説明

遊星式回転−直線運動変換装置

【課題】組立が容易であり、部品点数を減らし低コスト化でき、遊星軸のねじれを抑制して耐久性の向上と滑らかな回転運動から直線運動への変換とを実現できる、遊星式回転−直線運動変換装置を提供する。
【解決手段】太陽軸40、遊星軸30、リング軸20に、太陽軸凸部44、遊星軸凹部36、リング軸凸部26が形成され、遊星軸凹部36と太陽軸凸部44及びリング軸凸部26とが噛み合う。太陽軸凸部44、遊星軸凹部36、リング軸凸部26の一対の側面により、第1の遊星歯車機構の平歯車又ははすば歯車が間欠的に形成され、他の一対の側面により第2の遊星歯車機構の螺旋状の歯が間欠的に形成される。遊星軸30に対する太陽軸40の平歯車又ははすば歯車の歯数比と螺旋条の歯の条数比と、遊星軸30に対するリング軸20の歯数比と条数比とは、一方の歯数比と条数比とが等しく、他方の歯数比と条数比とが異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構を用いて回転運動を直線運動に変換する遊星式回転−直線運動変換装置に関し、さらに詳しくは、太陽軸、遊星軸、リング軸にそれぞれ二つの歯車の歯面が形成された遊星式−直線運動変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい機械要素として、遊星式−直線運動変換装置が提案されている。この装置は、太陽軸、遊星軸、リング軸に、それぞれ、平歯車又ははすば歯車と、螺旋状の歯を有するねじ状歯車とを設け、平歯車又ははすば歯車により構成される第1の遊星歯車機構と、ねじ状歯車により構成される第2の遊星歯車機構とに減速比の差を設けることによって、回転運動を直線運動に変換するものである。この装置は、全く新しい機械要素であり多くの可能性がある。
【0003】
例えば、特許文献1に、この機構の原理が開示され、いくかの構成例が示されている。特に図6に示す構成例は、平歯車とねじ状歯車とが混合した凹形状の太陽歯車と凸形状の遊星を組み合わせたものであり、極めて機構上優れている。
【0004】
すなわち、図6(A)は、回転軸線112に沿う断面を示す断面図である。図6(B)は、軸線方向中央部の回転軸線112に垂直な断面を示す断面図である。図6(C)は、太陽軸114の要部を示す右側面図である。図6(A)〜(C)では、断面のハッチングの図示が省略されている。
【0005】
図6(A)〜(C)に示すように、遊星式−直線運動変換装置110は、太陽軸114に、平歯車の歯面とねじ状歯車の歯面とを有する両歯部164が設けられている。各遊星軸120には、平歯車の歯面とねじ状歯車の歯面とを有する両歯部166が設けられている。
【0006】
リング軸116の内部には、中央の小径部の両側に大径部が形成されている。リング軸116の小径部の内面には、遊星軸120の両歯部166のねじ状歯車144が形成されている。リング軸116の大径部の内面には、回転軸線112に沿って互いに隔置された状態にてリング歯車部材142及び160が圧入により固定されている。リング歯車部材142及び160の内面に、平歯車の内歯が形成されている。リング歯車部材142及び160の内歯は、各遊星軸120の両端部の両歯部166のうち平歯車の歯面と噛み合っている。
【0007】
また、特許文献2には、図7の斜視図に示すように、太陽軸201の外周面に、平歯車211とねじ状歯車212とが凸状に形成された遊星式回転―直線運動変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−56952号公報
【特許文献2】特開2010−156452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
遊星式回転―直線運動変換装置が実際に汎用的に使用されるためには、その原理に適合し、且つ、難点を克服できる形態の発明が不可欠である。
【0010】
例えば、図6のように平歯車とねじ状歯車が混合した凹形状の太陽軸と凸形状の遊星軸を組み合わせたものは、極めて機構上優れている。しかしながら、凹形状の太陽軸をシャフト状に加工するには、いわゆる通し転造で加工しなければならず、非常に加工が困難である。
【0011】
また、遊星軸の凸形状に形成されたねじ状歯車は、リング軸116のねじ状歯車144と噛み合い、遊星軸の凸形状に形成された平歯車は、リング軸116内の二つのリング歯車部材142及び160の平歯車に噛み合う。すなわち、リング軸116には、リング軸116の二つの平歯車と、ねじ状歯車114の計3個の歯車が存在する。それらの歯車は、噛み合いが異なる。ねじ状歯車114との噛み合いによって、遊星軸120には遊星軸120を円周方向に倒れさせる力が働き、その力をリング軸116の二つの平歯車の噛み合いが受けることとなる。したがって、リング軸116の平歯車と、遊星軸120の両端のリング軸116の平歯車と噛み合う部分とが磨耗しやすい。
【0012】
図6の例において、平歯車(直歯)をはすば歯車にすることも理論的にはできるが、そうすると、リング軸116に、一方のリング歯車部材142を挿入することはできても、他方のリング歯車部材160を挿入することは非常に難しくなる。これは、二つあるリング歯車部材142及び160の一方をリング軸116の片方に挿入すると、遊星軸は、ねじ状歯車とはすば歯車との位相が決まるので、二つあるリング歯車部材142及び160の他方を挿入しようとすると、螺旋状に回転しながら挿入しなければならなくなり、組立性が極めて悪い。よって、リング歯車部材142及び160には、はす歯を用いることができず、平歯車とせざるを得ない。平歯車は噛み合い率が小さいため、回転−直線運動変換時に、連続的に直線運動に変換されず、階段状の直線変位となる恐れがある。
【0013】
図7の例は、太陽軸201を凸形状にしたことにより、太陽軸201の加工は容易になる。しかし、遊星軸204には、平歯車241の間におねじ142が形成されている。遊星軸202の2つの平歯車241に噛み合うように、ナット202には、2つのリングギア205が挿入されている。リングギア205の組み込みは、極めて困難である。
【0014】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、(a)組立が容易であり、(b)部品点数を減らし低コスト化でき、(c)遊星軸のねじれを抑制して耐久性の向上と滑らかな回転運動から直線運動への変換とを実現できる、遊星式回転−直線運動変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した遊星式回転−直線運動変換装置を提供する。
【0016】
遊星式回転−直線運動変換装置は、(a)互いに平行な回転軸線を有する太陽軸、複数の遊星軸、リング軸と、(b)前記遊星軸を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である保持器とを備えている。前記遊星軸の外周面には、該外周面から径方向内側に後退し、二対の側面を有する複数の遊星軸凹部が互いに離れて形成されている。前記太陽軸の外周面には、該外周面から径方向外側に突出し、二対の側面を有し、前記遊星軸凹部と噛み合う複数の太陽軸凸部が互いに離れて形成されている。前記リング軸の内周面には、該内周面から径方向内側に突出し、二対の側面を有し、前記遊星軸凹部と噛み合う複数のリング軸凸部が互いに離れて形成されている。前記遊星軸凹部、前記太陽軸凸部、前記リング軸凸部の一対の側面は、順に、平歯車又ははすば歯車であり互いに共働して第一の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の歯面を間欠的に形成する。前記遊星軸凹部、前記太陽軸凸部、前記リング軸凸部の他の一対の側面は、順に、螺旋状の歯を有するねじ状歯車であり互いに共働して第二の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車の歯面を間欠的に形成する。(I)前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なり、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しい。あるいは、(II)前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しく、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なる。
【0017】
上記構成によれば、(I)の場合には、リング軸凸部と遊星軸凹部とが嵌合するようにリング軸に複数の遊星軸を組み付けた状態で、その中心に太陽軸を回転しながら配置することにより、遊星軸凹部に太陽軸凸部を噛み合わせながら、太陽軸を差し込むことができる。(II)の場合には、太陽軸凸部と遊星軸凹部とが嵌合するように太陽軸に複数の遊星軸を組み付けた状態で、その外側にリング軸を回転しながら配置することにより、遊星軸凹部にリング軸凸部を噛み合わせながら、リング軸を被せることができる。したがって、遊星式回転―直線運動変換装置を容易に組み立てることができる。
【0018】
また、遊星軸凹部によっては平歯車又ははすば歯車である遊星歯車とねじ状遊星歯車とを一体化して遊星軸に形成し、太陽軸凸部によって平歯車又ははすば歯車である太陽歯車とねじ状太陽歯車とを一体化して太陽軸に形成し、リング軸凸部によって平歯車又ははすば歯車であるリング歯車とねじ状リング歯車とを一体化してリング軸に形成することにより、部品点数を減らし低コスト化できる。
【0019】
さらに、遊星軸に遊星軸凹部を形成することにより、遊星軸の外周面に径方向外側に突出する凸部を形成する場合よりも、遊星軸の剛性が高くなる。これによって遊星軸のねじれが抑制され、遊星式回転−直線運動変換装置は、耐久性の向上と滑らかな直線運動とが可能になる。
【0020】
好ましくは、前記第1の遊星歯車機構を構成する前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記リング歯車は、はすば歯車である。前記遊星歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状遊星歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向である。前記太陽歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向である。前記リング歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向である。
【0021】
この場合、遊星軸凹部、太陽軸凸部、リング軸凸部の四隅の角度は、はすば歯車の歯すじのねじれ方向とねじ状歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに同じ方向である場合に比べると、90度により近くなる。そのため、遊星式回転―直線運動変換装置の耐久性が向上する。
【0022】
好ましくは、前記保持器は、(a)前記遊星軸の一端側を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である第1保持部と、(b)前記遊星軸の他端側を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である第2保持部と、(c)互いに隣接する前記遊星歯車の間に配置され、前記第1保持部と前記第2保持部とに固定され、前記第1保持部と前記第2保持部との相対回転を阻止する複数の連結部とを有する。
【0023】
この場合、遊星軸の両端の位置ずれは保持器により阻止されるため、ねじ状遊星歯車の歯面に作用する荷重による遊星軸のねじれが抑制される。これにより、遊星式回転―直線運動変換装置の耐久性がより向上し、直線運動がより滑らかになる。
【0024】
好ましくは、前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しく、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なる。前記リング軸が、前記遊星軸及び前記太陽軸に対して前記回転軸線と平行に相対移動する。
【0025】
この場合、太陽軸が回転するとリング軸が直線運動する。リング軸が回転すると太陽軸が直線運動する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の遊星式回転−直線運動変換装置は、(a)組立が容易であり、(b)部品点数を減らし低コスト化でき、(c)遊星軸のねじれを抑制して耐久性の向上と滑らかな回転運動から直線運動への変換とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】遊星式回転−直線運動変換装置の断面図である。(実施例1)
【図2】遊星式回転−直線運動変換装置のリング軸の断面図である。(実施例1)
【図3】遊星式回転−直線運動変換装置の遊星軸の断面図である。(実施例1)
【図4】遊星式回転−直線運動変換装置の遊星軸の断面図である。(実施例2)
【図5】遊星軸凹部の平面図である。(実施例2)
【図6】遊星式回転−直線運動変換装置の(A)回転軸に垂直な断面図、(B)回転軸を含む断面図、(C)太陽軸の要部を示す断面図である。(従来例1)
【図7】遊星式回転−直線運動変換装置の斜視図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0029】
<実施例1> 実施例1の遊星式回転−直線運動変換装置10について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、遊星式回転−直線運動変換装置10の断面図である。図2は、遊星式回転−直線運動変換装置10のリング軸20の断面図である。図3は、遊星式回転−直線運動変換装置10の遊星軸30の断面図である。
【0031】
図1〜図3に示すように、遊星式回転−直線運動変換装置10は、互いに平行な回転軸線40x,30x,20xを有する太陽軸40、複数の遊星軸30及びリング軸20と、保持器50とを備える。
【0032】
図1に示すように、太陽軸40の外周面42には、太陽軸40の外周面42から径方向外側に突出する複数の太陽軸凸部44が互いに離れて形成されている。太陽軸凸部44は、二対の側面と天面とを有する。
【0033】
太陽軸凸部44の一対の側面は、平歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、太陽軸40の外周面42に沿って回転軸線40xと平行に、間隔を設けて連なり、周方向には等間隔に配列されている。この一対の側面は、本発明の「第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車」の歯面となる。
【0034】
太陽軸凸部44の他の一対の側面は、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、太陽軸40の外周面42に沿って螺旋状に、間隔を設けて連なる。この他の一対の側面は、本発明の「第2の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車」の歯面となる。
【0035】
図1及び図3に示すように、太陽軸40の周りに複数の遊星軸30が配置される。遊星軸30の両端部38a,38bは、保持器50の第1保持部50aと第2保持部50bとによって回転自在に支持される。
【0036】
遊星軸30の本体32の外周面34には、その外周面34から径方向内側に後退する複数の遊星軸凹部36が互いに離れて形成されている。遊星軸凹部36は、二対の側面と底面とを有する。
【0037】
遊星軸凹部36の一対の側面は、平歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、遊星軸30の本体32の外周面34に沿って回転軸線40xと平行に、間隔を設けて連なり、周方向には等間隔に配列されている。この一対の側面は、本発明の「第1の遊星歯車機構を構成する遊星歯車」の歯面となる。
【0038】
遊星軸凹部36の他の一対の側面は、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、遊星軸30の本体32の外周面34に沿って螺旋状に、間隔を設けて連なる。この他の一対の側面は、本発明の「第2の遊星歯車機構を構成するねじ状遊星歯車」の歯面となる。
【0039】
図1及び図2に示すように、リング軸20の本体22の中央の内周面24には、その内周面24から径方向内側に突出する複数のリング軸凸部26が互いに離れて形成されている。
【0040】
リング軸凸部26の一対の側面は、平歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、リング軸20の内周面24に沿って回転軸線40xと平行に、間隔を設けて連なり、周方向には等間隔に配列されている。この一対の側面は、本発明の「第1の遊星歯車機構を構成するリング歯車」の歯面となる。
【0041】
リング軸凸部26の他方の一対の側面は、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、リング軸20の内周面24に沿って螺旋状に、間隔を設けて連なる。この他の一対の側面は、本発明の「第2の遊星歯車機構を構成するねじ状リング歯車」の歯面となる。
【0042】
リング軸20の両端20a,20b側には、中央の内周面24よりも内径が大きい内周面27a,27bが形成され、内周面27a,27bの内側には、第1保持部50aと第2保持部50bが、リング軸20及び太陽軸40との間に隙間を設け、太陽軸40及びリング軸20に対して回動自在に配置されている。内周面27a,27bには円周方向に延在する溝27s,27tが形成され、溝27s,27tに、第1保持部50aと第2保持部50bの軸方向の移動を阻止する抜け止め部材52が嵌め込まれる。
【0043】
リング軸20の一端20a側にはフランジ28が設けられ、フランジ28には、取り付け用の貫通孔29が形成されている。
【0044】
遊星式回転−直線運動変換装置10は、遊星軸凹部36に太陽軸凸部44とリング軸凸部26とが噛み合い、それぞれの側面同士が当接する。このとき、それぞれの一対の側面、すなわち遊星歯車、太陽歯車、リング歯車の噛み合いによって、第1の遊星歯車機構が構成される。また、それぞれの他の一対の側面、すなわちねじ状遊星歯車、ねじ状太陽歯車、ねじ状リング歯車の噛み合いによって、第2の遊星歯車機構が構成される。
【0045】
第1の遊星歯車機構における平歯車の歯数比と、第2の遊星歯車機構におけるねじ状歯車の条数比(回転軸線方向の1ピッチの間に含まれる螺旋状の歯の数の比)とは、次のように選択する。
【0046】
第1のケースは、遊星歯車に対する太陽歯車の平歯車の歯数比とねじ状歯車の条数比とが異なり、かつ遊星歯車に対するリング歯車の平歯車の歯数比とねじ状歯車の条数比とが等しくなるようにする。この場合、リング軸と遊星軸とは、歯数比と条数比とが等しいため、軸方向に相対移動しない。一方、太陽軸と遊星軸とは、歯数比と条数比とが異なるため、軸方向に相対移動する。そのため、太陽軸の回転運動をリング軸及び遊星軸の直線運動に変換したり、リング軸及び遊星軸の回転運動を太陽軸の直線運動に変換したりできる。
【0047】
第2のケースは、遊星歯車に対する太陽歯車の平歯車の歯数比とねじ状歯車の条数比とが等しく、かつ遊星歯車に対するリング歯車の平歯車の歯数比とねじ状歯車の条数比とが異なるようにする。この場合、太陽軸と遊星軸とは、歯数比と条数比とが等しいため、軸方向に相対移動しない。一方、リング軸と遊星軸とは、歯数比と条数比とが異なるため、軸方向に相対移動する。そのため、太陽軸及び遊星軸の回転運動をリング軸の直線運動に変換したり、リング軸の回転運動を太陽軸及び遊星軸の直線運動に変換したりできる。
【0048】
保持器50は、互いに隣接する遊星軸30の間に配置され、第1保持部50aと第2保持部50bに固定され、第1保持部50aと第2保持部50bとの相対回転を阻止する連結部(図示せず)とを有する。第1保持部50aと第2保持部50bとの相対回転が阻止されるので、ねじ状遊星歯車の歯面に作用する荷重による遊星軸30のねじれが抑制される。これによって、遊星式回転―直線運動変換装置10の耐久性が向上し、直線運動が滑らかになる。なお、保持器は、連結部を無くし、第1保持部と第2保持部とを連結しない構成とすることも可能である。
【0049】
次に、遊星式回転−直線運動変換装置10の組立手順について説明する。
【0050】
第1のケースの場合、すなわち太陽軸40がリング軸20及び遊星軸30に対して直線方向に変位を起こす場合には、太陽軸40以外を組み立てた後、太陽軸40を回転しながら差し込むことによって組み立てることができる。
【0051】
まず、所定の配置個数の遊星軸30を、リング軸20の内側に所定間隔で配置し、リング軸20のリング軸凸部26と遊星軸30の遊星軸凹部36とを噛み合わせ、保持器50で遊星軸30を保持した後、抜け止め部材52を取り付ける。遊星軸凹部36とリング軸凸部26との噛み合いによって、平歯の噛み合いの位置関係と、ねじ状歯車の噛み合いの位置関係とを同時に決めることができる。
【0052】
次いで、太陽軸40を回転しながら、太陽軸凸部44を遊星軸凹部36に噛み合わせる。この噛み合いによって、平歯の噛み合いの位置関係と、ねじ状歯車の噛み合いの位置関係とが同時に決まるので、遊星軸30は、太陽軸40に対する位置関係(移送関係)が決定される。遊星軸30の平歯車とねじ状歯車に噛み合うように、太陽軸40に予め平歯車とねじ状歯車が加工されていれば、太陽軸40を回転しながら、太陽歯車を遊星歯車に噛み合わせると、太陽軸40は直線方向に移動するので、太陽軸40を挿入できる。すなわち、らせん状の噛み合いを維持しながら、太陽軸を挿入できる。
【0053】
第2のケースの場合、すなわちリング軸が太陽軸及び遊星軸に対して直線方向に変位する場合には、太陽軸凸部と遊星軸凹部とが嵌合するように太陽軸に複数の遊星軸を組み付けた状態で、その外側にリング軸を回転しながら配置することにより、遊星軸凹部にリング軸凸部を噛み合わせながら、リング軸を被せることによって、組み立てることができる。なお、この場合には、第1保持部と第2保持部の最大外径を、リング軸の最小内径よりも小さくすると、組み立てが容易になる。
【0054】
遊星式回転−直線運動変換装置10において、太陽歯車、遊星歯車、リング歯車に相当する太陽軸40、遊星軸30、リング軸20は、凹凸状に加工されている。遊星式回転−直線運動変換装置10は、従来技術では分離されていたねじ状歯車と平歯車とを一体化することで、組み立てが容易になっている。すなわち、ねじ状歯車と平歯車とが分離されていると、例えば、ねじ状歯車が所定の噛み合いを実現するように組み立てた後、平歯車を挿入する必要があり、工程が多くなる。これに対し、ねじ状歯車と平歯車とが一体化されていると、ねじ状歯車と平歯車との両方について噛み合いの位置関係(位相)を同時に決めることができるので、工程が少なくなる。
【0055】
また、ねじ状歯車と平歯車との一体化によって部品点数を減らし、低コスト化できる。
【0056】
さらに、遊星軸30に遊星軸凹部36を形成することにより、遊星軸30の外周面34に径方向外側に突出する凸部を形成する場合よりも遊星軸30の剛性が高くなる。これによって、遊星軸のねじれが抑制されるため、遊星式回転−直線運動変換装置10は、耐久性の向上と滑らかな直線運動とが可能になる。
【0057】
特に、第1保持部50aと第2保持部50aとが連結された保持器50を用いると、耐久性の一層の向上とより滑らかな直線運動とが可能になる。すなわち、遊星軸には、ねじ状歯車の歯面に作用する力によって、遊星軸を傾けようとする力、すなわち円周方向に倒れさせる力が働く。その力を、平歯車の噛み合いが受けると、歯面が磨耗しやすい。また、遊星軸が傾き、太陽軸及びリング軸との平行位置がずれると、円滑な直線運動が阻害される。第1保持部50aと第2保持部50aとが連結された保持器50を用いると、遊星軸30の円周方向の倒れを抑制でき、遊星軸30と太陽軸40及びリング軸20との平行位置を保つことができるため、耐久性の一層の向上とより滑らかな直線運動とが可能になる。
【0058】
次に、実施例1の具体例を説明する。
【0059】
<具体例1>
次の表1に、第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の平歯車の歯数と、第2の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数(回転軸線方向の1ピッチの間に含まれる螺旋状の歯の数)とを示す。この例は、太陽軸(シャフト)とリング軸(ナット)の相対回転入力に対して、リング軸と遊星軸とは直線方向に変位を起こさず、太陽軸がリング軸及び遊星軸に対して直線方向に変位を起こす第1のケースの例である。
【表1】

表中において、「太陽」は、太陽歯車又はねじ状太陽歯車示す。「遊星」は、遊星歯車又はねじ状遊星歯車を示す。「内歯」は、リング歯車又はねじ状リング歯車を示す。「平歯」は、太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の平歯車の歯数を示す。「ネジ状歯車」は、ねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数を示す。
【0060】
この例では、第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車は、それぞれ、31歯、10歯、50歯を有する。第2の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車は、順に、4条、1条、5条を有する。
【0061】
太陽軸は、凸状の突起である太陽軸凸部の側面によって、太陽歯車の平歯車とねじ状歯車の歯面が形成される。遊星軸は、凹状の窪みである遊星軸凹部の側面によって、遊星歯車の平歯車とねじ状歯車の歯面が形成される。これらの形状を実現する方法として量産性があるのは、転造加工である。歯車の外径が小さく、比較的短い長さで加工できるので、板転造に向く。
【0062】
リング軸は、太陽軸と同様にリング軸凸部が形成される、リング軸凸部は、平歯車の歯面を形成するための引抜やホーニング、シェービング加工、ブローチ加工と、ねじ状歯車の歯面を形成するためのネジ加工と組み合わせることにより形成できる。
【0063】
表1について、歯数比及び条数比をみると、この例では、遊星と内歯の比は、平歯車もネジ状歯車も1:5の比となっている。よって、回転によって、遊星と内歯との直線方向の相対変位は起こらない。しかし、太陽と内歯の歯数比は、平歯車は31:50であり、ネジ状歯車は4:5である。この違いによって、太陽と内歯には、直線方向の変位が生まれる。
【0064】
遊星の配置個数は、太陽と内歯の歯数又は条数の和の公約数となる。太陽と内歯について、平歯は31歯と50歯を有し、ネジ状歯車は4条と5条を有するので、それぞれ和は、81と9である。よって、その公約数は、9と3と1であり、この場合、配置個数は9とした。すなわち、最大公約数9の約数が、遊星軸の配置個数となる。
【0065】
<具体例2>
次の表2に、第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の平歯車の歯数と、第2の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数(回転軸線方向の1ピッチの間に含まれる螺旋状の歯の数)とを示す。この例は、太陽軸(シャフト)とリング軸(ナット)の相対回転入力に対して、太陽歯車と遊星軸は直線方向に変位を起こさず、リング軸が、太陽軸及び遊星軸にして直線方向に変位を起こす第2のケースの例である。
【表2】

表中の「太陽」、「遊星」、「内歯」、「平歯」、「ネジ状歯車」は、表1と同じである。
【0066】
この例では、第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の平歯は、それぞれ、30歯、10歯、51歯を有する。第2の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車は、順に、3条、1条、6条を有する。
【0067】
表2について、歯数比及び条数比をみると、この例では、遊星と太陽とについて、平歯もネジ状歯車も1:3の比となっている。よって、回転によって。遊星と太陽の直線方向の変位は起こらない。しかし、太陽と内歯の歯数比は、30:51であり、ネジ状歯車は3:6である。る。この違いによって、太陽と内歯には、直線方向の変位が生まれる。
【0068】
注目すべきは、遊星の歯数及び条数は、平車、ネジ状の歯車とも、前述の具体例1と同じである。よって、転造によって加工することを考えると、共通の遊星を異なる形態(具体例1、2)に用いることができるので、型代の負担が楽になり、よって安価に製造できる。
【0069】
<実施例2> 実施例2の遊星式回転−直線運動変換装置10aについて、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0070】
実施例2の遊星式回転−直線運動変換装置10aは、実施例1の遊星式回転−直線運動変換装置10と略同様に構成されている。以下では、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1と同様の部分には同じ符号を用いる。
【0071】
実施例2の遊星式回転−直線運動変換装置10aは、実施例1と同様に、遊星軸凹部に太陽軸凸部とリング軸凸部とが噛み合い、それぞれの側面同士が当接する。それぞれの一対の側面によって第1の遊星歯車機構が構成され、他の一対の側面によって第2の遊星歯車機構が構成される。
【0072】
しかし、実施例1では、第1の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車が平歯車であったのに対し、実施例2でははすば歯車である。第2の遊星歯車機構は、実施例1と同様に、ねじ状歯車によって構成される。はすば歯車の歯数比と、ねじ状歯車の条数比とは、実施例1と同様に選択する。
【0073】
具体的には、遊星式回転−直線運動変換装置10aの遊星軸30aの断面図である図4に示すように、遊星軸30aの本体32aの外周面34aには、その外周面34aから径方向内側に後退する複数の遊星軸凹部36aが互いに離れて形成されている。遊星軸凹部36aは、二対の側面と底面とを有する。
【0074】
遊星軸凹部36aの一対の側面は、はすば歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、遊星軸30aの本体32aの外周面34aに沿って回転軸線40xに対して傾き、間隔を設けて連なり、周方向には等間隔に配列されている。この一対の側面は、本発明の「第1の遊星歯車機構を構成する遊星歯車」の歯面となる。
【0075】
遊星軸凹部36の他の一対の側面は、実施例1と同様に、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。すなわち、遊星軸30aの本体32aの外周面34aに沿って螺旋状に、間隔を設けて連なる。この他の一対の側面は、本発明の「第2の遊星歯車機構を構成するねじ状遊星歯車」の歯面となる。
【0076】
図示していないが、同様に、リング軸の内周面には、その内周面から径方向内側に突出する複数のリング軸凸部が互いに離れて形成されている。リング軸凸部26の一対の側面は、はすば歯車の歯面を間欠的に形成する。リング軸凸部の他方の一対の側面は、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。
【0077】
また、太陽軸の外周面には、太陽軸の外周面から径方向外側に突出する複数の太陽軸凸部が互いに離れて形成されている。太陽軸凸部の一対の側面は、はすば歯車の歯面を間欠的に形成する。太陽軸凸部の他の一対の側面は、螺旋状の歯を有するねじ状歯車の歯面を間欠的に形成する。
【0078】
太陽歯車、遊星歯車、リング歯車を平歯車からはすば歯車にすることにより、重なり噛合い率を上げることができる。遊星軸は長い棒状であるので、重なり噛み合い率は、1以上を容易に確保でき、スムーズな回転を実現できる。
【0079】
太陽歯車、遊星歯車及びリング歯車の歯すじのねじれ方向の関係は、通常の遊星機構の歯車で使用される関係と同じである。すなわち、太陽歯車の歯すじのねじれ方向と遊星歯車の歯すじのねじれ方向は逆方向であり、リング歯車の歯すじのねじれ方向と遊星歯車の歯すじのねじれ方向は同方向である。
【0080】
同様に、ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とねじ状遊星歯車の螺旋状の歯のねじれ方向は逆方向であり、ねじ状リング歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とねじ状遊星歯車の螺旋状の歯のねじれ方向は同方向である。
【0081】
太陽歯車、遊星歯車及びリング歯車の歯すじのねじれ方向と、ねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車及びねじ状リング歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とは、それぞれ、同一方向とすることも、逆方向とすることもできるが、逆方向とすることが好ましい。
【0082】
例えば図5に示すように、遊星軸凹部36aの一対の側面により形成されるはすば歯車の歯面61,63のねじれ角をαとし、遊星軸凹部36aの他の一対の側面により形成されるねじ状歯車の歯面62,64のねじれ角をβとすると、はすば歯車の歯面61,63のねじれ方向とねじ状歯車の歯面62,64のねじれ方向とが互いに逆方向である場合には、遊星軸凹部36aの四隅の角度66,67は、90°±(α−β)となり、ねじれ方向が同じ方向である場合の四隅の角度90°±(α+β)に比べ、90度により近くなる。そのため、遊星軸凹部36aの四隅近傍の応力集中が緩和されるので、遊星軸の耐久性が向上する。太陽軸凸部やリング軸凸部の四隅についても同様に、四隅近傍の応力集中が緩和されるので、太陽軸やリング軸の耐久性が向上する。
【0083】
また、ねじ状遊星歯車の歯面に作用する荷重によって、遊星軸を円周方向に倒そうとする力が働くが、遊星歯車のねじれ方向をねじ状遊星歯車のねじれ方向とは逆方向にすることによって、その荷重を、はすば歯車の歯面に作用する荷重によって相殺できる。これによって、遊星軸の磨耗が減る。
【0084】
したがって、遊星歯車のはす歯のねじれ方向とねじ状遊星歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であり、太陽歯車のはす歯のねじれ方向とねじ状太陽歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であり、リング歯車のはす歯のねじれ方向とねじ状リング歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であることが好ましい。
【0085】
実施例2の遊星式回転−直線運動変換装置10aは、実施例1の遊星式回転−直線運動変換装置10と同様の方法で、容易に組み立てることができる。ねじ状歯車とはすば歯車の歯車とを一体化することで、部品点数を減らし低コスト化できる。また、遊星軸に遊星軸凹部を形成することにより、遊星軸の外周面に径方向外側に突出する凸部を形成する場合よりも、遊星軸の剛性が高くなるため、遊星軸のねじれが抑制され、耐久性の向上と滑らかな直線運動とが可能になる。
【0086】
<まとめ> 以上のように、太陽軸、遊星軸、リング軸に、平歯車又ははすば歯車とねじ状歯車の歯面を形成する太陽軸凸部、遊星軸凹部、リング軸凸部を形成し、遊星軸凹部と太陽軸凸部及びリング軸凸部とが噛み合うように構成することによって、(a)組立が容易であり、(b)部品点数を減らし低コスト化でき、(c)遊星軸のねじれを抑制して耐久性の向上と滑らかな回転運動から直線運動への変換とを実現できる。
【0087】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
10,10a 遊星式回転−直線運動変換装置
20 リング軸
20x 回転軸線
22 本体
24 内周面
26 リング軸凸部
27a,27b 内周面
27s,27t 溝
28 フランジ
29 貫通孔
30,30a 遊星軸
30x 回転軸線
32,32a 本体
34,34a 外周面
36,36a 遊星軸凹部
40 太陽軸
40x 回転軸線
42 外周面
44 太陽軸凸部
50 保持器
50a 第1保持部
50b 第2保持部
52 抜け止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な回転軸線を有する太陽軸、複数の遊星軸、リング軸と、
前記遊星軸を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である保持器と、
を備え、
前記遊星軸の外周面には、該外周面から径方向内側に後退し、二対の側面を有する複数の遊星軸凹部が互いに離れて形成され、
前記太陽軸の外周面には、該外周面から径方向外側に突出し、二対の側面を有し、前記遊星軸凹部と噛み合う複数の太陽軸凸部が互いに離れて形成され、
前記リング軸の内周面には、該内周面から径方向内側に突出し、二対の側面を有し、前記遊星軸凹部と噛み合う複数のリング軸凸部が互いに離れて形成され、
前記遊星軸凹部、前記太陽軸凸部、前記リング軸凸部の一対の側面は、順に、平歯車又ははすば歯車であり互いに共働して第一の遊星歯車機構を構成する太陽歯車、遊星歯車、リング歯車の歯面を間欠的に形成し、
前記遊星軸凹部、前記太陽軸凸部、前記リング軸凸部の他の一対の側面は、順に、螺旋状の歯を有するねじ状歯車であり互いに共働して第二の遊星歯車機構を構成するねじ状太陽歯車、ねじ状遊星歯車、ねじ状リング歯車の歯面を間欠的に形成し、
前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なり、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しく、
あるいは、前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しく、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なることを特徴とする遊星式回転−直線運動変換装置。
【請求項2】
前記第1の遊星歯車機構を構成する前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記リング歯車は、はすば歯車であり、
前記遊星歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状遊星歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であり、
前記太陽歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であり、
前記リング歯車の歯すじのねじれ方向と前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯のねじれ方向とが互いに逆方向であることを特徴とする、請求項1に記載の遊星式回転−直線運動変換装置。
【請求項3】
前記保持器は、
前記遊星軸の一端側を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である第1保持部と、
前記遊星軸の他端側を回転自在に保持し、前記太陽軸及び前記リング軸に対して回動自在である第2保持部と、
互いに隣接する前記遊星歯車の間に配置され、前記第1保持部と前記第2保持部とに固定され、前記第1保持部と前記第2保持部との相対回転を阻止する複数の連結部と、
を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の遊星式回転―直線運動変換装置。
【請求項4】
前記遊星歯車に対する前記太陽歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状太陽歯車の螺旋状の歯の条数比とが等しく、かつ前記遊星歯車に対する前記リング歯車の平歯車又ははすば歯車の歯数比と前記ねじ状遊星歯車に対する前記ねじ状リング歯車の螺旋状の歯の条数比とが異なり、
前記リング軸が、前記遊星軸及び前記太陽軸に対して前記回転軸線と平行に相対移動することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の遊星式回転―直線運動変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate