説明

過電圧保護回路

【課題】蓄電池への蓄電を制御するための充電制御素子を、安価な構成で過電圧から保護することができるとともに、その後、電力供給源から供給された電力による電圧が低くなった場合に充電制御素子を用いた蓄電池への蓄電を可能とする。
【解決手段】電力供給源から供給された電力が入力され、この電力を用いて蓄電池31の電圧に応じた電力を蓄電池31に供給する充電制御IC21を過電圧から保護する場合に、ON/OFF状態が切り替え可能に構成され、ON状態である場合にのみ、電力供給源から供給された電力を充電制御ICに供給するFETQ102と、電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を超えた場合にのみ、FETQ102をOFF状態とするバイポーラトランジスタQ101との2つのスイッチング素子を用いて充電制御IC21を過電圧から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池への蓄電を制御する充電制御素子を過電圧から保護する過電圧保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、半導体技術の発展に伴い、携帯電話機や携帯ゲーム機をはじめとした小型の電子機器が普及している。このような小型の電子機器においては、携帯して利用することを目的としているため、蓄電池を内蔵し、この蓄電池に蓄電を行って利用する構造となっている。また、このような電子機器に内蔵された蓄電池に蓄電を行う充電器においても、ソーラーパネル等の電力供給源にて発電した電力を蓄電池に蓄電しておき、蓄電池に蓄電された電力を電子機器に供給するものが考えられている。
【0003】
このように、蓄電池を内蔵し、この蓄電池に蓄電を行うものにおいては、蓄電池の電圧に応じた電力を蓄電池に供給するための充電制御素子が用いられている。この充電制御素子は、蓄電池の電圧を常時監視し、蓄電池に蓄電を行うために電力供給源から供給された電力を蓄電池の電圧に応じた電力として供給するものであり、蓄電池の電圧が低い場合は多くの電流を蓄電池に供給し、蓄電池の電圧が高くなっていくにつれて蓄電池に供給する電流を少なくしていき、蓄電池の電圧が所定の値となると蓄電池へ電流を供給しなくなる。また、このように充電制御素子から蓄電池に供給される電流が少なくなっていくと、充電制御素子の入力電圧が高くなっていく。そして、充電制御素子が蓄電池に電流を供給しなくなり、充電制御素子の入力電圧が高くなると、その入力電圧によって充電制御素子が破壊されてしまう虞れがある。特に、電力供給源としてソーラーパネル等の出力電圧の変動が大きなものを用いた場合、充電制御素子の入力電圧が高くなった状態において、その入力電圧が変動することにより充電制御素子が破壊されてしまうことになる。
【0004】
一般にソーラーパネル等の出力電圧の変動が大きな電力供給源を用いた大型の充電システムにおいては、電力供給源からの出力電圧を大型の蓄電手段に一旦蓄電することにより、その出力電圧の変動を小さなものとして供給しているが、上述したような小型の電子機器やそれに充電を行うための充電器においては、そのような大型の蓄電手段を内蔵することができない。
【0005】
ここで、回路を保護するための保護回路としては、一般的にヒューズの溶断を利用したものが実用化されている(例えば、特許文献参照。)。このようにヒューズの溶断を利用することにより、回路を過電圧等から保護する構成を安価に実現することができるとともに、電力供給源の選定の自由度を大きくすることができる。そこで、上述したような小型の電子機器やそれに充電を行うための充電器においても、ヒューズを内蔵させ、電力供給源から供給される電力による電圧が所定の値よりも高くなった場合にヒューズを溶断させ、それにより、充電制御素子が破壊してしまうことを安価な構成で回避することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−67928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようにヒューズを内蔵し、電力供給源から供給される電力による電圧が所定の値よりも高くなった場合にヒューズを溶断させることによって充電制御素子が破壊してしまうことを回避する場合は、電力供給源から供給される電力による電圧が所定の値よりも高くなると、蓄電池への電力の供給経路に介在していたヒューズが溶断してしまうため、その後、蓄電池に電力を蓄電することができなくなってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、小型の電子機器やそれに充電を行うための充電器に用いられる充電制御素子を、安価な構成で過電圧から保護することができるとともに、その後、電力供給源から供給された電力による電圧が低くなった場合に充電制御素子を用いた蓄電池への蓄電を可能とする過電圧保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
電力供給源から供給された電力が入力され、該電力を用いて蓄電池の電圧に応じた電力を前記蓄電池に供給する充電制御素子を過電圧から保護する過電圧保護回路であって、
ON/OFF状態が切り替え可能に構成され、ON状態である場合にのみ、前記電力供給源から供給された電力を前記充電制御素子に供給する第1のスイッチング素子と、
前記電力供給源から供給された電力による電圧が予め決められた基準電圧を超えた場合にのみ、前記第1のスイッチング素子をOFF状態とする第2のスイッチング素子とを有する。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、電力供給源から電力が供給されると、その電力による電圧が予め決められた基準電圧以下である場合は、第1のスイッチング素子がON状態となっており、それにより、電力供給源から供給された電力が第1のスイッチング素子を介して充電制御素子に供給され、充電制御素子において、この電力を用いて蓄電池の電圧に応じた電力が蓄電池に供給されて蓄電される。電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を超えた場合は、第2のスイッチング素子の制御によって第1のスイッチング素子がOFF状態となり、それにより、電力供給源から供給された電力は充電制御素子に供給されない。これにより、充電制御素子が過電圧から保護されることになる。その後、電力供給源から供給された電力が基準電圧以下となると、第1のスイッチング素子がON状態となり、上記同様に蓄電池に電力が蓄電される。
【0011】
このように2つのスイッチング素子を用いて充電制御素子を過電圧から保護する構成とすることにより、安価な構成において、充電制御素子を過電圧から保護した後でも、電力供給源から供給された電力による電圧が低くなれば充電制御素子による蓄電池への蓄電が可能となる。
【0012】
また、第1のスイッチング素子としてFETを用いるとともに、第2のスイッチング素子としてバイポーラトランジスタを用いれば、第1のスイッチング素子の方が第2のスイッチング素子よりも速く動作することにより、蓄電池への蓄電初期時において電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を一瞬超える際に、第1のスイッチング素子がOFF状態となって蓄電池への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避できる。
【0013】
また、電力供給源から供給された電力が入力される入力端に、該入力端に入力された電力を一時蓄電する予備蓄電手段を設けることにより、蓄電池への蓄電初期時において電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を一瞬超える際に、その電力がまずこの予備蓄電手段に蓄電されてから第2のスイッチング素子に供給されるので、その場合に第2のスイッチング素子の制御によって第1のスイッチング素子がOFF状態となって蓄電池への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明においては、電力供給源から供給された電力が入力され、この電力を用いて蓄電池の電圧に応じた電力を蓄電池に供給する充電制御素子を過電圧から保護する場合に、ON/OFF状態が切り替え可能に構成され、ON状態である場合にのみ、電力供給源から供給された電力を充電制御素子に供給する第1のスイッチング素子と、電力供給源から供給された電力による電圧が予め決められた基準電圧を超えた場合にのみ、第1のスイッチング素子をOFF状態とする第2のスイッチング素子との2つのスイッチング素子を用いて充電制御素子を過電圧から保護する構成としたため、小型の電子機器やそれに充電を行うための充電器に用いられる充電制御素子を、安価な構成で過電圧から保護することができるとともに、その後、電力供給源から供給された電力による電圧が低くなれば充電制御素子による蓄電池への蓄電を再度行うことができる。
【0015】
また、第1のスイッチング素子をFETとし、第2のスイッチング素子をバイポーラトランジスタとしたものにおいては、第1のスイッチング素子の方が第2のスイッチング素子よりも速く動作することにより、蓄電池への蓄電初期時において電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を一瞬超える際に、第1のスイッチング素子がOFF状態となって蓄電池への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避できる。
【0016】
また、電力供給源から供給された電力が入力される入力端に、該入力端に入力された電力を一時蓄電する予備蓄電手段を有するものにおいては、蓄電池への蓄電初期時において電力供給源から供給された電力による電圧が基準電圧を一瞬超える際に、その電力がまずこの予備蓄電手段に蓄電されてから第2のスイッチング素子に供給されるので、その場合に第2のスイッチング素子の制御によって第1のスイッチング素子がOFF状態となって蓄電池への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の過電圧保護回路を用いた充電器の実施の一形態を示す回路図である。
【図2】図1に示した充電器に充電する際の動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した蓄電池に対する充電が完了していない状態における過電圧保護回路の動作を説明するための図であり、(a)は回路図、(b)はブロック図である。
【図4】図1に示した蓄電池に対する充電が完了した状態における過電圧保護回路の動作を説明するための図であり、(a)は回路図、(b)はブロック図である。
【図5】図1に示した充電器におけるコンデンサによる作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の過電圧保護回路を用いた充電器の実施の一形態を示す回路図である。
【0020】
本形態における充電器は図1に示すように、電力供給源に接続され、電力供給源から供給された電力が入力される入力用端子11と、入力用端子11に入力された電力が蓄電される蓄電部30と、入力用端子11に入力された電力の蓄電部30への蓄電を制御する充電制御素子である充電制御IC21と、入力用端子11に入力された電力による電圧が予め決められた基準電圧を超えた場合に、入力用端子11に入力された電力の充電制御IC21への供給を停止する過電圧保護回路100と、蓄電部30内の蓄電池31の残量を表示する残量表示部60と、蓄電池31に蓄電された電力を昇圧する昇圧部50と、昇圧部50にて昇圧された電力を分圧する分圧部70と、昇圧部50にて昇圧された電力及び分圧部70にて分圧された電力を出力する出力用端子81とを有している。
【0021】
入力用端子11は、5つのポート端子11a〜11eからなり、電力供給源に接続されることにより、電力供給源から供給された電力が入力される。本形態の充電器においては、電力供給源から供給された電力がポート端子11aに入力される。
【0022】
過電圧保護回路100は、2つのコンデンサC101,C102と、4つの抵抗R101〜R104と、ツェナーダイオードD101と、第1のスイッチング素子となるFETQ102と、第2のスイッチング素子となるバイポーラトランジスタQ101とから構成されている。入力用端子11に入力された電力が入力される入力端には、予備蓄電手段となるコンデンサC101が、他方の電極が接地されて設けられており、このコンデンサ101と並列に、2つの抵抗R101,R102とツェナーダイオードD101とが、ツェナーダイオードD101のアノードが接地された状態で直列に接続されて設けられている。この2つの抵抗R101,R102の接続点には、バイポーラトランジスタQ101のベースが接続されており、バイポーラトランジスタQ101にエミッタは、入力用端子11に入力された電力が入力される入力端に接続されている。また、コンデンサ101と並列に、2つの抵抗R103,R104が直列に接続されて設けられており、バイポーラトランジスタQ101のコレクタが、この2つの抵抗R103,R104の接続点に接続されている。また、2つの抵抗R103,R104の接続点には、FETQ102のゲートが接続されており、FETQ102のソースは、入力用端子11に入力された電力が入力される入力端に接続されている。そして、FETQ102のドレインには、他方の電極が接地されたコンデンサC102が接続されており、これらFETQ102のドレインとコンデンサC102との接続点が、過電圧保護回路100の出力端となっている。
【0023】
過電圧保護回路100の出力端には、充電制御IC21が接続されているとともに、抵抗R1を介して2つの発光ダイオード90a,90bが接続されている。これら2つの発光ダイオード90a,90bは、互いに異なる色を発光するものであって、充電制御IC21における制御によって、蓄電部30への充電時は発光ダイオード90aが点灯し、蓄電部30への充電が完了すると発光ダイオード90bが点灯する。
【0024】
充電制御IC21は、蓄電池31の電圧を常時監視し、入力用端子11に入力された電力を蓄電池31の電圧に応じた電力として供給するものであり、蓄電池31の電圧が低い場合は多くの電流を蓄電池31に供給し、蓄電池31の電圧が高くなっていくにつれて蓄電池31に供給する電流を少なくしていき、蓄電池31の電圧が所定の値となると蓄電池31へ電流を供給しなくなる。
【0025】
充電制御IC21の出力端には、他端が接地された抵抗R3が接続されているとともに、この抵抗R2を介して、コンデンサC1、蓄電部30、抵抗R6及びFETQ1がそれぞれ接続されている。
【0026】
蓄電部30は、リチウムやニッケル水素からなり、入力用端子11に入力された電力が蓄電される蓄電池31と、蓄電池31への蓄電を、蓄電池31の容量を超えないように保護しながら制御する蓄電用IC33及び保護用IC32と、2つの抵抗R4,R5と、2つのコンデンサC2,C3とから構成されている。
【0027】
FETQ1は、ゲートが抵抗R6に接続され、ソースが抵抗R2に接続されており、ドレインには残量表示部60が接続されている。
【0028】
残量表示部60は、蓄電池31の残量を3段階で表示するための3つの発光ダイオード61a〜61cと、それらに接続された4つのコンパレータA1〜A4と、8つの抵抗R8〜R15と、2つのコンデンサC5,C6と、ツェナーダイオードD3とから構成されている。
【0029】
また、FETQ1のドレインには、コンデンサC4及びコイルL1が接続されており、このコイルL1を介して昇圧部50が接続されている。
【0030】
昇圧部50は、蓄電部30から供給された電力を昇圧する昇圧用IC51と、その入力端に設けられたFETQ2と、昇圧用IC51と並列に設けられたダイオードD2とから構成されており、FETQ2のゲートが昇圧用IC51に接続され、FETQ2のソースが昇圧部50の入力端に接続され、FETQ2のドレインが接地されている。
【0031】
昇圧部50の出力端には、他方の電極が接地されたコンデンサC7が接続されているとともに、分圧部70が接続されている。
【0032】
分圧部70は、2つの抵抗R16,R17からなる配線と、2つの抵抗R18,R19からなる配線とが並列に接続されて構成されている。
【0033】
出力用端子81は、4つのポート端子81a〜81dからなり、昇圧部50の出力端にポート端子81aが接続され、分圧部70の抵抗R16と抵抗R17との接続点にポート端子81bが接続され、分圧部70の抵抗R18と抵抗R19との接続点にポート端子81cが接続され、ポート端子81dが接地されている。
【0034】
以下に、上記のように構成された充電器1の動作について説明する。
【0035】
図2は、図1に示した充電器1に充電する際の動作を説明するための図である。
【0036】
図1に示した充電器1は、例えば、図2に示すように入力用端子11にケーブル5を介して太陽電池モジュール3が接続されることによって充電される。なお、太陽電池モジュール3は、太陽光を受光することによって発電する電力供給源となるものであって、発電した電力は、入力用端子11のうち1つのポート端子11aを介して供給されてくる。
【0037】
ポート端子11aを介して供給された電力は、ダイオードD1を介して過電圧保護回路100に入力されてくる。
【0038】
図3は、図1に示した蓄電池31に対する充電が完了していない状態における過電圧保護回路100の動作を説明するための図であり、(a)は回路図、(b)はブロック図である。
【0039】
充電制御IC21においては、蓄電池31の電圧が常時監視されており、蓄電池31の電圧が低い場合は多くの電流が蓄電池31に供給されることになる。そのため、図1に示した蓄電池31に対する電力の蓄電による充電が完了していない場合は、蓄電池31の電圧が低いものであることにより、充電制御IC21の制御によって、ポート端子11aを介して供給された電力を用いて多くの電流が蓄電部30に供給される。
【0040】
入力用端子11においては、ポート端子11aを介して供給された電力を用いて多くの電流が蓄電部30に供給されていく場合は、その電力による電圧が低いものとなっている。そのため、蓄電池31に対する充電が完了していない場合は、過電圧保護回路100の入力端の電圧が、ツェナーダイオードD101の降伏電圧と抵抗R102の抵抗値による電圧とバイポーラトランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧とを加えた値以下となっており、それにより、図3(a)に示すように、バイポーラトランジスタQ101がOFF状態となっている。これにより、図3(b)に示すようにFETQ102がON状態となり、ポート端子11aを介して供給された電力が過電圧保護回路100を介して充電制御IC21に供給され、充電制御IC21による制御によって、ポート端子11aを介して供給された電力を用いて蓄電池31に電力が蓄電されていく。なお、バイポーラトランジスタQ101のベースに接続されたツェナーダイオードD101の降伏電圧と抵抗R102の抵抗値は、基準電圧となる充電制御IC21の最大入力電圧に応じて予め決められている。
【0041】
またその際、太陽電池モジュール3からポート端子11aを介して電力が供給されてくると、充電確認ランプ90を構成する発光ダイオード90a,90bが選択的に点灯する。この2つの発光ダイオード90a,90bは、上述したように互いに異なる色を発光するものであるため、太陽電池モジュール3が入力用端子11に接続されている状態においては、充電確認用ランプ90が、蓄電部30への充電時と充電完了時とで異なる色に点灯することになる。
【0042】
図4は、図1に示した蓄電池31に対する充電が完了した状態における過電圧保護回路100の動作を説明するための図であり、(a)は回路図、(b)はブロック図である。
【0043】
充電制御IC21においては、蓄電池31の電圧が常時監視されており、蓄電池31に対する電力の蓄電による充電が完了してその電圧が高くなると、蓄電池31への電流の供給が停止される。すると、入力用端子11を介して供給される電力による過電圧保護回路100の入力端の電圧が高くなる。そして、過電圧保護回路100の入力端の電圧が、ツェナーダイオードD101の降伏電圧と抵抗R102の抵抗値による電圧とバイポーラトランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧とを加えた値を超えると、図4(a)に示すように、バイポーラトランジスタQ101がON状態となり、それにより、図4(b)に示すようにFETQ102がOFF状態となる。そのため、ポート端子11aを介して供給された電力は、充電制御IC21に供給されなくなる。なお、バイポーラトランジスタQ101のコレクタ−エミッタ間、並びにFETQ102のドレイン−ソース間の絶対最大定格電圧は、充電制御IC21の最大入力電圧よりも高いものに設定されている。
【0044】
このように、2つのスイッチング素子であるバイポーラトランジスタアQ101とFETQ102を用いた安価な構成において、過電圧保護回路100の入力端の電圧が、基準電圧となる充電制御IC21の最大入力電圧以下の場合は、バイポーラトランジスタQ101がOFF状態となっていることによってFETQ102がON状態となり、入力用端子11を介して供給された電力が充電制御IC21に供給され、また、過電圧保護回路100の入力端の電圧が、基準電圧となる充電制御IC21の最大入力電圧を超えた場合は、バイポーラトランジスタQ101がON状態となることによってFETQ102がOFF状態となり、入力用端子11を介して供給された電力が充電制御IC21に供給されなくなる。
【0045】
その後、過電圧保護回路100の入力端の電圧が、ツェナーダイオードD101の降伏電圧と抵抗R102の抵抗値による電圧とバイポーラトランジスタQ101のベース−エミッタ間電圧とを加えた値以下となれば、上記同様に、バイポーラトランジスタQ101がOFF状態となり、それにより、FETQ102がON状態となり、ポート端子11aを介して供給された電力が過電圧保護回路100を介して充電制御IC21に供給されることになる。
【0046】
この際、蓄電池31への蓄電初期時においては、蓄電池31に対する電力の蓄電による充電が完了していない場合でも、太陽電池モジュール3から供給された電力による電圧が、上述した基準電圧を一瞬超えてしまう。そこで、第2のスイッチング素子としてバイポーラトランジスタQ101を用いるとともに、第1のスイッチング素子として、バイポーラトランジスタQ101よりも動作が速いFETQ102を用いることにより、蓄電池31への蓄電初期時にFETQ102がOFF状態となって蓄電池31への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避することができる。
【0047】
ここで、コンデンサC101による作用について説明する。
【0048】
図5は、図1に示した充電器1におけるコンデンサC101による作用を説明するための図である。
【0049】
上述したように、蓄電池31への蓄電初期時においては、蓄電池31に対する電力の蓄電による充電が完了していない場合でも、太陽電池モジュール3から供給された電力による電圧が、上述した基準電圧を一瞬超えてしまう。
【0050】
ところが、本形態における充電器1のように、過電圧保護回路100の入力端にコンデンサC101が設けられていることにより、蓄電池31への蓄電初期時においては、コンデンサC101が蓄電されていないため、図5(a)に示すように、太陽電池モジュール3から供給された電力による電流がまずコンデンサC101に供給され、それにより、過電圧保護回路100の入力端の電圧が低下する。
【0051】
そして、コンデンサC101が蓄電されていくと、過電圧保護回路100の入力端の電圧が高くなっていき、それにより、図5(b)に示すように、FETQ102がON状態となり、太陽電池モジュール3から供給された電力がFETQ102を介して充電制御IC21に供給されていく。
【0052】
これにより、蓄電池31への蓄電初期時にFETQ102がOFF状態となって蓄電池31への電力の蓄電ができなくなってしまうことを回避することができる。
【0053】
このようにして蓄電池31に蓄電された電力を利用する場合は、蓄電池31に蓄電された電力を用いて充電する携帯電話機等の機器を出力用端子81に接続する。
【0054】
すると、昇圧部50において、蓄電池31に蓄電された電力が、出力用端子81に接続された機器の電源電圧に昇圧される。
【0055】
また、残量表示部60においては、蓄電池31の電圧が測定され、その電圧に基づいて蓄電池31における蓄電量が残量インジケータ60a〜60cを用いた3段階で表示される。残量表示部60においては、蓄電池31から供給された電力が抵抗R8〜R12によって分圧され、その分圧された電圧値がコンパレータA1〜A4にて所定の電圧値と比較され、比較結果に基づいて発光ダイオード61a〜61cが点灯することになる。すなわち、発光ダイオード61a〜61cは、蓄電池31の蓄電量が互いに異なる状態にて発光することとなり、それにより、蓄電池31における蓄電量が残量インジケータ60a〜60cの点灯によって表示されることになる。
【0056】
昇圧部50にて昇圧された電力は、その後、分圧部70に供給される。分圧部70においては、抵抗R16〜R19の抵抗値によって、昇圧部50にて昇圧された電力が分圧され、出力用端子81においては、昇圧部50にて昇圧された電圧がポート端子81aから出力され、分圧部70にて分圧された電圧がポート端子81b,81cからそれぞれ出力され、ポート端子81dはGND電位とされる。
【0057】
なお、本形態においては、充電器1に設けられた充電制御IC21を過電圧から保護する過電圧保護回路100を例に挙げて説明したが、蓄電池への電力の蓄電を制御する充電制御素子を過電圧から保護するものであれば、携帯電話機やゲーム機等の充電可能な小型の電子機器に内蔵された充電制御ICを保護するものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 充電器
3 太陽電池モジュール
5 ケーブル
10 入力部
11 入力用端子
11a〜11e,81a〜81d ポート端子
21 充電制御IC
30 蓄電部
31 蓄電池
32 保護用IC
33 蓄電用IC
50 昇圧部
51 昇圧用IC
60 残量表示部
60a〜60c 残量インジケータ
70 分圧部
80 出力部
81 出力用端子
90 充電確認ランプ
100 過電圧保護回路
Q101 バイポーラトランジスタ
Q102 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源から供給された電力が入力され、該電力を用いて蓄電池の電圧に応じた電力を前記蓄電池に供給する充電制御素子を過電圧から保護する過電圧保護回路であって、
ON/OFF状態が切り替え可能に構成され、ON状態である場合にのみ、前記電力供給源から供給された電力を前記充電制御素子に供給する第1のスイッチング素子と、
前記電力供給源から供給された電力による電圧が予め決められた基準電圧を超えた場合にのみ、前記第1のスイッチング素子をOFF状態とする第2のスイッチング素子とを有する過電圧保護回路。
【請求項2】
請求項1に記載の過電圧保護回路において、
前記第1のスイッチング素子は、FETであり、
前記第2のスイッチング素子は、バイポーラトランジスタである過電圧保護回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の過電圧保護回路において、
前記電力供給源から供給された電力が入力される入力端に、該入力端に入力された電力を一時蓄電する予備蓄電手段を有する過電圧保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75272(P2012−75272A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219142(P2010−219142)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【出願人】(592097934)産電子工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】