説明

運搬台車

【課題】円筒状重量物を安全かつ作業性よく運搬できる運搬台車を提供する。
【解決手段】本運搬台車は車収容場所に搬入、搬出される円筒状重量物Pを運搬するもので、車輪2を備えた台車本体3の上端に分離可能に取り付けられ、円筒状重量物Pを吊持する吊持手段4と、台車本体3に設けられ、円筒状重量物Pを傾けた状態で保持する保持手段5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運搬台車に係り、特にチョクラルスキー法によるシリコン単結晶引上げ炉に対して出し入れされる石英管などを運搬するのに適する運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶ウェーハは、例えばチョクラルスキー(CZ)法によりシリコン単結晶を引上げて製造される。CZ法では、先ず、石英ルツボ内に原料の多結晶シリコンを充填し、石英ルツボを支持する黒鉛ルツボの外周にある円筒状の黒鉛ヒーターで、多結晶シリコンを加熱し、溶融する。
【0003】
次いで、種結晶をシリコン融液に浸して絞り部を形成あるいは無転移化した後、必要な直径と長さになるまでシリコン単結晶を成長させる。
【0004】
このCZ法において、シリコン単結晶の製造コストを低減するためには、シリコン単結晶引上げに伴うルツボ内のシリコン融液の減少分を供給するため、供給管を設けてルツボ内へ粒状の多結晶原料を、融液減少量に応じて供給する引上げ装置が知られている。
【0005】
この装置のーつとして、シリコン単結晶成長中の石英ルツボ内の融液に、連続的に粒状原料を供給しながら単結晶を成長させる、いわゆる連続チャージ(CCCZ)法があり、単結晶の製造歩留を著しく向上させて、その製造コストを大幅に低減できる。なお、多結晶原料を追加充填することをリチャージという。
【0006】
他のリチャージ法としては、棒状多結晶原料(ロッド状原料)を吊り下げてルツボ内に残余しているシリコン融液に浸しながら、徐々に溶融させて追加充填するロッドチャージ(RCCZ)法(非特許文献1)、ルツボ内に残存したシリコン融液の表面を一度固化させた後、その表面に、ルツボ上に設けられた供給管から多結晶原料をルツボ内にリチャージする方法(特許文献1)などがあり、それらの中でもリチャージのための追加装置が大掛かりでなく、また単結晶製造装置内に取り入れ取り出しが簡単に行え、ナゲット状及びまたは粒状(固形状)原料をルツボ内の固化した融液面に直接投入することができる、石英管を用いたリチャージ法が多用されている。
【0007】
このリチャージ法に用いられる石英管は、内部に固形状多結晶原料を収容する円筒状のリチャージ管本体と、本体下方端部に脱着可能な弁と本体の上方端部を封止する蓋からなり、これらの中心を貫くようにワイヤが配置、固定される仕組みとなっており、従来はこの石英管を運搬するため、および多結晶原料を充填するときに使用する専用の運搬台車が必要となる。この運搬台車は石英管一式を固定保持でき、なおかつ充填作業が行い易いように傾けた状態でもなお固定保持できる機構を有している(特許文献2)。
【0008】
この特許文献2に記載の運搬台車を用いて、石英管を用いたリチャージ方法における石英管の運搬および多結晶原料の充填作業を行う場合、次のような不都合がある。
【0009】
すなわち、石英管に多結晶原料を充填しているときは石英管を運搬台車に固定し充填作業が行える可能な角度まで傾け、運搬台車はその状態を保持できる機構を備えているが、運搬台車を収納もしくは石英管を載せた状態で保持する場合は、本来石英管の最大径より少し大きいくらい(矩形台車の幅程度)の面積があれば足りるが、石英管を立てた状態であっても、台車と石英管を傾けて保持する保持機構を備え、石英管以外の領域も占めるため、保管、保持スペースの確保に問題があった。また、石英管に多結晶原料を充填する際に誤って石英管を破損させ、または石英管を運搬台車から引上げ炉へ搬入する際に誤って石英管を破損させ、あるいは落下させてしまった場合、石英片が飛散するという危険があった。
【特許文献1】特開昭62−260791号公報
【特許文献2】特開平5−278617号公報
【非特許文献1】Fumio Shimura, Semiconductor Crystal Technology,p178−p179, 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、円筒状重量物を安全かつ作業性よく運搬できる運搬台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係る運搬台車は、収容場所に搬入され、あるいは収容場所から搬出される円筒状重量物を運搬するための運搬台車において、車輪を備えた台車本体と、この台車本体の上端に分離可能に取り付けられ、円筒状重量物を吊持する吊持手段と、前記台車本体に設けられ、円筒状重量物を傾けた状態で保持する保持手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る運搬台車によれば、円筒状重量物を安全かつ作業性よく運搬できる運搬台車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る運搬台車について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る運搬台車の側面図であり、図2はその正面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明に係る運搬台車1は、車輪2を備えた台車本体3と、この台車本体3の上端に分離可能に取り付けられ、円筒状重量物例えばシリコン多結晶原料が収容される石英管Pを吊持する吊持手段4と、台車本体3に設けられ、円筒状重量物を傾けて保持する保持手段5を備える。
【0016】
台車本体3は一対の細長い背板6と、この背板6を平行かつ強固に固定する複数本の固定部材7からなり、上端には支持アーム受8が設けられ、中央上部には取手9が設けられ、さらに、下端には運搬台車1の直立時、床面と当接して車輪2を床から浮かし運搬台車1を支持する底部板10が設けられる。
【0017】
吊持手段4は、石英管Pを遊挿し吊持するワイヤ11と、このワイヤ11の上端に設ける吊り輪11aを介してワイヤ11を支持するワイヤ支持部材12と、このワイヤ支持部材12が固着された一対の支持アーム13からなり、支持アーム13は支持アーム受8に扁平幅広の頭部を有するねじ14により分離可能に螺着され、支持アーム13に設けられる螺孔(図示せず)は長孔をなし、図1において支持アーム13を左右水平に移動することで、支持アーム13の固定位置の調整が可能であり、ワイヤ支持部材12を介して、ワイヤ11は水平方向に微調整可能である。
【0018】
保持手段5は石英管Pの上部および下部に対応する運搬台車1の背部位置に設けられ、傾けた状態で石英管Pを保持する一対の重量物保持部材15からなり、この重量物保持部材15はY字形状をなし、その二股で石英管Pを支持する。
【0019】
石英管Pを覆う例えばアクリル製コ字状有底のシールド板16が台車本体3に着脱自在に設けられる。
【0020】
図3に示すように、運搬台車1は、石英管Pへの多結晶原料充填時、傾けた状態で保持されるが、その保持には台車保持台17が用いられ、図4および図5に示すように、台車保持台17は、車輪2を収納する収納凹部18aが設けられた平面略コ字状の保持台本体18に一端で軸支され車輪2の車軸2aを固定するフック19と、保持台本体18に一端で軸支され、他端に設けられた切欠リング状の係合部20aを台車本体3に設けた係合ピン21に係合することで、台車本体3を傾けた状態で保持する台車保持アーム20を備える。なお、石英管Pは脱着自在な底蓋p1、上蓋p2を備える。
【0021】
次に本運搬台車の使用方法について説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、吊持手段4のワイヤ11を介して石英管Pをワイヤ支持部材12に直立状態で懸吊する。石英管Pはシールド板16により覆われる。
【0023】
しかる後、多結晶原料の塊を石英管Pに充填するが、このとき、図3に示すように、作業者の作業をし易くするため、台車保持台17を用いて、フック19により車輪2を固定し、台車保持アーム20により台車本体3を傾けた状態で保持して、運搬台車1を傾けた状態で保持する。運搬台車1を傾けることにより、石英管Pは重量物保持部材15により傾いた状態で保持され、この状態で、石英管Pの上端開口から多結晶原料の塊を充填する。
【0024】
多結晶原料の充填完了後、運搬台車1を台車保持台17から外して、運搬台車1の取手9を握り、石英管Pをシリコン単結晶引上げ炉まで運搬する。そこで、底部板10を床面に当接させて、車輪2を浮かし、運搬台車1および石英管Pを直立する。
【0025】
しかる後、ねじ14を外し、支持アーム13とともにワイヤ支持部材12を外して、石英管Pを台車本体3から取り外し、取り外した石英管Pをシリコン単結晶引上げ炉にセットする。
【0026】
また、空になった石英管Pをシリコン単結晶引上げ炉から所定位置まで運び出す場合には上記とほぼ逆の手順で運搬を行う。
【0027】
上記のように、運搬台車1は、石英管P中に多結晶原料を充填する際、運搬台車1が石英管Pを吊り下げる吊持手段4と、石英管Pを傾けた状態で保持する保持手段5とを分離できることにより、運搬台車自体を傾けた状態で保持する機構を設ける必要がないことから、石英管Pを傾ける必要があるときだけ、台車保持台17を使用することにより、省資源、省スペース化が可能となり、運搬台車1の製作コストを削減できる。
【0028】
また、運搬台車1にシールド板を設けることにより、石英管Pの中に多結晶原料を充填している最中に石英管Pが破損し、あるいは、多結晶原料の充填が終わった石英管Pを引上げ炉内に搬入するために上方に吊り上げた際に石英管Pが落下、破損しても、石英片が飛散しても真下の運搬台車に取り付けてあるシールド板16の内側に落下するため、周囲に飛散することがなく安全である。さらに、収納、保管するにも省スペース化が可能であることから、作業能率の向上が期待できる。
【0029】
本実施形態に係る運搬台車によれば、円筒状重量物を安全かつ作業性よく運搬できる運搬台車が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る運搬台車の側面図。
【図2】本発明に係る運搬台車の正面図。
【図3】本発明に係る運搬台車を台車保持台を用いて傾斜状に保持した状態を示す側面図。
【図4】本発明に係る運搬台車の保持に用いる台車保持台の側面図。
【図5】本発明に係る運搬台車の保持に用いる台車保持台の平面図。
【符号の説明】
【0031】
1 運搬台車
2 車輪
3 台車本体
4 吊持手段
5 保持手段
8 支持アーム受
11 ワイヤ
11a 吊り輪
12 ワイヤ支持部材
13 支持アーム
14 ねじ
15 重量物保持部材
16 シールド
17 台車保持台
18 保持台本体
19 フック
20 台車保持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容場所に搬入され、あるいは収容場所から搬出される円筒状の重量物を運搬するための運搬台車において、車輪を備えた台車本体と、この台車本体の上端に分離可能に取り付けられ、円筒状重量物を吊持する吊持手段と、前記台車本体に設けられ、円筒状重量物を傾けた状態で保持する保持手段を備えることを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記台車本体に円筒状重量物を囲うシールド板が着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記車輪の車軸を固定するフックと、前記台車本体を傾けた状態で保持する台車保持アームを備えた台車保持台により、傾けた状態で保持されることを特徴とする請求項1または2に記載の運搬台車。
【請求項4】
前記収容場所は単結晶引上げ炉であり、円筒状重量物は石英管であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の運搬台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−253651(P2007−253651A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77222(P2006−77222)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】