説明

道路料金所の近隣情報案内装置

【課題】 ETCシステムを採用した料金所近隣の情報データを取得するためにインフラ設備を増設することなく、且つ、ETCシステムのみのスタンドアローンで料金所近隣の情報データを取得する。
【解決手段】 ETCシステムを用いた道路料金所TGを通過時に、この道路料金所と料金収受情報D1を授受する通信手段1Aと、各道路料金所毎に道路料金所近隣の情報を記憶した近隣情報記憶手段14Aと、受信された料金収受情報D1より通過した道路料金所TGの位置情報を判別する位置情報判別手段14Aと、この判別された位置情報に基づいて近隣情報記憶手段14Aより道路料金TG所近隣の情報を検索する近隣情報検索手段14Aと、この検索された情報を運転者に知らせる近隣情報報知手段1a,1bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ETC(Electronic Toll Collection)システムから発信される料金所情報を用いて料金所の近隣情報を音声ガイダンスに従って、あるいは画像表示にて運転者に知らせる道路料金所の近隣情報案内装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来この種の装置として、例えば特開平08−221622号公報に開示された無線ICカードシステムがある。このシステムは図7にその構成を示すように、車載無線機1は料金所TGに備えられた料金収受アンテナA1から発せられた料金収受情報D1の受信以外に、料金所付近に設けられた地上局LSに備えられた情報サービス用アンテナA2より発せられた交通情報、道路案内、観光案内等のサービス情報を受信すると表示装置1aにそれら情報を画像表示する。
【0003】従来のシステムの動作として、車載無線機1に内蔵のアンテナA1aが車外より情報D1あるいはD2を受信すると、その情報はダイオードDにより検波されて検知回路11および復調回路13に入力される。検知回路11では受信された情報の信号レベルを検知し、マイクロコンピュータ14に入力する。この検知された信号レベルが料金収受情報D1を示す信号レベルであれば、マイクロコンピュータ14は車両固有のID番号等の情報を内部メモリから読み出し変調回路15へ出力する。この情報は変調回路15にて送信信号に変調され、アンテナA1aより料金収受アンテナA1に送信される。
【0004】料金所では、ID番号を認識すると通行料金などの情報を車載無線機1に送信した後に、ID番号を認識した車両側において通行料金の引き落としを登録している銀行口座から自動的に通行料金の精算を行う。
【0005】車両が地上局LSを通過時に、情報サービスアンテナA2からのサービス情報D2を受信したことが、受信情報の信号レベルより検知されたならば、そのとき復調回路13にて復調された受信データを、例えば交通情報、観光案内等のサービス情報を表示する画像データにマイクロコンピュータ14で変換処理し、表示装置1aに画像表示する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のシステムによるサービス情報の受信においては以下のような問題点があった。
(1) 料金収受用アンテナに加えて、観光案内等の情報を提供するための情報サービスアンテナが別途必要となり、高速道路などの延長に伴ってインフラ設備増設によるコストアップが避けられない。
(2) 情報サービスアンテナによる情報提供のデータ規模が、画像データ、特に動画のように大きい場合、情報サービスアンテナによるサービスエリアを瞬時に通過しても提供データを欠落することなく受信することは困難である。
(3) 提供データを欠落することなく受信しようとすると、自車速度を減速するか、停止するかなどの対応が必要となり、ノンストップで料金所を通過するというメリットが損なわれる可能性がある。
(4) 料金所付近の道路情報や観光情報を得るにはナビゲーションシステムを利用し、自車両位置の道路情報や観光情報を地図画面に映し出すシステムがあるが、このシステムはCD−ROMによる地図情報や、GPS情報、車速データも必要であり、システム全体が複雑で、且つ、大規模になる。
(5) 新規に開通したETCを設置した有料道路付近にサービス情報を提供する施設が整備されていないと、電波に基づくサービス情報を得ることができない。
(6) 不慣れな場所へ高速道路または有料道路を用いて旅行中に、情報サービスアンテナのサービスエリアを通過し、目的地近くのETCシステム採用の料金所を通過した場合に近隣情報案内機能付き車載機を搭載していないと、走行中の車内において、目的地の名所、名跡、名物、名産といった観光情報を取り入れる場合には、持参の観光ガイドブック、何時オンエアされるか不明なラジオ放送に依存するしかない。
または、不慣れな旅行先で書店を探し観光ガイドブックを購入するため、あるいは通行人に目的地を尋ねるために車両を一旦停止させるといった煩わしさがあった。
【0007】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、ETCシステムを採用した料金所近隣の情報データを取得するためにインフラ設備を増設することなく、且つ、ETCシステムのみのスタンドアローンで料金所近隣の情報データを取得することができる道路料金所の近隣情報案内装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る道路料金所の近隣情報案内装置は、ETCシステムを用いた道路料金所を通過時に、この道路料金所と料金収受情報を授受する通信手段と、各道路料金所毎に道路料金所近隣の情報を記憶した近隣情報記憶手段と、受信された上記料金収受情報より前記通過した道路料金所の位置情報を判別する位置情報判別手段と、この判別された位置情報に基づいて前記近隣情報記憶手段より当該道路料金所近隣の情報を検索する近隣情報検索手段と、この検索された情報を運転者に知らせる近隣情報報知手段とを備えたものである。
【0009】この発明に係る道路料金所の近隣情報案内装置における近隣情報記憶手段は、各道路料金所の位置情報毎に道路料金所近隣の情報を、画像表示データおよび音声出力データの少なくとも一つのデータ形式で記憶したデータテーブルを格納したものである。
【0010】この発明に係る道路料金所の近隣情報案内装置における近隣情報報知手段は、前記近隣情報記憶手段より近隣情報検索手段にて検索された道路料金所近隣の情報を画像データおよび音声デ−タの少なくとも1つに変換して視聴覚手段を通して運転者に報知するものである。
【0011】この発明に係る道路料金所の近隣情報案内装置における近隣情報記憶手段は、補助記憶部を有し、新たに設置された道路料金所の近隣の情報あるいは既存の道路料金所の近隣の情報を外部より書き込み可能なものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を添付図面について説明する。
実施の形態1.図1は本発明の実施の形態1に係る道路料金所の近隣情報案内装置の概略を説明する図である。道路料金所の近隣情報案内装置を構成する車載無線機1Aは、ETCシステムを採用した料金所に設置された料金収受アンテナA1より料金収受情報D1を受信すると、通常のETCシステムのように、料金所側のETCシステムと車両の車載無線機1Aとの間では双方のアンテナを通してキャッシュレスによる通行料金収受動作を開始する。
【0013】このとき、車載無線機1Aは料金支払い履歴情報となる高速道路コード、料金所コードを料金収受情報D1を通して受信すると、それらのコードに基づいて近隣情報を画像にして表示装置1aに表示、あるいは音声ガイダンス部1bより音声合成により発声する。
【0014】本実施の形態1に係る車載無線機1Aの構成としては図6に示すものがある。尚、図中、図7と同一符号は同一または相当部分を示す。本実施の形態1における車載無線機1Aは、料金収受アンテナA1より発信された料金収受情報D1をアンテナA1aで受信すると、受信信号レベルを検知回路11で検知し、検知信号をデジタル信号に変換してマイクロコンピュータ14Aへ出力する。マイクロコンピュータ14Aは信号レベルが所定値以上であることを判定したならば、復調回路13で復調された料金収受情報(ETC情報)D1を読み込んで処理する。また、このとき、マイクロコンピュータ14Aは料金収受情報D1に含まれる高速道路コードおよび料金所コードを判別する。
【0015】マイクロコンピュータ14Aの内部メモリ(ハードディスク)には、図2、図4、図5に示すように各高速道路コードで大別した料金所コード毎に近隣情報を画像情報または音声情報、あるいは画像情報と音声情報の双方をテーブル式に記憶した料金所データテーブルを格納してある。従って、マイクロコンピュータ14Aは高速道路コードおよび料金所コードを判別すると、これらコードに基づいて内部メモリより近隣情報を読み出し、表示部1aによる画像表示および音声ガイダンス部1bによる音声出力の少なくとも1つを行なう。尚、本実施の形態1において、料金収受アンテナA1、情報サービスアンテナA1a,a1b、検知回路11、復調回路13、変調回路151、マイクロコンピュータ14Aは通信手段を、マイクロコンピュータ14Aは近隣情報記憶手段、近隣情報検索手段を、そしてマイクロコンピュータ14A、表示装置1a、音声ガイダンス部1bは近隣情報報知手段を構成する。
【0016】本実施の形態1の動作を図3に示すフローチャート及び図4及び図5に示す料金所データテーブルに従って説明する。自車両が料金所の通過に伴い料金所よりETC情報を受信したことを、マイクロコンピュータ14A側で判定したならば(ステップS1)、ETC情報は平文であるか秘匿情報などが書き込まれた暗号文であるかを判断する(ステップS2)。そして、暗号文であれば平文にデコードしてからETC情報内容を判読する(ステップS3)。また、平文であれば即座にETC情報内容を判読する。
【0017】判読の結果、ETC情報の内容より高速道路コードが判別できなければ、料金所データテーブルより近隣情報の検索が不可能として、ステップS1に戻り次のETC情報を受信する(ステップS4)。ステップS4において高速道路コードが判別できたならば、料金所コードの判別に移り(ステップS5)、料金所コードが判別できなければ、同じく料金所データテーブルより近隣情報の検索が不可能として、ステップS1に戻り次のETC情報を受信する(ステップS5)。ステップS4,5を通して高速道路コード、料金所コードの判別がなされたならば、高速道路コード、料金所コードに基づいて料金所データテーブルを参照する(ステップS6)。
【0018】テーブ参照の結果、例えば、図4に示すように高速道路コードが「41」、料金所コードが「05」であれば、近隣情報に画像表示が有るか否かを判定する(ステップS7)。そして、画像表示があれば、例えば、山陽自動車道における山陽姫路東IC付近の近隣情報として、表示部1aに姫路城を動画あるいは静止画の何れかで画像表示する(ステップS8)。次いで、音声ガイダンスが有るか否かを判定する(ステップS9)。音声ガイダンスがあれば、音声ガイダンス部1bから姫路城の観光案内を音声合成により流す。尚、画像表示と音声ガイダンスの一方で近隣情報である姫路城を運転者に観光案内として伝えるようにしてよい。
【0019】また、テーブ参照の結果、例えば、図4に示すように高速道路コードが「41」、料金所コードが「07」であれば、近隣情報に画像表示が無いと判定する(ステップS7)。そして、音声ガイダンスが有るか否かを判定する(ステップS9)。音声ガイダンスがあれば、音声ガイダンス部1bから童謡の一節を音声合成により流す。尚、料金所コード「07」は竜野ICを示すため、当地出身の歌人「三木露風」が作詞した「赤トンボ」の一節を音声ガイダンス部1bより車内に流すことで歌の由来等を知ることができる。
【0020】実施の形態2.上記各サービス情報は、既に開通している有料道路の料金所近隣の情報を料金所データテーブルより検索して運転者に音声ないし画像にて知らせた。しかし、今後開通する新規の有料道路については以下のようにサービス情報を整える。
【0021】予め全国の主要都市の都市名に対応する仮の料金所コードとその都市に関する近隣情報を画像表示データあるいは音声ガイダンスデータ、または画像表示データと音声ガイダンスデータとの双方をROM等の車載無線機のハードディスク等の内部記憶装置、または車載無線機に内蔵のマイクロコンピュータによってアクセス可能なCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、ミニディスク(MD)といった外部記憶装置に保存しておく。
【0022】そして、新規の有料道路の開通によりETCシステムを採用した料金所が各地に設置されたならば、当然、料金所コードが設定されるため、各料金所コードを仮の料金所コードに変換するため、各料金所コードに対応する仮の料金所コードを記載した変換テーブルをマイクロコンピュータ14Aの内部メモリに記憶する。
【0023】その結果、豊岡南ICが設置され、豊岡南ICにおける料金所を車両が通過すると車載無線機のマイクロコンピュータ14Aは受信した料金所コードより豊岡市を通過中であることを判定する。そのときマイクロコンピュータ14Aは料金所コードをもとに変換テーブルを参照して仮の料金所コードを検索し、この仮の料金所コードをもとに上記内部記憶装置または外部記憶装置より豊岡市に関する近隣情報、例えば当地は戦国大名「京極氏」の城下町であったことを表示部1aまたは音声ガイダンス部1bを通して画像または音声により運転者に知らせる。
【0024】尚、変換テーブルを検索するのは、新規の有料道路の開通当初であり、各仮の料金所コードと各料金所コードの対応関係が明らかになったならば、各記憶装置の料金所データテーブルに記憶したした仮の料金所コードを各料金所毎に設定した料金所コードに置き換えて、直接料金所データテーブルをアクセスして近隣情報を読み出してもよい。
【0025】また、新規の有料道路の開通を見越して各種記憶装置に各主要都市とそれら都市の近隣情報を記憶させる場合は、例えば、インターネットを通して日本道路公団(JH)のホームページまたは料金所サービスエリア等に設置された情報端末より新規の有料道路の開通情報を得、その情報に基づいて都市と近隣情報を各種記憶装置に記憶させてもよい。このように本実施の形態2によれば、新規の有料道路の開通に伴って設置されたETCシステム採用の料金所と該料金所の近隣情報との相関が取れ車両側のアメニティー機能が向上する。
【0026】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、ETCシステムで料金所の近隣情報を取得するために、インフラ設備を特に増設することなく、且つ、ETCシステムのみのスタンドアローンで料金所の近隣情報を取得することができるという効果がある。
【0027】また、有料道路の新設や延長で新たに設けられた料金所近隣情報をユーザ側で拡張できるため、料金所と当該料金所の近隣情報との相関が取れ、車両側のアメニティー機能が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る道路料金所の近隣情報案内装置の概略構成を示す図である。
【図2】 本実施の形態に係る車載無線機に内蔵したCUP内蔵の料金データテーブルの一例を示す図である。
【図3】 本実施の形態に係る道路料金所の近隣情報案内装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】 本実施の形態に係る表示画像データを検索する場合の料金データテーブルの一例を示す図である。
【図5】 本実施の形態に係る音声ガイダンスデータを検索する場合の料金データテーブルの一例を示す図である。
【図6】 本実施の形態に係る車載無線機の構成を示すブロック図である。
【図7】 従来の車載無線機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1A 車載無線機、A1 料金収受アンテナ、D1 料金収受情報、1a 表示装置、1b 音声ガイダンス部、14A マイクロコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ETCシステムを用いた道路料金所を通過時に、この道路料金所と料金収受情報を授受する通信手段と、各道路料金所毎に道路料金所近隣の情報を記憶した近隣情報記憶手段と、受信された上記料金収受情報より前記通過した道路料金所の位置情報を判別する位置情報判別手段と、この判別された位置情報に基づいて前記近隣情報記憶手段より当該道路料金所近隣の情報を検索する近隣情報検索手段と、この検索された情報を運転者に知らせる近隣情報報知手段とを備えたことを特徴とする道路料金所の近隣情報案内装置。
【請求項2】 前記近隣情報記憶手段は、各道路料金所の位置情報毎に道路料金所近隣の情報を、画像表示データおよび音声出力データの少なくとも一つのデータ形式で記憶したデータテーブルを格納したことを特徴とする請求項1に記載の道路料金所の近隣情報案内装置。
【請求項3】 前記近隣情報報知手段は、前記近隣情報記憶手段より近隣情報検索手段にて検索された道路料金所近隣の情報を画像データおよび音声デ−タの少なくとも1つに変換して視聴覚手段を通して運転者に報知することを特徴とする請求項1または2に記載の道路料金所の近隣情報案内装置。
【請求項4】 前記近隣情報記憶手段は、補助記憶部を有し、新たに設置された道路料金所の近隣の情報あるいは既存の道路料金所の近隣の情報を外部より前記補助記憶手段へ書き込み可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の道路料金所の近隣情報案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−283272(P2001−283272A)
【公開日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−97694(P2000−97694)
【出願日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】