運転制御装置、運転制御方法、プログラム
【課題】デマンドレスポンスとして居住者の快適性をできるだけ損なわないようにしたうえで、できるだけ簡易で軽い処理によって空調機器を制御できるようにする。
【解決手段】冷房の場合、ゾーンごとに判定した室温に基づいて、ゾーン内の室温が低位のn個のゾーンを選択する。このように選択したゾーンに備えられる空調機器は停止させ、他のゾーンに備えられる空調機器は運転させる。これをローテーション時間ごとに行うことで、常に、室温が低く、冷房が過剰に効いているとみなされるゾーンの運転が停止されるようにする。これにより、建物設備における空調効果の均一化を図る。
【解決手段】冷房の場合、ゾーンごとに判定した室温に基づいて、ゾーン内の室温が低位のn個のゾーンを選択する。このように選択したゾーンに備えられる空調機器は停止させ、他のゾーンに備えられる空調機器は運転させる。これをローテーション時間ごとに行うことで、常に、室温が低く、冷房が過剰に効いているとみなされるゾーンの運転が停止されるようにする。これにより、建物設備における空調効果の均一化を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートグリッドにおけるデマンドレスポンス機能として機器の運転状態を制御する運転制御装置と運転制御方法に関する。また、運転制御装置に、上記運転制御方法に対応した機能を実現させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートグリッドが注目されてきている。スマートグリッドは、太陽光発電や風力発電などの分散型電源と電力会社からの集中型電源とを組み合わせ、需要と供給のバランスをリアルタイムに調整することで効率的な電力供給を行うように構築される電力受給システムである。
【0003】
また、スマートグリッドにおいては、電力網における需要に応答して、需要家側で電力消費を低減させたり、他の需要家に余剰の電力を供給したりする、デマンドレスポンスの機能が装備される。例えば、分散型電源からの供給電力の変動に伴って電力系統が不安定となったり、または、不安定となることが予測される状態となった場合、例えば電力会社などの需要家の上位系統は各需要家に対して電力調整情報を通知する。電力調整情報として、例えば時間別料金や電力削減量などが示される。需要家は、デマンドレスポンスとして、この電力調整情報に基づいて消費電力量を調整する。このようなデマンドレスポンスとして、空調機器の設定温度を制御する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−30684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デマンドレスポンスに際して、空調機器を制御する場合には、できるだけ居住者の快適性を損なわないようにすることが求められる。例えば、特許文献1は、在室状況などを考慮して空調機器の設定温度を精度よく求めることにより、居住者の快適性への影響を小さくしようというものではあるが、この制御のために比較的多くの情報を利用する必要があるとともに、処理負荷も重くなる可能性がある。例えば消費電力などを考慮しても、デマンドレスポンス制御は、できるだけ簡易で軽い処理であることが実現性も高く好ましい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、デマンドレスポンス機能としての電力制御を行うにあたり、居住者の快適性をできるだけ損なわないようにしたうえで、簡易で軽い処理により適切に空調機器を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出部と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定部と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定部と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御部とを備えることを特徴とする運転制御装置である。
【0008】
また、本発明は、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別部と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御部とを備えることを特徴とする運転制御装置である。
【0009】
また、本発明は、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順とを備えることを特徴とする運転制御方法である。
【0010】
また、本発明は、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順とを備えることを特徴とする運転制御方法である。
【0011】
また、本発明は、運転制御装置に、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【0012】
また、本発明は、運転制御装置に、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デマンドレスポンス機能としての電力制御を行うにあたり、居住者の快適性をできるだけ損なわないようにしたうえで、簡易で軽い処理でありながら適切に空調機器を制御可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における建物設備の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御の例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に対応する運転制御の例を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に対応するゾーングループ分けの態様例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<建物設備の構成>
図1は、本実施の形態における建物設備100の構成例を示している。建物設備100は、スマートグリッドの環境に組み込まれる需要家側の施設であり、ここでは、建物設備100内の領域空間として、6つの第1〜第6ゾーン110−1〜110−6が存在している状態が示されている。これら第1〜第6ゾーン110−1〜110−6は、1つの同じ室内や館内において仮想的に分割された領域である。なお、ゾーンは、それぞれが物理的に区分された個別の部屋または建物の空間領域であってもよいし、仮想的に分割された領域と物理的に区分された領域の組み合わせであってもよい。また、この図において、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6は互いに隣接して配置されているが、これは図示の便宜上によるもので、実際には、それぞれが離れて位置していてもよい。また、ここでゾーン110の数を6つとしているのは一例であり、ゾーン数は6つ以外であってもよい。
【0016】
上記第1〜第6ゾーン110−1〜110−6には、それぞれ、空調機器200−1〜200−6が備えられる。1つの空調機器200は、例えば空調機器210と給気ユニット220から成る。空調機器210により温度調整された空気は、給気ユニット220により取り込まれ、対応のゾーン110内に供給される。これにより、ゾーン110内の空調が行われる。なお、以降の説明にあたり、各空調機器200による空調機器能は冷房に設定されていることを前提とする。
【0017】
また、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6には、それぞれ、温度センサ300−1〜300−6が備えられる。温度センサ300は、対応のゾーン110内の空気温度を検出できるように取り付けられている。ここでのゾーン110は、個別の部屋や館内などを想定しているので、温度センサ300により検出される空気温度は、対応のゾーン110の室温に相当する。温度センサ300により検出された室内温度の情報は、運転制御部400に対して送信される。
【0018】
運転制御部400は、リアルタイムデマンドレスポンスに対応する電力制御として、空調機器200の運転制御を行う部位である。この運転制御部400は、空調機器200のほか、例えば照明機器などをはじめとした他の機器を対象として運転制御を行ってもよいが、ここでは、他の機器の図示は省略している。また、運転制御部400は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを備えたコンピュータシステムにより実現される。なお、この図2に示す構成は、以降説明する各実施の形態において共通となる。
【0019】
<第1の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
図2は、運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図においては、温度センサ300−1〜300−6と空調機器200−1〜200−6がともに示されている。運転制御部400は、図示するように、空調機器選別部410、ローテーション時間設定部420および運転/停止制御部430を備える。
【0020】
空調機器選別部410は、温度センサ300−1〜300−6から入力した室温の情報を入力し、空調機器200−1〜200−6について、ローテーション時間ごとに運転させるべき空調機器200と停止させるべき空調機器200とで選別を行う。
【0021】
後述するように、本実施の形態では、ローテーション時間ごとに運転対象の空調機器200と停止対象の空調機器200を適宜変更しながら、デマンドレスポンスに対応した空調機器の運転制御を行っていく。ローテーション時間設定部420は、このローテーション時間(単位制御時間)を設定し、この設定したローテーション時間による空調機器への制御を行うように運転/停止制御部430に指示する。なお、第1の実施の形態において、ローテーション時間設定部420は、予め設定された一定のローテーション時間を運転/停止制御部430に指示する。
【0022】
運転/停止制御部430は、空調機器選別部410による選別結果およびローテーション時間設定部420により設定されたローテーション時間に基づいて第1〜第6空調機器200−1〜200−6の運転、停止の制御を実行する。
【0023】
[運転制御動作例]
図3は、上記構成による運転制御部400が第1の実施の形態として行う運転制動作の一例を示している。この図には、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6ごとの室温が、ローテーション時間ごとに示されている。第1の実施の形態では、ローテーション時間は一定に設定される。一例として、この図では、ローテーション時間について10分とした場合を示している。
【0024】
図において時刻9:00におけるゾーン110ごとの室温についてみると、第5ゾーン110−5における24.0℃が最も低い。そこで、運転制御部400は、この第5ゾーン110−5に対応して備えられる空調機器200−5を、時刻9:00から開始されるローテーション時間において停止させ、残る空調機器200−1〜200−4および200−6を運転させるように制御する。
【0025】
上記のローテーション時間が終了した時刻9:10において、室温は、引き続き第5ゾーン110−3が24.0℃で最低となっている。そこで、時刻9:10からのローテーション時間において、運転制御部400は、前回のローテーション時間と同じように運転制御を行う。つまり、第5ゾーン110−5に対応する空調機器200−5を停止させ、空調機器200−1〜200−4および200−6を運転させる。
【0026】
さらに次のローテーション時間が開始される時刻9:20において、室温は、第6の25.5℃が最低となるように変化している。そこで、運転制御部400は、時刻9:20からのローテーション時間において、第6ゾーン110−6に対応する空調機器200−6を停止させ、残る空調機器200−1〜200−5を運転させる。
【0027】
また、次のローテーション時間が開始される時刻9:30において、室温は、第2ゾーン110−2の25.5℃が最低となるように変化している。そこで、運転制御部400は、第2ゾーン110−2に対応する空調機器200−2を停止させ、残る空調機器200−1、および200−3〜200−6を運転させる。
【0028】
このように第1の実施の形態においては、一定のローテーション時間ごとに室温が最低のゾーン110に備えられる空調機器200を停止させ、残るゾーン110の空調機器200を運転させるように制御を実行する。室温が最低のゾーン110は、例えば、冷房が効き過ぎている傾向にあると推定できるが、本実施の形態の運転制御によっては、建物設備100全体としての冷房の効き過ぎを抑えて冷房効果を均一化していくことが可能になる。そして、この結果として居住者の快適性が保たれることになる。
【0029】
また、上記の空調機器200の制御は、各ゾーン110において検出された室温のみに基づいており、かつ、空調機器200の運転/停止を切り替えるというものとなっている。つまり、非常に簡易で軽い処理によってデマンドレスポンスによる居住者の快適性への影響を有効に軽減している。なお、特許文献1においては、例えば室内熱容量特性などの温度に関連したパラメータを利用することが記載されているが、この室内熱容量特性のパラメータに基づいてどのように空調機器の制御を行うのかについての具体的記載はない。また、特許文献1では、室温そのものの状況変化に基づいて空調機器の制御を行ってはおらず、上記室内熱容量特性などの情報を複数利用して温度設定を行おうとしているために、処理のプロセスが複雑かつ重い傾向になってしまう。
【0030】
なお、上記図3では説明の便宜上、ローテーション時間ごとに停止させる空調機器200を1つのみとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、2以上の一定数の空調機器200を停止させるようにしてもよい。
【0031】
[処理手順例]
図4のフローチャートは、上記図3に示した第1の実施の形態としての運転制御のために運転制御部400が実行する処理手順例を示している。この図に示す処理は、図2に示した運転制御部400における機能部のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。
【0032】
まず、空調機器選別部410は、ローテーション時間の開始に応じたタイミングで、温度センサ300から入力される検出情報に基づいてゾーン110ごとの室温を認識する(ステップS101)。次に、空調機器選別部410は、ゾーン110のうちから、判定された室温が低いものから順にn個のゾーン110を選択する(ステップS102)。第1の実施の形態において、このゾーンの選択数に対応する変数nは予め固定的に設定されているものであり、ローテーション時間ごとに停止させる空調機器200の数に一致する。
【0033】
次に、空調機器選別部410は、運転/停止制御部430に対して、上記のように選択したn個のゾーン110に対応する空調機器200の停止を指示するとともに、選択されなかった他のゾーン110に対応する空調機器200の運転を指示する(ステップS103)。運転/停止制御部430は、ローテーション時間の開始に応じて、上記指示に応じて空調機器200ごとに運転または停止が行われるように制御を実行する(ステップS104)。
【0034】
次に、運転/停止制御部430は、ローテーション時間設定部420により設定されたローテーション時間が経過するのを待機する(ステップS105−NO)。そして、ローテーション時間が経過したことを判定すると(ステップS105−YES)、運転/停止制御部430は、続いてデマンドレスポンスの動作を終了させるべきか否かについて判定する(ステップS106)。
【0035】
デマンドレスポンスは例えば電力会社などの上位系統からの電力削減指示に応じて行われる。そこで、例えば運転/停止制御部430は、電力削減指示が有効であればデマンドレスポンスの動作を終了すべきではないと判定する(ステップS106−NO)。この場合、運転/停止制御部430は、ステップS101に戻ることで運転制御を継続する。これに対して、電力削減指示が解除されることによりデマンドレスポンスの動作を終了してよいと判定した場合(ステップS106−YES)、運転/停止制御部430は、所定のデマンドレスポンスの終了に対応した処理を実行する(ステップS107)。このように運転制御部400が処理を実行することにより、図3に示したように、室温の低いゾーン110の空調機器200のみを選別して停止させていくことができる。
【0036】
<第2の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
続いて、第2の実施の形態について説明する。デマンドレスポンスを行うに際しては、例えば上位系統から使用電力の削減量が指定される。運転制御部400は、上位系統から指定された電力の削減量に基づいて、建物設備100における各種機器ごとについての削減電力目標値を設定し、この目標値に基づいてデマンドレスポンスの制御を実行する。そこで、第2の実施の形態においては、空調機器200について設定された削減電力目標値を満たすように空調機器200の運転制御を行う。
【0037】
図5は、第2の実施の形態に対応する運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図において図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この図に示す運転制御部400は、図2に示す構成に対して、削減電力目標値保持部440および空調機器消費電力情報保持部450をさらに備える。
【0038】
削減電力目標値保持部440は、上記のように空調機器200について設定された削減電力目標値を保持する。空調機器消費電力情報保持部450は、空調機器200−1〜200−6それぞれの消費電力を示す情報を保持する。この空調機器消費電力情報保持部450には、例えばRAMの記憶領域を利用する。空調機器200−1〜200−6がすべて同じ機種であれば、空調機器消費電力情報保持部450は、これらの空調機器200に共通な1つの消費電力の値を保持すればよく、そのデータ量は非常に小さくて済む。また、空調機器200−1〜200−6が異なる場合には、それぞれの消費電力の値を保持することで、空調機器200間の機種の相違にも対応できる。また、この場合にも複数の空調機器200ごとに消費電力の値を格納するだけの簡単な構造であり、RAMの記憶領域も圧迫しない。
【0039】
上記構成のもとで、第2の実施の形態の運転制御部400は、ローテーション時間ごとに、そのときの削減電力目標値に応じた数の空調機器200が停止されるように制御する。このための処理手順例を、図6のフローチャートに示す。
【0040】
図6において、まず、空調機器選別部410は、選択すべきゾーン数を示す変数nに初期値として「1」を代入する(ステップS201)とともに、削減電力目標値保持部440から、空調機器200に対応して設定された削減電力目標値Prを取得する(ステップS202)。なお、ここでは、削減電力目標値Prは、上位系統から指定される電力削減量が変更されるのに応じて変更される場合があることを想定している。そこで、上記のようにローテーション時間ごとのサイクルで削減電力目標値Prを取得するようにして、削減電力目標値Prの変更に対してリアルタイムに対応できるようにしている。
【0041】
次に、空調機器選別部410は、ゾーンごとの室温を認識する(ステップS203)。次に、空調機器選別部410は、上記室温の認識結果に基づき、室温が低位のものから順にn個のゾーン110を選択する(ステップS204)。次に、空調機器選別部410は、上記ステップS204により選択されたn個のゾーン110に対応する空調機器200の総合電力Ptを算出する(ステップS205)。このために、空調機器選別部410は、空調機器消費電力情報保持部450から、選択されたn個のゾーン110に対応する空調機器200の消費電力情報を読み取り、この読み取った消費電力情報が示す値を加算する。このように求められた値が総合電力Ptとなる。
【0042】
次に、空調機器選別部410は、総合電力Ptが削減電力目標値Prよりも大きいか否かについて判定する(ステップS206)。ここで、総合電力Ptの方が小さいと判定した場合(ステップS206−NO)、現在選択されたn個のゾーンの空調機器200を停止させただけでは、削減電力目標値Prを満足できないことになる。そこで、この場合には、変数nをインクリメントして(ステップS207)、ステップS204に戻ることで選択するゾーン110の数を、室温が低位のものから順にしたがって1つ追加する。
【0043】
そして、総合電力Ptが削減電力目標値Prよりも大きくなったと判定すると(ステップS206−YES)、空調機器選別部410は、ステップS208の処理に進む。ステップS208〜S212は、図4のステップS103〜S107と同様となる。このような処理により、第2の実施の形態においては、削減電力目標値Prを満足するように、室温が低い1以上の空調機器200を適宜選択して停止させることが可能になる。
【0044】
<第3の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
次に、第3の実施の形態について説明する。ここで、一具体例として、第3ゾーン110−3〜第5ゾーンの3つのゾーン110の間で同じ最低の室温が認識される状態が複数の連続したローテーション時間にわたって継続しているとする。この際、第1の実施の形態のように1つのゾーン110を選択するものとした場合、空調機器選別部410の選択アルゴリズムによってはローテーション時間ごとに同じゾーン110が選択される可能性がある。つまり、ほかにも同じ室温のゾーン110があるのに係わらず、同じ1つのゾーン110の空調機器200のみが停止されてしまうという状況が生じ得る。居住者の快適性をより損なわないようにすることを考慮すれば、1つのゾーン110の空調機器200のみが集中して停止される状態は好ましいとはいえず、分散されることが好ましい。そこで、第3の実施の形態においては、同じ最低の室温のゾーン110間で空調機器200の停止が順次交代されるようにする。
【0045】
図7は、第3の実施の形態に対応する運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図に示す運転制御部400の機能構成は、第1の実施の形態に対応する図2の構成を基としているが、第1の実施の形態に対応する図2の構成を基とすることもできる。また、この図において図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
この図に示す運転制御部400は、図2の構成に対してさらに選別履歴情報保持部460を備える。選別履歴情報保持部460は、空調機器選別部410がローテーション時間ごとに選別した空調機器200を示す情報(選別履歴情報)を保持する。この選別履歴情報保持部460は、例えばRAMの記憶領域を利用することができる。
【0047】
[処理手順例]
第3の実施の形態として運転制御部400が実行する処理手順例は、図4に示した第1の実施の形態と同様となる。ただし、ステップS102において空調機器選別部410が実行するゾーン選択について、図8に示す手順による処理を実行する。なお、図8に示す処理は、説明を分かりやすいものとすることの便宜上、空調機器200が停止されるゾーン110の選択数は1つ(n=1)である場合を想定する。
【0048】
図8において、空調機器選別部410は、図4のステップS101による判定結果から、室温が最低のゾーンを候補ゾーンとして選択し(ステップS301)、この選択した候補ゾーンが2以上であるか否かについて判定する(ステップS302)。候補ゾーンが2つ以上選択される場合とは、最低値として同じ室温のゾーン110が2以上ある場合となる。
【0049】
ここで、候補ゾーンが2以上ではない、つまり1つであると判定された場合(ステップS302−NO)、空調機器200は、この1つの候補ゾーンを、空調機器200の停止に対応するゾーンとして選択する(ステップS305)。これに対して、候補ゾーンが2以上であると判定された場合(ステップS302−YES)、空調機器選別部410は、選別履歴情報保持部460に保持されている選別履歴情報を参照する(ステップS303)。そして、この選別履歴情報の内容に基づいて候補ゾーンのうちから1つのゾーン110を、空調機器200の停止に対応するゾーン110として選択する(ステップS304)。
【0050】
選別履歴情報には、過去において選別履歴情報保持部460が選択した空調機器200の停止に対応するゾーンが示されている。そこで、空調機器選別部410は、上記ステップS304の処理として、候補ゾーンのうちで、最も過去に選択されたゾーン110、または、未だ選択されていないゾーン110を選択する。この処理により、室温が最低のゾーンが複数存在した状態が連続している場合に、これら複数のゾーン110の空調機器200を順次交代して停止させていくことができる。
【0051】
そして、空調機器選別部410は、上記ステップS304またはステップS305によるゾーンの選択結果が登録するように選別履歴情報保持部460における選別履歴情報を更新し(ステップS306)、図4のステップS103に進む。
【0052】
<第4の実施の形態>
[運転制御動作例]
ここで、それぞれが異なる2以上のゾーン110から成る複数のゾーングループを設定し、このゾーングループ単位でデマンドレスポンスに対応した空調機器200の運転/停止を行う場合を想定する。具体例として、図1の第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6から各3つのゾーン110から成る2つのゾーングループを設定する。そして、これらの2つのゾーングループについて、ローテーション時間ごとに空調機器200の運転と停止が交互に行われるように制御することとする。
【0053】
例えば空調機器200の機種や性能、ゾーングループを形成するゾーン110の容積、ゾーン110内に存在する人の数、さらには設備が発する熱量などの違いにより、上記2つのゾーングループの各室温に差が生じ得ることは容易に想定される。このようにゾーングループ間で室温に差が生じている状態で、例えばローテーション時間について固定的に一定としたままであると、例えば一方のゾーングループでは冷房が効き過ぎの傾向が続き、他方では余り冷房が効いていないというような状態となり得ることも考えられる。建物設備100における居住者の快適性をできるだけ確保しようとすれば、このようなゾーングループ間の温度差を小さくできるようにすることが好ましい。
冷房を前提とした場合、室温が低いゾーングループについては、冷房が効き過ぎの傾向であるととらえて、単位時間あたりの運転時間を短くし、停止時間については長くすることが好ましい。一方、室温が低いゾーングループは、冷房が効いていない傾向にあるととらえて、単位時間あたりの運転時間を長くし、停止時間を短くすることが好ましいといえる。
【0054】
そこで、第4の実施の形態においては、2つの異なる長さのローテーション時間を設定できるようにする。そのうえで、室温が高い方のゾーングループの空調機器200を運転させ、かつ、室温が低い方のゾーングループの空調機器200を停止させる際には、長い方のローテーション時間を設定する。一方、室温が低い方のゾーングループの空調機器200を運転させ、かつ、室温が高い方のゾーングループの空調機器200を停止させる際には、短い方のローテーション時間を設定する。
【0055】
図9は、第4の実施の形態に対応する運転制御動作の一例が示されている。この図では、第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6を、第1ゾーングループ(ZG)と第2ゾーングループ(ZG)の2つに分割することとしている。第1ゾーングループは、3つの第1ゾーン110−1〜第3ゾーン110−3から成る。また、第2ゾーングループは、残る3つの第4ゾーン110−4〜第6ゾーン110−6から成る。
【0056】
前提として、第4の実施の形態においては、前述したように、ローテーション時間ごとに第1ゾーングループと第2ゾーングループが交互のタイミングで空調機器200の運転と停止を繰り返す。そのうえで、ローテーション時間ごとに、2つのローテーション時間Ta、Tbのうちのいずれか一方が設定されるように、適宜切り替えが行われる。ローテーション時間Taは、ここでは10分とする。また、ローテーション時間Tbは、ローテーション時間Taより短く、ここでは5分とする。なお、この時間設定は一例であって、ローテーション時間TaとTbは他の時間長が任意に設定されてよい。
【0057】
また、ゾーングループとしての室温は、そのゾーングループに含まれるゾーン110の温度センサ300により検出された室温の平均値を求めることとする。具体的に、第1ゾーングループの室温は、第1ゾーン110−1〜第3ゾーン110−3の各温度センサ300−1〜300−3により検出された室温の平均値となる。第2ゾーングループの室温は、第4ゾーン110−4〜第6ゾーン110−6の各温度センサ300−4〜300−6により検出された室温の平均値となる。
【0058】
まず、時刻9:00から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させることとしている。この時刻9:00の時点で、第1ゾーングループの室温は25.5℃、第2ゾーングループの室温は27.0℃であり、したがって、第1ゾーングループの方が低い。つまり、空調機器200を停止させるべきゾーングループの室温の方が低い。そこで、この場合には、長い方のローテーション時間Ta(10分)を設定する。
【0059】
次の時刻9:10からのローテーション時間においては、先のローテーション時間とは逆に、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させるのであるが、室温は、運転が行われる第1ゾーングループの方が前回と同様に低い。そこで、この場合には、短い方のローテーション時間Tb(5分)を設定する。
【0060】
次の時刻9:15からのローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させる。このときも、室温は、停止対象の第1ゾーングループの方が低いことから、長い方のローテーション時間Taが設定される。また、次の時刻9:25からのローテーション時間においては、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させることになる。室温は、依然として第1ゾーングループの方が低いことから、短い方のローテーション時間Tbが設定される。
【0061】
次の時刻9:30から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させる。そして、このときの室温、第1ゾーングループよりも第2ゾーングループの方が低くなるように変化している。この場合、運転が行われるゾーングループの室温の方が低いことになる。そこで、この場合は、前回と同様にローテーション時間Tbを設定する。このようにゾーングループ間で室温の大小関係に変化があった場合、図9に示されるように、ローテーション時間Tbは連続して設定される場合がある。また、同様の理由によりローテーション時間Tbも連続して設定される場合がある。
【0062】
次の時刻9:35から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させる。このときの室温は、前回のローテーション時間と同様に第2ゾーングループの方が低いことから、ローテーション時間Taが設定される。このように、第4の実施の形態においては、室温の低い方のゾーングループの運転時間が短く、かつ、停止時間は長くなるようにローテーション時間の切り替えが行われる。
【0063】
[運転制御部の機能構成例]
図10は、第4の実施の形態に対応した運転制御部400の機能構成を示している。この図に示される運転制御部400は、図2に示した構成に対して、まず、空調機器選別部410に代えて、運転/停止設定部410Aを備える。また、グループ室温算出部470をさらに備えている。
運転/停止設定部410Aは、図9に例示したように、2つのゾーングループの間で交互に運転と停止が繰り返されるように、運転対象となる空調機器200と停止対象となる空調機器200を設定する。グループ室温算出部470は、各ゾーン110の温度センサ300から室温の情報を入力して、ゾーングループごとの室温を判定する。そして、ローテーション時間設定部420は、グループ室温算出部470により求められたゾーングループごとの室温と、運転/停止設定部410Aによる空調機器200ごとの運転/停止の設定内容に基づいて、ローテーション時間Ta、Tbのいずれかを設定する。
【0064】
[処理手順例]
図11は、第4の実施の形態に対応して運転制御部400が実行する処理手順例を示している。グループ室温算出部470は、まず、温度センサ300から入力した室温の情報からゾーン110ごとの室温を認識すると(ステップS401)、この認識結果からゾーングループごとの室温を算出する(ステップS402)。ゾーングループごとの室温は、前述のようにゾーングループに含まれるゾーン110ごとの室温の平均値として求めることができる。
【0065】
次に、ローテーション時間設定部420は、ステップS402の算出結果から、ゾーングループのうちで室温が最低のものを特定する(ステップS403)。また、ローテーション時間設定部420は、運転/停止設定部410Aの設定内容に基づいて、ステップS403にて特定されたゾーングループの空調機器200は、今回のローテーション時間において運転と停止のいずれが設定されているか判定する(ステップS404)。
【0066】
ここで、停止に対応するものと判定した場合(ステップS404−停止)、ローテーション時間設定部420は、長い方のローテーション時間Taを設定する(ステップS405)。これに対して、運転に対応するものと判定した場合(ステップS404−運転)、ローテーション時間設定部420は、短い方のローテーション時間Tbを設定する(ステップS406)。
【0067】
運転/停止制御部430は、運転/停止設定部410Aにより設定された空調機器200の運転/停止の設定内容と、上記ステップS405またはステップS406により設定されたローテーション時間に基づいて、空調機器200の運転、停止の制御を実行する(ステップS407)。これにより、ローテーション時間ごとにゾーングループ単位で空調機器200の運転と停止が行われる。なお、以降のステップS408〜S410の処理は、図4のステップS105〜S107と同様となる。このような処理が実行されることで、ゾーングループ間の室温の関係に対応してローテーション時間が適切に変更される。
【0068】
なお、上記第4の実施の形態においては、ローテーション時間Ta、Tbについて、それぞれ固定としている。しかし、例えば、ゾーングループ間の温度差などに基づいて、ローテーション時間Ta、Tbを逐次変化させるようにすることも考えられる。また、例えば、ゾーングループのそれぞれについての温度の比率を算出し、この温度の比率に応じて、ローテーション時間を変更するようにしてもよい。ここでは、冷房において、比率が高い(温度が高い)ゾーングループについて、ローテーション時間を長く、比率が低い(温度が低い)ゾーングループについては、ローテーション時間を短くし、比率が1:1に近づくように、制御するようにしてもよい。ローテーション時間をどのように決めるかについては、例えば、温度の比率に応じて算出する演算式を予め記憶しておき、比率に応じたパラメータをその演算式に代入して算出するようにしてもよい。また、上記第4の実施の形態は、3以上のゾーングループにも対応できる。例えば図11の処理手順にしたがえば、3以上のゾーングループのうち、最低温度のゾーングループの運転/停止の設定内容に基づいてローテーション時間を設定することができる。
【0069】
また、これまでの説明においては空調機器200が冷房を行うことを前提として説明したが、暖房を行う場合にも本実施の形態の構成を適用できる。暖房の場合、例えば第1〜第3の実施の形態では、空調機器選別部410により、冷房の場合とは逆に、室温が高い順にしたがってn個のゾーン110を選択していくようにすればよい。つまり、冷房であれば空気温度を低下させる方向に調整し、暖房であれば空気温度を高くさせる方向に調整するというように「温度調整方向」が異なる。本実施の形態では、この「温度調整方向」における最小値または最大値、すなわち「極値」の室温のゾーン110を停止対象として選択するものである。また、第4の実施の形態では、冷房の場合とは逆に、室温が高い方のゾーングループが停止の場合には長い方のローテーション時間Taを設定し、運転の場合には短い方のローテーション時間Tbを設定するようにローテーション時間設定部420を構成すればよい。
【0070】
また、上記第1〜第4の実施の形態においては、ゾーン110またはゾーングループの室温自体に基づいて、停止対象の空調機器200の選択やローテーション時間の設定を行うこととしている。空調を行う際には目標となる室温が設定されるが、この点に着目し、空調機器200に対する設定温度とゾーン110またはゾーングループごとの室温との差に基づいて停止対象の空調機器200の選択やローテーション時間の設定を行うようにすることも考えられる。具体例として、第1の実施の形態において冷房が行われている場合の動作は次のようになる。つまり、ステップS102において、設定温度より低い室温が検出されているゾーン110のうちから、設定温度と室温との差が大きい順にn個のゾーン110を選択する。そして、この選択されたゾーン110に対応する空調機器200を停止させるというものである。
【0071】
<第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態においては、図12に示すように、例えば、第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6がそれぞれ個別の部屋や施設とされるのではなく、1つの同じ室内や館内において仮想的に分割された領域である場合を想定する。なお、この図においては、図示を簡略なものとするために、運転制御部400、空調機器200および温度センサ300の図示は省略している。
【0072】
この場合において、例えば第4および第5の実施の形態のように、2つのゾーングループにグループ分けを行い、これらのゾーングループで運転と停止が交互に繰り返されるように制御する場合を考えてみる。この場合、ゾーン110同士の間に仕切りはないために、運転と停止が交互に行われるにあたり、できるだけ冷房効果が均一となるように、ゾーングループのグループ分けのパターンを設定することが好ましい。
【0073】
そこで、第5の実施の形態として、図12に示す環境のもとで第4または第5の実施の形態による運転制御を行うにあたっては、以下のようにグループゾーンを形成する。つまり、第1のゾーングループは、第1ゾーン110−1、第3ゾーン110−3および第5ゾーン110−5により形成し、第2のゾーングループは、第2ゾーン110−2、第4ゾーン110−4および第6ゾーン110−6により形成する。
【0074】
上記各グループゾーンは、図12から分かるように、それぞれ、千鳥格子状に配置されたゾーン110により形成されている。グループゾーンを形成するゾーン110が千鳥格子状に配置されることで、横方向および縦方向において隣接して他のグループゾーンに含まれるゾーン110が配置されることになる。これにより、例えば連続して配置されるゾーン110によりグループゾーンを形成した場合と比較して、空調効果を均一に行き渡らせることが可能になり、快適性の向上が図られる。
【0075】
<空調機器の他の例>
続いて、本実施の形態において運転制御対象となる空調機器200の他の例について説明する。まず、図13は、パッケージ空調機器200Aを使用した例を示している。パッケージ空調機器200Aは中規模施設においてしばしば利用される空調機器の1つであり、空調管理に必要な機能をパッケージングして構成される。例えば、1つのパッケージ空調機器200Aは、パッケージ室外機230と室内機240から成る。この場合、例えば運転制御部400による運転、停止の指示は、室内機240に対して行う場合が多い。
【0076】
図14は、VAV(Variable Air Volume)空調機器200Bを使用した例を示している。VAV空調機器200Bは、ゾーンごとに設けられるVAVユニット260と、これらのVAVユニット260に対応する空調機器250から成る。空調機器250は、例えば設定温度に応じて空気の温度を調整し、この空気を例えばダクトを経由して各VAVユニット260に対して供給する。VAVユニット260は、対応のゾーン110において設定温度が得られるように空気の風量を制御する。この場合の運転制御部400は、各VAVユニット260の運転、停止を制御する。
【0077】
図15は、空調機器として各ゾーン110にファンコイルユニット200Cを備えた例を示している。ファンコイルユニット200Cは、室内から空気を取り込んで熱交換器により温度を調整したうえで空調場所へ送風するように動作する空調機器である。この場合、運転制御部400は、各ゾーンのファンコイルユニット200Cの運転、停止を制御する。
【0078】
なお、本実施の形態の運転制御部400は内部にコンピュータシステムを有している。そして、これまでにおいて説明した運転制御部400の処理は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって実行される。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0079】
100 建物設備
110 ゾーン
200 空調機器
300 温度センサ
400 運転制御部
410 空調機器選別部
410A 運転/停止設定部
420 ローテーション時間設定部
430 運転/停止制御部
440 削減電力目標値保持部
450 空調機器消費電力情報保持部
460 選別履歴情報保持部
470 グループ室温算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートグリッドにおけるデマンドレスポンス機能として機器の運転状態を制御する運転制御装置と運転制御方法に関する。また、運転制御装置に、上記運転制御方法に対応した機能を実現させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートグリッドが注目されてきている。スマートグリッドは、太陽光発電や風力発電などの分散型電源と電力会社からの集中型電源とを組み合わせ、需要と供給のバランスをリアルタイムに調整することで効率的な電力供給を行うように構築される電力受給システムである。
【0003】
また、スマートグリッドにおいては、電力網における需要に応答して、需要家側で電力消費を低減させたり、他の需要家に余剰の電力を供給したりする、デマンドレスポンスの機能が装備される。例えば、分散型電源からの供給電力の変動に伴って電力系統が不安定となったり、または、不安定となることが予測される状態となった場合、例えば電力会社などの需要家の上位系統は各需要家に対して電力調整情報を通知する。電力調整情報として、例えば時間別料金や電力削減量などが示される。需要家は、デマンドレスポンスとして、この電力調整情報に基づいて消費電力量を調整する。このようなデマンドレスポンスとして、空調機器の設定温度を制御する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−30684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デマンドレスポンスに際して、空調機器を制御する場合には、できるだけ居住者の快適性を損なわないようにすることが求められる。例えば、特許文献1は、在室状況などを考慮して空調機器の設定温度を精度よく求めることにより、居住者の快適性への影響を小さくしようというものではあるが、この制御のために比較的多くの情報を利用する必要があるとともに、処理負荷も重くなる可能性がある。例えば消費電力などを考慮しても、デマンドレスポンス制御は、できるだけ簡易で軽い処理であることが実現性も高く好ましい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、デマンドレスポンス機能としての電力制御を行うにあたり、居住者の快適性をできるだけ損なわないようにしたうえで、簡易で軽い処理により適切に空調機器を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出部と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定部と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定部と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御部とを備えることを特徴とする運転制御装置である。
【0008】
また、本発明は、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別部と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御部とを備えることを特徴とする運転制御装置である。
【0009】
また、本発明は、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順とを備えることを特徴とする運転制御方法である。
【0010】
また、本発明は、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順とを備えることを特徴とする運転制御方法である。
【0011】
また、本発明は、運転制御装置に、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【0012】
また、本発明は、運転制御装置に、空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デマンドレスポンス機能としての電力制御を行うにあたり、居住者の快適性をできるだけ損なわないようにしたうえで、簡易で軽い処理でありながら適切に空調機器を制御可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における建物設備の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御の例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に対応する運転制御の例を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に対応する運転制御部の機能構成例を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に対応する運転制御のための処理手順例を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に対応するゾーングループ分けの態様例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において制御対象となる空調機器の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<建物設備の構成>
図1は、本実施の形態における建物設備100の構成例を示している。建物設備100は、スマートグリッドの環境に組み込まれる需要家側の施設であり、ここでは、建物設備100内の領域空間として、6つの第1〜第6ゾーン110−1〜110−6が存在している状態が示されている。これら第1〜第6ゾーン110−1〜110−6は、1つの同じ室内や館内において仮想的に分割された領域である。なお、ゾーンは、それぞれが物理的に区分された個別の部屋または建物の空間領域であってもよいし、仮想的に分割された領域と物理的に区分された領域の組み合わせであってもよい。また、この図において、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6は互いに隣接して配置されているが、これは図示の便宜上によるもので、実際には、それぞれが離れて位置していてもよい。また、ここでゾーン110の数を6つとしているのは一例であり、ゾーン数は6つ以外であってもよい。
【0016】
上記第1〜第6ゾーン110−1〜110−6には、それぞれ、空調機器200−1〜200−6が備えられる。1つの空調機器200は、例えば空調機器210と給気ユニット220から成る。空調機器210により温度調整された空気は、給気ユニット220により取り込まれ、対応のゾーン110内に供給される。これにより、ゾーン110内の空調が行われる。なお、以降の説明にあたり、各空調機器200による空調機器能は冷房に設定されていることを前提とする。
【0017】
また、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6には、それぞれ、温度センサ300−1〜300−6が備えられる。温度センサ300は、対応のゾーン110内の空気温度を検出できるように取り付けられている。ここでのゾーン110は、個別の部屋や館内などを想定しているので、温度センサ300により検出される空気温度は、対応のゾーン110の室温に相当する。温度センサ300により検出された室内温度の情報は、運転制御部400に対して送信される。
【0018】
運転制御部400は、リアルタイムデマンドレスポンスに対応する電力制御として、空調機器200の運転制御を行う部位である。この運転制御部400は、空調機器200のほか、例えば照明機器などをはじめとした他の機器を対象として運転制御を行ってもよいが、ここでは、他の機器の図示は省略している。また、運転制御部400は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを備えたコンピュータシステムにより実現される。なお、この図2に示す構成は、以降説明する各実施の形態において共通となる。
【0019】
<第1の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
図2は、運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図においては、温度センサ300−1〜300−6と空調機器200−1〜200−6がともに示されている。運転制御部400は、図示するように、空調機器選別部410、ローテーション時間設定部420および運転/停止制御部430を備える。
【0020】
空調機器選別部410は、温度センサ300−1〜300−6から入力した室温の情報を入力し、空調機器200−1〜200−6について、ローテーション時間ごとに運転させるべき空調機器200と停止させるべき空調機器200とで選別を行う。
【0021】
後述するように、本実施の形態では、ローテーション時間ごとに運転対象の空調機器200と停止対象の空調機器200を適宜変更しながら、デマンドレスポンスに対応した空調機器の運転制御を行っていく。ローテーション時間設定部420は、このローテーション時間(単位制御時間)を設定し、この設定したローテーション時間による空調機器への制御を行うように運転/停止制御部430に指示する。なお、第1の実施の形態において、ローテーション時間設定部420は、予め設定された一定のローテーション時間を運転/停止制御部430に指示する。
【0022】
運転/停止制御部430は、空調機器選別部410による選別結果およびローテーション時間設定部420により設定されたローテーション時間に基づいて第1〜第6空調機器200−1〜200−6の運転、停止の制御を実行する。
【0023】
[運転制御動作例]
図3は、上記構成による運転制御部400が第1の実施の形態として行う運転制動作の一例を示している。この図には、第1〜第6ゾーン110−1〜110−6ごとの室温が、ローテーション時間ごとに示されている。第1の実施の形態では、ローテーション時間は一定に設定される。一例として、この図では、ローテーション時間について10分とした場合を示している。
【0024】
図において時刻9:00におけるゾーン110ごとの室温についてみると、第5ゾーン110−5における24.0℃が最も低い。そこで、運転制御部400は、この第5ゾーン110−5に対応して備えられる空調機器200−5を、時刻9:00から開始されるローテーション時間において停止させ、残る空調機器200−1〜200−4および200−6を運転させるように制御する。
【0025】
上記のローテーション時間が終了した時刻9:10において、室温は、引き続き第5ゾーン110−3が24.0℃で最低となっている。そこで、時刻9:10からのローテーション時間において、運転制御部400は、前回のローテーション時間と同じように運転制御を行う。つまり、第5ゾーン110−5に対応する空調機器200−5を停止させ、空調機器200−1〜200−4および200−6を運転させる。
【0026】
さらに次のローテーション時間が開始される時刻9:20において、室温は、第6の25.5℃が最低となるように変化している。そこで、運転制御部400は、時刻9:20からのローテーション時間において、第6ゾーン110−6に対応する空調機器200−6を停止させ、残る空調機器200−1〜200−5を運転させる。
【0027】
また、次のローテーション時間が開始される時刻9:30において、室温は、第2ゾーン110−2の25.5℃が最低となるように変化している。そこで、運転制御部400は、第2ゾーン110−2に対応する空調機器200−2を停止させ、残る空調機器200−1、および200−3〜200−6を運転させる。
【0028】
このように第1の実施の形態においては、一定のローテーション時間ごとに室温が最低のゾーン110に備えられる空調機器200を停止させ、残るゾーン110の空調機器200を運転させるように制御を実行する。室温が最低のゾーン110は、例えば、冷房が効き過ぎている傾向にあると推定できるが、本実施の形態の運転制御によっては、建物設備100全体としての冷房の効き過ぎを抑えて冷房効果を均一化していくことが可能になる。そして、この結果として居住者の快適性が保たれることになる。
【0029】
また、上記の空調機器200の制御は、各ゾーン110において検出された室温のみに基づいており、かつ、空調機器200の運転/停止を切り替えるというものとなっている。つまり、非常に簡易で軽い処理によってデマンドレスポンスによる居住者の快適性への影響を有効に軽減している。なお、特許文献1においては、例えば室内熱容量特性などの温度に関連したパラメータを利用することが記載されているが、この室内熱容量特性のパラメータに基づいてどのように空調機器の制御を行うのかについての具体的記載はない。また、特許文献1では、室温そのものの状況変化に基づいて空調機器の制御を行ってはおらず、上記室内熱容量特性などの情報を複数利用して温度設定を行おうとしているために、処理のプロセスが複雑かつ重い傾向になってしまう。
【0030】
なお、上記図3では説明の便宜上、ローテーション時間ごとに停止させる空調機器200を1つのみとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、2以上の一定数の空調機器200を停止させるようにしてもよい。
【0031】
[処理手順例]
図4のフローチャートは、上記図3に示した第1の実施の形態としての運転制御のために運転制御部400が実行する処理手順例を示している。この図に示す処理は、図2に示した運転制御部400における機能部のいずれかが適宜実行するものとしてみることができる。
【0032】
まず、空調機器選別部410は、ローテーション時間の開始に応じたタイミングで、温度センサ300から入力される検出情報に基づいてゾーン110ごとの室温を認識する(ステップS101)。次に、空調機器選別部410は、ゾーン110のうちから、判定された室温が低いものから順にn個のゾーン110を選択する(ステップS102)。第1の実施の形態において、このゾーンの選択数に対応する変数nは予め固定的に設定されているものであり、ローテーション時間ごとに停止させる空調機器200の数に一致する。
【0033】
次に、空調機器選別部410は、運転/停止制御部430に対して、上記のように選択したn個のゾーン110に対応する空調機器200の停止を指示するとともに、選択されなかった他のゾーン110に対応する空調機器200の運転を指示する(ステップS103)。運転/停止制御部430は、ローテーション時間の開始に応じて、上記指示に応じて空調機器200ごとに運転または停止が行われるように制御を実行する(ステップS104)。
【0034】
次に、運転/停止制御部430は、ローテーション時間設定部420により設定されたローテーション時間が経過するのを待機する(ステップS105−NO)。そして、ローテーション時間が経過したことを判定すると(ステップS105−YES)、運転/停止制御部430は、続いてデマンドレスポンスの動作を終了させるべきか否かについて判定する(ステップS106)。
【0035】
デマンドレスポンスは例えば電力会社などの上位系統からの電力削減指示に応じて行われる。そこで、例えば運転/停止制御部430は、電力削減指示が有効であればデマンドレスポンスの動作を終了すべきではないと判定する(ステップS106−NO)。この場合、運転/停止制御部430は、ステップS101に戻ることで運転制御を継続する。これに対して、電力削減指示が解除されることによりデマンドレスポンスの動作を終了してよいと判定した場合(ステップS106−YES)、運転/停止制御部430は、所定のデマンドレスポンスの終了に対応した処理を実行する(ステップS107)。このように運転制御部400が処理を実行することにより、図3に示したように、室温の低いゾーン110の空調機器200のみを選別して停止させていくことができる。
【0036】
<第2の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
続いて、第2の実施の形態について説明する。デマンドレスポンスを行うに際しては、例えば上位系統から使用電力の削減量が指定される。運転制御部400は、上位系統から指定された電力の削減量に基づいて、建物設備100における各種機器ごとについての削減電力目標値を設定し、この目標値に基づいてデマンドレスポンスの制御を実行する。そこで、第2の実施の形態においては、空調機器200について設定された削減電力目標値を満たすように空調機器200の運転制御を行う。
【0037】
図5は、第2の実施の形態に対応する運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図において図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この図に示す運転制御部400は、図2に示す構成に対して、削減電力目標値保持部440および空調機器消費電力情報保持部450をさらに備える。
【0038】
削減電力目標値保持部440は、上記のように空調機器200について設定された削減電力目標値を保持する。空調機器消費電力情報保持部450は、空調機器200−1〜200−6それぞれの消費電力を示す情報を保持する。この空調機器消費電力情報保持部450には、例えばRAMの記憶領域を利用する。空調機器200−1〜200−6がすべて同じ機種であれば、空調機器消費電力情報保持部450は、これらの空調機器200に共通な1つの消費電力の値を保持すればよく、そのデータ量は非常に小さくて済む。また、空調機器200−1〜200−6が異なる場合には、それぞれの消費電力の値を保持することで、空調機器200間の機種の相違にも対応できる。また、この場合にも複数の空調機器200ごとに消費電力の値を格納するだけの簡単な構造であり、RAMの記憶領域も圧迫しない。
【0039】
上記構成のもとで、第2の実施の形態の運転制御部400は、ローテーション時間ごとに、そのときの削減電力目標値に応じた数の空調機器200が停止されるように制御する。このための処理手順例を、図6のフローチャートに示す。
【0040】
図6において、まず、空調機器選別部410は、選択すべきゾーン数を示す変数nに初期値として「1」を代入する(ステップS201)とともに、削減電力目標値保持部440から、空調機器200に対応して設定された削減電力目標値Prを取得する(ステップS202)。なお、ここでは、削減電力目標値Prは、上位系統から指定される電力削減量が変更されるのに応じて変更される場合があることを想定している。そこで、上記のようにローテーション時間ごとのサイクルで削減電力目標値Prを取得するようにして、削減電力目標値Prの変更に対してリアルタイムに対応できるようにしている。
【0041】
次に、空調機器選別部410は、ゾーンごとの室温を認識する(ステップS203)。次に、空調機器選別部410は、上記室温の認識結果に基づき、室温が低位のものから順にn個のゾーン110を選択する(ステップS204)。次に、空調機器選別部410は、上記ステップS204により選択されたn個のゾーン110に対応する空調機器200の総合電力Ptを算出する(ステップS205)。このために、空調機器選別部410は、空調機器消費電力情報保持部450から、選択されたn個のゾーン110に対応する空調機器200の消費電力情報を読み取り、この読み取った消費電力情報が示す値を加算する。このように求められた値が総合電力Ptとなる。
【0042】
次に、空調機器選別部410は、総合電力Ptが削減電力目標値Prよりも大きいか否かについて判定する(ステップS206)。ここで、総合電力Ptの方が小さいと判定した場合(ステップS206−NO)、現在選択されたn個のゾーンの空調機器200を停止させただけでは、削減電力目標値Prを満足できないことになる。そこで、この場合には、変数nをインクリメントして(ステップS207)、ステップS204に戻ることで選択するゾーン110の数を、室温が低位のものから順にしたがって1つ追加する。
【0043】
そして、総合電力Ptが削減電力目標値Prよりも大きくなったと判定すると(ステップS206−YES)、空調機器選別部410は、ステップS208の処理に進む。ステップS208〜S212は、図4のステップS103〜S107と同様となる。このような処理により、第2の実施の形態においては、削減電力目標値Prを満足するように、室温が低い1以上の空調機器200を適宜選択して停止させることが可能になる。
【0044】
<第3の実施の形態>
[運転制御部の機能構成例]
次に、第3の実施の形態について説明する。ここで、一具体例として、第3ゾーン110−3〜第5ゾーンの3つのゾーン110の間で同じ最低の室温が認識される状態が複数の連続したローテーション時間にわたって継続しているとする。この際、第1の実施の形態のように1つのゾーン110を選択するものとした場合、空調機器選別部410の選択アルゴリズムによってはローテーション時間ごとに同じゾーン110が選択される可能性がある。つまり、ほかにも同じ室温のゾーン110があるのに係わらず、同じ1つのゾーン110の空調機器200のみが停止されてしまうという状況が生じ得る。居住者の快適性をより損なわないようにすることを考慮すれば、1つのゾーン110の空調機器200のみが集中して停止される状態は好ましいとはいえず、分散されることが好ましい。そこで、第3の実施の形態においては、同じ最低の室温のゾーン110間で空調機器200の停止が順次交代されるようにする。
【0045】
図7は、第3の実施の形態に対応する運転制御部400の機能構成例を示している。なお、この図に示す運転制御部400の機能構成は、第1の実施の形態に対応する図2の構成を基としているが、第1の実施の形態に対応する図2の構成を基とすることもできる。また、この図において図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
この図に示す運転制御部400は、図2の構成に対してさらに選別履歴情報保持部460を備える。選別履歴情報保持部460は、空調機器選別部410がローテーション時間ごとに選別した空調機器200を示す情報(選別履歴情報)を保持する。この選別履歴情報保持部460は、例えばRAMの記憶領域を利用することができる。
【0047】
[処理手順例]
第3の実施の形態として運転制御部400が実行する処理手順例は、図4に示した第1の実施の形態と同様となる。ただし、ステップS102において空調機器選別部410が実行するゾーン選択について、図8に示す手順による処理を実行する。なお、図8に示す処理は、説明を分かりやすいものとすることの便宜上、空調機器200が停止されるゾーン110の選択数は1つ(n=1)である場合を想定する。
【0048】
図8において、空調機器選別部410は、図4のステップS101による判定結果から、室温が最低のゾーンを候補ゾーンとして選択し(ステップS301)、この選択した候補ゾーンが2以上であるか否かについて判定する(ステップS302)。候補ゾーンが2つ以上選択される場合とは、最低値として同じ室温のゾーン110が2以上ある場合となる。
【0049】
ここで、候補ゾーンが2以上ではない、つまり1つであると判定された場合(ステップS302−NO)、空調機器200は、この1つの候補ゾーンを、空調機器200の停止に対応するゾーンとして選択する(ステップS305)。これに対して、候補ゾーンが2以上であると判定された場合(ステップS302−YES)、空調機器選別部410は、選別履歴情報保持部460に保持されている選別履歴情報を参照する(ステップS303)。そして、この選別履歴情報の内容に基づいて候補ゾーンのうちから1つのゾーン110を、空調機器200の停止に対応するゾーン110として選択する(ステップS304)。
【0050】
選別履歴情報には、過去において選別履歴情報保持部460が選択した空調機器200の停止に対応するゾーンが示されている。そこで、空調機器選別部410は、上記ステップS304の処理として、候補ゾーンのうちで、最も過去に選択されたゾーン110、または、未だ選択されていないゾーン110を選択する。この処理により、室温が最低のゾーンが複数存在した状態が連続している場合に、これら複数のゾーン110の空調機器200を順次交代して停止させていくことができる。
【0051】
そして、空調機器選別部410は、上記ステップS304またはステップS305によるゾーンの選択結果が登録するように選別履歴情報保持部460における選別履歴情報を更新し(ステップS306)、図4のステップS103に進む。
【0052】
<第4の実施の形態>
[運転制御動作例]
ここで、それぞれが異なる2以上のゾーン110から成る複数のゾーングループを設定し、このゾーングループ単位でデマンドレスポンスに対応した空調機器200の運転/停止を行う場合を想定する。具体例として、図1の第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6から各3つのゾーン110から成る2つのゾーングループを設定する。そして、これらの2つのゾーングループについて、ローテーション時間ごとに空調機器200の運転と停止が交互に行われるように制御することとする。
【0053】
例えば空調機器200の機種や性能、ゾーングループを形成するゾーン110の容積、ゾーン110内に存在する人の数、さらには設備が発する熱量などの違いにより、上記2つのゾーングループの各室温に差が生じ得ることは容易に想定される。このようにゾーングループ間で室温に差が生じている状態で、例えばローテーション時間について固定的に一定としたままであると、例えば一方のゾーングループでは冷房が効き過ぎの傾向が続き、他方では余り冷房が効いていないというような状態となり得ることも考えられる。建物設備100における居住者の快適性をできるだけ確保しようとすれば、このようなゾーングループ間の温度差を小さくできるようにすることが好ましい。
冷房を前提とした場合、室温が低いゾーングループについては、冷房が効き過ぎの傾向であるととらえて、単位時間あたりの運転時間を短くし、停止時間については長くすることが好ましい。一方、室温が低いゾーングループは、冷房が効いていない傾向にあるととらえて、単位時間あたりの運転時間を長くし、停止時間を短くすることが好ましいといえる。
【0054】
そこで、第4の実施の形態においては、2つの異なる長さのローテーション時間を設定できるようにする。そのうえで、室温が高い方のゾーングループの空調機器200を運転させ、かつ、室温が低い方のゾーングループの空調機器200を停止させる際には、長い方のローテーション時間を設定する。一方、室温が低い方のゾーングループの空調機器200を運転させ、かつ、室温が高い方のゾーングループの空調機器200を停止させる際には、短い方のローテーション時間を設定する。
【0055】
図9は、第4の実施の形態に対応する運転制御動作の一例が示されている。この図では、第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6を、第1ゾーングループ(ZG)と第2ゾーングループ(ZG)の2つに分割することとしている。第1ゾーングループは、3つの第1ゾーン110−1〜第3ゾーン110−3から成る。また、第2ゾーングループは、残る3つの第4ゾーン110−4〜第6ゾーン110−6から成る。
【0056】
前提として、第4の実施の形態においては、前述したように、ローテーション時間ごとに第1ゾーングループと第2ゾーングループが交互のタイミングで空調機器200の運転と停止を繰り返す。そのうえで、ローテーション時間ごとに、2つのローテーション時間Ta、Tbのうちのいずれか一方が設定されるように、適宜切り替えが行われる。ローテーション時間Taは、ここでは10分とする。また、ローテーション時間Tbは、ローテーション時間Taより短く、ここでは5分とする。なお、この時間設定は一例であって、ローテーション時間TaとTbは他の時間長が任意に設定されてよい。
【0057】
また、ゾーングループとしての室温は、そのゾーングループに含まれるゾーン110の温度センサ300により検出された室温の平均値を求めることとする。具体的に、第1ゾーングループの室温は、第1ゾーン110−1〜第3ゾーン110−3の各温度センサ300−1〜300−3により検出された室温の平均値となる。第2ゾーングループの室温は、第4ゾーン110−4〜第6ゾーン110−6の各温度センサ300−4〜300−6により検出された室温の平均値となる。
【0058】
まず、時刻9:00から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させることとしている。この時刻9:00の時点で、第1ゾーングループの室温は25.5℃、第2ゾーングループの室温は27.0℃であり、したがって、第1ゾーングループの方が低い。つまり、空調機器200を停止させるべきゾーングループの室温の方が低い。そこで、この場合には、長い方のローテーション時間Ta(10分)を設定する。
【0059】
次の時刻9:10からのローテーション時間においては、先のローテーション時間とは逆に、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させるのであるが、室温は、運転が行われる第1ゾーングループの方が前回と同様に低い。そこで、この場合には、短い方のローテーション時間Tb(5分)を設定する。
【0060】
次の時刻9:15からのローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させる。このときも、室温は、停止対象の第1ゾーングループの方が低いことから、長い方のローテーション時間Taが設定される。また、次の時刻9:25からのローテーション時間においては、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させることになる。室温は、依然として第1ゾーングループの方が低いことから、短い方のローテーション時間Tbが設定される。
【0061】
次の時刻9:30から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを停止させ、第2ゾーングループを運転させる。そして、このときの室温、第1ゾーングループよりも第2ゾーングループの方が低くなるように変化している。この場合、運転が行われるゾーングループの室温の方が低いことになる。そこで、この場合は、前回と同様にローテーション時間Tbを設定する。このようにゾーングループ間で室温の大小関係に変化があった場合、図9に示されるように、ローテーション時間Tbは連続して設定される場合がある。また、同様の理由によりローテーション時間Tbも連続して設定される場合がある。
【0062】
次の時刻9:35から開始されるローテーション時間においては、第1ゾーングループを運転させ、第2ゾーングループを停止させる。このときの室温は、前回のローテーション時間と同様に第2ゾーングループの方が低いことから、ローテーション時間Taが設定される。このように、第4の実施の形態においては、室温の低い方のゾーングループの運転時間が短く、かつ、停止時間は長くなるようにローテーション時間の切り替えが行われる。
【0063】
[運転制御部の機能構成例]
図10は、第4の実施の形態に対応した運転制御部400の機能構成を示している。この図に示される運転制御部400は、図2に示した構成に対して、まず、空調機器選別部410に代えて、運転/停止設定部410Aを備える。また、グループ室温算出部470をさらに備えている。
運転/停止設定部410Aは、図9に例示したように、2つのゾーングループの間で交互に運転と停止が繰り返されるように、運転対象となる空調機器200と停止対象となる空調機器200を設定する。グループ室温算出部470は、各ゾーン110の温度センサ300から室温の情報を入力して、ゾーングループごとの室温を判定する。そして、ローテーション時間設定部420は、グループ室温算出部470により求められたゾーングループごとの室温と、運転/停止設定部410Aによる空調機器200ごとの運転/停止の設定内容に基づいて、ローテーション時間Ta、Tbのいずれかを設定する。
【0064】
[処理手順例]
図11は、第4の実施の形態に対応して運転制御部400が実行する処理手順例を示している。グループ室温算出部470は、まず、温度センサ300から入力した室温の情報からゾーン110ごとの室温を認識すると(ステップS401)、この認識結果からゾーングループごとの室温を算出する(ステップS402)。ゾーングループごとの室温は、前述のようにゾーングループに含まれるゾーン110ごとの室温の平均値として求めることができる。
【0065】
次に、ローテーション時間設定部420は、ステップS402の算出結果から、ゾーングループのうちで室温が最低のものを特定する(ステップS403)。また、ローテーション時間設定部420は、運転/停止設定部410Aの設定内容に基づいて、ステップS403にて特定されたゾーングループの空調機器200は、今回のローテーション時間において運転と停止のいずれが設定されているか判定する(ステップS404)。
【0066】
ここで、停止に対応するものと判定した場合(ステップS404−停止)、ローテーション時間設定部420は、長い方のローテーション時間Taを設定する(ステップS405)。これに対して、運転に対応するものと判定した場合(ステップS404−運転)、ローテーション時間設定部420は、短い方のローテーション時間Tbを設定する(ステップS406)。
【0067】
運転/停止制御部430は、運転/停止設定部410Aにより設定された空調機器200の運転/停止の設定内容と、上記ステップS405またはステップS406により設定されたローテーション時間に基づいて、空調機器200の運転、停止の制御を実行する(ステップS407)。これにより、ローテーション時間ごとにゾーングループ単位で空調機器200の運転と停止が行われる。なお、以降のステップS408〜S410の処理は、図4のステップS105〜S107と同様となる。このような処理が実行されることで、ゾーングループ間の室温の関係に対応してローテーション時間が適切に変更される。
【0068】
なお、上記第4の実施の形態においては、ローテーション時間Ta、Tbについて、それぞれ固定としている。しかし、例えば、ゾーングループ間の温度差などに基づいて、ローテーション時間Ta、Tbを逐次変化させるようにすることも考えられる。また、例えば、ゾーングループのそれぞれについての温度の比率を算出し、この温度の比率に応じて、ローテーション時間を変更するようにしてもよい。ここでは、冷房において、比率が高い(温度が高い)ゾーングループについて、ローテーション時間を長く、比率が低い(温度が低い)ゾーングループについては、ローテーション時間を短くし、比率が1:1に近づくように、制御するようにしてもよい。ローテーション時間をどのように決めるかについては、例えば、温度の比率に応じて算出する演算式を予め記憶しておき、比率に応じたパラメータをその演算式に代入して算出するようにしてもよい。また、上記第4の実施の形態は、3以上のゾーングループにも対応できる。例えば図11の処理手順にしたがえば、3以上のゾーングループのうち、最低温度のゾーングループの運転/停止の設定内容に基づいてローテーション時間を設定することができる。
【0069】
また、これまでの説明においては空調機器200が冷房を行うことを前提として説明したが、暖房を行う場合にも本実施の形態の構成を適用できる。暖房の場合、例えば第1〜第3の実施の形態では、空調機器選別部410により、冷房の場合とは逆に、室温が高い順にしたがってn個のゾーン110を選択していくようにすればよい。つまり、冷房であれば空気温度を低下させる方向に調整し、暖房であれば空気温度を高くさせる方向に調整するというように「温度調整方向」が異なる。本実施の形態では、この「温度調整方向」における最小値または最大値、すなわち「極値」の室温のゾーン110を停止対象として選択するものである。また、第4の実施の形態では、冷房の場合とは逆に、室温が高い方のゾーングループが停止の場合には長い方のローテーション時間Taを設定し、運転の場合には短い方のローテーション時間Tbを設定するようにローテーション時間設定部420を構成すればよい。
【0070】
また、上記第1〜第4の実施の形態においては、ゾーン110またはゾーングループの室温自体に基づいて、停止対象の空調機器200の選択やローテーション時間の設定を行うこととしている。空調を行う際には目標となる室温が設定されるが、この点に着目し、空調機器200に対する設定温度とゾーン110またはゾーングループごとの室温との差に基づいて停止対象の空調機器200の選択やローテーション時間の設定を行うようにすることも考えられる。具体例として、第1の実施の形態において冷房が行われている場合の動作は次のようになる。つまり、ステップS102において、設定温度より低い室温が検出されているゾーン110のうちから、設定温度と室温との差が大きい順にn個のゾーン110を選択する。そして、この選択されたゾーン110に対応する空調機器200を停止させるというものである。
【0071】
<第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態においては、図12に示すように、例えば、第1ゾーン110−1〜第6ゾーン110−6がそれぞれ個別の部屋や施設とされるのではなく、1つの同じ室内や館内において仮想的に分割された領域である場合を想定する。なお、この図においては、図示を簡略なものとするために、運転制御部400、空調機器200および温度センサ300の図示は省略している。
【0072】
この場合において、例えば第4および第5の実施の形態のように、2つのゾーングループにグループ分けを行い、これらのゾーングループで運転と停止が交互に繰り返されるように制御する場合を考えてみる。この場合、ゾーン110同士の間に仕切りはないために、運転と停止が交互に行われるにあたり、できるだけ冷房効果が均一となるように、ゾーングループのグループ分けのパターンを設定することが好ましい。
【0073】
そこで、第5の実施の形態として、図12に示す環境のもとで第4または第5の実施の形態による運転制御を行うにあたっては、以下のようにグループゾーンを形成する。つまり、第1のゾーングループは、第1ゾーン110−1、第3ゾーン110−3および第5ゾーン110−5により形成し、第2のゾーングループは、第2ゾーン110−2、第4ゾーン110−4および第6ゾーン110−6により形成する。
【0074】
上記各グループゾーンは、図12から分かるように、それぞれ、千鳥格子状に配置されたゾーン110により形成されている。グループゾーンを形成するゾーン110が千鳥格子状に配置されることで、横方向および縦方向において隣接して他のグループゾーンに含まれるゾーン110が配置されることになる。これにより、例えば連続して配置されるゾーン110によりグループゾーンを形成した場合と比較して、空調効果を均一に行き渡らせることが可能になり、快適性の向上が図られる。
【0075】
<空調機器の他の例>
続いて、本実施の形態において運転制御対象となる空調機器200の他の例について説明する。まず、図13は、パッケージ空調機器200Aを使用した例を示している。パッケージ空調機器200Aは中規模施設においてしばしば利用される空調機器の1つであり、空調管理に必要な機能をパッケージングして構成される。例えば、1つのパッケージ空調機器200Aは、パッケージ室外機230と室内機240から成る。この場合、例えば運転制御部400による運転、停止の指示は、室内機240に対して行う場合が多い。
【0076】
図14は、VAV(Variable Air Volume)空調機器200Bを使用した例を示している。VAV空調機器200Bは、ゾーンごとに設けられるVAVユニット260と、これらのVAVユニット260に対応する空調機器250から成る。空調機器250は、例えば設定温度に応じて空気の温度を調整し、この空気を例えばダクトを経由して各VAVユニット260に対して供給する。VAVユニット260は、対応のゾーン110において設定温度が得られるように空気の風量を制御する。この場合の運転制御部400は、各VAVユニット260の運転、停止を制御する。
【0077】
図15は、空調機器として各ゾーン110にファンコイルユニット200Cを備えた例を示している。ファンコイルユニット200Cは、室内から空気を取り込んで熱交換器により温度を調整したうえで空調場所へ送風するように動作する空調機器である。この場合、運転制御部400は、各ゾーンのファンコイルユニット200Cの運転、停止を制御する。
【0078】
なお、本実施の形態の運転制御部400は内部にコンピュータシステムを有している。そして、これまでにおいて説明した運転制御部400の処理は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって実行される。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0079】
100 建物設備
110 ゾーン
200 空調機器
300 温度センサ
400 運転制御部
410 空調機器選別部
410A 運転/停止設定部
420 ローテーション時間設定部
430 運転/停止制御部
440 削減電力目標値保持部
450 空調機器消費電力情報保持部
460 選別履歴情報保持部
470 グループ室温算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出部と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定部と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定部と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御部と、
を備えることを特徴とする運転制御装置。
【請求項2】
前記単位制御時間設定部は、
前記グループ温度が前記空調機器の温度調整方向における極値の領域グループを特定し、当該特定された領域グループに対応する空調機器が前記停止対象として設定されている場合に第1の単位制御時間を設定し、前記特定された領域グループに対応する空調機器が前記運転対象として設定されている場合に前記第1の単位制御時間よりも短い第2の単位制御時間を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記複数の領域は水平および垂直方向に沿って配列されており、1つのグループ領域は、複数の領域のうち千鳥格子状の関係で配列されている所定数の領域から成る、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別部と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御部と、
を備えることを特徴とする運転制御装置。
【請求項5】
前記空調機器選別部は、
消費電力の合計が削減電力目標値を越える数の前記空調機器を前記停止対象として選別することを特徴とする請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記空調機器選別部は、前記空調機器の温度調整方向における極値の領域温度から温度調整方向の逆順にしたがって、所定数の前記領域を選択する、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記空調機器選別部は、
前記領域を選択するに際して、前記領域温度が同じとなる複数の領域が選択の候補となった場合、これら候補の領域のうち、最も過去に選択されている、または、未だ過去において選択されていない領域を選択する、
ことを特徴とする請求項6に記載の運転制御装置。
【請求項8】
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順と、
を備えることを特徴とする運転制御方法。
【請求項9】
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順と、
を備えることを特徴とする運転制御方法。
【請求項10】
運転制御装置に、
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
運転制御装置に、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出部と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定部と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定部と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御部と、
を備えることを特徴とする運転制御装置。
【請求項2】
前記単位制御時間設定部は、
前記グループ温度が前記空調機器の温度調整方向における極値の領域グループを特定し、当該特定された領域グループに対応する空調機器が前記停止対象として設定されている場合に第1の単位制御時間を設定し、前記特定された領域グループに対応する空調機器が前記運転対象として設定されている場合に前記第1の単位制御時間よりも短い第2の単位制御時間を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記複数の領域は水平および垂直方向に沿って配列されており、1つのグループ領域は、複数の領域のうち千鳥格子状の関係で配列されている所定数の領域から成る、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別部と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御部と、
を備えることを特徴とする運転制御装置。
【請求項5】
前記空調機器選別部は、
消費電力の合計が削減電力目標値を越える数の前記空調機器を前記停止対象として選別することを特徴とする請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記空調機器選別部は、前記空調機器の温度調整方向における極値の領域温度から温度調整方向の逆順にしたがって、所定数の前記領域を選択する、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記空調機器選別部は、
前記領域を選択するに際して、前記領域温度が同じとなる複数の領域が選択の候補となった場合、これら候補の領域のうち、最も過去に選択されている、または、未だ過去において選択されていない領域を選択する、
ことを特徴とする請求項6に記載の運転制御装置。
【請求項8】
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順と、
を備えることを特徴とする運転制御方法。
【請求項9】
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順と、
を備えることを特徴とする運転制御方法。
【請求項10】
運転制御装置に、
空調機器が設置される複数の領域ごとに検出された領域温度に基づいて、所定の2以上の前記領域により形成される複数の領域グループごとのグループ温度を算出する温度算出手順と、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、運転対象の空調機器に対応する領域グループと停止対象の空調機器に対応する領域グループの組み合わせが変更されるように、前記領域グループ単位で運転対象と停止対象の前記空調機器を設定する運転/停止設定手順と、
前記単位制御時間を、前記グループ温度と、前記空調機器の運転と停止の設定内容に基づいて設定する単位制御時間設定手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を実行する運転制御手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
運転制御装置に、
空調機器の運転/停止を制御するための単位制御時間ごとに、空調機器が設置される複数の領域ごとに検出される領域温度に基づいて所定数の前記領域を選択し、当該選択された領域に設置される空調機器を停止対象として選別し、選択されない他の領域に設置される空調機器を運転対象として選別する空調機器選別手順と、
前記運転対象の空調機器を運転させ、前記停止対象の空調機器を停止させる制御を前記単位制御時間ごとに実行する運転制御手順と、
を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−64542(P2013−64542A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203319(P2011−203319)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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