説明

過給機用の軸受ハウジング

【課題】ウォータージャケットを廃止し、耐熱性及び耐久性の確保と冷却性能の確保とを両立させ、軽量化及び小型化を図ることができる過給機用の軸受ハウジングを提供すること。
【解決手段】過給機用の軸受ハウジング1は、過給機用ハウジングの一部を構成し、軸方向一方側にコンプレッサインペラを備えると共に軸方向他方側にタービンインペラを備える回転軸を軸支するものである。また、軸受ハウジング1は、コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、タービンインペラを収容するタービンハウジングとの間に配置される。軸受ハウジング1は、タービンハウジングと対面する対面部21と、回転軸の外周に配置する軸受部22とを鋳鉄材から一体的に構成し、軸受部22を嵌入する嵌入穴32を設けた収容部3をアルミニウム材から構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、タービンインペラを収容するタービンハウジングとの間に配置する過給機用の軸受ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関における過給機(ターボチャージャ)は、コンプレッサインペラとタービンインペラとを同一の回転軸に設け、回転軸を軸受ハウジングによって軸支し、軸受ハウジングに対して、軸方向の両側から、コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、タービンインペラを収容するタービンハウジングとを連結して形成している。従来の軸受ハウジングは、その内部に冷却水の通路(ウォータージャケット)を形成し、タービンインペラ及びタービンハウジングを通過する排気ガスによって高温に加熱されることを抑制している。このような過給機としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
また、特許文献2の過給機の軸受構造においては、冷却水の通路を形成する代わりに潤滑油の通路を形成している。また、軸受ユニットをベアリングハウジングと別体に形成することが開示されている。これにより、軸受ユニットのみの組付を可能にしている。
また、特許文献3の排ガスターボチャージャにおいては、軸受けハウジングを軸受けインサートと軸受けボールとの2部品から構成し、軸受けインサートをアルミニウム合金から構成すると共に、軸受けボールをねずみ鋳鉄から構成することが開示されている。これにより、タービン側の熱を逃がす工夫を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−79940号公報
【特許文献2】特開2001−295655号公報
【特許文献3】特開平7−150961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウォータージャケットへの冷却水は、通常エンジン内を循環する冷却水の一部を使用しており、ウォータージャケットを設けると、エンジンの冷却装置から冷却水を導くための冷却配管、ポンプ等を設ける必要が生じる。そのため、過給機の全体が大型化するため、ウォータージャケットを廃止することが考えられる。ところが、単にウォータージャケットを廃止すると、冷却性能が低下し、軸受ハウジングの温度上昇が著しくなり、軸受ハウジングの耐久性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ウォータージャケットを廃止し、耐熱性及び耐久性の確保と冷却性能の確保とを両立させ、軽量化及び小型化を図ることができる過給機用の軸受ハウジングを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、過給機用ハウジングの一部を構成し、軸方向一方側にコンプレッサインペラを備えると共に軸方向他方側にタービンインペラを備える回転軸を軸支し、上記コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、上記タービンインペラを収容するタービンハウジングとの間に配置する軸受ハウジングにおいて、
該軸受ハウジングは、上記タービンハウジングと対面する対面部と、上記回転軸の外周に配置する軸受部とを鋳鉄材から一体的に構成し、上記軸受部を嵌入する嵌入穴を設けた収容部をアルミニウム材から構成したことを特徴とする過給機用の軸受ハウジングにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過給機用の軸受ハウジングは、タービンハウジングと対面する対面部と、回転軸の外周に配置する軸受部とを鋳鉄材から一体的に構成し、軸受部を嵌入する嵌入穴を設けた収容部をアルミニウム材から構成している。これにより、本発明の軸受ハウジングは、対面部と軸受部とを耐熱性及び耐久性が高い鋳鉄材から構成することによって、当該軸受ハウジングに必要な耐熱性及び耐久性を確保することができる。また、収容部を、放熱効果が高く、軽量であるアルミニウム材から構成することによって、当該軸受ハウジングの冷却性能を確保し、かつ軸受ハウジングの軽量化を図ることができる。これにより、軸受ハウジングにウォータージャケット(冷却水の通路)を設けることを廃止し、軸受ハウジングの小型化を図ることができる。
【0009】
それ故、本発明の過給機用の軸受ハウジングによれば、ウォータージャケットを廃止し、耐熱性及び耐久性の確保と冷却性能の確保とを両立させ、軽量化及び小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例における、過給機用の軸受ハウジングを示す断面説明図。
【図2】実施例における、軸受ハウジングを配置した過給機用ハウジングを示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の過給機用の軸受ハウジングにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記対面部には、上記収容部における一方端部を嵌入する嵌入凹部が形成してあり、上記鋳鉄材からなる上記軸受部及び上記対面部と、上記アルミニウム材からなる上記収容部とは、上記嵌入穴への上記軸受部の嵌入及び上記嵌入凹部への上記一方端部の嵌入によって、互いに密着して組み付けることが好ましい(請求項2)。
この場合には、鋳鉄材からなる軸受部及び対面部と、アルミニウム材からなる収容部とを安定して一体化させることができ、両者の間の熱伝導性が低下することを防止することができる。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の過給機用の軸受ハウジングにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の過給機用の軸受ハウジング1は、図2に示すごとく、過給機用ハウジング10の一部を構成し、軸方向一方側にコンプレッサインペラ41を備えると共に軸方向他方側にタービンインペラ42を備える回転軸4を軸支するものである。また、軸受ハウジング1は、図1に示すごとく、コンプレッサインペラ41を収容するコンプレッサハウジング5と、タービンインペラ42を収容するタービンハウジング6との間に配置される。軸受ハウジング1は、タービンハウジング6と対面する対面部21と、回転軸4の外周に配置する軸受部22とを鋳鉄材から一体的に構成し、軸受部22を嵌入する嵌入穴32を設けた収容部3をアルミニウム材から構成してなる。
【0013】
以下に、本例の過給機用の軸受ハウジング1につき、図1、図2を参照して詳説する。
図2に示すごとく、本例の過給機は、自動車のターボチャージャーに用いるものである。ターボチャージャーは、排ガスのエネルギーを利用してタービンインペラ42を回転させることにより、タービンインペラ42と同軸に配設したインペラ4を回転させ、圧縮空気を作り出すものである。
図1に示すごとく、軸受ハウジング1は、鋳鉄材によって形成した対面部21及び軸受部22を有する鋳鉄部品2と、アルミニウム材によって形成した収容部3を構成するアルミ部品3とを、圧入により組み付けてなる。鋳鉄材は、ねずみ鋳鉄材(例えば、FC200)とし、アルミニウム材は、アルミニウム合金材(例えば、ADC12)とすることができる。
【0014】
軸受ハウジング1は、軸受部22における軸穴221にベアリングを配置して回転軸4を軸支する。
対面部21は、フランジ形状を有しており、タービンハウジング6と対面し、タービンハウジング6と一体となってタービンインペラ42へ吸い込む排気ガスを通過させる吸込スクロール室61を形成する。
図1に示すごとく、対面部21には、収容部3における一方端部31を嵌入する嵌入凹部211が形成してある。軸受部22及び対面部21からなる鋳鉄部品2と、収容部3を構成するアルミ部品3とは、嵌入穴32への軸受部22の嵌入及び嵌入凹部211への収容部3における一方端部31の嵌入によって、互いに密着して組み付けられている。
【0015】
収容部3には、軸受部22に軸支する回転軸4へ潤滑油Oを供給するための潤滑油通路33が形成してある。この潤滑油通路33は、収容部3の上方から軸受部22へと形成し、軸受部22及び収容部3の下方へ潤滑油Oを排出するよう形成してある。潤滑油通路33は、対面部21と軸受部22との間にも形成されており、これらの間から下方へ潤滑油Oを排出するよう形成されている。
また、収容部3には、空気を循環させる空気通路34を形成することもできる。この場合には、軸受ハウジング1を強制的に空冷することができる。また、収容部3には、空気室を形成する代わりに潤滑油Oを強制的に循環させるための循環通路を形成することもできる。
【0016】
本例の過給機用の軸受ハウジング1は、タービンハウジング6と対面する対面部21と、回転軸4の外周に配置する軸受部22とを鋳鉄材から一体的に構成し、軸受部22を嵌入する嵌入穴32を設けた収容部3をアルミニウム材から構成している。これにより、本例の軸受ハウジング1は、対面部21と軸受部22とを耐熱性及び耐久性が高い鋳鉄材から構成することによって、タービン側の温度上昇に対して当該軸受ハウジング1に必要な耐熱性及び耐久性を確保することができる。また、収容部3を、放熱効果が高く、軽量であるアルミニウム材から構成することによって、当該軸受ハウジング1の冷却性能を確保し、かつ軸受ハウジング1の軽量化を図ることができる。これにより、軸受ハウジング1にウォータージャケット(冷却水の通路)を設けることを廃止し、軸受ハウジング1の小型化を図ることができる。
【0017】
それ故、本例の過給機用の軸受ハウジング1によれば、ウォータージャケットを廃止し、耐熱性及び耐久性の確保と冷却性能の確保とを両立させ、軽量化及び小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 軸受ハウジング
2 鋳鉄部品
21 対面部
211 嵌入凹部
22 軸受部
3 収容部(アルミ部品)
31 一方端部
32 嵌入穴
4 回転軸
41 コンプレッサインペラ
42 タービンインペラ
5 コンプレッサハウジング
6 タービンハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機用ハウジングの一部を構成し、軸方向一方側にコンプレッサインペラを備えると共に軸方向他方側にタービンインペラを備える回転軸を軸支し、上記コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、上記タービンインペラを収容するタービンハウジングとの間に配置する軸受ハウジングにおいて、
該軸受ハウジングは、上記タービンハウジングと対面する対面部と、上記回転軸の外周に配置する軸受部とを鋳鉄材から一体的に構成し、上記軸受部を嵌入する嵌入穴を設けた収容部をアルミニウム材から構成したことを特徴とする過給機用の軸受ハウジング。
【請求項2】
請求項1において、上記対面部には、上記収容部における一方端部を嵌入する嵌入凹部が形成してあり、
上記鋳鉄材からなる上記軸受部及び上記対面部と、上記アルミニウム材からなる上記収容部とは、上記嵌入穴への上記軸受部の嵌入及び上記嵌入凹部への上記一方端部の嵌入によって、互いに密着して組み付けられていることを特徴とする過給機用の軸受ハウジング。

【図1】
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【図2】
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