説明

道路情報取得装置、及びこれを利用した車両用走行制御装置、並びに道路交通システム

【課題】道路に関する情報を道路マーカから適切に検出することが可能な道路情報取得装置、及びこれを利用した車両用走行制御装置、並びに道路交通システムを提供すること。
【解決手段】車両に搭載される道路情報取得装置であって、道路長手方向に延在する、第1の道路マーカ列、及び第2の道路マーカ列を形成するように道路に敷設された道路マーカを検出する、道路マーカ検出手段20と、道路マーカ検出手段20により検出される、第1の道路マーカ列に属する道路マーカ5と、第2の道路マーカ列に属する道路マーカ7と、の位置関係に基づいて道路形状を検出する、道路形状検出手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される道路情報取得装置、及びこれを利用した車両用走行制御装置、並びに道路交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ITS(Intelligent Transport Systems)と称される、情報通信技術の活用による新しい高度道路交通システムの構築が提唱されている。この一環として、例えば、道路上の走行車線中央に配列配置された磁気マーカ等の道路マーカを車両側において検出し、この路面マーカの配列に対する車両の位置に基づいて、当該走行車線からの車両の逸脱を検出するシステムについての研究が進められている。こうしたシステムでは、カーブ路における制御を適切なものとするために、走行中の道路におけるカーブ方向や曲率(又は曲線半径)を適切に検出することが望まれる。
【0003】
上記のシステムに用いられる車載装置の一例として、特許文献1に記載のものが知られている。この装置では、道路情報を格納したデータベースを参照して、走行中の道路の曲率を取得している。
【0004】
また、上記のシステムに用いられる車載装置の他の例として、特許文献2に記載のものが知られている。この装置では、特定の配列をもって敷設された車両前方の反射マーカをレーザーレーダーにより検出し、反射マーカの配列から道路の形状に沿う仮想マーカを設定し、この仮想マーカの位置関係に応じて走行中の道路の曲率を取得している。
【特許文献1】特開平10−83499号公報
【特許文献2】特開平6−298108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載の装置においては、データベースを参照する際に、地図上での車両の現在位置を特定する必要が生じる。この特定を、GPS受信機等を用いた路車間通信により行なうと、通信負荷が増大するという問題が生じる。また、ナビゲーション装置を備えない車両に適用された場合、データベースを新規に備える必要が生じる。さらに、道路の曲率を細部に亘って記憶しようとすると、データ量が膨大なものとなる。
【0006】
また、上記従来の特許文献2に記載の装置においては、車両前方の反射マーカを検出するため、先行車の存在により検出が不安定となる場合がある。また、天候に左右されやすい一面を有する。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、道路に関する情報を道路マーカから適切に検出することが可能な道路情報取得装置、及びこれを利用した車両用走行制御装置、並びに道路交通システムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、車両に搭載される道路情報取得装置であって、道路長手方向に延在する、第1の道路マーカ列、及び第2の道路マーカ列を形成するように道路に敷設された道路マーカを検出する、道路マーカ検出手段と、道路マーカ検出手段により検出される、第1の道路マーカ列に属する道路マーカと、第2の道路マーカ列に属する道路マーカと、の位置関係に基づいて道路形状を検出する、道路形状検出手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
この本発明の第1の態様によれば、道路マーカ検出手段により検出される、第1の道路マーカ列に属する道路マーカと、第2の道路マーカ列に属する道路マーカと、の位置関係に基づいて道路形状を検出するから、道路に関する情報を道路マーカから適切に検出することができる。
【0010】
また、本発明の第1の態様において、道路マーカ検出手段は、好ましくは、車両幅方向に並んで配設される複数の検出部から構成され、車両の略下方を検出範囲とする。
【0011】
また、本発明の第1の態様において、道路形状検出手段は、例えば、第1の道路マーカ列に属する道路マーカと、前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカと、の道路幅方向における間隔に基づいて、道路の曲線半径を検出する手段であってもよいし、第2の道路マーカ列に属する道路マーカの道路長手方向における間隔に基づいて、道路の曲線半径を検出する手段であってもよい。ここで、曲線半径に代えて、曲率を検出するものとしても、装置としては等価である。
【0012】
また、本発明の第1の態様において、道路形状検出手段は、好ましくは、第2の道路マーカ列に属する道路マーカが、道路幅方向において、第1の道路マーカ列に属する道路マーカのいずれの側で検出されたかに基づいて、道路のカーブ方向を検出する手段である、
また、本発明の第1の態様において、道路形状検出手段は、好ましくは、第1の道路マーカ列に属する道路マーカ、又は第2の道路マーカ列に属する道路マーカ、のいずれか一方のみが道路マーカ検出手段により検出された場合には、道路が直線である旨を検出する手段である。
【0013】
また、本発明の第1の態様において、道路マーカ検出手段は、好ましくは、磁気マーカの発する磁界を検出する手段であり、異なる極性の磁界により生じうる、磁界干渉に基づく検出誤差を補正する、補正手段を備える。
【0014】
本発明の第2の態様は、車両に搭載される道路情報取得装置であって、道路長手方向に延在する、道路に敷設された道路マーカを検出する、道路マーカ検出手段と、道路マーカ検出手段により検出される、道路マーカの道路長手方向における間隔に基づいて、道路形状を検出する、道路形状検出手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、本発明の第1又は第2の態様の道路情報取得装置を備え、道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の第3の態様は、好ましくは、道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両前方の道路形状を推定する道路形状推定手段を備え、道路形状推定手段により推定された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御することを特徴とするものである。この場合、道路形状推定手段は、例えば、道路の曲率が変化する区間については、クロソイド曲線に基づいて、車両前方の道路形状を推定する手段である。
【0017】
また、本発明の第3の態様は、好ましくは、道路形状推定手段により推定された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御する第1の制御モードと、道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御する第2の制御モードと、を切替え可能な切替手段を備えるものである。この場合、切替手段は、例えば、道路形状推定手段の作動状態に基づいて、第1の制御モードと前記第2の制御モードとを切り替える手段である。
【0018】
本発明の第4の態様は、道路長手方向に延在する、第1の道路マーカ列、及び第2の道路マーカ列を形成するように道路に敷設された道路マーカと、本発明の第3の態様の車両用制御装置を搭載する車両と、により実現される道路交通システムである。
【0019】
本発明の第4の態様において、第1の道路マーカ列に属する道路マーカは、例えば、車線の略中央に敷設される。
【0020】
また、本発明の第4の態様において、道路マーカは、好ましくは、磁気マーカである。この場合、さらに好ましくは、第1の道路マーカ列に属する道路マーカは、第1の極性の磁界を道路上に発し、第2の道路マーカ列に属する道路マーカは、第1の極性とは逆の第2の極性の磁界を道路上に発する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、道路に関する情報を道路マーカから適切に検出することが可能な道路情報取得装置、及びこれを利用した車両用走行制御装置、並びに道路交通システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0023】
以下、図1〜6を用いて、本発明に係る道路情報取得装置を利用した車両用走行制御装置、及び道路交通システムの一実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置10を搭載する車両、及び道路マーカが敷設された道路により実現される道路交通システム1を模式的に示す図である。図示する如く、道路交通システム1は、道路区画線3A、3Bにより画成される走行路3と、走行路3の略中央に所定間隔をもって点在するように敷設された中央マーカ5と、中央マーカ5との位置関係及び間隔によりカーブの方向及び曲線半径を示すように敷設される情報マーカ7と、車両用走行制御装置10を搭載する車両9と、からなる。なお、図中、簡明のため1車線の道路に適用されたものとして例示したが、車線数については特段の限定がされない。
【0024】
中央マーカ5は、例えば、上部がN極に、下部がS極に帯磁された磁気ネイルにより構成され、その周囲に磁界を発生させている。また、情報マーカ7は、中央マーカ5とは逆に、上部がS極に、下部がN極に帯磁された磁気ネイルにより構成され、その周囲に磁界を発生させている(この逆に、中央マーカ5の上部がS極、情報マーカ7の上部がN極でもよい)。図1に示す如く、中央マーカ5と情報マーカ7は、直線路を除き、道路幅方向に並んで一対になるように敷設され、それぞれが道路長手方向に延在するマーカ列を形成している。なお、図1において、細実線及び細破線は、中央マーカ5及び情報マーカ7がそれぞれ形成するマーカ列を示す補助線であり、実際には存在しない。
【0025】
情報マーカ7は、走行路3における左カーブの部分では、対になっている中央マーカ5の左側に敷設され、右カーブの部分では、対になっている中央マーカ5の右側に敷設される。また、走行路3における直線路の部分では、情報マーカ7は敷設されず、中央マーカ5のみが敷設される。
【0026】
情報マーカ7は、更に、対になっている中央マーカ5との間隔Distが、その道路の曲線半径Rを示すように敷設される。ここで、曲線半径Rと間隔Distの関係は、例えば、R=K(定数)/Dist等の数式により定められる。この場合の、曲線半径Rと間隔Distの関係の一例を、図2に示す。
【0027】
このように、中央マーカ5や情報マーカ7は、磁界を発生させることにより道路上の位置を示すものであるため、天候に左右されない優位性を有する。
【0028】
次に、車両用走行制御装置10の構成について説明する。図3は、車両用走行制御装置10の主要な構成の一例を示すブロック図である。また、図4は、車両用走行制御装置10を搭載する車両9を模式的に示した図である。図示する如く、車両用走行制御装置10は、主要な構成として、装置のオン/オフを入力可能な入力スイッチ10Aと、磁気センサー20と、電子制御ユニット(以下、ECUと称する)30と、処理回路40と、切替回路50と、ステアリング装置60と、を備える。なお、以下の説明における車両内の機器間の通信は、CAN(Controller Area Network)等の適切な通信プロトコルを用いて行なわれる。
【0029】
磁気センサー20は、例えば、車両下部(バンパー下等)に配設された、アレイ式磁気センサーであり、車幅方向に向けて一列に並んだ複数個の磁気検出部(本実施例では、60個;以下、磁気検出部#0〜#59とする)を有し、略下方を通過する中央マーカ5や情報マーカ7を検出する。磁気センサー20は、その中央部(磁気検出部#29と#30の中間がこれに相当する)が車両9の車両幅方向における中心線に略合致するように配設され、また、車両内の各種センサー(車速センサー等)が接続されている。各磁気検出部は、垂直磁界強度を検出し、その絶対値(N極の発する磁界を正、S極の発する磁界を負とする;以下同じ)が閾値Mを超えたか否かによって、正負の符号を伴ったオン/オフ信号を、所定走行距離(又は所定時間)毎に出力する。また、図4に示す如く、中央マーカ5と情報マーカ7は、車両9の走行に応じて、一対として略同時に磁気センサー20の下方を通過するため、磁気センサー20により一対として略同時に検出されることとなる。
【0030】
磁気センサー20は、各磁気検出部からのオン/オフ信号に基づいて、中央マーカ5と情報マーカ7の間隔Distを計算するための電子回路を備え、(1)間隔Dist、(2)中央マーカ5と情報マーカ7の左右の位置関係、及び(3)磁気センサー20の中央部と中央マーカ5の乖離(距離;以下、オフセットOfsと称する)をECU30や処理回路40に出力する。この間隔の計算は、基本的には同一符号のオン信号を出力している磁気検出部群の中央位置を各マーカの位置と認識して行なうが、中央マーカ5と情報マーカ7の間隔が狭い場合に互いの発する磁界が干渉する(打ち消しあう)ことを考慮して、補正を行なっている。
【0031】
図5は、所定の間隔A、及びBをもって敷設された、二対の中央マーカ5及び情報マーカ7により発生される磁界分布M(A)及びM(B)と、これに対応する磁気検出部の出力を示す図である。図示する如く、所定の間隔Aをもって敷設された1対のマーカの場合、この間隔が十分に広く、互いの発する磁界が干渉しないため、同一符号のオン信号を出力している磁気検出部群の中央位置が、各マーカの位置と略一致する。
【0032】
一方、所定の間隔Aよりも狭い所定の間隔Bをもって敷設された1対のマーカの場合、互いの発する磁界が干渉し、同一符号のオン信号を出力している磁気検出部群の中央位置は、各マーカの位置よりも外側になってしまう。この誤差は、実験等により、間隔Distの三乗の逆数に応じて変化することが得られている。
【0033】
これを補正すべく、磁気センサー20が行なう計算は、まず、同一符号のオン信号を出力している磁気検出部群の中央位置C(N)、C(S)を次式(1)により計算し、これに基づいて、次式(2)により実行される。ここで、m及びnは、同一符号のオン信号を出力している磁気検出部群の個数であり、Hは、定数である。
【0034】
C(N)=(1/m)Σk=1→m, C(S)=(1/n)Σi=1→n ‥(1)
Dist=|[C(N)+H/{C(N)−C(S)}
−C(S)+H/{C(N)−C(S)}| ‥(2)
【0035】
このように、磁気センサー20は、車両9の略下方を検出範囲とするため、先行車の存在等により検出が妨げられることが少ない。また、磁界を検出する場合に特有の、磁界干渉による誤差についても、上記の如く補正を行なっているため、その影響を小さいものとしている。
【0036】
ECU30は、例えばCPUを中心とするコンピューターであり、ROMやRAM等の記憶手段と、通信ポートを備える。ECU30は、磁気センサー20から、間隔Dist、中央マーカ5と情報マーカ7の左右の位置関係、及び上記オフセットOfsが入力される。また、車両内の各種センサー(車速センサー等)が接続され、センサー出力値が入力されている。
【0037】
ECU30では、間隔Distに基づいて、まず、その時点での曲線半径Rを導出する。この導出は、予めROM等に記憶された、間隔Distと曲率半径Rの関係(図2に対応する)に基づいて作成されたマップを用いて行なってもよいし、関数を設定して導出してもよい。そして、導出された曲率半径RをRAM等に記憶し(以下、直近のものから順に、R,Rn−1,Rn−2,‥とする)、この履歴に基づいて、車両9前方の道路における曲線半径(以下、Rn+1とする)を推定し、この推定値に基づいて、ステアリング装置60の制御目標となる目標操舵角σを計算する。
【0038】
曲線半径Rn+1の推定は、道路において曲線半径が変化する、すなわちカーブが徐々に急に、又は緩やかになる部分(以下、緩和区間と称する)の変化程度が、周知のクロソイド曲線に従うとの仮定に基づいて行なう(実際に、カーブ路は、クロソイド曲線に従って曲線半径が変化するように設計されていることが多い)。クロソイド曲線は、車両の回転加速度が一定になるように定められる曲線であり、例えば次式(3)で表される。ここで、aは定数であり、Rは計測点での曲線半径であり、Lは、緩和区間の開始点から計測点までの距離である。
【0039】
=R・L ‥(3)
【0040】
式(3)を本発明に適用すると、次式(4)となる。ここで、LやLn−1については、車速センサーからの車速データを積分すること等により求めることができる。また、lは、今回計測点と前回計測点の距離である。式(4)からLn−1を消去すると、式(5)となり、これにRn+1を適用すると、式(6)の如くなる(最初に当該区間内でaは一定と仮定している)。そして、式(5)、(6)から、lを消去すると、過去(直近2値)の曲率半径から前方の道路における曲率半径を推定する式(7)を得る。一方、R=Rn−1、すなわち曲率半径一定の道路においては、式(7)を適用しなくとも、Rn+1=Rを出力してよい。なお、上記の如く、直前2値から推定を行なうものに限られず、最小二乗法等を用いてより高精度に推定を行なってもよい。
【0041】
=Rn−1・Ln−1=R・L=R・(Ln−1+l) ‥(4)
=(R・Rn−1・l)/(Rn−1−R) ‥(5)
=(Rn+1・R・l)/(R−Rn+1) ‥(6)
n+1=R・Rn−1/(2Rn−1−R) ‥(7)
【0042】
ECU30により計算される目標操舵角σは、推定されたRn+1と、車両9のホイールベースWBと、上記オフセットOfsを用いて、次式(8)で表される。ここで、Gは、比例定数である。
【0043】
このように、ECU30において、車両9前方の道路における曲線半径Rn+1を推定し、この推定値に基づいて目標操舵角σを計算するから、車両9の操舵力制御をより適正なものにすることができる(通常、目標操舵角σを送信してから実際に操舵角が変化するまでのタイムラグ等が存在するため、制御を前倒しで行なうことの優位性がある)。また、制御誤差等により生じる、車両9の中心の走行路3からの乖離であるオフセットOfsを考慮して目標操舵角σを計算するから、車両9の操舵力制御をさらに適正なものにすることができる。
【0044】
σ=sin−1(WB/Rn+1)+G・Ofs ‥(8)
【0045】
処理回路40は、磁気センサー20からの入力信号に基づいて計算される値を出力する電子回路である。処理回路40は、ECU30が故障した場合等に備え、ECU30に比して簡易な計算により目標操舵角σを出力するように回路構成がなされている。処理回路40の出力する目標操舵角σは、例えば、次式(9)で表される。ここで、間隔Distから曲線半径Rを導出する手法は、ECU30と同様である。
【0046】
σ=sin−1(WB/R) ‥(9)
【0047】
切替回路50は、目標操舵角σとして、ECU30の出力する値と、処理回路40の出力する値のいずれを、ステアリング装置60のコントローラー68に送信するかを切替可能に構成された電子回路である。この切替えは、ECU30内部のタイマーの停止や、ECU30に供給されるセンサー出力値が変化しなくなったこと等を検出して行なわれる。すなわち、ECU30が正常に作動していると判断されるときは、ECU30が出力する目標操舵角σをコントローラー68に送信し、それ以外のときは、処理回路40が出力する目標操舵角σをコントローラー68に送信する。また、入力スイッチ10Aの操作により目標操舵角σの送信を起動又は停止する。
【0048】
ステアリング装置60は、例えば、操舵角センサー62と、トルクセンサー64と、アシストモータ66と、コントローラー68と、を備える。操舵角センサー62は、例えば、ステアリングコラム82の内部に配設され、操舵角信号をコントローラー68に送信する。トルクセンサー64は、例えば、ステアリングコラム82の内部に配設され、入力軸と出力軸との間に取り付けられたトーションバーの捩じれを検出することにより、運転者によるステアリングホイール80の操作によって生じる、ステアリングトルク応じた信号をコントローラー68に送信する。アシストモータ66は、例えば、コラムハウジング部に配設された直流モータであり、車両の操舵に必要なトルクを出力して運転者のステアリング操作をアシストする。アシストモータ66が出力するトルクは、ウォームギヤ及びホイールギヤによって偏向されると共に減速されてコラムシャフトに伝達され、最終的に車輪70A、70Bの向きを変える。
【0049】
コントローラー68は、切替回路50から目標操舵角σが送信されない通常時には、トルクセンサー64からのステアリングトルク信号やその他の車両状態信号(車速やヨーレート等)に基づいて、車両の操舵に必要なトルクを出力するように、アシストモータ66の駆動回路に制御信号を出力する。また、目標操舵角σが送信されている時には、目標操舵角σに基づいて、アシストモータ66を制御する。ただし、安全面を考慮して、目標操舵角σが送信されている時であっても、運転者によるステアリングホイール80の操作に基づく操舵角の制御を許容してよい。
【0050】
以下、車両用走行制御装置10が目標操舵角σを出力する際の動作について説明する。図6は、車両用走行制御装置10が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
まず、車両用走行制御装置10は、上記の如く、磁気センサー20によるマーカ検出を行ない、ECU30や処理回路40に、間隔Dist、中央マーカ5と情報マーカ7の左右の位置関係、及びオフセットOfsを出力する(S100)。
【0052】
次に、ECU30において、上記の如く、車両9前方の道路における曲線半径Rn+1を計算する(S110)。
【0053】
そして、切替回路50において、上記の如く、ECU30が正常に作動しているか否かを判定し(S120)、正常に作動していると判定した場合にはECU30が計算した目標操舵角σを、正常に作動していないと判定した場合には処理回路40が計算した目標操舵角σを、それぞれ送信し(S130、140)、本フローの1ルーチンを終了する。
【0054】
このように、本発明の道路情報取得装置を利用した車両用走行制御装置、及び道路交通システムの一実施例である、車両用走行制御装置10を搭載する車両9、及び道路交通システム1によれば、磁気マーカを用いることにより天候に左右されず、車両の略下方を検出範囲とするため先行車の存在等により検出が妨げられることが少ないという優位性を有する。また、上記の磁気マーカ20における補正により、磁界干渉による誤差の影響を小さいものとしている。
【0055】
また、ECU30において、車両9前方の道路における曲線半径Rn+1を推定し、この推定値に基づいて目標操舵角σを計算するから、車両9の操舵力制御をより適正なものにすることができる。また、オフセットOfsを考慮して目標操舵角σを計算するから、車両9の操舵力制御をさらに適正なものにすることができる。もとより、ECU30が正常に作動していないと判断した場合は、より簡易な構造の処理回路により計算された目標操舵角σを出力するように切り替えるから、装置の安定性を高めることができる。
【0056】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、車両用走行制御装置10からステアリング装置60のコントローラー68に目標操舵角σを送信し、目標操舵角σが送信されない場合には運転者のステアリング操作による操舵角制御を行なうものとしたが、車両用走行制御装置10から直接アシストモータ66に指示する態様、すなわち、操舵角制御に関して自動運転を実現するものであってもよい。この場合、運転者のステアリング操作を割り込み制御によって許容してもよいし、ステアリングホイール80自体を備えず、運転者の操作を全く受け付けないものとしても構わない。これらは、入力スイッチ10Aを備えない場合についても同様である。
【0058】
また、中央マーカ5や情報マーカ7の設置態様についても、実施例のものに限られず、情報マーカ7の道路長手方向における間隔で曲線半径Rを表してもよい(この場合、情報マーカ7は、例えば中央マーカ5に対して左右いずれかに所定幅で敷設されてよい)。さらに、中央マーカ5を配置せず、情報マーカ7を、曲線半径を表す間隔をもって走行路3の中央に敷設し、カーブ方向については別の手段(ナビゲーション装置や前方カメラ等が考えられる)により取得するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、少なくとも車両に搭載され、道路に関する情報を取得する装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置10を搭載する車両、及び道路マーカが敷設された道路により実現される道路交通システム1を模式的に示す図である。
【図2】曲線半径Rと間隔Distの関係の一例を示す図である。
【図3】車両用走行制御装置10の主要な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】車両用走行制御装置10を搭載する車両9を模式的に示した図である
【図5】所定の間隔A、及びBをもって敷設された、二対の中央マーカ5及び情報マーカ7により発生される磁界分布M(A)及びM(B)と、これに対応する磁気検出部の出力を示す図である。
【図6】車両用走行制御装置10が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 道路交通システム
3 走行路
3A、3B 道路区画線
5 中央マーカ
7 情報マーカ
9 車両
10 車両用走行制御装置
10A 入力スイッチ
20 磁気センサー
30 電子制御ユニット
40 処理回路
50 切替回路
60 ステアリング装置
62 操舵角センサー
64 トルクセンサー
66 アシストモータ
68 コントローラー
70A、70B 車輪
80 ステアリングホイール
82 ステアリングコラム部
#0〜#59 磁気検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される道路情報取得装置であって、
道路長手方向に延在する、第1の道路マーカ列、及び第2の道路マーカ列を形成するように道路に敷設された道路マーカを検出する、道路マーカ検出手段と、
前記道路マーカ検出手段により検出される、前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカと、前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカと、の位置関係に基づいて道路形状を検出する、道路形状検出手段と、
を備えることを特徴とする、道路情報取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路情報取得装置であって、
前記道路マーカ検出手段は、車両幅方向に並んで配設される複数の検出部から構成され、車両の略下方を検出範囲とする、
道路情報取得装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の道路情報取得装置であって、
前記道路形状検出手段は、前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカと、前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカと、の道路幅方向における間隔に基づいて、道路の曲線半径を検出する手段である、
道路情報取得装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の道路情報取得装置であって、
前記道路形状検出手段は、前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカの道路長手方向における間隔に基づいて、道路の曲線半径を検出する手段である、
道路情報取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の道路情報取得装置であって、
前記道路形状検出手段は、前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカが、道路幅方向において、前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカのいずれの側で検出されたかに基づいて、道路のカーブ方向を検出する手段である、
道路情報取得装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の道路情報取得装置であって、
前記道路形状検出手段は、前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカ、又は前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカ、のいずれか一方のみが前記道路マーカ検出手段により検出された場合には、道路が直線である旨を検出する手段である、
道路情報取得装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の道路情報取得装置であって、
前記道路マーカ検出手段は、磁気マーカの発する磁界を検出する手段であり、異なる極性の磁界により生じうる、磁界干渉に基づく検出誤差を補正する、補正手段を備える、
道路情報取得装置。
【請求項8】
車両に搭載される道路情報取得装置であって、
道路長手方向に延在する、道路に敷設された道路マーカを検出する、道路マーカ検出手段と、
前記道路マーカ検出手段により検出される、道路マーカの道路長手方向における間隔に基づいて、道路形状を検出する、道路形状検出手段と、
を備えることを特徴とする、道路情報取得装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の道路情報取得装置を備え、
前記道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御することを特徴とする、車両用走行制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用走行制御装置であって、
前記道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両前方の道路形状を推定する道路形状推定手段を備え、
該道路形状推定手段により推定された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御することを特徴とする、車両用走行制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両用走行制御装置であって、
前記道路形状推定手段は、道路の曲線半径が変化する区間については、クロソイド曲線に基づいて、車両前方の道路形状を推定する手段である、
車両用走行制御装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の車両用走行制御装置であって、
前記道路形状推定手段により推定された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御する第1の制御モードと、前記道路形状検出手段により検出された道路形状に基づいて、車両の操舵角を制御する第2の制御モードと、を切替え可能な切替手段を備える、
ことを特徴とする、車両用走行制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車両用走行制御装置であって、
前記切替手段は、前記道路形状推定手段の作動状態に基づいて、前記第1の制御モードと前記第2の制御モードとを切り替える手段である、
車両用走行制御装置。
【請求項14】
道路長手方向に延在する、第1の道路マーカ列、及び第2の道路マーカ列を形成するように道路に敷設された道路マーカと、
請求項9ないし13のいずれかに記載の車両用制御装置を搭載する車両と、
により実現される、道路交通システム。
【請求項15】
請求項14に記載の道路交通システムであって、
前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカは、車線の略中央に敷設される、
道路交通システム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の道路交通システムであって、
前記道路マーカは、磁気マーカである、
道路交通システム。
【請求項17】
請求項16に記載の道路交通システムであって、
前記第1の道路マーカ列に属する道路マーカは、第1の極性の磁界を道路上に発し、
前記第2の道路マーカ列に属する道路マーカは、前記第1の極性とは逆の第2の極性の磁界を道路上に発する、
道路交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−233604(P2007−233604A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53272(P2006−53272)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】