説明

運搬車両

【課題】前輪駆動構造を簡素化する。
【解決手段】固定軸31a及び固定軸の外周に配置され固定軸周りに回転する回転部32bを有するモータ31と、モータの外周に配置され回転部に連結されて回転部とともに一体回転する前輪タイヤ33と、固定軸を両持支持するフロントフォークとを備える。左右に分割されるリム32L,32Rをそれぞれモータの側端面に固定し、リムの外周に前輪タイヤを固定する。モータはリム内に内装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の輸送に用いられる運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市場や工場内等の極近距離で荷物を輸送するための運搬車両としては、車体前部に設けられた前輪と、これを駆動するモータと、モータから前輪へ駆動力を伝える動力伝達機構とをハンドル操作により一体的に旋回するようにして、操舵がなされるようにしたものがある。
例えば、特許文献1には、車体前部に設けられた機器収納室と、機器収納室の下方に配設された前輪とを備え、機器収納室の上方に配設された操舵ハンドルを旋回操作して前輪を旋回させて操舵を行う運搬車両が記載されている。
特許文献1記載の運搬車両によれば、機器収納室内に、前輪を駆動輪として駆動するモータと、前輪を回転可能に支持し、モータからの駆動力を前輪へ伝達する駆動力伝達装置とが備えられており、駆動力伝達装置を車体に対し旋回可能に設け、駆動力伝達装置の上部にモータを固定し、更に、原動機の上部に操舵ハンドルを固定して、前輪、駆動力伝達装置、モータ、及び操舵ハンドルを車体に対し一体的に旋回可能としている。
【特許文献1】特開2005−35412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、以上の従来技術にあっては、動力伝達機構が必要となり、部品点数及び重量の増加が否めない。
【0004】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、簡素な前輪駆動構造を有した運搬車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、駆動及び操舵される前一輪を具備する動力ユニットと、前記動力ユニットに連結される車体フレーム及び該車体フレームに支持された少なくとも後二輪を具備する荷車とからなる運搬車両であって、
前記動力ユニットは、
固定軸及び該固定軸の外周に配置され該固定軸周りに回転する回転部を有するモータと、
前記モータの外周に配置され前記回転部に連結されて前記回転部とともに一体回転する前輪タイヤと、
前記固定軸を両持支持するフロントフォークと,
下端を前記フロントフォークに結合し前記前輪タイヤの上方に延出する操舵旋回軸と、
前記操舵旋回軸が挿入され前記操舵旋回軸を前記車体フレームに対して操舵旋回自在に支持するベアリングと、
前記操舵旋回軸の上端に一体連結された操舵ハンドルとを備える運搬車両である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記動力ユニットは、前記操舵旋回軸の上端と前記操舵ハンドルとの間に両者を連結する連結フレームを備え、
前記連結フレームにより前記操舵旋回軸の上端と前記操舵ハンドルとの間に空間が形成され、前記モータを駆動するドライバ回路が前記空間に配置されるとともに前記連結フレームに固定されてなる請求項1に記載の運搬車両である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記動力ユニットは、外周に前記前輪タイヤが固定され前記モータを内装するリムを有し、
前記リムは、前記前輪タイヤの中央部で左右に分割された2つの片側リムから構成され、
前記片側リムのそれぞれは、前記固定軸を通す孔を中央に有し前記回転部の前記固定軸に垂直な端面に固定される円盤部と、前記円盤部の外周縁に連続して形成され、外周に前記前輪タイヤが固定される円筒部とから構成されている請求項1又は請求項2に記載の運搬車両である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記片側リムのそれぞれは、前記円筒部の外周面に前記前輪タイヤを係止するためのフランジ部が形成されており、前記フランジ部より外側に前記円盤部が位置する構造を有する請求項3に記載の運搬車両である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アウトランナー型モータの外周に前輪タイヤを取り付けた前輪駆動構造を構成するので、構造が簡素化し、部品点数及び重量が軽減でき、運搬車両の動力ユニットを小型・軽量化することができるという効果がある。モータの幅が前輪タイヤの幅より広い場合は、モータの幅が前輪の幅に影響するものの、両持支持により十分な剛性を得ながら支持体の前輪側方への張り出しを抑え、操舵旋回のために確保すべき前輪周囲のスペースの半径を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施の形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態の運搬車両の左側面図である。
図1に示すように本実施形態の運搬車両1は、動力ユニット2に荷車3が連結されて構成される。
動力ユニット2には、前輪4と、操舵ハンドル5と、アクセルリング6と、前後進切換スイッチ7と、非常停止ボタン(図示せず)と、カバー体8とが備えられる。荷車3には、車体フレーム10と、後輪(二輪)11と、荷台12と、ブレーキペダル13と、制動機構14とが備えられる。車体フレーム10の前部には動力ユニット2を支持する支持台15が固定されている。また、荷車3には、バッテリー16が搭載される。
【0012】
操舵ハンドル5はリング状である。操舵ハンドル5と前輪4とは、一体に旋回動作するように連結されている。操舵ハンドル5とともに、アクセルリング6、前後進切換スイッチ7、非常停止ボタン及びカバー体8も旋回する。アクセルリング6は、操舵ハンドル5と同心で、操舵ハンドル5の内側上部位置に配置されている。アクセルリング6を傾斜させることにより、前輪4が回転駆動される。前後進切換スイッチ7により前進・後進を切り替え、前進及び後進が可能である。非常停止ボタンを操作することにより駆動輪である前輪4を停止することができる。ブレーキペダル13を踏み込むことにより制動機構14を介して後輪11を制動することができる。バッテリー16のケーブル(図示せず)は動力ユニット2内のドライバ回路に接続される。カバー体8にはヘッドライトを露出させるための窓9が設けられている。
【0013】
次に、動力ユニット2の詳細につき説明する。図2は動力ユニット2の正面図、図3は動力ユニット2の左側面図(アクセルリング不図示)である。図4はフロントフォーク及び操舵旋回軸の組立図、図5は、さらに前輪及びベアリングユニットを取り付けた状態の組立図である。
【0014】
図4に示すように、フロントフォーク21は、操舵旋回軸取付孔21bを有した上部21aの両側端からアーム部21c、21dを下方に延出させた構造を有する。
操舵旋回軸22は、下部フランジ部22aよりさらに下方に突出する下端部22bを、フロントフォーク21の操舵旋回軸取付孔21bに嵌合させた上で溶接等により下端をフロントフォーク21の上部21aに接合させている。
操舵旋回軸22の上端部22cには、ねじ孔22dが設けられている。操舵旋回軸22の下部フランジ部22aと上端部22cとの間の周面に下部テーパ面22e及び上部テーパ面22fが斜め上方向きに形成されている。
また、操舵旋回軸22は円筒状であり、上下を貫く孔部22gが形成されている。孔部22gの下端は、下端部22bの中央に開口し、孔部22gの上端は上端部22cの中央に開口する。
また、下部フランジ部22aには、その外周と孔部22gとを連通する側孔22hが設けられている。側孔22hはモータ駆動ケーブルの挿通用の孔である。
【0015】
図5に示すように、フロントフォーク21に前輪4が両持支持される。前輪4は、モータ31と、リム(32L+32R)と前輪タイヤ33とを備えて構成される。
モータ31は、固定軸31aと、回転部31bとを有する。固定軸31aの両端は突出しており、それぞれフロントフォーク21のアーム部21c、21dの端部にボルト等で固定される。
【0016】
回転部31bは、モータ31のロータそのもの又はモータ31に内装された減速機構を介して減速して回転する回転動力の出力部である。回転部31bは、固定軸31aの外周に配置され固定軸31a周りに回転する。
リム(32L+32R)内にモータ31が内装される。リム(32L+32R)は、前輪タイヤ33の中央部で左右に分割された2つの片側リム32L及び片側リム32Rから構成される。左右の片側リム32L,32Rのそれぞれは、固定軸31aを通す孔32cを中央に有し回転部31bの固定軸31aに垂直な端面にボルト34により固定される円盤部32aと、円盤部32aの外周縁に連続して形成され、外周に前輪タイヤ33を嵌合固定される円筒部32bとから構成されている。
【0017】
片側リム32L,32Rのそれぞれは、円筒部32bの外周面に前輪タイヤ33を係止するためのフランジ部32dが形成されており、フランジ部32dより外側に円盤部32aが位置する構造を有する。このような構造により、モータ31と、これに対し幅狭のタイヤ33とを組み合わせ、モータ31をホイール内に内装することができる。
リム(32L+32R)の外周の、フランジ部32dの内側部分に前輪タイヤ33が嵌合固定され、前輪タイヤ33は回転部31bとともに一体回転する。
以上のリム(32L+32R)を使用して前輪タイヤ33を取り付けることにより、前輪タイヤ33をモータ31に対し偏芯させることなく、前輪タイヤ33をモータ31の回転軸と同軸に精度良く配置して取り付けることができる。また、操舵の際の旋回軸が前輪タイヤ33の中央面にあるように精度良く配置して取り付けることができる。
【0018】
同じく図5に示すように、操舵旋回軸22にベアリングユニット40が外嵌されている。
ベアリングユニット40は、操舵旋回軸22に対し斜め下方に支持する下部ベアリング41aと、操舵旋回軸22に対し斜め上方に支持する上部ベアリング41bとをハウジング44内に保持している。
ベアリング41a,41bにそれぞれ内接する内側円筒42a,42b及びその上下に配されたリテーナ46,47の内側に操舵旋回軸22が嵌入され、リテーナ46,47に操舵旋回軸22のテーパ面22e,22fがそれぞれ当接する。
ハウジング44がべアリング41a,41bにそれぞれ外接する外側円筒43a,43bの外側に嵌合するとともに、上下のべアリング41a,41bの間を保持する。
上部リテーナ47の上側において、操舵旋回軸22の上端部22cにナット51が螺合して締め付けベアリングユニット40が操舵旋回軸22に固定される。
ハウジング44の外周には荷車連結用のフランジ45が形成されている。
その他、ベアリングユニット40には、オイルシール48,49、グリスニップル50が設けられている。
【0019】
図2及び図3に示すように、車体フレーム10に固定された支持台15の上端にフランジ45が固定されることにより、動力ユニット2と荷車3とが連結される。
【0020】
操舵旋回軸22の上端と操舵ハンドル5との間に両者を連結する連結フレーム60が配置される。連結フレーム60は、下部フレーム61と上部フレーム62とこれらを連結する4本の支柱63とから構成される。下部フレーム61が操舵旋回軸22の上端にボルト64により連結されるとともに、上部フレーム62にハンドル支持部材5aを介して操舵ハンドル5が結合されることにより、操舵旋回軸22と操舵ハンドル5までが一体連結される。
連結フレーム60は、下部フレーム61と上部フレーム62との間に機器収納空間を形成する。ドライバ回路70及び充電器71は、この機器収納空間に配置されて下部フレーム61上に固定されている。
また、連結フレーム60にはカバー体8及びヘッドライト72が固定される。
【0021】
ドライバ回路70から延出するモータ駆動ケーブル(図示せず)は、操舵旋回軸22の孔部22gに挿入され、側孔22hから外側に引き出され、アーム部21cの外側に沿って固定軸31a付近まで引き回され、モータ31の電極に接続される。
モータ駆動ケーブルを操舵旋回軸22の孔部22gの下端開口から引き出してもよいが、この場合は、ケーブルと前輪タイヤ33とが接触しないための設計やタイヤ付近でのケーブルの確実な固定を要する。本実施形態によれば、モータ駆動ケーブルはフロントフォーク21の外側に配置されるので、モータ駆動ケーブルが前輪タイヤ33に接触することが防がれる。
【0022】
なお、図2に示すように、アクセルリング6の操作量を電気的信号に変換してドライバ回路70に入力する入力部74が上部フレーム62に固定されている。アクセルリング6はリンク機構73を介して入力部74に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る運搬車両の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る動力ユニットの正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る動力ユニット2の左側面図(アクセルリング不図示)である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフロントフォーク及び操舵旋回軸の組立図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るフロントフォーク及び操舵旋回軸に、前輪及びベアリングユニットを取り付けた状態の組立図である。
【符号の説明】
【0024】
1 運搬車両
2 動力ユニット
3 荷車
4 前輪
5 操舵ハンドル
10 車体フレーム
11 後輪
12 荷台
15 支持台
16 バッテリー
21 フロントフォーク
22 操舵旋回軸
31 モータ
31a 固定軸
31b 回転部
32a 円盤部
32b 円筒部
32c 孔
32L 片側リム
32R 片側リム
33 前輪タイヤ
40 ベアリングユニット
41a 下部ベアリング
41b 上部ベアリング
60 連結フレーム
70 ドライバ回路
71 充電器
72 ヘッドライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動及び操舵される前一輪を具備する動力ユニットと、前記動力ユニットに連結される車体フレーム及び該車体フレームに支持された少なくとも後二輪を具備する荷車とからなる運搬車両であって、
前記動力ユニットは、
固定軸及び該固定軸の外周に配置され該固定軸周りに回転する回転部を有するモータと、
前記モータの外周に配置され前記回転部に連結されて前記回転部とともに一体回転する前輪タイヤと、
前記固定軸を両持支持するフロントフォークと,
下端を前記フロントフォークに結合し前記前輪タイヤの上方に延出する操舵旋回軸と、
前記操舵旋回軸が挿入され前記操舵旋回軸を前記車体フレームに対して操舵旋回自在に支持するベアリングと、
前記操舵旋回軸の上端に一体連結された操舵ハンドルとを備える運搬車両。
【請求項2】
前記動力ユニットは、前記操舵旋回軸の上端と前記操舵ハンドルとの間に両者を連結する連結フレームを備え、
前記連結フレームにより前記操舵旋回軸の上端と前記操舵ハンドルとの間に空間が形成され、前記モータを駆動するドライバ回路が前記空間に配置されるとともに前記連結フレームに固定されてなる請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記動力ユニットは、外周に前記前輪タイヤが固定され前記モータを内装するリムを有し、
前記リムは、前記前輪タイヤの中央部で左右に分割された2つの片側リムから構成され、
前記片側リムのそれぞれは、前記固定軸を通す孔を中央に有し前記回転部の前記固定軸に垂直な端面に固定される円盤部と、前記円盤部の外周縁に連続して形成され、外周に前記前輪タイヤが固定される円筒部とから構成されている請求項1又は請求項2に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記片側リムのそれぞれは、前記円筒部の外周面に前記前輪タイヤを係止するためのフランジ部が形成されており、前記フランジ部より外側に前記円盤部が位置する構造を有する請求項3に記載の運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−176318(P2007−176318A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377369(P2005−377369)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】