説明

過給機の断熱カバー

【課題】過給機の断熱カバーの断熱材の厚みを増大させることなく、断熱性能を向上させ、過給機の断熱カバーの製作コストの低減、装着性の向上を図る。
【解決手段】ハウジングに装着される断熱カバーが外表面材21、断熱材22、内表面材23から成り、少なくとも3層を含む断面構造となっており、前記ハウジングの表面と前記内表面材との間、或は該内表面材と前記断熱材との間に空気層19を形成する様、前記内表面材によって形成された襞26を介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関に付属して設けられる過給機、特に舶用過給機に装着される過給機の断熱カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力増大、燃焼効率の向上の為、過給機が設けられる。該過給機は、排気ガスのエネルギを利用して駆動されるタービンと、該タービンと同軸に設けられ圧縮した空気を内燃機関に給気するコンプレッサとを有する。
【0003】
前記タービンはタービンハウジングにタービン翼車が収納され、前記タービンハウジング内を流通する排気ガスによって前記タービン翼車が回転される。過給機を駆動する排気ガスは高温高圧であり前記タービンハウジングも高温となる。舶用の過給機等では、前記タービンハウジングが露出しており、可燃物や潤滑油等が長時間接触すると、発火したりする虞れがある。
【0004】
この為、前記タービンハウジングには断熱カバーが装着され、表面温度が所定の温度以下になる様に対処されている。
【0005】
又、コンプレッサ翼車によって圧縮された空気も高温となり、よってコンプレッサハウジングやそれを締結させる軸受ハウジングの表面も高温になり、前記タービンハウジングと同様な対処が要求されることがある。
【0006】
従来の過給機の断熱カバーでは、特許文献1に示される様に、概略、タービンハウジングに接触し、耐熱性の高い内面材と、グラスウール等の断熱材と、液密性を有する外面材との3層構造となっており、断熱カバーの断熱性能は、前記断熱材の厚みによって決定される。
【0007】
従って、従来の過給機の断熱カバーではタービンハウジングの高温の部位に対応する断熱カバーの表面温度が所定温度以下となる様に、前記過給機の断熱カバーの断熱材の厚みが決定されるか、或は断熱カバーの前記タービンハウジングの高温の部位に対応する部分の断熱材の厚みを厚くするか等していた。
【0008】
いずれの場合も、断熱材の厚みを厚くすることで対応している為、過給機の断熱カバーとしては厚みが増す。断熱カバーの厚みを厚くすると、該断熱カバーの柔軟性がなくなり、前記タービンハウジングへの着脱作業性が悪くなる。或は、断熱カバーを装着する為に前記タービンハウジングの周囲に空間を確保しなければならない等、前記過給機を設置する際の制約が大きくなる。又、前記断熱カバーの厚みが厚くなるので、製作コストが上昇する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−189725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は斯かる実情に鑑み、過給機の断熱カバーの断熱材の厚みを増大させることなく、断熱性能を向上させ、過給機の断熱カバーの製作コストの低減、装着性の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ハウジングに装着される断熱カバーが外表面材、断熱材、内表面材から成り、少なくとも3層を含む断面構造となっており、前記ハウジングの表面と前記内表面材との間、或は該内表面材と前記断熱材との間に空気層を形成する様、前記内表面材によって形成された襞を介在させた過給機の断熱カバーに係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハウジングに装着される断熱カバーが外表面材、断熱材、内表面材から成り、少なくとも3層を含む断面構造となっており、前記ハウジングの表面と前記内表面材との間、或は該内表面材と前記断熱材との間に空気層を形成する様、前記内表面材によって形成された襞を介在させたので、前記襞を任意の位置に任意の範囲で設けることができ、低コストで無駄のい断熱性能を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が実施された過給機を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の参考例を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第の実施を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第参考例を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第参考例を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第の実施を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例及び参考例を説明する。
【0015】
図1に於いて、断熱カバーがタービンハウジングに装着された場合について説明する。
【0016】
過給機1は、回転軸2を共有するタービン3とコンプレッサ4によって構成されている。
【0017】
前記回転軸2は軸受ハウジング5に軸受6を介して回転自在に支持され、前記回転軸2の一端にはタービン翼車7が設けられ、他端にはコンプレッサ翼車8が設けられている。
【0018】
前記タービン翼車7は前記軸受ハウジング5に取付けられたタービンハウジング9に収納され、前記コンプレッサ翼車8は前記軸受ハウジング5に取付けられたコンプレッサハウジング11に収納されている。
【0019】
前記タービン翼車7、前記タービンハウジング9等によって前記タービン3が構成され、前記コンプレッサ翼車8、前記コンプレッサハウジング11等によって前記コンプレッサ4が構成される。
【0020】
前記タービンハウジング9は排気ガス流入口12、排気ガス流出口13を有し、前記排気ガス流入口12には内燃機関からの排気ガスが流入し、前記排気ガス流出口13からは排気エネルギによって前記タービン翼車7を回転した後の排気ガスが排気される。
【0021】
前記コンプレッサハウジング11は、吸入口14、吐出口15を有し、前記コンプレッサ翼車8が前記回転軸2を介して前記タービン翼車7により回転されることで、前記吸入口14より吸入した空気を圧縮し、前記吐出口15より圧縮空気を内燃機関に給気する。
【0022】
前記過給機1に於いて、前記タービンハウジング9には前記排気ガス流入口12から流入した高温の排気ガスが流通し、前記タービンハウジング9は排気ガスによって加熱され、高温となる。従って、該タービンハウジング9には、断熱カバ−17が装着される。
【0023】
該断熱カバ−17には内面全体に亘って、或は前記タービンハウジング9の高熱部分に対応する内面の部分に、空気層形成部材として、所要の分布で突出部18が設けられる。該突出部18によって前記断熱カバ−17の内面と前記タービンハウジング9の表面との間に所要の空気層19が形成される。
【0024】
尚、空気が圧縮されることで高温となる場合は、前記断熱カバー17を前記コンプレッサハウジング11にも装着する。
【0025】
図2に於いて、本発明の第1の参考例を説明する。
【0026】
図2は前記断熱カバ−17の部分断面を示している。該断熱カバ−17のカバー本体20は、ガラスクロスにアルミ層、又は、シリコンコーティング層を形成した液密な外表面材21、グラスウール等から成る断熱材22、ガラスクロス等の耐熱材である内表面材23等から成る複層断面構造を有している。又、前記カバー本体20の内面に設けられる前記突出部18は、スペーサとなる頭部24、該頭部24より突出する尖出部25を有する画鋲形状をしている。
【0027】
前記カバー本体20の内面から前記突出部18を差込む。前記尖出部25が前記内表面材23を貫通して前記断熱材22に刺さり、前記突出部18が前記カバー本体20の内面に保持される。前記突出部18は、前記カバー本体20の内面全域に渡り、所要の分布で、或は前記タービンハウジング9の高温となる部分に対応させ、所要の分布で設けられる。
【0028】
尚、前記突出部18が設けられたことで、前記カバー本体20の柔軟性は損われることがない。
【0029】
前記カバー本体20を前記タービンハウジング9に装着すると、前記内表面材23と前記タービンハウジング9の表面間に前記頭部24が介在することとなり、前記内表面材23と前記タービンハウジング9の表面との間には前記空気層19が形成される。
【0030】
又、前記カバー本体20が装着された状態では、前記突出部18は前記カバー本体20と前記タービンハウジング9間に挾持されることになり、前記突出部18が前記カバー本体20から抜脱することはなく、前記突出部18を保持する力は小さくてよい。
【0031】
而して、前記カバー本体20と前記タービンハウジング9間に前記空気層19が形成され、前記カバー本体20の断熱層の厚みを大きくすることなく簡便に断熱性能を向上させることができる。
【0032】
又、前記突出部18は前記カバー本体20に対して任意の場所に、任意の分布で後付けでき、必要な部分に、必要な範囲で適宜な前記空気層19を形成することができる。
【0033】
尚、前記突出部18の材質としては、セラミック等の断熱材であることが好ましいが、該突出部18自体は放熱性を問われないので、ステンレス鋼等の金属製であってもよい。
【0034】
図3は、本発明の第の実施を示している。
【0035】
該第の実施に於ける突出部26は、前記内表面材23自体によって形成される。即ち、前記内表面材23の屈撓性を利用して内面側の突出する襞を形成したものである。
【0036】
前記突出部26を形成することで、前記内表面材23と前記タービンハウジング9との間に空気層19が形成される。
【0037】
尚、前記突出部26の剛性を高める為、前記突出部26の基部26aを縫込んでもよい。又、前記突出部26は連続したものであっても、断続したものであってもよい。
【0038】
図4は、本発明の第参考例を示している。
【0039】
該第参考例では、断熱材22と内表面材23間に突出部27を設け、前記断熱材22と前記内表面材23間に空気層19を形成したものである。
【0040】
前記突出部27は、所要の大きさに切断した断熱材の断片であり、前記突出部27を、前記断熱材22の前記タービンハウジング9の高温となる部分に対応させ、所要の部分に、所要の範囲で取付ける。前記断熱材22と前記内表面材23とは前記突出部27によって離反され、前記断熱材22と前記内表面材23間に前記空気層19が形成され、カバー本体20の断熱性が向上する。
【0041】
前記突出部27と前記断熱材22との固定は、縫合、或は一時的な接着等が考えられる。前記突出部27の取付け後、前記内表面材23が前記突出部27を覆う様に設けられる。前記内表面材23が設けられた後は、前記突出部27は前記内表面材23によって保護されるので、前記カバー本体20を前記タービンハウジング9に装着する場合にも、前記突出部27を剥離する様な大きな力は作用しない。又、前記突出部27は部分的に取付けられるので、前記カバー本体20の柔軟性を損うことはない。
【0042】
図5は、本発明の第参考例を示しており、該第参考例も断熱材22と内表面材23間に空気層19を形成したものである。
【0043】
図2で示した突出部18を前記断熱材22に直接差込む。前記突出部18を設ける範囲は、前記断熱材22の全面でもよく、或は前記タービンハウジング9の高熱部分に対応する部分に、所要の分布で前記突出部18が設けられてもよい。該突出部18によって前記断熱材22と前記内表面材23との間に前記空気層19が形成される。該空気層19が形成されることで、断熱カバ−17の断熱性能が向上する。
【0044】
図6は、本発明の第の実施を示している。
【0045】
該第の実施では、第の実施と同様、突出部26を内表面材23に形成した襞で構成したものであるが、前記突出部26の突出方向を断熱材22に向けたものである。
【0046】
前記突出部26により、前記断熱材22と前記内表面材23との間に空気層19が形成され、断熱カバ−17の断熱性能が向上する。
【0047】
尚、前記断熱材22を複層構造とし、断熱材内部の層間に空気層形成部材を介設し、断熱材の内部に空気層を形成してもよい。又、空気層形成部材としては、上記突出部の他に、金属タワシ、金属網、金属網を重ねたもの、パンチングメタル、エキスパンドメタル等、空気層を形成できる多空隙材料が使用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 過給機
3 タービン
4 コンプレッサ
7 タービン翼車
8 コンプレッサ翼車
9 タービンハウジング
17 断熱カバ−
18 突出部
19 空気層
21 外表面材
22 断熱材
23 内表面材
24 頭部
25 尖出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに装着される断熱カバーが外表面材、断熱材、内表面材から成り、少なくとも3層を含む断面構造となっており、前記ハウジングの表面と前記内表面材との間、或は該内表面材と前記断熱材との間に空気層を形成する様、前記内表面材によって形成された襞を介在させたことを特徴とする過給機の断熱カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102743(P2012−102743A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8796(P2012−8796)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2008−10764(P2008−10764)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】