説明

道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物

【課題】施工初期に充分な初期付着強度が発揮され、その後接着剤の硬化による追加の永久付着強度の増加により、施工と同時に道路施設物を堅く固定設置でき、施工およびメンテナンスが大変容易な道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物を提供する。
【解決手段】ナットアンカー100は、ヘッド110とアンカー棒130とを有し、該ヘッド110は、上部にボルト締結部111が形成され、下部に締結溝が形成され、外周面に放射状に突出して所定個数のスプリント112が軸方向に延在して形成され、該アンカー棒130は、棒131の上部と下部にそれぞれ締結部と締結溝が形成され、該ヘッド110と締結される。道路施設物は、該ナットアンカー100と、下部に該ボルト締結部111に締結可能な固定ボルト112が突出して一体として形成された道路施設物本体とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート及びアスファルト道路に道路分離標、衝撃吸収装置、道路鋲およびその他交通案内施設物などの道路施設物を設置するための道路施設物設置用ナットアンカーに関するもので、特にナットアンカーの施工初期に充分な付着強度が発揮され、その後接着剤の硬化による追加の永久付着強度の増加により、施工と同時に道路施設物を堅く固定設置でき、道路施設物の施工およびメンテナンスが大変簡単な道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路には道路分離標、衝撃吸収装置、道路鋲およびその他様々な道路施設物が設置されている。例えば、道路分離標は、道路のセンターラインや車線などに一定間隔で設置され、違法Uターンや近くの車線からの合流を防止する交通安全施設物であるが、このような目的の他にも、横断歩道の表示、歩道と車道の分離表示、安全地帯の表示、バス専用車線の表示など、各種境界を表示したり、スピードの出し過ぎによる急カーブでの脱線を予防したりするために設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような道路施設物の大半は、道路に穴を穿孔し、穿孔された穴に接着剤を充填した後、固定ボルトを締結することで道路施設物を設置している。例えば、図11に示すように、従来の道路分離標は、道路上に結合できるよう周囲の方向に締結孔を形成した固定板11と、固定板11の中央に垂直に立設され、上側の外周縁に反射帯13が付着された分離標10で構成され、固定板11の締結孔に固定ボルト12を締結する前に、道路に穴を開け、エポキシーを充填した後、固定ボルト12を締結して分離標10が道路に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−147913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図11に記載のような設置方法では、接着剤硬化時間まで充分な強度の発現および定着がされず、自動車の走行による振動と風力によって施工不良が頻繁に生じ、固定ボルトの埋込の深さが足りず外力によって道路施設物が頻繁に破損され、破損された道路施設物の大半はリサイクルできず、再施工するためには道路に違う穴を開けなければならないため、メンテナンスコストが過度に必要となるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、施工初期に充分な初期付着強度が発揮され、その後接着剤の硬化による追加の永久付着強度の増加により、施工と同時に道路施設物を堅く固定設置でき、施工およびメンテナンスが大変容易な道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る道路施設物設置用ナットアンカーは、上部にボルト締結部が形成され、下部に締結溝が形成され、外周面に放射状に所定個数の軸方向スプリントが突出されたヘッドと、棒の上部と下部にそれぞれ締結部と締結溝が形成され、前記ヘッドと締結されるアンカー棒とを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る道路施設物設置用ナットアンカーは、アンカー棒の下段に締結されるよう棒の上部に締結部が形成され、下部に円錐の形をしたエンドが形成されたエンド部を有していてもよい。また、ヘッドとアンカー棒との間に挿入締結されるリング形状のキャップを、さらに有していてもよい。ヘッドのスプリントの下段に、傾斜したテーパー部が形成されていてもよい。アンカー棒の棒の外周面に、所定個数の突出したリング形状またはスクリュー形状の突起が形成されていてもよい。ヘッドのボルト締結部の内部に、内側に突出したレンチ締結部が形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法は、本発明に係る道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法であって、道路を穿孔し、穿孔した穴の異物を除去した後、前記穴に接着剤を注入し、前記接着剤の硬化後に前記ヘッドを前記アンカー棒から除去できるよう、前記道路施設物設置用ナットアンカーを前記接着剤が充填された前記穴に押し込んで挿入することを、特徴とする。
【0010】
本発明に係る道路施設物は、本発明に係る道路施設物設置用ナットアンカーと、下部に、前記ボルト締結部に締結可能な固定ボルトが突出して一体として形成された道路施設物本体とを、有することを特徴とする。
道路施設物は、道路分離標、衝撃吸収装置、道路鋲、道路ブロック、その他の交通案内施設物など、道路に設置されるものであればいかなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工初期に充分な初期付着強度が発揮され、その後接着剤の硬化による追加の永久付着強度の増加により、施工と同時に道路施設物を堅く固定設置でき、施工およびメンテナンスが大変容易な道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーを示す斜視図である。
【図2】図1に示す道路施設物設置用ナットアンカーの分解斜視図である。
【図3】図1に示す道路施設物設置用ナットアンカーの縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法の穿孔工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法の異物除去工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法の接着剤注入工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法のナットアンカー挿入工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の道路施設物の道路分離標を示す側面図である。
【図9】図8に示す道路分離標の、ナットアンカーへの結合工程を示す断面図である。
【図10】図8に示す道路分離標の、道路への設置状態を示す断面図である。
【図11】従来の道路分離標の、道路への設置状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図7は、本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカー、および、その施工方法を示している。
図1乃至図3に示すように、道路施設物設置用ナットアンカー100は、ヘッド110及びアンカー棒130で構成される。
【0014】
ヘッド110の上部には、道路施設物とボルトを締結するためのボルト締結部111が形成され、ヘッド110の下部には、アンカー棒130と締結するための締結溝113が形成され、ヘッド110の外周面には放射状に所定個数のスプリント112が突出して形成されている。このとき、スプリント112の下段には、傾斜したテーパー部114が形成されている。
【0015】
このように構成されたナットアンカー100が道路の穿孔された穴に挿入されたとき、スプリント112によってナットアンカー100が穴に押し込まれ、接着剤が硬化する前でも道路施設物を固定するうえで充分な付着強度を発現することになる。
【0016】
また、ナットアンカー100が道路に押し込まれる際、スプリント112の下部に形成されたテーパー部114によって、より簡単に道路の穿孔された穴に押し込まれるようになっている。
【0017】
また、図3に示すように、ボルト締結部111の内部には、突出されたレンチ締結部115が形成される。レンチを挿入してレンチ締結部115にかかるようにした後、レンチを回転させてヘッド110とアンカー棒130とを分離できる。
【0018】
アンカー棒130は、円柱の形をした棒131の上部に、締結部132が形成され、棒131の下部に締結溝134が形成される。このとき、アンカー棒130の棒131の外周面には、リングまたはスクリューの形をした突起133が突出して構成されるのが望ましい。この場合、接着剤が充填された道路の穴にナットアンカー100を挿入して接着剤が硬化したとき、突起133によってナットアンカー100がさらに堅く道路に締結固定される。
【0019】
アンカー棒130は、道路に穿孔された穴の深さ、施設物の種類など条件によって一つまたは複数を連続締結できる。即ち、道路施設物を道路に固定するためには、ナットアンカー100が道路の補助基層にまで挿入固定されて道路施設物が堅く固定されるが、それぞれの道路の補助基層にまで高さを合わせてアンカー棒130を多数個連続組立て使用できる。
【0020】
また、図1乃至図3に示すように、ヘッド110とアンカー棒130との間にリングの形をしたキャップ120を締結するのが望ましい。この場合、接着剤が充填された道路の穴にナットアンカー100を挿入する際、接着剤が道路の表面にあふれることがあるが、キャップ120によって接着剤が道路の表面にあふれるのを防止し、雨水が道路の下部に入るのを防止する。キャップ120は、弾性のあるゴムまたは合成樹脂を材質にして成形することで、キャップ120と道路の穴の内面とが弾性によって密閉されるようにするのが望ましい。
【0021】
また、図1乃至図3に示すように、アンカー棒130の下部に、エンド部140が締結されるのが望ましい。エンド部140は、円柱の形をした棒144の上部に締結部141が形成され、棒144の下段には円錐の形をしたエンド143が形成されたもので、エンド部140の締結部141がアンカー棒130の締結溝134に挿入締結される。エンド部140は、ナットアンカー100が道路に穿孔された穴に挿入される際、下段に形成された円錐の形をしたエンド143によって、さらに容易に挿入されるようにする。
【0022】
このように構成されたナットアンカー100は、図4乃至図7に示す本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法で施工される。まず、図4に示すように、道路施設物を設置する道路を穿孔し、図5に示すように、圧縮空気を使って穿孔した穴の異物を除去した後、図6に示すように、道路の穿孔された穴にエポキシ等の接着剤を注入し、図7に示すように、ナットアンカー100を接着剤が充填された穴に押し込んで挿入する。
【0023】
このように、道路の穿孔された穴にナットアンカー100を挿入する際、スプリント112が穴の内側と圧着されることで、ナットアンカー100が押し込まれ、ナットアンカー100と締結される道路施設物を支えて固定するうえで充分な付着強度を、ナットアンカー100が発現することになる。
【0024】
その後、接着剤が硬化すると、アンカー棒130およびエンド部140の外周面に形成された突起133,142によって、ナットアンカー100の付着強度が増加し、道路施設物が堅く固定される。
【0025】
このようにナットアンカー100を使って道路施設物を設置した後、道路の再舗装などのために道路のアスファルトを一定部分削るとき、ナットアンカー100を除去しない状態では重装備が破損したり安全事故が発生することがある。
【0026】
このような道路の再舗装などの工事の際には、ナットアンカー100に締結された道路施設物を解体した後、レンチ(未図示)をナットアンカー100のボルト締結部111に挿入して、レンチがボルト締結部111の内部に突出されたレンチ締結部115にかかるようにし、レンチを回転させてナットアンカー100のヘッド110を除去する。このようにヘッド110を除去した後、安全に道路を削り、道路を舗装できる。
【0027】
図8乃至図10は、本発明の実施の形態の道路施設物の一例の道路分離標を示している。
図8に示すように、道路分離標200は、道路の上部に表示される分離標本体と、図1乃至図3に示す道路に埋設されるナットアンカー100とで構成される。
【0028】
図8に示すように、道路の上部に表示される分離標本体は、道路上に結合される固定板211と、固定板211の中央に垂直に立設され、上側の外周縁に所定個数の反射帯213が付着された分離標210と、固定板211の下部中心に分離標210と一体として形成された固定ボルト212で構成される。
【0029】
このように構成されたナットアンカー100と分離標本体とを道路に埋設する過程を詳しく説明する。まず、図4乃至図7に示すように、ナットアンカー100を道路に埋設する。図9に示すように、道路に埋設されたナットアンカー100のボルト締結部111に、分離標本体の固定ボルト212をボルト結合することで、図10に示すように、道路への道路分離標200の設置が終了する。
【0030】
このとき、図2に示す分離標本体の固定板211に形成された溝214を使って、レンチなどの工具で分離標本体を回転させ、固定ボルト212をナットアンカー100に堅くボルト結合するようにすることが望ましい。
【0031】
このように設置された道路分離標200は、道路の深くに埋設されたナットアンカー100によって分離標本体をボルト締結すればよいため、施工とメンテナンスが大変容易である。ナットアンカー100が道路に押し込まれるため、接着剤のエポキシーが固まる前でも充分な強度を維持することができる。分離標210が亡失しても新しい分離標本体をすでに道路に埋め込まれているナットアンカー100にボルト締結するだけで補修できるため、分離標の設置に専門の施工業者が要らず誰でも簡単に補修できる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態の道路施設物設置用ナットアンカー、その施工方法、および道路施設物について説明した。本発明の技術的構成から、本発明が属する技術分野の当業者がその技術的思想や必須的特徴を変更せずに、違う具体的な形で実施できるということが分かるだろう。このため、上述した実施例はすべての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解される必要があり、本発明の範囲は前述した詳しい説明より特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変更された形が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0033】
100 ナットアンカー
110 ヘッド
111 ボルト締結部
112 スプリント
113 締結溝
114 テーパー部
115 レンチ締結部
120 キャップ
130 アンカー棒
131 棒
132 締結部
133 突起
134 締結溝
140 エンド部
141 締結部
142 突起
143 エンド
144 棒
200 道路分離標
210 分離標
211 固定板
212 固定ボルト
213 反射帯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部にボルト締結部(111)が形成され、下部に締結溝(113)が形成され、外周面に放射状に所定個数の軸方向スプリント(112)が突出されたヘッド(110)と、
棒(131)の上部と下部にそれぞれ締結部(132)と締結溝(134)が形成され、前記ヘッドと締結されるアンカー棒(130)とを、
有することを特徴とする道路施設物設置用ナットアンカー。
【請求項2】
請求項1記載の道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法であって、
道路を穿孔し、穿孔した穴の異物を除去した後、前記穴に接着剤を注入し、前記接着剤の硬化後に前記ヘッドを前記アンカー棒から除去できるよう、前記道路施設物設置用ナットアンカーを前記接着剤が充填された前記穴に押し込んで挿入することを、
特徴とする道路施設物設置用ナットアンカーの施工方法。
【請求項3】
請求項1記載の道路施設物設置用ナットアンカーと、
下部に、前記ボルト締結部に締結可能な固定ボルトが突出して一体として形成された道路施設物本体とを、
有することを特徴とする道路施設物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−222959(P2010−222959A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252550(P2009−252550)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(309033161)有限会社バリュー・スペース (2)
【出願人】(509305480)法人忠州大学校産学連携基金 (1)
【氏名又は名称原語表記】Chungju National University Industry−Academic Cooperation Foundation
【住所又は居所原語表記】Chungju National Univ. 72 Daehak−ro, Chungju Si, Chungcheongbuk−Do, Rep of KOREA
【出願人】(509305479)
【氏名又は名称原語表記】KIM JU IL
【住所又は居所原語表記】166−21bunji, Daeso−ri Iryu−myeon, Chungju Si, Chungcheongbuk−Do, Rep of KOREA
【Fターム(参考)】