説明

運搬用車両

【課題】円弧軌道に沿って左右方向へ横行走行しながら石炭を前後方向へ運搬する運搬作業を行う際、車体を安定させることが可能な運搬用車両を提供する。
【解決手段】車体11に、前後複数の走行用車輪15a,16aと、石炭を前後方向へ運搬するコンベヤ装置と、左右外側方へ張り出した支持安定装置35とが設けられ、支持安定装置35は、上下方向へ伸縮可能な支柱36と、支柱36を伸縮させるシリンダ装置と、支柱36の下端部に設けられ且つ左右方向へ転動自在な補助車輪38とを備え、支柱36を下向きに伸長することにより、補助車輪38が地面5に接地し、支柱36を上向きに短縮することにより、補助車輪38が地面5から上方へ離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走可能な車体に、石炭等の被運搬物を運搬するコンベヤ等の運搬装置が設けられた運搬用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の運搬用車両としては例えば図10〜図12に示すように、車体101にベルトコンベヤ装置102を設けたものがある。ベルトコンベヤ装置102の後端部には投入用ホッパー103が設けられている。投入用ホッパー103に投入された石炭104は、ベルトコンベヤ装置102によって車体101の後方から前方へ運搬され、ベルトコンベヤ装置102の前方から排出される。
【0003】
車体101には、前部走行用車輪105a,105bと後部走行用車輪106a,106bとがそれぞれ左右一対ずつ設けられている。各走行用車輪105a,105b,106a,106bはそれぞれ、縦軸心107周りに旋回可能に構成されている。各走行用車輪105a,105b,106a,106bを縦軸心107周りに旋回して前後方向へ換向することによって、運搬用車両108が前後方向へ縦行走行し、各走行用車輪105a,105b,106a,106bを縦軸心107周りに旋回して左右方向へ換向することによって、運搬用車両108が左右方向へ横行走行する。また、各走行用車輪105a,105b,106a,106bを縦軸心107周りに旋回して円弧軌道109に沿って平面視でハ字形状に換向することによって、図11に示すように、運搬用車両108が投入用ホッパー103を中心とした円の円弧軌道109上を左右方向Xへ横行走行する。
【0004】
例えば、港湾の岸壁110から停泊中の貨物船111に石炭104を積み込む際、運搬用車両108を岸壁110まで走行させて、ベルトコンベヤ装置102の前端部(排出部)を貨物船111の上方に位置させ、その後、ベルトコンベヤ装置102を作動させ、石炭104を投入用ホッパー103に投入する。これにより、石炭104が、ベルトコンベヤ装置102によって運搬され、ベルトコンベヤ装置102の前端部から貨物船111に排出される。
【0005】
上記のようにして石炭104をベルトコンベヤ装置102で運搬しながら、運搬用車両108を円弧軌道109に沿って左右方向Xへ横行走行させることにより、円弧状の広い範囲Wに石炭104を排出することができる。
【0006】
尚、下記特許文献1には自走可能な車体にベルトコンベヤ装置を設けた運搬用車両が記載されている。
【特許文献1】特開2001−80747
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、石炭104をベルトコンベヤ装置102で運搬しながら、運搬用車両108を円弧軌道109に沿って左右方向Xへ横行走行させている場合、車体101が不安定になるといった問題がある。
【0008】
尚、一般に、車体101の安定性を増すためにはアウトリガを用いて停車した車体101を支えることが考えられるが、運搬用車両108を走行させながらアウトリガを用いることはできない。したがって、アウトリガを設けたとしても、上記のように石炭104をベルトコンベヤ装置102で運搬しながら、運搬用車両108を円弧軌道109に沿って左右方向X(所定の作業方向)へ横行走行させている場合、運搬用車両108が不安定になるといった問題を解決することはできない。
【0009】
本発明は、所定の作業方向に走行しながら被運搬物を運搬する運搬作業を行う際、車体を安定させることが可能な運搬用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明は、所定の作業方向に走行しながら被運搬物を運搬する運搬作業を行う運搬用車両であって、
車体に、外側方へ張り出した支持安定装置が設けられ、
支持安定装置は、下向きに伸長し且つ上向きに短縮可能な支柱と、支柱を伸縮させる伸縮装置と、支柱の下端部に設けられ且つ上記所定の作業方向へ転動自在な補助車輪とを備え、
支柱を下向きに伸長することにより、補助車輪が走行面に接地し、支柱を上向きに短縮することにより、補助車輪が走行面から上方へ離間するように構成されているものである。
【0011】
これによると、運搬用車両を所定の作業方向に走行させながら運搬作業を行う際、支持安定装置の支柱を下向きに伸長させて補助車輪を走行面に接地させる。これにより、補助車輪が所定の作業方向へ転動しながら、補助車輪を介して運搬用車両が支柱で支えられる。このため、運搬用車両を所定の作業方向に走行させながら運搬作業を行っているときの車体の安定性が向上する。
【0012】
本第2発明は、左右方向に横行走行しながら被運搬物を前後方向へ運搬するものであり、
車体に、前後複数の走行用車輪と、被運搬物を前後方向へ運搬する運搬装置とが設けられ、
支持安定装置は、車体の左右両側に、左右外側方へ張り出して設けられ、
補助車輪は左右方向に転動自在であるものである。
【0013】
これによると、運搬用車両を左右方向に横行走行させながら、運搬装置で被運搬物を前後方向へ運搬する運搬作業を行う際、支持安定装置の支柱を下向きに伸長させて補助車輪を走行面に接地させる。これにより、補助車輪が左右方向へ転動しながら、補助車輪を介して運搬用車両が左右方向において支柱で支えられる。このため、運搬用車両を左右方向に横行走行させながら運搬装置で運搬作業を行っているときの車体の安定性が向上する。
【0014】
本第3発明は、伸縮装置としてシリンダ装置が用いられ、
シリンダ装置のピストンロッドが下向きに突出することにより、支柱が下向きに伸長し、上記ピストンロッドが上向きに退入することにより、支柱が上向きに短縮するように構成され、
シリンダ装置は、その内部に、ピストンロッドを突出させる突出側作動流体圧室と、ピストンロッドを退入させる退入側作動流体圧室とを有し、
ピストンロッドの突出と退入とを切換える切換弁が設けられ、
切換弁は、A,B,P,Rポートを有するとともに、ピストンロッドを突出させる一方の切換位置と、ピストンロッドを退入させる他方の切換位置とに切換え自在であり、
突出側作動流体圧室とAポートとが突出側接続配管を介して接続され、
退入側作動流体圧室とBポートとが退入側接続配管を介して接続され、
シリンダ装置へ作動流体を供給する作動流体供給装置とPポートとが供給側配管を介して接続され、
シリンダ装置から排出された作動流体を回収する回収側配管がRポートに接続され、
供給側配管に、突出側接続配管内の圧力を規定圧に保つ減圧弁が設けられ、
突出側接続配管内の圧力を逃がすリリーフ弁が設けられているものである。
【0015】
これによると、切換弁を一方の切換位置に切換えることにより、作動流体が、作動流体供給装置から供給側配管を通って切換弁のPポートへ流れ込み、Aポートから突出側接続配管を通ってシリンダ装置の突出側作動流体圧室に供給される。また、シリンダ装置の退入側作動流体圧室内の作動流体が、退入側接続配管を通って切換弁のBポートへ流れ込み、Rポートから回収側配管を通って回収される。これにより、シリンダ装置のピストンロッドが突出して支柱が下向きに伸長し、補助車輪が走行面に接地する。
【0016】
この際、作動流体供給装置から切換弁のPポートへ供給される作動流体の圧力は減圧弁によって設定圧に減圧され、突出側接続配管内の圧力が上記設定圧に応じた規定圧に保たれる。これにより、ピストンロッドの下向きの突出力が一定に保たれるため、補助車輪が走行面に押付けられる押付力をほぼ一定にすることができる。したがって、上記ピストンロッドの突出力が強過ぎて走行用車輪が走行面から浮上ったり或いは補助車輪に過大な荷重が懸かるのを防止することができる。
【0017】
上記のように補助車輪を走行面に接地させて、運搬用車両を所定の作業方向に走行させながら運搬作業を行っているとき、例えば補助車輪が大きな石等の障害物に乗り上げてシリンダ装置のピストンロッドが外側から退入方向(すなわち下から上方向)へ押されると、シリンダ装置の突出側作動流体圧室内の圧力が異常に上昇する。この際、突出側作動流体圧室内の圧力とともに突出側接続配管内の圧力も異常に上昇するため、リリーフ弁が作動して突出側接続配管内の圧力を逃がす。これにより、突出側作動流体圧室内の圧力が正常な規定圧に保たれる。
【0018】
また、切換弁を他方の切換位置に切換えることにより、作動流体が、作動流体供給装置から供給側配管を通って切換弁のPポートへ流れ込み、Bポートから退入側接続配管を通ってシリンダ装置の退入側作動流体圧室に供給される。また、シリンダ装置の突出側作動流体圧室内の作動流体が、突出側接続配管を通って切換弁のAポートへ流れ込み、Rポートから回収側配管を通って回収される。これにより、シリンダ装置のピストンロッドが退入して支柱が上向きに短縮し、補助車輪が走行面から上方へ離間する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によると、所定の作業方向に走行しながら被運搬物を運搬する運搬作業を行う際、支持安定装置の支柱を下向きに伸長させて補助車輪を走行面に接地させることによって、車体を安定させることができる。
【0020】
また、補助車輪を走行面に接地させている際、シリンダ装置のピストンロッドの下向きの突出力が一定に保たれるため、補助車輪が走行面に押付けられる押付力をほぼ一定にすることができる。したがって、ピストンロッドの突出力が強過ぎて走行用車輪が走行面から浮上ったり或いは補助車輪に過大な荷重が懸かるのを防止することができる。
【0021】
さらに、シリンダ装置の突出側作動流体圧室内の圧力が異常に上昇しても、リリーフ弁が作動して突出側接続配管内の圧力を逃がすことにより、突出側作動流体圧室内の圧力が正常な規定圧に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を図1〜図9を参照して説明する。
図1,図2に示すように、1は運搬用車両であり、例えば、港湾の岸壁2から停泊中の貨物船3等に石炭4(被運搬物の一例)を積み込むのに用いられる。尚、岸壁2と貨物船3との間にはメガフロート6が設けられている。
【0023】
運搬用車両1は、自走可能な車体11と、車体11上に設けられたベルトコンベヤ装置12(運搬装置の一例)とを備えている。図3,図4に示すように、車体11には、運転室14と、左右一対の前部走行用車輪15a,15bと、左右一対の後部走行用車輪16a,16bとが設けられている。各走行用車輪15a,15b,16a,16bは、二本一組であり、旋回装置17を介して、縦軸心18周りに旋回自在に車体11に取付けられている。尚、旋回装置17は、旋回盤17aと、旋回盤17aを回転させる回転駆動装置(図示せず)等で構成されている。
【0024】
図1に示すように、ベルトコンベヤ装置12は、石炭4を車体11の後方から前方に運搬するものであり、車体11に設けられた取付フレーム20に保持された支軸21を支点にして、上下方向に揺動自在に設けられている。車体11の前部とベルトコンベヤ装置12との間には、地面5(走行面の一例)に対するベルトコンベヤ装置12の角度を変えるための角度変更用シリンダ装置22が設けられている。また、ベルトコンベヤ装置12の後端部には、石炭4を投入する投入用ホッパー23が設けられている。さらに、ベルトコンベヤ装置12の前端部には、揺動自在な排出用シュート24が設けられている。
【0025】
図3〜図5に示すように、車体11の左右両側面の前部には、左右外側方へ張り出した取付フレーム26が設けられている。これら両取付フレーム26には前部アウトリガ装置27が設けられ、さらに、車体11の左右両側面の後部には後部アウトリガ装置28が設けられている。これら各アウトリガ装置27,28はそれぞれ、下向きに伸長し且つ上向きに短縮可能な支柱29と、支柱29を伸縮させる油圧式のアウトリガ用シリンダ装置30(図9参照)と、支柱29の下端部に設けられた接地板31とを備えている。尚、図9に示すように、アウトリガ用シリンダ装置30は、その内部に、ピストンロッド32を突出させる突出側油圧室33と、ピストンロッド32を退入させる退入側油圧室34とを有している。
【0026】
また、両取付フレーム26には、支持安定装置35が設けられている。図6〜図8に示すように、各支持安定装置35は、下向きに伸長し且つ上向きに短縮可能な支柱36と、支柱36を伸縮させる油圧式の補助車輪用シリンダ装置37(伸縮装置の一例)と、支柱36の下端部に設けられ且つ左右方向(所定の作業方向の一例)へ転動自在な前後一対の補助車輪38とを備えている。支柱36は、取付フレーム26に連結固定された四角筒状の外側支柱部材39と、外側支柱部材39の内側に上下動自在に設けられた四角筒状の内側支柱部材40とを備えている。内側支柱部材40の下端部には取付板41が設けられている。
【0027】
各補助車輪用シリンダ装置37は各支柱36に内蔵されており、補助車輪用シリンダ装置37の本体42がピン43を介して外側支柱部材39に連結され、補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44の先端がピン45を介して取付板41に連結されている。尚、図9に示すように、補助車輪用シリンダ装置37は、その内部に、ピストンロッド44を突出させる突出側油圧室51(突出側作動流体圧室の一例)と、ピストンロッド44を退入させる退入側油圧室52(退入側作動流体圧室の一例)とを有している。
【0028】
図6に示すように、取付板41には、前後一対のスピンドル46を有する保持部材47が設けられており、各スピンドル46がそれぞれ各補助車輪38のハブ48に挿入されて連結されている。これにより、各補助車輪38が前後軸心49周りに回転自在となっている。
【0029】
図9に示すように、車体11には、各アウトリガ用シリンダ装置30と補助車輪用シリンダ装置37とを作動させる油圧回路55が設けられている。油圧回路55には、作動油54(作動流体の一例)を蓄えるタンク56と、タンク56内の作動油54をアウトリガ用および補助車輪用シリンダ装置30,37へ供給する油圧ポンプ57(作動流体供給装置の一例)と、補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44の出退を切換える補助車輪用切換弁59と、前部アウトリガ装置27のアウトリガ用シリンダ装置30のピストンロッド32の出退を切換える前部アウトリガ用切換弁60と、後部アウトリガ装置28のアウトリガ用シリンダ装置30のピストンロッド32の出退を切換える後部アウトリガ用切換弁61とが設けられている。
【0030】
補助車輪用切換弁59は、A,B,P,Rポートの4つのポートを有するとともに、ピストンロッド44を突出させる一方の切換位置Cと、ピストンロッド44を退入させる他方の切換位置Dと、ピストンロッド44の出退を固定する中立位置Nとに切換え自在であるクローズドセンター式のものである。尚、補助車輪用切換弁59は、運転室14内に設けられた補助車輪用操作レバー76(図3参照)を下降側と上昇側と中立側とに操作することによって、上記各位置C,D,Nに切換えられる。また、Aポートと突出側油圧室51とが突出側接続配管63を介して接続され、Bポートと退入側油圧室52とが退入側接続配管64を介して接続されている。
【0031】
突出側接続配管63には、突出側油圧室51へ供給される作動油54の逆流を防止する突出側逆止弁65が設けられている。退入側接続配管64には、退入側油圧室52へ供給される作動油54の逆流を防止する退入側逆止弁66が設けられている。尚、突出側逆止弁65には、退入側接続配管64内の油圧を導入して弁体を開く一方のパイロット管路67が接続されている。また、退入側逆止弁66には、突出側接続配管63内の油圧を導入して弁体を開く他方のパイロット管路68が接続されている。
【0032】
油圧ポンプ57の吐出側と補助車輪用切換弁59のPポートとが供給側配管69を介して接続されている。また、Rポートには、補助車輪用シリンダ装置37から排出された作動油54をタンク56へ回収する回収側配管70が接続されている。
【0033】
供給側配管69には、突出側接続配管63内の油圧を規定圧に保つパイロット形の減圧弁71と、可変絞り弁72とが設けられている。また、突出側接続配管63には逃し管路73の一端が接続され、逃し管路73の他端が補助車輪用切換弁59をバイパスして回収側配管70に接続されている。逃し管路73には、突出側接続配管63内の油圧を逃がすパイロット形のリリーフ弁74が設けられている。
【0034】
前部および後部アウトリガ用切換弁60,61はそれぞれ、ABR接続式のものであり、運転室14内に設けられたアウトリガ用操作レバー77(図3参照)を下降側と上昇側と中立側とに操作することによって、各位置C,D,Nに切換えられる。
【0035】
尚、油圧回路55に設けられているアウトリガ装置27,28に関する配管や弁等の部材のうち、先述した補助車輪用シリンダ装置37に関する部材と同じものについては、同一符号を付記して説明を省略する。
【0036】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1〜図3に示すように、石炭4を岸壁2から停泊中の貨物船3に積み込む場合、運搬用車両1を走行させて、ベルトコンベヤ装置12の前端部を貨物船3の上方に位置させる。その後、各走行用車輪15a,15b,16a,16bを縦軸心18周りに旋回して円弧軌道7に沿って平面視でハ字形状に換向し、各走行用車輪15a,15b,16a,16bを回転駆動させることにより、投入用ホッパー23を中心とした円の円弧軌道7上で、運搬用車両1を左右方向X(所定の作業方向の一例)へ横行走行させる。
【0037】
このようにして運搬用車両1を左右方向Xへ横行走行させながら、ベルトコンベヤ装置12を駆動し、石炭4を投入用ホッパー23へ投入する。これにより、石炭4は、ベルトコンベヤ装置12によって後方から前方に運搬され、排出用シュート24から貨物船3に排出される。
【0038】
上記のようにして石炭4をベルトコンベヤ装置12で運搬しながら、運搬用車両1を円弧軌道7に沿って左右方向Xへ横行走行させることにより、円弧状の広い範囲Wに石炭4を満遍なく排出することができる。尚、この時、角度変更用シリンダ装置22によってベルトコンベヤ装置12の地面5に対する角度を変更することができ、これにより、貨物船3の高さや貨物船3に堆積した石炭4の高さに応じて、排出用シュート24の高さを調節することができる。また、排出用シュート24を前後へ揺動させることにより、石炭4の排出範囲を前後方向に拡大することもできる。
【0039】
上記のような運搬作業中において、運転室14内の作業者が補助車輪用操作レバー76を下降側に操作して補助車輪用切換弁59を一方の切換位置Cに切換える。これにより、油圧ポンプ57から吐出した作動油54は、供給側配管69を通って補助車輪用切換弁59のPポートへ流れ込み、Aポートから突出側接続配管63を通って両補助車輪用シリンダ装置37の突出側油圧室51に供給される。両補助車輪用シリンダ装置37の退入側油圧室52内の作動油54は、退入側接続配管64を通って補助車輪用切換弁59のBポートへ流れ込み、Rポートから回収側配管70を通ってタンク56に回収される。尚、この際、突出側逆止弁65が開くとともに、退入側逆止弁66が他方のパイロット管路68から導入された突出側接続配管63内の油圧によって開く。
【0040】
これにより、両補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44が下方へ突出し、図6および図7の仮想線で示すように、内側支柱部材40が下降することで両支持安定装置35の支柱36が下向きに伸長し、各補助車輪38が下限位置へ下降して地面5に接地する。これにより、図4に示すように、各走行用車輪15a,15b,16a,16bに加えて各補助車輪38も地面5に接地した状態となり、運搬用車両1の左右方向Xへの横行走行にともなって、各補助車輪38が左右方向Xへ転動し、これら補助車輪38を介して運搬用車両1が左右方向Xにおいて支柱36で支えられる。このため、図2に示すように、運搬用車両1を左右方向Xへ横行走行させながらベルトコンベヤ装置12で運搬作業を行っているときの車体11の安定性が向上する。
【0041】
この際、補助車輪用切換弁59を一方の切換位置Cに切換えた状態で、各補助車輪38が地面5に接地しており、油圧ポンプ57から補助車輪用切換弁59のPポートへ供給される油圧は減圧弁71によって設定圧に減圧され、突出側接続配管63内の油圧が上記設定圧に応じた規定圧に保たれることになる。これにより、ピストンロッド44の下向きの突出力が一定に保たれるため、補助車輪38が地面5に押付けられる押付力をほぼ一定にすることができる。したがって、上記ピストンロッド44の突出力が強過ぎて前部走行用車輪15a,15bが地面5から浮上ったり或いは補助車輪38に過大な荷重が懸かるのを防止することができる。
【0042】
また、各補助車輪38を地面5に接地させて、運搬用車両1を左右方向Xへ横行走行させながら石炭4の運搬作業を行っているとき、例えば補助車輪38が大きな石等の障害物に乗り上げて補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44が外側から退入方向(すなわち下から上方向)へ押されると、突出側油圧室51内の油圧が異常に上昇する。この際、突出側油圧室51内の油圧とともに突出側接続配管63内の油圧も異常に上昇し、突出側接続配管63内の油圧が規定圧を超えるとリリーフ弁74が作動して突出側接続配管63内の油圧を逃がす。これにより、突出側油圧室51内の油圧が正常な規定圧に保たれる。
【0043】
また、補助車輪38による補助が不要な場合、例えば、ベルトコンベヤ装置12を停止し、各走行用車輪15a,15b,16a,16bを回転駆動して運搬用車両1を通常走行させるような場合、運転室14内の作業者が補助車輪用操作レバー76を上昇側に操作して補助車輪用切換弁59を他方の切換位置Dに切換える。これにより、油圧ポンプ57から吐出した作動油54は、供給側配管69を通って補助車輪用切換弁59のPポートへ流れ込み、Bポートから退入側接続配管64を通って両補助車輪用シリンダ装置37の退入側油圧室52に供給される。
【0044】
また、両補助車輪用シリンダ装置37の突出側油圧室51内の作動油54は、突出側接続配管63を通って補助車輪用切換弁59のAポートへ流れ込み、Rポートから回収側配管70を通ってタンク56へ回収される。尚、この際、退入側逆止弁66が開くとともに、突出側逆止弁65が一方のパイロット管路67から導入された退入側接続配管64内の油圧によって開く。
【0045】
これにより、両補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44が上方へ退入し、図6および図7の実線で示すように、内側支柱部材40が上昇することで両支持安定装置35の支柱36が上向きに短縮し、各補助車輪38が地面5から上方へ離間して上限位置へ上昇する。そして、各走行用車輪15a,15b,16a,16bを縦軸心18周りに旋回して前後方向へ転換させることにより、運搬用車両1を前後方向へ縦行走行させることができる。また、各走行用車輪15a,15b,16a,16bを左右方向へ転換させることにより、運搬用車両1を左折又は右折走行させることができる。
【0046】
尚、運転室14内の作業者が補助車輪用操作レバー76を中立側に操作して補助車輪用切換弁59を中立位置Nに切換えた場合、作動油54の両補助車輪用シリンダ装置37への供給と両補助車輪用シリンダ装置37からの排出とが補助車輪用切換弁59によって遮断される。これにより、両補助車輪用シリンダ装置37のピストンロッド44が固定され、各補助車輪38が下限位置と上限位置との間の任意の高さで固定される。
【0047】
また、運搬用車両1を一箇所に停止させた状態で、ベルトコンベヤ装置12を駆動させて石炭4を運搬する場合は、上記のように各補助車輪38を地面5から上方へ離間させた状態で、運転室14内の作業者がアウトリガ用操作レバー77(図3参照)を下降側に操作して前部および後部アウトリガ用切換弁60,61を一方の切換位置Cに切換える。
【0048】
これにより、同様に、油圧ポンプ57から吐出した作動油54が各アウトリガ用シリンダ装置30の突出側油圧室33に供給され、各アウトリガ用シリンダ装置30の退入側油圧室34内の作動油54が回収側配管70を通ってタンク56に回収される。これにより、各アウトリガ用シリンダ装置30のピストンロッド32が下方へ突出し、図5に示すように、各支柱29が下向きに伸長し、各接地板31が下限位置まで下降して地面5に接地し、車体11が前部および後部アウトリガ装置27,28によって持ち上げられて支持されるため、車体11の安定性が向上する。
【0049】
また、前部および後部アウトリガ装置27,28を使用しない場合は、運転室14内の作業者がアウトリガ用操作レバー77を上昇側に操作して前部および後部アウトリガ用切換弁60,61を他方の切換位置Dに切換える。これにより、油圧ポンプ57から吐出した作動油54が各アウトリガ用シリンダ装置30の退入側油圧室34内に供給され、各アウトリガ用シリンダ装置30の突出側油圧室33内の作動油54が回収側配管70を通ってタンク56に回収されるため、各アウトリガ用シリンダ装置30のピストンロッド32が上方へ退入し、図4に示すように、各支柱29が上向きに短縮し、各走行用車輪15a,15b,16a,16bが地面5に接地し、各接地板31が地面5から上方へ離間して上限位置まで上昇する。これにより、運搬用車両1が各走行用車輪15a,15b,16a,16bで前後左右に走行可能となる。
【0050】
尚、運転室14内の作業者がアウトリガ用操作レバー77を中立側に操作して前部および後部アウトリガ用切換弁60,61を中立位置Nに切換えた場合、作動油54の各アウトリガ用シリンダ装置30への供給がアウトリガ用切換弁60,61によって遮断されるとともに、各アウトリガ用シリンダ装置30からの作動油54の排出が逆止弁65,66により遮断される。これにより、各アウトリガ用シリンダ装置30のピストンロッド32が固定され、各接地板31が下限位置と上限位置との間の任意の高さで固定される。
【0051】
上記実施の形態では、図5に示すように、各アウトリガ用シリンダ装置30を作動させる油圧回路55に補助車輪用シリンダ装置37を作動させる油圧回路を組み込んでいるため、油圧ポンプ57とタンク56を共通で使用することができる。
【0052】
上記実施の形態では、図6に示すように、支持安定装置35の支柱36の下端部に補助車輪38を二本ずつ設けているが、一本或いは三本以上の複数本設けてもよい。
上記実施の形態では、図1に示すように、被運搬物の一例として石炭4を挙げたが、石炭4に限定されるものではなく、例えば土砂や穀物等の粉粒体、或いは様々な荷等を運搬するものであってもよい。
【0053】
上記実施の形態では、運搬装置の一例としてベルトコンベヤ装置12を挙げたが、ベルトコンベヤ装置12に限定されるものではなく、例えばローラコンベヤ装置やスクリューコンベヤ装置等の他の形式のコンベヤ装置であってもよく、或いは、コンベヤ装置以外のものであってもよい。
【0054】
上記実施の形態では、走行面の一例として地面5を挙げたが、これはコンクリートやアスファルトの面も含むものである。
上記実施の形態では、図1に示すように、運搬用車両1を用いて岸壁2から貨物船3に石炭4を積み込んでいるが、岸壁2以外の場所で使用してもよい。また、貨物船3以外の移送手段に石炭4を積み込んでもよい。
【0055】
上記実施の形態では、図3に示すように、運搬用車両1にアウトリガ装置27,28を設けたが、設けていないものであってもよい。
上記実施の形態では、各シリンダ装置30,37として油圧式シリンダを使用し、作動流体の一例として作動油54を用いているが、エアシリンダを使用し、作動流体として圧縮空気を用いてもよい。また、作動流体供給装置の一例として油圧ポンプ57を用いているが、圧縮空気を用いる場合、作動流体供給装置としてコンプレッサーを用いてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、図3,図4に示すように、支持安定装置35を、車体11の左右両側前部に設けているが、左右両側後部に設けてもよく、或いは、左右両側の前部と後部とに設けてもよい。
【0057】
上記実施の形態では、図2に示すように、運搬用車両1を円弧軌道7に沿って左右方向Xへ横行走行させながら、ベルトコンベヤ装置12で石炭4を運搬しているが、運搬用車両1を、円弧軌道7ではなく、左右方向Xへ一直線上に横行走行させてもよい。また、前後方向Yへ縦行走行させながら、ベルトコンベヤ装置12で石炭4を運搬してもよい。尚、この場合、補助車輪38は前後方向Yへ転動自在となるように構成されている。
【0058】
上記実施の形態では、図6に示すように、支持安定装置35の支柱36は外側支柱部材39と内側支柱部材40とによって内外二重構造に構成されているが、内外三重構造以上に構成されているものでもよい。
【0059】
上記実施の形態では、図3に示すように、車体11に走行用車輪15a,15b,16a,16bを計4組(すなわち計8本)設けているが、これ以外の複数組(複数本)設けてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、図1に示すように、岸壁2と貨物船3との間にメガフロート6を配置しているが、メガフロート6を配置しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における運搬用車両の側面図である。
【図2】同、運搬用車両の平面図である。
【図3】同、運搬用車両の車体の平面図である。
【図4】同、運搬用車両の車体の側面図であり、補助車輪を接地した状態を示す。
【図5】同、運搬用車両の車体の側面図であり、アウトリガ装置で車体を支持した状態を示す。
【図6】同、運搬用車両の支持安定装置の側面図である。
【図7】図6におけるA1−A1矢視図である。
【図8】図6におけるA2−A2矢視図である。
【図9】同、運搬用車両の支持安定装置およびアウトリガ装置を作動させるための油圧回路の図である。
【図10】従来の運搬用車両の側面図である。
【図11】同、運搬用車両の平面図である。
【図12】同、運搬用車両の車体の平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 運搬用車両
4 石炭(被運搬物)
5 地面(走行面)
11 車体
12 ベルトコンベヤ装置(運搬装置)
15a,15b,16a,16b 走行用車輪
35 支持安定装置
36 支柱
37 補助車輪用シリンダ装置(伸縮装置)
38 補助車輪
44 ピストンロッド
51 突出側油圧室(突出側作動流体圧室)
52 退入側油圧室(退入側作動流体圧室)
57 油圧ポンプ(作動流体供給装置)
59 補助車輪用切換弁
63 突出側接続配管
64 退入側接続配管
69 供給側配管
70 回収側配管
71 減圧弁
74 リリーフ弁
C 一方の切換位置
D 他方の切換位置
X 左右方向(所定の作業方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業方向に走行しながら被運搬物を運搬する運搬作業を行う運搬用車両であって、
車体に、外側方へ張り出した支持安定装置が設けられ、
支持安定装置は、下向きに伸長し且つ上向きに短縮可能な支柱と、支柱を伸縮させる伸縮装置と、支柱の下端部に設けられ且つ上記所定の作業方向へ転動自在な補助車輪とを備え、
支柱を下向きに伸長することにより、補助車輪が走行面に接地し、支柱を上向きに短縮することにより、補助車輪が走行面から上方へ離間するように構成されていることを特徴とする運搬用車両。
【請求項2】
左右方向に横行走行しながら被運搬物を前後方向へ運搬するものであり、
車体に、前後複数の走行用車輪と、被運搬物を前後方向へ運搬する運搬装置とが設けられ、
支持安定装置は、車体の左右両側に、左右外側方へ張り出して設けられ、
補助車輪は左右方向に転動自在であることを特徴とする請求項1記載の運搬用車両。
【請求項3】
伸縮装置としてシリンダ装置が用いられ、
シリンダ装置のピストンロッドが下向きに突出することにより、支柱が下向きに伸長し、上記ピストンロッドが上向きに退入することにより、支柱が上向きに短縮するように構成され、
シリンダ装置は、その内部に、ピストンロッドを突出させる突出側作動流体圧室と、ピストンロッドを退入させる退入側作動流体圧室とを有し、
ピストンロッドの突出と退入とを切換える切換弁が設けられ、
切換弁は、A,B,P,Rポートを有するとともに、ピストンロッドを突出させる一方の切換位置と、ピストンロッドを退入させる他方の切換位置とに切換え自在であり、
突出側作動流体圧室とAポートとが突出側接続配管を介して接続され、
退入側作動流体圧室とBポートとが退入側接続配管を介して接続され、
シリンダ装置へ作動流体を供給する作動流体供給装置とPポートとが供給側配管を介して接続され、
シリンダ装置から排出された作動流体を回収する回収側配管がRポートに接続され、
供給側配管に、突出側接続配管内の圧力を規定圧に保つ減圧弁が設けられ、
突出側接続配管内の圧力を逃がすリリーフ弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の運搬用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−143391(P2008−143391A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333915(P2006−333915)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】