場システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遊技装置及び遊技場システムは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、閾値自動設定処理、最大回数平均特賞出玉算出処理、閾値補正処理の各処理を、ホールコンピュータが実行することとしたが、ホールコンピュータに限るものではなく、例えば、台コンピュータや島コンピュータなどの遊技装置が実行することもできる。
【0094】
また、上述した実施形態においては、閾値自動設定処理や閾値補正処理を、毎営業日ごと(営業時間終了後)に実行することとしたが、これに限るものではなく、所定日数ごと(二日ごと、三日ごと、一週間ごと、毎月など)に実行することもできる。
さらに、新台導入時の閾値の取得は、試打ちデータを使用することができ、これにより、新台導入日から閾値を設定できる。ただし、試打ちデータを使用しない場合には、初日の営業データを参照することで、翌営業日から閾値を設定でき、閾値に対応させた釘調データを取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、釘調データの算出に関する発明であるため、釘調データを算出する装置や機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 遊技場システム
10 パチンコ機(遊技機)
40 ホールコンピュータ
45 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機で行われた遊技に関する情報を管理する遊技装置と、この遊技装置を備えた遊技場システムに関し、特に、ラウンド数の異なる特定遊技が複数種類実行される遊技機について、各特定遊技間における特賞出玉の閾値を自動的に設定して、発生頻度の一番高い特定遊技を選択し、この特定遊技の平均特賞出玉を算出して信頼性の高い釘調データを取得する遊技装置及び遊技場システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊技場に設置される遊技機としてパチンコ機が知られている。
パチンコ機は、遊技者が発射ハンドルを操作して遊技球を盤面に発射させ、この発射した遊技球が所定の入賞口に入賞することで、所定数の入賞球が払い出されるという遊技機である。
【0003】
このパチンコ機においては、通常、遊技者にとって有利な特定遊技と、この特定遊技以外の遊技である通常遊技とが行われるようになっている。
特定遊技とは、始動口に入賞した遊技球を検出することで抽せんを行い、この抽せんの結果、大当りになると大当り状態に移行し、盤面に配設され扉状に形成された大入賞口が所定期間及び所定回数開放されて、遊技球の入賞率が高まる遊技状態をいう。
【0004】
ここで、大当り状態における大入賞口の1回の開閉を1ラウンドという。例えば、大当り状態において、大入賞口が開き、所定数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか所定時間(例えば、30秒)が経過すると、該大入賞口が閉じて1ラウンドが終了するようになっている。
また、1回の大当り状態における大入賞口の開閉回数をラウンド数といい、パチンコ機の機種ごとにラウンド数が決められている。例えば、従来では15ラウンドのみ(一種類)の機種が多かったが、近年では、5ラウンドと8ラウンドと16ラウンドのように、ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を実行可能なパチンコ機が登場してきている。
【0005】
ところで、大当り状態に移行したパチンコ機からは、大当り状態を示す大当り信号が出力される。この大当り信号は、大当り状態の種類を区別することなく一のシリアル信号として出力される。そして、パチンコ機を管理するホールコンピュータでは、パチンコ機からの大当り信号の受信を開始してから終了するまでの間に受信したアウト信号とセーフ信号にもとづいて、大当り状態1回当たりの出玉数(獲得遊技媒体数)をカウントし、これを特賞出玉として記憶している。そして、営業時間が終了すると、大当り状態の種類に関係なく、すべての大当り状態の特賞出玉を合計し、大当り状態の発生回数で除算して、特賞出玉の平均値を算出していた。
【0006】
ところが、このようにホールコンピュータで算出される特賞出玉は、釘調整の指標の一つとされており、遊技場の管理者にとって重要な管理データとなっている。このため、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を把握できないと、的確な釘調整を行うことができない。
そこで、カウントした特賞出玉が、大当り状態のどの種類の特賞出玉かを判定することができ、この判定した大当り状態の種類と該特賞出玉とを対応付けて記憶する遊技機管理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この技術によれば、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を管理できるので、各種類における特賞出玉の平均値を有用な釘調データとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−94960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、次のような問題があった。
同技術では、カウントした特賞出玉が大当り状態のどの種類の特賞出玉かを判定しているが、この判定を行うために、大当り状態の種類ごとに設定出玉数を設け、特賞出玉と設定出玉数との誤差が所定範囲内にあるか否かを判断して、該特賞出玉をいずれかの種類に振り分けていた。
そして、この振り分けに使用する設定出玉数には、メーカから発表された特賞中の出玉を、そのまま用いていた。このメーカ発表値は、遊技店がパチンコ機を導入する際に該メーカから渡されるデータである。このため、導入後、そのパチンコ機が稼動を開始して実際に払出す出玉数とは相違していた。しかも、釘調整は、毎日の出玉に応じて調整すべきものであるため、メーカ発表値は参考程度にしかならず、正確さに欠けていた。
【0009】
また、設定出玉数は、遊技場の従業員が、ホールコンピュータに手入力していた。このため、ラウンド数が二つ以上ある場合には、複数の設定出玉数を入力しなければならず、従業員に負担がかかっていた。
さらに、従業員の設定出玉数の入力操作が間違っていると、特賞出玉の平均値を正確に算出できず、的確な釘調整が行えなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、従業員の作業負担を軽減するとともに、パチンコ機の稼動実績に即した値を設定して、より正確な平均特賞出玉を算出し、的確な釘調整を実行可能とする遊技装置及び遊技場システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の遊技装置は、一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機からの所定の信号にもとづいて遊技データを集計する遊技装置であって、大当り状態を示す大当り信号が出力されている間に出力された所定の信号にもとづいて該大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を閾値にもとづいてグループ分けし、グループにおける獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部を備えた構成としてある。
【0012】
また、本発明の遊技場システムは、一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機と、このパチンコ機から出力された所定の信号を入力して遊技データを集計する遊技装置とを備えた遊技場システムであって、遊技装置は、前述の遊技装置としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遊技装置及び遊技場システムによれば、閾値が遊技装置により自動的に算出・設定されるため、従業員の作業負担を軽減できる。
また、閾値が自動的に設定されるので、従業員の入力間違いがなくなり、より正確な平均特賞出玉を算出できる。
さらに、遊技装置が、パチンコ機の稼動実績にもとづいて閾値を設定することから、この設定した閾値を用いて算出された正確な平均特賞出玉により、的確な釘調整を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における遊技場システムの構成を示す概略図である。
【図2】パチンコ機の構成を示す正面図である。
【図3】パチンコ機、台コンピュータ、島コンピュータ、ホールコンピュータの各間の信号の流れ、及び、パチンコ機から出力される信号の構成を示すブロック図である。
【図4】ホールコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図5】釘調データの構成を示す図表である。
【図6】特賞出玉履歴の構成を示す図表である。
【図7】パチンコ機から出力される大当り信号、アウト信号、セーフ信号の出力例を示す波形図である。
【図8】閾値自動設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】閾値自動設定処理を実行したときに算出される各データの具体例を示す図であって、(a)は、特賞出玉履歴、(b)は、特賞出玉のソート結果、(c)は、特賞出玉発生値とデータ件数との対応テーブル、(d)は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値、(e)は、大当り状態ごとの特賞出玉発生値の和と平均値、(f)は、閾値を示す。
【図10】特賞出玉振分処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】閾値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順を示すフローチャートである。
【図13】特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分けた結果と、大当り状態の種類ごとの特賞出玉の件数を示す図である。
【図14】閾値補正処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る遊技装置及び遊技場システムの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[遊技装置及び遊技場システム]
まず、本発明の遊技装置及び遊技場システムの実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の遊技場システムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、遊技場システム1は、複数のパチンコ機10と、これらパチンコ機10毎に設けられた複数の台コンピュータ20と、パチンコ機10の島単位に設けられた複数の島コンピュータ30と、これら島コンピュータ30に接続されたホールコンピュータ40とを備えている。
【0017】
パチンコ機10は、図2に示すように、遊技媒体である遊技球を盤面11に向けて発射させる際に操作する発射ハンドル12が、該パチンコ機10の正面右下に配置されている。また、盤面11には、遊技球が入賞することで所定数の遊技球が払出される入賞口13や、遊技球が入賞すると変動図柄表示装置16に表示されている図柄が変動を開始する始動口14、大当り状態で開放し遊技球が入賞することで所定数の遊技球が払い出される大入賞口15などが配置されている。
さらに、盤面11には、該盤面11から前方へ立設された多数の釘17が、列状又は分散して配設されており、盤面11の上方から落下してきた遊技球の進行方向を変化させている。特に、入賞口13や始動口14の上部開口の直上には、命釘17−1と呼ばれる一又は二本の釘が立設されており、この命釘17−1の傾斜角度が入賞口13等への入賞の確率に影響を与えている。
【0018】
また、大入賞口15あるいはその周辺に向かって落下してくる遊技球の進行経路の側方には、大入賞口15への遊技球の入賞のしやすさを左右するより釘(寄釘)17−2と呼ばれる釘が立設している。より釘17−2は、その傾斜角度によって、遊技球が大入賞口15の方へ進みやすくしたり、あるいは、大入賞口15から外れる方向へ進みやすくしたりする重要な釘である。このため、遊技場の管理者は、後述する釘調データ(特に、最大回数発生した大当り状態の種類における特賞出玉の平均値)を指標としつつ、より釘17−2の傾斜角度を調整する釘調整を行うことで、出玉率が遊技場の営業方針に近づくようにしている。
【0019】
このパチンコ機10は、遊技場に複数設置されている。具体的には、パチンコ機10は、図1に示すように、複数のパチンコ機10が所定数単位でまとめられた、いわゆる「島」単位で設置されており、遊技場内に複数の遊技機島が並列されるようになっている。
このパチンコ機10は、通常のパチンコ機と同様の構成、機能を備えており、遊技球を使用した遊技の内容や方法も既存のパチンコ機と同様のものとなっている。
【0020】
このパチンコ機10からは、所定の信号が出力されている。所定の信号は、具体的には、図3に示すように、遊技球の貸出や貯玉として登録された遊技球の引出しに伴い出力される玉貸信号と、パチンコ機10が大当り状態のときに出力される大当り信号と、変動図柄表示装置16の変動・停止に伴い出力されるスタート信号と、所定数(例えば、10個)の遊技球を払出すごとに出力されるセーフ信号と、所定数(例えば、10個)の遊技球が遊技盤に投入されるごとに出力されるアウト信号がある。
【0021】
台コンピュータ20は、一又は二以上のパチンコ機10に対応して設けられており、パチンコ機10から出力された所定の信号を受信して島コンピュータ30へ送信する信号中継装置である。
【0022】
島コンピュータ30は、遊技機10の島ごとに設けられており、台コンピュータ20から送られてきた信号を入力し、この信号に対して所定の処理を行い、ホールコンピュータ40の要求に応じて、その処理後の信号をホールコンピュータ40に送信する。
また、島コンピュータ30は、ホールコンピュータ40から送られてきた信号を、台コンピュータ20を介してパチンコ機10へ送ることができる。
【0023】
ホールコンピュータ(管理装置)40は、パチンコ機10からの信号を、台コンピュータ20及び島コンピュータ30を介して受信し、その集計を行うデータ集計用のコンピュータであり、通常、遊技場管理者が操作可能な場所、例えば、カウンタ奥の管理室等に設置されている。
このホールコンピュータ40は、図4に示すように、通信部41と、記憶部42と、入力操作部43と、出力表示部44と、制御部45とを有している。
通信部41は、島コンピュータ30に接続されており、所定の信号を送受信する。
【0024】
記憶部42は、例えば、ROM、RAM、HDDなどで構成することができ、ホールコンピュータ40の有する各種機能を実行するための所定のデータやプログラムを記憶する。この記憶部42が記憶する所定のデータとしては、例えば、パチンコ機10から送信されてきた信号の示す遊技情報や、その出力信号にもとづき算出された遊技情報、大当り状態の種類ごとに特賞出玉を振り分けるための閾値などがある。
【0025】
また、記憶部42は、釘調整を行う際に参照される釘調データを記憶している。釘調データは、各遊技機10について、営業日ごとに算出された各種データをまとめたものである。この釘調データとして管理されるデータには、図5に示すように、「アウト」、「スタート」、「ベース」、「BY」、「確ベース」、「TY」がある。
【0026】
「アウト」は、累計のアウト玉数を示す。
「スタート」は、1分間当たりの平均スタート回数(平均始動入賞回数)を示す。
「ベース」は、大当り状態及び確率変動状態にない通常状態での出玉率を示す。
「BY」は、通常状態での有効スタート入賞以外の出玉率を示すものであり、次式を用いて算出できる。
「BY」=「ベース」−「スタート」×賞球数 ・・・(式1)
【0027】
「確ベース」は、確率変動状態にある期間の出玉率を示す。
「TY」は、大当り状態の種類における特賞出玉の平均を示す。
なお、図5に示した釘調データの「TY」の欄には、発生回数が最も多い大当り状態の種類(同図では、8ラウンドの大当り状態)における特賞出玉の平均を示しているが、これに限るものではなく、例えば、複数の大当り状態の種類ごと(例えば、5ラウンドと8ラウンドと16ラウンドのそれぞれ)の特賞出玉の平均を欄分けして示すことができる。そして、この場合、各欄ごとにラウンド数を項目名として記載することができる。また、同図に示すように、「TY」の欄に、発生回数が最も多い大当り状態の種類における特賞出玉の平均を示す場合でも、ラウンド数を項目名として記載することができる。
【0028】
さらに、記憶部42は、大当り状態における出玉数(特賞出玉)を特賞出玉履歴として記憶している。
特賞出玉履歴は、図6に示すように、「番号」と、「特賞出玉」とを項目として構成されている。「番号」は、大当り状態ごとに付された通し番号である。「特賞出玉」は、大当り状態ごとに算出された特賞出玉数を示す。
【0029】
入力操作部43は、遊技場の従業員等が操作することにより、所定のデータや指示、命令などを選択・入力できるようになっている。
出力表示部44は、入力操作部43での入力指示にもとづいて、所定のデータ、例えば、釘調データ(図5参照)や特賞出玉履歴(図6参照)などを表示する。
【0030】
制御部45は、例えば、CPUにより構成することができ、記憶部42に記憶されているプログラムを読み込んで実行することにより、ホールコンピュータ40の構成各部に指令を送り、又は自ら動作して、ホールコンピュータ40の有する各種機能を実行・制御する。
【0031】
また、制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、特賞出玉を算出する。具体的には、次の手順で算出することができる。
大当り信号、アウト信号、セーフ信号が、図7に示すような波形で、パチンコ機10から出力され通信部41で受信されたものとする。
制御部45は、大当り信号が出力されている間を大当り状態とし、この大当り状態が開始してから終了するまでの間に出力されたアウト信号のパルス数(図7のaにおけるパルス数)及びセーフ信号のパルス数(図7のbにおけるパルス数)をそれぞれカウントする。そして、カウントしたアウト信号のパルス数に1パルスあたりのアウト玉数(例えば、10個)を乗算して該大当り状態におけるアウト玉数を算出し、カウントしたセーフ信号のパルス数に1パルスあたりのセーフ玉数(例えば、10個)を乗算して該大当り状態におけるセーフ玉数を算出し、該大当り状態におけるアウト玉数からセーフ玉数を減算して得られた差を、該大当り状態における特賞出玉とする。
なお、本実施形態においては、アウト信号とセーフ信号を用いて大当り状態における払出玉数(特賞玉数)を算出するため、それらアウト信号とセーフ信号を、「払出玉数に関する所定の信号」というものとする。
【0032】
さらに、制御部45は、閾値を自動設定し、この閾値を用いて、算出した複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分け、最も多く発生した大当り状態における特賞出玉の平均を算出する処理を実行する。この処理については、後記の「平均特賞出玉算出方法」にて詳述する。
【0033】
なお、遊技場システム1が導入された遊技場には、図1に示す各装置の他、例えば、遊技媒体を遊技者に貸出す貸出機、遊技媒体の数量を計数する計数機、遊技媒体を景品に交換する際に所定のデータが入力されるPOS端末、遊技機10や会員に関する情報を閲覧可能に表示する遊技データ表示装置などの各種装置を設置することができる。
【0034】
また、遊技場によっては、パチンコ機10以外の遊技機として、例えば、スロットマシン等が設置されることもあり、そのような遊技場においても、図1に示したような本実施形態の遊技場管理装置のシステムを適用することができる。
なお、本実施形態においては、台コンピュータ20、島コンピュータ30、ホールコンピュータ40、その他遊技場システム1に接続可能な装置や機器を、「遊技装置」というものとする。
【0035】
[平均特賞出玉算出方法]
次に、本実施形態の遊技装置が実行する平均特賞出玉算出方法について、図面を参照して説明する。
なお、ここでは、平均特賞出玉算出方法を、次の三つの処理に分けて説明する。
(1)閾値自動設定処理
(2)最大回数平均特賞出玉算出処理
(3)閾値補正処理
なお、これら(1)〜(3)の各処理は、遊技機ごと、機種ごと、島ごと、遊技場ごとに実行することができる。
【0036】
(1)閾値自動設定処理
閾値自動設定処理は、特賞出玉履歴(図6参照)として管理されている複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分ける際の指標となる閾値を自動的に算出し設定する処理である。
この閾値自動設定処理は、過去に算出された複数の特賞出玉における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定するものである。
【0037】
この閾値自動設定処理について、図8〜図11を参照して説明する。
図8は、閾値自動設定処理の全体の流れを示すフローチャート、図9は、閾値自動設定処理を実行することにより得られるデータを示す図、図10は、閾値自動設定処理のうち特賞出玉振分処理の手順を示すフローチャート、図11は、閾値自動設定処理のうち閾値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0038】
(1−1)閾値自動設定処理の全体の流れ
ホールコンピュータ40の制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、所定期間内(例えば、一営業日における営業開始から終了までの間)に発生した複数の大当り状態ごとに、特賞出玉を算出し、この算出された特賞出玉を特賞出玉履歴として記憶部42に記憶させる(図6参照)。
【0039】
制御部45は、記憶部42から特賞出玉のデータ(過去に算出された特賞出玉のデータ)を所定数取り出す(特賞出玉の取得、図8のステップ10)。
ここでは、図6に示す50個の特賞出玉のデータを取り出したものとする。
次いで、制御部45は、取り出した特賞出玉のデータを、それら特賞出玉の示す数値順(昇順又は降順)に並べ替えて、特賞出玉の数列を形成する(ソート処理、ステップ11)。
このソート処理を実行する前の特賞出玉のデータ(特賞出玉履歴から取り出した状態の特賞出玉)を図9(a)に、ソート処理を実行した後の特賞出玉のデータ(昇順に並べた特賞出玉の数列)を図9(b)に示す。
【0040】
続いて、制御部45は、ソートした特賞出玉を参照し、玉数ごとにデータ件数をカウントしてテーブル化する(ステップ12)。
例えば、図9(b)に示すソート結果では、特賞出玉の最少玉数が480であるため、1個から470個までの特賞出玉のデータ件数は、0件となる(図9(c)参照)。また、図9(b)では、特賞出玉が480個のデータ件数は1件、490個のデータ件数は3件、500個のデータ件数は6件、510個のデータ件数は3件、520個のデータ件数は1件、530個から710個までのデータ件数は0件となる。こうしてカウントされたデータ件数は、図9(c)に示すようにテーブル化されて記憶部42に記憶される。
なお、図9(b)に示す「480」、「490」、・・・と、図9(c)に示す「480」、「490」、・・・とは、同じ「特賞出玉」を示す数値であるが、前者は、一回の大当り状態における「特賞出玉」を示すのに対し、後者は、データ件数に対応した「特賞出玉」を示すものであるので、説明を明確にする観点から、後者を特に「特賞出玉発生値」ということとする。
【0041】
さらに、制御部45は、変数Xと変数Y(X)とを用意し、変数Xに特賞出玉発生値を与えるとともに、この特賞出玉発生値に対応したデータ件数を変数Y(X)に与える。
例えば、特賞出玉発生値が1個の場合、データ件数は0件であるため、X=1、Y(1)=0となる。また、特賞出玉発生値が480個の場合、データ件数は1件であるため、X=480、Y(480)=1となる。さらに、特賞出玉発生値が490個の場合、データ件数は3件であるため、X=490、Y(490)=3となる。同様に、500個以上の特賞出玉発生値についても、その特賞出玉発生値をXに、データ件数をY(X)にそれぞれ代入する。この代入処理は、少なくともデータ件数が1件以上の特賞出玉発生値のすべてについて行う。
【0042】
そして、制御部45は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値の最大玉数を変数MAXに付与する(ステップ13)。例えば、図9(c)において、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値の最大玉数は、「1610」であるので、この「1610」を変数MAXに与える。
その後、制御部45は、特賞出玉振分処理(ステップ14)と、閾値算出処理(ステップ15)を実行する。これらの各処理については、後記の「(1−2)特賞出玉振分処理」、「(1−3)閾値算出処理」で詳述する。
なお、本実施形態においては、特賞出玉が10個単位で払出されることを想定しているが、10個単位に限るものではなく、パチンコ機10に設定された特賞出玉の単位玉数に応じて閾値自動設定処理及びこれを含む平均特賞出玉算出方法を実行することができる。
【0043】
(1−2)特賞出玉振分処理
制御部45は、特賞出玉振分処理で用いる各変数に初期値を与える(図10のステップ20)。具体的には、A=0、S=1、T=1、X=0、Z=0となる。なお、各変数の意味については、それら変数を用いる段階で順次説明する。
次いで、制御部45は、X=X+10を行い(ステップ21)、続いて、Y(X)が0よりも大きいか否かを判断する(ステップ22)。これらステップ21及びステップ22の処理は、データ件数が1件以上となっている特賞出玉発生値を、ソートされた順番(昇順)で検索するものである。具体的には、特賞出玉発生値のうち「10個」から順番に、「20個」、「30個」、・・・について10個毎に検索し、データ件数が1件以上となっている特賞出玉発生値を抽出する。
【0044】
判断の結果、Y(X)が0よりも大きくない場合、つまり、Y(X)=0の場合(図9(c)の例では、特賞出玉発生値が1〜470個の場合)は、ステップ21及びステップ22の処理を繰り返す。
一方、Y(X)が0よりも大きい場合(図9(c)の例では、特賞出玉発生値が480個の場合)、制御部45は、次いで、A(S,T)にXの値を与える(ステップ23)。ここで、変数A(S,T)は、データ件数が1件以上の特賞出玉発生値を示す。また、Sは、ラウンド数の異なる大当り状態のそれぞれに付される番号、Tは、一の大当り状態における特賞出玉発生値のそれぞれに付される通し番号を示す。具体的に、図9(c)のデータについてステップ23を実行すると、S=1、T=1、X=480であるので、A(S,T)=Xは、A(1,1)=480となる。
【0045】
続いて、制御部45は、T=T+1を実行する(ステップ24)。また、X=X+10を実行する(ステップ25)。
そして、制御部45は、Y(X)が0よりも大きいか否かを判断する(ステップ26)。
判断の結果、Y(X)が0よりも大きくない場合、つまり、Y(X)=0の場合は、Z=Z+1を実行し(ステップ27)、ステップ25以降の処理を実行する。ここで、変数Zは、データ件数が0件である特賞出玉発生値が連続している数を示す。
【0046】
一方、Y(X)が0よりも大きい場合は、制御部45は、次いで、Zが「10」よりも大きいか否かを判断する(ステップ28)。この判断は、A(S,T)の算出が、次の大当り状態の種類における特賞出玉に関するものか否かを判断するためのものである。換言すれば、ステップ26で「Y(X)>0」と判断されたX(今回の特賞出玉発生値X)と、ステップ22(又は、前回のステップ26)で「Y(X)>0」と判断されたX(前回の特賞出玉発生値X)との数値差が所定数以上(100以上)の値を示しているか否かを判断し、所定数以上であれば、今回の特賞出玉発生値Xは、次の大当り状態の種類における特賞出玉に関するものと判断するものである。
なお、Zと比較される値は、本実施形態においては、「10」としているが、これは、複数種類の大当り状態における特賞出玉の各間の差が100以上あることを想定したものであり、特賞出玉の単位玉数である10個で除算して得られた「10」をZと比較する値としたものである。ただし、Zと比較する値は、「10」に限るものではなく、大当り状態の種類を区別可能な任意の数とすることができる。
【0047】
判断の結果、Zが「10」以上であるときは、S=S+1とT=1を実行し(ステップ29)、ステップ30へ移行する。ここで、「S=S+1」は、ステップ30の「A(S,T)」が次の大当り状態の種類に関する値になることを示す。また、「T=1」は、次の大当り状態の種類における一つ目の特賞出玉発生値であることを示す。
一方、Zが「10」未満であるときは、S=S+1及びT=1を実行せずにステップ30へ移行する。
次いで、制御部45は、A(S,T)にXの値を与える(ステップ30)。
そして、制御部45は、Z=0を実行する(ステップ31)。これは、Zをリセットするためである。
さらに、制御部45は、XがMAXの示す値以上か否かを判断する(ステップ32)。
判断の結果、XがMAXの示す値以上の場合は、特賞出玉振分処理を終了し、続いて閾値算出処理(ステップ15)を実行する。
一方、XがMAXの示す値未満の場合は、ステップ24以降の処理を実行する。
【0048】
この特賞出玉振分処理を実行した結果を、図9(d)に示す。この図9(d)の右欄は、図9(a)に示した複数の特賞出玉のうち、同じ値を示す特賞出玉をまとめつつ、昇順に並べたものである。そして、このように複数の特賞出玉を昇順に並べたときに隣接する特賞出玉間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所の有無を検索し、当該箇所があるときは、この箇所を境界として、それら複数の特賞出玉を複数のグループに分けたものである。
なお、このように特賞出玉発生値のグループ分けができるのは、大当り状態の種類ごとにラウンド数が規定されているからである。つまり、1ラウンドにおける遊技球の払出玉数の上限は、法令で決まっているので、ラウンド数に応じた払出玉数もほぼ所定範囲内で発生する。このことから、特賞出玉は、各大当り状態の種類ごとに設定されたラウンド数に相当する払出玉数のいずれかに近い値として発生するため、大当り状態の種類ごとにグループ分けすることができる。
また、図9(b)〜(d)に示す処理結果は、特賞出玉を昇順に並べているが、昇順に限るものではなく、降順に並べることができる。降順の場合も、同じ閾値を得ることができる。
【0049】
(1−3)閾値算出処理
制御部45は、図11に示すように、各変数に初期値を与える(ステップ40)。
具体的には、B=0、S=1、T=1、U=1、V=0、D=0、E=0となる。なお、各変数の意味については、それら変数を用いる段階で順次説明する。
次いで、制御部45は、B(U)=B(U)+A(S,T)を行う(ステップ41)。ここで、変数B(U)は、大当り状態ごと(グループごと)の特賞出玉発生値の和を示す。
続いて、制御部45は、T=T+1を行う(ステップ42)。
そして、制御部45は、A(S,T)が0と同じか否かを判断する(ステップ43)。この判断は、特賞出玉発生値の和の算出を継続するか否かを判断するものである。
【0050】
判断の結果、A(S,T)が0ではない場合、つまり、A(S,T)が1以上の場合には、ステップ41以降の処理を実行する。
一方、A(S,T)が0と同じ場合は、制御部45は、次いで、C(U)=B(U)/(T−1)を実行する(ステップ44)。ここで、変数C(U)は、特賞出玉発生値の和を、その特賞出玉発生値の数で除算して得られた商、つまり、その大当り状態の種類(そのグループ)における特賞出玉発生値の平均値(相加平均)を示す。
【0051】
具体的に、図9(d)を例に算出すると、Uが1の場合(一つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(1)=480+490+500+510+520=2500となる。また、Tは、ステップ44においては、6となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(1)=2500/(6−1)=500となる。
さらに、Uが2の場合(二つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(2)=720+780+790+800+810+820=4720となる。また、Tは、ステップ44においては、7となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(2)=4720/(7−1)=786.67となる。
また、Uが3の場合(三つめの大当り状態の種類の場合)、B(U)は、B(3)=1600+1610=3210となる。また、Tは、ステップ44においては、3となる。そして、C(U)=B(U)/(T−1)は、C(3)=3210/(3−1)=1605となる。
これらの算出結果を、図9(e)に示す。
【0052】
次いで、制御部45は、S=S+1、T=1、U=U+1を実行する(ステップ45)。ここで、「S=S+1」は、ステップ46以降の処理が次の大当り状態の種類に関する処理に移行させるための演算である。また、「T=1」は、次の大当り状態の種類における一つ目の特賞出玉発生値に移行させるものである。さらに、「U=U+1」は、変数Bに関する処理を、次の大当り状態の種類に関する処理に移行させるための演算である。
【0053】
続いて、制御部45は、A(S,T)が0と同じか否かを判断する(ステップ46)。この判断は、次の大当り状態に関する特賞出玉発生値のデータがあるか否かを判断するものである。
判断の結果、A(S,T)が0ではない場合、つまり、A(S,T)が1以上の場合は、ステップ41以降の処理を実行する。
一方、A(S,T)が0と同じである場合、制御部45は、V=V+1を実行する(ステップ47)。ここで、変数Vは、ステップ49の式「D=C(V)+C(V+1)」に用いるC(V)を特定する。
【0054】
そして、制御部45は、C(V+1)が0であるか否かを判断する(ステップ48)。これは、閾値をすべて算出したか否かを判断するものである。
判断の結果、C(V)が0であるときは、閾値算出処理を終了する。
一方、C(V)が0ではないときは、制御部45は、続いて、D=C(V)+C(V+1)を実行する(ステップ49)。ここで、変数Dは、一の大当り状態の種類と次の大当り状態の種類(一のグループと次のグループ)のそれぞれについて算出された特賞出玉発生値の平均値の和を示す。
そして、制御部45は、E(V)=D/2を実行する(ステップ50)。ここで、変数E(V)は、閾値を示す。また、「E(V)=D/2」は、一の大当り状態の種類(一のグループ)の特賞出玉発生値の平均値と次の大当り状態の種類(次のグループ)の特賞出玉発生値の平均値とを加算して2で除算した商を閾値として算出するものである。
この閾値E(V)を算出すると、ステップ47以降の処理を実行する。
【0055】
具体的に、図9(e)を例に算出すると、大当り状態ごとの特賞出玉発生値の平均値は、C(1)=500、C(2)=786.67、C(3)=1605である。この場合、一回目のDは、500+786.67=1286.67となり、閾値E(1)は、E(1)=1286.67/2=643.33となる。また、二回目のDは、786.67+1605=2391.67となり、閾値E(2)は、E(2)=2391.67/2=1195.83となる(図9(f))。
【0056】
この閾値算出処理を実行することにより、図9(d)に示した複数の特賞出玉(該特賞出玉の示す数値の大小にもとづいて並べたもの)において、隣接する特賞出玉間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所の有無を探し出し、当該箇所があるときは、この箇所を大当り状態の種類を区分けする箇所として閾値を設定することができる。
なお、本実施形態の「平均特賞出玉算出方法」は、ラウンド数の異なる大当り状態が三種類あることを前提としているが、大当り状態は、三種類に限るものではなく、二種類や四種類以上とすることもできる。
具体的に、大当り状態(グループ)が四種類の場合について、図11のステップ47〜ステップ50の処理は、次のように実行される。
【0057】
前提として、各グループごとの特賞出玉発生値の平均値は、ステップ44の処理により、次のように算出されたものとする。
C(1)=100
C(2)=200
C(3)=300
C(4)=400
【0058】
ここで、ステップ40ではV=0が設定されているので、ステップ47を最初に処理すると、V=V+1=0+1=1となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(1+1)=C(2)=200となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(1)+C(2)=100+200=300となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=300/2=150となり、グループC(1)とグループC(2)との間の閾値(一つ目の閾値)が算出される。
【0059】
次いで、ステップ47では、V=V+1=1+1=2となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(2+1)=C(3)=300となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(2)+C(3)=200+300=500となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=500/2=250となり、グループC(2)とグループC(3)との間の閾値(二つ目の閾値)が算出される。
【0060】
続いて、ステップ47では、V=V+1=2+1=3となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(3+1)=C(4)=400となり、0ではないので、ステップ49に進む。
ステップ49では、D=C(V)+C(V+1)=C(3)+C(4)=300+400=700となる。
ステップ50では、E(V)=D/2=700/2=350となり、グループC(3)とグループC(4)との間の閾値(二つ目の閾値)が算出される。
【0061】
さらに、ステップ47では、V=V+1=3+1=4となる。
ステップ48では、C(V+1)=C(4+1)=C(5)=0となり、閾値算出処理が終了する。
このように、グループが四つある場合は、閾値が三つ算出される。また、グループが五つある場合は、閾値が四つ算出される。さらに、グループが六つある場合は、閾値が五つ算出される。つまり、ラウンド数の異なる大当り状態(グループ)が二種類以上ある場合には、各グループ間において、それぞれ閾値が算出される。
【0062】
なお、この閾値自動設定処理において、複数の特賞出玉を大当り状態の種類ごとに分けたものを「グループ」と称しているが、後述する最大回数平均特賞出玉算出処理において、複数の特賞出玉を閾値にもとづいて分けたものも「グループ」と称しており、異なる処理において同じ語句を用いている。このように同じ語句を用いることによる混同を避けるため、特許請求の範囲においては、前者の「グループ」を「群」と呼ぶものとする。
【0063】
(2)最大回数平均特賞出玉算出処理
最大回数平均特賞出玉算出処理は、大当り状態の複数種類の中から最も発生回数の多い種類を選出し、この種類における特賞出玉の平均値を算出する処理である。また、発生回数が最も多い大当り状態の種類に振り分けられた特賞出玉の中から、異常値を示す特賞出玉を除外し、残る正常な特賞出玉により平均特賞出玉を算出するものである。これは、遊技中に玉詰まりなどの異常事態が発生し、この異常事態発生中に特賞出玉が取得されると、この特賞出玉も異常値を示すようになるが、こうした想定外の値を示す特賞出玉を用いて平均特賞出玉を算出すると、的確な釘調整が行えなくなるので、異常値を示す特賞出玉を除外するものである。
【0064】
この最大回数平均特賞出玉算出処理について、図12、図13を参照して説明する。
図12は、最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順を示すフローチャート、図13は、特賞出玉を大当り状態の種類ごとに振り分けた結果と、大当り状態の種類ごとの特賞出玉の件数を示す図である。
【0065】
(2−1)最大回数平均特賞出玉算出処理の実行手順
ホールコンピュータ40の記憶部42は、制御部45が閾値自動設定処理を実行して得られた閾値を記憶している(ステップ60)。
制御部45は、パチンコ機10から出力された大当り信号、アウト信号、セーフ信号にもとづいて、所定期間内(例えば、一営業日における営業開始から終了までの間)に発生した複数の大当り状態ごとに、特賞出玉を算出する。この算出された特賞出玉は、特賞出玉履歴として記憶部42に記憶される(図6参照)。
【0066】
営業時間終了後、制御部45は、記憶部42から、特賞出玉のデータと、閾値とを取り出す。そして、その閾値を用いて、特賞出玉を大当り状態の種類ごと(グループごと)に振り分ける(ステップ61)。
次いで、制御部45は、各特賞出玉発生値ごとに発生件数を算出し、大当り状態の種類ごと(グループごと)に発生件数を合計する(ステップ62)。
続いて、大当り状態の各種類のうち発生件数が最も多い種類(複数のグループのうち大当り状態が最も多く発生したグループ)を選出する(ステップ63)。
【0067】
そして、この発生件数が最も多い大当り状態の種類(大当り状態が最も多く発生したグループ)において、特賞出玉の標準偏差を算出する(ステップ64)。
また、その大当り状態の種類(そのグループ)における特賞出玉の中に、所定以上の偏差データがあるか否かを判断する(ステップ65)。
判断の結果、所定以上の偏差データがあるときは、その偏差データを除いた特賞出玉を用いて、平均特賞出玉を算出し(ステップ66)、これを釘調データとして記憶部42に記憶させる(ステップ67)。
一方、所定以上の偏差データがないときは、すべての特賞出玉を用いて、平均特賞出玉を算出し(ステップ68)、これを釘調データとして記憶部42に記憶させる(ステップ67)。
【0068】
(2−2)具体例
次に、最大回数平均特賞出玉算出処理について、具体例をもって説明する。
記憶部42に記憶されている特賞出玉は、図5に示すように、50個のデータからなるものとする。また、閾値Eは、図9(f)に示すように、E(1)=643.33と、E(2)=1195.83の二つであるものとする。この場合、大当り状態の種類は、E(1)よりも特賞出玉が小さい第一種類と、E(1)よりも大きくE(2)よりも小さい第二種類と、E(3)よりも大きい第三種類の三種類となる。
制御部45は、二つの閾値を用いて、各特賞出玉を、三種類ある大当り状態のいずれかに振り分ける。例えば、番号1の特賞出玉800は、E(1)よりも大きくE(2)よりも小さいので第二種類に振り分けられる。また、番号3の特賞出玉500は、E(1)よりも小さいので第一種類に振り分けられる。さらに、番号15の特賞出玉1600は、E(2)よりも大きいので第三種類に振り分けられる。このように、振り分けられた結果を図13(a)に示す。
【0069】
なお、本実施形態においては、第一種類に振り分けられた特賞出玉を第一グループ、第二種類に振り分けられた特賞出玉を第二グループ、第三種類に振り分けられた特賞出玉を第三グループというものとする。そして、これにともない、以下の説明においては、「(各)大当り状態の種類ごと」を「グループごと」、「第一種類」を「第一グループ」、「第二種類」を「第二グループ」、「第三種類」を「第三グループ」にそれぞれ読み替えることができる。
【0070】
次いで、制御部45は、各大当り状態の種類ごとに、各特賞出玉の発生件数を算出する。例えば、図13(b)に示すように、第一種類における特賞出玉480の発生件数は1件、特賞出玉490の発生件数は3件、特賞出玉500の発生件数は6件、第二種類における特賞出玉720の発生件数は1件、第三種類における特賞出玉1600の発生件数は1件のように算出される。
【0071】
続いて、制御部45は、各大当り状態の種類ごとに、各特賞出玉発生値の発生件数を合計して、大当り状態の種類ごとの発生件数を算出する。例えば、図13(b)に示すように、第一種類においては、特賞出玉発生値480の発生件数が1件、特賞出玉発生値490の発生件数が3件、特賞出玉発生値500の発生件数が6件、特賞出玉発生値510の発生件数が3件、特賞出玉発生値520の発生件数が1件であるので、これらを合計して得られた14件が第一種類の発生件数となる。
そして、制御部45は、大当り状態の各種類の中から発生件数が最も多い種類を選出する。図13(b)においては、第一種類の発生件数が14件、第二種類の発生件数が34件、第三種類の発生件数が2件となっているので、第二種類が、発生件数の最も多い種類として選出される。
【0072】
次いで、制御部45は、発生件数が最も多い大当り状態において、特賞出玉の標準偏差を算出する。
標準偏差は、次の手順で算出することができる。
特賞出玉の相加平均を算出する(ステップ70)。第二種類の特賞出玉をX1〜Xn、特賞出玉の数をnで表すと、相加平均Mは、次式で算出できる。
M=(X1+X2+・・・+Xn)/n ・・・(式2)
【0073】
具体的に、図13(b)に示す第二種類のデータを用いると、次のようになる。
X1=720
X2=X3=780
X4=X5=X6=X7=X8=X9=790
X10=X11=・・・=X26=800
X27=X28=X29=X30=X31=X32=810
X33=X34=820
n=34
M={(720×1)+(780×2)+(790×6)+(800×17)+(810×6)+(820×2)}/34
=797.6 ・・・(式3)
【0074】
次いで、標本分散σ2を算出する。標本分散σ2は、次式を用いて算出できる。
σ2={(X1−M)2+(X2−M)2+・・・+(Xn−M)2}/n
・・・(式4)
つまり、標本分散σ2は、特賞出玉の各データから相加平均を減算し、この減算により得られた差を二乗して合計し、この合計を特賞出玉のデータ件数で除算することにより算出できる。
【0075】
式4は、次式のように表すこともできる。
σ2={Σ(Xi−M)2}/n ・・・(式5)
ただし、i=1〜n
【0076】
具体的に、図13(b)に示す第二種類のデータを用いて標本分散σ2を算出すると、次のようになる。
σ2=[{(720-797.6)2×1}+{(780-797.6)2×2}+{(790-797.6)2×6}+{(800-797.6)2×17}+{(810-797.6)2×6}+{(820-797.6)2×2}]/34
=265.05 ・・・(式6)
【0077】
次いで、標準偏差σを算出する。標準偏差σは、次式を用いて算出できる。
σ=(σ2)1/2 ・・・(式7)
つまり、標準偏差σは、標本分散σ2の正の平方根を計算することにより得ることができる。
【0078】
具体的に、式6にて算出した標本分散σ2を用いて標準偏差σを算出すると、次のようになる。
σ=(265.05)1/2=16.3 ・・・(式8)
【0079】
次に、この標準偏差σを用いて、最大回数平均特賞出玉の算出に用いる特賞出玉の範囲cを設定する。この範囲cは、次式により定めることができる。
c=M±3σ ・・・(式9)
【0080】
具体的に、相加平均M=797.6、標準偏差σ=16.3とすると、範囲cは、次式のようになる。
c=797.6±3×16.3=797.6±48.8
・・・(式10)
つまり、範囲cは、748.8〜846.4の間となる。
【0081】
次いで、制御部45は、第二種類における特賞出玉の中から、範囲cに含まれる特賞出玉を抽出し、範囲cに含まれない特賞出玉を異常データとして除外する。
具体的に、図13(b)に示す第二種類における特賞出玉には、「720」、「780」、「790」、「800」、「810」、「820」があるが、範囲cに含まれる特賞出玉は、「780」、「790」、「800」、「810」、「820」の五つであり、「720」は、含まれないので、これを異常データとして除外する。
【0082】
続いて、制御部45は、範囲cに含まれている特賞出玉を用いて、第二種類における特賞出玉の平均値M0を算出する。
具体的には、次式により算出される。
M0={(780×2)+(790×6)+(800×17)+(810×6)+(820×2)}/33=800
・・・(式11)
このように、第二種類における特賞出玉の平均値M0の算出にあたっては、該第二種類における特賞出玉の中から範囲cに含まれない特賞出玉(ここでは、「720」)を異常データとして除外し、範囲cに含まれる特賞出玉(ここでは、「780」等の五つのデータ)を用いて当該平均値M0の算出を行っている。
ここで、異常データは、パチンコ機1にて玉詰まりなどの異常が発生したときに取得されるデータである。一方、特賞出玉の平均値M0は、パチンコ機1が正常に動作することを前提に算出されるデータであり、想定される平均値(例えば、8ラウンドのときは「800」など)からの偏倚を釘調整の指標とするものである。よって、想定される平均値から掛け離れた値を示す異常データを特賞出玉の平均値の算出に用いると、該平均値自体が異常値を示す不正確な値となり、釘調整の指標とすることができなくなる。
このことから、異常データを除外した特賞出玉を用いて平均値M0を算出することで、該特賞出玉の平均値M0を正確に求めることができ、釘調整に有用な釘調データを得ることができる。
【0083】
この平均値M0は、釘調データの「TY」として、記憶部42に記憶され(図5参照)、釘調整の際の指標とされる。
この「TY」を指標として釘調整を行う場合、例えば、「TY」が795のように小さい値を示しているときは、パチンコ機10の盤面11に立設された釘17のうち大入賞口15への遊技球の入賞を左右するより釘17−2の傾斜角度を調整して、遊技球が大入賞口15に入りやすくなるようにする。一方、「TY」が815のように大きい値を示しているときは、より釘17−2の傾斜角度を調整して、遊技球が大入賞口15に入りにくくなるようにする。このような調整を行うことで出玉率を調節するものである。
【0084】
なお、式9の「c=M±3σ」においては、σに乗算する数値として「3」を用いているが、「3」に限るものではなく、任意の数値を用いることができる。ただし、「3」は、品質管理などで一般に用いられている数値であり、本実施形態においても、「720」などの異常データを排除するのに適切な数値であるため、「3」を採用したものである。
【0085】
また、本実施形態においては、発生回数の最も多い大当り状態の種類について特賞出玉の平均を算出することとしたが、これに限るものではなく、大当り状態の複数種類のすべてについて特賞出玉の平均を算出することができる。この場合も、(2)最大回数平均特賞出玉算出処理を実行することにより、それら特賞出玉の平均を算出できる。そして、大当り状態の複数種類のすべてについて算出された特賞出玉の平均は、図5に示す釘調データの「TY」の項目に各欄を設けてそれぞれ表示することができる。
【0086】
(3)閾値補正処理
閾値補正処理は、過去に設定した閾値Eaを、新たに算出した閾値Ebと置き換えて設定していくことで、閾値を補正する処理であり、特に、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉に、閾値Eaの算出で用いた特賞出玉を含めることで、閾値Ebの精度を高めるものである。
この閾値補正処理について、図14を参照して説明する。図14は、閾値補正処理の実行手順を示すフローチャートである。
なお、ここでは、営業時間が終了するごとに(毎営業日ごとに)、該閾値補正処理を実行するものとする。
【0087】
ホールコンピュータ40の記憶部42は、前営業日に設定した閾値Eaを記憶している。また、記憶部42は、当日の特賞出玉を特賞出玉履歴として記憶している(図6参照)。
ホールコンピュータ40の制御部45は、記憶部42から特賞出玉のデータを所定数取り出し、閾値自動設定処理を実行して新たな閾値Ebを算出する(当日閾値取得、図14のステップ70)。
ここで、閾値Eaの算出に用いた特賞出玉が過去10営業日分の特賞出玉であるとすると、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉は、その過去10営業日分の特賞出玉と、当日の特賞出玉の両方を含むものとする。このように、閾値Ebの算出に用いる特賞出玉に、閾値Eaの算出で用いた特賞出玉を含めることで、閾値Eaよりも精度の高い閾値Ebを算出できる。また、閾値Eの算出に用いる特賞出玉を増やすことで、閾値Eをより適切な値に近づけることができる。
【0088】
次いで、制御部45は、記憶部42に閾値Eaが記憶されているか否かを確認する(前日閾値記憶あり?、ステップ71)。
確認の結果、記憶部42に閾値Eaが記憶されているときは、記憶部42から閾値Eaを削除するとともに、閾値Ebを新たに記憶部42に記憶させて、閾値Eの補正を行う(ステップ72、ステップ73)。
一方、記憶部42に閾値Eaが記憶されていないときは、閾値Ebを記憶部42に記憶させる(ステップ73)。
【0089】
このように、複数営業日にわたって閾値補正処理を実行することにより、特賞出玉の実績値が蓄積されるのにともなって、閾値をより適切な値に近づけることができ、特賞出玉の振り分けをより正確なものとして、平均特賞出玉の算出精度を高めることができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の遊技装置及び遊技場システムによれば、遊技装置が閾値を自動的に算出・設定するため、遊技場の従業員が閾値を手入力する必要がなくなり、該従業員の作業負担を軽減できる。
また、従業員が閾値を手入力する必要がなくなるので、その従業員による入力ミスの発生を回避できる。これにより、異常値を示す閾値を用いて平均特賞出玉を算出することが無くなるので、該平均特賞出玉を正確に求めることができる。
【0091】
さらに、閾値の算出に用いられる特賞出玉が、遊技機メーカから発表された特賞中の出玉ではなく、パチンコ機の稼動実績である特賞出玉であるため、その稼動実績に即した平均特賞出玉を算出でき、的確な釘調整を実行できる。
しかも、平均特賞出玉の算出に用いる特賞出玉を標準偏差の範囲内としたので、異常値を示す特賞出玉を除外し、正常な値を示す特賞出玉のみを使用して、平均特賞出玉をより正確に算出できる。例えば、遊技球の玉詰まりや遊技盤上で詰まった場合に異常値を示す特賞出玉を除くことができる。
【0092】
また、ホールコンピュータの出力表示部に釘調データの一覧表を表示し、「TY」の表示欄に、発生回数の一番多い大当り状態の種類における平均特賞出玉を表示することで、この平均特賞出玉を釘調整に活用できる。特に、「TY」の表示領域が狭い場合でも、大当り状態の種類毎の平均特賞出玉のすべてを表示する必要はなく、釘調整に有用な平均特賞出玉(最多発生回数の大当り状態の平均特賞出玉)を表示すればよい。
【0093】
以上、本発明の遊技装置及び遊技場システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遊技装置及び遊技場システムは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、閾値自動設定処理、最大回数平均特賞出玉算出処理、閾値補正処理の各処理を、ホールコンピュータが実行することとしたが、ホールコンピュータに限るものではなく、例えば、台コンピュータや島コンピュータなどの遊技装置が実行することもできる。
【0094】
また、上述した実施形態においては、閾値自動設定処理や閾値補正処理を、毎営業日ごと(営業時間終了後)に実行することとしたが、これに限るものではなく、所定日数ごと(二日ごと、三日ごと、一週間ごと、毎月など)に実行することもできる。
さらに、新台導入時の閾値の取得は、試打ちデータを使用することができ、これにより、新台導入日から閾値を設定できる。ただし、試打ちデータを使用しない場合には、初日の営業データを参照することで、翌営業日から閾値を設定でき、閾値に対応させた釘調データを取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、釘調データの算出に関する発明であるため、釘調データを算出する装置や機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 遊技場システム
10 パチンコ機(遊技機)
40 ホールコンピュータ
45 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機からの所定の信号にもとづいて遊技データを集計する遊技装置であって、
前記大当り状態を示す大当り信号が出力されている間に出力された所定の信号にもとづいて該大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに前記獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を前記閾値にもとづいてグループ分けし、前記グループにおける前記獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部を備えた
ことを特徴とする遊技装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記グループのうち前記大当り状態が最も多く発生したグループにおける前記獲得遊技媒体数の平均値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の遊技装置。
【請求項3】
前記制御部は、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数を昇順又は降順に並べたときに隣接する獲得遊技媒体数間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所を境界として前記複数の獲得遊技媒体数を複数の群に分け、これら複数の群の各間を区分けする値を前記閾値として設定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の遊技装置。
【請求項4】
前記制御部は、各群ごとに前記獲得遊技媒体数の平均値を算出し、一の群の平均値と次の群の平均値とを加算して2で除算した商を前記閾値として設定する
ことを特徴とする請求項3記載の遊技装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記グループにおける前記獲得遊技媒体数の標準偏差を算出し、この標準偏差にもとづいて前記獲得遊技媒体数として許容し得る所定の範囲を設定し、この所定の範囲に含まれない獲得遊技媒体数を除外した残りの獲得遊技媒体数を用いて、該獲得遊技媒体数の平均を算出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遊技装置。
【請求項6】
一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機と、このパチンコ機から出力された所定の信号を入力して遊技データを集計する遊技装置とを備えた遊技場システムであって、
前記遊技装置は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の遊技装置である
ことを特徴とする遊技場システム。
【請求項1】
一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機からの所定の信号にもとづいて遊技データを集計する遊技装置であって、
前記大当り状態を示す大当り信号が出力されている間に出力された所定の信号にもとづいて該大当り状態における獲得遊技媒体数を算出し、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数における所定値以上の数値差の有無にもとづいて閾値を設定し、所定期間内に発生した複数の大当り状態ごとに前記獲得遊技媒体数を算出し、この算出した複数の獲得遊技媒体数を前記閾値にもとづいてグループ分けし、前記グループにおける前記獲得遊技媒体数の平均値を算出する制御部を備えた
ことを特徴とする遊技装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記グループのうち前記大当り状態が最も多く発生したグループにおける前記獲得遊技媒体数の平均値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の遊技装置。
【請求項3】
前記制御部は、過去に算出された複数の獲得遊技媒体数を昇順又は降順に並べたときに隣接する獲得遊技媒体数間の数値差が所定数以上の数値差を示す箇所を境界として前記複数の獲得遊技媒体数を複数の群に分け、これら複数の群の各間を区分けする値を前記閾値として設定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の遊技装置。
【請求項4】
前記制御部は、各群ごとに前記獲得遊技媒体数の平均値を算出し、一の群の平均値と次の群の平均値とを加算して2で除算した商を前記閾値として設定する
ことを特徴とする請求項3記載の遊技装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記グループにおける前記獲得遊技媒体数の標準偏差を算出し、この標準偏差にもとづいて前記獲得遊技媒体数として許容し得る所定の範囲を設定し、この所定の範囲に含まれない獲得遊技媒体数を除外した残りの獲得遊技媒体数を用いて、該獲得遊技媒体数の平均を算出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遊技装置。
【請求項6】
一回の大当り状態における所定の入賞口の開閉回数をラウンド数とし、該ラウンド数の異なる複数種類の大当り状態を有するパチンコ機と、このパチンコ機から出力された所定の信号を入力して遊技データを集計する遊技装置とを備えた遊技場システムであって、
前記遊技装置は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の遊技装置である
ことを特徴とする遊技場システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−229647(P2011−229647A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101928(P2010−101928)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】
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