説明

運転支援システム

【課題】 車両が所定の踏切へ停止した時に、運転者が窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認できるシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】 所定の踏切へ車両が第1の距離まで近づいたことを検出して、制御信号を出力する検出手段と、該制御信号を受信して、車両の窓を開放する窓制御手段と、を備える、運転支援システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システムに関する。詳しくは、所定の踏切に車両を停止させたときに窓を開放させる運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションの搭載された車両が踏切に接近するとき、画面上にアイコンが出力されて、運転者に注意を促すものがある。
一方、カーナビゲーションの搭載された車両が交差点へ接近するとき、運転者に対して警告や減速命令を出力する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では踏切に接近するときも、同様に警告や減速命令が出力される。
【特許文献1】特開2004−086363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、運転者は車両を所定の踏切(本発明においては、一時停止時に窓を開けて外部の音を確認する必要がある踏切とし、信号機のない踏切や点滅する信号機を備える踏切を含む)に停止させたときに、安全確認(窓を開けて外部の音(電車の接近の音等)を確認する等)することが道路交通法等の法令で義務付けられている。しかし、運転者は踏切で車両を停止したとき、外部の音を確認するために窓を開けることは煩わしい。
そこで、本発明は、車両が所定の踏切へ停止した時に、運転者が窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認できるシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以上の課題を解決するために、次の構成からなる。即ち、本発明の第1の構成は、所定の踏切へ車両が第1の距離まで近づいたことを検出して、制御信号を出力する検出手段と、該制御信号を受信して、車両の窓を開放する窓制御手段と、を備える、運転支援システムである。
【0005】
上記第1の構成によれば、所定の踏切には第1の距離が関連付けられている。この第1の距離まで車両が近づいたとき、制御信号が出力されて、この制御信号を受信して窓を開放させることになる。従って、第1の距離を通過して、所定の踏切で停止したときに窓を所定の開放状態させることが可能になる。よって、運転者は車両を踏切に停止させたときに、窓を開放させる操作を行うことなく、外部の音を確認することができ、もって、法令を遵守することができる。
【0006】
本発明の第2の構成は、第1の構成において、検出手段は、踏切から第1の距離にある第1の地点を保存する地図データ記憶手段を備え、車両の位置が第1の地点と一致したとき、制御信号を出力する。
地図データは所定の踏切に関連付けられた第1の地点をもち、この地点に車両の位置が一致したとき、制御信号を出力することができる。同様に、運転者は車両を踏切に停止させたときに外部の音を確認することができる。
【0007】
本発明の第3の構成は、第1又は第2の構成において、検出手段は、踏切から車両までの距離を演算する手段を備え、演算された距離が第1の距離と一致したとき、制御信号を出力する。
踏切から車両までの距離を演算して、車両の位置が第1の距離と一致したとき、制御信号を出力することができる。
【0008】
本発明の第4の構成は、第1〜第3の構成において、窓制御手段は制御信号を受信したとき、車両の窓が開放状態であれば、車両の窓の開放状態を維持する。
制御信号を受信したときに窓が開放状態であれば、その窓を閉鎖する操作を禁止することで、窓の開放状態を維持させることができる。従って、窓が閉鎖状態のときのみ、窓の開放動作を行えばよい。
【0009】
本発明の第5の構成は、第1〜第4の構成において、車両が踏切を通過した後、窓制御手段は車両の窓を第1の距離に達する前の状態に戻す。
踏切を通過した後、車両の窓を第1の距離に達する前の状態に戻すことで、車両の踏切通過前後における車内環境を維持させることができる。
【0010】
本発明の第6の構成は、第1の構成において、車両の車速及び加速度を検出する第2の検出手段と、第2の検出手段で検出された車速及び加速度と、第1の距離とを用いて、車両が踏切へ到達する時間を演算する時間演算手段とが更に備えられ、窓制御手段は時間演算手段で演算された時間経過後に車両の窓を所定の開放状態にする。
これにより、第1の距離と、第2の検出手段で検出された車速及び加速度とをもとに、踏切へ到達する時間を演算し、時間経過後(踏切に停止したとき)に車両の窓を所定の開放状態にさせることができる。そのため、運転者は窓を開放させる動作を行うことなく、外部の音を確認することができる。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の実施例で用いられる運転支援システム10のブロック図である。
運転支援システム10は制御部11と、ナビゲーション部20と、検出部31と、窓制御部32と、距離演算部33と、第2の検出部34と、時間演算部35と、記憶部40と、を備える。
制御部11はCPU12を備える。運転支援システム10を構成する各要素はこのCPU12にバスを介して接続され、その制御を受ける。CPU12は記憶部の制御プログラム記憶領域41に記憶された制御プログラムを読み出して、実行することにより、各要素の制御を行うこととなる。
ナビゲーション部20は、ナビゲーションシステム21、GPS受信機22、ビーコン受信機23及びFM多重受信機24、表示部25、操作部26、スピーカ部27、各種センサ(ジャイロセンサなど)28等を備える。ナビゲーションシステム21はナビゲーション部20に備えられる他の要素を統括制御する。GPS受信機22はGPSアンテナを介してGPS衛星が出力する信号を受信して、現在の車両位置及び車両方位をナビゲーションに供給する。表示部25はナビゲーションの内容を表示する装置であり、液晶モニターなどが用いられる。操作部26はナビゲーションを操作するための装置である。スピーカ部27はナビゲーションの案内や警告等を音声を用いて伝える装置である。
【0012】
検出部31は車両が第1の距離又は第1の地点へ達したことを検出し、制御信号を出力する。このとき、検出部31は窓開閉データ記憶領域45に記憶されている窓の開閉データを読み込んで、現在の窓の開閉状況に応じて、制御信号を生成する。車両の窓が開放状態であれば、窓の開放状態を維持させる制御信号を生成する。一方、窓が閉鎖状態であれば、窓を開放させる制御信号を生成することになる。出力された制御信号は窓制御部に送信される。
窓制御部32は検出部31で出力された制御信号を受信して窓の開閉動作を行う。制御信号の種類が窓の開放状態を維持させる信号であれば、窓の駆動動作を行わず、開放状態を維持する。一方、制御信号の種類が窓を開放させる制御信号であれば、窓制御部32は窓の開放動作を行うことになる。なお、踏切停止時に開放される窓の開放の程度は、外部の音を聞こえる程度であればよく、半開でもよい。
距離演算部33は所定の踏切から車両までの距離を演算する。演算された距離が第1の距離と一致したとき、検出部31は制御信号を出力することになる。距離を演算する方法は特に限定されないが、例えば、地図データ上における踏切と車両間の距離データを用いてもよい。
第2の検出部34は車両の速度及び加速度を検出する。検出された速度及び加速度は車両が踏切へ到達するまでの時間を演算するために用いられる。
時間演算部35は第2の検出部34で検出された速度及び加速度と、第1の距離データ記憶領域43に記憶された第1の距離データをもとに、車両が踏切に到達するまでの時間を演算する。車両は演算された時間の経過時に窓の開放動作を完了させることになる。
【0013】
記憶部40は一般的なDVD、CD−ROMなどの記憶媒体、ハードディスクなどの記憶装置等が用いられる。記憶部40は制御プログラム記憶領域41、地図データ記憶領域42、第1の距離データ記憶領域43、第1の地点データ記憶領域44、窓開閉データ記憶領域45を備える。
制御プログラム記憶領域41はCPU12を動作させるための制御プログラムが記憶されている。
地図データ記憶領域42はナビゲーションに用いられる地図データが記憶されている。この地図データは一般的な地図データからなるものであって、例えば、道路の距離及び幅員、交差点や踏切地点の座標、路面標示の座標等が含まれる。地図データ記憶領域42は踏切データ記憶領域421を備える。踏切データは所定の踏切に関するデータであり、地図データ上での位置に関するデータが含まれる。
第1の距離データ記憶領域43は踏切(踏切の一時停止線を含む)から所定の距離を記憶している。この距離データは車両が第1の距離に達したときに、制御信号を出力させるためのトリガとなる。なお、第1の距離は車両のサイズや車種等により任意に設定することができる。
第1の地点データ記憶領域44は所定の踏切に関連付けられた第1の地点データを記憶する領域である。第1の地点は第1の距離の位置あることが好ましいが、任意に設定することができる。また、第1の地点データには車両の進入方向に関するデータを有しており、第1の地点から踏切へ近づく方向に車両が進入したときに制御信号が出力される。
窓開閉データ記憶領域45は車両の窓(例えば、運転者側の窓)の開閉状態をデータとして随時記憶する領域である。窓の開閉状態を読み込む手段は特に限定されず、パワーウインドのスイッチの状況、窓の駆動モータの動作を検出してもよい。この窓開閉データは、車両が第1の距離へ接近時、窓が開いていればその状態を維持する情報(すなわち、窓を閉鎖する操作を禁止する情報)として用いられる。一方、窓が閉まっていればその窓を開放させるための情報として用いられる。また、踏切の通過前後において窓の開閉状態を維持させるための情報としても用いられる。
【0014】
次に、運転支援システムを搭載した車両の窓の開閉動作を、図2のフローチャートを用いて説明する。
走行を開始した車両は踏切の検索を開始する(ステップ1、3)。踏切が検索されたとき、地図データからその踏切が所定の踏切かどうかを判断する。所定の踏切であれば(ステップ5:Y)、次のステップに進む。所定の踏切でなければ(ステップ5:N)、次の踏切を検索することになる。
所定の踏切が検索された後、その踏切を確認する(ステップ7)。次に、踏切に関連付けられている第1の距離を読み込む(ステップ9)。そして、車両が第1の距離に到達したとき、次のステップに進む(ステップ11:Y)。車両が第1の距離に到達しないときは到達するまで繰り返される(ステップ11:N)。
車両が第1の距離に到達したとき、窓開閉データを読み込む。窓が開放状態であれば(ステップ13:Y)、制御部が窓を閉鎖する操作を禁止させる制御信号を生成する(ステップ15)。一方、窓が開放状態でなければ(ステップ13:N)、制御部が窓の開放動作を開始させる制御信号を生成することになる。
窓の開放動作を開始した後、車両の車速及び加速度と、第1の距離データとをもとに、踏切までの到達時間を演算する(ステップ19)。そして、この到達時間が経過した後、窓が所定の開放状態になるように、窓の開放動作を行うことになる(ステップ23)。これにより、運転者は踏切で停止したときに窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認することができる。
その後、車両が踏切で停止して(ステップ25)、踏切を通過した後(ステップ27)、車両が第1の距離へ到達前に窓が開放状態であったのであれば、窓の開放状態を維持させる(ステップ31)。一方、窓が閉鎖状態であったのであれば、窓の閉鎖動作を行うことになる。これにより、踏切の通過の前後において、車内環境を維持させることができる。
【0015】
図4(A)を用いて、踏切の前後における車両の窓の開閉動作を説明する。
車両401が第1の距離へ到達したとき((2)地点)、第1の距離と、車速及び加速度とをもとに、踏切(一時停止線)402までの到達時間を演算する。このとき、(1)地点において、車両401の窓が開放状態であったのであれば、窓を閉鎖する操作を禁止する。一方、閉鎖状態であったのであれば、(2)地点から窓の開放動作を開始し、車両401が(3)地点に到達する時間に合わせて、窓を所定の開放状態にすることになる。これにより、運転者は(3)地点において、窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認することができる。
その後、線路を通過した後((4)地点)、(1)地点における車両401の窓の状態に戻すため、(1)地点において車両401の窓が閉鎖状態であったのであれば、窓を閉鎖する動作を行うことになる。
【0016】
なお、本実施例では、車両が第1の距離へ到達してから踏切で停止するまでの計測用パラメータとして時間を用いて、踏切への到達時間に合わせて窓の開放動作を行ったが、計測用パラメータとして距離を用いてもよい。
計測用パラメータとして距離を用いる場合、図4(A)における(2)地点(第1の距離)へ到達してから、距離のカウントを開始して、第1の距離を移動したときに合わせて窓の開放動作を行ってもよい。移動距離に合わせて窓の開放動作を行う方法は特に限定されないが、例えば、第1の距離を等分分割して、分割された距離を移動する毎に窓の開放動作を進めて、(3)地点(踏切)で停止するときに窓を所定の開放状態にさせるように制御してもよい。
【実施例2】
【0017】
以下に、他の実施例を示す。
図1において、記憶部40は第1の地点データ記憶領域44を備える。この第1の地点データ記憶領域44には窓の開放動作を開始させる地点(位置データ)が記憶されている。この第1の地点データは踏切データ記憶領域421に記憶されている各踏切と個々に関連付けられている。踏切へ近づく方向の車両がこの第1の地点に到達したとき、窓の開放動作を開始することになる。
【0018】
図3のフローチャートを用いて、踏切通過の前後における窓の開閉動作を説明する。なお、図3において図2と同一の動作を示すステップには同一の符号を付してその説明を部分的に省略する
走行を開始して、第1の地点へ到達したとき(ステップ43:Y)、踏切へ近づく方向から第1の地点へ到達したかを判断する。踏切へ近づく方向から第1の地点へ到達したとき(ステップ45:Y)、次のステップへ進む。一方、踏切から第1の地点へ到達したとき(ステップ45:N)、ステップ43へ戻る。
踏切へ近づく方向から第1の地点へ到達したとき、窓の開放状態を確認する。窓が開放状態であれば(ステップ47:Y)、窓を閉鎖する操作を禁止する。一方、窓が開放状態でなければ(ステップ47:N)、窓の開放動作を開始する(ステップ51)。
次に、第1の地点から踏切までの距離(第1の距離)と、第2の検出部で検出された車速及び加速度とをもとに、踏切までの到達時間を演算する(ステップ53)。そして、この到達時間が経過した後、窓が所定の開放状態になるように、窓の開放動作を行うことになる。よって、運転者は踏切で一時停止したときに窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認ことができる。
このように、検索モードでなくても、車両がこの第1の地点に到達したときに窓の開放動作を行うことが可能となる。
【0019】
図4(B)を用いて、踏切の通過前後における車両501の窓の開閉動作を説明する。
車両501が第1の地点へ到達したとき((6)地点)、第1の地点から踏切(一時停止線)502までの距離と、車速及び加速度とをもとに、踏切502までの到達時間を演算する。(5)地点において、車両501の窓が開放状態であれば、窓を閉鎖する操作を禁止する。一方、閉鎖状態であれば、(6)地点から窓の開放動作を開始し、車両501が(7)地点に到達する時間に合わせて、窓を所定の開放状態にすることになる。運転者は(7)地点において、窓の開放操作を行うことなく、外部の音を確認する。その後、線路を通過した後、(8)地点では、(5)地点における車両501の窓の状態に戻すため、(5)地点において車両501の窓が閉鎖状態であったのであれば、窓を閉鎖する動作を行うことになる。
【0020】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施例で用いられる運転支援システムのブロック図である。
【図2】図2は実施例1の踏切付近における窓の開閉動作を説明するフローチャートである。
【図3】図3は実施例2の踏切付近における窓の開閉動作を説明するフローチャートである。
【図4】図4は踏切を通過する車両の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 運転支援システム、20 ナビゲーション部、31 検出部、32 窓制御部、33 距離演算部、34 第2の検出部、35 時間演算部、40 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の踏切へ車両が第1の距離まで近づいたことを検出して、制御信号を出力する検出手段と、
該制御信号を受信して、車両の窓を開放する窓制御手段と、
を備える、運転支援システム。
【請求項2】
前記検出手段は、前記踏切から前記第1の距離にある第1の地点を保存する地図データ記憶手段を備え、車両の位置が前記第1の地点と一致したとき、前記制御信号を出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記踏切から前記車両までの距離を演算する手段を備え、該演算された距離が前記第1の距離と一致したとき、前記制御信号を出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記窓制御手段は前記制御信号を受信したとき、前記車両の窓が開放状態であれば、該車両の窓の開放状態を維持する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記車両が前記踏切を通過した後、前記窓制御手段は前記車両の窓を前記第1の距離に達する前の状態に戻す、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記車両の車速及び加速度を検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段で検出された車速及び加速度と、前記第1の距離とを用いて、前記車両が前記踏切へ到達する時間を演算する時間演算手段とが更に備えられ、
前記窓制御手段は前記時間演算手段で演算された時間経過後に前記車両の窓を所定の開放状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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