説明

遠心力成形助剤、コンクリート、それを用いたヒューム管の製造方法、及びヒューム管。

【課題】 ヒューム管が効率よく製造できる、ノロの発生がないので埋め立てが不要となり地球環境の保全に役立つ、脱水が無く、管体の水セメント比が下がらなくてもヒューム管の圧縮強度や外圧強度に影響を与えない遠心力成形助剤、コンクリート、それを用いたヒューム管の製造方法、及びヒューム管を提供する。
【解決手段】 ベントナイトと平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールとを主成分とする遠心力成形助剤、ポリビニルアルコールが部分鹸化物である該遠心力成形助剤、セメント、骨材、減水剤、水、及び該遠心力成形助剤を配合してなるコンクリート、ベントナイトの単位量が1〜12kg/m3であり、平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールの部分鹸化物が、ベントナイト100部に対して、0.5〜10部である該コンクリート、膨張材及び/又は高強度混和材を配合してなる該コンクリート、該コンクリートを用いたヒューム管及びその製造方法を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力成形助剤、コンクリート、それを用いたヒューム管の製造方法、及びヒューム管に関する。
なお、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心力成形におけるノロ低減又は防止材としてベントナイトを主成分とする技術が提案され、主に、コンクリートパイル、鋼管コンクリート複合パイル、及びコンクリートポールに多用されている(特許文献1参照)。
しかしながら、ヒューム管を製造する場合は、遠心力成形によって脱水した管内面のペースト層を固く締めた後に、刷毛仕上げを行って、水の流れを妨げないように滑らかに仕上げる工程があり、ノロ低減又は防止材を使用すると、軟らかいクリーム状の締まらないペースト層が内面に形成され、刷毛を入れると、ペースト層は内面全体に渡って崩れ落ち、大量のノロとして発生する場合があったり、内径の大きさに対して管厚が薄いため、ヒューム管の遠心力成形時に微振動が入りやすく、ヒューム管の内面を締めようとして高速の回転時間を長くすると、ノロが発生する場合があり、ノロ低減又は防止材としてベントナイトを主成分とする技術は、ヒューム管製造には普及しにくいという課題があった。
【0003】
また、ノロが発生し難いように、ベントナイトのノロ防止力を強化する成分として、ベントナイトとグリセリンなどの多価アルコールを併用することが提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、これでは、ノロ防止効果は強化されるが、ペースト層を硬く締め固める効果の面で課題があった。
【0004】
さらに、遠心力成形時にポリビニルアルコールを添加する技術も提案されている(特許文献3参照)。
しかしながらこの技術は、ポリビニルアルコールを添加しない場合よりも、多量にノロを発生させ、脱水を促進させて締め固めを促進し、作業効率を高め、かつ、管体のコンクリートの実質的な水セメント比を下げて高い強度を発現させるものであり、ノロ防止とは正反対の効果を示すものである。
【0005】
また、ヒューム管に使用するモルタル又はコンクリートには、推進管のように、その軸力を高めるために高強度混和材や、埋設管のように、その外圧強度を高めるために膨張材が配合されるが、高強度混和材を配合した場合は、高強度混和材の粉末度がセメントよりも細かく、特に、シリカフュームなどの超微粉末を配合すると締まらないペースト層はより厚くなり、ノロを発生させないで内面を締め固めるということがより困難となる。
【0006】
そして、高性能減水剤、膨張材、及びベントナイトを併用した場合は、偽凝結を生ずる場合があり、高性能AE減水剤とベントナイトの併用では練り混ぜ中に急激なスランプロスが生じ、作業性が悪くなるという課題が発生する。
【0007】
なお、ノロとは遠心力成形によって内面に絞り出されてくる水と、セメントや砂の微粉を含むスラリーであり、ノロ、トロ、又はスラッジなどともいわれている。
また、脱水においても、単に水だけが抜けてくるものではなく、固形分を含んだスラリーである。
【0008】
【特許文献1】特開平03−247543号公報
【特許文献2】特開平06−183799号公報
【特許文献3】特開昭61−127653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ベントナイトを主成分とする、ノロの発生を低減又は防止する遠心力成形助剤をヒューム管に利用するに当たり、ノロを発生させない状態を維持しながら、仕上げが可能なように内面を固く締め固めることと、さらに、ベントナイトと膨張材を併用した場合の偽凝結を改善することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベントナイトと平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールとを主成分とする遠心力成形助剤であり、ポリビニルアルコールが部分鹸化物である該遠心力成形助剤であり、セメント、骨材、減水剤、水、及び該遠心力成形助剤を配合してなるコンクリートであり、セメント、骨材、減水剤、水、ベントナイト、及び平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールを配合してなるコンクリートであり、ベントナイトの単位量が1〜12kg/m3であり、平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールの部分鹸化物が、ベントナイト100部に対して、0.5〜10部である該コンクリートであり、さらに、膨張材及び/又は高強度混和材を配合してなる該コンクリートであり、セメントが早強ポルトランドセメントである該コンクリートであり、該コンクリートを用いたヒューム管の製造方法であり、該ヒューム管の製造方法により製造されたヒューム管である。
【0011】
本発明の遠心力成形助剤は、ベントナイトと平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールとを主成分とするものであり、遠心力成形時、特に、ヒューム管製造時のノロの発生を低減又は防止する材料である。
【0012】
本発明で使用するベントナイトとは、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物であり、ブック状の層状の結晶構造を有するものである。
ベントナイトはその層構造の層間に陽イオンと水を取り込んで膨潤するが、ベントナイトを、コンクリートに、単位量で1〜12kg/m3配合することにより、コンクリートの保水力を高め、重力加速度の35倍程度の遠心力で遠心力成形してもノロの発生を低減する効果を発揮する。
天然産ベントナイトは産地によって膨潤度は異なり、ACC法で5〜30の範囲である。膨潤度によってもノロ防止力も異なる場合もあるが、膨潤度が小さくても配合量でカバーできるので膨潤度による制限は受けない。
ベントナイトの使用量は、単位量で、1〜12kg/m3が好ましく、性能と経済性より、2〜10kg/m3がより好ましい。1kg/m3未満では膨潤度が大きくてもノロ防止力は低下する場合があり、12kg/m3を超えると、膨潤度が小さくても、同様の軟らかさのコンクリートとするのに単位水量が大きくなりすぎて強度が低下する場合がある。
【0013】
ポリビニルアルコール(以下、PVAという)は、ベントナイトがノロの発生を低減又は防止する際にヒューム管内面に形成する締まらないペースト層を、脱水を抑制しながら固く締め固め、刷毛仕上げができるようにする効果を有する。さらに、ベントナイトと膨張材を併用したときに生ずる偽凝結を防止し、作業性も改善するものである。
PVAの平均重合度は2,000以下であり、1,700以下で低い方が好ましい。平均重合度が2,000を超えるとスランプロスを改善する効果が小さくなり、かつ、ペースト層を締め固める効果も小さくなる場合がある。さらに、鹸化度が95mol%を超える完全鹸化物よりは鹸化度が95mol%以下の部分鹸化物が好ましい。
PVAの使用量は、ベントナイト100部に対して、0.5〜10部が好ましい。0.5部未満では内面のペースト層を固く締め固める作用や、ベントナイトと膨張材を併用したときに生ずる偽凝結等を防止する作用効果に乏しい場合があり、10部を超えると強度の低下が大きくなる場合がある。
【0014】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、及び低熱等の各種ポルトランドセメント、混合セメント、並びに、エコセメントが挙げられる。なかでも、早強ポルトランドセメントは、内面の締まりや平滑度が良く、刷毛仕上げが不要なほどにより滑らかで平滑な内面が得られ、かつ、強度も高くなるので最も好ましい。
【0015】
また、本発明では、ベントナイトが単位水量を増加させる作用があるので、強度を低下させないために減水剤を使用することが好ましい。
減水剤としては、高性能減水剤や、ポリカルボン酸塩系減水剤である高性能AE減水剤が挙げられ、リグニンスルホン酸塩等の一般的な減水率の小さい減水剤は効果が得られにくい。
高性能減水剤とは、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系やメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系のいずれかを主成分とするものであり、これらの一種又は二種以上が使用される。
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤には、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物等があり、市販品としては電気化学工業(株)社製商品名「FT-500」とそのシリーズ、花王(株)社製商品名「マイティ-100(粉末)」や「マイティ-150」とそのシリーズ、第一工業製薬(株)社製商品名「セルフロー110P(粉末)」、竹本油脂(株)社製商品名「ポールファイン510N」など、山陽国策パルプ(株)社製商品名「サンフローPS」とそのシリーズなどが代表的である。藤沢薬品工業(株)社製商品名「パリックFP200H」シリーズの芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤もこのカテゴリーに入るものである。メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤には、グレースケミカルズ社製商品名「FT-3S」、昭和電工(株)社製商品名「モルマスターF-10(粉末)」や「モルマスターF-20(粉末)」が挙げられる。
ポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤としては(株)エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP8」シリーズ、(株)フローリック社製商品名「フローリックSF500」シリーズ、竹本油脂(株)社製商品名「チュポールHP8,11」シリーズ、グレースケミカルズ(株)社製商品名「ダーレックススーパー100,200,300,1000」シリーズ、及び花王(株)社製「マイティ21WH,3000S」などがあり、その他の市販品も使用される。
また、その使用量はベントナイトの配合量に対応して調整されるが、通常、高性能減水剤は、セメント100部に対して、2部前後、ポリカルボン酸塩系減水剤は1.5部前後で液状の形態で使用される。
【0016】
本発明で使用される膨張材は通常市販されているものが使用可能である。
市販の膨張材としては、電気化学工業(株)製商品名デンカCSA#20やデンカパワーCSA、太平洋セメント(株)社製エクスパンなどが代表的であり、その混和量は、コンクリートなどが膨張破壊しない範囲で使用されるが、膨張材の銘柄やそれを使用するヒューム管等の外圧強度の大きさなどによって適宜調整される。
【0017】
本発明において推進管等を製造する場合は、高軸力を必要とするために高強度混和材を適宜使用することが可能である。
高強度混和材としては、石膏類を主成分とするもの、例えば、電気化学工業(株)社製商品名「Σ1000」、太平洋セメント(株)社製商品名「スーパーミックス」、住友大阪セメント(株)社製商品名「ノンクレーブ」、昭和鉱業株社製商品名「ダイミックス」)や、さらにシリカフュームなどを配合したもの、例えば、電気化学工業(株)社製商品名「インテグラ90」、さらに、シリカフュームやメタカオリンを単独で使用することも可能である。
高強度混和材は、セメントよりも粉末度が大きく保水性を有するので、ノロの低減又は防止の効果を助長する反面、締まらないペースト層が厚くなり、通常、締め固めは困難となるが、本発明と併用することによりペースト層から水が抜け、締め固まり刷毛仕上げが可能となる。
【0018】
本発明のモルタルやコンクリートを練混ぜるに際し、ベントナイトやPVAの添加方法は特に限定されるものではない。
添加方法の例として、(1)ベントナイトとPVAの混合物を他の材料と共に粉末状で添加する。(2)別々に粉末状で添加する、(3)ベントナイトとPVAの混合物を練り混ぜ水の一部で懸濁してスラリーで添加する、(4)ベントナイトをスラリーで添加し、別にPVAの水溶液を添加する、(5)PVAの水溶液を減水剤に混合しておいて添加するなどがあり、この中でも(4)と(5)の方法が溶解速度の関係でより好ましい。
なお、ミキサに投入した後の練り混ぜ時間等は常法でよい。
【0019】
本発明において、ヒューム管を製造するに当たり、遠心力成形方法は特に限定されるものではない。例えば、型枠をコンクリートが張り付く回転、例えば、GN0.6G前後で回転させながらコンクリートを投入し、投入後、少し高いGNo.8G程度でコンクリートを軸方向に延ばしてから高速回転に上げて締め固める。高速回転では内面が硬く締まり、仕上げができるまで回転させる。仕上げは、湿式法では回転を投入回転まで下げ、セメントペーストやモルタルのスラリーを内面に流し込んで再度高速回転に上げて締め固め、最終的には回転を下げて僅かに流し込んだスラリーから発生するノロを排水しながら刷毛で刷毛目を付けて仕上げる。乾式法では回転を下げてセメント粉末又はドライモルタルを管内面に振りかけ、内面の僅かに発生しているノロと混合しながら高速で締め固め、最終的には回転を下げて刷毛で刷毛目を付けて仕上げる。
また、遠心力成形したヒューム管は数時間の前置き養生を経て60〜90℃で蒸気養生され、翌日脱型される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の遠心力成形助剤を配合したコンクリートを遠心力成形してヒューム管を製造すると、(1)ノロの排出工程やその後の洗浄工程が省略されるので、ヒューム管が効率よく製造できる、(2)ノロの発生がないので埋め立てが不要となり地球環境の保全に役立つ、(3)脱水が無く、管体の水セメント比が下がらなくてもヒューム管の軸力強度である圧縮強度や外圧強度に影響を与えないなどの効果を奏する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実験例にて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
実験例1
スランプ5±2.5cm、空気量1.5%、セメントα436kg/m3、水145kg/m3、砂709kg/m3、砕石1,100kg/m3、及び減水剤a7.5kg/m3を配合したコンクリートに、表1に示すベントナイトとPVAを配合し、スランプの経時変化と遠心力成形供試体製造時のペースト層厚とノロ量を測定した。さらに蒸気養生後の遠心力成形供試体の圧縮強度も測定した。その結果を表1に併記する。
なお、ベントナイトは1m3当たりのコンクリートに外割で所定量配合し、PVAは練混ぜ水の一部を用いて固形分10%の水溶液にして、コンクリートを練混ぜるときに練り混ぜ水に混合してから添加して他の材料と一緒に練り混ぜ、スランプを範囲内にするために水量を加減して合わせた。
また、遠心力供試体は、φ20×30Lcmの型枠にコンクリートを15kg投入し、遠心力成形の大きさは、重力加速度の倍数をGとすると、低速2G×3分、中速8G×4分、高速30G×5分で遠心力成形した。
また、膨張材を44kg/m3併用して同様の実験を行った。その結果を表1に併記する。
【0023】
<使用材料>
セメントα:電気化学工業(株)社製普通ポルトランドセメント
砂 :新潟県姫川産川砂、5mm下
砕石 :新潟県姫川産砕石、13〜5mm
ベントナイトA:膨潤度15、国産の天然産
ベントナイトB:膨潤度20、国産の天然産
ベントナイトC:膨潤度24、ワイオミングの天然産
PVAイ:重合度400、鹸化度87.5〜90.5mol%の部分鹸化物
PVAロ:重合度500、鹸化度86.5〜89.5mol%の部分鹸化物
PVAハ:重合度800、鹸化度85〜88mol%の部分鹸化物
PVAニ:重合度1,000、鹸化度88〜91mol%の部分鹸化物
PVAホ:重合度1,700、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAヘ:重合度2,000、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAト:重合度2,400、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAチ:重合度500、鹸化度98mol%以上の完全鹸化物
減水剤a:ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤
膨張材 :電気化学工業(株)製、商品名「デンカCSA#20」
【0024】
<測定方法>
スランプ :コンクリートを静置した状態とし、測定時間毎に練り返してJIS A 1101により測定
ペ−スト層厚:締め固まらないペースト層の厚みで金属製のスケールを押し当てて測定
ノロ量 :メスシリンダーで容積計量
圧縮強度 :遠心力成形供試体を、前置き養生4時間、昇温速度15℃/h、最高温度80℃で4時間保持した後、蒸気バルブを止めてそのまま養生槽の中で翌日まで徐々に自然冷却してから脱型して1日強度を測定
【0025】
【表1】

【0026】
表1より、実験No.1- 9の比較例は、膨張材を併用したベントナイト単独添加であるが、スランプロスが大きく、また、ノロの発生は殆どないが締まらないペースト層は厚く、僅かに発生するノロもペーストのような固形分の多い状態である。
また、PVAのみを添加した実験No.1- 2の比較例では締まらないペースト層の形成はないが、ベントナイトとPVAを添加していない実験No.1- 1の比較例より、脱水が促進され多量のノロが発生する。これに対して実施例では、ベントナイトに対するPVAの比率を一定にして、ベントナイトの量を変えた場合は、ベントナイトが多くなるほどノロ発生量の抑制とペースト層が硬く締まるという二律背反が達成される。
しかしながら、ベントナイトの量を多くするほどスランプを一定とした場合の単位水量が多くなり、強度が低下してくる。
ノロの発生量を抑制すること、ペースト層を締め固めること、及び強度発現が大きいことの3点から、ベントナイトの使用量は、1〜12kg/m3が好ましく、2〜10kg/m3がより好ましいことが示される(実験No.1- 3〜実験No.1- 8)。
さらに、膨張材を配合し、ベントナイト量を一定にしてPVAの量を多くしていくと、スランプロスはより改善され、締まらないペースト厚も薄くなることが示される。そして多くなりすぎてもPVAは強度を大きく低下させる傾向を示し、PVAの量は、ベントナイト100部に対して、0.5〜10部が好ましく、1〜8部がより好ましいことが示される(実験No.1- 9〜実験No.1-14)。
さらに、ベントナイトとPVA量を一定として、PVAの平均重合度を大きくしていくと、スランプロスの改善効果は順次低下するようになり、平均重合度2,000を超えると作業性を害するほどロスが生ずるようになり、ペースト層の締まりも悪くなる傾向を示す。
以上より、PVAの平均重合度は2,000以下で小さい方がより好ましい(実験No.1-15〜実験No.1-20)。
また、完全鹸化物は、平均重合度が小さいものを使用することによって、部分鹸化物の平均重合度1,700程度の効果を発揮する(実験No.1-21)。
そして、ベントナイトの膨潤度を変えても同様の効果が得られることも示される(実験No.1-22〜実験No.1-27)。
【0027】
実験例2
スランプ8±2.5cm、空気量1.5%、単位量がセメント436kg/m3、水145kg/m3、砕石1,100kg/m3及び表2に示す砂、膨張材、高強度混和材、及び減水剤のコンクリート配合を用いて、さらに、ベントナイトCを5kg/m3と、PVAロを150g/m3(ベントナイト100部に対して3部)とを添加した場合(実施例)と、ベントナイトとPVAを添加しない場合(比較例)について、練り混ぜたコンクリートを用いて、内径400mmの一種A型ヒューム管を常法により製造し、遠心力成形時の内面状態を観察した。その結果と、材齢14日で外圧強度を測定した結果を表2に示す。
ただし、内面仕上げは行わないでノロを排出した後、低速回転で内面を整えてから4時間前置き養生して65℃で5時間蒸気養生し、翌日脱型して屋外養生した。この際、実験例1と同様に遠心力成形供試体を採取して、ヒューム管と同様に養生した材齢14日の圧縮強度も測定した。
なお、ベントナイトとPVAを添加したことによるスランプの変動はミキサの負荷が一定となるように水で調整した。
【0028】
<使用材料>
セメントβ:電気化学工業(株)社製早強ポルトランドセメント
高強度混和材:シリカフューム
減水剤b :ポリカルボン酸塩系高性AE能減水剤
【0029】
<測定方法>
ひびわれ荷重:常法により、外圧荷重をかけて測定
破壊荷重 :常法により、外圧荷重をかけて測定
ノロ量 :ヒューム管を傾け、ノロをバケツで採取し、重量を測定
遠心力成形後の内面状態:金属製のスケールを押し当て、目視観察
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示すように、実施例では、セメント、遠心力成形助剤、及び減水剤の種類に拘わらず内面は硬く締まり、発生するノロ量も少ないことが示される。
また、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントの場合の比較では、早強ポルトランドセメントの方が内面が滑らかであり、より好ましいことが示される。比較例はいずれもノロ発生量が多く、かつ、保水性のある早強ポルトランドセメントや高強度混和材を用いた場合は完全に締まらず、軟らかいペースト層が残る結果が示された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の遠心力成形助剤は、30G以上の遠心力をかけても脱水させないことから、強い保水力を持ったコンクリートとなる。
したがって、普通のコンクリートに添加するとブリーディングが抑えられ、その結果、粗骨材の下面にブリーディング水が溜まってできる空隙を少なくすることができるので、モルタルと粗骨材の付着が改善され、曲げ強度の向上の他に、粗骨材下面の空隙を伝って進入する炭酸ガスによる中性化や海水中の塩素イオンなどの浸透に対して、抵抗性を発揮し、耐久性の高いコンクリートを製造することが可能となる。
また、高性能減水剤やポリカルボン酸塩系減水剤を使用したブリーディングの発生しないコンクリートでは、スランプが20cm前後以下では、ダレたり流れたりしないプラスチックなコンクリートが製造可能であり、水量や減水剤量の増加によるスランプロス23cm前後以上とすると流動化するが、元々プラスチックなコンクリートであるので単位セメント量が300〜450kg/m3の少ないコンクリートでも粗骨材が分離し難い理想的な高流動コンクリートが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトと平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールとを主成分とする遠心力成形助剤。
【請求項2】
ポリビニルアルコールが部分鹸化物である請求項1に記載の遠心力成形助剤。
【請求項3】
セメント、骨材、減水剤、水、及び請求項1又は請求項2に記載の遠心力成形助剤を配合してなるコンクリート。
【請求項4】
セメント、骨材、減水剤、水、ベントナイト、及び平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールを配合してなるコンクリート。
【請求項5】
ベントナイトの単位量が1〜12kg/m3であり、平均重合度2,000以下のポリビニルアルコールの部分鹸化物が、ベントナイト100部に対して、0.5〜10部である請求項3又は請求項4に記載のコンクリート。
【請求項6】
さらに、膨張材及び/又は高強度混和材を配合してなる請求項3〜請求項5のうちの一項に記載のコンクリート。
【請求項7】
セメントが早強ポルトランドセメントである請求項3〜請求項6のうちの一項に記載のコンクリート。
【請求項8】
請求項3〜請求項7のうちの一項に記載のコンクリートを用いたヒューム管の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のヒューム管の製造方法により製造されたヒューム管。

【公開番号】特開2006−219320(P2006−219320A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32574(P2005−32574)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】