説明

運搬用台車

【課題】ネスティング時の固定車輪の昇降がスムーズになる運搬用台車を提供する。
【解決手段】旋回車輪6が取り付けられた一対の旋回フレーム4a,4bと、それらを連結しながら固定車輪7が取り付けられた連結フレーム5と、上記連結フレーム5の一端部で片方の旋回フレーム4aに立設された支柱8aに対して上下動可能に嵌挿された筒状体9と、上記支柱8aの左右にそれぞれ軸支された回動部材10と、上記両回動部材10に取り付けられて上下回動するパレット2と、上記両回動部材10の上下回動動作に伴って連結フレーム5の筒状体9側を昇降させる昇降動作部材12とを備え、上記昇降動作部材12は、左右の回動部材10にそれぞれ軸支される軸支部13と、両側の軸支部13の間で連結フレーム5を下側から懸架する懸架部14とを含んで構成した。これにより、ネスティング時の固定車輪の昇降動作をスムーズにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後の旋回車輪の中間に固定車輪を配置してネスティングを可能とした運搬用台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流通業において商品の運搬や保管に使用される運搬用台車は、使用時には直進性が求められる一方、ネスティングと呼ばれる保管状態に移行する局面では、自在な方向転換性が求められる。このため、車体の前後の両隅部には方向転換可能な旋回車輪を取り付け、それらの中間に直進性を担保する固定車輪を取り付けた運搬用台車が用いられている。
【0003】
このような運搬用台車は、四隅の旋回車輪に対して固定車輪を昇降しうるように構成されている。積荷を運搬するときなどは、固定車輪を降ろして接地させ、それによる直進性を確保した状態で使用する。一方、ネスティングの際には、固定車輪を上げて床面から浮かせ、四隅の旋回車輪だけで自在に方向転換できる状態で使用する。
【0004】
上記のような運搬用台車として、例えば下記の特許文献1に示されたようなものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−137727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、つぎのような運搬用台車が記載されている。なお、括弧内の符号は公報記載のものである。
【0007】
すなわち、車台(80)の前後に前枠部(20)および後枠部(30)が立設され、上記車台(80)の前端部及び後端部にそれぞれ二対4輪の全方向自在車輪(54,64)が配置され、その中間部には一対2輪の中間車輪(56)が配置されている。上記車台(80)上に配置したパレット(90)を、後枠部(30)の根元部を軸に上方に回動可能とし、この回動させる動きに応じて中間車輪(56)を昇降させる。ネスティング時には、パレット(90)を上方に回動して中間車輪(56)を上方へ引き上げ、運搬時等にはパレット(90)を下方に回動させて中間車輪(56)を下方へ押し下げるようになっている。
【0008】
このように、パレット(90)の回動動作に伴い、全方向自在車輪(54,64)に対して中間車輪(56)を昇降させるため、以下の構成を採用している。
【0009】
一端がパレット(90)に固定され他端が後枠部(30)の接続部に回動可能に接続されてパレット(90)の回動に伴って回動する回動板(72)と、支柱(31)に沿って昇降することにより中間車輪(56)を昇降させるための筒状部(81)と、上記回動板(72)と筒状部(81)を連結する連結体(76)とを備えている。そして、連結体(76)の一端部に位置する筒形状部(77)に、回動板(72)に固定された枢軸(75)を挿入するとともに、上記連結体(76)の他端部に位置する筒形状部(78)に、上記筒状部(81)に固定された軸(82)を挿入している。
【0010】
これにより、ネスティング時にはパレット(90)を上方に回動する動きに応じて、筒状部(81)を引き上げ、使用時にはパレット(90)を下方に回動する動きに応じて、筒状部(81)を引き下げ、パレット(90)を上下に回動する動きに応じて中間車輪(56)を上下動させることを可能としている。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1記載のものでは、支柱(31)を筒状部(81)に挿通させた状態で筒状部(81)を上下動させるところ、筒状部(81)の左右に設けられた軸(82)にそれぞれ連結体(76)が取り付けられ、上記両連結体(76)をパレット(90)に取り付けた左右の回動板(72)の回動で引き上げるように構成されている。
【0012】
このため、パレット(90)回動の際に、パレット(90)がたわんで左右の回動板(72)の回動状態にずれが生じたときに、左右の連結体(76)の動作にもずれが生じる。こうなると、筒状部(81)左右の軸(82)にかかる引き上げ力が均一でなくなり、筒状部(81)が上下するときに左右にこじれてスムーズな昇降動作ができなくなるという問題がある。このような筒状部(81)のこじれは、経年使用が長くなって各パーツに劣化が始まるとますます酷くなり、結果的に運搬用台車事体の寿命に大きく影響するものである。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ネスティング時の固定車輪の昇降動作がスムーズで、製品寿命も長くなる運搬用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の運搬用台車は、
方向転換を可能とする旋回車輪が取り付けられた一対の旋回フレームと、
両旋回フレームを連結するとともに固定車輪が取り付けられた連結フレームと、
上記連結フレームの一端部に設けられ、片方の旋回フレームに立設された支柱に対して上下動可能となるよう嵌挿される筒状体と、
上記筒状体より上側で支柱の左右にそれぞれ軸支されて回動する回動部材と、
上記両回動部材に取り付けられて両旋回フレームの間で上下回動可能に設けられたパレットと、
上記両回動部材およびパレットが上下へ回動する動作に伴って連結フレームの筒状体側を昇降動作させる昇降動作部材とを備え、
上記昇降動作部材は、連結フレームより上側で左右の回動部材にそれぞれ軸支される両側の軸支部と、両側の軸支部の間で連結フレームを下側から懸架する懸架部とを含んで構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、昇降動作部材は、連結フレームより上側で左右の回動部材にそれぞれ軸支される両側の軸支部と、両側の軸支部の間で連結フレームを下側から懸架する懸架部とを含んで構成されている。このため、パレットおよび回動部材を上側に回動させる際に、パレットがたわんで左右の回動部材の回動状態にずれが生じたとしても、連結フレームは両側の軸支部の間で懸架部によって懸架されてまっすぐに持ち上げられるため、上記左右のずれが筒状体のこじれになりにくい。そして、経年使用が長くなって各パーツに劣化が始まっても、筒状体のこじれは生じ難く、運搬用台車自体の寿命も延長される。このように、ネスティング時の固定車輪の昇降動作がスムーズで、製品寿命も長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の運搬用台車の一実施形態を示す図であり、(A)は側面図、(B)はシャーシを上から見た図である。
【図2】上記運搬用台車を側面から見た図である。
【図3】上記運搬用台車の作用を説明する図である。
【図4】上記運搬用台車の要部を後ろから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜4は、本発明の運搬用台車の一実施形態を示す図である。
【0019】
この例に示す運搬用台車は、下面に6輪の車輪が取り付けられたシャーシ1と、上記シャーシ1に対して上方向に回動して跳ね上げ可能に設けられたパレット2と、上記シャーシ1の前後端部に立設された枠体3とを備えて構成されている。
【0020】
上記シャーシ1は、方向転換を可能とする旋回車輪6が取り付けられた一対の旋回フレーム4a,4bと、両旋回フレーム4a,4bを連結するとともに固定車輪7が取り付けられた連結フレーム5とを含んで構成されている。さらに、上記連結フレーム5は、両旋回フレーム4a,4bを連結する連結バー5aと、固定車輪7が取り付けられた車輪バー5bとを組み合わせることにより構成されている。
【0021】
上記両旋回フレーム4a,4bは、運搬用台車の進行方向(図示の矢印F)の前後に配置され、細長いフレーム部材が上記進行方向に対して直角に配置され、それぞれ左右端部近傍に旋回車輪6が取り付けられている。一方、上記連結フレーム5は、連結バー5aが上記進行方向に沿って配置され、車輪バー5bが上記進行方向に対して直角に配置され、連結バー5aと車輪バー5bが溶接やねじ止め等で固定されている。上記車輪バー5bの左右端部近傍には、シャーシ1を上記進行方向にのみ移動可能とするように移動方向が固定された固定車輪7が取り付けられている。そして、上記両旋回フレーム4a,4bには、それぞれの中央付近に連結フレーム5を構成する連結バー5aの前後端部がそれぞれ連結されている。
【0022】
このような構成により、上記シャーシ1は、全体として進行方向に細長い方形状のスペースを占めるものであり、その前後の四隅に旋回車輪6が取り付けられ、前後各一組の旋回車輪6の間に、一対の固定車輪7が取り付けられ、合計6輪の車輪が取り付けられたものとなっている。
【0023】
この運搬用台車では、後述するように、パレット2の跳ね上げ動作と戻し動作(上下への回動動作である)に伴って、上記シャーシ1の四隅の旋回車輪6に対し、中央の固定車輪7を昇降しうるように構成している。これにより、荷物を運搬するとき等の使用時は、パレット2を降ろして固定車輪7を下げて床面に接地させ、進行方向にのみ進むようにする。また、ネスティング時は、パレット2を跳ね上げて固定車輪7を上げて床から浮かせ、旋回車輪6だけが床面に接地した状態で自在な方向転換が可能なようにする。
【0024】
つぎに、パレット2の回動動作によって固定車輪7を昇降させる機構について詳しく説明する。
【0025】
上記シャーシ1の前後両端部の中央、すなわち、旋回車輪6が取り付けられた旋回フレーム4a,4bの中央部上面には、支柱8a,8bが立設されている。そして、上記連結フレーム5の一端部には、片方の旋回フレーム4aに立設された支柱8aに対して上下動可能となるよう嵌挿される筒状体9が設けられている。一方、連結フレーム5の他端部は、他方の旋回フレーム4bに立設された支柱8bに対し、溶接やねじ止め等で固定されている。この構造において、連結フレーム5の一端部に設けた筒状体9を支柱8aに沿って上向きにスライドさせて上昇させれば、連結フレーム5は他端部を軸として上向きに回動し、4つの旋回車輪6を床面に接地させたまま、2つの固定車輪7を床から浮き上がらせることができる。
【0026】
そして、上記筒状体9が嵌挿された支柱には、上記筒状体9よりも上側において、支柱8aの左右に、それぞれ回動部材10が軸支されて回動するようになっている。上記回動部材10は、側面視でL字状に形成されたプレート部材であり、L字の短片の先端に支柱8aへの軸支部11が設けられ、L字の長片に、パレット2の一端側がねじ固定されている。
【0027】
この構造で上記パレット2は、両回動部材10に取り付けられて両旋回フレーム4a,4bの間で上下回動可能に設けられている。すなわち、上記パレット2は、連結フレーム5の上に横にして積荷を載せうる状態から、上方に回動させて跳ね上げた状態にすることができる。このパレットの回動は、上記軸支部11を回動軸として回動部材10が回動する動作に伴って動作する。回動部材10は、パレット2を横にした状態でL字の長片が連結プレートに沿って横になり、パレット2を縦にした状態でL字の長片が支柱8aに沿って縦になる。
【0028】
上記両回動部材10には、両回動部材10およびパレット2が上下へ回動する動作に伴って連結フレーム5の筒状体9側を昇降動作させる昇降動作部材12が取り付けられている。上記昇降動作部材12は、左右の回動部材10にそれぞれ軸支される両側の軸支部13と、両側の軸支部13の間で連結フレーム5を下側から懸架する懸架部14と、両軸支部13と懸架部14を連結する連結部15とを含んで構成されている。
【0029】
このような構造により、パレット2を横にした状態から縦にするよう回動させると、それに伴い回動部材10が上方に回動する。この回動部材10の回動により、昇降動作部材12の軸支部13が上方に持ち上がり、懸架部14が連結フレーム5を下側から懸架して持ち上げる。これにより、筒状体9が支柱8aに沿って上向きにスライドし、連結フレーム5が他端部を軸として上向きに回動する。その結果、4つの旋回車輪6を床面に接地させたまま、2つの固定車輪7が床から浮き上がるのである。この状態では、4つの旋回車輪6だけが床面に接地しているので、台車を自在に旋回させ、ネスティングを容易にすることができる。
【0030】
使用するときには、パレット2を縦にした状態から横にするよう回動させる。これに伴い回動部材10が下方に回動し、昇降動作部材12が下方に下がり、連結フレーム5を下に降ろす。これにより、筒状体9が支柱8aに沿って下向きにスライドして、連結フレーム5が他端部を軸として下向きに回動する。その結果、2つの固定車輪7が床面に接地するのである。この状態では、2つの固定車輪7が床面に接地しているので、台車は前後方向にのみ動き、搬送を容易にすることができる。
【0031】
以上のように、本実施形態は、昇降動作部材12は、左右の回動部材10にそれぞれ軸支される両側の軸支部13と、両側の軸支部13の間で連結フレーム5を下側から懸架する懸架部14とを含んで構成されている。このため、パレット2および回動部材10を上側に回動させる際に、パレット2がたわんで左右の回動部材10の回動状態にずれが生じたとしても、連結フレーム5は両側の軸支部13の間で懸架部14によって懸架されてまっすぐに持ち上げられるため、上記左右のずれが筒状体9のこじれになりにくい。そして、経年使用が長くなって各パーツに劣化が始まっても、筒状体9のこじれは生じ難く、運搬用台車自体の寿命も延長される。このように、ネスティング時の固定車輪7の昇降動作がスムーズで、製品寿命も長くなる。
【0032】
上記実施形態では、固定車輪7を連結フレームの中央部に一対2輪設けたが、これに限定するものではなく、1輪でもよいし、3輪以上設けてもよい。また、旋回車輪6をシャーシ1の四隅に4輪設けるようにしたが、3輪以上であればよく、例えば5輪とすることもできる。
【0033】
上記実施形態では、シャーシ1を進行方向に細長い方形のスペースを占めるものとしたが、これに限定するものではなく、進行方向に短い方形のスペースを占めるものとすることもできるし、正方形のスペースを占めるものとすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1:シャーシ
2:パレット
3:枠体
4a:旋回フレーム
4b:旋回フレーム
5:連結フレーム
5a:連結バー
5b:車輪バー
6:旋回車輪
7:固定車輪
8a:支柱
8b:支柱
9:筒状体
10:回動部材
11:軸支部
12:昇降動作部材
13:軸支部
14:懸架部
15:連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向転換を可能とする旋回車輪が取り付けられた一対の旋回フレームと、
両旋回フレームを連結するとともに固定車輪が取り付けられた連結フレームと、
上記連結フレームの一端部に設けられ、片方の旋回フレームに立設された支柱に対して上下動可能となるよう嵌挿される筒状体と、
上記筒状体より上側で支柱の左右にそれぞれ軸支されて回動する回動部材と、
上記両回動部材に取り付けられて両旋回フレームの間で上下回動可能に設けられたパレットと、
上記両回動部材およびパレットが上下へ回動する動作に伴って連結フレームの筒状体側を昇降動作させる昇降動作部材とを備え、
上記昇降動作部材は、左右の回動部材にそれぞれ軸支される両側の軸支部と、両側の軸支部の間で連結フレームを下側から懸架する懸架部とを含んで構成されていることを特徴とする運搬用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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