説明

道路散水システム

【課題】雨水を一時的に貯水することのできる貯水槽30を地中に配置する技術を利用して、道路に対する散水、特に高速道路に対する散水を、散水車を用いることなく容易にかつ必要とされるときに確実に行うことができるようにした道路散水システムを開示する。
【解決手段】道路散水システムAは、道路1に沿って設置された側溝4、および、側溝4を流れる水を貯水するために地中に埋設された貯水装置20、30、40と貯水装置に貯水された水を吐出する吐出ポンプ50と吐出ポンプ50が吐出する水を地表面に散水するために道路1に沿って配置された長尺状の散水パイプ60とを少なくとも備える散水設備Aとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等を積極的に利用できるようにした道路散水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路面の清掃のため、あるいは夏季に路面温度が過度に上昇するのを防止するために、道路面に散水することが求められる。また、道路に沿って植栽帯が設置されている場合に、植物の生育を育むために植栽帯に散水することも求められる。このような道路あるいは植栽帯への散水は、高速道路網において運転者にかかる負荷を低減する目的からも、特に必要とされている。そのために、高速道路網では、散水車を必要時にまたは定期的に走らせて、所要の散水を行っている。
【0003】
一方、近年、特許文献1に記載のように、中小河川の排水能力を上回る規模の降雨が短期間に集中して生じたときに、河川からの溢水によって災害が生じるのを防止する目的で、地中に貯水槽を備えた雨水流出抑制施設を設けることが都市部などで行われている。貯水槽はコンクリート構造物の場合もあるが、特許文献2に記載のように、凸部からなる列が一定の間隔を置いて多列に平行に形成されている樹脂成形品である貯水空間形成部材の複数枚を交互に直角に交差した姿勢で積層して形成された貯水槽も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−77623号公報
【特許文献2】特開2009−24447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
散水車によって路面や道路に沿った植栽帯に散水する作業は、一般道路はもとより、特に高速道路では、散水車と一般車の車速が異なることから、安全性の確保の面で、またスムースな車の流れを確保する面で多くの課題を抱えており、必要とされるときに迅速に散水作業を行えないことが起こっている。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、前記特許文献1あるいは特許文献2に記載される雨水を一時的に貯水することのできる貯水槽を地中に配置する技術を利用して、道路に対する散水、特に高速道路に対する散水を、散水車を用いることなく容易にかつ必要とされるときに確実に行うことができるようにした道路散水システムを開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による道路散水システムは、道路に沿って設置された側溝、および、前記側溝を流れる水を貯水するために地中に埋設された貯水装置と前記貯水装置に貯水された水を吐出する吐出ポンプと前記吐出ポンプが吐出する水を地表面に散水するために道路に沿って配置された長尺状の散水パイプとを少なくとも備える散水設備、とからなることを特徴とする。
【0008】
本発明による道路散水システムでは、降雨時に道路に沿って設置されている側溝内に流入する雨水は、集水桝等を介して、地中に埋設された貯水装置に流入し、そこに貯水される。貯水装置に貯水されている雨水は、散水が必要となったときに、吐出ポンプの作動によって長尺状の散水パイプに送られ、そこから散水される。散水パイプは一例として100〜400m程度の長さのものであり、道路に沿うようにして配置されているので、散水パイプが道路に沿って配置されている領域では、散水車を用いることなく、道路面等に貯水されている雨水を散水することができる。
【0009】
貯水槽内に水道水等の他の水源からの水を導入する手段を付設することもできる。この態様では、必要な散水量に比して雨水量が少なかった場合に、他の水源からの水を散水のために利用することができるので、道路散水システムとしての利便性は一層向上する。
【0010】
いずれの態様においても、道路に散水された水は、その大半が道路側溝に再び流れ込むので、一度散水に利用した水を、再度散水に利用することができる。すなわち、水のリサイクルが可能となる。
【0011】
本発明による道路散水システムの好ましい態様では、前記散水設備の2個以上が道路に沿って設置されていることを特徴とする。この態様を採用することにより、路線長の長い道路であっても、散水車を用いることなく、道路面等に散水することが可能となる。
【0012】
本発明による道路散水システムにおいて、好ましくは、前記貯水装置は、側溝からの水が流入する沈砂桝と前記沈砂桝に流入した水を貯水する貯水槽とを少なくとも備える。そして、前記沈砂桝から前記貯水槽への水流入部には固形物や浮遊物を除去できるスクリーンが配置される。
【0013】
この態様の道路散水システムでは、沈砂桝を備えることで、貯水槽内に土砂等が入り込むのを阻止することができ、貯水槽の維持管理が容易となる。さらに、スクリーンを備えることで、水中の軽量な固形物や浮遊物等が貯水槽内に入り込むのも阻止することができる。すなわち、貯水槽には固定物や浮遊物を含まない浄水が貯水されるようになるので、道路に散水したときに、道路面を汚染することはない。また、前記のように水をリサイクル使用するときも、一度路面を清掃することで含まれることとなった土砂等は、沈砂桝やスクリーンによって除去されるので、再び貯水槽に貯水されるときには浄水として貯水されるようになる。
【0014】
上記の態様において、スクリーンは所定の大きさの編み目を持つ平板状の金属メッシュ等であってもよい。しかし、平板状のスクリーンの場合、雨水に混入している樹脂シートなどがスクリーン面に付着することで、広い面積での目詰まりが生じやすい。それを解消するために、前記スクリーンとして、前記沈砂桝内を横断方向に延びる1本または複数本の筒状体を備えるスクリーンを用いることが望ましい。この態様では、単に平板であるスクリーンと比較して、スクリーンとしての有効面積を大きくすることができ、スクリーン効果が向上するとともに、目詰まりによって貯水槽内へ水が流入し難くなるのを回避できる効果もある。
【0015】
スクリーンの一態様において、前記筒状体の内部には多孔質材料が濾材として封入される。多孔質材料には、例として、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料等を挙げることができる。雨水の流れが阻害されない程度に多孔質材料を充填することにより、一層高度に浄化した浄水を貯水槽に貯水することが可能となる。また、多孔質材料を交換することで、長期にわたって、高い濾過性能を維持した状態でスクリーンを使用することが可能となる。また、濾材として機能できるものであれば、合成有機系高分子材料や天然有機系高分子材料なども用いることができる。このような多孔質材料を筒状体内に封入することによって、水中の有機物質、浮遊物質、微粒子、懸濁物質、臭気成分のような物質をより確実に除去することが可能となる。
【0016】
スクリーンの一態様において、生物学的処理により水を浄化することもできる。生物学的処理に用いる微生物としては、例として、細菌類、菌類、原生動物、微小後生動物等を挙げることができる。この場合にも、一層高度に浄化した浄水を貯水槽に貯水できるようになる。
【0017】
本発明による道路散水システムの一態様では、ソーラーパネルを備えた発電手段をさらに備え、前記発電手段が発電した電力により前記吐出ポンプが駆動されるようにすることもできる。この態様では、自然エネルギーの有効活用が可能となり、一層環境負荷の小さい道路散水システムが得られる。また、前記した浄水が貯水槽に貯水される態様の道路散水システムに前記したソーラーパネルを備える場合には、貯水槽に貯水された水を利用してソーラーパネルの表面を洗浄することが可能となり、ソーラーパネルの高い発電性能を維持できるようになる。
【0018】
本発明による道路散水システムにおいて、前記した長尺状の散水パイプを、道路面ではなく、道路に沿って設置された植栽帯に対して散水できる位置に配置するようにしてもよい。この態様では、雨水等を植栽帯の緑化に用いることが可能となり、一層環境に優しいものとなる。
【0019】
本発明による道路散水システムは、自動車専用道路あるいは高速道路に沿うように設置することで、特に高い有効性を発揮することができるが、一般の道路に沿って設置した場合でも、当然に有効性を発揮する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、道路および道路に沿って設置されている緑化帯に対する散水を、散水車を用いることなく容易にかつ必要とされるときに確実に行うことができる道路散水システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による道路散水システムの一例を説明するための模式的斜視図。
【図2】本発明による道路散水システムを備えた道路面を模式的に示す斜視図。
【図3】本発明による道路散水システムで用いる散水設備の一例を示す断面図。
【図4】本発明による道路散水システムを備えた道路面の他の例を模式的に示す斜視図。
【図5】散水設備で用いられるスクリーンの2つの例を示す斜視図。
【図6】本発明による道路散水システムで用いる散水設備の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明による道路散水システムを実施の形態を説明する。
図1において、1は車道であり、車道1の中央には中央分離帯としての植栽帯2が路線方向に設置されている。車道1の側方には歩道3が設けられ、車道1と歩道3の境目にはU字側溝からなる道路側溝4が形成されている。また、歩道3にはバス停留所等の適宜の建造物5が設置されていて、この例では、建造物5の屋根面にはソーラーパネル6が張り付けられている。
【0023】
道路側溝4には所定の間隔をおいて集水桝10が設けてあり、道路側溝4内を流れる雨水等は該集水桝10に流入する。そして、集水桝10に流入した水は、地中に埋設された導水管11を通って、本発明でいう「散水設備」Aに流入する。
【0024】
この例において、散水設備Aは、沈砂桝20と、貯水槽30と、流出桝40と、吐出ポンプ50と、長尺状の散水パイプ60とを備える。沈砂桝20、貯水槽30、流出桝40は道路下に埋設しており、沈砂桝20と流出桝40は道路面に管理口としての開口21、41を有している。
【0025】
沈砂桝20はコンクリート造であり、一方の壁に前記導水管11との接続開口22を有し、他の壁には上下方向に距離をおいて2つの開口23、24(図3参照)を有している。上位の開口23は、前記接続開口22よりも少し下方の位置にあり、下位の開口24は当該沈砂桝20の底部25よりも上位の位置にある。また、各開口23、24には、通常メッシュ状のスクリーンが取り付けられている。
【0026】
貯水槽30は、限定されないが、この例では前記した特許文献2に記載されているような、凸部からなる列が一定の間隔を置いて多列に平行に形成されている樹脂成形品である貯水空間形成部材31の複数枚を交互に直角に交差した姿勢で積層して形成された貯水槽であり、全体が非透水性シート32で覆われている。貯水槽30の下には基礎材としてのコンクリート板33が、上面には荷重分散板としてのコンクリート板34が設置されている。
【0027】
貯水槽30の底面は沈砂桝20に形成した下位の開口24よりも少し下方に位置し、上面は沈砂桝20に形成した上位の開口23よりも少し上方に位置している。貯水槽30の一方の端面側は、沈砂桝20の前記2つの開口23、24が形成された側壁と接しており、該2つの開口を介して、沈砂桝20の内部空間と貯水槽30の貯水空間とが連通している。
【0028】
流出桝40はコンクリート造であり、その一側壁は貯水槽30の他方の端面側と接している。そして、貯水槽30に接する前記側壁であって、貯水槽30の上位部分と下位部分に対向する部位に、2つの開口41、42が形成されている。そして、図示されないが、該開口41、42には、貯水槽30内に貯水された水の流出を規制できる適宜のオリフィス、より好ましくは可動オリフィスが取り付けられている。そして、流出桝40の底部には前記した吐出ポンプ50が防水された態様で設置されている。
【0029】
図1に示すように、吐出ポンプ50の吐出側には地表面への立ち上がり管61が接続しており、該立ち上がり管61は、前記した車道1の中央に設置した植栽帯2を路線方向に走っている散水パイプ60に接続している。
【0030】
図示されないが、停留所5またはその近傍にはソーラーパネル6が発電する電力を蓄える蓄電池施設が設けてあり、商用電力に加えて、該蓄電池からの電力によっても吐出ポンプ50が作動するようになっている。
【0031】
図4は、本発明による道路散水システムを備えた道路面の他の例を模式的に示す斜視図であり、この態様では、車道1の中央に植栽帯2が設置されてなく、車道1の中央近傍に前記した散水パイプ60のみが埋設されていて、その吐出孔62が道路面に現れている。他の構成は、図1および図2に示したものと同じであり、図において同じ符号を付している。
【0032】
上記の道路散水システムの稼働態様を説明する。雨が降ると、車道1やその周辺の雨水は道路側溝4に流入する。流入した雨水は集水桝10に集められ、そこから導水管11を通って沈砂桝20内に流入する。流入した雨水に含まれている土砂は、沈砂桝20の底部に沈降して除かれる。雨水の流入量が大きくなり、その水面レベルが下位の開口24のレベルより高くなると、雨水は貯水槽30内に入り込み、そこに貯水される。貯水槽30に貯水された雨水は、流出桝40の開口42に設けたオリフィスに規制される量だけ流出桝40側に流出し、残量はそのまま貯水槽30内に貯水される。
【0033】
また、貯水槽30内の空気が抜けないと貯水槽30内に雨水が流入しづらくなるので、上位の開口23、41は貯水槽30内の空気を抜く通気口として作用する。また、沈砂枡20に流入する雨水の量がさらに大きくなった場合には、上位の開口23からも雨水は貯水槽30内に入り込み、そこに貯水される。また、貯水槽30が満水になった場合、上面にあるコンクリート板34に浮力がかかるのを防止するために、満水になる前に上位の開口41から流出枡40へ水を出すことができる。
【0034】
散水パイプ60からの散水が必要となったときに、吐出ポンプ50を作動させる。それにより、流出桝40内に貯水されている雨水は、立ち上がり管61を経由して散水パイプ60に圧送され、その吐出孔から、図1および図2に示す態様では植栽帯2の植物に散水される。また、図4に示す態様では、路面に埋設された散水パイプ60の地表面に開口した吐出孔から、道路面に散水される。吐出ポンプ50による汲み上げが始まると、流出桝40の開口42に設けたオリフィス部分に負圧が発生するので、貯水槽30内に貯水されている雨水は流出桝40側に引き出され、散水される。可動オリフィスを用いる場合には、吐出ポンプ50による汲み上げが始まると同時にオリフィスの開度を大きくすることでより多くの貯水を連続的に散水することができる。
【0035】
道路面に直接散水する態様では、散水された水は道路面を清掃しかつ路面の温度を奪いながら、蒸発する分を除いて再び道路側溝4内に流入する。そして、再度沈砂桝20に流入し、貯水あるいは散水に利用される。
【0036】
このような散水設備の複数個を道路に沿って設置することで、散水車を走らせることなく植栽帯2の植物への散水や道路面の清掃を雨水を利用して行うことができ、車速の異なる散水車と一般車が走行することに起因する高速道路等での交通障害が発生するのを回避することができる。
【0037】
雨水量が少ないときには、十分な量の水を貯水槽30内に貯水できないことが起こり得る。それを回避するために、水道水や河川水を沈砂桝20あるいは貯水槽30に導入できるようにしておくことは好ましい態様である。
【0038】
道路散水システムが設置される道路環境によっては、道路側溝4に流れ込む雨水中に薄手の樹脂シート等の異物や極微少な浮遊物が多く含まれる場合がある。そのような状況では、沈砂桝20の開口23、24に取り付けた平板状のスクリーンにシートが張り付いて流路面積を極度に小さくしてしまうことが起こる。また、極微少な浮遊物はスクリーンを通過して貯水槽30内に入り込むことも起こる。いずれの場合も、貯水槽30の貯水能力に悪影響を与えるので好ましくない。
【0039】
図5は、そのような事態が生じるのを効果的に回避することのできる、筒状体を備えたスクリーン70の例を示している。また、その形態のスクリーン70を沈砂桝20の開口23、24に取り付けた例が、図1、図3に示される。
【0040】
図5(a)に示すスクリーン70Aは、垂直方向の面材71と、該面材71に立設された1本または複数本(図示のものでは4本)の円筒体である筒状体72からなる。垂直方向の面材71は、沈砂桝20の前記開口23、24を塞ぐことができる大きさであればよく、図では矩形として示されるが、取り付けるべき開口の形状に合わせて適宜の形状とすればよい。また、面材71は、図示のもののように有孔であってもよく、無孔であってもよい。筒状体72は、例えば金属メッシュのような多孔材で作ることが必須である。面材71が有孔材である場合には、その孔径は筒状体72の孔径よりも小さいことが望ましい。
【0041】
筒状体72の長さは、スクリーン70Aを取り付ける場所(図示の例では沈砂桝20)の水平断面の形状と大きさに応じて設定する。水平断面を横断できる長さであってもよいが、取り付けが困難なことと水の流れに対する抵抗が大きくなりすぎることから、途中までの長さであることが好ましい。筒状体72の太さや本数も、水の流れに対する抵抗と求められる浄化度を考慮して適宜の数とする。また、筒状体72は面材71に対して着脱できるように取り付けられていることが好ましく、さらに、図5(b)に示すように、面材71側に取り付けたアングル材74によって支持されていることが好ましい。
【0042】
図1あるいは図3に示すように、スクリーン70Aを沈砂桝20の開口23、24に取り付けた場合、雨水中に薄手の樹脂シート等が含まれており、それがスクリーン70Aに張り付いたとき、張り付いた樹脂シート等によってスクリーンが目詰まりする面積のスクリーンの全面積に占める割合は、スクリーンが単に平面体である場合と比較して、筒状体72を有している分だけ小さくなり、結果としてスクリーン70Aに支障となる程度の目詰まりが生じる確率を大きく低減できるようになる。
【0043】
筒状体72の内部は空であってもよい。貯水槽30に貯水される雨水の浄化度を一層高くすることを望む場合には、筒状体72の内部に適宜の多孔質材料を充填することもできる。充填した多孔質材は濾材として機能して、雨水中の微細な異物や浮遊物を除去することができ、貯水の浄化度は高くなる。多孔質材料には、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料等を例示できる。
【0044】
また、前記したように、スクリーンの一態様において、生物学的処理により水を浄化することもできる。生物学的処理に用いる微生物としては、例として、細菌類、菌類、原生動物、微小後生動物等を挙げることができる。この場合にも、一層高度に浄化した浄水を貯水槽に貯水できるようになる。
【0045】
このようにして浄化度の高くなった雨水を貯水槽30に貯水しておくことにより、吐出ポンプ50でポンプアップした貯水を前記した停留所5の屋根面に張り付けたソーラーパネル6の洗浄水として用いることが可能となり、道路散水システム全体としての一層の効率化を図ることができる。
【0046】
図5(c)に示すスクリーン70Bは、筒状体72の垂直断面が矩形状であり、その一つの頂辺73を最上位とした姿勢で面材71に取り付けられている点で、図5(a)に示したスクリーン70Aと相違する。この形態のスクリーン70Bを沈砂桝20の開口23、24に取り付けた場合、沈砂桝20内の水位が低下するときに、水の流れによって筒状体72の上面側に堆積している異物(固形物)を容易に流し出すことができ、異物(固形物)による筒状体72部分の目詰まりを、手で除去することなく、解消することが可能となる。なお、同様な作用効果は、図5(a)に示した断面円形の筒状体72においても、ある程度は期待することができる。
【0047】
図6は、本発明による道路散水システムで用いる散水設備の他の例を示している。ここでは、道路側溝4に付設される集水桝10の出口側開口12にも、適宜のスクリーンを取り付けている。図示の例では、図5に示したスクリーン70を取り付けているが、これに限らない。集水桝10の出口側開口12にも適宜のスクリーンを取り付けることで、貯水槽30に流入する雨水の浄化度をさらに高くすることができる。なお、この場合、どのような形態のスクリーンを取り付ける場合でも、集水桝10に取り付けるスクリーンの孔径を、沈砂桝20に取り付けるスクリーンの孔径よりも大きくすることが望ましい。それにより、大きなものを順に排除することができ、各スクリーンでの除去効率が向上する。
【符号の説明】
【0048】
A…散水設備、
1…車道、
2…中央分離帯としての植栽帯、
3…歩道、
4…道路側溝、
5…建造物、
6…ソーラーパネル、
10…集水桝、
11…導水管、
20…沈砂桝、
30…貯水槽、
40…流出桝、
50…吐出ポンプ、
60…長尺状の散水パイプ、
70…水中の固形物や浮遊物を除去できるスクリーン、
71…面材、
72…筒状体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿って設置された側溝、および、前記側溝を流れる水を貯水するために地中に埋設された貯水装置と前記貯水装置に貯水された水を吐出する吐出ポンプと前記吐出ポンプが吐出する水を地表面に散水するために道路に沿って配置された長尺状の散水パイプとを少なくとも備える散水設備、とからなることを特徴とする道路散水システム。
【請求項2】
前記散水設備の2個以上が道路に沿って設置されていることを特徴とする請求項1に記載の道路散水システム。
【請求項3】
前記貯水装置は、側溝からの水が流入する沈砂桝と前記沈砂桝に流入した水を貯水する貯水槽とを少なくとも備え、前記沈砂桝から前記貯水槽への水流入部には固形物や浮遊物を除去できるスクリーンが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の道路散水システム。
【請求項4】
前記スクリーンは、前記沈砂桝内を横断方向に延びる筒状体を備えることを特徴とする請求項3に記載の道路散水システム。
【請求項5】
前記スクリーンにおける前記筒状体の内部には多孔質材料が封入されていることを特徴とする請求項4に記載の道路散水システム。
【請求項6】
道路に沿って設置された側溝は集水桝を備え、該集水桝の出口側にも固形物や浮遊物を除去できるスクリーンが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の道路散水システム。
【請求項7】
ソーラーパネルを備えた発電手段をさらに備え、前記発電手段が発電した電力により前記吐出ポンプが駆動されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の道路散水システム。
【請求項8】
前記長尺状の散水パイプが、道路に沿って設置された植栽帯に対して散水できる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の道路散水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132240(P2012−132240A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286220(P2010−286220)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】