説明

道路照明設備点灯制御システム

【課題】無駄な電力を消費することなく、自動車の運転に必要な視界を確保するための照明を行うことができる、道路照明設備点灯制御システムを提供する。
【解決手段】照明を行う道路上の走行車両を正面方向又は後方から撮影する撮像手段と、前記撮像手段により所定の時間間隔で得られる画像情報が収集される演算処理装置を備える。前記演算処理装置は、前記画像情報に基づいて撮影された地点を走行する車両のヘッドライト又はテールランプの点灯又は消灯を示す消点灯値を算出する。前記消点灯値がヘッドライト又はテールランプの点灯を示す場合には照明を点灯し、ヘッドライトの消灯を示す場合には照明を消灯する。前記消点灯値は、前記撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを点灯させている車両の割合、或いは、ヘッドライト又はテールランプを消灯している車両の割合で表現されるものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間や悪天候時などに、自動車の運転に必要な視界を確保するために道路を照らす道路照明設備の点灯や消灯を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間や悪天候時などに日照が得られない場合、自動車の運転に必要な視界を確保するためには、通常、道路を照らす道路照明設備が使用されている。ところが、道路を必要以上に照らすことは電力の無駄な消費につながる。そこで、道路照明設備を、必要に応じて自動的に点灯し或いは消灯する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2001−102182号公報には、画像による車両検知情報に基づいた道路照明の点灯制御方法が開示されている。この点灯制御方法では、道路を視野内に収めて画像を得て、この画像から道路上を走行する車両の存在を検出する。そして、走行中の車両の存在が検出されたとき、複数の照明灯の夫々を、その各照明灯への車両の到達予測時刻よりも、少なくとも車両の走行状態と所定の視界距離とを加味した時間だけ前に点灯させ、この後、この時間が経過したときに消灯させる。そのため、夜間に、車両の通行が在るときに必要個所の照明灯のみが点灯し、それ以外の照明灯は消灯されることとなり、夜間の通行量に応じた照明電力の節約を図ることがきる。
【0004】
なお、この点灯制御方法の説明においては、夜間であるかどうかの判断について特に言及されていないが、周囲の明るさに応じた照明設備の点灯制御を光電センサなどのセンサを用いて容易に行えることは、広く一般に知られた公知技術である。例えば、特開平5−174980号公報には、周囲の明暗を検知するセンサモジュールを照明設備に備えることが従来技術として開示されている。また、特開2002−157675号公報には、センサを利用して点灯される照明設備を備えた道路管理システムが開示されている。なお、この道路管理システムでは、照明設備の点灯制御を行うセンサが正常に動作しているかどうかを確認する手法が提案されている。その手法によれば、路車間通信により車両の状態(ヘッドライト点灯)の情報を受け、複数の走行車両のライトが点灯しているものの道路照明が点灯していないことを検知した場合、センサ(照度計等)の異状と判断することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−102182号公報
【特許文献2】特開平5−174980号公報
【特許文献3】特開2002−157675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の照明設備における、照度計等のセンサを利用した点灯制御では、センサの設置場所などの条件により、自動車の運転に必要な視界を確保するための適切な点灯制御を行えない場合があった。例えば、日の沈む方向に障害物が全く無い場所にセンサを設置した場合、路面は暗くなっているにも関わらず照明が点灯せず視野が確保されない問題が発生し、逆に建物や山の影に入る場所に設置した場合、路面にはまだ十分な日照があるにも関わらず照明が点灯し無駄な電力を消費する問題が発生していた。なお、日の出る方向についても同様の問題が発生する。更に、晴天から曇天や雨天に天候が変化する場合、その変化の速度によっては人の目で暗く感じることがあっても、数値的に十分な照度があれば照明が点灯せず視野を確保できない問題が発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、無駄な電力を消費することなく、自動車の運転に必要な視界を確保するための照明を行うことができる、道路照明設備点灯制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る道路照明設備点灯制御システムは、照明を行う道路上の走行車両を正面方向又は後方から撮影する撮像手段と、前記撮像手段により所定の時間間隔で得られる画像情報が収集される演算処理装置を備える。そして、前記演算処理装置は、前記画像情報に基づいて撮影された地点を走行する車両のヘッドライト又はテールランプの点灯又は消灯を示す消点灯値を算出し、前記消点灯値が点灯を示す場合には照明を点灯し、消灯を示す場合には照明を消灯する。
【0009】
前記消点灯値は、前記撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを点灯させている車両の割合で表現されるものであってもよく、或いは、前記撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを消灯している車両の割合で表現されるものであってもよい。
【0010】
前記消点灯値が、点灯を示す場合には、更に、上方が囲まれた道路部分に設置された照明の照度を下げてもよく、消灯を示す場合には、更に、上方が囲まれた道路部分に設置された照明の照度を上げてもよい。
【0011】
なお、本発明において、「上方が囲まれた道路部分」とは、道路において外的環境から隔絶された部分、具体的にはトンネル部分や半地下構造とされた部分等である。以下、「上方が囲まれた道路部分」を「トンネル等」というものとする。一方、本発明において、単に「照明」という場合は、トンネル等以外で道路が外的環境から隔絶されていない部分に設置されたものを意味する。そのため、以下、トンネル等に設置された照明は「トンネル照明等」というものとし、「照明」と区別するものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る道路照明設備点灯制御システムによれば、照明の点灯及び消灯は、照明を行う道路を走行する車両のヘッドライト又はテールランプの状態に連動するため、車両を運転している人の路面の明るさに対する感覚がそのまま反映されたものとなる。視野を確保するために十分な明るさであるかどうかは、もともと人間の感覚(視覚及び知覚)で決まるところ、その感覚は周辺環境や体調にも左右されるため、それを照度という数値で一義的に定めて制御を試みていた従来技術では、明るさの判断に関し、実際に車両を運転している人の感覚との乖離が生じていた。そして、その乖離が、無駄な電力の消費を発生させ、或いは必要な照明が行われない問題となって現れていたが、本発明の道路照明設備点灯制御システムでは、車両を運転している者の感覚との乖離が無くなるため、そのような問題の発生を防止することができる。
【0013】
ヘッドライト又はテールランプの点灯又は消灯を判断するための消点灯値は、例えば、画像における所定面積領域の平均輝度の最高値としてもよい。その場合、画像における路面部分の輝度データの平均値を標準とし、消点灯値と標準との差分が所定の値以上であれば点灯を、それ以外であれば消灯を示すことになる。
【0014】
消点灯値は、また、撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを点灯させている車両の割合、或いは、ヘッドライト又はテールランプを消灯している車両の割合で表現してもよい。この割合に対しては、閾値を設けておき、その閾値よりも大きい場合は「点灯」を、小さい場合は「消灯」を示すものとして制御を行えばよく、このように、車群として判断することで個人差が生じる人の感覚を平均化して、車両を運転している者の大多数の感覚に適合した制御を行うことが可能となる。なお、点灯させている車両、或いは消灯している車両の割合は、まず画像において各車両の識別を行い、次に、識別された各車両について消灯、点灯を判断することで算出できる。画像における車両の識別には、例えば、背景差分や輪郭抽出処理の方法を使用できる。また、消灯、点灯の判断は、例えば、識別された各車両を含む画像領域の平均輝度を標準値と比較する方法を使用できる。
【0015】
消点灯値を、テールランプの点灯或いは消灯している割合で表現する場合、屋外輝度を加味することが好ましい。また、車郡で走行している状況では、大型車の直近の背後を走行する小型車のヘッドライト部が大型車の陰となってしまう場合がある。このような場合は、撮像手段から直接得られた情報を補正することにより、走行車両のヘッドライトの点灯割合を算出することが好ましい。なお、小型車のヘッドライト部が大型車の陰となっているかどうかは、車両毎の色相や明度差による輪郭処理や窓ガラス部分の輪郭処理により判断することができる。また、撮像手段から直接得られた情報の補正方法としては、例えば、パラメーターによる補正が好ましい。パラメーターによる補正とは、例えば、通過大型車100台中1台には小型車が隠れているといった決めで処理することである。輪郭処理による判断では、大型車に完全に隠れた小型車の識別が不可能となるが、パラメーターによる補正であれば、そのような小型車の存在も加味されることになる。
【0016】
ただし、消点灯値は、画像におけるヘッドライト又はテールランプの点灯状態と消灯状態とで異なる値をとるものであれば、その内容に制限はなく、公知の画像検知で用いられる値を採用してもよい。
【0017】
トンネル照明等については、十分な日照がある場合は暗く感じられ、トンネル等の外における感じ方とは逆になることから、消点灯値がヘッドライト又はテールランプの点灯を示す場合には、照明の点灯に加え、トンネル照明等の照度を下げることにより、トンネル等においても必要な視野を確保することができる。逆に、ヘッドライト又はテールランプの消灯を示す場合には、トンネルの外は明るくなっていることからトンネル照明等は暗く感じられるため、照明の消灯に加え、トンネル照明等の照度を上げることにより、トンネル等においても必要な視野を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る道路照明設備点灯制御システムの実施例のブロック図である。
【図2】同道路照明設備点灯制御システムで制御される照明及びトンネル照明の概観を示す斜視図である。
【図3】同道路照明設備点灯制御システムの演算処理装置における処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜3を参照しながら、本発明に係る道路照明設備点灯制御システムの実施例を説明する。
このシステムは、照明を行う道路11上の走行車両を正面方向から撮影する撮像手段1と、撮像手段1で得た画像情報が収集される演算処理装置2と、照明13の点灯及び消灯を行う照明点灯制御装置3と、トンネル照明等14(この実施例ではトンネルのみを図示するため、以下、トンネル照明14とする)の照度調整を行うトンネル照明照度制御装置4とを備えている。
【0020】
撮像手段1は、照明13の一つに固定されており、照明13及びトンネル照明14が照明を行う対象となる道路11から離れた位置に設置された演算処理装置2と、通信線で接続されている。撮像手段1には公知のデジタルビデオカメラが使用され、また演算処理装置2には公知のコンピュータが使用されており、撮像手段1で撮影された映像データは公知の伝送方式により演算処理装置2に収集されるものとなっている。なお、撮像手段1は、遅くとも1秒間隔で撮影できるものであれば静止画を撮影するカメラであってもよい。その設置位置は、大型車の直近の背後を走行する小型車のヘッドライト部が大型車の陰にならないような位置とすることが好ましい。
【0021】
照明点灯制御装置3には、このシステムで点灯制御を行う対象となる照明13が接続されており、照明13に対する照明電力の供給の制御を通してそれらの点灯及び消灯を行う。また、トンネル照明照度制御装置4には、このシステムで点灯制御を行う対象となるトンネル照明14が接続されており、トンネル照明14に対する照明電力の供給の制御を通してそれらの照度調整を行う。
【0022】
このシステムでは、まず、撮像手段1が、照明を行う道路11上の走行車両を正面方向から撮影する。そして、その画像情報5を演算処理装置2に送信する。画像情報5を受信した演算処理装置2では(ステップS1)、その情報を図示しない記憶部(ROM)に記憶するとともに、その画像における所定面積領域の平均輝度を算出する。ここで、平均輝度は複数得られることになるが、それらの平均輝度のうち、記憶部に記憶されている標準値との差が許容範囲内のものを使用して標準値を更新し記憶部に記憶する。また、算出された複数の平均輝度の最高値を消点灯値とする(ステップS2)。
【0023】
次に、算出された消点灯値と標準値との差分を求める(ステップS3)。そして、その差分が所定の値以上であれば、ヘッドライトは点灯されているものと判断し、記憶部に記憶されている照明13の照明状態データを確認する(ステップS4)。照明状態データが”点灯”を示すものであれば照明点灯制御装置3に対する指示動作は行わず、上記画像処理を繰り返す。照明状態データが”消灯”を示すものであれば照明点灯制御装置3に対し、”点灯”を示す照明指示データ6を送信する(ステップS5)。照明指示データ6を受けた照明点灯制御装置3では、照明13に照明電力を供給し照明13を点灯し、演算処理装置2に対し”点灯”を示す照明状態データ7を送信する。これを受けた演算処理装置2では、記憶部に記憶されている”消灯”を示す照明状態データを”点灯”に更新し(ステップS6)、続けて照度状態データを確認する(ステップS7)。照度状態データの確認は、その値(照度)を記憶部に記憶されている設定値と比較することで行う。比較の結果、設定値と一致していればトンネル照明照度制御装置4に対する指示動作は行わず、上記画像処理を繰り返す。一致していなければトンネル照明照度制御装置4に対し、設定値を示す照度調整データ8を送信する(ステップS8)。照度調整データ8を受けたトンネル照明照度制御装置4では、トンネル照明14に対する照明電力の供給量を調整しトンネル照明14の照度を調整し、演算処理装置2に対し照度を示す照度状態データ9を送信する。これを受けた演算処理装置2では(ステップS9)、記憶部に記憶されている照度状態データの値を更新し(ステップS10)、上記画像処理を繰り返す。
【0024】
一方、算出された消点灯値と標準との差分が所定の値以下であれば、ヘッドライトは消灯されているものと判断する。そして、照明13の照明状態データを確認し(ステップS14)、照明状態データが”点灯”を示すものであれば照明13を消灯し(ステップS15)、トンネル照明14の照度を調整するための処理を行う(ステップS16〜S20)。ただし、その内容は、上記ヘッドライトが点灯されていると判断されている場合と実質的に同じであるため、その説明は省略する。
【0025】
なお、消点灯値は、画像におけるヘッドライトの点灯状態と消灯状態とで異なる値をとるものであれば、その内容に制限はなく、その他の値を採用してもよく、例えば、撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライトを点灯させている車両の割合としてもよい。その場合、まず、撮像手段1から演算処理装置2に送信された画像において、各車両の識別を行う。この車両の識別は、背景差分や輪郭抽出処理によって行う。次に、識別された車両毎にその車両を含む画像領域を決定し、それら各画像領域毎に平均輝度を算出し、算出した平均輝度と標準値との差分を求め、差分が所定の値以上であれば、その画像領域に含まれる車両のヘッドライトは点灯されているものと判断する。なお、ここで使用する標準値は、既述のものと同じである。そして、この判断を、識別された全ての画像領域(車両)について行い、ヘッドライトが点灯されているものと判断された車両の数と、画像領域全体で識別された車両の数とから、ヘッドライトを点灯させている車両の割合を求めることができる。なお、この割合に対しては、閾値を設けておき、その閾値よりも大きい場合は「点灯」を、小さい場合は「消灯」を示すものとして、上記の場合と同様の処理を行えばよい。このように、車群として判断すれば、個人差が生じる人の感覚を平均化して、車両を運転している者の大多数の感覚に適合した制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 撮像手段
2 演算処理装置
3 照明点灯制御装置
4 トンネル照明照度制御装置
5 画像情報
6 照明指示データ
7 照明状態データ
8 照度調整データ
9 照度状態データ
11 道路
13 照明
14 トンネル照明


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明を行う道路上の走行車両を正面方向又は後方から撮影する撮像手段と、前記撮像手段により所定の時間間隔で得られる画像情報が収集される演算処理装置を備え、前記演算処理装置は、前記画像情報に基づいて撮影された地点を走行する車両のヘッドライト又はテールランプの点灯又は消灯を示す消点灯値を算出し、前記消点灯値が点灯を示す場合には照明を点灯し、消灯を示す場合には照明を消灯することを特徴とする道路照明設備点灯制御システム。
【請求項2】
前記消点灯値は、前記撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを点灯させている車両の割合で表現される請求項1に記載の道路照明設備点灯制御システム。
【請求項3】
前記消点灯値は、前記撮影された地点を走行する車両のうちの、ヘッドライト又はテールランプを消灯している車両の割合で表現される請求項1に記載の道路照明設備点灯制御システム。
【請求項4】
前記消点灯値が点灯を示す場合には、更に、上方が囲まれた道路部分に設置された照明の照度を下げる請求項1、2又は3に記載の道路照明設備点灯制御システム。
【請求項5】
前記消点灯値が点灯を示す場合には、更に、上方が囲まれた道路部分に設置された照明の照度を上げる請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の道路照明設備点灯制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−129494(P2011−129494A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289894(P2009−289894)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】