説明

運動量計算機能付き携帯機器

【課題】 GPS、PHS等の機能を必要とせずに携帯する人の正確な運動量を測定できる運動量計算機能付き携帯電話を提供する。
【解決手段】 加速度を計測する三次元加速度センサ1と、計測された加速度データに基づいて移動速度及び移動距離を算出する移動距離計算部2と、三次元加速度センサ1により計測された加速度データに基づいて振動データを算出し、この振動データ及び移動距離計算部の算出した移動速度に基づいて移動手段を推測する移動手段推測部3と、移動速度、移動距離及び移動手段に基づいて運動量を算出する運動量計算部5と、この運動量計算部5の算出した運動量を表示する表示処理部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯されるのみで、携帯する人の状況を判断して運動量を算出し、記憶、画面表示等を行う運動量計算機能付き携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器により運動量を測定する技術として、携帯している人の歩数をカウントして表示を行う万歩計(登録商標)機能を備えた携帯電話がある。また、特許文献1に開示されるように、加速度センサ、角速度センサ、大気圧センサに加えてGPS(Global Positioning System)、PHS(Personal Handyphone System)等の位置情報検出機能を備え、移動経路、移動状態、移動手段を推定する移動経路推定装置がある。
【0003】
さらに、特許文献2に開示されるように、別途装置として携帯される携帯型消費カロリー計測装置がある。これは、携帯する人の運動に伴う多方向からの衝撃を検出する衝撃計測手段によって生成される計測データ、手動入力手段を介して入力される生活データ、およびメモリに保持される基礎データに基づいて、消費カロリーを計算する装置である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−48589号公報
【特許文献2】特開平10−33514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の万歩計(登録商標)機能を備えた携帯電話は、内部の加速度センサ等を用いて、携帯する人の歩行を計測して歩数をカウントし、その結果をメモリに記憶して、その画面に表示するのみであった。そのため、携帯する人が歩いているのか走っているのか等の判断ができず、また自転車に乗って走行している間は振動等による誤カウント以外はほとんど歩数がカウントされないという問題がある。したがって、画面への表示結果のみではどれほどの運動量を行ったかを判断することができないという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示される携帯型消費カロリー計測装置では、加速度センサから取得した瞬間の振動データに基づいて装置を携帯する人の状態を判断するため、例えば携帯する人が歩いているのか立ち止まって足踏みしているのか等の判断が難しく、間違って判断される場合があった。よって、間違って判断された状態に応じた係数を採用して消費カロリーを計算してしまい、計算結果に誤差が生じる可能性があるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2において、携帯する人の状態の判断材料を振動データのみではなく、特許文献1に示される移動経路推定装置のようにGPS、PHS等の機能を使用して取得した位置情報データも加えて判断するとしても、GPS、PHS等の機能では未だ細かい位置情報を取得することは困難であり、また坂道、階段の上り/下り等は判断できない、監視間隔が長くなるので正確な状態推測は難しい等の課題もあった。また、GPS、PHS等の機能を必要とするのでシステムが複雑になってしまうという課題もあった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、GPS、PHS等の機能を必要とせずに携帯する人の正確な運動量を測定できる運動量計算機能付き携帯機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る運動量計算機能付き携帯機器は、加速度を計測する加速度センサと、加速度センサにより計測された加速度データに基づいて、移動速度および移動距離を算出する移動距離計算部と、加速度センサにより計測された加速度データに基づいて振動データを算出し、この振動データ及び移動距離計算部の算出した移動速度に基づいて移動手段を推測する移動手段推測部と、算出した移動速度、移動距離及び前記移動手段に基づいて、運動量を算出する運動量計算部と、この運動量計算部の算出した運動量を表示する表示処理部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、運動量計算機能付き携帯機器が、加速度を計測する加速度センサと、加速度センサにより計測された加速度データに基づいて、移動速度および移動距離を算出する移動距離計算部と、加速度センサにより計測された加速度データに基づいて振動データを算出し、この振動データ及び移動距離計算部の算出した移動速度に基づいて移動手段を推測する移動手段推測部と、算出した移動速度、移動距離及び前記移動手段に基づいて、運動量を算出する運動量計算部と、この運動量計算部の算出した運動量を表示する表示処理部とを備えるように構成したので、GPS、PHS等の機能を必要とせずに携帯機器を携帯するのみで、携帯する人の移動に伴う運動量を正確に計算し、画面に表、グラフ等で表示することで容易に正確な運動量を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器のブロック図である。図に示すように、運動量計算機能付き携帯機器は、三次元加速度センサ(加速度センサ)1、移動距離計算部2、移動手段推測部3、時計4、運動量計算部5、データ記憶部6、表示処理部7、携帯機器画面8を備える。
【0012】
三次元加速度センサ1は、自身が実装された携帯機器の移動方向、移動速度、移動に伴う振動等の情報を得るために、x,y,z方向の加速度を計測する。移動距離計算部2は、三次元加速度センサ1から取得する加速度データに基づいて移動速度を計算し、さらにその速度を積算して移動距離を算出する。移動手段推測部3は、三次元加速度センサ1からの加速度データに基づいて、移動に伴う振動データ、上り下りなどの三次元移動方向データを算出し、この振動データ及び移動距離計算部2が算出した移動速度と合わせて、携帯機器を持つ人の移動手段を推測する。
【0013】
時計4は、移動距離計算部2が移動速度、移動距離を計算するため、または移動手段推測部3が携帯機器を持つ人の移動手段を推測するために必要な時間を提供する。運動量計算部5は、移動距離計算部2からの移動速度、移動距離、移動手段推測部3からの移動手段に基づいて運動量を計算する。データ記憶部6は、内蔵メモリ6a、外部メモリユニット6bを備え、移動距離計算部2が算出した移動速度、移動距離、移動手段推測部3が推測した移動手段、および運動量計算部5が算出した運動量データを、時計4からの時刻データ毎に記憶する。
【0014】
表示処理部7は、データ記憶部6に保存されるデータを読み出し、表、グラフ等の表示データを生成する。携帯機器画面8は、表示処理部7が生成した表、グラフ等の表示データを表示する携帯機器の画面である。
【0015】
次に、各構成要素の動作を詳細に説明する。
三次元加速度センサ1は、実装された携帯電話の動きとして加速度を、各々垂直のx,y,zの三方向で検出するセンサであり、計測した加速度データを、随時、例えば0.5秒毎に移動距離計算部2、移動手段推測部3に送る。
【0016】
移動距離計算部2は、三次元加速度センサ1から随時送られる加速度データを受け取ると、それに基づいて移動速度を算出する。さらに、算出した移動速度を積算して移動距離を算出する。
【0017】
図2は、移動距離計算部2で算出された移動速度と測定開始からの経過時刻との関係の例を表すグラフである。移動距離計算部2は、三次元加速度センサ1から送られた加速度データに基づいて、移動速度s(km/h)を算出する。移動速度を算出する時間間隔をΔt(秒)とすると、その間の移動距離ΔLは、次式で表される。
Δt間の移動距離 ΔL=s×Δt/3600
【0018】
続いて、移動距離計算部2は、算出した移動距離ΔLを測定開始から現在まで全て積算することで、測定開始地点からの移動距離Lを算出する。移動距離Lは次式で表される。
移動距離 L=ΣΔL
【0019】
このように積算することで、移動距離計算部2は、ほぼ正確に移動距離を算出できる。移動距離計算部2は、算出した移動速度、移動距離を、移動手段推測部3、運動量計算部5およびデータ記憶部6に送る。
【0020】
移動手段推測部3は、携帯機器を携帯する人の移動手段に関する情報を予め保持する。例えば、徒歩、ランニング、自転車走行、電車乗車などの移動手段毎の移動速度、振動データを保持する。移動手段推測部3は、三次元加速度センサ1から加速度データを受け取ると、それに基づいて移動に伴う振動データを算出する。続いて、この振動データ及び移動距離計算部2が算出した移動速度を、予め保持した移動手段に関する情報と比較して、携帯機器を携帯する人の移動手段を推測する。
【0021】
図3は、移動手段推測部3が算出した移動に伴う振動データと測定開始からの経過時刻との関係の例を表すグラフである。移動手段推測部3は、三次元加速度センサ1から送られた加速度データに基づいて、図3のような振動データを算出する。移動手段推測部3は、算出した振動データ、移動距離計算部2から送られる移動速度及びそれらの変化を、予め保持した徒歩、ランニング、自転車などの移動手段毎の振動データ、移動速度及びそれらの変化と照らし合わせて移動手段を推測する。図3の例では、a期間はランニング、b期間は停止、c期間は自転車走行であると推定したことを示す。移動手段推測部3は、推測した移動手段と、算出した振動データを、運動量計算部5及びデータ記憶部6に送る。
【0022】
また、移動手段推測部3は、三次元加速度センサ1から加速度データに基づいて、振動データの他、上り下りなどの三次元移動方向データを算出するように構成しても良い。
この場合、移動手段推測部3は、算出した振動データ、三次元移動方向データ、及び移動距離計算部2が算出した移動速度を、予め保持した移動手段に関する情報と比較して、携帯機器を携帯する人の移動手段を推測する。
【0023】
運動量計算部5は、移動手段、移動速度、上り下りなどの三次元移動方向データに応じて、運動量を算出するための係数を格納するデータベースを保持する。図4は、運動量計算部5が保持するデータベースの例を示す図である。運動量計算部5では、移動手段推測部3から入力した移動手段、上り下りなどの三次元移動方向データ、移動距離計算部2から入力した移動速度に対応する係数を前述したデータベースから読み出し、移動距離計算部2から入力した移動距離にその係数を掛けた値を運動量として算出する。算出した運動量は、データ記憶部6に送られる。
【0024】
データ記憶部6では、移動距離計算部2から送られる移動速度、移動距離、移動手段推測部3から送られる移動手段、時計4から送られる時間情報、運動量計算部5から送られる運動量情報を、時計4からの時刻毎に内蔵メモリ6aおよび外部メモリユニット6bに記憶する。図5は、データ記憶部6が記憶するデータの例を示す図である。図に示すように、データ記憶部6は、一定時間毎に、例えば日付、時刻、移動手段、移動速度、移動距離、運動量の各データを保持する。図5では測定開始時から0.5秒毎の各データを保持する。
【0025】
表示処理部7は、データ記憶部6に記憶されるデータを読み出して、表、グラフ等の表示データを作成する。具体的には、データ記憶部6に保存される時刻毎の移動手段、移動速度、移動距離、運動量の各データを読み出し、各時刻における移動手段を確認して、連続して同一の移動手段であるデータを抜き出し、その時刻間の移動速度、移動距離、運動量を集計して表示データを作成する。ここでは、時刻「11:32:25.0」〜「12:18:13.0」の間は移動手段が「徒歩」であるので、この間の各項目を集計している。例えば、移動速度には平均値、移動距離および運動量には合計値を算出してもよい。
【0026】
図6は、表示処理部7が作成した表示データを携帯機器画面8に表示させた例を示す図である。ここでは12月18日の運動量表示(2/8頁)を示す。表示処理部7が集計したように、12月18日の時刻11:32〜12:18において携帯機器を携帯した人の、移動手段は徒歩、移動速度は4.83km/h、移動距離は3,708m、運動量は34kcalであることが表示される。「戻る」ボタンで前項へ、「次へ」ボタンで次項へ、「メニュー」ボタンでメニューへ、画面が移行するようにしてもよい。
【0027】
図7は、表示処理部7が運動量を棒グラフで表した表示データを作成して携帯機器画面8に表示させた例を示す図である。図に示すように、表示処理部7は、例えばデータ記憶部6に保存される時刻毎の運動量を日付毎に集計して棒グラフを作成し、月毎に表示するようにしてもよい。このように表示すると、利用者は各月の日付毎の運動量を一目で把握できるようになる。
【0028】
以上のように、この実施の形態1によれば、三次元加速度センサ1が検出した加速度データに基づいて、移動速度、移動距離を算出し、移動手段を推測し、これらに基づいて運動量計算部5が運動量を算出し、さらに運動量に関する表等を携帯機器画面8に表示するようにしたので、従来のようにGPS、PHS等の機能を必要とせず簡易な装置によって携帯機器を携帯する人の細かい動きを把握でき、運動量を算出することができる効果が得られる。
【0029】
また、移動手段の推測は、移動速度、移動距離、振動データに基づいて行われるので、移動手段の推測を誤る可能性は少なく、ほぼ正確な運動量を算出することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器のブロック図である。
【図2】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器の移動距離計算部で算出された移動速度と測定開始からの経過時刻との関係の例を表すグラフである。
【図3】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器の移動手段推測部が算出した振動データと測定開始からの経過時刻との関係の例を表すグラフである。
【図4】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器の運動量計算部が保持するデータベースの例を示す図である。
【図5】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器のデータ記憶部が記憶するデータの例を示す図である。
【図6】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器の表示処理部が作成した表示データを携帯機器画面に表示させた例を示す図である。
【図7】同実施の形態1による運動量計算機能付き携帯機器の表示処理部が作成した別の表示データを携帯機器画面に表示させた例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 三次元加速度センサ(加速度センサ)、2 移動距離計算部、3 移動手段推測部、4 時計、5 運動量計算部、6 データ記憶部、6a 内蔵メモリ、6b 外部メモリユニット、7 表示処理部、8 携帯機器画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度を計測する加速度センサと、
前記加速度センサにより計測された加速度データに基づいて、移動速度および移動距離を算出する移動距離計算部と、
前記加速度センサにより計測された加速度データに基づいて振動データを算出し、この振動データ及び前記移動距離計算部の算出した移動速度に基づいて移動手段を推測する移動手段推測部と、
前記算出した移動速度、移動距離及び前記移動手段に基づいて、運動量を算出する運動量計算部と、
この運動量計算部の算出した運動量を表示する表示処理部とを備えたことを特徴とする運動量計算機能付き携帯機器。
【請求項2】
加速度センサは、三次元方向を計測し、
移動手段推測部は、前記加速度センサにより計測された加速度データに基づいて三次元移動方向データを算出し、この三次元移動方向データ、振動データ及び移動距離計算部の算出した移動速度に基づいて移動手段を推測することを特徴とする請求項1記載の携帯機器。
【請求項3】
移動速度、移動距離又は移動手段並びに運動量を対応付けて所定時間毎に記憶するデータ記憶部を備え、
表示処理部は、所望の期間、前記データ記憶部に記憶された移動速度、移動距離又は移動手段並びに運動量を表示することを特徴とする請求項1記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−320566(P2006−320566A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147075(P2005−147075)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】