説明

運動用具

【課題】上半身のトレーニングに加えて、下半身のトレーニングを行うことができる運動用具を提供する。
【解決手段】長尺状弾性体3の両端3C,3Dにそれぞれハンドル5,7を固定し、ハンドル5,7を連結する連結構造31を設ける。連結構造31は、ハンドル5,7にそれぞれ設けられた被係止部33,35と、被係止部33,35に係止される係止部材37とにより構成する。係止部材37は、操作部を備え、この操作部の解除操作により開状態となり、操作部の連結操作により閉状態となる構造を有する。被係止部33,35及び係止部材37は、係止部材37が開状態にあるときに、被係止部33,35に係止部材37が係止可能となり、係止部材37が閉状態にあるときに、被係止部33,35と係止部材37との係止関係が解除できない状態になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の弾性体にハンドルが固定されてなる運動用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実用新案登録第3033578号(特許文献1)には、長尺状の弾性体とハンドルを具備する従来の運動用具の構造が開示されている。この運動用具は、長尺状の弾性体(ゴムチューブ)の両端に一対のハンドル(握り)が固定された構造を備えている。使用者は、この運動用具を操作することによって、上半身のトレーニングを行うことができる。具体的には、使用者がハンドルを握って弾性体の長さ方向に引っ張り力を加えると弾性体が伸び、また、加えた引っ張り力を解除すると弾性体が元の長さに戻る。この動作により、使用者は、胸、腕、背中等のトレーニングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3033578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこの種の運動用具では、専ら長尺状弾性体の長手方向の弾性力を利用するため、その用途が胸、背中等の上半身のトレーニングに限られており、トレーニングのバリエーションを増やすことができない問題があった。
【0005】
本発明の目的は、長尺状弾性体とハンドルを備える構造の運動用具において、上半身のトレーニングに加えて、下半身のトレーニングを行うことができる運動用具を提供することにある。
【0006】
また、上記目的に加えて、本発明の他の目的は、トレーニングのバリエーションが豊富な運動用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が改良の対象とする運動用具は、1以上の長尺状弾性体と一対のハンドルとを具備する。長尺状弾性体は、長さ方向に引っ張り力を付加すると長さ方向に伸び、引っ張り力を解除すると元の長さに戻る弾性を有する。また一対のハンドルは、1以上の長尺状弾性体の両端にそれぞれ固定されており、使用者が手で握って運動用具を操作できる構造を有している。
【0008】
本発明の運動用具は、一対のハンドルを任意の手動操作により解除可能に連結する連結構造を備えている。言い換えると、連結構造は、ハンドル同士を連結することができ、また連結したハンドル同士の連結を解除することができるように構成されている。このような連結構造を用いて一対のハンドルを連結すると、長尺状弾性体をループ状にすることができる。ループ状にした長尺状弾性体のループ内に、椅子に座っている使用者の両足を入れ、運動用具を、使用者の両膝の近くまで上げて、使用者が両膝を左右に動かせば、膝や脚等を鍛えるトレーニングが可能になる。なおループ状になった長尺状弾性体を利用するトレーニングは、この例に限定されるものではない。また、ハンドル同士を連結しない状態で使用者が一対のハンドルを両手でそれぞれ握って運動用具を操作すれば、従来のトレーニング(すなわち、胸、背中等の上半身を鍛えるトレーニング)を行うことができる。したがって、本発明によれば、従来の上半身のトレーニングに加えて、従来は不可能であった下半身のトレーニングを含む新たなトレーニングを行うことができる。また、連結構造により一対のハンドルを連結すると、運動用具がコンパクトになるため、運動用具の保管または収納が容易になる。
【0009】
この連結構造は、一対の被係止部とこれら一対の被係止部に係止される係止部材とから構成することができる。一対の被係止部は、一対のハンドルにそれぞれ設けられている。係止部材は、手動で操作される任意の操作部を備える。係止部材の構造は、この操作部の解除操作により開状態となり、操作部の連結操作により閉状態となる構造になっている。そして、係止部材が開状態にあるときには、一対の被係止部に係止部材が係止可能となり、係止部材が閉状態にあるときには、一対の被係止部と係止部材との係止関係が解除できない状態になるように、一対の被係止部及び係止部材が構成されている。このような一対の被係止部及び係止部材を用いて連結構造を構成すると、操作部の連結操作により被係止部に係止部材を係止することができ、操作部の解除操作により被係止部と係止部材との係止関係を解除することができる。そのため、簡単な操作によりハンドル同士の連結及び連結の解除が可能になる。また、一対のハンドルのいずれのハンドルにも被係止部が設けられているため、いずれか一方のハンドル(いずれか一方の被係止部)に対する係止部材の係止関係を解除するだけでハンドル同士の連結を解除することができる。一方のハンドル(いずれか一方の被係止部)と係止部材との係止関係の解除に加えて、他方のハンドル(他方の被係止部)と係止部材との係止関係も解除すれば、運動用具から係止部材を取り外すことができる。またこの連結構造では、被係止部に係止部材が係止された状態で係止部材が閉状態にある限り、一対の被係止部と係止部材との係止関係が解除できないため、ハンドル同士を連結した状態(すなわち長尺状弾性体がループ状になった状態)を確実に維持することができる。
【0010】
一対の被係止部はそれぞれ貫通孔を備えた構造とすることができ、この場合、係止部材は一対の被係止部の貫通孔を緩く貫通するC字状の貫通部材を備えた構造とすることができる。そして操作部は、貫通部材の両端に設けられて、この両端を解除可能に連結することにより閉状態を形成するように構成することができる。ここで「緩く貫通する」とは、貫通部材が貫通孔を貫通したときに貫通孔と貫通部材との間に隙間があることを意味する。このような構造の係止部材を用いると、一対の貫通孔に貫通部材を貫通させるだけで被係止部に係止部材を係止することができるため、簡単な操作で一対のハンドルを確実に結合することができる。また、C字状の貫通部材が貫通孔に緩く貫通する構造になっているため、被係止部と係止部材との係止または係止の解除(すなわちハンドル同士の結合または結合の解除)が容易になる。
【0011】
本発明で用いる長尺状弾性体の本数及び材質は任意である。例えば、1以上の長尺状弾性体として、1本のゴムチューブを用いることができる。またハンドルは、グリップと、このグリップの両端部から延びてグリップと閉ループを構成する帯状部材とから構成することができる。ハンドルを構成するグリップ及び帯状部材の材質及び構造は任意である。本発明では、グリップとして、運動用具の操作時に形状が変形し難くかつ使用者が握り易い構造を備える円筒部材を用いるのが好ましい。また、帯状部材としては、樹脂繊維の帯紐を用いることができる。このような構造のハンドルでは、長尺状弾性体が長手方向に延びるように運動用具を操作したときに、ハンドルの輪郭(グリップ部と帯状部材とで構成された閉ループの形状)が三角形状になる。帯状部材の長手方向の中央部には、ゴムチューブの一端が固定される被固定部が設けられている。そして、被固定部とグリップの一方の端部との間に位置する帯状部材の部分には、被係止部を構成する貫通孔が設けられている。このような構成では、ハンドルのグリップ部分に被係止部が設けられないため(すなわち、ハンドルのグリップ部分に係止部材が係止されないため)、連結構造(被係止部及び係止部材)が存在しても、使用者がハンドルのグリップを握って運動用具を操作する場合に操作の障害になりにくい。
【0012】
1以上の長尺状弾性体には、さらにフープ部材を取り付けることができる。このフープ部材は、長尺状弾性体の長手方向に移動可能な構造を有し、且つ使用者の片足の一部が挿入可能または使用者の手が挿入可能な構造を有する。このような構造では、使用者が片足の一部を挿入した状態でフープ部材を踏みつけることができる。そしてこの状態で使用者がグリップを握って両手または片手を上下させれば、安定した姿勢で腕や背中のトレーニングを行うことができる。また、一対のハンドルを連結して(長尺状弾性体をループ状にして)運動用具を使用する場合は、使用者が足を各ハンドルの閉ループに挿入した状態でハンドルのグリップを踏みつけ、二つのグリップを一方の片手で握り、フープ部材を他方の片手で握り、使用者が両手を拡げる動作をすれば、腕のエキスパンド運動を行うことができる。したがって、このようなフープ部材を設けることにより、トレーニングのバリエーションを増やすことができる。
【0013】
フープ部材は、長尺状弾性体が緩く貫通する貫通孔がそれぞれフープ部材の両端に形成された帯状部材で構成するのが好ましい。このような構造のフープ部材を用いると、フープ部材の両端が長尺状弾性体に沿って長尺状弾性体の長さ方向に動く。そのため、使用者がフープ部材に足の先端を挿入してフープ部材を踏みつけた状態で運動用具のハンドルを操作すると、フープ部材を構成する帯状部材の両端が近づき、帯状部材によって使用者の足が両側から締め付けられる。そのため、トレーニングを行う際に、使用者の足のサイズまたは使用者の体力と関係なく、フープ部材に挿入した足を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の運動用具の一実施の形態を示す図である。
【図2】(A)は図1の運動用具の一部を構成する長尺状弾性体の一部を省略した拡大図であり、(B)は(A)のIIB−IIB線断面図である。
【図3】(A)は図1の運動用具のハンドルの一部を構成するグリップの拡大図であり、(B)は(A)の右側面図である。
【図4】(A)は図3(A)のグリップの一部を構成するグリップ本体を示す図であり、(B)は(A)の左側面図である。
【図5】(A)は図3(A)のグリップの他の一部を構成するエンドブラケットを示す図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)の左側面図である。
【図6】(A)は図3(A)のグリップのさらに他の一部を構成するカバー部材を示す図であり、(B)は(A)の右側面図である。
【図7】(A)は図1の運動用具のハンドルの他の一部を構成する帯状部材の一部を省略した拡大平面図であり、(B)は(A)の正面図である。
【図8】(A)は図2の長尺状弾性体の両端にハンドルを固定するための固定部材を示す拡大図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)の左側面図である。
【図9】図1の運動用具の連結構造の一部を構成する係止部材の拡大図であり、(A)は該係止部材の閉状態を示す図であり、(B)は該係止部材の開状態を示す図である。
【図10】図1の運動用具の使用状態を示す図である。
【図11】図1の運動用具の連結構造の一部を構成する他の係止部材の拡大図であり、(A)は該他の係止部材の閉状態を示す図であり、(B)は該他の係止部材の開状態を示す図である。
【図12】本発明の運動用具の他の実施の形態を示す図である。
【図13】(A)は図12の運動用具の一部を構成するフープ部材の拡大平面図であり、(B)は(A)の正面図である。
【図14】図12の運動用具の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る運動用具の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態の一例である運動用具1を示す図である。運動用具1は、1本の長尺状弾性体3(一部を省略して図示)と一対のハンドル5,7とを具備する。長尺状弾性体3は、円筒状の1本のゴムチューブ4で構成されている。このゴムチューブ4の構造は、図2(A)及び(B)に示すように、内部を長手方向に貫通する空間S1を構成する内層3Aと内層3Aの外周を覆う外層3Bとの二層構造になっている。本例では、このような二層構造のゴムチューブ4により長尺状弾性体3が構成されているため、長尺状弾性体3に所望の弾性力に与え且つ高い引っ張り強度を与えることができる。
【0016】
ハンドル5,7は、長尺状弾性体3の両端3C,3Dにそれぞれ固定されている。ハンドル5,7は、それぞれグリップ9,11と帯状部材13,15とから構成されている。図3(A)及び(B)は、グリップ9,11を示す図である。ここで図4〜図6を用いて、グリップ9の構造を説明する。なお、グリップ9及びグリップ11の構造は共通するため、グリップ11の構造については説明を省略する。図3(A)及び(B)に示すグリップ9は、次のように組み立てる。まず、図4(A)及び(B)に示すグリップ本体17を用意する。グリップ本体17は、合成樹脂を用いて円筒状に成形した円筒部材で構成されている。グリップ本体17の内部には、グリップ本体17を長手方向に貫通する空間S2を構成する円筒状の内周面17Bが形成されている。このグリップ本体17の内周面17Bに帯状部材13を通した上で、グリップ本体17の端部17Aに、図5(A)及び(B)に示すエンドブラケット19を嵌合する。エンドブラケット19は、帯状部材13が貫通するのを許容する空間S3を構成する内壁部19A及びグリップ本体17(円筒部材)の端部17A(内周面17B)に嵌合することを許容する外径寸法を有する円筒部19Bと、円筒部19Bと一体に形成されて円筒部19Bの外壁部19Cから周方向に延びる円形のフランジ部19Dとを備える。
【0017】
なお本例では、上述の帯状部材13及びエンドブラケット19をグリップ本体17に装着する前に、図6(A)及び(B)に示すカバー部材21をグリップ本体17の外周面17Cに予め装着しておく。カバー部材21は、円筒状に成形された弾性を有する円筒部材で構成されている。カバー部材21の内部には、グリップ本体17の外周面17Cの外径寸法に対応した内径寸法を備えてカバー部材21の長手方向に貫通する空間S4を構成する内周部21Aを有する。カバー部材21は、グリップ本体17に装着された状態で、使用者がグリップを握った際にクッションの機能を発揮することができる。
【0018】
また、エンドブラケット19は、このグリップ本体17に装着されたカバー部材21に対して、グリップ本体17の端部17Aに嵌合した状態でエンドブラケット19のフランジ部19Dが、カバー部材21がグリップ本体17の長手方向にずれるのを防ぐことができる。なお、本例では、エンドブラケット19と同じ構造を備える図示しないエンドブラケットが、エンドブラケット19と同じ条件で、グリップ本体17の端部17Aと反対側の端部17Dに嵌合されている。このようにして、図3(A)及び(B)に示すグリップ9が構成されている。
【0019】
図7(A)及び(B)は、帯状部材13,15の構造を示す。なお、帯状部材13と帯状部材15とは構造が同じであるため、帯状部材15の構造については説明を省略する。帯状部材13は、合成樹脂製の繊維からなる帯紐23で構成されている。帯状部材13は、上述のグリップ本体17の空間S2に通した後に、帯状部材13を構成する帯紐23の両端部23A,23Bを厚み方向に重ねて接着及び/または縫製等の加工を行うことにより、帯紐23の両端部23A,23Bを連結することができる。これにより、帯状部材13は、図1に示すように、グリップ9の両端部9A,9Bから延びてグリップ9と閉ループCL1を構成する。同様に、帯状部材15は、グリップ11の両端部11A,11Bから延びてグリップ11と閉ループCL2を構成する。
【0020】
上述のように帯紐23の両端部23A,23Bを重ねて連結すると、図7(B)に示すように、帯紐23には両端部23A,23Bが重なって構成された連結部23Cが形成される。連結部23Cは、帯紐23の両端部23A,23Bが厚み方向に重なって構成されているため、後述の貫通孔H1,H2を形成する際及び被係止部33,35として機能する際に、部材の強度を高くすることができる。
【0021】
帯紐23の連結部23Cには、帯紐23を貫通する第1の貫通孔H1が形成されている。また、連結部23Cには、第1の貫通孔H1と所定の間隔をあけて、第1の貫通孔H1に隣接する第2の貫通孔H2が形成されている。第1の貫通孔H1及び第2の貫通孔H2は、リング状の金具25及び金具27が帯紐23に固定された構造を備えている。本例では、後述のように、第1の貫通孔H1は、帯状部材13,15の長手方向の中央部13A,15Aに設けられたゴムチューブ4の一端が固定される被固定部26,28を構成し、第2の貫通孔H2は、連結構造31の一部を構成する被係止部33,35を構成する。また、第2の貫通孔H2は、被固定部26とグリップ9の両端部9A,9Bの一方の端部9Aとの間に位置する帯状部材13の部分13Bに設けられた貫通孔または被固定部28とグリップ11の両端部11A,11Bの一方の端部11Aとの間に位置する帯状部材15の部分15Bに設けられた貫通孔を構成する。このように、帯状部材13,15の部分13B,15Bに第2の貫通孔H2を設けると、ハンドル3,5のグリップ部分9,11に被係止部33,35が設けられないため(ハンドル3,5のグリップ部分9,11に後述の係止部材37が係止されないため)、連結構造31(被係止部33、35及び係止部材37)が存在しても、使用者がハンドル3,5のグリップ9,11をそれぞれ両手で握って運動用具1を操作する場合に操作の障害になり難くなる。
【0022】
ここで、リング状の金具25及び金具27を用いて第1の貫通孔H1及び第2の貫通孔H2を形成する方法を簡単に説明する。まず、帯紐23の連結部23Cに、第1の貫通孔H1及び第2の貫通孔H2に対応して連結部23Cの厚み方向に貫通する図示しない2つの予備孔を形成する。次に、図7(B)に示すように、第1の貫通孔H1に対応する予備孔が形成された連結部23Cの部分を第1の金具半部25Aと第2の金具半部25Bとで挟むようにして、第1の金具半部25Aと第2の金具半部25Bとをかしめて嵌合する。そうすると、帯紐23に固定されたリング状の金具25が形成され、同時に貫通孔H1が構成される。これと同様に、第2の貫通孔H2に対応する予備孔が形成された連結部23Cの部分を第1の金具半部27Aと第2の金具半部25Bとで挟むようにして、第1の金具半部27Aと第2の金具半部27Bとをかしめて嵌合すれば、帯紐23に固定されたリング状の金具27が形成され、同時に貫通孔H2が構成される。
【0023】
図8(A)、(B)及び(C)は、長尺状弾性体3の両端3C,3Dにハンドル5,7を固定するための固定部材29を示す。なお、ハンドル5を長尺状弾性体3の一端3Cに固定する場合と、ハンドル7を長尺状弾性体3の他端3Dに固定する場合とでは、いずれもハンドルが固定部材29を用いて同じ条件で長尺状弾性体3に固定されるため、長尺状弾性体3の他端3Dにハンドル7を固定する場合については説明を省略する。固定部材29には、内部に長尺状弾性体3を封止可能に貫通する空間S5が構成された硬質ゴムが用いられている。固定部材29は、ハンドル5の帯状部材13に形成された第1の貫通孔H1及び第2の貫通孔H2の径寸法よりも小さい外径寸法を有する小径部29Aと、ハンドル5の帯状部材13の第1の貫通孔H1及び第2の貫通孔H2の径寸法よりも大きい径寸法を有する大径部29Bと、小径部29Aから大径部29Bに向かって外形寸法が徐々に大きくなるように外周面が傾斜するテーパ部29Cとを有する。
【0024】
本例では、ハンドル5を構成する閉ループCL1の外側から長尺状弾性体3(ゴムチューブ4)の一端3Cを帯状部材13の貫通孔H1に挿入し、ハンドル5を構成する閉ループCL1の内側で長尺状弾性体3の一端3Cをさらに固定部材29の小径部29Aから大径部29Bに向かって固定部材29のS5内に挿入して、長尺状弾性体3の一端3Cを固定部材29内に封止する。このような固定部材29が存在することにより、ハンドル5を操作して長尺状弾性体3に引っ張り力が付加された際に、帯状部材13の貫通孔H1を構成する金具25に固定部材29のテーパ部29Cが当接して、長尺状弾性体3にハンドル5が固定される。また、長尺状弾性体3に引っ張り力が付加されていな状態では、長尺状弾性体3及び固定部材29の小径部29Aが帯状部材13の貫通孔H1内を移動できるようになっている。これと同様にハンドル7も長尺状弾性体3に固定される。これにより、本例では、ハンドル5の帯状部材13に形成された貫通孔H1が、長尺状弾性体3(ゴムチューブ4)の一端3C及び/または他端3Dが固定される被固定部26,28を構成する。
【0025】
本例のように、ハンドル5,7を長尺状弾性体3(ゴムチューブ4)の一端3C及び他端3Dに固定するための被固定部26,28として貫通孔H1を利用する場合は、長尺状弾性体3の両端3C,3Dが固定されない(被固定部26,28として利用しない)貫通孔H2は、連結構造31の一部である被係止部33,35を構成する。なお、ハンドル5,7を長尺状弾性体3の両端3C,3Dに固定するために、本例では、貫通孔H1を被固定部26,28として用いたが、長尺状弾性体3の一端3C及び/または他端3Dを貫通孔H2に挿入して、ハンドル5,7を長尺状弾性体3に固定してもよい(すなわち、貫通孔H2を被固定部として用いてもよい)。その場合は、貫通孔H1が被係止部を構成する。
【0026】
図9(A)及び(B)は、連結構造31の他の一部を構成する係止部材37の構造を示す。係止部材37は、被係止部33,35の貫通孔H2を緩く貫通する貫通部材39と、この貫通部材39の両端39A,39Bに取り付けられて手動で操作される操作部41とを備えている。貫通部材39は、両端39A,39B間に間隙G1を有するC字状の金属部材で構成されている[図9(B)参照]。この間隙G1は、係止部材37と被係止部33,35との係止及び係止の解除を可能とするため、貫通部材39の両端39A,39B間の距離寸法が被係止部33,35の厚み寸法よりも大きくなるように構成されている。そして、貫通部材39の両端39A,39Bには、操作部41が螺合する雄ネジ43,45が形成されている。
【0027】
操作部41は、本例では、貫通部材39の両端39A,39Bと螺合する金属製のナットで構成されている。操作部41(ナット)の内部には、貫通部材39に形成された雄ネジ43,45に螺合する図示しない雌ネジが形成されている。操作部41は、貫通部材39の両端39A,39Bに設けられて両端39A,39Bを解除可能に連結することにより後述の閉状態を形成する。なお、操作部41によってC字状の貫通部材39の両端39A,39Bが連結されている状態で、係止部材37の輪郭が楕円形状となっている[図9(A)参照]。
【0028】
このような構造を備える係止部材37は、操作部41の解除操作により開状態[図9(B)]となり、操作部41の連結操作により連結構造31が閉状態[図9(A)]となる。そのため、係止部材37が開状態のときに、係止部材37が被係止部33,35に係止可能となり、係止部材37が閉状態のときに、係止部材37と被係止部33,35との係止関係が解除できない状態にすることができる。本例では、このような被係止部33,35と係止部材37とからなる連結構造31を設けるため、一対のハンドル5,7を簡単な手動操作により解除可能に確実に連結することができる。また連結構造31では、被係止部33,35に係止部材37が係止され、かつ係止部材37が閉状態にある限り、被係止部33,35と係止部材37との係止関係が解除できないため、ハンドル3,5を連結した状態(長尺状弾性体3がループ状になった状態)を確実に維持することができる。さらに、本例ではC字状の貫通部材39が第2の貫通孔H2に緩く貫通する構造になっているため、被係止部33,35と係止部材37との係止または係止の解除が容易になる(すなわちハンドル9,11同士の結合または結合の解除が容易になる)。
【0029】
このような連結構造31を備える本例の運動用具1では、簡単な操作で、長尺状弾性体3をループ状にしたり(図10参照)、元の形態に戻すことができる(図1参照)。長尺状弾性体3をループ状にした場合は、例えばループ状にした長尺状弾性体3のループ内に、使用者が椅子に座っている状態で両足を入れ、運動用具1を使用者の両膝の近くまで上げて、使用者が両膝を左右に動かすことにより、膝及び脚のトレーニングを行うことができる。また、ループ状にした長尺状弾性体3のループ内に、使用者が両膝を折り曲げた姿勢で折り曲げた両膝を嵌めて、使用者が両膝を左右に動かすことによっても、膝及び脚のトレーニングを行うことができる。一方、ハンドル5,7を連結しない状態で(被係止部33,35と係止部材37との係止を解除した状態で)、使用者がハンドル5,7を両手でそれぞれ握って運動用具1を操作すれば、上半身(胸、背中等)のトレーニングを行うことができる。また、連結構造31によりハンドル5,7を連結すると、運動用具1がコンパクトになるため、運動用具1の保管または収納が容易になる。また、ハンドル5,7にそれぞれ被係止部33,35が設けられているため、ハンドル5,7のうちハンドル5の被係止部33に対する係止部材37の係止関係を解除するだけで、ハンドル5,7同士の連結を解除することができる。すなわち、ハンドル5の被係止部33に対する係止部材37の係止関係またはハンドル7の被係止部35に対する係止部材37の係止関係のいずれかの係止関係を解除するだけで、ハンドル5,7の連結を解除することができる。さらにハンドル5の被係止部33に対する係止部材37の係止関係を解除することに加えて、ハンドル7の被係止部35に対する係止部材37との係止関係も解除すれば、運動用具1から係止部材37を取り外すことができる。
【0030】
連結構造31の他の一部として用いる係止部材は、係止部材37に限定されるものではなく、係止部材37の代わりに他の係止部材を用いてもよい。図11(A)及び(B)は、他の係止部材の一例として係止部材38の構造を示す。係止部材38は、被係止部33,35の貫通孔H2を緩く貫通する貫通部材40と、この貫通部材40の両端40A,40Bを繋ぐように設けられて手動で操作される操作部42とを備えている。貫通部材40は、両端40A,40B間に間隙G2を有する扁平のC字状の金属部材で構成されている[図11(B)参照]。この間隙G2は、上述の係止部材37の間隙G1と同様に、係止部材38と被係止部33,35との係止及び係止の解除を可能とするため、貫通部材40の両端40A,40B間の距離寸法が被係止部33,35の厚み寸法よりも大きくなるように構成されている。
【0031】
係止部材38の形状は、係止部材37の同一の寸法を有する形状にしてもよく、また図11に示すような係止部材37の輪郭形状を変形した形状にしてもよい。この例では、係止部材38の輪郭形状は、操作部42によってC字状の貫通部材40の両端40A,40Bが操作部42によって連結されている状態で、操作部材37の輪郭形状を変形した楕円形状となる[図11(A)参照]。具体的には、係止部材38の輪郭形状は、貫通部材40の一方の端部40A側の湾曲部40Cの半径がよりも他方の端部40B側の湾曲部40Dの半径が大きい寸法を有する。係止部材38をこのような形状にするのは、操作部42の移動範囲をできるだけ大きくして(間隙G2の距離寸法を可能な限り大きくして)、係止部材38と被係止部33,35との係止及び係止の解除を容易にするためである。
【0032】
貫通部材40の一方の端部40Aには、操作部42の一方の端部42Aを回転可能に支持する支持部44が設けられている。また、貫通部材40の他方の端部40Bには、操作部42の他方の端部42Bが当接する当接部46が形成されている。支持部44は、ばね機構を備える公知のヒンジで構成されている。このような支持部44の存在により、操作部42が操作されないときは、操作部42の他方の端部42Bの端面が貫通部材40の他方の端部40Bの端面に当接するように付勢される[図11(A)参照]。本例では、操作部42が、上述の楕円形状を有する係止部材38の輪郭の内側方向にのみ移動できるように(係止部材38の輪郭の外側方向に移動できないように)、貫通部材40の他方の端部40Bがテーパ構造になっている[図11(A)及び(B)参照]。
【0033】
操作部42は、貫通部材40と同じ金属部材で構成されている。操作部42は、貫通部材40と同じ径寸法を有する。操作部42の他方の端部42Bは、貫通部材40の他方の端部40Bに対応したテーパ構造になっている[図11(A)及び(B)参照]。このテーパ構造により、操作部42は、一方の端部42Aを支持する支持部44を中心に係止部材38の輪郭の内側で回転することができる。
【0034】
このような係止部材38を連結構造31の一部として用いた場合は、操作部42の解除操作により開状態[図11(B)]となり、操作部42の連結操作により連結構造31が閉状態[図11(A)]となる。すなわち、係止部材38が開状態のときに、係止部材38が被係止部33,35に係止可能となり、係止部材38が閉状態のときに、係止部材38と被係止部33,35との係止関係が解除できない状態にすることができる。このような係止部材38を用いると、例えば操作部42を被係止部33及び/または被係止部35に押し当てるだけで係止部材38を開状態にすることができ、その後被係止部33,35の貫通孔H2に貫通部材40を貫通させた状態では係止部材38を閉状態にすることができる。言い換えると、係止部材38では、係止部材37のように操作部41を貫通部材39の端部39Aにネジ止めする操作またはネジ止めを解除する操作は必要ない。そのため、このような係止部材38を用いることにより、係止部材37を用いる場合よりもさらに簡単な操作で、一対のハンドル5,7の連結または連結の解除を行うことができる。
【0035】
図12は、本発明の運動用具の他の一例を示す図であり、図13は他の一例で使用するフープ部材の拡大図であり、図14は他の一例の運動用具の使用状態を示す図である。これらの図において、図1及び図10に示す運動用具1と共通する部分については、図1及び図10で使用した符号に100の数を加えた符号を付して説明を省略する。図12に示すように、運動用具101では、長尺状弾性体103(ゴムチューブ104)にフープ部材147が取り付けられている。フープ部材147は、両端147A,147Bに2つ貫通孔(第3の貫通孔H103及び第4の貫通孔H104)が形成された帯状部材149で構成されている。
【0036】
第3の貫通孔H103及び第4の貫通孔H104は、図13(A)に示すように、リング状の金具151及び153で構成されている。リング状の金具151及び153は、フープ部材147の両端147A,147Bをそれぞれ第1の金具半部151A,153Aと第2の金具半部151B,153Bとで挟むようにして、金具半部151A,153Aと第2の金具半部151B,153Bとをかしめて嵌合することにより構成する。リング状の金具151及び153の構造は、図7に示す貫通孔H1,H2を形成する金具25,27の構造と同じ構造になっている。
【0037】
帯状部材149は、図7に示す合成樹脂製の繊維からなる帯紐23と同様の材質が用いられている。帯状部材149の寸法は、フープ部材147が長尺状弾性体103に取り付けられた状態で、フープ部材147に対して使用者の片足の一部が挿入可能または使用者の手が挿入可能な寸法に定められている。帯状部材149は、図13(B)に示すように、帯状部材149の両端149A,149Bが内側に折り返された状態で接着及び/または縫製等の加工により構成された折り返し部149C,149Dを備える。この折り返し部149C,149Dには、折り返し部149C,149Dの厚み方向に貫通する図示しない2つの予備孔を予め設けておき、この2つの予備孔に対応して第3の貫通孔H103及び第4の貫通孔H104を形成する。
【0038】
このような帯状部材149の折り返し部149C,149Dと折り返し部149C,149Dに形成された第3及び第4の貫通孔H103,H104とによりフープ部材147の両端147A,147Bが構成される。そして、第3及び第4の貫通孔H103,H104に長尺状弾性体103が緩く貫通するようにフープ部材147が長尺状弾性体103に取り付けられている。このような構造のフープ部材147は、長尺状弾性体103に沿って長尺状弾性体103の長手方向に移動することができる。
【0039】
このような構造を有する運動用具101では、使用者が片足の一部を挿入した状態でフープ部材147を踏みつけることができる。そのため、使用者がフープ部材147を踏みつけた状態で、使用者がグリップ109,111を握って両手または片手を上下させれば、安定した姿勢で上半身(腕、背筋等)のトレーニングを行うことができる。また、連結構造131によりハンドル105,107を連結して長尺状弾性体103をループ状にした状態で、使用者がハンドル105,107の閉ループCL101に足を挿入してハンドル105,107のグリップ109,111を踏みつけて、グリップ109,111を一方の片手で握り、フープ部材を他方の片手で握り、使用者が両手を拡げる動作をすれば、腕のエキスパンド運動を行うことができる。したがって、このようなフープ部材147を設けることにより、トレーニングのバリエーションを増やすことができる。
【0040】
また、本例のようにフープ部材147を、長尺状弾性体3が緩く貫通する第3及び第4の貫通孔H103,H104がそれぞれフープ部材147の両端147A,147Bに形成された帯状部材149で構成すると、フープ部材147の両端147A,147Bが長尺状弾性体103に沿って長尺状弾性体103の長さ方向に動くことができる。そのため、使用者がフープ部材147に足の先端を挿入してフープ部材147を踏みつけた状態で長尺状弾性体103に引っ張り力を付加するようにハンドル105,107を操作すると、フープ部材147を構成する帯状部材149の両端147A,147Bが近づき、帯状部材149によって使用者の足が両側から締め付けられる。そのため、使用者は、トレーニングを行う際に、使用者の足のサイズまたは使用者の体力と関係なく、フープ部材147に挿入した足を保持することができる。
【0041】
なお、本発明の他の一例では、連結構造131の他の一部を構成する係止部材として、係止部材37と同様の構造を有する係止部材137を用いている。しかしながら、本発明の他の一例で用いる係止部材の態様は、この係止部材137に限定されるものではなく、係止部材137の代わりに図11(A)及び(B)に示す係止部材38を用いてもよいのは勿論である。すなわち、本発明の実施の形態で用いた部材については、これらの部材に限定されるものではなく、本発明の技術思想と同一の範囲内に含まれる限り、本発明の実施の形態で用いた部材以外の部材を用いることができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、一対のハンドルを任意の手動操作により解除可能に連結する連結構造を備えるため、この連結構造により一対のハンドルを連結すると、運動用具の長尺状弾性体をループ状にすることができる。そのため、一対のハンドルの連結を解除した状態で使用者がハンドルを握って運動用具を操作すれば、従来の上半身を鍛えるトレーニングを行うことができ、一対のハンドルを連結した状態で使用者がループ状の長尺状弾性体に両脚を入れて両膝を動かすように運動用具を操作すれば、さらに下半身を鍛えるトレーニングを行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1,101 運動用具
3 長尺状弾性体
3C 一端
3D 他端
4 ゴムチューブ
5,7 ハンドル
9,11 グリップ
9A,9B 端部
13,15 帯状部材
13A,15A 中央部
13B,15B 部分
CL1 閉ループ
26 被固定部
31 連結構造
33,35 被係止部
H1 第1の貫通孔
H2 第2の貫通孔
37 係止部材
39 貫通部材
41 操作部
147 フープ部材
H103 第3の貫通孔
H104 第4の貫通孔
149 帯状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の長尺状弾性体と、
前記1以上の長尺状弾性体の両端にそれぞれ固定された一対のハンドルとを具備する運動用具であって、
前記一対のハンドルを手動操作により解除可能に連結する連結構造を備えていることを特徴とする運動用具。
【請求項2】
前記連結構造は、前記一対のハンドルにそれぞれ設けられた一対の被係止部と、前記一対の被係止部に係止される係止部材とからなり、
前記係止部材は、手動で操作される操作部を備えており、前記操作部の解除操作により開状態となり、前記操作部の連結操作により閉状態となる構造を有しており、
前記係止部材が前記開状態にあるときに、前記一対の被係止部に前記係止部材が係止可能となり、前記係止部材が前記閉状態にあるときに、前記一対の被係止部と前記係止部材との係止関係が解除できない状態になるように、前記一対の被係止部と前記係止部材が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の運動用具。
【請求項3】
前記一対の被係止部は、それぞれ貫通孔を備えており、
前記係止部材は前記一対の被係止部の前記貫通孔を緩く貫通するC字状の貫通部材を備えており、
前記操作部は前記貫通部材の両端に設けられて前記両端を解除可能に連結することにより前記閉状態を形成するように構成されている請求項2に記載の運動用具。
【請求項4】
前記1以上の長尺状弾性体は、1本のゴムチューブからなり、
前記ハンドルは、グリップと該グリップの両端部から延びて前記グリップと閉ループを構成する帯状部材とからなり、
前記帯状部材の長手方向の中央部には、前記ゴムチューブの一端が固定される被固定部が設けられ、前記被固定部と前記グリップの前記両端部の一方の端部との間に位置する前記帯状部材の部分には前記貫通孔が設けられている請求項3に記載の運動用具。
【請求項5】
前記1以上の長尺状弾性体には、該長尺状弾性体の長手方向に移動可能で且つ使用者の足の一部が挿入可能または使用者の手が挿入可能な構造を有するフープ部材が取り付けられている請求項1に記載の運動用具。
【請求項6】
前記フープ部材は、両端に前記長尺状弾性体が緩く貫通する貫通孔がそれぞれ形成された帯状部材からなる請求項5に記載の運動用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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