説明

過電流検出装置

【課題】複数の負荷機器に対して個別に制御を行う場合の電気的情報を外部に伝送させることができ制御の利便性が高い過電流検出装置を提供する。
【解決手段】分電盤内に設置する過電流検出装置において,電路に流れる電流を検出する電流センサを接続する電流センサ接続部と,該電流センサからの信号に基づいて所定のレベルの電流が電路に流れているか否かを判定する判定部と,該判定部からの判定結果に応じてHAコントロール信号により負荷機器を運転制御する制御部と,前記電路に流れる電流の大きさ,及び制御対象となっている負荷機器の運転/停止制御状態を前記過電流検出装置の外部に伝送させるためのデータ出力部と,前記制御部からのHAコントロール信号を出力するHA端子部と,前記判定手段による判定結果を段階的に表示及び音声で報知する表示・報知部に接続される表示・報知部接続部と,を備え構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤に組み込んで用いられる過電流検出装置に関するものであり,特に,電路に流れる電流の大きさに応じて,警報を行うとともに,HAコントロール信号により制御対象となる負荷機器の電源を遮断・投入制御する過電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分電盤に組み込んで用いられる過電流検出装置には,非特許文献1に示されたようなものがあった。
【0003】
これは,分電盤内の電路に設けた電流センサを用いて,常時,前記電路に流れる電流の大きさを検出し,予め定めた電流値を閾値電流として,該閾値電流を越えた割合に応じて段階的に,音声により,電気を使い過ぎていること,および制御対象の負荷回路への電源供給を遮断すること,を分電盤の周囲に報知するとともに,内装したリレーを遮断動作させることにより前記制御対象の負荷回路への電源供給を遮断するものである。また,前記電路に流れる電流の大きさが所定の電流値(復帰電流という)以下になった場合には,前記リレーを投入動作させることにより前記負荷回路への電源供給を再開する。
【0004】
設置については,分電盤内に設けられる分岐開閉器の一部と取り替えて使用し,複数ある分岐開閉器のうち連続した2回路を取り外し,空いたスペースに取付けて使用する。該過電流検出装置の電源は,分電盤の分岐開閉器と同様に,分岐線と接続することにより電源が供給される。
【0005】
電気配線については,分電盤内において,分岐開閉器に接続される制御対象となる負荷回路の配線のうち片極については,前記過電流検出装置に設けたリレーを介在させるように配線を行う。即ち,前記分岐開閉器の負荷側配線のうち片極を切断し,切断した端部を前記過電流警報器にそれぞれ接続することにより,該過電流警報器の内部に設けられたリレーに接続と接続し,該リレーの開閉により負荷回路への電源供給が制御される。
【0006】
なお,前記電流センサは,分電盤内部に設けられる主開閉器の内部に設けられている。該電流センサは,該主開閉器と接続される単相3線式電路の両極を貫通するように主開閉器の内部導体に設けられており,変流器(以後,CTという)を利用している。
【0007】
また,前記過電流検出装置には,リレーを2個設けており,2個の負荷回路が制御できるように構成されている。
【0008】
【非特許文献1】テンパール工業株式会社 2005 総合カタログ 349ページ乃至350ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら,前記過電流検出装置を分電盤内に設けるにあたり,該過電流検出装置内にリレーが設けられているために,該過電流検出装置の器体そのものが大きくなってしまうという課題があった。即ち,制御対象として負荷回路を想定しているため,該負荷回路に接続される負荷が特定されておらず,電気配線の一般的な定格である15A程度の負荷を遮断・投入制御できる程度のリレーを使用する必要があり,分岐開閉器2回路分の大きさを要してしまうことにより,分電盤内の分岐開閉器の個数が複数個低減してしまう。特に,制御する負荷回路が複数ある場合には,リレーをその個数分設ける必要がある。また,一つの負荷回路あたり,リレーへの入出力端子が2個必要となるため,二つの負荷回路では4固,三つの負荷回路では6個の入出力端子を設けることとなり,器体の大きさが比例的に大きくなり,必要な設置スペースが増加してしまうという課題があった。
【0010】
なお,非特許文献1に示したような分岐開閉器の場合には,該過電流検出装置は負荷回路を2回路制御するものであるため,分岐開閉器が2個分の大きさであるが,最近,分電盤に多用されている,分電盤の小型化を目的として開発された,分岐開閉器の並設方向の幅の大きさが該非特許文献1に示した分岐開閉器の略半分の大きさとなる薄型の分岐開閉器を用いた分電盤にあたっては,4回路分の大きさとなり,負荷回路の低減数が甚だ大きくなってしまうという課題がある。
【0011】
また,これに伴い,分電盤内で負荷回路の配線が煩雑になってしまうという課題があった。即ち,分岐開閉器に接続される制御対象となる負荷回路の配線のうち片極については,前記過電流検出装置に設けたリレーを介在させるように配線を行う必要があり,前記分岐開閉器の負荷側配線のうち片極を切断し,切断した端部を前記過電流警報器にそれぞれ接続する手間がかかるものである。また,将来的に住宅のリフォームなどを行い該住宅の間取りが変更されることに伴い,制御対象となる負荷回路の変更がなされる場合,該制御対象となる負荷回路の電気配線を別途新たに施工する必要が生じ,将来的なコスト増が予想される。
【0012】
また,制御対象に着目した場合,負荷回路単位で制御を行うため,該負荷回路に接続する負荷機器が複数ある場合,全ての負荷機器に対して同時に遮断・投入制御されることにより,負荷機器のうち,一部の負荷機器についてだけ制御を行うということができず,一部の負荷機器についてだけ制御を行いたいといった場合には,別の分岐開閉器から制御を行わない負荷機器まで重複して電気配線を施工せざるを得ず,使用条件によっては,電気配線が二重に必要になり施工コストの上昇や資源の使用量が増加してしまうという課題があった。
【0013】
さらに,制御対象の定格容量は,該過電流検出装置に内装したリレーの定格容量に依存し,必ずしもユーザーが所望する負荷機器について制御を行うことができるものではなかった。即ち,制御対象となる負荷回路に接続する負荷機器が複数ある場合,該負荷機器の消費電力がリレーの定格容量以上になる場合には,別途電気配線を用意し,制御したい負荷機器毎に電気配線を施工する必要があり,施工コストの上昇や資源の使用量が増加してしまうという課題があった。また,制御は,直接,負荷回路の電源を遮断・投入するため,負荷回路の電源を遮断・投入することにより,運転状態の切・入ができる負荷機器であれば,入切制御が可能であるが,一般的なエアコンや床暖房などの,例えば,負荷回路が,停電状態から復電状態になった場合において自動で運転状態にならない機器については,一旦遮断制御した後は投入制御を行っても運転状態にならず,負荷機器を運転状態にするには手動で行う必要があった。
【0014】
そこで,本発明は,制御対象となる負荷機器の電源容量に関らず,過電流検出装置の器体の大きさ,特に該器体の幅方向の大きさを小型化でき,分電盤内に設置する際の取り付けスペースが節約でき,既にある電気配線を変更せずそのまま利用が可能で,将来的な住宅のリフォーム時においても電気配線の変更は最小限とすることができ,省施工性に優れ,複数の負荷機器に対して個別に制御を行うことができ制御の利便性が高い過電流検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために,本発明の請求項1では,分電盤内に設置する過電流検出装置において,分岐開閉器と同様に分岐線に接続される電源入力端子部と,該分岐開閉器を配設する中底に取付する取付部と,電路に流れる電流を検出する電流センサを接続する電流センサ接続部と,該電流センサからの信号に基づいて所定のレベルの電流が電路に流れているか否かを判定する判定部と,該判定部からの判定結果に応じてHAコントロール信号により負荷機器を運転制御する制御部と,前記電路に流れる電流の大きさ,及び制御対象となっている負荷機器の運転/停止制御状態を前記過電流検出装置の外部に伝送させるためのデータ出力部と,前記制御部からのHAコントロール信号を出力するHA端子部と,前記判定手段による判定結果を段階的に表示及び音声で報知する表示・報知部に接続される表示・報知部接続部と,を備え構成したことを特徴として過電流検出装置を提供したものである。
【0016】
このような構成によれば,過電流検出器の器体内にリレーを設ける必要がないため,該器体の大きさを小型化でき,分電盤内における取り付けスペースを節約でき,負荷機器の運転制御のために電気配線を用いないため,既にある電気配線の変更を行うことなく制御を行うことができるとともに省施工性に優れ,複数の負荷機器に対して個別に制御を行うことができるため制御の利便性が高い構成とすることができる。
【0017】
また,過電流検出装置の外部において,前記電路における電気的な情報を得ることができる。
【0018】
また,前記過電流検出装置は,前記出力部に加え,前記過電流検出装置の外部から制御信号が入力される入力部を備えて,外部に設けられた機器と双方向通信を行うことにより,外部からの制御信号によって前記制御部を動作させ,前記負荷機器を運転/停止制御するように構成してもよい。
【0019】
これにより,前記過電流検出装置自体の判定による制御信号のみならず,過電流検出装置の外部から入力される制御信号によっても特定の負荷機器の運転停止/復帰制御を行うことができる。
【0020】
また,前記出力部から出力されるデータは電力会社に向けて伝送される一方,前記入力部に電力会社から出力される前記制御信号が入力されることにより,電力会社から前記負荷機器の運転/停止制御を行うように構成してもよい。
【0021】
これにより,電力会社と前記過電流検出装置とが双方向で通信を行うことにより,電力会社は,電流の使用データに基づいた最適な電気料金プランなどを提案することが可能となり,また,電流の使用データに基づいて,特定の負荷機器の運転/停止制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本件の発明によれば、制御対象となる負荷機器の電源容量に関らず,過電流検出装置の器体の大きさ,特に該器体の幅方向の大きさを小型化でき,分電盤内に設置する際の取り付けスペースが節約でき,既にある電気配線を変更せずそのまま利用が可能で,将来的な住宅のリフォーム時においても電気配線の変更は最小限とすることができ,省施工性に優れ,複数の負荷機器に対して個別に制御を行うことができ制御の利便性が高い過電流検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1乃至図4は,本発明における第一の実施形態を示したものである。まず本発明の過電流検出装置の外観構造について説明を行う。
【0025】
本発明の過電流検出装置1を図1乃至図3に示している。該過電流検出装置1は,その外郭を構成する器体外部に,分岐開閉器を接続する分岐線に接続される電源入力端子部101,102と,該分岐開閉器を配設する中底に取付する取付部103と,電路に流れる電流を検出する電流センサ109を接続する電流センサ接続部104と,負荷機器の運転状態を制御するためのHAコントロール信号を出力するHA端子部107a乃至107dと,電路に流れる電流の状態表示や負荷機器の制御状態を周囲に報知するための表示・報知部110と接続する表示・報知部接続部108と,前記過電流検出装置1の制御動作を行うか否かを判定するための閾値電流を定める閾値電流設定部105と,各電力会社に応じて設置が定められる電流制限器の有無により,電流検出方式を切換える電流検出方式切換部と,を設けている。
【0026】
電流検出方式を切換えることにより,電流制限器が設けられている場合には,後述するマイコン内部の演算処理により,電流センサからの信号をベクトル和合成し,電流制限器が設けられていない場合には,電流センサからの信号のうち大きい値を検出する。
【0027】
また,器体内部には,電子部品等を実装した電子回路基板が格納されており,前記電流センサ109からの出力及び閾値電流設定部105で定めたの閾値電流情報に基づいて所定の大きさの電流が電路に流れているか否かを判定する判定部111と,該判定部111からの判定結果に応じて前記表示・報知部110やHAコントロール信号により負荷機器を運転制御する制御部112とを設けている。なお,前記HAとはホームオートメーションのことであって,日本電機工業会により定められているJEM−A端子に準拠したものである。
【0028】
図2には,前記過電流検出装置1を配設した分電盤2のカバーを外した内部構成図ならびに表示・報知部と負荷機器との接続を示している。該分電盤2においては,前記電流制限器201の負荷側に主開閉器202を接続し,該主開閉器202の負荷側に母線を介して分岐開閉器203を配設する場合の図(電流制限器については図示していない)を示している。また,前記過電流検出装置1と負荷機器との配線長に応じて,HA端子を設ける場合に定められているIFU(インターフェースユニット)を適宜設けて構成する。
【0029】
前記分岐開閉器203および過電流検出装置1は,母線に設けられた分岐線(図示しない)と接続されて,電源の供給を受けている。
【0030】
また,分岐開閉器203および過電流検出装置1は中底に取付部103により取付けられている。該取付部103は,図1中下方向に押し下げることにより器体外部に延出し,中底に設けられた凹部に係合する。
【0031】
前記HA端子部107a乃至107dは,器体の右側面に,分電盤に臨んで手前側に該端子の接続部を向けて並設させて配設している。本実施例では4個の端子を設けており,負荷機器を4機器まで制御できるよう構成されている。また,前記器体の電源端子部は他端側には表示・報知部接続部が設けられており,同じく分電盤に臨んで手前側に該端子の接続部を向けて配設している。
【0032】
これらの端子方向を手前側に臨ませて配置するため,HAコントロール信号などの制御線を取付施工する際に,作業者は,分電盤に臨んで前方から所定の端子に制御線側の端子を差し込み接続するだけで接続処理が完了するため,施工性が極めてよい。
【0033】
なお,前記負荷機器の電源は,通常の電気配線により設置された電気コンセントから得ることができる。
【0034】
また,前記表示・報知部は,報知部1102としてのスピーカ部と,表示部1101としての複数のLEDを用いた表示部とを備えて構成されている。
【0035】
次に,図3は前記過電流検出装置の器体内の内部回路を模式的に示したものである。図4は前記表示・報知部の内部回路を模式的に示したものである。
【0036】
図3において,前記判定部111及び制御部112はマイコンにより構成しており,該マイコン内部に記憶されたプログラムにより,前記電流センサ109からの出力及び閾値電流設定部105で定めた閾値電流情報に基づいて所定の大きさの電流が電路に流れているか否かの判定や,該判定結果に応じた前記表示・報知部110の表示・報知制御ならびにHAコントロール信号による負荷機器の運転制御は,ソフトウエア処理される。
【0037】
閾値電流設定部105で設定された閾値電流のデータは前記マイコンに入力される。該閾値電流としては,電流制限器201の定格電流(例えば60A,40Aなど)や,該電流制限器201を要しない電力管内においては主開閉器202の定格電流(例えば60A,40Aなど)に合わせて設定する。
【0038】
電流センサ109(以降CTという)は,該主開閉器の負荷側電路の電圧極(L1相,L2相)に貫挿して配設し,電路に流れる電流の大きさに応じた出力信号を出力する。該CT109は前記電流センサ接続部104に接続され,該出力信号がマイコンに入力される。
【0039】
前記マイコン内部では,前記判定部111により,入力された前記閾値電流のデータとCTからの出力信号を比較し,該閾値電流を超えた割合を演算により求め,前記閾値電流を超えた割合の大きさに応じて,報知する時間間隔や報知内容,ならびに負荷機器の制御開始時間を所定の条件に基づいて決定し,前記制御部112に向けて負荷機器の運転遮断・復帰命令を出力するとともに,前記表示・報知部108への表示・報知命令を出力する。
【0040】
なお,前記所定の条件を図6に示した。電路における電流が,前記閾値電流を超えない場合には,音声による報知ならびに負荷機器の運転制御を行わなず,LEDによる表示のみ行い,前記閾値電流に対する電路に流れる電流の大きさの割合に応じて点灯/消灯の制御を行う。電路における電流が,前記閾値電流を超えた場合には超えた割合の大きさに応じて音声による報知ならびに負荷機器の運転制御を行う。また,表示は全てのLEDを同時に点滅させることにより,電路における電流が,前記閾値電流を超えていることを周囲に認知せしめる。
【0041】
次に,図4に示した表示・報知部110の模式的な内部回路について説明を行う。本内部回路においては,前記過電流検出装置1と前記表示・報知部110との間の通信のために4芯の通信線を用いている。該4芯の通信線により,3個のLEDならびにスピーカの制御を行っている。
【0042】
具体的には,4芯の通信線のうち,1つの通信線は共通の接地線とし,1つの通信線はスピーカの電圧極として用い,残りの2つの通信線で3個のLEDの点灯/消灯制御を行っている。図中に示したように,LED1乃至LED3の配線については,次のように接続している。LED1及びLED2は各々通信線1,2にアノード側を接続し,接地線にカソード側を接続している。LED3については,前記LED2とLED3のアノード側の線間に,LED2のアノード側に該LED3のアノード側を接続し,LED1のアノード側に該LED3のカソード側を接続して構成している。
【0043】
このように接続することにより,前記制御部112から表示制御を受ける際に,次に示すように,通信線1の制御信号がLoレベル,通信線2の制御信号がHiレベルの場合には,LED1のみが点灯し,通信線1の制御信号がHiレベル,通信線2の制御信号がHiレベルの場合には,LED1,LED2のみが点灯し,通信線1の制御信号がHiレベル,通信線2の制御信号がLoレベルの場合には,LED1,LED2,LED3全てが点灯するように制御を行うことができ,通常,各々のLED毎に点灯/消灯のための通信線を設けて構成した場合には通信線が合計5本必要であるが,通信線の数を低減でき,省施工性に寄与する構成とすることができる。
【0044】
さて,前記判定部111から負荷機器の運転遮断・復帰命令を受けた制御部112は,HAコントロール信号を,HA接続された負荷機器に出力し,対応する負荷機器の運転状態の停止・復帰を行う。また,HAコントロールに連動して,表示・報知命令を受けた表示・報知部108は,電路におけるその時々の前記閾値電流に対する電路に流れる電流の大きさの割合を段階的に表示するとともに,前記閾値電流を超えた割合の大きさに応じて,「電気の使いすぎです/まもなく電源を切ります/電源を切りました」など,音声による報知を行う。
【0045】
また,前記閾値電流に対する電路に流れる電流の大きさの割合が所定の大きさを超えた場合に,HA端子からHAコントロール信号を出力する際において,図1に示した複数のHA端子107a乃至107dを,該HAコントロール信号を出力する順番に左方向もしくは右方向から整列させ,制御順番を明示して配設するように構成するとよい。明示方法は器体の側面に銘板を貼付けて制御順番を明示したり,器体自体にマーキングを施して制御順番を明示することなどが考えられる。
【0046】
このようにHA端子を連続的に配設することにより,制御対象となる負荷機器の制御順番が決まっている場合には,順序良く接続することが可能となり,接続間違いが極力低減できるとともに,配線作業の利便性が高まるという効果が期待できる。
【0047】
また,過電流検出器1は,前記閾値電流を設定した場合には,常時,電路に流れる電流を検出し,前記閾値電流に対する電路に流れる電流の大きさの割合を器体内部に設けられたマイコンの判定部111演算により求め,前記割合の大きさに応じて制御対象となる負荷機器及び表示・報知部110の制御を自発的に行うものであるが,該過電流検出器1の前記マイコンが保有する電気的な情報,例えば,電路に流れる電流の大きさ,閾値電流の大きさ,電流制限器の有無,制御対象となっている負荷機器の制御状況(第一の負荷機器は運転中,第二の負荷機器は運転停止中など。)を外部に伝送させるための前記マイコンと接続された出力部(図6乃至図7記載の120を参照)を設けて構成し,過電流検出装置1が設けられる分電盤の外部においても,該電気的な情報を得られるようにしてもよい。これにより,前記表示・報知部110における表示,報知のみならず,他の媒体においても当該電路における電気的な情報を取得活用することができるものである。
【0048】
例えば,該過電流検出装置1が設置される住宅の住居人全員が,該住宅内に居るとは限らないため,住宅外に居る住居人に向けて,前記出力部からの出力信号を,伝送手段により送信し,前記住居人が該出力信号を受信することにより,住居内の電気的な情報を認知できるというケースが想定できる。また,電力会社やコンサルタント会社などの第三者に向けて前記電気的な情報を伝送することにより,個々の住宅における電気の使用状態についてのサーベイを行ったり,HAコントロールされる負荷機器の運転状況や,特定の負荷機器の運転状況についてのサーベイを行うことができる。
【0049】
さらに,前記出力部のほかに,前記マイコンにおける制御部に制御信号を送信し,HAコントロール信号を出力させたり,表示・報知部110の表示制御や,報知制御を行うための入力部(図6乃至図7記載の120を参照)を設けて,住宅内において,または,住宅外部から制御対象となる負荷機器の運転制御を行ったり,表示・報知部110における表示や報知の制御を行うように構成してもよい。なお,報知部から報知させる音声データは,想定される音声を予めマイコン内部に格納しておくとよい。
【0050】
音声データとしては,「こちらは○○電力会社です。電気を使いすぎているようですので負荷1の運転を停止させていただきます。」とか「こちらは○○会社です。周辺地区において電力が不足しておりますので,負荷1の運転を停止させていただきます。」などが考えられる。
【0051】
前記出力部/入力部として,具体的には,RS−232Cを用いたシリアル通信部を設けて構成したり,IEEE802.3で定められるイーサネット(登録商標)方式による通信部を設けて一般的な住宅内LANに接続できるよう構成してもよい。このほか特定小電力無線や,無線LAN方式などによる無線方式の通信部を設けて構成してもよい。これらの通信部は,器体内に収容して構成すればよく,図6乃至図7に示したように,器体の幅方向の大きさを図1に記載した過電流検出装置1に比べて大きく構成することにより,収容スペースを確保している。なお,図1に記載した器体の幅のままでも,基板回路への実装部品のチップ化や,ソフトウエア処理により,小型化を図り,構成することにより実現してもよい。
【0052】
住宅外部と前記過電流検出装置1とが双方向で通信を行うことにより,例えば,住宅内での電気の使用量データを経時的に蓄積することにより,電力会社はその住宅にとって最適な電気料金プランを提案することが可能となる。また,コンサルタント会社は,電気の使用状態に応じて,環境問題に関連して省エネを奨励することが可能となる。
【0053】
即ち,現状では,電力会社やコンサルタント会社は,個々の住宅における電気の使用状態や特定の負荷機器の使用状況に応じた電気料金プランの提案や,電力需要供給のバランスに応じて特定の負荷機器の制御を能動的に行うことは困難であったが,本過電流検出装置1を用いることにより,個々の住宅における電気の使用状態や特定の負荷機器の使用状況を容易に知ることができ,前述したような,電気の使用状態や特定の負荷機器の使用状況に応じた電気料金プランの提案や,電力需要供給のバランスに応じて特定の負荷機器の制御を行うことが可能となり,住宅内のみならず,住宅外における第三者にとっても新たなサービス提供を行うことができる可能性があるものである。
【0054】
また,住居人にとっては,特定の負荷機器の運転停止/復帰制御を,該負荷機器のスイッチが設けられている場所まで出向かなくても行うことができるという効果がある。例えば,住宅内LANがインターネットに接続されて,該過電流検出装置1にインターネット経由でアクセスが可能に設けられている場合,または,住宅内に設けたゲートウエイ,サーバーを介して,インターネット側から過電流検出装置の保有する情報が取得可能である場合,該インターネット網に接続が可能な端末(パーソナルコンピュータや携帯電話など)を用いて,前記電気的な情報を取得でき,取得した情報に基づいて,特定の負荷機器の運転を停止/復帰制御することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は,分電盤内に用いられる内器ユニットに適用可能である。分電盤は,住宅用分電盤のほか,産業用分電盤についても適用することにより,住宅用,産業用を問わず,利便性が高い過電流検出装置を提供できる可能性がある。

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】過電流検出装置の外観図
【図2】過電流検出装置を配設した分電盤の内部構成図
【図3】過電流検出装置の内部回路図
【図4】過電流検出装置の内部回路図
【図5】閾値電流と電路に流れる電流との割合に応じた動作条件
【図6】通信部を設けて構成した過電流検出装置の例
【図7】通信部を設けて構成した過電流検出装置を取付けた分電盤の例
【符号の説明】
【0057】
1 過電流検出装置
101 電源端子部
102 電源端子部
103 取付部
104 電流センサ接続部
105 閾値電流設定部
106 電流検出方式切換部
107 HA端子
108 表示・報知部接続部
109 電流センサ(CT)
110 表示・報知部
1101 表示部
1102 報知部
111 判定部
112 制御部
120 信号入出力部
2 分電盤
201 電流制限器
202 主開閉器
203 分岐開閉器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤内に設置する過電流検出装置において,
分岐開閉器と同様に分岐線に接続する電源入力端子部と,
該分岐開閉器を配設する中底に取付する取付部と,
電路に流れる電流を検出する電流センサを接続する電流センサ接続部と,
該電流センサからの信号に基づいて所定のレベルの電流が電路に流れているか否かを判定する判定部と,
該判定部からの判定結果に応じてHAコントロール信号により負荷機器を運転制御する制御部と,
前記電路に流れる電流の大きさ,及び制御対象となっている負荷機器の運転/停止制御状態を前記過電流検出装置の外部に伝送させるためのデータ出力部と,
前記制御部からのHAコントロール信号を出力するHA端子部と,
前記判定手段による判定結果を段階的に表示及び音声で報知する表示・報知部に接続される表示・報知部接続部と,
を備えて構成したことを特徴とする過電流検出装置。

【請求項2】
前記出力部に加え,前記過電流検出装置の外部から制御信号が入力される入力部を備えて,外部に設けられた機器と双方向通信を行うことにより,外部からの制御信号によって前記制御部を動作させ,前記負荷機器を運転/停止制御することを特徴とする請求項1に記載の過電流検出装置。

【請求項3】
前記出力部から出力されるデータは電力会社に向けて伝送される一方,
前記入力部に電力会社から出力される前記制御信号が入力されることにより,
電力会社から前記負荷機器の運転/停止制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の過電流検出装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−102683(P2013−102683A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2994(P2013−2994)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2007−319830(P2007−319830)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000109598)テンパール工業株式会社 (217)
【Fターム(参考)】