説明

遊技音響装置

【課題】パネル構造体の閉鎖空間をエンクロージャとして用いたサブウーハーとした良好な低音を提供する。
【解決手段】ローパスフィルタ79として、減衰特性=−40dB/oct、カットオフ周波数(Fc)=200Hzの特性を有するものを使用し、レベル調整器80でローパスフィルタ79からの出力のレベルを上昇するので、パネル構造体20の閉鎖空間Dをエンクロージャとして用いたサブウーハーとした良好な音響特性を持つ遊技音響装置を構成することができ、音響特性上のピークを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル構造体の閉鎖空間をエンクロージャとして用いた低音の良好な音響特性を持つ遊技音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技音響装置には、次のような構造のものが知られている。その1つは、遊技機枠の後側にスピーカとエンクロージャとが一体になったスピーカ構造体を設け、エンクロージャの音をパイプで遊技機枠の前方に誘導して放出するようにした構造であるが、この場合、スピーカ構造体のほかにパイプが必要で、構造が複雑となるという欠点がある。もう1つは、前扉のガラスを振動板として利用した構造であるが、この場合、ガラスの共振周波数が数百ヘルツであるため、低音再生用として使用するには周波数が高くなるという欠点がある。さらにもう1つは、圧電式スピーカを前扉のガラスに接触した構造であるが、この場合、圧電式スピーカによってガラスが適切に振動しないという欠点がある。最後の1つは、圧電式スピーカを前扉に貼り付けた構造であるが、この場合、前扉を構成する合成樹脂の共振周波数が高いため、圧電式スピーカによって前扉を構成する合成樹脂が適切に振動しないという欠点がある。
【特許文献1】特開2004−229183号公報
【特許文献2】特開平7−8601号公報
【特許文献3】特開平10−216325号公報
【特許文献4】特開2003−135804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする問題点は、低音の音響特性が悪いという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る遊技音響装置は、遊技機枠の前扉には窓と窓を後側から塞ぐパネル構造体と中高音放音孔部と低音放音孔部とが設けられ、パネル構造体が前面パネルと後面パネルとフレームとで囲まれた閉鎖空間を形成し、フレームには閉鎖空間に連なる筒状のスピーカ設置部と閉鎖空間に連なる音出口部とが設けられ、低音スピーカが振動板を前方に向けてスピーカ設置部に取り付けられ、低音スピーカの振動板から前方に放射された低音がスピーカ設置部から閉鎖空間および音出口部を経由して低音放音孔部から前扉の前方に放出される遊技音響装置であって、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のピークを遮断もしくは低減するローパスフィルタと、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のディップを上昇するようにローパスフィルタからの出力信号の電圧レベルを増加して低音スピーカに供給するレベル調整器とを備えるか、または、遊技機枠の前扉には窓と窓を後側から塞ぐパネル構造体と中高音スピーカと中高音放音孔部と低音放音孔部とが設けられ、中高音スピーカから放出された中高音が中高音放音孔部を経由して前扉の前方に放出され、パネル構造体が前面パネルと後面パネルとフレームとで囲まれた閉鎖空間を形成し、フレームには閉鎖空間に連なる筒状のスピーカ設置部と閉鎖空間に連なる音出口部とが設けられ、低音スピーカが振動板を前方に向けてスピーカ設置部に取り付けられ、低音スピーカの振動板から前方に放射された低音がスピーカ設置部から閉鎖空間および音出口部を経由して低音放音孔部から前方に放出される遊技音響装置であって、中高音スピーカに対するステレオ右チャンネル信号およびステレオ右チャンネル信号からの出力を加算してモノラル信号を生成する加算回路と、加算回路から出力されたモノラル信号から前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のピークを遮断もしくは低減するローパスフィルタと、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のディップを上昇するようにローパスフィルタからの出力信号の電圧レベルを増加して低音スピーカに供給するレベル調整器とを備えたことを最も主要な特徴とする。中高音スピーカが前側で低音スピーカが後側となるように、中高音スピーカおよび低音スピーカが前後方向に重ねられて配置されたり、または、パネル構造体の後側に配置されるように遊技機枠に取り付けられる遊技盤には低音スピーカを逃げるためのスピーカ逃避部が設けられたり、または、低音スピーカを後側から被覆するスピーカ後カバーがスピーカ設置部に設けられ、スピーカ後カバーには低音スピーカ後側に放出される低音をスピーカ後カバーの内部から後側に放出する放音孔部が設けられたりしてもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る遊技音響装置は、パネル構造体の閉鎖空間をエンクロージャとして用いた低音スピーカにおいて、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のピークおよびディップを補正した良好な音響特性を持つ遊技音響装置を構成することができるという利点がある。中高音スピーカが前側で低音スピーカが後側となるように、中高音スピーカおよび低音スピーカが前後方向に重ねられて配置されれば、中高音と低音との相互の干渉が防止でき、中高音スピーカと低音スピーカとが正面から見た場合の狭い場所に設けられるという利点がある。パネル構造体の裏側に配置されるように遊技機枠に取り付けられる遊技盤には、低音スピーカを逃げるためのスピーカ逃避部が設けられれば、低音スピーカがパネル構造体から後側に突出して取り付けられても、遊技盤の前面である遊技領域とパネル構造体の後面パネルの後面との間における球の落下する隙間を適切に確保することができるという利点がある。低音スピーカを後側から被覆するスピーカ後カバーがスピーカ設置部に設けられれば、低音スピーカの後側に放出された音が遊技盤の前面である遊技領域と後面パネルの後面との間における球の落下する隙間に回り込むことなく、遊技機枠の後側に適切に導かれるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図5は、発明を実施するための最良の形態である。図1は、遊技音響装置を示す。図2は、パチンコ遊技機を分解して示す。図3は、パチンコ遊技機の正面を示す。図4は、パネル構造体20を分解して示す。図5は、図3をA―A線に沿い切断した断面を示す。本明細書において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」の方向は、図2の状態に遊技機枠1および遊技盤31を置いて矢印Sで示す前方から見た場合に特定される方向である。
【0007】
図1を参照し、遊技音響装置について説明する。上扉4には、窓16、パネル構造体20、中高音スピーカ19、中高音放音孔部17、低音放音孔部18が設けられる。パネル構造体20には、低音スピーカ23が設けられる。中高音スピーカ19および低音スピーカ23を制御する音制御装置70は、ステレオ音源IC71、ステレオ右チャンネル信号72、ステレオ左チャンネル信号73、右音量調整器74、左音量調整器75、右パワーアンプ76、左パワーアンプ77、加算回路78、ローパスフィルタ79、レベル調整器80、低音パワーアンプ81を備える。
【0008】
そして、音制御装置70が電力供給を受けて起動した後に図外の主制御装置から遊技音響に関する信号を入力されるのに伴い、ステレオ音源IC71から出力されたステレオ右チャンネル信号72が右音量調整器74および右パワーアンプ76を経由して右の中高音スピーカ19に供給され、ステレオ音源IC71から出力されたステレオ左チャンネル信号73が左音量調整器75および左パワーアンプ77を経由して左の中高音スピーカ19に供給される。左右の中高音スピーカ19から放出された中高音は、個別に、中高音放音孔部17を経由して上扉4の上部から前方に放出される。
【0009】
加算回路78は、右音量調整器74および左音量調整器75からの出力を加算してモノラル信号を生成し、そのモノラル信号をローパスフィルタ79に出力する。ローパスフィルタ79には、2つの役目がある。その1つは、低音スピーカ(サブウーファー)用信号として、高音信号を減衰もしくは遮断させ、低音信号のみを生成する役目である。もう1つは、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧の250Hz近辺のピークを遮断もしくは低減する役目である。ローパスフィルタ79から出力された低音信号は、レベル調整器80に出力される。レベル調整器80は、いわゆる増幅器であって、信号全体の電圧レベルを上昇させ100Hz付近のディップを補正して低音パワーアンプ81を経由させて低音スピーカ23に供給する。低音スピーカ23から前方に放出された低音は、パネル構造体20の前パネル42と後パネル43およびフレーム41で囲まれた閉鎖空間Dから低音放音孔部18を経由して上扉4の下部から前方に放出される。
【0010】
一般的に、低音スピーカ用エンクロージャは直方体もしくは立方体などに形成され、当該低音スピーカ用エンクロージャ内の空気は低音スピーカの振動板からの空気振動によって全方向(8方向)に均一に圧力をかけるので、低音スピーカ用エンクロージャのそれぞれの面が同様に膨らんだり収縮したりし、特定の面のみが大きく振動することはない。
【0011】
これに対し、パネル構造体20の閉鎖空間Dをエンクロージャとして用いた低音スピーカによる音響について考察すると、エンクロージャを構成する閉鎖空間Dは、前後面の面積の広い前パネル42と前後面の面積の広い後パネル43とが前後方向に至近距離で平行に配置された構造である。つまり、前パネル42と後パネル43とからなる2枚のパネルにおける前後面の面積方向の縦横の距離に比べて2枚のパネルの前後方向に対向する距離が極端に短い構造である。この構造から、低音スピーカ23の振動板(コーン)が前後に振幅すると、閉鎖空間Dの空気が前後に激しく動き、当該空気の振動によって2枚のパネルが太鼓のように前後にしなって2次的な振動を発生する。
【0012】
また、低音スピーカ23の振動板による1次振動と、前パネル42と後パネル43とからなる2枚のパネルによる2次振動との関係は、1次振動に対する2次振動は、時間的な遅れが無く(位相差が無く)、同時に振動する。1次振動と2次振動とが、周波数によって互いに同相、逆相状態が存在する。両者が同相の時は、音圧特性に鋭いピーク(山)を生じ、逆相の時は、鋭いディップ(谷)を生じる。この音圧特性の例では、ディップが100Hz、400Hz、800Hz、1600Hzなどの周波数で発生し、ピークが250Hz、500Hz、1000Hzなどの周波数で発生する。特に、100Hz付近がディップの基本周波数で最大の谷を生じ、250Hz近辺がピークの基本周波数で最大の山を生じ、音圧特性が大きくうねっている。そして、周波数が上昇するにつれ、この共振の基本周波数の整数倍の周波数でピークディップを繰り返す特性である。さらに、250Hz付近では、前パネル42と後パネル43とからなる2枚のパネルによる特有の音色が強調され、聴感上、不快に感じる音声を発する。100Hz付近では、音圧が極端に低くなり、低音の音圧不足を感じる。
【0013】
そこで、2次共振を防止する機械的な構造による対策として、前パネル42と後パネル43との前後方向の対向間隔を大きくすること、前パネル42と後パネル43との中央部を振動しないように支柱で結合すること、前パネル42と後パネル43とを振動しないように前パネル42と後パネル43との前後方向の板厚を厚くすること、前パネル42と後パネル43とを振動しないように前パネル42の前面または後面と後パネル43の前面または後面とにゴムシートを貼付することなどが考えられるけれども、これらは、いずれも、遊技機として、にわかに採用できない構造である。
【0014】
これに対し、図1に示す2次共振を防止する電気的な構成を用い、250Hz近辺のピークを低減若しくは遮断するために、ローパスフィルタ79として、減衰特性≒−40dB/oct、カットオフ周波数(Fc)≒200Hzの特性を有するものを使用した。そして、100Hz付近の音量自体を増加させるために、レベル調整器80によってローパスフィルタ79からの出力の電圧レベルを上昇させた。これによって、サブウーハー特性を実現させることができる。
【0015】
a図において、実線L1は、ローパスフィルタ79の減衰特性≒−40dB/oct、カットオフ周波数(Fc)≒200Hzの遮断特性を示す。実線L2は、閉鎖空間Dをエンクロージャとして用いた低音スピーカ23の音圧特性を示す。よって、実線L1で示す音圧特性は、ローパスフィルタ79の遮断もしくは減衰処理の結果として、b図の実線L3に示す波形に変換されると推測される。さらに、レベル調整器80によって電圧増幅されることによって、音圧特性は、c図の仮想線L3から実線L4にアップされる波形になる。b図の実線L3とc図の仮想線L3とは、同一の音圧特性の波形である。d図に示す低音スピーカ23から閉鎖空間Dおよび低音放音孔部18を経由して上扉4の下部から前方に放出される実線L4のサブウーハー特性を有する低音と、左右の中高音スピーカ19から中高音放音孔部17を経由して上扉4の上部から前方に放出される点線L5の特性を有する中高音とが合わされることによって、実線L6の総合特性になる。
【0016】
このように、最良の形態によれば、ローパスフィルタ79として、減衰特性≒−40dB/oct、カットオフ周波数(Fc)≒200Hzの特性を有するものを使用し、レベル調整器80でローパスフィルタ79からの出力の電圧レベルを上昇することによって、パネル構造体20の閉鎖空間Dをエンクロージャとして用いたサブウーハーとした良好な音響特性を持つ遊技音響装置を構成することができ、音響特性上のピークおよびディップを回避することができるという利点がある。
【0017】
一方、低音スピーカ23をサブウーハーと使用する場合、ステレオ音源IC71から出力された低音信号を低音スピーカ23に供給する経路に、不要な高音を遮断もしくは低減するためのローパスフィルタが用いられるのが一般的である。これに対し、最良の形態は、前パネル42と後パネル43との共振によって発生する音圧のピークを遮断もしくは低減するためのローパスフィルタ79を用いている。このため、ローパスフィルタ79を使用することによって、上記一般的なローパスフィルタを除去することができるという利点がある。
【0018】
図2を参照し、遊技音響装置を備えた遊技機の例としてのパチンコ遊技機について説明する。パチンコ遊技機は、遊技機枠1の内部に遊技盤31を交換可能に格納した形態である。遊技機枠1は、固定枠2の前に可動枠3を開閉可能に備え、可動枠3の前に上扉4および下扉5を開閉可能に備える。固定枠2は、遊技機設置構造体に取り付けるための外枠とも呼ばれる。遊技機設置構造体は、遊技店のパチンコ遊技機を設置する島とも呼ばれる設備である。可動枠3は、遊技盤31や図外の制御装置など遊技に必要な部品を取り付ける前枠とも呼ばれる。可動枠3は、左側に位置するヒンジ6を中心とし、固定枠2の前で前側に開かれかつ後側に閉じられるように、片開き可能であって、盤設置構造体7、中央開口8、球発射機構9、施錠装置10、掛止機構11;12;13、掛止解除操作体14を備える。
【0019】
上扉4および下扉5は、遊技機枠1の前部における前扉を構成するものであって、個別に、左側に位置するヒンジ15を中心とし、可動枠3の前で前側に開かれかつ後側に閉じられるように、片開き可能である。上扉4は、パネル枠とも呼ばれ、前後方向に貫通する窓16を囲む額縁形状である。上扉4の前部には、中高音放音孔部17、低音放音孔部18が設けられる。上扉4の後部には、中高音スピーカ19、パネル構造体20、掛止部材21が設けられる。中高音スピーカ19は、窓16の上部で窓16を境として左右に分かれ、上扉4の後側から上扉4の後部に図外の止ねじで取り付けられる。
【0020】
パネル構造体20は、左側に位置するヒンジ22を中心とし、上扉4の後で後側に開かれかつ前側に閉じられるように、片開き可能である。パネル構造体20が閉じられて上扉4に掛止部材21で開閉不能に支持されると、パネル構造体20が窓16を後側から塞ぐ。パネル構造体20には、低音スピーカ23が設けられる。低音スピーカ23がパネル構造体20に設けられる構造は、図4で後述する。下扉5は、皿構造体とも呼ばれる。下扉5の前部には、受皿24および発射操作機構25が設けられる。下扉5の後部には、球取入口26および球供給口27が設けられる。
【0021】
遊技盤31の前面には、ガイドレール32、入賞部品33、センター飾り34、アウト口35、遊技釘36、発射通路37などの遊技部品が設けられる。遊技盤31の左上隅部には、スピーカ逃避部38が設けられる。遊技盤31が可動枠3の前側から盤設置構造体7に装着され、上扉4が閉じられた場合、低音スピーカ23の後部が遊技盤31の前側からスピーカ逃避部38を経由して遊技盤31の後側に突出する。閉じられた上扉4が可動枠3に掛止機構12で開閉不能に支持された場合、図3または図5に示すように、遊技盤31の前面や遊技部品が遊技機枠1の前方から窓16およびパネル構造体20を通して見える形態となる。
【0022】
そして、図外の主制御装置や図1の音制御装置70などからなる図外の制御装置が電力供給を受けて起動し、パチンコ球と呼ばれる球が受皿24に入れられ、遊技者が発射操作機構25を操作し、発射操作機構25から操作量に相当する電気的な出力が制御装置に入力され、制御装置が球発射機構9を駆動すると、球発射機構9が受皿24から球供給口27を経由して供給された球を1個ずつ発射操作機構25による操作量に応じた機械的な出力で遊技盤31の発射通路37に向けて発射する。
【0023】
発射通路37から遊技領域39(図5参照)に発射された球が入賞部品33に入賞し、図外の球検出器が入賞部品33に入賞した球を検出した入賞信号を制御装置に出力し、制御装置が入賞信号に基づき中高音スピーカ19または低音スピーカ23を駆動すると、中高音が中高音スピーカ19から中高音放音孔部17を経由して上扉4の上部から前側に放出され、低音が低音スピーカ23から低音放音孔部18を経由して上扉4の下部から前側に放出される。
【0024】
図3に示すように、遊技機枠1を正面である前側から見た場合、中高音放音孔部17が上扉4の上部に配置されているので、中高音スピーカ19からの中高音が遊技者の耳に近くから伝わり、低音放音孔部18が上扉4の下部に配置されているので、低音スピーカ23からの低音が遊技者の耳に安定感のある音として伝わるという利点がある。つまり、中高音放音孔部17と低音放音孔部18とが音響工学的に良好な場所に設けられたという利点がある。
【0025】
図4を参照し、パネル構造体20の構造について説明する。パネル構造体20は、フレーム41に、前パネル42と後パネル43と低音スピーカ23およびスピーカ後カバー44を取り付けることによって、構成される。フレーム41は、前パネル42および後パネル43よりも大形な外形を有する板状に構成される。フレーム41には、透視開口部45、前パネル収容部46、後パネル収容部47、ヒンジ48、掛止受止部49、スピーカ設置部50、スピーカ前カバー51、前開口52、音導入路53、パネル支持体54、フレーム音出口55が設けられる。
【0026】
透視開口部45は、窓16(図2参照)よりも大きな相似形で、前後方向への貫通孔を構成する。前パネル収容部46は、前パネル42の周縁部を収容する窪みとして、透視開口部45の前部とスピーカ設置部50の前部とに設けられる。ヒンジ48は、図2のヒンジ22におけるパネル構造体20に設けられたヒンジ要素を構成するものであって、フレーム41の左側部に上下に分かれて設けられる。
【0027】
図4に戻り、掛止受止部49は、フレーム41の右側部に上下に分かれて設けられる。スピーカ設置部50は、透視開口部45の左上部よりも外側に位置し、前パネル収容部46の内外に跨り、前後方向に貫通する筒状に構成される。スピーカ前カバー51は、前パネル収容部46よりも外側におけるスピーカ設置部50の前部を塞ぐ板状に構成される。前開口52は、スピーカ設置部50のスピーカ前カバー51や前パネル収容部46で覆われていない部分である。音導入路53は、前開口52から透視開口部45に音を誘導する窪みとして、透視開口部45とスピーカ設置部50との間に設けられる。
【0028】
パネル支持体54は、前開口52の近くにおいて後パネル収容部47の前面、フレーム音出口55の近くにおける前パネル収容部46の後面に設けられる。前開口52の近くにおいて後パネル収容部47の前面に設けられたパネル支持体54は、前パネル42を受け止める突起を構成する。フレーム音出口55の近くにおける前パネル収容部46の後面に設けられたパネル支持体54は、後パネル43を受け止める突起を構成する。フレーム音出口55は、前パネル収容部46の左下部よりも外側に位置し、前後方向への貫通孔を構成する。
【0029】
前パネル42は、無色透明なガラス板により構成される。前パネル42には、張出部56が左上部に設けられる。前パネル42の周縁部が前パネル収容部46に収容されて図外の接着剤で固定され、前パネル42がフレーム41に取り付けられた場合、仮想線L1で囲まれた部分が透視開口部45の前部を塞ぎ、張出部56が前開口52の前部と音導入路53の前部とを塞ぐ。
【0030】
後パネル43は、無色透明なガラス板により構成される。後パネル43には、張出部57が左下部に設けられる。後パネル43の周縁部が後パネル収容部47に収容されて図外の接着剤で固定され、後パネル43がフレーム41に取り付けられた場合、仮想線L2で囲まれた部分が透視開口部45の後部を塞ぎ、張出部57が、フレーム音出口55の後部を塞ぐ。
【0031】
低音スピーカ23は、前方に開口した円錐形状の振動板58の後部に音響変換部59を備え、振動板58の前縁部から外側にフランジ60を突出し、フランジ60に複数のねじ挿入孔61を備え、音響変換部59が音響変換部59から外側に突出した被覆電線からなる引出線62から入力された音電流を機械的な振動に変換して振動板58に伝達し、振動板58が伝達された振動を低音波として拡大して放出する。引出線62にはコネクタ63が設けられる。
【0032】
低音スピーカ23がフレーム41に取り付けられる場合、振動板58の前開口が前方に向けられるように、低音スピーカ23がフレーム41の後方からスピーカ設置部50に配置されることによって、振動板58および音響変換部59がスピーカ設置部50に接触せず、フランジ60の前面がスピーカ設置部50の後面に接触する。そして、タッピングスクリューのような止ねじ64が低音スピーカ23の後からねじ挿入孔61を経由してスピーカ設置部50に締結される。これによって、低音スピーカ23が、スピーカ設置部50から後方に突出するように、スピーカ設置部50に取り付けられる。
【0033】
スピーカ後カバー44は、前方に開口した箱形である。スピーカ後カバー44の前開口52の周縁部には、取付部としてのねじ挿入孔65が設けられる。スピーカ後カバー44の後壁には、多数の貫通孔からなる放音孔66が設けられる。スピーカ後カバー44が被せられる場合、コネクタ63がスピーカ後カバー44の前から放音孔66を構成する1つの貫通孔に挿入されてスピーカ後カバー44の後に引き出されることによって、引出線62がスピーカ後カバー44の後壁に貫通させられる。そして、スピーカ後カバー44が低音スピーカ23の後から低音スピーカ23に被せられ、スピーカ後カバー44の前開口52の周縁部がスピーカ設置部50の後部に接触され、タッピングスクリューのような止ねじ67がスピーカ後カバー44の後からねじ挿入孔65を経由してスピーカ設置部50に締結される。これによって、スピーカ後カバー44がスピーカ設置部50に取り付けられる。
【0034】
図5において、遊技盤31の前面と後パネル43との間におけるガイドレール32で囲まれた空間が球の飛び交う遊技領域39である。パネル構造体20の前面パネル42と後パネル43およびフレーム41で囲まれた閉鎖空間Dは、低音スピーカ23から放出された低音を低音放音孔部18に誘導する空気の振動による音の矢印X1で示す伝達路を形成する。低音スピーカ23の振動板58から前側に放出された音は、閉鎖空間Dの空気振動として全て伝達されるので、閉鎖空間Dからフレーム音出口55および低音放音孔部18を経由して上扉4の前方に効率よく放出される。
【0035】
低音スピーカ23の振動板58から後側に放出された音は、空気の振動による音の矢印X2で示す伝達路により、スピーカ後カバー44の内部と放音孔66および遊技盤31のスピーカ逃避部38を経由して遊技盤31の後側に放出される。よって、振動板58から前側に放出された音と振動板58から後側に放出された音とが、互いに干渉することがなく、互いに打ち消し合うことはない。
【0036】
低音放音孔部18が空気の流れによるヘルムホルツ共振現象を発生するように、低音放音孔部18の断面積と長さとが設定されているので、低音の固有の共振周波数が強調され、閉鎖空間Dで構成されたエンクロージャに対し低音放音孔部18がバスレフダクトの役目を果たす。低音放音孔部18の断面積は、低音放音孔部18における音の矢印X1で示す伝達路と直交する方向の通路断面である。低音放音孔部18の長さは、低音放音孔部18における音の矢印X1で示す伝達路方向の長さである。
【0037】
中高音スピーカ19および低音スピーカ23が前後方向に重ねられて配置されているので、中高音と低音との相互の干渉が防止でき、中高音スピーカ19と低音スピーカ23とが正面から見た場合の狭い場所に設けられるという利点がある。
【0038】
パネル構造体20の後側に配置されるように遊技機枠1に取り付けられる遊技盤31には、低音スピーカ23を逃げるためのスピーカ逃避部38が設けられているので、低音スピーカ23がパネル構造体20から後側に突出しても、遊技領域39の前後方向の隙間を球の通過し得る寸法に適切に確保することができるという利点がある。
【0039】
低音スピーカ23を後側から被覆するスピーカ後カバー44がスピーカ設置部50に設けられているので、低音スピーカ23の後側に放出された音が遊技領域39に回り込むことなく、遊技機枠1の後側に適切に導かれ、低音スピーカ23の後側に放出される低音が上扉4の前側に放出される低音と打ち消しあうように干渉する不都合はないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
図2において、低音スピーカ23が前後方向に重ねられて配置される場所は、遊技機枠1の左上部に限定されるものではない。また、低音放音孔部18は、複数でもよい。上扉4および下扉5は、単一体として構成されてもよい。
【0041】
図2において、遊技盤31を可動枠3の後から盤設置構造体7に装着する構造でもよい。
【0042】
図6は、異なる形態に係る音制御装置70を示す。図6では、図1のステレオ音源IC71に相当するステレオ音源IC82が用いられる。ステレオ音源IC82は、左ステレオ出力端子83と右ステレオ出力端子84とサブウーファー出力端子85と加算回路78とサブウーファー用の一般的なローパスフィルタ86とを備えた点で、ステレオ音源IC71と異なる。左ステレオ出力端子83には、音量調整器74が接続される。右ステレオ出力端子84には、音量調整器75が接続される。サブウーファー出力端子85には、図1のローパスフィルタ79に相当するローパスフィルタ87が接続される。ローパスフィルタ87は、高音信号を減衰もしくは遮断させて低音信号のみを生成する機能を持たず、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧の250Hz近辺のピークを遮断もしくは低減する機能を有する点で、ローパスフィルタ79と異なる。よって、ローパスフィルタ79には、サブウーファー出力端子85から出力される低音モノラル信号88が入力される。異なる形態の場合、左ステレオ出力端子83と右ステレオ出力端子84とサブウーファー出力端子85と加算回路78とローパスフィルタ86とを内蔵したステレオ音源ICが市販されていることから、ステレオ音源IC82として市販品を使用することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】遊技音響装置の模式図(最良の形態)。
【図2】パチンコ遊技機の分解斜視図(最良の形態)。
【図3】パチンコ遊技機の正面図(最良の形態)。
【図4】パネル構造体の分解斜視図(最良の形態)。
【図5】図3のA―A線断面図(最良の形態)。
【図6】遊技音響装置の模式図(異なる形態)。
【符号の説明】
【0044】
1は遊技機枠、2は固定枠、3は可動枠、4は上扉、5は下扉、6はヒンジ、7は盤設置構造体、8は中央開口、9は球発射機構、10は施錠装置、11は掛止機構、12は掛止機構、13は掛止機構、14は掛止解除操作体、15はヒンジ、16は窓、17は中高音放音孔部、18は低音放音孔部、19は中高音スピーカ、20はパネル構造体、21は掛止部材、22はヒンジ、23は低音スピーカ、24は受皿、25は発射操作機構、26は球取入口、27は球供給口、28乃至30は欠番、31は遊技盤、32はガイドレール、33は入賞部品、34はセンター飾り、35はアウト口、36は遊技釘、37は発射通路、38はスピーカ逃避部、39は遊技領域、40は欠番、41はフレーム、42は前パネル、43は後パネル、44はスピーカ後カバー、45は透視開口部、46は前パネル収容部、47は後パネル収容部、48はヒンジ、49は掛止受止部、50はスピーカ設置部、51はスピーカ前カバー、52は前開口、53は音導入路、54はパネル支持体、55はフレーム音出口、56;57は張出部、58はコーン、59は音響変換部、60はフランジ、61はねじ挿入孔、62は引出線、63はコネクタ、64は止ねじ、65はねじ挿入孔、66は放音孔、67は止ねじ、68;69は欠番、70は音制御装置、71はステレオ音源IC、72はステレオ右チャンネル信号、73はステレオ左チャンネル信号、74は右音量調整器、75は左音量調整器、76は右パワーアンプ、77は左パワーアンプ、78は加算回路、79はローパスフィルタ、80はレベル調整器、81は低音パワーアンプ、82はステレオ音源IC、83は左ステレオ出力端子、84は右ステレオ出力端子、85はサブウーファー出力端子、78は加算回路、86はローパスフィルタ、87はローパスフィルタ、88は低音モノラル信号、Dは閉鎖空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機枠の前扉には窓と窓を後側から塞ぐパネル構造体と中高音放音孔部と低音放音孔部とが設けられ、パネル構造体が前面パネルと後面パネルとフレームとで囲まれた閉鎖空間を形成し、フレームには閉鎖空間に連なる筒状のスピーカ設置部と閉鎖空間に連なる音出口部とが設けられ、低音スピーカが振動板を前方に向けてスピーカ設置部に取り付けられ、低音スピーカの振動板から前方に放射された低音がスピーカ設置部から閉鎖空間および音出口部を経由して低音放音孔部から前扉の前方に放出される遊技音響装置であって、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のピークを遮断もしくは低減するローパスフィルタと、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のディップを上昇するようにローパスフィルタからの出力信号の電圧レベルを増加して低音スピーカに供給するレベル調整器とを備えたことを特徴とする遊技音響装置。
【請求項2】
遊技機枠の前扉には窓と窓を後側から塞ぐパネル構造体と中高音スピーカと中高音放音孔部と低音放音孔部とが設けられ、中高音スピーカから放出された中高音が中高音放音孔部を経由して前扉の前方に放出され、パネル構造体が前面パネルと後面パネルとフレームとで囲まれた閉鎖空間を形成し、フレームには閉鎖空間に連なる筒状のスピーカ設置部と閉鎖空間に連なる音出口部とが設けられ、低音スピーカが振動板を前方に向けてスピーカ設置部に取り付けられ、低音スピーカの振動板から前方に放射された低音がスピーカ設置部から閉鎖空間および音出口部を経由して低音放音孔部から前方に放出される遊技音響装置であって、中高音スピーカに対するステレオ右チャンネル信号およびステレオ右チャンネル信号からの出力を加算してモノラル信号を生成する加算回路と、加算回路から出力されたモノラル信号から前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のピークを遮断もしくは低減するローパスフィルタと、前面パネルと後面パネルとの共振によって発生する音圧のディップを上昇するようにローパスフィルタからの出力信号の電圧レベルを増加して低音スピーカに供給するレベル調整器とを備えたことを特徴とする遊技音響装置。
【請求項3】
中高音スピーカが前側で低音スピーカが後側となるように、中高音スピーカおよび低音スピーカが前後方向に重ねられて配置されたことを特徴とする請求項2記載の遊技音響装置。
【請求項4】
パネル構造体の後側に配置されるように遊技機枠に取り付けられる遊技盤には低音スピーカを逃げるためのスピーカ逃避部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の遊技音響装置。
【請求項5】
低音スピーカを後側から被覆するスピーカ後カバーがスピーカ設置部に設けられ、スピーカ後カバーには低音スピーカ後側に放出される低音をスピーカ後カバーの内部から後側に放出する放音孔部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の遊技音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−237501(P2008−237501A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81565(P2007−81565)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】