説明

運動ニューロン疾患治療剤

【課題】運動ニューロン疾患治療剤の提供。
【解決手段】セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物もしくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む、運動ニューロン疾患治療剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、運動ニューロン疾患の治療剤に関し、詳細には、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物を含有する運動ニューロン治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic lateral sclerosis, ALS)とは、運動神経細胞の選択的変性脱落による致死的な進行性疾患である.主として40−50代の成人に発症し、多くは上肢末梢の筋力低下・筋萎縮に始まり、次いで下肢が侵され、球麻痺症状を呈して2−6年の経過で死亡する。一方で、眼球運動・感覚系・知的機能に異常はなく保たれる。
【0003】
ALSの約90%が遺伝性の無い孤発性ALSであり、残りが遺伝性を示す家族性ALSといわれている。孤発性ALSのうち60−70%の患者にはastroglial glutamate transporter EAAT2 (GLT−1)の機能に30−95%の低下がみられ、またALSによる障害部位でEAAT2のRNA editingに異常が生じていることが確認された(Lin et al. Neuron 20, 589-602(1998); Meyer et al. J Neurol Sci 170, 45-50(1999))。また家族性ALSでは、そのうち20%程度の人に、活性酸素を無毒化する Superoxide dismutase 1(SOD1)の変異が確認されている(Deng et al. Science 261, 1047-51(1993)、Rosen et al. Nature 362, 59-62(1993))。また、変異SOD1遺伝子をtransgenicしたラットやマウスはALS様の症状を呈すことから(Nagai et al. J Neurosci 21, 9246-9254(2001); Gurney et al. Science 264, 1772-1775(1994))、ALSモデルとして広く用いられている。ALSの発症機序はいまだ十分に明らかにはなっていない(Rowland and Schneider, N Engl J Med 344, 1688-1700(2001); Julien, Cell 104, 581-591(2001))が、グルタミン酸興奮毒性や (Kawahara et al. Nature 427, 801(2004); Lipton, Nat Med 10, 347(2004))、酸化ストレスなどの関与 (Rosen et al. Nature 362, 59-62(1993); Cleveland and Rothstein, Nat Rev Neurosci 2, 806-819(2001); Julien, Cell 104, 581-591(2001); Fryer et al. J Neurochem 72, 500-513(1999))が考えられている。
【0004】
これらの機序仮説のもと治療薬の探索が行われたが、治療薬は現在のところ満足な効果とはいいがたい状態にある。グルタミン酸放出抑制作用があるといわれているリルゾールが唯一ALSの治療薬として認可を受けているが、その効果は非常にわずかで治療薬として十分とはいえない (Bensimon, N Engl J Med 330, 585-591(1994); Lacomblez, Lancet 347, 1425-1431(1996))。また、フリーラジカルを捕捉し神経細胞を保護すると考えられているラジカットについてプラセボ対照二重盲検試験が行われており、Phase IIの段階まで進行している。Ciliary neurotrophic factor (CNTF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)およびinsulin-like growth factor-1 (IGF-1)といった様々な神経栄養因子はin vitro試験やin vivo試験において運動神経細胞の細胞死を抑制し (Arakawa et al. J Neurosci 10, 3507-3515(1990); Henderson et al. Curr Opin Neurobiol 2, 770-775(1993); Ishii and Marsh, Exp Neurol 124, 96-99(1993); Lewis et al. Exp Neurol 124, 73-88(1993); Sendtner et al. J Neurol Sci 124 Suppl, 77-83(1994); Lindsay, Ciba Found Symp 196, 39-48; discussion 48-53(1996))、ALS治療薬として期待され臨床開発が行われたが、延命効果を確認することはできなかった (Storkebaum et al. Nat Neurosci 8, 85-92(2005); Thoenen and Sendtner, Nat Neurosci 5 Suppl, 1046-1050(2002))。
【0005】
セロトニン(5HT)神経は、グルタミン酸神経と同様、脊髄運動神経細胞に対して興奮性刺激を与え、歩行運動といったリズム運動やfictive locomotionに必要なplateau potentialを発生させるメカニズムに関与している事が知られている (Hultborn and Kiehn, Curr Opin Neurobiol 2, 770-775(1992); Perrier and Hounsgaard, J Neurophysiol 89, 954-959(2003))。運動神経細胞においては、5HT受容体として5HT1A、5HT1B、5HT2A、5HT2C受容体4種の発現について多くのデータがある (Volgin et al. Eur J Neurosci 17, 1179-1188(2003); Ridet et al. J Neurosci Res 38, 109-121(1994))。5HT1A受容体は胎仔期には運動神経細胞に対し興奮性を示すが (Hayashi et al. Brain Res Dev Brain Res 102, 21-33(1997); Wang and Dun, J Physiol 430, 87-103(1990))、生後5HT1Aの発現量は減少する (Talley et al. J Neurosci 17, 4473-4485(1997))。5HT2A受容体は成長と共にその発現を増加させ、成熟運動神経細胞では5HTの最も主要な受容体となることが知られている (Volgin et al. Eur J Neurosci 17, 1179-1188(2003))。特に、5HT2A受容体は、そのリズム運動を調節することで知られている (M. Antri, et al. Eur J Neurosci 16, 467-476(2002))。ヒト剖検試料では脊髄前角組織中に2−3μMと高濃度の5HTの存在が報告されており、ALS患者の剖検試料ではさらに増加している傾向が報告されている (Bertel et al. Brain Res 566, 54-60(1991))。これらの報告は、運動機能における5HTの生理的重要性を示し、ALSにおける運動神経細胞の選択的脱落に5HTが関与している可能性を示しているといえる。
【0006】
5HT前駆体の5−hydroxytryptophan(5HTP)がALSモデルマウスの生存を延ばすことが報告されている(Turner et al., Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 4, 171-176(2003)(非特許文献1))。しかし、5HTPは末梢投与であり実際に脳での5HT濃度の増加は確認していないこと、およびhead twitchに代表される5HT誘発の挙動について何ら記載されていないことより、生存の延長が5HTによるものかどうかは疑問が残るとされている。
【0007】
いくつか神経保護作用のある化合物がALSに対する臨床試験が実施されている。例えば、SR57746A(Xaliproden)は5HT1A受容体に対してもagonisticに働くが、培養運動神経細胞を用いた研究において神経保護作用が確認され (Iwasaki et al. J Neurol Sci 160 Suppl 1, S92-96(1998) (非特許文献2); Labie et al. Br J Pharmacol 127, 139-144(1999)(非特許文献3))、二重盲検プラセボ試験も実施された (Meininger et al. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 5, 107-117(2004)(非特許文献4); Lacomblez et al. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 5, 99-106(2004)(非特許文献5))。その結果、生存の延長・運動機能の悪化遅延に対して臨床的に有意な差を得る事は出来なかったが、傾向は確認された。また、神経保護作用が確認され臨床試験も進行中であるBuspirone も5HT1A受容体アゴニストであり抗不安薬として知られている(Jann MW. Pharmacotherapy. 8(2), 100-116(1988)(非特許文献6))。しかし、これら5HT1A受容体アゴニストは、その神経保護作用から臨床応用を目指したものであり、5HT1A受容体アゴニストとしての作用を期待したのではない。
【0008】
第三世代の統合失調症治療薬であるクロザピンにも神経保護作用が確認され、ALSモデルマウスの歩行機能障害および死を遅らせたとの報告がある(Turner et al. J Neurosci Res. 74, 605-613(2003)(非特許文献7))。クロザピンはD2受容体より5HT2A受容体に選択的に結合する化合物だが (Naheed and Green, Neurosci Lett 79, 351-354(2001))、Turnerらの研究においては5HT2A受容体に関する考察はなんらされておらず、5HT2A受容体拮抗作用によるALSの進行抑制を期待したものではない。また高用量では、逆に生存期間を短縮させている。
【非特許文献1】Turner et al., Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 4, 171-176(2003)
【非特許文献2】Iwasaki et al. J Neurol Sci 160 Suppl 1, S92-96(1998)
【非特許文献3】Labie et al. Br J Pharmacol 127, 139-144(1999)
【非特許文献4】Meininger et al. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 5, 107-117(2004)
【非特許文献5】Lacomblez et al. Amyotroph Lateral Scler Other Motor Neuron Disord 5, 99-106(2004)
【非特許文献6】Jann MW. Pharmacotherapy. 8(2), 100-116(1988)
【非特許文献7】Turner et al. J Neurosci Res. 74, 605-613(2003)
【発明の概要】
【0009】
運動ニューロン疾患(特に、ALS)のための新しく、改善された医薬組成物および治療法が求められている。本発明は運動ニューロン疾患の治療剤および治療方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者は、これまでの知見から、セロトニン神経線維がグルタミン酸神経線維と同様に運動神経細胞に興奮性入力を与えることに着目し、運動ニューロン疾患(特に、ALS)における運動神経細胞の選択的脱落にセロトニンが関与しているという仮説を構築し、検証を行った。
【0011】
まず、セロトニンの興奮毒性の可能性について、ラット運動神経細胞の初代純粋培養系を用いて解析した。その結果、セロトニンがグルタミン酸に匹敵するほどの興奮毒性を示し、その毒性がセロトニン受容体拮抗作用を有する化合物(特に、5HT1A受容体拮抗剤、5HT2A受容体拮抗剤)により抑制されることを見出した。
【0012】
また、5HT2A受容体を介したシグナルのダウンストリームとして小胞体上のIP3受容体が関与しているとの仮説を構築し、検証を行った。その結果、IP3受容体拮抗薬がセロトニン興奮毒性の抑制を示し、5HT2A受容体の関与を確認した。
【0013】
従来、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物の運動ニューロン疾患への有用性を示す報告がない中で、意外にも、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物(特に、5HT1A受容体拮抗剤、5HT2A受容体拮抗剤)が運動神経細胞の過剰な興奮を抑制し、神経変性を抑制する運動ニューロン疾患治療剤(特に、ALS治療薬)に成り得ることが示された。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、セロトニン受容体(特に、5HT1A受容体および/または5HT2A受容体)拮抗作用を有する化合物もしくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む、運動ニューロン疾患治療剤が提供される。
【発明の具体的説明】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の記述は、本発明を説明するための例示であり、本発明を記述された実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本明細書中で使用される全ての技術的用語、科学的用語および専門用語は、本発明が属する技術分野の通常の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有し、単に特定の態様を説明することを目的として用いられ、限定することを意図したものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
【0016】
本明細書において引用された全ての先行技術文献および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられ、本発明の実施のために用いることができる。
【0017】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物としては、例えば、(i)セロトニン受容体とセロトニンとの結合反応に対し拮抗作用を有することにより当該結合を阻害し得る化合物(セロトニン受容体アンタゴニスト)であってもよいし、(ii)セロトニンに直接結合することによりセロトニンとセロトニン受容体との結合を阻害し得る化合物であってもよく、限定はされない。中でも、セロトニン受容体アンタゴニストとしての機能を有する化合物が好ましい。
【0018】
本発明において、セロトニン受容体アンタゴニストは、セロトニン受容体に作用して、受容体から発生するシグナルの強さを小さくする作用、セロトニン受容体からのシグナルの発生を阻害する作用、またはセロトニン受容体へのアゴニストの結合を拮抗する作用を有するものである。セロトニン受容体アンタゴニストである場合、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物はいわゆる競合的拮抗作用を有するものであってもよいし、非競合的拮抗作用を有するものであってもよく、限定はされない。中でも、5HT1A受容体とセロトニンとの結合反応に対し拮抗作用を有することにより当該結合を阻害し得る化合物(5HT1A受容体拮抗作用を有する化合物)、5HT2A受容体とセロトニンとの結合反応に対し拮抗作用を有することにより当該結合を阻害し得る化合物(5HT2A受容体拮抗作用を有する化合物)が好ましい。5HT1A受容体拮抗作用を有する化合物は、5HT2A受容体拮抗作用を有していてもよい。5HT2A受容体拮抗作用を有する化合物は、5HT1A受容体拮抗作用を有していてもよい。
【0019】
本発明において上記結合の阻害とは、当該結合反応を完全に阻害するものであってもよいし、その一部を阻害するものであってもよく、限定はされないが、例えば、当該結合反応の10%以上阻害するものであることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、さらに特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%阻害するものが挙げられる。
【0020】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物としては、例えば、1,4−置換環状アミン誘導体が挙げられ、このような誘導体としては、一般式(I)で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、またはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【化1】

[上記式中、
A、B、C、およびDは、同一または異なっていてもよく、メチン基または窒素原子を表し、うち2以上がメチン基であり、
- - -は、単結合または二重結合を表し、
Tは、メチン基または窒素原子を表し、
YおよびZは、同一または異なっていてもよく、メチン基、窒素原子、下記式
【化2】

で表される基、または下記式
【化3】

で表される基を表し、少なくとも一方は窒素原子であり、
およびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、2−ピロリジノン−1−イル基、1−ヒドロキシ−1−(メトキシピリジル)メチル基、メトキシピリジルカルボニル基、1,3−プロパンスルタム−2−イル基、ヒドロキシピペリジルカルボニルC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ジハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ヘテロアリールアミドC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、シアノ基、C1−6アルキルスルホニル基、C1−6アルキルスルホニルアミド基、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、N−C1−6アルキルC1−6アルキルスルホニルアミノ基、C1−6アシルアミノ基、置換されていてもよいアミノC1−6アルキル基、窒素原子が置換されていてもよいC1−6アルキルC1−6アシルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルオキシ基、ヒドロキシイミノメチル基、(2−ピロリドン−1−イル)メチル基、(2−ピペリドン−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキルカルボニルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいウレイド基、置換されていてもよいウレイドC1−6アルキル基、スクシイミド基、(スクシイミド−1−イル)C1−6アルキル基、アミド基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、置換されていてもよいチオカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基、ホルミル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、(2−イミダゾリジノン−1−イル)メチル基、(2,4−イミダゾリジンジオン−3−イル)メチル基、(2−オキサゾリドン−3−イル)メチル基、(グルタルイミド−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリールヒドロキシC1−6アルキル基、シアノC1−6アルキル基、1−ヒドロキシC3−6シクロアルキル基、(2,4−チアゾリジンジオン−3−イル)メチル基、置換されていてもよい4−ピペリジルメチル基、アリールC1−6アシル基、ヘテロアリールC1−6アシル基、ピロリジニルカルボニルC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノスルホニルC1−6アルキル基、カルボキシC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基を表し、あるいはRとRとは一緒になって、置換されていてもよい脂環、置換されていてもよいヘテロ環またはアルキレンジオキシ基を形成してもよく、さらにこれらの環は置換されていてもよく、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、水酸基、ヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ホルミル基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、置換されていてもよいスルファモイル基または窒素原子が置換されていてもよいスルファモイルC1−6アルキル基を表し、
は、水素原子、C1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、アリール基が置換されていてもよいアリールオキシC1−6アルキル基またはアリール基が置換されていてもよいアラルキルオキシC1−6アルキル基を表し、
は、C1−6アルキル基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールC1−6アシル基または下記式:
【化4】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であるか、またはいずれか一方が単結合であり、他方が酸素原子、カルボニル基、式−NHCO−で表される基、式−NHSO−で表される基または式>CH−Rで表される基(式中、Rは水酸基、C1−6アルキル基またはハロゲン原子を表す。)を表し、
sは、0または1〜6の整数を表し、
は、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基から選ばれた基を表す。]
で表される基を表し、
nは、0または1〜3の整数を表し、
mは、0または1〜6の整数を表し、
pは、1〜3の整数を表す。]
好ましくは、A、B、C、およびDはいずれもメチン基である。
好ましくは、- - -は、二重結合である。
好ましくは、Tは窒素原子である。
好ましくは、Yはメチン基であり、かつ、Zは窒素原子である。
好ましくは、RおよびRは、一方が水素原子である場合に、他方がC1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基である。さらに好ましくは、RおよびRは、一方が水素原子である場合に、他方がメチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基である。
好ましくは、Rは水素原子である。
好ましくは、Rは水素原子である。
好ましくは、Rは、下記式で表される:
【化5】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表す。]。さらに好ましくは、Rは、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基である。
好ましくは、nは0である。
好ましくは、mは0である。
好ましくは、pは2である。
本発明による治療剤の好ましい態様としては、A、B、C、およびDがいずれもメチン基であり;- - -は、二重結合であり;Tが窒素原子であり;Yがメチン基であり;Zが窒素原子であり;RおよびRが、一方が水素原子である場合に、他方がC1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基であり;Rが水素原子であり;Rが水素原子であり;Rが、下記式で表され:
【化6】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表す。];mが0であり;nが0であり;pが2である、式(I)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0021】
本発明による治療剤のさらに好ましい態様としては、A、B、C、およびDがいずれもメチン基であり;- - -は、二重結合であり;Tが窒素原子であり;Yがメチン基であり;Zが窒素原子であり;RおよびRが、一方が水素原子である場合に、他方がメチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rが水素原子であり;Rが水素原子であり;Rが、下記式で表され:
【化7】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基を表す。];mが0であり;nが0であり;pが2である、式(I)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0022】
セロトニン受容体拮抗作用を有する1,4−置換環状アミン誘導体としては、また、一般式(II)で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、またはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【化8】

[上記式中、
Raは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、2−ピロリジノン−1−イル基、1−ヒドロキシ−1−(メトキシピリジル)メチル基、メトキシピリジルカルボニル基、1,3−プロパンスルタム−2−イル基、ヒドロキシピペリジルカルボニルC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ジハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ヘテロアリールアミドC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、シアノ基、C1−6アルキルスルホニル基、C1−6スルホニルアミド基、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、N−C1−6アルキルC1−6アルキルスルホニルアミノ基、C1−6アシルアミノ基、置換されていてもよいアミノC1−6アルキル基、窒素原子が置換されていてもよいC1−6アルキルC1−6アシルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルオキシ基、ヒドロキシイミノメチル基、(2−ピロリドン−1−イル)メチル基、(2−ピペリドン−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキルカルボニルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいウレイド基、置換されていてもよいウレイドC1−6アルキル基、スクシイミド基、(スクシイミド−1−イル)C1−6アルキル基、アミド基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、置換されていてもよいチオカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基ホルミル基、アリールC1−6アシル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、(2−イミダゾリジノン−1−イル)メチル基、(2,4−イミダゾリジンジオン−3−イル)メチル基、(2−オキサゾリドン−3−イル)メチル基、(グルタルイミド−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリールヒドロキシアルキル基、シアノC1−6アルキル基、1−ヒドロキシC3−6シクロアルキル基、(2,4−チアゾリジンジオン−3−イル)メチル基、置換されていてもよい4−ピペリジルメチル基、ヘテロアリールC1−6アシル基、ピロリジニルカルボニルC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノスルホニルC1−6アルキル基、カルボキシC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基を表し、
Rbは、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表し、
- - -は、単結合または二重結合を表す。]
好ましくは、Raは、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基である。さらに好ましくは、Raは、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基である。
好ましくは、Rbは、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基である。
好ましくは、- - -は、二重結合である。
【0023】
本発明による治療剤の好ましい態様としては、Raが、C1−6アルキルスルホニルアミノアルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドアルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基であり;Rbが、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基であり;- - -が、二重結合である、式(II)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0024】
本発明による治療剤のさらに好ましい態様としては、Raが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rbが、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基であり;- - -が、二重結合である、式(II)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0025】
セロトニン受容体拮抗作用を有する1,4−置換環状アミン誘導体としては、また、一般式(III)で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、またはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【化9】

[上記式中、
Rcは、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基を表し、
Rdは、下記置換基群A1から選択される1ないし4個の置換基を有してもよいフェニル基、または隣接する2つの置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、5ないし7員環式非芳香族炭化水素環基、5ないし7員環式非芳香族複素環基、6員環式芳香族炭化水素環基、または5もしくは6員環式芳香族複素環基を形成する、場合によっては、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよいフェニル基:
[ここで、置換基群A1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)カルボキシル基、(7)C3−8シクロアルキル基、(8)C2−6アルケニル基、(9)C2−6アルキニル基、(10)C1−6アルキルチオ基、(11)C1−6アルコキシカルボニル基、(12)C1−6アルキルスルホニル基、(13)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい)、(14)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(15)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)および(16)カルバモイル基(該カルバモイル基は1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)からなり、
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基からなる。]を表し、
- - -は、単結合または二重結合を表す。]
好ましくは、Rcは、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基である。
【0026】
好ましくは、Rdは、ハロゲン原子で置換されるフェニル基である。
【0027】
好ましくはまた、Rdは、隣接する置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化10】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
【0028】
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
を形成するフェニル基である。
【0029】
好ましくは、- - -は、二重結合である。
【0030】
本発明による治療剤の好ましい態様としては、Rcが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rdが、ハロゲン原子で置換されるフェニル基、あるいは隣接する置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化11】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
【0031】
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]を形成するフェニル基であり;- - -が、二重結合である、式(III)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0032】
セロトニン受容体拮抗作用を有する1,4−置換環状アミン誘導体としては、また、一般式(IV)で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、またはそれらの溶媒和物が挙げられる。
【化12】

[上記式中、R101およびR102は、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよく、
(1)5ないし7員環式非芳香族炭化水素環基、
(2)5ないし7員環式非芳香族複素環基、
(3)6員環式芳香族炭化水素環基、または
(4)5もしくは6員環式芳香族複素環基を形成し、
103は、水素原子またはメチル基を示し、
106は、下記置換基群A1から選択される置換基を表し、
置換基群A1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)カルボキシル基、(7)C3−8シクロアルキル基、(8)C2−6アルケニル基、(9)C2−6アルキニル基、(10)C1−6アルキルチオ基、(11)C1−6アルコキシカルボニル基、(12)C1−6アルキルスルホニル基、(13)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい)、(14)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(15)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)および(16)カルバモイル基(該カルバモイル基は1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)からなり、
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基からなる。]
好ましくは、R101およびR102は、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化13】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
【0033】
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
で表される。
【0034】
好ましくは、R106は非置換である。
【0035】
本発明による治療剤の好ましい態様としては、R101およびR102は、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化14】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
【0036】
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
で表され;R106が非置換である、式(IV)で表される化合物を含んでなる治療剤が挙げられる。
【0037】
式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)において、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、塩素原子、フッ素原子、臭素原子である。
【0038】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいアミノ基としてさらに詳しくは、アミノ基と、例えばアミノ基がC1−6アルキル基、置換されていてもよいアリール基などで置換された基を意味する。
【0039】
式(I)、式(II)、式(III)、および式(IV)において、「C1−6アルキル基」とは、炭素数が1ないし6個(好ましくは炭素数が1ないし4個)のアルキル基を示し、好ましい基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
【0040】
式(I)、式(II)、式(III)、および式(IV)において、「C1−6アルコキシ基」とは、炭素数1ないしは6個(好ましくは炭素数が1ないし4個)のアルキル基の、水素原子が酸素原子に置換された基を示し、好ましい基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、sec−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、2−エチルプロポキシ基、1−メチル−2−エチルプロポキシ基、1−エチル−2−メチルプロポキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
式(I)、式(II)、式(III)、および式(IV)において、「C1−6アルカノイル基」(C1−6アルキルカルボニル基あるいはC1−6アシル基と同義である)とは、炭素数1ないしは6個(好ましくは炭素数が1ないし4個)のアルキル基において一つの水素原子がカルボニル基で置換された基を示し、好ましい基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0042】
式(I)、式(II)、式(III)、および式(IV)において、「C1−6アルキルスルホニル基」とは、炭素数1ないしは6個(好ましくは炭素数が1ないし4個)のアルキル基において一つの水素原子がスルホニル基で置換された基を示し、好ましい基としては、例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられる。
【0043】
式(I)、式(II)、式(III)、および式(IV)において、「C1−6アルコキシカルボニル基」とは、上記アルコキシ基にカルボニル基が結合した基を示し、好ましくは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
式(I)、式(II)、および式(III)において、C1−6アルキルスルホニルアミノ基としてさらに詳しくは、例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、プロパンスルホニルアミノ基、ブタンスルホニルアミノ基、N−メチルメタンスルホニルアミノ基等の、前記C1−6アルキル基にスルホニルアミノ基(−SON<)が結合した基が挙げられる。
【0045】
式(I)および(II)において、「C3−6シクロアルキル基」とは、炭素数3ないし6の環状アルキル基を示し、当該基における好ましい基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
式(I)および式(II)において、C1−6アルコキシアルコキシ基としてさらに詳しくは、例えばメトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等の前記C1−6アルコキシ基がさらにC1−6アルコキシ基で置換された基を、スルホニルアミド基として式(−SONH)で表される基を、ヒドロキシC1−6アルキル基としてさらに詳しくは、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の前記C1−6アルキル基が1個以上のヒドロキシ基で置換された基を、C1−6アシルアミノ基としてさらに詳しくはアセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチリルアミド基等の炭素数2から6のC1−6脂肪酸が結合したアミノ基を、それぞれ挙げることができる。
【0047】
式(I)および式(II)において、窒素原子が置換されていてもよいC1−6アシルアミノアルキル基としてさらに詳しくは、例えばアセトアミドメチル基、アセトアミドエチル基、プロピオナミドメチル基、ブチリルアミドメチル基等の前記C1−6アシル基がアミノC1−6アルキル基に結合した基を挙げることができ、窒素原子がさらにC1−6アルキル基等で置換されていてもよい。
【0048】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基としてさらに詳しくは、例えばベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等のアリール基にスルホニルアミノ基(−SONH−)が結合した基またはそのアリール基がさらに置換された基を、C1−6アルキルスルホニルオキシ基としてさらに詳しくは、前記C1−6アルキル基にスルホニルオキシ基(−SO−)が結合した基を、置換されていてもよいアミノアルキル基としてさらに詳しくは、アミノ基が前記C1−6アルキル基に結合した基を挙げることができ、窒素原子がさらにC1−6アルキル基、C1−6アルキルスルホニル基等で置換されていてもよい。
【0049】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいアリール基としてさらに詳しくは、例えばフェニル基、ナフチル基等またはそれらがさらに置換された基を挙げることができる。ここで好ましい置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基であり、さらに好ましくはフッ素原子、塩素原子およびメトキシ基である。またこれらの置換基は、同一または異なっていてもよく、更に複数であってもよい。
【0050】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいヘテロアリール基としてさらに詳しくは、例えばピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基等またはそれらがさらに置換された基を挙げることができる。ここで好ましい置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基であり、さらに好ましくはフッ素原子、塩素原子およびメトキシ基である。またこれらの置換基は、同一または異なっていてもよく、更に複数であってもよい。
【0051】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいアラルキル基としてさらに詳しくは、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等またはそれらがさらに置換された基を、置換されていてもよいヘテロアリールアルキル基としてさらに詳しくは、例えばピリジルメチル基、ピリジルエチル基、ピラジルエチル基、ピリドンメチル基、ピロリドンメチル基、ピロリルメチル基、イミダゾリルメチル基、トリアゾリルメチル基、チアゾリルメチル基等またはそれらがさらに置換された基を、C3−8シクロアルキルカルボニルアミノアルキル基として、炭素数3から8のシクロアルキル基が結合したカルボニルアミノアルキル基をそれぞれ挙げることができる。
【0052】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよい縮合複素環基としてさらに詳しくは、例えばクロマニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾ[1,4]ジオキサニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基等またはそれらがさらに置換された基を挙げることができる。ここで好ましい置換基は、C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基、で置換されてもよい)であり、さらに好ましくはメチル基である。さらにこれらの置換基は、同一または異なっていてもよく、更に複数であってもよい。また、ベンゾ[1,4]ジオキサニル基については、好ましくは無置換である。
【0053】
式(I)、式(II)および式(III)において、置換されていてもよいカルバモイル基としてさらに詳しくは、例えばカルバモイル基(HNCO−)あるいはその窒素原子がC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、C1−6ジヒドロキシアルキル基、C1−6カルバモイルアルキルカルバモイルアルキル基、C1−6ジアルキルアミノアルキル基、C1−6シアノアルキル基、C1−6アルコキシアルキル基、C1−6ハロゲン化アルキル基等で1または2置換された基を、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基としてさらに詳しくは、例えばカルバモイルメチル基(HNCOCH−)あるいはその窒素原子がC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、C1−6ヒドロキシアルキル基、C1−6ジヒドロキシアルキル基、C1−6カルバモイルアルキルカルバモイルアルキル基、C1−6ジアルキルアミノアルキル基、C1−6シアノアルキル基、C1−6アルコキシアルキル基、C1−6ハロゲン化アルキル基等で1または2置換された基を、置換されていてもよいチオカルバモイルC1−6アルキル基としてさらに詳しくは、例えばチオカルバモイルメチル基(HNCSCH−)あるいはその窒素原子がC1−6アルキル基等で置換された基をそれぞれ挙げることができる。
【0054】
式(I)および式(II)において、ヘテロアリールカルボニル基としてさらに詳しくは、例えばピリジルカルボニル基、ピロリルカルボニル基、チアゾリルカルボニル基等を、ハロゲン化C1−6アルキル基として、クロロメチル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基等のハロゲン原子で置換されたC1−6アルキル基を挙げることができる。
【0055】
式(I)および式(II)において、置換されていてもよいヘテロアリールヒドロキシアルキル基としてさらに詳しくは、例えばピリジルヒドロキシメチル基、チアゾリルヒドロキシメチル基、ピリミジルヒドロキシメチル基、ピロリルヒドロキシメチル基等を挙げることができる。
【0056】
式(III)および(IV)において、「隣接する2つの置換基」とは、それぞれの置換基が結合する炭素原子が互いに化学結合する位置関係にある場合をいう。
【0057】
式(III)および(IV)において、「5ないし7員環式非芳香族炭化水素環基」とは、炭素数5ないし7の非芳香族炭化水素環基を示し、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
【0058】
式(III)および(IV)において、「5ないし7員環式非芳香族複素環基」とは、ヘテロ原子が1〜4の非芳香族複素環基を示し、例えば、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキサニル基、ピペリジン−2−オキソイル基、ジヒドロ−[1,3]オキサジン−2−オキソイル基、[1,4]オキサゼパン−5−オキソイル基、ジヒドロ−[1,3]オキサジン−2,4−ジオキソイル基、5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オキソイル基、テトラヒドロピラン−4−オキソイル基、2,3−ジヒドロピラン−4−オキソイル基、テトラヒドロピラン−4−ヒドロキシイル基、オキセパン−4−オキソイル基、1,3−オキサゾリジン−2−オキソイル基等が挙げられる。
【0059】
式(III)および(IV)において、「6員環式芳香族炭化水素環基」としては、フェニル基が挙げられる。
【0060】
式(III)および(IV)において、「5もしくは6員環式芳香族複素環基」としては、(1)例えばピロリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基等の含窒素芳香族複素環基、(2)例えばチエニル基等の含硫黄芳香族複素環基、(3)例えばフリル基、ベンゾフラニル基等の含酸素芳香族複素環基、(4)例えばチアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基等の窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選ばれる2個以上の異種原子を含んでなる芳香族複素環基等が挙げられる。
【0061】
式(III)および(IV)において、「C2−6アルケニル基」とは、炭素数が2ないし6個のアルケニル基を示し、好ましい基としては、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテン−1−イル基、1−ブテン−2−イル基、1−ブテン−3−イル基、2−ブテン−1−イル基、2−ブテン−2−イル基等の直鎖状または分枝鎖状のアルケニル基が挙げられる。
【0062】
式(III)および(IV)において、「C2−6アルキニル基」とは、炭素数が2ないし6個のアルキニル基を示し、好ましい基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等の直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基が挙げられる。
【0063】
式(III)および(IV)において、「C3−8シクロアルキル基」とは、炭素数3ないし8の環状アルキル基を示し、当該基における好ましい基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0064】
式(III)および(IV)において、「C1−6アルキルチオ基」とは、炭素数1ないしは6のアルキル基において、1つの水素原子が硫黄原子に置換された基を示し、好ましい基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、1−メチルプロピルチオ基等が挙げられる。
【0065】
式(III)および(IV)において、「同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基」とは、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基である。
【0066】
式(III)および(IV)において、「C1−6アルキル基で置換されてもよいアミノ基」とは炭素数1ないしは6個のアルキル基が結合したアミノ基を示し、好ましい基としては、例えばアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0067】
式(III)および(IV)において、「ホルミル基で置換されてもよいアミノ基」としては、例えばアミノ基、ホルミルアミノ基等が挙げられる。
【0068】
式(III)および(IV)において、「C1−6アルカノイル基で置換されてもよいアミノ基」とは炭素数1ないしは6個のアルカノイル基が結合したアミノ基を示し、好ましい基としては、例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基等が挙げられる。
【0069】
式(III)および(IV)において、「C1−6アルキルスルホニル基で置換されてもよいアミノ基」とは、炭素数1ないしは6個のアルキルスルホニル基が結合したアミノ基を示し、好ましい基としては、例えばアミノ基、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、n−プロパンスルホニルアミノ基、n−ブタンスルホニルアミノ基、N−メチルメタンスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0070】
式(III)および(IV)において、「1個または2個のC1−6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基」とは、カルバモイル基の1または2の水素原子が、C1−6アルキル基でモノまたは二置換されていてもよい基を示し、好ましい基としては、例えばN−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0071】
式(III)および(IV)において、「C1−6アルコキシイミノ基」とは、イミノ基の水素原子がC1−6アルコキシ基で置換された基を示し、好ましい基としては、例えばメトキシイミノ基、エトキシイミノ基等が挙げられる。
【0072】
本発明において、一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物の好適な例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0073】
化合物1:N−メチル−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}アセトアミド
【化15】

【0074】
化合物2:N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチルアセトアミド
【化16】

【0075】
化合物3:1−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチル−3−メチルチオウレア
【化17】

【0076】
化合物4:N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチルアセトアミド
【化18】

【0077】
化合物5:N−{1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチル−メタンスルホンアミド
【化19】

【0078】
化合物6:1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−6−メトキシインドリン
【化20】

【0079】
本発明において、セロトニン受容体拮抗作用を有する1,4−置換環状アミン誘導体としては、化合物7および8が挙げられる。
【0080】
化合物7:2−{4−[1−(4−エチルピペラジン−1−イル)イソキノリン−3−イル]フェノキシ}エタノール
【化21】

【0081】
化合物8:1−{4−[4−(4−エチルピペラジン−1−イル)チエノ[3,2−c]ピリジン−6−イル]フェノキシ}−2−メチルプロパン−2−オール
【化22】

【0082】
本発明において、一般式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物の好適な例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0083】
化合物9:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−N−メチル−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化23】

【0084】
化合物10:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化24】

【0085】
化合物11:1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化25】

【0086】
化合物12:1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化26】

【0087】
化合物13:1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化27】

【0088】
化合物14:1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化28】

【0089】
化合物15:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド
【化29】

【0090】
化合物1〜6について、セロトニン1A受容体結合試験およびセロトニン2受容体結合試験の結果は国際公開第98/43956号パンフレットを参照することができる。この結果については参考例として後述する。
【0091】
また、化合物7および8について、セロトニン1A受容体結合試験およびセロトニン2受容体結合試験の結果は国際公開第99/18077号パンフレットを参照することができる。この結果については参考例として後述する。
【0092】
さらに、化合物9〜15について、セロトニン1A受容体結合試験の結果は国際公開第2005/108389号パンフレットを参照することができる。この結果については参考例として後述する。
【0093】
抗凝血作用や抗うつ作用を有する化合物も5HT2A受容体拮抗作用を有することが知られているため、抗凝血剤および抗うつ薬も運動ニューロン疾患の治療剤として用いることができる。具体的には、抗凝血作用剤としては、例えばサルポグレラート、抗うつ薬としては、例えばトラゾドン、ノルトリプチン、アミトリプチン、イミプラミン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ミルタザピン、ミアンセリン、MDL−11939、MDL100907が挙げられる。
【0094】
統合失調症治療薬も5HT2A受容体拮抗作用を有するものが知られているため、統合失調症治療薬も運動ニューロン疾患の治療剤として用いることができる。具体的には、統合失調症治療薬としては、例えばオランザピン、リスペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、クロカプラミン、カルピプラミン、モサプラミン、クロルプロマジン、レボメプロマジンが挙げられる。
本発明において、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体などの異性体およびこれら異性体の2種以上の異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明において、前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」には、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体およびラセミ体が存在することがあり得るが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であってもまたは結晶形混合物であってもよい。
【0095】
本発明において、前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」またはその薬理学的に許容し得る塩は、無水物であっても水和物であってもよく、いずれも本発明におけるセロトニン受容体拮抗作用を有する化合物に含まれる。また、本発明において、前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」またはその薬理学的に許容し得る塩に溶媒和物が存在する場合には、それらの溶媒和物が含まれる。溶媒和物としては、水和物、非水和物のいずれであってもよいが、なかでも水和物が好ましい。非水和物としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、およびN,N−ジメチルホルムアミドなどが使用され得る。
【0096】
本発明において、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物は、生体内で酸化、還元、加水分解、抱合などの代謝を受ける前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」および生体内で代謝を受けて生じる代謝物も包含する。また、本発明において、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物は、生体内で酸化、還元、加水分解、抱合などの代謝を受けて前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」(その薬理学的に許容し得る塩、溶媒和物も含む)を生成する化合物(プロドラッグ)をも包含する。
【0097】
本発明において「薬理学的に許容し得る塩」とは、前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」と塩を形成し、且つ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。
【0098】
本発明において「プロドラッグ」とは、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的として、「薬剤の活性本体」(プロドラッグに対応する「薬剤」を意味する)を不活性な物質に化学修飾したものを意味し、吸収後、体内では活性本体へ代謝され、作用を発現する薬剤のことである。従って、「プロドラッグ」という用語は、対応する「薬剤」よりも固有活性(intrinsic activity)は低いが、生物学的な系に投与されると、自発的な化学反応または酵素触媒反応または代謝反応の結果、その「薬剤」物質を生成する任意の化合物を指す。当該プロドラッグとしては、前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」のアミノ基、水酸基、カルボキシル基などがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化またはウレタン化された化合物などの種々のプロドラッグを例示することができる。但し、例示した群は包括的なものではなく、典型的なものに過ぎず、当業者は他の既知の各種プロドラッグを公知の方法によって前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」(その薬理学的に許容し得る塩、溶媒和物も含む)から調製することができる。前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」からなるプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
本発明において前記「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」若しくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグ(本明細書において、「セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物」と略記することがある。)は、既知化合物であれば公知の製造方法によって製造するか、天然化合物であれば公知の抽出方法若しくは公知の精製方法によって取得するか、または市販されている場合は購入することにより得ることができる。また、既知化合物の誘導体等は、化学的手段、物理的手段および/または生化学的手段により改変することができる。
【0100】
本発明において、1,4−置換環状アミン誘導体若しくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグは公知の方法で製造することができる。1,4−置換環状アミン誘導体若しくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物は、その代表的な例として、国際公開第98/43956号パンフレット、米国特許第6,340,759号公報、若しくは国際公開第2005/108389号パンフレット等に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0101】
本発明において、一般式(I)、(II)、および(III)で表される化合物、より具体的には、化合物1〜6は、公知の方法で製造することができ、その代表的な例として、国際公開第98/43956号パンフレットに開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0102】
化合物1:N−メチル−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}アセトアミドは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例342に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0103】
化合物2:N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチルアセトアミドは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例352に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0104】
化合物3:1−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチル−3−メチルチオウレアは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例394に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0105】
化合物4:N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチルアセトアミドは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例133に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0106】
化合物5:N−{1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチル−メタンスルホンアミドは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例160に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0107】
化合物6:1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−6−メトキシインドリンは、国際公開第98/43956号パンフレットの実施例106に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0108】
また、化合物7および8は、公知の方法で製造することができ、その代表的な例として、米国特許第6,340,759号公報に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0109】
化合物7:2−{4−[1−(4−エチルピペラジン−1−イル)イソキノリン−3−イル]フェノキシ}エタノールは、米国特許第6,340,759号公報の実施例36に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0110】
化合物8:1−{4−[4−(4−エチルピペラジン−1−イル)チエノ[3,2−c]ピリジン−6−イル]フェノキシ}−2−メチルプロパン−2−オールは、米国特許第6,340,759号公報の実施例290に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0111】
本発明において、一般式(I)、(II)、(III)、および(IV)で表される化合物、より具体的には、化合物9〜15は、公知の方法で製造することができ、その代表的な例として、国際公開第2005/108389号パンフレットに開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0112】
化合物9:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−N−メチル−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例20に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0113】
化合物10:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例22に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0114】
化合物11:1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例4に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0115】
化合物12:1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例3に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0116】
化合物13:1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例2に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0117】
化合物14:1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例1に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0118】
化合物15:1−{1−[2−(7−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミドは、国際公開第2005/108389号パンフレットの実施例31に開示されている方法またはその方法に準拠した方法により容易に製造することができる。
【0119】
医薬組成物/医薬用途
後記実施例において示すように、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物によって、運動神経細胞の過剰な興奮を抑制することができた。運動神経細胞の過剰な興奮は運動ニューロン疾患(特に、ALS)に関連している(Damiano M, et al., J. Neurochem., 96(5), 1349-1361, 2006.、Sharifullina E, et al., J. Physiol., 15;572(Pt 2), 407-423, 2006.、Tortarolo M, et al., J. Neurosci. Res., 83(1), 134-146, 2006.)。従って、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物は、運動ニューロン疾患(特に、ALS)の治療に用いることができる。
【0120】
本発明による医薬組成物は、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物若しくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物あるいはそのプロドラッグを有効成分として含有する。
【0121】
本発明による医薬組成物の有効成分であるセロトニン受容体拮抗作用を有する化合物の投与形態は、特に制限されず、経口投与、非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。経口投与は、注腸などに比べて患者の負担が少ないので好ましい。
【0122】
経口投与および非経口投与のための剤形およびその製造方法は当業者に周知であり、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物を、薬学的に許容される坦体などと混合等することにより、常法に従って製造することができる。
【0123】
経口投与のための剤型は、固体または液体の剤型、具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、トローチ剤などが挙げられる。
【0124】
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(点滴剤を含む)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられる。
【0125】
薬学上許容される担体としては、例えば、製剤分野において常用され、かつセロトニン受容体拮抗作用を有する化合物と反応しない物質が用いられる。薬学上許容される担体には、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
【0126】
賦形剤としては、例えば乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素、硫酸カルシウム等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、それぞれ用いられる。上記の成分は、その薬理学的に許容し得る塩またはその水和物であってもよい。
【0127】
薬学上許容される担体として使用可能な無毒性の成分としては更に下記のものが挙げられる:大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えばミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えばセトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えばエタノール、イソプロパノール等のC1−6アルコール;例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えばグルコース、ショ糖等の糖;例えば無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。
【0128】
経口製剤は、例えば、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物に賦形剤(例えば、乳糖、白糖、でんぷん、マンニトール等)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク等)、着色剤、矯味矯臭剤、崩壊剤等を加えた後、必要に応じて、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤等を添加して、常法により例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤等とすることができる。錠剤は、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、セルロースアセテートフタレート、白糖、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸カルシウムのようなコーティング剤を用い、周知の方法でコーティングしてもよい。
【0129】
シロップ剤製造に用いられる担体の具体例としては、白糖、ブドウ糖、果糖のような甘味剤、アラビアゴム、トラガント、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、結晶セルロース、ビーガムのような懸濁化剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80のような分散剤が挙げられる。シロップ剤製造にあたっては、必要に応じて矯味剤、芳香剤、保存剤、溶解補助剤、安定化剤等を添加することができる。また、用時溶解または懸濁するドライシロップの形であってもよい。
【0130】
坐剤の基剤の具体例としては、室温では固体で、体温では液体となる、カカオ脂、飽和脂肪酸グリセリンエステル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、マクロゴールなどの適当な非刺激性賦形剤が挙げられる。坐剤製造にあたっては、必要に応じて界面活性剤、保存剤等を添加することができる。
【0131】
注射剤は、通常、例えば、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物の薬理学的に許容し得る塩を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加することができる。
【0132】
外用剤の製造に当たって使用できる基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができる。
【0133】
吸入剤は、吸入による投与のために、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物を、注入器、噴霧器若しくは加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達する他の都合のよい様式から送達することができる。加圧パックは、適当な噴射剤を含むことができる。また、吸入による投与のために、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物は、乾燥粉末組成物の形または液体スプレーの形態で投与することもできる。
【0134】
表皮への局所投与のために、セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物は、軟膏、クリーム若しくはローションとして、または経皮パッチのための活性成分として製剤化することができる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性基剤に適当な増粘および/またはゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローションは水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、また一般には1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または着色剤を含むこともできる。
【0135】
本発明による医薬組成物は、治療上有効な他の薬剤を更に含有していてもよく、また、必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。このときの有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。
【0136】
これらの医薬組成物は、通常、活性成分としてセロトニン受容体拮抗作用を有する化合物を0.5%以上(重量%、以下同じ)、好ましくは10〜70%の割合で含有することができる。セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物を前記治療に使用する場合は、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
【0137】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物の投与量は、例えば、投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、塩の種類、疾患の具体的な種類、薬物動態および毒物学的特徴などの薬理学的知見、薬物送達系の利用の有無、並びに他の薬物の組合せの一部として投与されるか、など様々な因子を元に、臨床医により決定することができるが、通常、成人(体重60kg)あたり、経口投与では約30μg〜10g/日であり、好ましくは100μg〜5g/日、さらに好ましくは100μg〜100mg/日を、注射投与では約30μg〜1g/日、好ましくは100μg〜500mg/日、さらに好ましくは100μg〜30mg/日であり、1回または数回に分けて投与することができる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、臨床医の判断により大幅に変動することもあり、上記の投与範囲から逸脱することがある。
【0138】
本発明において「運動ニューロン疾患(運動神経変性疾患)」とは、世界保健機構(WHO)の「疾病と関連保健問題の国際統計分類:ICD−10(International Statistical Classification of Disease and Related Health Problems 第10版)」の診断基準に基づくと、第VI章(G)「神経系の疾患(Diseases of the nervous system)」のうちの[G12:脊髄性筋萎縮症及び関連症候群(spinal muscular atrophy and related syndromes)]に分類され、好ましくは[G12.2:運動ニューロン疾患(motor neuron disease)]に分類されるものである。具体的には、ウェルドニッヒ・ホフマン病、遠位型脊髄性筋萎縮症、家族性脊髄性筋萎縮症、肩甲腓骨型脊髄性筋萎縮症、若年性進行性筋萎縮症、小児性進行性筋萎縮症、乳幼児進行性球麻痺、びまん性萎縮性麻痺、運動ニューロン疾患、仮性球麻痺、家族性筋萎縮性側索硬化症、球麻痺、筋萎縮性側索硬化症、若年性一側性上肢筋萎縮症、進行性球麻痺、進行性筋萎縮、脊髄進行性筋萎縮症、外傷性球麻痺、球脊髄性筋萎縮症、頚椎症性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症が挙げられる。
【0139】
本発明において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、患者、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば以下の治療を含む:
・疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
・疾病症状を阻害する、すなわち、その進行を阻止または遅延すること;
・疾病症状を緩和すること、すなわち、疾病または症状の後退、消失、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。
【0140】
例えば、運動ニューロン疾患の臨床学的症状としては、筋萎縮および筋力低下(例えば、上肢遠位部の筋萎縮、球麻痺や下肢の筋萎縮)、呼吸筋麻痺(例えば、呼吸困難)、球麻痺(例えば、嚥下障害、発語障害)、陰性徴候(例えば、膀胱直腸障害、眼球運動障害、感覚障害)、錐体路症状(例えば、歩行障害)、筋肉の線維束性収縮が挙げられる。
【0141】
運動ニューロン疾患の進行を予防するとは、運動ニューロン疾患の臨床学的症状および/または病理学的徴候の開始若しくはそれ以上の進行を予防することを意味すると解釈される。例えば、運動ニューロン疾患の臨床学的症状または病理学的徴候を有していない患者は、臨床学的症状または病理学的徴候の進行を予防することができる。さらに、軽症の運動ニューロン疾患を患う患者は、それより重症の運動ニューロン疾患形態を発生するのを予防することができる。運動ニューロン疾患の進行を遅延させるとは、運動ニューロン疾患関連症状および/または病理学的徴候の開始時点を遅らせること、あるいは、臨床学的症状および病理学的徴候の進行速度により決定される運動ニューロン疾患の進行速度を遅くすることを意味すると解釈される。運動ニューロン疾患の進行を逆転させるとは、運動ニューロン疾患症状の重症度を軽減する、すなわち、患者の運動ニューロン疾患症状を重症から、より軽症へと変化させることを意味すると解釈される。その際、軽症への変化は、臨床学的症状または病理学的徴候の減少により示される。
【0142】
患者の運動ニューロン疾患の診断は、公知の種々の方法を用いて実施することができる。
【0143】
典型的には、臨床および病理学的評価を組み合わせて、運動ニューロン疾患を診断する。
【0144】
本発明において「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物である。この場合の哺乳動物とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ、サルなど)を含む、哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは、本明細書における哺乳動物はヒトである。この場合、「患者」という用語は、成人および小児を含み、かつ男性および女性を含む。小児は新生児、幼児、および青年を含む。
【実施例】
【0145】
実施例1:ラット運動神経初代純粋培養系における5HT毒性評価
1.実験条件および実験方法
30ng/mL BDNF存在下のもと3日間ラット運動神経細胞の純粋培養を行い、セロトニン(5HT)の毒性評価を行った。
【0146】
1. ラット運動神経初代純粋培養
ラット運動神経初代純粋培養はNishijimaらが使用した方法(Nishijima C. et al., J Neurochem 76, 383-390(2001))に、純化の方法などの修正を加えて使用した。
【0147】
Greiner-4-well dish (10mm i.d. wells) (Greiner bio-one)を必要枚数取り出し、0.5mg/mL ポリ−L−オルニチンを含む0.15M sodium borate buffer(pH8.3)を100μL/well加え4℃で一晩おいた。オルニチンを吸引除去し、PBS(−)で3度洗浄し、10μg/mLラミニン(Gibco−BRL)を含むL−15(CO)を50μL/wellずつまいた。細胞播種までの間、Greiner-4-well dish をCOインキュベーター(5%,37℃)で保管した。
【0148】
Wistar系妊娠ラット(妊娠15日)(東京実験動物株式会社)をエーテル麻酔後、頚椎脱臼させた。無菌的に子宮より胎仔を取り出し、冷HBSS(−)入りの100mm dishに移した(HBSS(-):HBSS(-)(GIBCO-BRL,Catalog No. 14170))。実体顕微鏡の下で腰部脊髄(約5mm長)を取り出し、さらに脊髄前角部分(ventral part)をできるだけ純粋に切り出し、冷HBSS(−)に保存した。同様に6−10匹の脊髄前角部分(ventral part)を取り出した後、それらを50mLチューブに移した。冷HBSS(−)で軽く洗浄後、0.03%トリプシンを含むHBSS(−)2mLを加え、37℃で20分間軽く振とうしながらインキュベーションした。冷HBSS(−)で軽く洗浄後、0.2%BSAを含むHBSS(−)1mLの入っている15mLチューブに移した。先端を丸めたシリコン処理済みのパスツールピペットを用いて優しくピペッティングを10回繰り返すことにより組織をほぐした。上清を70μmメッシュで篩過し、血算板で細胞計測した。細胞が十分に回収できるまで0.2%BSAを含むHBSS(−)を1mL加えて再度ほぐす操作を計4回繰り返した。回収された細胞懸濁液を6.5% iopamiron入り HBSS(−)4mLの入っている12mL−siliconized glass チューブの中に入れ、遠心分離(400×g,4℃,15分間)を行った。界面の細胞を100μLピペットマンで回収し(計5回)、培養液5mLの入った15mLチューブに加え軽く混ぜ、遠心分離(100×g,4℃,8分間)を行った。上清を可能な限り捨て、培養液を1mL加え細胞を再浮遊させ血算板にて細胞を計測した。計測結果に基づき、1.1〜1.2×10cell/mLとなるように培養液で希釈した。あらかじめポリ−L−オルニチン(Sigma)/ラミニン(Gibco-BRL)でコーティングしたGreiner 4-well dishに1mLピペットマンを用いて細胞懸濁液を90μL/wellで播種した。培養開始1時間後セロトニン(serotonin creatinine sulfate complex, Sigma)またはグルタミン酸(Sigma)を添加し、その3時間後に初期生存細胞数を計測した。細胞播種3日後に
再び生存細胞数を計測し、初期生存細胞数を基準に生存率を算出した。細胞数の計測は、位相差顕微鏡を用いてあらかじめGreiner 4-well dishの裏面よりつけていた印を基準に行った。細胞体が大きく(約φ15μm以上)、phase-brightな細胞のみを計測した。
【0149】
培養液は、0.15M sodium bicarbonate 15mL、Leibovitz's L-15 培養液(GIBCO)75mLおよびグルコースを混ぜCOでpH調整したもの(以下、「L−15(CO)」ともいう。)に、10%-heat-inactivated ウマ血清(HS)、100ユニット/mLペニシリンG、および30ng/mL ヒト BDNF (peprotech, Inc.)を添加したもの (L-15(CO2)-10%HS) を標準として用いた。無血清の培養液としては、10mL NeurobasalTM (Gibco-BRL) にsupplement (B27 0.2 mL若しくはN-2 0.1mL) と100ユニット/mLペニシリンGを添加したものを培養液として用いた。
【0150】
2.実験結果
図1にその結果を示す。5HTは濃度依存的に毒性を示し(図1A)、この毒性はグルタミン酸毒性と匹敵するものであった(図1B)。なお、10%ウマ血清を含む標準培養液には約10μMのグルタミン酸が検出されたことから、グルタミン酸毒性との比較評価には、生存率は低くなるものの、グルタミン酸を含まない無血清の培養液を用いた。
【0151】
実施例2:ラット運動神経初代純粋培養系における5HT毒性に関与する受容体の解析
5HT毒性に対する各受容体の関与を、ラット胎仔期の5HT主要受容体である5HT1Aおよび5HT2A受容体に注目し、各拮抗薬を用いて評価した。
【0152】
1.実験条件および実験方法
実施例1と同様にラット運動神経初代純粋培養を行い、ラット運動神経細胞を調製した。細胞計測結果に基づき、1.1〜1.2×10cell/mLとなるように培養液で希釈した。あらかじめポリ−L−オルニチン/ラミニンでコーティングしたGreiner 4-well dishに1mLピペットマンを用いて細胞懸濁液を90μL/wellで播種した。培養開始1時間後に5HT1A受容体拮抗剤NAN−190(TOCRIS)または5HT2A受容体拮抗剤MDL−11939(TOCRIS)を添加し、5〜10分後にセロトニン(5HT)を添加した。その3時間後に初期生存細胞数を計測した。細胞播種3日後に再び生存細胞数を計測し、初期生存細胞数を基準に生存率を算出した。細胞数の計測は、位相差顕微鏡を用いてあらかじめGreiner 4-well dishの裏面よりつけていた印を基準に行った。細胞体が大きく(約φ15μm以上)、phase-brightな細胞のみを計測した。
【0153】
2.実験結果
図2にその結果を示す。5HT毒性は5HT1A受容体拮抗剤NAN−190および5HT2A受容体拮抗剤MDL−11939によりそれぞれ抑制された(図2A、図2B)。この結果より5HT1Aおよび5HT2Aの二つの受容体が5HT毒性に関与していることが確認できた。培養系を用いた生存活性の評価には、analysis of varianceおよびDunnett test/Bonferoni testを使用して解析した。
【0154】
実施例3:ラット運動神経初代純粋培養系における5HT毒性に関与するIP3受容体の解析
5HT2A受容体を介したシグナルのダウンストリームとして小胞体上のIP3受容体の関与が推定されたため、IP3受容体拮抗薬である2−APBによる5HT興奮毒性の抑制を検討した。
【0155】
1.実験条件および実験方法
実施例1と同様にラット運動神経初代純粋培養を行い、ラット運動神経細胞を調製した。細胞計測結果に基づき、1.1〜1.2×10cell/mLとなるように培養液で希釈した。あらかじめポリ−L−オルニチン/ラミニンでコーティングしたGreiner 4-well dishに1mLピペットマンを用いて細胞懸濁液を90μL/wellで播種した。培養開始1時間後にIP3受容体拮抗薬2−APB(TOCRIS)、5HT2C受容体アゴニストMK−212(TOCRIS)、α1受容体アゴニスト フェニレフリン(Phenylephrine)(Sigma)、α2受容体アゴニスト クロニジン(Clonidine)(WAKO)、nicotinic Ach受容体アゴニスト ニコチン(Nicotine)(Sigma)、またはmuscarinic Ach受容体アゴニスト ピロカルピン(Pilocarpine)(Sigma)を添加し、5〜10分後にセロトニン(5HT)を添加した。その3時間後に初期生存細胞数を計測した。細胞播種3日後に再び生存細胞数を計測し、初期生存細胞数を基準に生存率を算出した。細胞数の計測は、位相差顕微鏡を用いてあらかじめGreiner 4-well dishの裏面よりつけていた印を基準に行った。細胞体が大きく(約φ15μm以上)、phase-brightな細胞のみを計測した。
【0156】
2.実験結果
図3および図4にその結果を示す。IP3受容体拮抗薬である2−APBによる5HT興奮毒性の抑制を検討したところ、抑制が確認された(図3)。このことからも5HT2A受容体の関与を確認することができた。なお、運動神経細胞に発現していると知られている他の各種受容体(5HT2C受容体、α1受容体、α2受容体、nicotinic Ach受容体、muscarinic Ach受容体)アゴニストは生存に顕著な影響を及ぼさなかった(図4)。
【0157】
培養系を用いた生存活性の評価には、analysis of varianceおよびDunnett test/Bonferoni testを使用して解析した。
【0158】
実施例4:ラット運動神経初代純粋培養系における5HT2A受容体拮抗作用を有する抗うつ薬トラゾドンの評価
5HTは培養運動神経細胞に対し興奮毒性を示し、その作用には5HT1Aおよび5HT2A受容体が関与していたことが分かった。特に、5HT2A受容体は脊髄内では運動神経細胞に特異的に発現し、ALSの進行に5HT2A受容体を介した5HT毒性の関与が示唆された。そこで臨床応用可能な5HT2A受容体拮抗剤について評価した。
【0159】
1.実験条件および実験方法
実施例1と同様にラット運動神経初代純粋培養を行い、ラット運動神経細胞を調製した。細胞計測結果に基づき、1.1〜1.2×10cell/mLとなるように培養液で希釈した。あらかじめポリ−L−オルニチン/ラミニンでコーティングしたGreiner 4-well dishに1mLピペットマンを用いて細胞懸濁液を90μL/wellで播種した。培養開始1時間後にトラゾドン(WAKO)を添加し、5〜10分後にセロトニン(5HT)を添加した。その3時間後に初期生存細胞数を計測した。細胞播種3日後に再び生存細胞数を計測し、初期生存細胞数を基準に生存率を算出した。細胞数の計測は、位相差顕微鏡を用いてあらかじめGreiner 4-well dishの裏面よりつけていた印を基準に行った。細胞体が大きく(約φ15μm以上)、phase-brightな細胞のみを計測した。
【0160】
2.実験結果
図5にその結果を示す。抗うつ薬であるトラゾドンは強い5HT2A受容体拮抗作用を示す(Giannangeli M., et al., J. Med. Chem., 42, 336-345, 1999.)。そこで、実施例1で調製したラット運動神経初代純粋培養系で評価したところ、5HT興奮毒性を1nM以下の低い濃度で抑制した。培養系を用いた生存活性の評価には、analysis of varianceおよびDunnett test/Bonferoni testを使用して解析した。
【0161】
実施例5:ラット運動神経初代純粋培養系におけるセロトニン受容体(セロトニン1A受容体、セロトニン2A受容体)拮抗作用を有する化合物1の評価
1.実験条件および実験方法
実施例1と同様にラット運動神経初代純粋培養を行い、ラット運動神経細胞を調製した。細胞計測結果に基づき、1.1〜1.2×10cell/mLとなるように培養液で希釈した。あらかじめポリ−L−オルニチン/ラミニンでコーティングしたGreiner 4-well dishに1mLピペットマンを用いて細胞懸濁液を90μL/wellで播種した。培養開始1時間後に化合物1を添加し、5〜10分後にセロトニン(5HT)を添加した。その3時間後に初期生存細胞数を計測した。細胞播種3日後に再び生存細胞数を計測し、初期生存細胞数を基準に生存率を算出した。細胞数の計測は、位相差顕微鏡を用いてあらかじめGreiner 4-well dishの裏面よりつけていた印を基準に行った。細胞体が大きく(約φ15μm以上)、phase-brightな細胞のみを計測した。
【0162】
2.実験結果
図6にその結果を示す。化合物1による5HT興奮毒性の抑制を検討したところ、0.1nM以上で抑制が確認された。培養系を用いた生存活性の評価には、analysis of varianceおよびDunnett test/Bonferoni testを使用して解析した。
【0163】
参考例
セロトニン1A、セロトニン2各受容体結合試験
(動物)
6〜8週齢のSD系ラットを使用した。
【0164】
(受容体源の調製)
ラットをギロチンにより屠殺し大脳を摘出した。海馬および皮質を分離し、海馬はセロトニン1A、大脳皮質はセロトニン2の各受容体結合試験に用いた。海馬については湿重量の50倍量、皮質については10倍量の0.32Mのショ糖溶液によりテフロン(登録商標)グラスホモジナイザーを用いて均一にした後、1,000×gで10分間遠心した。得られた上清をさらに20,000×gで20分間遠心した。得られた沈渣を海馬については最初の湿重量の50倍量、皮質については10倍量の50mMトリス−塩酸(pH7.4)により再懸濁し、室温で30分間インキュベーションした後、20,000×gで20分間遠心した。得られた沈渣をさらに2回、同様に懸濁、遠心した。得られた沈渣を、海馬については、最初の湿重量の100倍量、皮質については20倍量の50mMトリス−塩酸(pH7.4)溶液に懸濁し受容体画分とした。受容体画分は用時まで−80℃で保存した。
【0165】
([H]8−ヒドロキシ−ジプロピルアミノテトラリン結合試験)
海馬の受容体画分に、検体化合物と0.5nMの[H]8−ヒドロキシ−ジプロピルアミノテトラリンを混ぜ、室温で30分間インキュベーションした。これをセルハーベスターを用いてグラスフィルターで濾過した。50mMトリス−塩酸(pH7.4)でグラスフィルターを洗浄後、液体シンチレーションカウンターで受容体に結合した放射活性を測定した。10μMのセロトニンビノキサレート存在下で検出される結合を非特異的結合とした。
【0166】
([H]ケタンセリン結合試験)
大脳皮質の受容体画分に、検体化合物と0.3nMの[H]ケタンセリンを混ぜ、37℃で15分間インキュベーションした。これをセルハーベスターを用いてグラスフィルターで濾過した。50mMトリス−塩酸(pH7.4)でグラスフィルターを洗浄後、液体シンチレーションカウンターで受容体に結合した放射活性を測定した。1μMのメチセルギド存在下で検出される結合を非特異的結合とした。
【0167】
IC50値は、プロビット法により算出し、Ki値は次式を用いて求めた。
【0168】
Ki=IC50/(1+c/Kd)
式中、cは放射性リガンド濃度を、Kdはスキャッチャード(Scatchard)解析により求めた放射性リガンドの受容体に対する解離定数を示す。
【0169】
上記試験方法により、化合物1〜6のセロトニン1A、セロトニン2各受容体結合能を評価した結果を下表に示す。
5HT1a(nM) 5HT2(nM)
化合物1 0.65 38.15
化合物2 1.58 0.75
化合物3 1.18 0.96
化合物4 3.70 0.05
化合物5 3.86 8.00
化合物6 0.70 6.40
【0170】
上記試験方法により、化合物7および8のセロトニン1A、セロトニン2各受容体結合能を評価した結果を下表に示す。
5HT1a(nM) 5HT2(nM)
化合物7 18.8 3.9
化合物8 54.87 1.35
【0171】
セロトニン2受容体拮抗作用確認試験
(マウス首振り行動試験)
検体化合物のセロトニン2受容体拮抗作用はマウス首振り(head twitch)行動試験により求めた。トリプタミンは、セロトニン2受容体作動薬であり、セロトニン2受容体を介したマウスの首振り行動を誘発することが知られている。従って、トリプタミンによる首振り行動から検体化合物のセロトニン2受容体拮抗作用を評価することができる。マウスにトリプタミン30mg/kgを静脈内投与し、投与開始後1分以内の首振り反応の出現回数を測定した。検体化合物(化合物1および化合物4)は、トリプタミン静脈内投与の15分前に投与した。
上記試験方法により、化合物1および化合物4のセロトニン2受容体拮抗作用を評価した結果を図7に示す。
【0172】
セロトニン1A受容体に対する親和性試験
被験物質の5−HT1A受容体に対する親和性は、5−HT1A受容体に選択的に結合する[H]−4−(2’−Methoxy)phenyl−1−[2’−(N−2”−pyridinyl)−p−fluorobenzamido] ethyl−piperazine(MPPF)のブタ海馬膜画分への結合に対する被験物質の阻害実験により求めた。Gタンパク結合受容体である5−HT1A受容体は、MgCl添加によりGタンパク結合状態に、また、guanylylimidodiphosphate(Gpp(NH)p)添加によりGタンパク非結合状態となる。一般に、Gタンパク受容体作動薬はその内活性の強さに応じてGタンパク結合状態の受容体に対しより強い親和性を示すことが知られているので、Gタンパク非結合状態の受容体に対する親和性とGタンパク結合状態の受容体に対する親和性をそれぞれ求め比較することにより被験物質の内活性の強さを推定した。
【0173】
理論的には低親和性状態の受容体に対する親和性(IC50値)を高親和性状態の親和性(IC50値)で除した値(L/H)が1以下であれば内活性はゼロであり、この値が大きくなるに従い内活性が強くなる。実際には、L/Hが1以下の被験物質は内活性を有さず、2以上の被験物質は内活性を有するものと判断した。
【0174】
ブタ海馬を氷冷した50mMトリス塩酸塩緩衝液(pH7.4;以下「緩衝液A」という)中でホモジナイズした。懸濁液を40,000×gで15分間遠心した。得られた沈渣を緩衝液Aに懸濁し、40,000×gで15分間遠心した。同様の操作をさらに2−3回繰り返した。最終的に得られた沈渣はブタ海馬湿重量のおよそ10倍量の緩衝液Aで懸濁して膜画分とし、用時まで−80℃で保存した。
【0175】
インキュベーション用の混和物(0.5mL)は、適当量の膜画分、所望の濃度の被験物質、MgCl(最終濃度:10mM)またはGpp(NH)p(最終濃度:1mM)、[H]MPPF(最終濃度:0.5nM)、ジメチルスルホキシド(最終濃度:1%(v/v))および50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH7.4)を含有した。膜画分の添加により反応を開始し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、混和物はCell Harvesterを用いてガラスフィルターを通して吸引濾過した。フィルターを氷冷した緩衝液Aで洗浄したのち、液体シンチレーションカウンターを用いて受容体に結合した放射活性を測定した。非特異結合は10μMのWAY−100,635存在下で検出される結合とした。
【0176】
親和性のデータは阻害曲線から求めたIC50値で下記の表に示す。
低親和性(nM) 高親和性(nM) L/H比
化合物9 0.16 0.2 0.8
化合物10 0.1 0.13 0.8
化合物11 0.15 0.17 0.9
化合物12 0.34 0.46 0.7
化合物13 0.35 0.27 1.3
化合物14 0.26 0.16 1.6
化合物15 0.15 0.16 0.9
【0177】
考察
H]8−ヒドロキシ−ジプロピルアミノテトラリンは、検体化合物のセロトニン1A受容体への結合を測定することに用いられることが知られている(European Journal of Pharmacology, 90, p.151-153, 1983.)。また、[H]ケタンセリンは、検体化合物のセロトニン2A受容体への結合を測定することに用いられることが知られている(Brian Dean and Wendy Hayes, Schizophrenia Research, 21, p.133-139, 1996.)。さらに、トリプタミンによるマウス首振り行動試験は、検体化合物のセロトニン2受容体拮抗作用を測定することに用いられることが知られている(Yamada J., et al., European Journal of Pharmacology, 140, p.323-330, 1987., Yamada J., et al., Neuropharmacology, 26, p.49-53, 1987.)。
【0178】
化合物1および化合物4は、優れたセロトニン2A受容体拮抗作用を有することが確認された。化合物2、化合物3、化合物5および化合物6は、セロトニン2A受容体拮抗作用を有することが示唆された。また、化合物1〜6は、セロトニン1A受容体拮抗作用を有することが示唆された。
【0179】
同様に、化合物7および化合物8もセロトニン受容体(セロトニン1A受容体、セロトニン2A受容体)拮抗作用を有することが示唆された。
【0180】
また、化合物9〜15は、優れたセロトニン1A受容体拮抗作用を有することが確認された(国際公開第2005/108389号パンフレット参照)。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】ラット運動神経初代純粋培養系における5HTの毒性を評価した図である(Mean±SEM(n=4))。A:5HT濃度と毒性との関係を示した図である。B:5HT毒性とグルタミン酸毒性を比較した図である。
【図2】ラット運動神経初代純粋培養系における5HT1A受容体および5HT2A受容体の5HT毒性への関与を評価した図である(Mean±SEM(n=4),**p<0.01,*p<0.05)。A:5HT1A拮抗剤による5HT毒性抑制を示した図である。B:5HT2A拮抗剤による5HT毒性抑制を示した図である。
【図3】ラット運動神経初代純粋培養系におけるIP3受容体の5HT毒性への関与を評価した図である(Mean±SEM(n=4),**p<0.01)。IP3R拮抗剤による5HT毒性抑制を示した図である。
【図4】ラット運動神経初代純粋培養系における各種受容体の5HT毒性への関与を評価した図である(Mean±SEM(n=4))。A:5HT2C受容体、B:α1受容体、C:α2受容体、D:nicotinic Ach受容体、E:Muscarinic Ach受容体。
【図5】ラット運動神経初代純粋培養系におけるトラゾドンによる5HT毒性の抑制効果を示した図である(Mean±SEM(n=4),**p<0.01,*p<0.05)。
【図6】ラット運動神経初代純粋培養系における化合物1による5HT毒性の抑制効果を示した図である(Mean±SEM(n=4),*p<0.05)。
【図7】マウス首振り行動試験の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物もしくはその薬理学的に許容し得る塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む、運動ニューロン疾患治療剤。
【請求項2】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が、5HT1A受容体拮抗作用および/または5HT2A受容体拮抗作用を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
5HT2A受容体拮抗作用を有する化合物が、サルポグレラート、トラゾドン、ノルトリプチン、アミトリプチン、イミプラミン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ミルタザピン、ミアンセリン、MDL−11939、MDL100907、オランザピン、リスペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、クロカプラミン、カルピプラミン、モサプラミン、クロルプロマジン、およびレボメプロマジンからなる群から選択される、請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が式(I)により表される、請求項1に記載の治療剤。
【化1】

[上記式中、
A、B、C、およびDは、同一または異なっていてもよく、メチン基または窒素原子を表し、うち2以上がメチン基であり、
- - -は、単結合または二重結合を表し、
Tは、メチン基または窒素原子を表し、
YおよびZは、同一または異なっていてもよく、メチン基、窒素原子、下記式
【化2】

で表される基、または下記式
【化3】

で表される基を表し、少なくとも一方は窒素原子であり、
およびRは、同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、2−ピロリジノン−1−イル基、1−ヒドロキシ−1−(メトキシピリジル)メチル基、メトキシピリジルカルボニル基、1,3−プロパンスルタム−2−イル基、ヒドロキシピペリジルカルボニルC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ジハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ヘテロアリールアミドC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、シアノ基、C1−6アルキルスルホニル基、C1−6アルキルスルホニルアミド基、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、N−C1−6アルキルC1−6アルキルスルホニルアミノ基、C1−6アシルアミノ基、置換されていてもよいアミノC1−6アルキル基、窒素原子が置換されていてもよいC1−6アルキルC1−6アシルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルオキシ基、ヒドロキシイミノメチル基、(2−ピロリドン−1−イル)メチル基、(2−ピペリドン−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキルカルボニルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいウレイド基、置換されていてもよいウレイドC1−6アルキル基、スクシイミド基、(スクシイミド−1−イル)C1−6アルキル基、アミド基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、置換されていてもよいチオカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基、ホルミル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、(2−イミダゾリジノン−1−イル)メチル基、(2,4−イミダゾリジンジオン−3−イル)メチル基、(2−オキサゾリドン−3−イル)メチル基、(グルタルイミド−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリールヒドロキシC1−6アルキル基、シアノC1−6アルキル基、1−ヒドロキシC3−6シクロアルキル基、(2,4−チアゾリジンジオン−3−イル)メチル基、置換されていてもよい4−ピペリジルメチル基、アリールC1−6アシル基、ヘテロアリールC1−6アシル基、ピロリジニルカルボニルC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノスルホニルC1−6アルキル基、カルボキシC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基を表し、あるいはRとRとは一緒になって、置換されていてもよい脂環、置換されていてもよいヘテロ環またはアルキレンジオキシ基を形成してもよく、さらにこれらの環は置換されていてもよく、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、水酸基、ヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ホルミル基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、置換されていてもよいスルファモイル基または窒素原子が置換されていてもよいスルファモイルC1−6アルキル基を表し、
は、水素原子、C1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、アリール基が置換されていてもよいアリールオキシC1−6アルキル基またはアリール基が置換されていてもよいアラルキルオキシC1−6アルキル基を表し、
は、C1−6アルキル基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールC1−6アシル基または下記式:
【化4】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であるか、またはいずれか一方が単結合であり、他方が酸素原子、カルボニル基、式−NHCO−で表される基、式−NHSO−で表される基または式>CH−Rで表される基(式中、Rは水酸基、C1−6アルキル基またはハロゲン原子を表す。)を表し、
sは、0または1〜6の整数を表し、
は、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基から選ばれた基を表す。]
で表される基を表し、
nは、0または1〜3の整数を表し、
mは、0または1〜6の整数を表し、
pは、1〜3の整数を表す。]
【請求項5】
A、B、C、およびDがいずれもメチン基である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項6】
- - -が、二重結合である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項7】
Tが窒素原子である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項8】
Yがメチン基であり、かつ、Zが窒素原子である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項9】
およびRが、一方が水素原子である場合に、他方がC1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項10】
およびRが、一方が水素原子である場合に、他方がメチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
が水素原子である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項12】
が水素原子である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項13】
が、下記式で表される、請求項4に記載の治療剤:
【化5】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表す。]。
【請求項14】
が、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基である、請求項13に記載の治療剤。
【請求項15】
nが0である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項16】
mが0である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項17】
pが2である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項18】
A、B、C、およびDがいずれもメチン基であり;- - -は、二重結合であり;Tが窒素原子であり;Yがメチン基であり;Zが窒素原子であり;RおよびRが、一方が水素原子である場合に、他方がC1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基であり;Rが水素原子であり;Rが水素原子であり;Rが、下記式で表され:
【化6】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表す。];mが0であり;nが0であり;pが2である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項19】
A、B、C、およびDがいずれもメチン基であり;- - -は、二重結合であり;Tが窒素原子であり;Yがメチン基であり;Zが窒素原子であり;RおよびRが、一方が水素原子である場合に、他方がメチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rが水素原子であり;Rが水素原子であり;Rが、下記式で表され:
【化7】

[式中、Q1およびQ2は共に単結合であり、sは2であり、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基を表す。];mが0であり;nが0であり;pが2である、請求項4に記載の治療剤。
【請求項20】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が式(II)により表される、請求項1に記載の治療剤。
【化8】

[上記式中、
Raは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、2−ピロリジノン−1−イル基、1−ヒドロキシ−1−(メトキシピリジル)メチル基、メトキシピリジルカルボニル基、1,3−プロパンスルタム−2−イル基、ヒドロキシピペリジルカルボニルC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ジハロゲン化C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、ヘテロアリールアミドC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アシル基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、シアノ基、C1−6アルキルスルホニル基、C1−6スルホニルアミド基、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルアミノ基、N−C1−6アルキルC1−6アルキルスルホニルアミノ基、C1−6アシルアミノ基、置換されていてもよいアミノC1−6アルキル基、窒素原子が置換されていてもよいC1−6アルキルC1−6アシルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基、C1−6アルキルスルホニルオキシ基、ヒドロキシイミノメチル基、(2−ピロリドン−1−イル)メチル基、(2−ピペリドン−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいヘテロアリールC1−6アルキル基、C3−6シクロアルキルカルボニルアミノC1−6アルキル基、置換されていてもよいウレイド基、置換されていてもよいウレイドC1−6アルキル基、スクシイミド基、(スクシイミド−1−イル)C1−6アルキル基、アミド基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、置換されていてもよいチオカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基、ホルミル基、アリールC1−6アシル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、(2−イミダゾリジノン−1−イル)メチル基、(2,4−イミダゾリジンジオン−3−イル)メチル基、(2−オキサゾリドン−3−イル)メチル基、(グルタルイミド−1−イル)メチル基、置換されていてもよいヘテロアリールヒドロキシアルキル基、シアノC1−6アルキル基、1−ヒドロキシC3−6シクロアルキル基、(2,4−チアゾリジンジオン−3−イル)メチル基、置換されていてもよい4−ピペリジルメチル基、ヘテロアリールC1−6アシル基、ピロリジニルカルボニルC1−6アルキル基、置換されていてもよいアミノスルホニルC1−6アルキル基、カルボキシC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミドC1−6アルキル基を表し、
Rbは、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、または置換されていてもよい縮合複素環基を表し、
- - -は、単結合または二重結合を表す。]
【請求項21】
Raが、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基である、請求項20に記載の治療剤。
【請求項22】
Raが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基である、請求項21に記載の治療剤。
【請求項23】
Rbが、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基である、請求項20に記載の治療剤。
【請求項24】
- - -が、二重結合である、請求項20に記載の治療剤。
【請求項25】
Raが、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基であり;Rbが、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基であり;- - -が、二重結合である、請求項20に記載の治療剤。
【請求項26】
Raが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rbが、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいキノリル基、置換されていてもよいクロマニル基、置換されていてもよいベンゾオキサゾリル基、置換されていてもよいベンゾイソオキサゾリル基、またはベンゾ[1,4]ジオキサニル基であり;- - -が、二重結合である、請求項20に記載の治療剤。
【請求項27】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が式(III)により表される、請求項1に記載の治療剤。
【化9】

[上記式中、
Rcは、C1−6アルキルスルホニルアミノC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいカルバモイルC1−6アルキル基、C1−6アルキルアミドC1−6アルキル基またはC1−6アルキルアミノチオカルボニルアミノC1−6アルキル基を表し、
Rdは、下記置換基群A1から選択される1ないし4個の置換基を有してもよいフェニル基、または隣接する2つの置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、5ないし7員環式非芳香族炭化水素環基、5ないし7員環式非芳香族複素環基、6員環式芳香族炭化水素環基、または5もしくは6員環式芳香族複素環基を形成する、場合によっては、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよいフェニル基:
[ここで、置換基群A1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)カルボキシル基、(7)C3−8シクロアルキル基、(8)C2−6アルケニル基、(9)C2−6アルキニル基、(10)C1−6アルキルチオ基、(11)C1−6アルコキシカルボニル基、(12)C1−6アルキルスルホニル基、(13)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい)、(14)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(15)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)および(16)カルバモイル基(該カルバモイル基は1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)からなり、
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基からなる。]を表し、
- - -は、単結合または二重結合を表す。]
【請求項28】
Rcが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基である、請求項27に記載の治療剤。
【請求項29】
Rdが、ハロゲン原子で置換されるフェニル基である、請求項27に記載の治療剤。
【請求項30】
Rdが、隣接する置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化10】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
を形成するフェニル基である、請求項27に記載の治療剤。
【請求項31】
- - -が、二重結合である、請求項27に記載の治療剤。
【請求項32】
Rcが、メチルスルホニルアミノメチル基、メトキシ基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、メチル基で置換されていてもよいカルバモイルメチル基、メチルアミドメチル基またはメチルアミノチオカルボニルアミノメチル基であり;Rdが、ハロゲン原子で置換されるフェニル基、あるいは隣接する置換基が、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化11】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]を形成するフェニル基であり;- - -が、二重結合である、請求項27に記載の治療剤。
【請求項33】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が式(IV)により表される、請求項1に記載の治療剤。
【化12】

[上記式中、R101およびR102は、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよく、
(1)5ないし7員環式非芳香族炭化水素環基、
(2)5ないし7員環式非芳香族複素環基、
(3)6員環式芳香族炭化水素環基、または
(4)5もしくは6員環式芳香族複素環基を形成し、
103は、水素原子またはメチル基を示し、
106は、下記置換基群A1から選択される置換基を表し、
置換基群A1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)カルボキシル基、(7)C3−8シクロアルキル基、(8)C2−6アルケニル基、(9)C2−6アルキニル基、(10)C1−6アルキルチオ基、(11)C1−6アルコキシカルボニル基、(12)C1−6アルキルスルホニル基、(13)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基からなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい)、(14)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(15)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)および(16)カルバモイル基(該カルバモイル基は1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)からなり、
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基からなる。]
【請求項34】
101およびR102が、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化13】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
で表される、請求項33に記載の治療剤。
【請求項35】
106が非置換である、請求項33に記載の治療剤。
【請求項36】
101およびR102が、隣接する置換基であって、これら置換基とその各々が結合する2つの炭素原子とが一緒になって、下記式:
【化14】

で表される基[但し、各環式基上の水素原子は、下記置換基群B1から選択される、1ないし4個の置換基で置換されてもよい。
置換基群B1は、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)シアノ基、(4)水酸基、(5)ニトロ基、(6)オキソ基、(7)カルボキシル基、(8)C3−8シクロアルキル基、(9)C2−6アルケニル基、(10)C2−6アルキニル基、(11)C1−6アルキルチオ基、(12)C1−6アルコキシカルボニル基、(13)C1−6アルキルスルホニル基、(14)C1−6アルキル基(該C1−6アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基およびC1−6アルコキシ基で置換されてもよい)、(15)C1−6アルコキシ基(該C1−6アルコキシ基は、1ないし3個のハロゲン原子で置換されてもよい)、(16)アミノ基(該アミノ基は、C1−6アルキル基、ホルミル基、C1−6アルカノイル基およびC1−6アルキルスルホニル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよい)、(17)カルバモイル基(該カルバモイル基は、1または2個のC1−6アルキル基で置換されてもよい)、(18)C1−6アルコキシイミノ基、(19)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が一緒になって形成するC5−6シクロアルキル基および(20)同一炭素原子に結合する2個のC1−3アルキル基が酸素原子と共に当該炭素原子と一緒になって形成するテトラヒドロピラニル基。]
で表され;R106が非置換である、請求項33に記載の治療剤。
【請求項37】
セロトニン受容体拮抗作用を有する化合物が、下記の化合物群から選択される、請求項1に記載の治療剤:
(1)N−メチル−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}アセトアミド、
(2)N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチルアセトアミド、
(3)1−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドール−6−イル}メチル−3−メチルチオウレア、
(4)N−{1−[1−(2−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチルアセトアミド、
(5)N−{1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−1H−インドリン−6−イル}メチル−メタンスルホンアミド、
(6)1−[1−(4−フルオロフェネチル)ピペリジン−4−イル]−6−メトキシインドリン、
(7)2−{4−[1−(4−エチルピペラジン−1−イル)イソキノリン−3−イル]フェノキシ}エタノール、
(8)1−{4−[4−(4−エチルピペラジン−1−イル)チエノ[3,2−c]ピリジン−6−イル]フェノキシ}−2−メチルプロパン−2−オール、
(9)1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−N−メチル−1H−インドール−6−カルボキサミド、
(10)1−{1−[2−(7−メトキシ−2,2−ジメチル−4−オキソクロマン−8−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド、
(11)1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド、
(12)1−{1−[2−(6−メトキシ−2−メチルベンゾオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド、
(13)1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−5−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド、(14)1−{1−[2−(6−メトキシ−3−メチルベンゾ[d]イソオキサゾール−7−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド、および
(15)1−{1−[2−(7−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)エチル]ピペリジン−4−イル}−1H−インドール−6−カルボキサミド。
【請求項38】
運動ニューロン疾患が、びまん性萎縮性麻痺、仮性球麻痺、家族性筋萎縮性側索硬化症、球麻痺、筋萎縮性側索硬化症、若年性一側性上肢筋萎縮症、進行性球麻痺、進行性筋萎縮、および脊髄進行性筋萎縮症からなる群から選択される、請求項1〜37のいずれか一項に記載の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−169191(P2008−169191A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39759(P2007−39759)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本神経化学会による証明書[神経化学Vol.44(No.2,3)p216(2005)(平成17年8月25日発行)および発表資料(平成17年9月29日発表)]
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】